特許第6137034号(P6137034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6137034車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137034
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20170522BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20170522BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20170522BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20170522BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20170522BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B05C11/00
   B62D65/00 C
   G01B11/00 H
   B05C5/00 101
   B25J9/22 A
   B60J5/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-88061(P2014-88061)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-205251(P2015-205251A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 大祐
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 実公平04−018789(JP,Y2)
【文献】 特開平05−108125(JP,A)
【文献】 特開平01−184066(JP,A)
【文献】 特開平06−109442(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0091657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00〜B05C21/00
B05D1/00〜B05D7/26
B25J9/00〜B25J9/22
B60J5/00〜B60J5/14
B62D65/00〜B62D65/18
G01B11/00〜G01B11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に吐出口を形成したシーラーノズルを有するシーラーガンと、ワーク上に照射する光線を発生する光源装置と、当該光源装置により前記ワーク上に照射された光線画像を撮像する撮像カメラと、前記シーラーガンと前記光源装置と前記撮像カメラとを装着できる塗布ロボットとを備え、ワークに形成したヘミング加工の重ね合わせ部に、前記吐出口からシーラーを塗布する車両のシーラー塗布装置であって、
前記撮像カメラは、ワーク面に対して垂直方向から撮像し、前記光源装置は、前記撮像カメラの撮像方向に対して、傾斜方向から前記光線を前記ワーク上に照射すること、
前記吐出口は、前記シーラーの吐出方向が前記撮像方向と同一方向又は反対方向に形成されたこと、
前記撮像カメラが撮像する前記光線画像の基準位置から前記ワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、前記重ね合わせ部に対する前記吐出口の垂直方向の距離を算定する演算装置を備えることを特徴とする車両のシーラー塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記光源装置は、前記ワーク上にそれぞれ傾斜角を有して照射する2つのスリット光線を発生し、両スリット光線が前記撮像カメラの撮像範囲内で交叉することを特徴とする車両のシーラー塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置は、前記撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉角に基づいて、前記重ね合わせ部に対する前記吐出口の吐出角を算定することを特徴とする車両のシーラー塗布装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置は、前記撮像カメラが撮像した前記ワークの外縁からスリット光線画像の交叉位置までの距離に基づいて、前記シーラーノズルと前記ワークの外縁との隙間を算定することを特徴とする車両のシーラー塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記シーラーノズルの先端部は、略L字状又は略J字状に形成され、前記吐出口は、前記シーラーガンに対峙する方向に向けて開口されていることを特徴とする車両のシーラー塗布装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置の算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示するモニター装置を備えることを特徴とする車両のシーラー塗布装置。
