(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現入力信号と、前記現入力信号よりも前に入力された前入力信号と、の相関関係に基づき前記現入力信号に前記周期性雑音が含まれていることを検出した場合、前記周期性雑音の周期情報及び前記周期性雑音が検出されたことを通知するサイレン音モード信号を含む周期性雑音検出信号を出力する雑音検出部を有し、
前記信号分離部は、前記サイレン音モード信号が前記周期性雑音が検出されたことを示すサイレン音ロックモードである場合に前記抑圧対象帯域情報と前記目的音帯域情報とを出力し、前記サイレン音モード信号が前記周期性雑音が不検出であったことを示すサイレン音アンロックモードである場合には前記入力周波数情報を前記目的音帯域情報として出力する請求項1に記載の雑音除去装置。
前記周期性雑音の周期情報に基づき、前記周期性雑音情報記憶部が出力する雑音履歴情報の範囲を指示する参照情報制御部をさらに有する請求項2に記載の雑音除去装置。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機では、周囲の環境によって目的音とは別の雑音が混入してしまうと、目的音である音声の取得が困難になってしまう問題がある。特に、無線機では、消防士等が火災現場に向かう際や、火災現場で活動する際に発生するサイレン音等の周期性雑音がある。サイレン音が発生している状態で無線機を使用した場合、音声と共にサイレン音も無線機に混入してしまい、受話側で音声が非常に聞き取りづらくなる問題がある。そこで、ノイズを低減する技術が特許文献1〜6に開示されている。
【0003】
特許文献1では、音声処理方式SPAC(Speech Processing system by use of Auto correlation function)に改良を加えた処理を行っている。SPACとは、入力信号の一周期毎に短時間自己相関を求め、その相関関数の一周期の波形を接続することで目的信号である音声を強調させることができる。しかし、SPACはランダム性雑音の低減能力は大きいが、周期波形を強調する性質をもっているため、周期性雑音に対しては効果がない。そこで、特許文献1では相関関数の一周期の波形を接続して音声波形を合成する過程において、短時間自己相関関数を平均した波形を差し引くことでランダム性雑音と共に周期性雑音のレベルを低減することを可能としている。
【0004】
しかしながら、移動体通信のように音声に背景雑音が混入してしまう状況では、自己相関関数で正確に一周期が測れない場合がある。そのため、特許文献1では、相関関数の一周期の波形を接続して音声波形を合成する過程においてフレームの不連続が発生しパルス性のノイズが発生する可能性がある。そのため特許文献1に記載の技術は音声に背景雑音が混入する形態の利用には向かない。
【0005】
特許文献2では、音声信号にサイレン音が重なっている入力信号を、予め定められた時間長のフレーム毎に時間領域から周波数領域に変換し、周波数領域信号からサイレン音の有無を検出する。そして、特許文献2では、サイレン音があった場合はサイレン音の基本周波数を抽出してその数倍の高調波成分を抑圧することでサイレン音を抑圧する。ここで、特許文献2では、サイレン音を検出する手段として、まず、各周波数とその高調波のスペクトルの総和が最大となる箇所を基本周波数として算出する。そして、算出した基本周波数と、予めメモリに登録されたサイレン音基本周期パターンとの自乗平均誤差を計算する。自乗平均誤差が予め設定された閾値よりも小さければサイレン音ありと判定し、算出された自乗平均誤差が予め設定された閾値よりも大きければサイレン音なしと判定する。
【0006】
特許文献3では、想定されるメカノイズ信号を予め標本抽出(サンプリング)して、疑似ノイズ波形として不揮発性メモリ等のメモリに記録させる手段を設け、マイクから収音されるメカノイズのノイズピッチで上記不揮発性メモリから疑似ノイズを読み出して、入力信号から減算することによりノイズ低減を行う。
【0007】
特許文献4では、周波数領域に変換された信号からサイレン音抑圧情報設定部において、抑圧対象の雑音の有無を検出し、その基本周波数を抽出してサイレン音抑圧部に供給する。そして、特許文献4では、このサイレン音抑圧部において、これらの情報に基づいてサイレン音雑音を抑圧する。この場合、サイレン音抑圧情報設定部では予め定められたフレーム間隔毎に基本周波数を抽出することにより、長期平均スペクトル振幅更新部におけるメモリ容量を小さくすることができる。さらに、特許文献4では、サイレン音抑圧部の出力を定常雑音抑圧部に供給して、定常的な雑音を抑圧する。
【0008】
