(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0024】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた単層型の感光層であって、結着樹脂(a)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種の電荷発生材料(b)、一般式(1)で表される正孔輸送材料(c)、一般式(2)で表される電子輸送材料(d)、及び、感光層全体の質量に対する含有量が2質量%以上4質量%以下である一般式(3)で表される酸化防止剤(e)を含む感光層と、を備える電子写真感光体である。
つまり、本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体上に上記の(a)〜(e)成分を含む単層型の感光層と、を有する正帯電有機感光体(以下、「単層型感光体」と称することがある)である。
なお、単層型の感光層とは、電荷発生能と共に、正孔輸送性及び電子輸送性を持つ感光層である。
【0025】
画像形成装置における帯電手段は、電子写真感光体に直接接触して帯電させる接触帯電方式の帯電手段と、電子写真感光体とは接触せずに電子写真感光体近傍でコロナ放電などにより帯電させる非接触帯電方式の帯電手段と、の2種類に大別される。
非接触帯電方式の帯電手段では、放電によって副次的に、オゾンや窒素酸化物などの物質が生成されることがあるため、このような点からは、接触帯電方式の帯電手段を用いることが望ましい。
なお、接触帯電方式の中でも、直流電圧のみを利用して電子写真感光体を帯電する、所謂DC帯電方式と、直流電圧に更に交流電圧を重畳させて電子写真感光体を帯電させる、所謂AC/DC帯電方式の2種類がある。後者の場合、その強い帯電電界のために電子写真感光体へ与える負荷が大きく、電子写真感光体の感光層を磨耗させてしまう傾向があり、長期使用の点においては、DC帯電方式の方が有利であることが知られている。
また、DC帯電方式の方がより消費電力が小さくすむため、ランニングコストの観点からは、電子写真方式の画像形成装置にはDC帯電方式を用いることが望ましい。
【0026】
また、画像形成装置に用いる電子写真感光体としては、製造コスト、画質安定性の観点から、単層型の感光層を備えた感光体(単層型感光体)が望ましいことが知られている。
単層型感光体においては、その単層型の感光層内に、電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する構成のため、積層型の感光層を有する有機感光体ほどの感度が得られず、更なる高感度化が求められている。
そこで、高い電荷輸送性を持つ正孔輸送性物質及び電子輸送性物質を用いることで、単層型感光体の高感度化を実現させる方法が知られているものの、このような単層型感光体では、画像の点欠陥が発生する現象が生じてしまう。
特に、DC帯電方式の接触型帯電手段を採用した画像形成装置に、前記した単層型感光体を適用すると、帯電時に異常放電が起こり、画像の点欠陥が発生する頻度が高くなる。
これは、電荷発生材料の分散性が悪化し、電荷発生材料の凝集が発生し、感光層中の抵抗分布が不均一となっているところに、かかる感光層に接触している接触型帯電手段からの直流電流が局所的(電荷発生材料の凝集部分)に流れ、異常放電を引き起こすためと考えられる。
【0027】
これに対して、本実施形態に係る電子写真感光体では、上述したような、(a)〜(e)成分を単層型感光層に含ませることで、高感度を達成しつつも、画像の点欠陥が抑制される。
この理由は定かではないが、まず、上述した、特定の構造を持つ正孔輸送材料(c)及び電子輸送材料(d)が電荷輸送性に優れることで、高感度化を達成しうる。また、上述した、結着樹脂(a)、電荷発生材料(b)、正孔輸送材料(c)、及び電子輸送材料(d)に加え、酸化防止剤(e)を特定の含有割合で含むことで、電荷発生材料(b)とその他の成分との相互作用による分散性の低下が抑制され、また、かかる(a)〜(e)の各成分を含む塗布液中での電荷発生材料(b)と溶剤との濡れ性の均衡が保たれ(塗料液と電荷発生材料(b)との親和性が高まり)、該塗布液中で電荷発生材料(b)が分散し易くなる。その結果、得られた感光層中の抵抗分布が均一に近くなり、これに起因する帯電時の異常放電が抑制されたと考えられる。
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る電子写真感光体を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体10の一部の断面を概略的に示している。
図1に示した電子写真感光体10は、例えば、導電性基体4を備え、導電性基体4上に、下引層1、単層型の感光層2、及び保護層3がこの順で設けられて構成されている。
なお、下引層1、及び保護層3は、必要に応じて、設けられる層である。
【0029】
以下、電子写真感光体10の各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0030】
〔導電性基体〕
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が10
13Ωcm未満であることをいう。
【0031】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0032】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0033】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0034】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0035】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0036】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0037】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これを更にアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0038】
〔下引層〕
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0039】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10
2Ωcm以上10
11Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0040】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m
2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0041】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0042】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましい、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0044】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0047】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0048】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0049】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0050】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0051】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着せる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0052】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