【請求項7】
請求項6に記載された車両のシーラー塗布装置のティーチング方法であって、
前記演算装置の算定値に対する良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する第1工程と、
前記塗布ロボットを操作して、前記シーラーノズルの位置をティーチングポイント近傍に移動する第2工程と、
前記モニター装置に表示される前記各種算定値と判定結果とを確認しながら前記シーラーノズルの位置を調整する第3工程と、
前記モニター装置に表示される前記総合判定結果が良好となった前記シーラーノズルの位置で、ティーチングデータを登録する第4工程とを備えることを特徴とする車両のシーラー塗布装置のティーチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用ドアのヘミング加工による重ね合わせ部にシーラーを塗布する車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアの外縁は、アウターパネルの外縁とインナーパネルの外縁とを重ね合わせた上で、アウターパネルの外縁に立設する外周フランジ先端を、インナーパネルの外縁を挟んでアウターパネル裏面側に折り返して閉じるヘミング加工が行われている。図8に示すように、先端にシーラーノズル103を形成したシーラーガン101を、塗布ロボット102のアーム先端に取り付けたシーラー塗布装置100を備え、車両用ドア(ワークW)のヘミング加工された重ね合わせ部に、防水性や防錆性等を高めるべく、自動でシーラーを塗布している。そのため、シーラーを吐出するシーラーノズル103の位置を、ワークWのヘミング加工された重ね合わせ部に対応するように、塗布ロボット102に対して正確に教示(ティーチング)する必要がある。
【0003】
この塗布ロボットのティーチングに関連して、例えば、特許文献1には、塗装ノズルと被塗装面との間の距離を所定距離に調整する操作を容易にする塗装用ロボットのティーチング装置が開示されている。
上記ティーチング装置200は、図9に示すように、塗装ノズル201から被塗装面202への塗料塗布直線経路L0は、被塗装面202に対して直角に位置づけられるとともに、スリット光L11、L21を発生する2つの光源装置203、204が塗料塗布直線経路L0に対して光学的に対称に塗装ノズル201に装着され、且つ両光源装置203、204の光学的方向が所定角度θをもって構成されている。また、両光源装置203、204からのスリット光L11、L21は、被塗装面202において十字状に交叉する。また、テレビカメラ205が、塗料塗布直線経路L0上に配置され、テレビカメラ205の信号を受信回路206で受信し、モニターテレビ207に表示する。
上記ティーチング装置200によれば、スリット光L11、L21が被塗装面202において十字状に交叉することを、テレビカメラ205によって撮像し、モニターテレビ207で確認しながら、光源装置203、204を装着した塗装ノズル201を所定位置に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−18789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のティーチング装置200は、スリット光L11、L21が被塗装面202において十字状に交叉することを、モニターテレビ207で確認することはできても、その時における塗装ノズル201と被塗装面202との距離を算定することができない。
そのため、図10に示すように、光源装置203、204やテレビカメラ205(図9参照)を配置することが困難な位置にあるヘミング加工の重ね合わせ部W3にシーラー塗布する場合、塗布ロボット102を精度よくティーチングすることができないという問題があった。
また、特許文献1のティーチング装置200は、塗装ノズル201と被塗装面202との位置関係を数量的に記録できないので、被塗装面202の形状変更に対するティーチング修正の際、初めから塗布結果を確認して不良部位を補正することなど面倒なティーチング操作が必要となる問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ワークに対するシーラーノズルの位置を数量的に算定して塗布ロボットを精度よくティーチングできる車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法は、次のような構成を有している。
(1)先端部に吐出口を形成したシーラーノズルを有するシーラーガンと、ワーク上に照射する光線を発生する光源装置と、当該光源装置により前記ワーク上に照射された光線画像を撮像する撮像カメラと、前記シーラーガンと前記光源装置と前記撮像カメラとを装着できる塗布ロボットとを備え、ワークに形成したヘミング加工の重ね合わせ部に、前記吐出口からシーラーを塗布する車両のシーラー塗布装置であって、
前記撮像カメラは、ワーク面に対して垂直方向から撮像し、前記光源装置は、前記撮像カメラの撮像方向に対して、傾斜方向から前記光線を前記ワーク上に照射すること、