特許文献5、6では、エネルギー発生手段を用いて発生したエネルギー波に基づいて情報信号に混入するノイズ成分と相関のある疑似ノイズ信号を適応フィルタを用いて生成し、情報信号から疑似ノイズ信号成分を減算することでノイズを低減する技術が開示されている。また、電子機器の動作モードが変化する場合、情報信号のノイズ成分が変化する。そのため、特許文献5、6では、電子機器の動作モードの遷移期間付近のステップゲインを変化させてノイズキャンセルの引き込み速度を大きくする技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。実施の形態1にかかる雑音除去装置1は、入力信号に周期性雑音が混入した場合に、入力信号から周期性雑音を抑圧した出力信号を出力する。ここで、周期性雑音は、周波数が周期的に変化する雑音であって、例えば、消防車等が発するサイレン音が該当する。以下の説明では、説明を簡単にするために、周期性雑音としてサイレン音を取り扱う例について説明する。しかし、周期性雑音は、サイレン音に限らず周波数が周期的に変化する雑音であれば良い。
【0017】
図1に実施の形態1にかかる雑音除去装置1のブロック図を示す。
図1に示すように、実施の形態1にかかる雑音除去装置1は、音声入力部10、アナログデジタル変換器11、フレーム構成部12、雑音検出部20、変換分離部30、雑音抑圧部40を有する。
【0018】
なお、雑音除去装置1は、音声入力部10、及び、各種情報を記憶する記憶部がハードウェアにより構成される。また、雑音除去装置1では、雑音検出部20、変換分離部30及び雑音抑圧部40で行われる情報或いは信号に対して行われる処理を、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等の演算部により実行されるプログラム(例えば、雑音除去プログラム)により実現される。この場合、雑音除去プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、CPUを含むコンピュータに供給できる。また、プログラムにより実現される各構成要素は、ハードウェアによって構成されてもよい。
【0019】
音声入力部10は、例えば、マイクロフォン等のセンサであって、外部から音声信号を取得する。この音声入力部10で取得される音声信号はアナログ信号である。アナログデジタル変換器11は、音声信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。フレーム構成部12は、予め設定されたサンプル数に従った単位でデジタル値に変換された入力信号をフレーム化する。雑音検出部20、変換分離部30及び雑音抑圧部40は、フレーム化された入力信号に対して周期性雑音(例えば、サイレン音)検出処理、信号分離処理及び雑音除去処理を行う。
【0020】
雑音検出部20は、現入力信号と、現入力信号よりも前に入力された前入力信号と、の相関関係に基づき現入力信号に周期性雑音が含まれていることを検出した場合、前記周期性雑音の周期情報を含む周期性雑音検出信号を出力する。より具体的には、雑音検出部20は、入力信号を履歴情報として蓄積して前入力信号を生成し、前入力信号と現入力信号との相関関係に基づきサイレン音の有無及びサイレン音の周期を判定する。そして、雑音検出部20は、入力信号にサイレン音が含まれていると判断した場合、周期性雑音検出信号に含まれるサイレン音モード信号を変換分離部30及び雑音抑圧部40に、入力信号にサイレン音が含まれていることを通知するサイレン音ロックモードとすると共に、サイレン音の周期情報を出力する。
【0021】
雑音検出部20は、入力信号記憶部21、自己相関部22、周期性雑音判定部(例えば、サイレン音判定部23)を有する。また、自己相関部22は、自己相関値算出部22a及び相関値分析部22bを有する。
【0022】
入力信号記憶部21は、入力信号を蓄積して前入力信号を生成する。入力信号記憶部21が保持する前入力信号の長さは、サイレン音の周期性を取得するために必要な時間幅が確保されていればよい。つまり、入力信号記憶部21は、前入力信号のうち最も古い入力信号の情報を破棄しながら、新たに入力される入力信号を前入力信号に追加して、常に必要な時間幅分の入力信号の情報を前入力信号の情報として保持する。
【0023】
自己相関部22は、現入力信号と前入力信号との自己相関値を算出し、予め設定した自己相関閾値よりも大きな自己相関値の周期情報を解析する。ここで、自己相関部22では、自己相関値算出部22aにより現入力信号と前入力信号との自己相関値を算出する。また、相関値分析部22bは、自己相関値算出部22aで算出された自己相関値を蓄積して、自己相関閾値よりも大きな値を示す自己相関値のピークの位置及び間隔を分析して、自己相関値のピークの位置及び間隔をサイレン音の周期情報として出力する。なお、自己相関閾値は、所定時間幅における相関値の平均値に対する正の差分値、或いは、相関値の平均値に対する所定の倍率などから求めた値などを用いることができる。
【0024】