0053】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0054】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0055】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0056】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0057】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0058】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0059】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0061】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0062】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0063】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0064】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0065】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0066】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0067】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0068】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0069】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0070】
〔中間層〕
図示は省略するが、下引き層と感光層との間に中間層を更に設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0071】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0072】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0073】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0074】
〔単層型の感光層〕
単層型の感光層は、結着樹脂(a)、電荷発生材料(b)、正孔輸送材料(c)、電子輸送材料(d)、及び、酸化防止剤(e)に加え、必要に応じて、その他添加剤を含んで構成される。
【0075】
[結着樹脂(a)]
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
これらの結着樹脂の中でも、特に、感光層の成膜性の観点から、例えば、粘度平均分子量30000以上80000以下のポリカーボネート樹脂がよい。
【0076】
[電荷発生材料(b)]
電荷発生材料としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種が適用される。
電荷発生材料としては、これら顔料を単独で用いてもよいが、必要に応じて併用してもよい。そして、電荷発生材料としては、感光体の高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
【0077】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から望ましい。電子写真感光体の材料として用いた場合に、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とが得られ易くなる。
【0078】
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが望ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが望ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより望ましく、一方、BET比表面積が45m
2/g以上であることが望ましく、50m
2/g以上であることがより望ましく、55m
2/g以上120m
2/g以下であることが特に望ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ここで、平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積値が45m
2/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成される傾向があり、分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それにより画質欠陥を生じ易くなることがある。
【0079】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが望ましく、1.0μm以下であることがより望ましく、より望ましくは0.3μm以下である。かかる最大粒径が上記範囲を超えると、黒点が発生しやすい傾向にある。
【0080】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、感光体が蛍光灯などに暴露されたことに起因する濃度ムラを抑制する観点から、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m2/g以上であることが望ましい。
【0081】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜に回折ピークを有するV型であることが望ましい。
【0082】
一方、クロロガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、電子写真感光体材料として優れた感度が得られる、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを有するものであることが望ましい。
クロロガリウムフタロシアニン顔料の好適な分光吸収スペクトルの最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及び比表面積値は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と同様である。
【0083】
電荷発生材料の含有量は、例えば、結着樹脂に対して0.05質量%以上30質量%以下がよく、望ましくは1質量%以上15質量%以下、より望ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0084】
[正孔輸送材料(c)]
正孔輸送材料としては、下記一般式(1)で表される正孔輸送材料が適用される。
【化4】
【0085】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは。各々独立に、0又は1を示す。
【0086】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示す低級アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
これらの中でも、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基が望ましい。
【0087】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0088】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0089】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示すフェニル基としては、例えば、未置換のフェニル基;p−トリル基、2,4−ジメチルフェニル基等の低級アルキル基置換のフェニル基;、p−メトキシフェニル基等の低級アルコキシ基置換のフェニル基;、p−クロロフェニル基等のハロゲン原子置換のフェニル基等が挙げられる。