前記吐出口は、前記シーラーの吐出方向が前記撮像方向と同一方向又は反対方向に形成されたこと、
前記撮像カメラが撮像する前記光線画像の基準位置から前記ワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、前記重ね合わせ部に対する前記吐出口の垂直方向の距離を算定する演算装置を備えることを特徴とする。ここで、光源装置は、光線を照射できる光源であれば特に限定する必要はないが、光直進性の優れたレーザー光照射装置が好ましい。光線は、撮像カメラが撮像できる光線であれば、可視光線でも、非可視光線でもよい。また、光線は、スポット状の光線でも、スリット状の光線でも良い。
【0008】
本発明においては、撮像カメラは、ワーク面に対して垂直方向から撮像し、光源装置は、撮像カメラの撮像方向に対して、傾斜方向から光線をワーク上に照射するので、塗布ロボットを操作して、ワーク面に対して垂直方向へ撮像カメラを移動させると、当該撮像カメラの移動量に比例して撮像した光線画像の位置がワーク面に対して平行な方向へ移動する。
また、吐出口は、シーラーの吐出方向が撮像方向と同一方向に形成されたので、ワーク面に対して垂直方向へ移動する撮像カメラの移動量は、シーラーを塗布する重ね合わせ部に対して吐出口が垂直方向へ移動する移動量に相当する。
また、撮像カメラが撮像する光線画像の基準位置からワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離を算定する演算装置を備えるので、演算装置が算定した上記距離をシーラー塗布の最適値(所定値)に合致させるように塗布ロボットをティーチングすることができる。なお、シーラー塗布の最適値(所定値)は、ティーチングする前にシーラー塗布テストを行い、そのテスト結果から設定する。
よって、本発明によれば、ワークに対するシーラーノズルの位置を数量的に算定して塗布ロボットを精度よくティーチングできる車両のシーラー塗布装置を提供することができる。
【0009】
なお、本シーラー塗布装置は、シーラーガンを塗布ロボットから取り外した状態でティーチングすれば、シーラーノズルをワークに干渉させる心配がなく、迅速なティーチングが可能となるが、必ずしもシーラーガンを塗布ロボットから取り外す必要はない。
また、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記距離(例えば、吐出口と重ね合わせ部との隙間)を表示する表示装置を設けて、上記距離を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0010】
(2)(1)に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記光源装置は、前記ワーク上にそれぞれ傾斜角を有して照射する2つのスリット光線を発生し、両スリット光線が前記撮像カメラの撮像範囲内で交叉することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、光源装置は、ワーク上にそれぞれ傾斜角を有して照射する2つのスリット光線を発生し、両スリット光線が撮像カメラの撮像範囲内で交叉するので、演算装置は、撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉位置の基準位置からワーク面に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離を算定することができる。この場合、演算装置は、撮像カメラが撮像する光線画像をスリット光線画像の交叉位置で点画像として特定することができるので、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離を、より一層精度よく算定することができる。
また、撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉位置は、重ね合わせ部に対する吐出口の垂直方向の距離が所定値に対して長い場合と短い場合とで、基準位置に対してそれぞれ反対向きへ離間する。そのため、撮像カメラが撮像したスリット光線画像の交叉位置が、基準位置に対して、どちらへ離間しているかを判断することによって、塗布ロボットのティーチングを迅速に行うことができる。
よって、本発明によれば、ワークに対するシーラーノズルの位置を数量的に算定して塗布ロボットをより一層精度よく、迅速にティーチングできる車両のシーラー塗布装置を提供することができる。
【0012】
なお、この場合においても、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記距離(例えば、吐出口と重ね合わせ部との隙間)を表示する表示装置を設けて、上記距離を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0013】