ここで、自己相関値算出部22aにおける自己相関値の計算方法について説明する。実施の形態1では、自己相関値の計算式として、例えば、(1)式を用いることができる。
【数1】
(1)式において、m、nは自然数であり、mは入力信号列から自己相関値を計算する範囲(時間幅)を示すものであって現入力信号と前入力信号に含まれる入力信号との位相差に当たる値であり、Nは定数であって最大位相差(探索範囲)であり、nは自己相関値を計算する入力信号列のサンプル数であり、xはフレーム化された入力信号であり、A[m]は位相差mにおける自己相関値である。
【0025】
サイレン音判定部23は、周期情報に基づき現入力信号に周期性雑音(例えば、サイレン音)が含まれているか否かを判定し、現入力信号にサイレン音が含まれている場合に周期情報を雑音抑圧部40の参照情報制御部43に出力する。サイレン音判定部23では、サイレン音が含まれているか否かを判定するに当たり、以下のような判断を行う。
【0026】
まず、周期情報を参照して等間隔の位置に自己相関値のピーク(例えば、自己相関閾値以上の値の自己相関値)があるか否かを判定する。続いて、等間隔の位置に自己相関値のピークがあると判定されたら、等間隔の位置にある自己相関値のピークの間に他の自己相関値のピークがあるか否かを判定する。続いて、等間隔の位置にある自己相関値のピークの間に他の自己相関値のピークがないと判定された場合、等間隔の位置にある相関値のピークの間隔がサイレン音の周期として想定されているサイレン周期閾値の範囲内であるか否かを判定する。続いて、等間隔の位置にある相関値のピークの間隔がサイレン周期閾値の範囲内である場合、信号レベルを判定し、信号レベルがサイレン音レベル閾値より大きければ、入力信号にサイレン音が含まれていると判断し、サイレン音モード信号をサイレン音ロックモードとする。なお、サイレン音の有無判定は、簡易的には、等間隔の位置に自己相関値のピークがあるか否かの判定のみにより行っても良い。
【0027】
なお、サイレン音判定部23は、サイレン音が入力信号に含まれると判定される期間が一定期間以上継続した場合に周期性雑音検出信号のサイレン音モード信号をサイレン音ロックモードとすることが好ましい。これは、サイレン音が含まれているとの判定結果に基づき即座にサイレン音ロックモードに移行してしまうと、サイレン音検出処理で生じる可能性がある誤判定が全体の処理に影響してしまうためである。
【0028】
続いて、変換分離部30について説明する。変換分離部30は、サイレン音ロックモードのサイレン音モード信号を受けて動作する。変換分離部30は、時間領域の情報として入力される入力信号を、サイレン音帯域の周波数領域情報を主成分とする抑圧対象帯域情報と、サイレン音帯域以外の周波数領域情報を主成分とする目的音帯域情報と、を出力する。
【0029】
より具体的には、変換分離部30は、周波数変換部31、信号分離部32を有する。周波数変換部31は、入力信号を時間領域の情報から周波数領域の情報に変換して入力周波数情報を出力する。周波数変換部31における信号の変換方法は、例えば、複数のバンドパスフィルタで構成されたサブバンドフィルタを用いる方法、FFT(Fast Fourier Transform)等の信号処理を用いる方法などがある。
【0030】
信号分離部32は、入力周波数情報を、入力信号に混入したサイレン音の周波数帯域の情報を主成分とする抑圧対象帯域情報と、周期性雑音の周波数帯域以外の情報を主成分とする目的音帯域情報と、に分割する。信号分離部32は、サイレン音帯域分析部32a及び帯域分割部32bを有する。
【0031】
サイレン音帯域分析部32aは、入力周波数情報を分析して、サイレン音が主に分布する周波数帯域と、目的音が主に分布する周波数帯域と、を認識する。ここで、サイレン音帯域分析部32aの動作を説明するために、
図2及び
図3に実施の形態1にかかる雑音除去装置1に入力される入力信号の周波数の時間変化を示すスペクトログラムを示す。
図2は、入力信号にサイレン音のみが含まれている場合のスペクトログラムである。
図3は、入力信号にサイレン音と目的音とが含まれている場合のスペクトログラムである。また、
図2及び
図3では、白色が濃くなるほどその部分の信号レベルが高いことを示している。また、
図2及び
図3では、横軸を時間、縦軸を周波数とするものである。
【0032】
図2に示すように、サイレン音の主要周波数成分は、一定の帯域に存在することが、音圧レベルの分布から把握できる。さらに、
図3に示すように、サイレン音の種類にもよるが、音声の主要成分である基本周波数を含む低次の倍音成分は、サイレン音が推移する周波数帯域の外に存在することが多い。後述の適応フィルタを用いた自己(サイレン音)の信号を参照信号とする抑制処理において、自己以外の信号の存在は抑制効果の低減に繋がる。また、別の問題として、自己以外の信号が音声の場合、音声を抑制しようとする誤動作や、位相ずれを伴う音声信号の影響により、音声明瞭性を著しく悪化する状態に陥る可能性がある。このような問題を避けるため、参照信号への音声成分の混入は、可能な限り避けなければならない。