なお、フェニル基に置換し得る置換基としては、例えば、R
1〜R
6が示す低級アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0090】
一般式(1)で表される正孔輸送材料として、高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、m及びnが1を示す正孔輸送材料がよく、特に、R
1〜R
6が各々独立に、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基を示し、m及びnが1を示す正孔輸送材料が望ましい。
【0091】
以下、一般式(1)で表される正孔輸送材料の例示化合物(1−1)〜(1−64)を示すが、これらに限定されるわけではない。
【0096】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・4−Me:フェニル基の4−位に置換するメチル基
・3−Me:フェニル基の3−位に置換するメチル基
・4−Cl:フェニル基の4−位に置換する塩素原子
・4−MeO:フェニル基の4−位に置換するメトキシ基
・4−F:フェニル基の4−位に置換するフッ素原子
・4−Pr:フェニル基の4−位に置換するプロピル基
・4−PhO:フェニル基の4−位に置換するフェノキシ基
【0097】
正孔輸送材料の含有量は、例えば、結着樹脂に対して10質量%以上98質量%以下がよく、望ましくは60質量%以上95質量%以下、より望ましくは70質量%以上90質量%以下である。
【0098】
[電子輸送材料(d)]
電子輸送材料としては、下記一般式(2)で表される電子輸送材料が適用される。
【0100】
一般式(2)中、R
11、R
12.R
13.R
14、R
15、R
16、及びR
17は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又はアリール基を示す。R
18は、アラルキル基、又はアルキル基を示す。
【0101】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0102】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下(望ましくは1以上3以下)のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0103】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(望ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0104】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアラルキル基としては、−R
19−Ar
1で示される基が挙げられる。但し、R
19は、アルキレン基を示す、Ar
1は、アリール基を示す。 具体的には、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0105】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基が望ましい。
【0106】
一般式(2)中、R
18が示すアルキル基としては、例えば、炭素数5以上10以下の直鎖状のアルキル基、炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基が挙げられる。
炭素数5以上10以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、
イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
【0107】
一般式(2)中、R
18が示すアラルキル基としては、−R
20−Ar
2で示される基が挙げられる。但し、R
20は、アルキレン基を示す、Ar
2は、アリール基を示す。
R
20が示すアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上5以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基等が挙げられる。
Ar
2が示すアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0108】
一般式(2)中、R
18が示すアラルキル基として具体的には、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0109】
一般式(2)で表される電子輸送材料として、高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、特に、R
11〜R
17が、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を示し、R
18が炭素数5以上10以下の直鎖状のアルキル基を示す電子輸送材料が望ましい。
【0110】
以下、一般式(2)で表される電子輸送材料の例示化合物(2−1)〜(2−15)を示すがこれに限定されるわけではない。
【0112】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・Ph:フェニル基
【0113】
電子輸送材料の含有量は、例えば、結着樹脂に対して10質量%以上70質量%以下がよく、望ましくは15質量%以上50質量%以下、より望ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0114】
[その他電荷輸送材料]
上記特定の正孔輸送材料及び電子輸送材料以外にも、機能を損ねない範囲で、他の電荷輸送材料(他の正孔輸送材料、他の電子輸送材料)を併用してもよい。但し、他の電荷輸送材料は、正孔輸送材料及び電子輸送材料全体に対して40質量%以下で併用することがよい。
【0115】
他の電荷輸送材料としては、例えば、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの他の電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
他の電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(B−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(B−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0118】
構造式(B−1)中、R
B1は、水素原子又はメチル基を示す。n11は1又は2を示す。Ar
B1及びAr
B2は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C
6H
4−C(R
B3)=C(R
B4)(R
B5)、又は−C
6H
4−CH=CH−CH=C(R
B6)(R
B7)を示し、R
B3乃至R
B7はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。
【0120】
構造式(B−2)中、R
B8及びR
B8’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。R
B9、R
B9’、R
B10、及びR
B10’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R
B11)=C(R
B12)(R
B13)、又は−CH=CH−CH=C(R
B14)(R
B15)を示し、R
B11乃至R
B15は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m12、m13、n12及びn13は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
【0121】
ここで、構造式(B−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び構造式(B−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C
