【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法は、次のような構成を有している。
(1)先端部に吐出口を形成したシーラーノズルを有するシーラーガンと、ワーク上に照射する光線を発生する光源装置と、当該光源装置により前記ワーク上に照射された光線画像を撮像する撮像カメラと、前記シーラーガンと前記光源装置と前記撮像カメラとを装着できる塗布ロボットとを備え、ワークに形成したヘミング加工の重ね合わせ部に、前記吐出口からシーラーを塗布する車両のシーラー塗布装置であって、
前記撮像カメラは、ワーク面に対して垂直方向から撮像し、前記光源装置は、前記撮像カメラの撮像方向に対して、傾斜方向から前記光線を前記ワーク上に照射すること、
前記吐出口は、前記シーラーの吐出方向が前記撮像方向と同一方向又は反対方向に形成されたこと、
前記撮像カメラが撮像する前記光線画像の基準位置から前記ワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、前記重ね合わせ部に対する前記吐出口の垂直方向の距離を算定する演算装置を備えることを特徴とする。ここで、光源装置は、光線を照射できる光源であれば特に限定する必要はないが、光直進性の優れたレーザー光照射装置が好ましい。光線は、撮像カメラが撮像できる光線であれば、可視光線でも、非可視光線でもよい。また、光線は、スポット状の光線でも、スリット状の光線でも良い。
【0008】
本発明においては、撮像カメラは、ワーク面に対して垂直方向から撮像し、光源装置は、撮像カメラの撮像方向に対して、傾斜方向から光線をワーク上に照射するので、塗布ロボットを操作して、ワーク面に対して垂直方向へ撮像カメラを移動させると、当該撮像カメラの移動量に比例して撮像した光線画像の位置がワーク面に対して平行な方向へ移動する。
また、吐出口は、シーラーの吐出方向が撮像方向と同一方向に形成されたので、ワーク面に対して垂直方向へ移動する撮像カメラの移動量は、シーラーを塗布する重ね合わせ部に対して吐出口が垂直方向へ移動する移動量に相当する。
また、撮像カメラが撮像する光線画像の基準位置からワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離を算定する演算装置を備えるので、演算装置が算定した上記距離をシーラー塗布の最適値(所定値)に合致させるように塗布ロボットをティーチングすることができる。なお、シーラー塗布の最適値(所定値)は、ティーチングする前にシーラー塗布テストを行い、そのテスト結果から設定する。
よって、本発明によれば、ワークに対するシーラーノズルの位置を数量的に算定して塗布ロボットを精度よくティーチングできる車両のシーラー塗布装置を提供することができる。
【0009】
なお、本シーラー塗布装置は、シーラーガンを塗布ロボットから取り外した状態でティーチングすれば、シーラーノズルをワークに干渉させる心配がなく、迅速なティーチングが可能となるが、必ずしもシーラーガンを塗布ロボットから取り外す必要はない。
また、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記距離(例えば、吐出口と重ね合わせ部との隙間)を表示する表示装置を設けて、上記距離を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0010】
(2)(1)に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記光源装置は、前記ワーク上にそれぞれ傾斜角を有して照射する2つのスリット光線を発生し、両スリット光線が前記撮像カメラの撮像範囲内で交叉することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、光源装置は、ワーク上にそれぞれ傾斜角を有して照射する2つのスリット光線を発生し、両スリット光線が撮像カメラの撮像範囲内で交叉するので、演算装置は、撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉位置の基準位置からワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離を算定することができる。この場合、演算装置は、撮像カメラが撮像する光線画像をスリット光線画像の交叉位置で点画像として特定することができるので、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離を、より一層精度よく算定することができる。
また、撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉位置は、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離が所定値に対して長い場合と短い場合とで、基準位置に対してそれぞれ反対向きへ離間する。そのため、撮像カメラが撮像したスリット光線画像の交叉位置が、基準位置に対して、どちらへ離間しているかを判断することによって、塗布ロボットのティーチングを迅速に行うことができる。
よって、本発明によれば、ワークに対するシーラーノズルの位置を数量的に算定して塗布ロボットをより一層精度よく、迅速にティーチングできる車両のシーラー塗布装置を提供することができる。
【0012】
なお、この場合においても、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記距離(例えば、吐出口と重ね合わせ部との隙間)を表示する表示装置を設けて、上記距離を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0013】
(3)(2)に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置は、前記撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉角に基づいて、前記重ね合わせ部に対する前記吐出口の吐出角を算定することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、演算装置は、撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉角に基づいて、重ね合わせ部に対する吐出口の吐出角を算定するので、重ね合わせ部に対する吐出口の吐出角を適正範囲に保持しながら、塗布ロボットをより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーがワークからはみ出すようなシーラー塗布不良等を未然に防止することができる。