【0033】
サイレン音の分布周波数帯域は、周波数分析によってサイレン音が推移する周波数帯を、時間方向に平滑化したエネルギー分布から導くことができる。
図2では、サイレン音の周波数分布図の一例を示したが、信号レベルにある閾値を設け、それを上回る周波数帯と隣接する周波数帯とのレベル比が所定の範囲内である帯域を抽出することでサイレン音の周波数帯域を特定することができる。サイレン音は周波数変化量の早い遅いの違いはあるが、時間的に連続性があり、ある特定の周波数帯域に分布することが多い。サイレン音以外の信号源がサイレン音の帯域外で存在しても、狭帯域な分布となるため隣接する帯域とのレベル比が高いことによって排除することができる。例えば、
図3の音声信号は音声のスペクトルが存在する部分のみ音圧レベルが高いため狭帯域と分類される。したがって、サイレン音とは判定されることはない。またサイレン音の特徴として継続時間が長いという特徴がある。よって、時間方向の平滑化により、さらに正確なサイレン音判定が可能である。また、レベル閾値によって低いエネルギー成分は判定の対象から排除されるため、比較的音圧レベルが低い際の環境ノイズの影響も考慮する必要がない。
【0034】
帯域分割部32bは、サイレン音帯域分析部32aの解析結果に基づき、入力周波数情報を分割して入力信号に混入したサイレン音の周波数帯域の情報を主成分とする抑圧対象帯域情報と、周期性雑音の周波数帯域以外の情報を主成分とする目的音帯域情報と、を出力する。
【0035】
続いて、雑音抑圧部40について説明する。雑音抑圧部40は、抑圧対象帯域情報を時間領域の情報に変換して抑圧対象信号を出力し、目的音帯域情報を時間領域の情報に変換して目的音信号を出力する。続いて、雑音抑圧部40は、抑圧対象信号を蓄積して、少なくとも一周期分のサイレン音の情報が含まれる雑音履歴情報を記憶し、雑音履歴情報を参照信号として、抑圧対象信号を擬似的に再現し、かつ、抑圧対象信号とは反転関係を有する抑圧信号を生成する。そして、雑音抑圧部40は、抑圧信号と抑圧対象信号との差分値を残差信号として出力し、残差信号と目的音信号とを合成して出力信号Soを生成する。
図1に示すように、雑音抑圧部40は、第1の周波数逆変換部(例えば、サイレン音帯域周波数逆変換部41)、第2の周波数逆変換部(例えば、非サイレン音帯域周波数逆変換部42)、参照情報制御部43、サイレン音情報記憶部44、参照バッファ部45、雑音フィルタ46、加算器47を有する。
【0036】
サイレン音帯域周波数逆変換部41は、帯域分割部32bが出力する抑圧対象帯域情報を時間領域の情報に変換して抑圧対象信号を出力する。この抑圧対象信号は、目的音信号の帯域と重なり合う部分に存在する目的音信号の成分である音声成分が残るものの、音声信号の強い成分はバンドパスフィルタの効果により低減されている。非サイレン音帯域周波数逆変換部42は、帯域分割部32bが出力する目的音帯域情報を時間領域の情報に変換して目的音信号を出力する。
【0037】
参照情報制御部43は、サイレン音判定部23が出力した周期性雑音の周期情報に基づき、周期性雑音情報記憶部としてのサイレン音情報記憶部44が記憶する雑音履歴情報の中から適正な範囲を指示する。この雑音履歴情報の範囲の指示には、一周期分のサイレン音の時間幅の情報と、サイレン音情報記憶部44に記憶されている雑音履歴情報の切り出し位置の情報と、が含まれる。
【0038】
サイレン音情報記憶部44は、サイレン音を含む抑圧対象信号を蓄積して、サイレン音が少なくとも一周期分含まれる長さの雑音履歴情報を記憶する。ここで、サイレン音情報記憶部44は、新たに抑圧対象信号が入力される毎に、最も古い抑圧対象信号を廃棄し、新たな抑圧対象信号を雑音履歴情報に追加する。
【0039】
参照バッファ部45は、サイレン音情報記憶部44が出力した雑音履歴情報を参照信号として保持する。具体的には、サイレン音情報記憶部44が参照情報制御部43によって指示された雑音情報切り出し位置に基づいて出力された信号を参照信号として一時的に記憶する。
【0040】
雑音フィルタ46は、雑音履歴情報を参照信号として、抑圧対象信号を擬似的に再現し、かつ、抑圧対象信号とは反転関係を有する抑圧信号を生成し、抑圧信号と抑圧対象信号との差分値を残差信号として出力する。より具体的には、雑音フィルタ46は、適応フィルタ部46a、加算器46bを有する。
【0041】