6H
4−CH=CH−CH=C(R
B6)(R
B7)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R
B14)(R
B15)」を有するベンジジン誘導体が望ましい。
【0122】
−正孔輸送材料と電子輸送材料との比率−
正孔輸送材料と電子輸送材料との比率は、質量比(正孔輸送材料/電子輸送材料)で、50/50以上90/10以下が望ましく、より望ましくは60/40以上80/20以下である。
なお、本比率は、他の電荷輸送材料を併用した場合、その合計での比率である。
【0123】
[酸化防止剤(e)]
酸化防止剤としては、下記一般式(3)で表される酸化防止剤が適用される。
【0125】
一般式(3)中、R
01、R
02、R
03、R
04、R
05、R
06、R
07、及びR
08は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を示す。
【0126】
一般式(3)中、R
01〜R
08が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上10以下(望ましくは1以上4以下)のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基等が挙げられる。
【0127】
一般式(3)中、R
01〜R
08が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上5以下(望ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0128】
一般式(3)中、R
01〜R
08が示すアリール基としては、例えば、炭素数6以上12以下(望ましくは6以上10以下)のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0129】
一般式(3)で表される酸化防止剤としては、画像の点欠陥の抑制の観点から、特に、R
01〜R
08が、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を示す酸化防止剤が望ましく、R
01、R
03、R
06、及びR
08のうち少なくとも2つがアルキル基で、残りが水素原子を示し、R
02、R
04、R
05、及びR
07が水素原子を示す酸化防止剤がより望ましい。
【0130】
以下、一般式(3)で表される酸化防止剤の例示化合物(3−1)〜(3−7)を示すがこれに限定されるわけではない。
【0132】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・Me:メチル基
・tert−Bu:tert−ブチル基
【0133】
酸化防止剤の含有量は、例えば、感光層全体の質量(固形分質量)に対して2質量%以上4質量%以下であり、望ましくは2.5質量%以上3.5質量%以下、より望ましくは2.8質量%以上3.2質量%以下である。
含有量が2質量%以上であることで、電荷発生材料の凝集が効果的に抑制され、画像の点欠陥が抑制される。また、含有量が4質量%以下であることで、感光体の感度特性の悪化が抑制される。
【0134】
[その他酸化防止剤]
前記一般式(3)で表される酸化防止剤以外にも、機能を損ねない範囲で、他の酸化防止剤を併用してもよい。但し、他の酸化防止剤は、酸化防止剤全体に対して30質量%以下で併用することがよい。
他の酸化防止剤としては、前記一般式(3)で表される酸化防止剤以外のフェノール系酸化防止剤や、感光層に含まれうる公知の酸化防止剤が挙げられる。
【0135】
[その他添加剤]
単層型の感光層には、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤を含んでいてもよい。また、単層型の感光層が表面層となる場合、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル等を含んでいてもよい。
【0136】
−単層型の感光層の形成−
単層型の感光層は、上記成分を溶剤に加えた感光層形成用塗布液を用いて形成される。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
【0137】
感光層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0138】
感光層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0139】
単層型の感光層の膜厚は、望ましくは5μm以上60μm以下、より望ましくは10μm以上50μm以下の範囲に設定される。
【0140】
〔保護層〕
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光体表面の機械的強度を高める目的で設けられる。
保護層としては、周知の保護層が適用されるが、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。
硬化膜(架橋膜)で構成された保護層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0141】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0142】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH
2、−SH、−COOH、−SiR
Q13−Qn(OR
Q2)
Qn[但し、R
Q1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R
Q2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。
Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0143】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0144】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0145】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0146】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0147】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0148】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0149】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0150】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0151】
<画像形成装置及びプロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体を備え、前記電子写真感光体の表面に接触し、直流電圧のみを利用して当該表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。
そして、電子写真感光体として、前述した本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0152】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体の加熱部材を備える装置;等の周知の画像形成装置が適用される。
【0153】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0154】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0155】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0156】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
図2は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、