【0015】
なお、この場合においても、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記吐出角を表示する表示装置を設けて、上記吐出角を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0016】
(4)(2)又は(3)に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置は、前記撮像カメラが撮像した前記ワークの外縁からスリット光線画像の交叉位置までの距離に基づいて、前記シーラーノズルと前記ワークの外縁との隙間を算定することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、演算装置は、撮像カメラが撮像したワークの外縁からスリット光線画像の交叉位置までの距離に基づいて、シーラーノズルとワークの外縁との隙間を算定するので、シーラーノズルとワークの外縁との隙間を適正範囲に保持しながら、塗布ロボットをより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーノズルがワークと干渉して変形や損傷等することを未然に防止することができる。
【0018】
なお、この場合においても、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記隙間を表示する表示装置を設けて、上記隙間を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記隙間がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0019】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記シーラーノズルの先端部は、略L字状又は略J字状に形成され、前記吐出口は、前記シーラーガンに対峙する方向に向けて開口されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、シーラーノズルの先端部は、略L字状又は略J字状に形成され、吐出口は、シーラーガンに対峙する方向に向けて開口されているので、シーラーノズルの吐出口とシーラーガンとをワークを挟んで対向する位置に配置しながら、シーラー塗布することができる。そのため、本発明に係る車両のシーラー塗布装置は、ワークを車両のボディーに取り付けた状態で、ワークに対して車両外方にシーラーガンを配置し、車両内方からシーラー塗布することができ、例えば、電着塗装後で中塗り前の工程にて、シーラー塗布することができる。
よって、本発明によれば、電着塗装の直前に行われるシャワー洗浄に先立ち、シーラーを加熱によって予備硬化(プレキュア)する必要がなく、予備硬化(プレキュア)に対応する高価なシーラー(プレキュアシーラー)を用いず、安価なシーラーを用いることができる。また、予備硬化のための加熱設備や、加熱エネルギーを省略でき、シーラーコストの大幅な低減が可能となる。
【0021】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置の算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示するモニター装置を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、演算装置の算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示するモニター装置を備えるので、作業者は、モニター装置に表示される算定値と、各種算定値毎の判定結果とを洩れなく確認することができる。そのため、作業者は、塗布ロボットのティーチングミスを未然に防止することができる。また、モニター装置は、全体の総合判定結果を表示するので、先ず全体の総合判定結果を優先して確認することによって、迅速なティーチングが可能となる。
【0023】
(7)(6)に記載された車両のシーラー塗布装置のティーチング方法であって、
前記演算装置の算定値に対する良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する第1工程と、
前記塗布ロボットを操作して、前記シーラーノズルの位置をティーチングポイント近傍に移動する第2工程と、
前記モニター装置に表示される前記各種算定値と判定結果とを確認しながら前記シーラーノズルの位置を調整する第3工程と、
前記モニター装置に表示される前記総合判定結果が良好となった前記シーラーノズルの位置で、ティーチングデータを登録する第4工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、演算装置の算定値に対する良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する第1工程を備えるので、シーラーノズルの位置が、シーラー塗布の良品条件を構成する範囲内か否かを数量的に明確にすることができる。
また、塗布ロボットを操作して、シーラーノズルの位置をティーチングポイント近傍に移動する第2工程と、モニター装置に表示される各種算定値と判定結果とを確認しながらシーラーノズルの位置を調整する第3工程とを備えるので、作業者から見えない位置であっても、ヘミング加工の重ね合わせ部にシーラー塗布するシーラーノズルの位置を、モニター装置に表示される各種算定値と判定結果とに基づいて調整することができる。
また、モニター装置に表示される総合判定結果が良好となったシーラーノズルの位置で、ティーチングデータを登録する第4工程を備えるので、塗布ロボットのティーチングミスを未然に防止すると同時に、精度の良いティーチングが可能となる。
また、第4工程にて、ティーチングデータが登録されるので、ワークの形状変更に伴うティーチング修正の際、登録したティーチングデータを利用することによって、初めから塗布結果を確認して不良部位を位置補正することなど面倒なティーチング操作を回避することができる。
よって、本発明によれば、作業者の熟練を要することなく、塗布ロボットを迅速かつ精度よくティーチングすることができる。