適応フィルタ部46aは、例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ等のフィルタ回路である。適応フィルタ部46aは、参照信号に基づき抑圧信号を生成する。加算器46bは、抑圧信号と入力信号との残差成分を出力する。この加算器46bは、適応フィルタ部46aが出力する抑圧信号が入力される側の端子が反転入力端子となっており、実質的に入力信号から抑圧信号の成分を減算する減算器として機能する。また加算器46bは、残差成分を適応フィルタ部46aにも出力する。適応フィルタ部46aは、この残差成分に基づき抑圧信号の波形を成形する。より具体的には、適応フィルタ部46aは、残差成分に基づき、抑圧信号の波形が入力信号の波形に近づくように適応フィルタ部46aの内部で用いられるフィルタ係数を制御する。この適応フィルタ部46aは、参照信号として入力される過去の入力信号列を擬似的な入力信号に変換するフィルタである。
【0042】
ここで、適応フィルタ部46aのブロック図の一例を
図4に示し、適応フィルタ部46aについてさらに詳細に説明する。
図4に示すように、適応フィルタ部46aは、適応係数更新部51、遅延回路521〜52n、可変ゲインアンプ530〜53n、加算器541〜54nを有する。なお、nは素子の番号を示す整数である。
【0043】
遅延回路521〜52nは、直列に接続される。そして、可変ゲインアンプ530は、参照信号を所定のゲインで増幅して加算器541に出力する。可変ゲインアンプ531〜53nは、遅延回路521〜52nの出力を所定のゲインで増幅して加算器541〜54nに出力する。加算器542〜54nは、前段に配置される加算器の出力と、可変ゲインアンプ532〜53nの出力とを加算する。そして、最終段に配置される加算器54nの出力が抑圧信号となる。
【0044】
適応係数更新部51は、加算器46bが出力する残差信号を参照して可変ゲインアンプ530〜53nのゲインを更新する。この可変ゲインアンプのゲインが適応フィルタ部46aのフィルタ係数に相当するものである。
加算器47は、非サイレン音帯域周波数逆変換部42が出力する目的音信号と、雑音フィルタ46が出力する残差信号とを合成して出力信号を出力する。
【0045】
続いて、実施の形態1にかかる雑音除去装置1の動作について説明する。
図5に実施の形態1にかかる雑音除去装置1の動作のフローチャートを示す。
図5に示すフローチャートは、1つの入力信号が入力された場合の処理であり、雑音除去装置1は、入力信号の1フレーム毎に、
図5に示した処理を実施する。
【0046】
図5に示すように雑音除去装置1では、入力信号が入力される毎に入力信号を入力信号記憶部21に記憶する(ステップS1)。そして、入力信号が入力信号記憶部21に記憶されたことに応じて、自己相関値算出部22aが入力信号記憶部21に記憶されている入力信号の周期が周期数閾値より多いか否かを判定する(ステップS2)。この周期数閾値は、サイレン音の周期性を取得するために必要な時間幅を示すものである。例えば、周波数の時間変化が大きいサイレン音の一周期は80msecから300msecである。そこで、サイレン音の一周期を80msecから300msecとした場合、周期数閾値は、この周期の2倍以上の値に設定する。周期数閾値は、サイレン音の一周期の2倍に限られず、サイレン音の一周期の整数倍であればよい。
【0047】
ステップS2において、入力信号記憶部21に周期数閾値より多くの入力信号が蓄積されていないと判断された場合、サイレン音判定部23は、サイレン音モード信号をサイレン音が未検出であることを示すサイレン音アンロックモードとする(ステップS6)。そして、ステップS6でサイレン音モード信号がサイレン音アンロックモードとなったことに応じて、雑音除去装置1は、変換分離部30で入力信号の全帯域を非サイレン音帯域として逆周波数変換を経て、目的音信号を生成し、この目的音信号を出力信号Soとして出力する(ステップS7)。なお、ステップS6でサイレン音モード信号をサイレン音アンロックモードとした場合、参照情報制御部43、サイレン音情報記憶部44及び雑音フィルタ46の動作を停止しても良い。サイレン音アンロックモードでこれらのブロックの動作を停止することで雑音除去装置1の消費電力を低減することができる。
【0048】
一方、ステップS2において、入力信号記憶部21に周期数閾値より多くの入力信号が蓄積されていると判断された場合、自己相関値算出部22aが、上記(1)式等に基づき自己相関値を算出する(ステップS3)。そして、相関値分析部22bが自己相関値の分析を行い、自己相関閾値より大きな自己相関値があるか否かを判断する(ステップS4)。このステップS4において、自己相関閾値より大きな自己相関値がないと判断された場合、サイレン音判定部23はステップS6、S7の処理を行い、雑音除去装置1は一旦サイレン音除去検出処理を終了する。一方、ステップS4において、自己相関閾値より大きな自己相関値があると判断された場合、相関値分析部22bが自己相関値のピークの位置と間隔の情報をサイレン音判定部23に出力し、サイレン音判定部23がサイレン音の有無を判定する。
【0049】