(3)(2)に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置は、前記撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉角に基づいて、前記重ね合わせ部に対する前記吐出口の吐出角を算定することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、演算装置は、撮像カメラが撮像したスリット光線画像における交叉角に基づいて、重ね合わせ部に対する吐出口の吐出角を算定するので、重ね合わせ部に対する吐出口の吐出角を適正範囲に保持しながら、塗布ロボットをより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーがワークからはみ出すようなシーラー塗布不良等を未然に防止することができる。
【0015】
なお、この場合においても、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記吐出角を表示する表示装置を設けて、上記吐出角を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0016】
(4)(2)又は(3)に記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置は、前記撮像カメラが撮像した前記ワークの外縁からスリット光線画像の交叉位置までの距離に基づいて、前記シーラーノズルと前記ワークの外縁との隙間を算定することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、演算装置は、撮像カメラが撮像したワークの外縁からスリット光線画像の交叉位置までの距離に基づいて、シーラーノズルとワークの外縁との隙間を算定するので、シーラーノズルとワークの外縁との隙間を適正範囲に保持しながら、塗布ロボットをより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーノズルがワークと干渉して変形や損傷等することを未然に防止することができる。
【0018】
なお、この場合においても、本シーラー塗布装置には、演算装置が算定した上記隙間を表示する表示装置を設けて、上記隙間を作業者が確認しながら手動で塗布ロボットを位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置が算定した上記隙間がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボットが自動で位置補正しても良い。
【0019】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記シーラーノズルの先端部は、略L字状又は略J字状に形成され、前記吐出口は、前記シーラーガンに対峙する方向に向けて開口されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、シーラーノズルの先端部は、略L字状又は略J字状に形成され、吐出口は、シーラーガンに対峙する方向に向けて開口されているので、シーラーノズルの吐出口とシーラーガンとをワークを挟んで対向する位置に配置しながら、シーラー塗布することができる。そのため、本発明に係る車両のシーラー塗布装置は、ワークを車両のボディーに取り付けた状態で、ワークに対して車両外方にシーラーガンを配置し、車両内方からシーラー塗布することができ、例えば、電着塗装後で中塗り前の工程にて、シーラー塗布することができる。
よって、本発明によれば、電着塗装の直前に行われるシャワー洗浄に先立ち、シーラーを加熱によって予備硬化(プレキュア)する必要がなく、予備硬化(プレキュア)に対応する高価なシーラー(プレキュアシーラー)を用いず、安価なシーラーを用いることができる。また、予備硬化のための加熱設備や、加熱エネルギーを省略でき、シーラーコストの大幅な低減が可能となる。
【0021】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された車両のシーラー塗布装置において、
前記演算装置の算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示するモニター装置を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、演算装置の算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示するモニター装置を備えるので、作業者は、モニター装置に表示される算定値と、各種算定値毎の判定結果とを洩れなく確認することができる。そのため、作業者は、塗布ロボットのティーチングミスを未然に防止することができる。また、モニター装置は、全体の総合判定結果を表示するので、先ず全体の総合判定結果を優先して確認することによって、迅速なティーチングが可能となる。
【0023】
(7)(6)に記載された車両のシーラー塗布装置のティーチング方法であって、
前記演算装置の算定値に対する良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する第1工程と、
前記塗布ロボットを操作して、前記シーラーノズルの位置をティーチングポイント近傍に移動する第2工程と、