図2に示すように、例えば、矢印Aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電させる帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、露光装置30により形成された静電潜像に現像剤に含まれるトナーを付着させて電子写真感光体10の表面にトナー像を形成する現像装置40(現像手段の一例)と、記録紙P(被転写媒体の一例)をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて記録紙Pに電子写真感光体10上のトナー像を転写させる転写装置50と、電子写真感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70(トナー除去手段の一例)とを備える。そして、トナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、トナー像を定着させる定着装置60が設けられている。
【0157】
以下、本実施形態に係る画像形成装置101における主な構成部材の詳細について説明する。
【0158】
〔帯電装置〕
帯電装置20としては、
図2には、導電性の帯電ロールを備えた接触型帯電器が記載されているが、これに限定されるものではなく、例えば、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器であってもよい。
本実施形態においては、帯電特性・汎用性の点から、接触型帯電手段として、帯電ロールを用いる構成が好ましい。
ここで、帯電ロールとしては、例えば、導電性支持体(シャフト)上に、導電性弾性層と、必要に応じて、表面層とが順次形成されたものである。
【0159】
帯電ロールの導電性支持体(シャフト)の材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、摺動性などの用途に応じ材質及び表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われていてもよい。
【0160】
帯電ロールの導電性弾性層は、例えば、弾性を有するゴム等の弾性材料、導電性弾性層の抵抗を調整するカーボンブラックやイオン導電材等の導電剤、必要に応じて軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ及び炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を加えてもよい。通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性支持体の周面に被覆することにより形成される。
抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、或いはイオン導電剤のような、電子及び/又はイオンを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いることができる。
また、導電性弾性層は発泡体であってもかまわない。
【0161】
また、帯電ロールの表面層は、トナー等の異物による汚染の防止のためなどに形成しているものである。
表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではな区、例えば、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0162】
また、表面層には、導電性弾性層に用いたものと同様の導電剤を含有させ、抵抗値を調整してもよい。
更に、表面層には、フッ素系或いはシリコーン系の樹脂、絶縁性の粒子等を添加してもよい。
【0163】
本実施形態では、接触型帯電器からなる帯電装置20は、電子写真感光体10に対し、直流電流を印加のみを印加し、電子写真感光体10の表面を帯電する。
【0164】
〔露光装置〕
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0165】
〔現像装置〕
現像装置40は、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置された現像ロール41が備えられた構成が挙げられる。現像装置40としては、2成分現像剤により現像する装置であれば、特に制限はなく、周知の構成が採用される。
【0166】
ここで、現像装置40に使用される現像剤は、トナーからなる一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤であってもよい。
【0167】
〔転写装置〕
転写装置50としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0168】
〔クリーニング装置〕
クリーニング装置70は、例えば、筐体71と、クリーニングブレード72と、クリーニングブレード72の電子写真感光体10回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシ73と、を含んで構成されている。また、クリーニングブラシ73には、例えば、固形状の潤滑剤74が接触して配置されている。
【0169】
以下、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印aで示される方向に沿って回転すると同時に、電子写真感光体10に接触した帯電装置20により、直流電圧のみを利用して電子写真感光体10の表面を正に帯電する。
【0170】
帯電装置20によって表面が正に帯電した電子写真感光体10は、露光装置30により露光され、表面に潜像が形成される。
【0171】
電子写真感光体10における潜像の形成された部分が現像装置40に近づくと、現像装置40(現像ロール41)により、潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0172】
トナー像が形成された電子写真感光体10が矢印aに方向に更に回転すると、転写装置50によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
【0173】
画像が形成された記録紙Pは、定着装置60でトナー像が定着される。
【0174】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、
図3に示すように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、及びクリーニング装置70を一体に収容させたプロセスカートリッジ101Aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ101Aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置101に脱着させるものである。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10を備えてえればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、転写装置50、及びクリーニング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
【0175】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体10の周囲であって、転写装置50よりも電子写真感光体10の回転方向下流側でクリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置20よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、電子写真感光体10の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
【0176】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、記録紙Pに転写する中間転写方式の画像形成装置を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【0177】