サイレン音判定部23は、ステップS4に続くステップS5として、等間隔の位置に自己相関閾値以上の自己相関値(自己相関値のピーク)があるか否かを判定する。ステップS5において、自己相関値のピークが等間隔の位置にないと判定された場合、サイレン音判定部23はステップS6、S7の処理を行い、雑音除去装置1は一旦サイレン音除去処理を終了する。一方、ステップS5において、自己相関値のピークが等間隔の位置にあると判定された場合、サイレン音判定部23は、入力信号にサイレン音が含まれているとしてサイレン音モード信号をサイレン音ロックモードとする(ステップS8)。なお、
図5では、サイレン音検出処理として簡易的な処理を行った場合を示したが、上述したように自己相関値のピークの大きさ、間隔等に基づき、さらに厳密な判定処理を行うこともできる。
【0050】
続いて、雑音除去装置1は、変換分離部30において、入力信号に基づき生成した入力周波数情報の分析を行いサイレン音が分布するサイレン音帯域の判定を行う(ステップS9)。そして、変換分離部30は、ステップS9の結果に基づき入力周波数情報を抑圧対象帯域情報(例えば、サイレン音帯域信号)と、目的音帯域情報(例えば、非サイレン音帯域信号)とを生成する(ステップS10)。
【0051】
そして、雑音抑圧部40は、目的音帯域情報に対して周波数逆変換処理を施して目的音信号を生成する(ステップS11)。また、雑音抑圧部40では、抑圧対象帯域情報に対して周波数逆変換処理を施して抑圧対象信号を生成する(ステップS12)。そして、このステップS12に続いて、雑音抑圧部40は、抑圧対象信号を雑音履歴情報としてサイレン音情報記憶部44に記憶する(ステップS13)。その後、雑音抑圧部40は、サイレン音情報記憶部44に記憶されている雑音履歴情報により参照信号を更新する(ステップS14)。そして、雑音抑圧部40は、雑音フィルタ46により抑圧対象信号の信号レベルを低減するフィルタ処理を行い、抑圧信号と抑圧対象信号との差を示す残差信号を出力する(ステップS15)。雑音抑圧部40は、ステップS11で生成した目的音信号と、ステップS15で生成した残差信号とを合成して出力信号Soを出力する(ステップS16)。
【0052】
上記説明より、実施の形態1にかかる雑音除去装置1では、現入力信号の前に入力された前入力信号のうち音声信号成分をあまり含まない抑圧対象信号から抑圧信号の生成に用いられる参照信号を生成する。そのため、実施の形態1にかかる雑音除去装置1では、予め参照信号のための情報を保持する必要がなく、かつ、入力信号に混入する周期性雑音の周期性に依存することなく、周期性雑音の特性に応じた精度の高いサイレン音除去処理を実施することができる。
【0053】
また、実施の形態1にかかる雑音除去装置1では、一定の周波数帯の信号を切り出した目的音信号と雑音フィルタ46でサイレン音成分が抑圧された残差信号とを合成して出力信号を出力する。これにより、実施の形態1にかかる雑音除去装置1では、抑圧処理に起因した音声信号の劣化を防止することができる。より具体的には、サイレン音を主成分とする抑圧対象信号に含まれる目的音信号の一部が残差信号として出力され、加算器47で残差信号と目的音信号とを加算することで、雑音除去装置1では、本来の周波数帯域を満足する信号へと戻すことができる。また、雑音除去装置1は、サイレン音抑制処理の影響を受けない非サイレン音帯域の存在により、特に音声信号のような明瞭性が必要となる信号において保全が図られる。
【0054】
また、形態1にかかる雑音除去装置1では、現入力信号と過去に入力された前入力信号の履歴情報とに基づき現入力信号と前入力信号との自己相関値を生成し、当該自己相関値のピークの周期性に着目してサイレン音の検出を行う。これにより、実施の形態1にかかる雑音除去装置1は、高い検出精度でサイレン音を検出することができる。この効果を
図6及び
図7に示した入力信号の周波数の時間変化及び信号レベルの周波数変化を示すグラフを参照して説明する。
【0055】
図6に示す例は、周波数の時間変化が比較的緩やかな入力信号の例を示したものである。
図7に示す例は、周波数の時間変化が比較的急な入力信号の例を示したものである。
図6を参照すると、周波数の時間変化が比較的緩やかである場合、信号レベルの周波数依存性が高く、入力信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換することで、信号レベルに基づく周期性雑音の有無の判断が比較的容易である。一方、
図7を参照すると、周波数の時間変化が比較的急である場合、信号レベルの周波数依存性が低く、入力信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換しても、信号レベルに基づく周期性雑音の有無の判断が難しい。しかしながら、時間領域信号による自己相関値は、前に入力された前入力信号と現入力信号との相関値を周期性雑音の有無の判断に利用しているため、前述の問題は生じない。