前記モニター装置に表示される前記各種算定値と判定結果とを確認しながら前記シーラーノズルの位置を調整する第3工程と、
前記モニター装置に表示される前記総合判定結果が良好となった前記シーラーノズルの位置で、ティーチングデータを登録する第4工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、演算装置の算定値に対する良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する第1工程を備えるので、シーラーノズルの位置が、シーラー塗布の良品条件を構成する範囲内か否かを数量的に明確にすることができる。
また、塗布ロボットを操作して、シーラーノズルの位置をティーチングポイント近傍に移動する第2工程と、モニター装置に表示される各種算定値と判定結果とを確認しながらシーラーノズルの位置を調整する第3工程とを備えるので、作業者から見えない位置であっても、ヘミング加工の重ね合わせ部にシーラー塗布するシーラーノズルの位置を、モニター装置に表示される各種算定値と判定結果とに基づいて調整することができる。
また、モニター装置に表示される総合判定結果が良好となったシーラーノズルの位置で、ティーチングデータを登録する第4工程を備えるので、塗布ロボットのティーチングミスを未然に防止すると同時に、精度の良いティーチングが可能となる。
また、第4工程にて、ティーチングデータが登録されるので、ワークの形状変更に伴うティーチング修正の際、登録したティーチングデータを利用することによって、初めから塗布結果を確認して不良部位を位置補正することなど面倒なティーチング操作を回避することができる。
よって、本発明によれば、作業者の熟練を要することなく、塗布ロボットを迅速かつ精度よくティーチングすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ワークに対するシーラーノズルの位置を数量的に算定して塗布ロボットを精度よくティーチングできる車両用シーラー塗布装置及びそのティーチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る車両のシーラー塗布装置の斜視図である。
図2図1に示す光源装置がワーク表面上に照射する光線画像の詳細平面図である。
図3図1に示すモニター装置のモニター表示例である。
図4】光源装置から対象物に1つのスリット光線を照射する模式図である。
図5図4に示すC視において、光源装置の移動量と対象物における光線画像の移動量との関係図である。
図6】十字形状に交叉するスリット光線おいて、光源装置の移動量と対象物における光線画像の移動量との関係図である。
図7図1に示す車両のシーラー塗布装置におけるティーチング方法を表す工程図である。
図8】従来のシーラー塗布装置の模式的斜視図である。
図9】特許文献1に記載された塗布用ロボットのティーチング装置の原理図である。
図10】作業者から見えない位置に形成されたヘミング加工の重ね合わせ部にシーラー塗布する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置における全体構造を説明し、その後、当該シーラー塗布装置において、光線画像を用いたシーラーノズルの位置データを算定するメカニズムとティーチング方法を説明する。最後に、本実施形態における作用効果を説明する。
【0028】
<シーラー塗布装置の全体構造>
まず、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置の全体構造を、図1図3を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る車両のシーラー塗布装置の斜視図を示す。図2に、図1に示す光源装置がワーク表面上に照射する光線画像の詳細平面図を示す。図3に、図1に示すモニター装置のモニター表示例を示す。
【0029】
図1図2に示すように、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置10は、ワーク(車両用ドア)Wが車両VのボディーBに取り付けられた状態で、ワークWの表面側にシーラーガン1を配置して、ワークWの裏面側からヘミング加工の重ね合わせ部W3にシーラーSを塗布する装置である。なお、ワークWは、車両用ドアに限らない。例えば、ボンネットやトランクなど、ボディーBに取り付けられる各種蓋物が該当する。
【0030】
車両のシーラー塗布装置10は、ワーク表面側に配置したシーラーガン1と、当該シーラーガン1を着脱可能に装着する塗布ロボット2とを備えている。シーラーガン1には、円筒状のパイプで形成されたシーラーノズル3が取り付けられている。シーラーノズル3は、先端部31が略L字状に形成され、ワークWとボディーBとで形成する狭い隙間に挿入することができる。先端部31は、略J字状に形成してもよい。シーラーノズル3の先端部31には、シーラーガン1に対峙する方向に向けて開口された吐出口311が形成されている。吐出口311から吐出するシーラーSは、ヘミング加工の重ね合わせ部W3及びその周辺に塗布される。なお、図1は、塗布ロボット2からシーラーガン1及びシーラーノズル3を取り外した状態を示している。