前述したように、本実施形態に係る画像形成装置は、帯電手段として、接触型帯電手段を採用しているが、本実施形態に係る電子写真感光体はこのような画像形成装置への適用のみならず、非接触型帯電手段を備えた画像形成装置に対しても適用しうる。また、帯電の際に、電子写真感光体に印加される電圧は、直流電圧のみではなく、直流電圧に更に交流電圧を重畳させたものであってもよい。
【実施例】
【0178】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下に示す「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0179】
〔実施例1〕
<感光体1の作製>
電荷発生材料としてCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料:1.5質量部と、結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万):46.5質量部と、表1に示す電子輸送材料:15質量部と、表1に示す正孔輸送材料:37質量部と、表1に示す酸化防止剤:3.0質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン250質量部と、からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルにて4時間分散し、感光層形成用塗布液を得た。
この感光層形成用塗布液を浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mmのアルミニウム基材上に塗布し、140℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
以上の工程を経て、実施例1における電子写真感光体(感光体1)を作製した。
【0180】
〔実施例2〜13、比較例1〜12〕
<感光体2〜13、及び、比較感光体1〜12の作製>
表1、表2に従って、酸化防止剤、電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及び結着樹脂について、種類及び量を適宜変更した以外は、感光体1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
得られた感光体2〜13、及び、比較感光体1〜12を、それぞれ、実施例及び比較例における電子写真感光体とした。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
<評価>
前述のようにして得られた電子写真感光体について、以下の評価を行った。その結果を表1〜表2にまとめて示す。
【0184】
−電荷発生材料の分散性−
電荷発生材料の分散性について、以下の粗大粒子係数をもって評価した。
本実施形態における「粗大粒子係数」は、1000nmにおける吸光度の感光層膜厚1μm当たりの変化量を示すものであって、感光層中の粗大粒子の存在量の指標となるものである。
粗大粒子係数の値が大きいと電荷発生材料の分散性が悪く、特に、粗大粒子係数が0.025以上であると、直流電圧のみを利用して帯電を行う接触型帯電手段を採用した画像形成装置に適用した際、かかる帯電手段による帯電時に画像に点欠陥が生じ易い。
【0185】
ここで、以下に、粗大粒子係数の算出方法について詳細に説明する。
まず、感光体を作製する際に用いる感光層形成用塗布液と同様のサンプル用塗布液を準備し、これをガラスプレート上に塗布し、感光層の形成の際の同条件で乾燥硬化し、ある厚さ(L1(μm))の膜を作製した。また、同様にして、L1とはそれぞれ異なる厚さ(L2(μm)、L3(μm))の膜をガラスプレート上に作製した。
このようにして得られた3枚のサンプルについて、1000nmにおける吸光度を測定し、その値を、膜厚L1のサンプルの場合「A1」、膜厚L2のサンプルの場合「A2」、膜厚L3のサンプルの場合「A3」とした。
そして、膜厚を横軸、吸光度を縦軸としたときのプロットから接線の傾きをより算出し、これを粗大粒子係数とした。
なお、ガラスプレート上に成膜される膜厚は5μm以上15μm以下の範囲とした。
また、吸光度は、日立社製、紫外可視分光光度計U2000を用いて測定した。
【0186】
なお、電子写真感光体の感光層から「粗大粒子係数」を求める方法もある。
この方法としては、導電性基体上から感光層を剥離しフィルム状にしてから、上記の方法で「粗大粒子係数」を求める方法、感光層を良溶媒に溶解し、かかる溶液を用いてガラスプレート上へ成膜し、上記の方法で「粗大粒子係数」を求める方法がある。
【0187】
−感光体の感度の評価−
感光体の感度の評価は、+800Vに帯電させた時の半減露光量として、評価した。
具体的には、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−8100、川口電気社製)を用いて、20℃、40%RHの環境下、+800に帯電させた後、タングステンランプの光を、モノクロメーターを用いて800nmの単色光にし、感光体表面上で1μW/cm
2になるように調整して、照射した。
そして、帯電直後における感光体表面の表面電位V
0(V)、感光体表面の光照射により表面電位が1/2×V
O(V)となる半減露光量E1/2(μJ/cm
2)を測定した。
なお、感光体の感度は、0.2μJ/cm
2以下の半減露光量が得られたとき、高感度化されたと評価する。
【0188】
−画質評価−
画質評価は、Brother社製HL2270DWに対して、前述のようにして得られた電子写真感光体と、直流電圧のみを利用して帯電を行う接触型帯電手段(帯電ロールを備えたもの)と、を取り付けた改造機を用いて行った。
この改造機を用い、帯電の際に600Vの直流電圧を用い、50%ハーフトーン画像を印刷し、画像の点欠陥を表3に示した基準で評価した。評価方法の詳細としては、得られた画像の点欠陥を3つの大きさに分類し、各々の大きさの点欠陥の個数が基準に対して最も悪くなる評価を与えることとした。
評価基準は下記表3の通りである。なお、評価基準「5」以下であると実用上問題を生ずることがあると評価する。
【0189】
【表3】
【0190】
表1〜表2によれば、本実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べ、電荷発生材料の分散性に優れ、また、感光体の感度、点欠陥の評価についても、共に良好な結果が得られることがわかる。
【0191】
以下、表1〜表2中の略称の詳細について示す。
−酸化防止剤−
・(3−1)〜(3−4): 一般式(3)で表される酸化防止剤の例示化合物
・(4−1)、(4−3): 下記構造の酸化防止剤(比較化合物)
・(5−1)、(5−3): 下記構造の酸化防止剤(比較化合物)
【0192】
【化15】
【0193】
−電子輸送材料−
・(2−1)、(2−12)、(2−14)、(2−15): 一般式(2)で表される電子輸送材料の例示化合物
・化合物A: 下記構造の電子輸送材料
・化合物B: 下記構造の電子輸送材料
・化合物C: 下記構造の電子輸送材料
【0194】
【化16】
【0195】
−正孔輸送材料−
・(1−1): 一般式(1)で表される正孔輸送材料の例示化合物
・m−TBD: N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン(正孔輸送材料)
【0196】
−結着樹脂(バインダー樹脂)−
・PCZ:ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)
【0197】
−電荷発生材料−
・HOGaPC: Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=820nm、平均粒径=0.12μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=60m
2/g)
・ClGaPC: Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=780nm、平均粒径=0.15μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=56m
2/g)
・TiOPC(II型): チタニルフタロシアニン顔料
・H
2PC(x型): 無金属フタロシアニン顔料(フタロシアニン骨格の中心に2個の水素原子が配位したフタロシアニン)