【0056】
また、従来は、移動体通信におけるコミュニケーションの際に、背景雑音や、時間と共に周波数特性やパワーが変動する高速変化型のサイレン音などの雑音が、音声に悪影響を与えて非常に聞き難い音声となっていた。従来のスペクトルサブトラクション法、周波数領域での雑音・除去方法、SPAC方式では、周波数分解能、処理遅延、信号の不連続性などの問題から性能の改善に限界があった。しかしながら、実施の形態1にかかる雑音除去装置1では、自己相関結果のピーク位置、ピーク区間から高速変化型(周波数変化の周期が短い)のサイレン音の有無を正確に判定することができる。また、検出したサイレン音の周期、音声区間判定の情報から一周期分のサイレン音で適切に管理することができる。
【0057】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる雑音除去装置1の変形例となる雑音除去装置2について説明する。そこで、実施の形態2にかかる雑音除去装置2のブロック図を
図8に示す。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1で説明した構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、実施の形態2にかかる雑音除去装置2は、実施の形態1の雑音抑圧部40の雑音フィルタ46を雑音フィルタ48に置き換え、さらに。音声区間判定部49を追加したものである。雑音フィルタ48は、雑音フィルタ46に適応フィルタ制御部46cを追加したものである。
【0059】
音声区間判定部49は、非サイレン音帯域周波数逆変換部42が出力する目的音信号にに含まれている音声信号成分が音声閾値レベルよりも大きかった場合に音声区間信号をイネーブル状態とする。つまり、音声区間判定部49は、入力信号に含まれている信号成分を分析して、入力信号に音声信号成分が含まれているかを判定する。実施の形態2では、目的音信号にはノイズ成分となるサイレン音の成分が含まれていないため、音声区間であるか否かの判定精度の向上が期待できる。この分析方法としては、例えば、発明者らがすでに出願している特開2012−128411号公報に記載されている入力信号のスペクトル成分に基づく音声信号成分の判定方法等を利用することができる。
【0060】
適応フィルタ制御部46cは、音声区間信号がイネーブル状態となったことに応じて適応フィルタ部46aの収束速度を遅くするフィルタ制御信号を出力する。このフィルタ制御信号は、例えば、
図4に示した適応係数更新部51に入力する。適応フィルタ部46aは、制御信号により収束速度を遅くすることを指示された場合、加算器46bが出力する残差信号の反映量を小さくするようにフィルタ係数を切り替える。
【0061】
ここで、実施の形態2にかかる雑音除去装置2で解決される問題について説明する。雑音除去装置2では、音声の周波数成分とサイレン音の周波数成分が重なる部分において、音声信号の影響により、抑圧対象となるサイレン音を擬似的に生成する適応フィルタの動作が音声信号成分も含めて現在の信号を近似するような動作となる。この結果、適応フィルタ部46aが出力する抑圧信号は、サイレン音のみに基づき生成される抑圧信号と比較してサイレン音の抑圧効果が低下する。また、適応フィルタ部46aが出力する抑圧信号に音声成分が混じることでエコーやリバーブといった音響効果に似た現象が加味され、最終出力信号における音声の明瞭性も低下する恐れがある。実施の形態2にかかる雑音除去装置2では、前述のように音声の主要成分が帯域分割されサイレン音抑制処理経路とは分離されるため、音声信号の保全は図られるが、サイレン音と重なる帯域に音声信号成分が多分に含まれる場合は、劣化の危険性が残ることになる。
【0062】
上記の課題は適応フィルタ部46aの動作過程において、残差として現れる音声信号も含めて適応し、残差成分を最小化すべくフィルタ係数を調整する働きにある。これを回避するために実施の形態2では、適応フィルタ制御部46cと音声区間判定部49とを用いて音声信号区間では適応フィルタ部46aの収束速度を緩和する。
【0063】
より具体的には、実施の形態2では、適応フィルタ制御部46cが、音声区間信号に従い、抑圧対象信号に対し高速に適応するか低速に適応するかを示す加速係数の係数値を制御する。入力された抑圧対象信号が主にサイレン音の成分によって成り立っているのであれば、現抑圧対象信号の抑制効果を高めるため、加速係数を大きく取る。一方、抑圧対象信号にサイレン音以外の成分、特に音声成分が混入した場合は、加速係数を小さくすることで、現抑圧対象信号に対する適応を緩和し音声に対するフィルタ処理の影響を避ける動作を促す。
【0064】
ここで、実施の形態2にかかる雑音除去装置2の動作をフローチャートを用いて説明する。