【0031】
塗布ロボット2は、車両外方に配置された多関節型のロボットである。塗布ロボット2のアーム先端には、2つのレーザー光照射装置41、42(光源装置4に相当)と、1つの撮像カメラ5とが、略矩形状の取付板6を介して着脱可能に装着されている。レーザー光照射装置41、42は、ワーク表面W1にそれぞれ傾斜角α1、α2を有して照射する2つのレーザー光線LB1、LB2(光線、スリット光線に相当)を発生する。傾斜角α1、α2は、互いに略同一である。両レーザー光線LB1、LB2は、所定幅のスリット光線であり、ワーク表面W1上で略直角に交叉して、十字形状のスリット光線画像G1、G2(光線画像に相当)を形成する。スリット光線画像G1、G2の交叉位置G3は、シーラーノズル3の吐出口311からシーラーSを塗布するヘミング加工の重ね合わせ部W3及びその周辺に対応する位置に形成されている。破線で示すスリット光線画像G11、G21は、レーザー光照射装置41、42が所定位置に配置されているときワーク表面W1上に形成される光線画像であり、基準位置G31をワーク表面W1上に特定する。これらの詳細については、後述する。
【0032】
撮像カメラ5は、例えば、CCDカメラであって、レーザー光線LB1、LB2によって形成されるワーク表面W1上のスリット光線画像G1、G2を撮像する。撮像カメラ5の撮像範囲は、スリット光線画像G1、G2と、シーラー塗布の対象となるワーク表面W1と、ワークWの外縁W2とを含む範囲(図2のA視範囲)である。撮像カメラ5は、ワーク表面W1に対して垂直方向(矢印Qの方向)から撮像し、レーザー光照射装置41、42が照射する2つのレーザー光線LB1、LB2の2等分線上に配置されている。撮像カメラ5の撮像方向(矢印Kの方向)は、シーラーノズル3の吐出口311におけるシーラーSの吐出方向(矢印Jの方向)と反対方向に形成されている。なお、撮像カメラ5の撮像方向(矢印Kの方向)と吐出口311の吐出方向(矢印Jの方向)とが、互いに同一方向に形成されてもよい。
【0033】
塗布ロボット2には、撮像カメラ5が撮像するスリット光線画像G1、G2の撮像データを演算処理する演算装置7が電気的に接続されている。
演算装置7は、撮像カメラ5が撮像したスリット光線画像G1、G2における交叉位置G3の基準位置G31からワーク表面W1に対して平行な方向へ移動する移動量L3に基づいて、シーラーノズル3の吐出口311とヘミング加工の重ね合わせ部W3との隙間d1を算定する。スリット光線画像G1、G2における基準位置G31は、シーラー塗布の良品条件を構成するシーラーノズル3の最適位置に対応するスリット光線画像G11、G21の交叉位置である。シーラーノズル3の最適位置は、ティーチングする前にシーラー塗布テストを複数回行い、そのテスト結果から設定する。
【0034】
シーラー塗布の良品条件には、吐出口311と重ね合わせ部W3との隙間d1に加えて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γが含まれる。前述のように、撮像カメラ5の撮像方向(矢印Kの方向)は、シーラーノズル3の吐出口311におけるシーラーSの吐出方向(矢印Jの方向)と反対方向に形成されている。そのため、撮像カメラ5の撮像方向(矢印Kの方向)が、ワーク表面W1に対して面直であるときには、スリット光線画像G1、G2における交叉角βは直角となり、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γも直角となる。ところが、撮像カメラ5の撮像方向(矢印Kの方向)が、ワーク表面W1に対して傾斜するときには、スリット光線画像G1、G2における交叉角βは鋭角又は鈍角となり、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γも鋭角又は鈍角となる。ここで、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γは、スリット光線画像G1、G2における交叉角βと比例して変化する。この比例関係を利用して、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像したスリット光線画像G1、G2における交叉角βに基づいて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γを算定する。そのため、スリット光線画像G1、G2における交叉角βを確認することによって、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γを適正範囲に保持しながら、塗布ロボット2をより一層精度よくティーチングすることができる。
【0035】
また、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像したワークWの外縁W2からスリット光線画像G1、G2の交叉位置G3までの距離d2に基づいて、シーラーノズル3とワークWの外縁W2との隙間d3を算定する。そのため、演算装置7が演算した隙間d3を確認することによって、シーラーノズル3とワークWの外縁W2との隙間d3を適正範囲に保持しながら、塗布ロボット2をより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーノズル3がワークWと干渉して変形や損傷等することを未然に防止することができる。