図9に実施の形態2にかかる雑音除去装置2の動作のフローチャートを示す。
図9に示すように、実施の形態2にかかる雑音除去装置2では、実施の形態1の雑音除去装置1のステップS11とステップS16との間にステップS21とステップS22の処理が追加される。
【0065】
ステップS21では、音声区間判定部49による音声区間の判定が行われる。この音声区間の判定では、目的音信号に音声信号成分が含まれているか否かが判定される。このステップS21で目的音信号に音声信号成分が含まれていなければ、ステップS22の処理は行われない。ステップS22では、適応フィルタ制御部46cによって適応フィルタ部46aの制御パラメータの設定が行われる。より具体的には、ステップS22では、適応フィルタ制御部46cによって適応フィルタ部46aの収束速度を緩和するための制御パラメータの変更が行われる。
【0066】
上記説明より、実施の形態2にかかる雑音除去装置2では、サイレン音を含まない目的音信号を用いた音声区間の判定処理に基づき、適応フィルタ部46aの誤動作を防止することで、更なる音声信号の明瞭化を実現できる。
【0067】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる雑音除去装置1の変形例となる雑音除去装置3について説明する。そこで、実施の形態3にかかる雑音除去装置3のブロック図を
図10に示す。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1で説明した構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、実施の形態3にかかる雑音除去装置3は、実施の形態1の雑音除去装置1に、入力信号遅延部61及び出力信号切替部62を追加したものである。入力信号遅延部61は、入力信号を、入力信号が出力信号Soとして出力されるまでの時間に相当する時間遅延させる。出力信号切替部62は、サイレン音モード信号がサイレン音ロックモードである場合に雑音抑圧部40の出力信号を選択して出力し、サイレン音モード信号がサイレン音アンロックモードである場合に入力信号遅延部61が出力する入力信号を選択して出力する。
【0069】
続いて、実施の形態3にかかる雑音除去装置3の動作について説明する。そこで、実施の形態3にかかる雑音除去装置3の動作のフローチャートを
図11に示す。
図11に示すように、実施の形態3にかかる雑音除去装置3では、実施の形態1にかかる雑音除去装置1で行われたステップS7の出力信号の生成処理に代えて、ステップS31を行い、さらに、ステップS31の後、若しくは、ステップS16の信号合成処理の後にステップS32の処理を行う。
【0070】
ステップS31は、入力信号遅延部61による入力信号の遅延処理である。ステップS32は、サイレン音モード信号がサイレン音ロックモードである場合に雑音抑圧部40の出力信号を選択して出力し、サイレン音モード信号がサイレン音アンロックモードである場合に入力信号遅延部61が出力する入力信号を選択して出力する、出力信号切替処理である。
【0071】
実施の形態1にかかる雑音除去装置1及び実施の形態2にかかる雑音除去装置2では、入力信号にサイレン音が含まれない状況下でも、適応フィルタや周波数変換部などの動作を継続する。しかし、入力信号にサイレン音が混入しない時間帯においては、特にサイレン音の抑制処理を行う必要がなくサイレン音の存在の有無に応じて全体の処理を軽量化することが望まれる。
【0072】
そこで、実施の形態3では、サイレン音の有無を判定するサイレン音判定部23の判定結果に応じて、サイレン音除去処理の実施を制御する。
図10では簡略化のため、最終的な出力信号を切り替える動作を示しているが、サイレン音判定部23に必要な音声入力部10、アナログデジタル変換器11、フレーム構成部12及び雑音検出部20以外のブロックをサイレン音判定結果に応じ一時的に停止させても良い。
【0073】
サイレン音除去処理後の出力信号と、入力信号に含まれる音声信号との間にはサイレン音除去処理の過程で生じる一定の信号処理遅延が存在する。実施の形態3にかかる雑音除去装置3では、入力信号遅延部61を用いることで、入力信号遅延部61が出力する入力信号と雑音抑圧部40の出力信号であるサイレン音除去処理後の出力信号との間に時間的な同期が取られている。そのため、実施の形態3にかかる雑音除去装置3では、サイレン音の検出結果に応じ出力経路を切り替えるのみの処理で途切れのない出力信号を出力できる。
【0074】
上記説明より、実施の形態3にかかる雑音除去装置3では、サイレン音が入力信号に含まれていない場合、サイレン音除去処理の一部機能を停止することが可能であり、全体的な負荷の軽減が実現できる。
【0075】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。