【0036】
また、演算装置7には、モニター装置8が電気的に接続されている。モニター装置8は、図3に示すように、演算装置7が算定する算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示する。具体的には、モニター装置8は、吐出口311と重ね合わせ部W3との隙間d1(例えば、4.2mm)とその判定結果である「OK」の表示欄81と、シーラーノズル3とワークWの外縁W2との隙間d3(例えば、0.8mm)とその判定結果である「OK」の表示欄82と、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γ(例えば、90°)とその判定結果である「OK」の表示欄83と、各種算定結果を総合した装置全体の判定結果である「総合判定OK」の表示欄84とを備え、モニター装置8によってそれらを表示することができる。
【0037】
<位置データの算定メカニズム>
次に、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置10において、撮像カメラが撮像する光線画像の画像データからシーラーノズルの位置データを算定するメカニズムを、図4図6を用いて説明する。図4に、光源装置から対象物に1つのスリット光線を照射する模式図を示す。図5に、図4に示すC視において、光源装置の移動量と対象物における光線画像の移動量との関係図を示す。図5(a)は、光源装置を対象物から所定距離だけ離間した位置に配置した状態を示し、図5(b)は、図5(a)に対して、光源装置を対象物と近接する方向へ移動した状態を示し、図5(c)は、図5(a)に対して、光源装置を対象物と離間する方向へ移動した状態を示す。図6は、十字形状に交叉する2つのスリット光線おいて、光源装置の移動量と対象物における光線画像の移動量との関係図を示す。
【0038】
まず、説明を単純化するため、図4に示すように、光源装置が1つのスリット光線を照射する場合で説明する。ワーク表面W1に対して所定の距離だけ離間した位置に1つのスリット光線LBをワーク表面W1に向けて照射する光源装置4を配置する。スリット光線LBの光軸は、ワーク表面W1に対して傾斜角αを形成している。スリット光線LBの光線幅は、光軸に対して左右対称に広がるように形成され、光線幅が先端側へ行くにしたがって徐々に拡張されているが、一定幅で形成されていてもよい。
【0039】
図5(a)に示すように、光源装置4aは、ワーク表面W1に対して所定位置Rに光軸が矢印Lの方向へ傾斜して配置されている。その所定位置Rに配置された光源装置4aの前端から傾斜角αで照射されたスリット光線LBaは、位置K0でワーク表面W1上に光線画像を形成する。
【0040】
次に、図5(b)に示すように、光源装置4bを、図5(a)に示す所定位置Rよりワーク表面W1に移動量D1だけ近接する方向(矢印Q1の方向)へ移動させる。矢印Q1の方向は、ワーク表面W1に対して垂直方向である。この移動位置に配置された光源装置4bの前端から傾斜角αで照射されたスリット光線LBbは、位置K1でワーク表面W1上に光線画像を形成する。スリット光線LBbの位置K1は、スリット光線LBaの位置K0より下方(矢印P1の方向)へ移動量L1だけ移動する。ここで、矢印P1の方向は、ワーク表面W1に対して平行な方向であり、光線画像の移動量L1は、光源装置の移動量D1と比例する。
【0041】
また、図5(c)に示すように、光源装置4cを、図5(a)に示す所定位置Rよりワーク表面W1に移動量D2だけ離間する方向(矢印Q2の方向)へ移動させる。矢印Q2の方向は、ワーク表面W1に対して垂直方向である。この移動位置に配置された光源装置4cの前端から傾斜角αで照射されたスリット光線LBcは、位置K2でワーク表面W1上に光線画像を形成する。スリット光線LBcの位置K2は、スリット光線LBaの位置K0より上方(矢印P2の方向)へ移動量L2だけ移動する。ここで、矢印P1の方向は、ワーク表面W1に対して平行な方向であり、光線画像の移動量L2は、光源装置の移動量D2と比例する。
【0042】
このように、ワーク表面W1に対して垂直方向へ光源装置4を移動させると、当該光源装置4の移動量D1、D2に比例してワーク表面W1上の光線画像の位置K1、K2が平行方向へ移動する。
前述したように、光源装置4と撮像カメラ5とは、塗布ロボット2のアーム先端に装着されている。また、撮像カメラ5は、ワーク表面W1に対して垂直方向から撮像し、吐出口311は、シーラーSの吐出方向Jが撮像方向と反対方向に形成されている。そのため、ワーク表面W1に対して垂直方向へ移動する光源装置4及び撮像カメラ5の移動量D1、D2は、シーラーSを塗布する重ね合わせ部W3に対して吐出口311が垂直方向へ移動する移動量に相当する。
【0043】
よって、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像する光線画像の基準位置(K0)からワーク表面W1に対して平行な方向へ移動する移動量L1、L2に基づいて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離を算定することができる。その結果、演算装置7が算定した上記距離をシーラー塗布の最適値(所定値)に合致させるように塗布ロボット2をティーチングすることができる。
【0044】
次に、図6に示すように、十字形状に交叉する2つのスリット光線を照射する場合で説明する。図1図2に示す本実施形態の光源装置4(レーザー光照射装置41、42)が、この場合に該当する。
2つのスリット光線は、図1に示すレーザー光照射装置41、42が照射するレーザー光線LB1、LB2である。レーザー光線LB1、LB2は、ワーク表面W1上にそれぞれ傾斜角α1、α2をなして照射する。ワーク表面W1上には、十字形状のスリット光線画像G1、G2が形成される。破線で示す十字形状のスリット光線画像G11、G21は、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)が所定位置に配置されているとき、ワーク表面W1上に形成される光線画像である。
【0045】
実線で示すスリット光線画像G1、G2は、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)を所定位置からワーク表面W1に移動量D3だけ近接する方向へ移動させたとき、ワーク表面上に形成される光線画像である。図6では、便宜上、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)が所定位置に配置されたときのワーク表面W11を仮想線で示している。実線で示すスリット光線画像G1、G2おける交叉位置G3は、仮想線で示すワーク表面W11上に形成される基準位置G31に対して、矢印P1の方向へ平行移動する。基準位置G31から交叉位置G3までの移動量L3は、図5で示す場合と同様に、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)が垂直方向(矢印Q3の方向)へ移動する移動量D3に比例する。
【0046】
よって、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像するスリット光線画像G1、G2の基準位置G31からワーク表面W1に対して平行な方向へ移動する移動量L3に基づいて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離(例えば、隙間d1)を算定することができる。その結果、演算装置7が算定した上記距離をシーラー塗布の最適値(所定値)に合致させるように塗布ロボット2をティーチングすることができる。
【0047】
なお、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)を所定位置からワーク表面W1と離間する方向へ移動させたとき、ワーク表面上に形成されるスリット光線画像G1、G2は、矢印P2の方向へ平行移動する。そのため、スリット光線画像G1、G2の交叉位置G3が、基準位置G31に対して、どちらの方向へ離間しているかを確認することによって、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離(例えば、隙間d1)のシーラー塗布の最適値(所定値)に対する大小が素早く判定できるので、塗布ロボット2のティーチングを迅速に行うことができる。
【0048】
<シーラー塗布装置のティーチング方法>
次に、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置におけるティーチング方法を、図7を用いて説明する。図7に、図1に示す車両のシーラー塗布装置におけるティーチング方法を表す工程図を示す。
【0049】
図7に示すように、シーラー塗布装置におけるティーチング方法は、以下に説明する4つの工程(S1〜S4)を備えている。
第1工程S1は、演算装置7の算定値に対するシーラー塗布の良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する工程である。演算装置7の算定値には、吐出口311と重ね合わせ部W3との隙間d1、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γ、シーラーノズル3とワークWの外縁W2との隙間d3などが該当する。例えば、隙間d1は4.0〜6.0mm程度がシーラー塗布の良品条件であるので、閾値として、4.0mmと6.0mmを登録する。この閾値を登録することによって、シーラーノズル3の位置がシーラー塗布の良品条件を構成する範囲内か否かを、数量的に明確にすることができる。
【0050】
次に、第2工程S2は、塗布ロボット2を操作して、シーラーノズル3の位置をティーチングポイント近傍に移動する工程である。ティーチングポイントには、シーラー塗布するときにシーラーノズルが移動する軌跡上にある変化点等が該当する。ティーチングポイントが作業者から見えない位置にある場合でも、撮像カメラの撮像範囲内となるティーチングポイント近傍に移動すればよいので、作業者は、塗布ロボット2を簡単に操作することができる。
【0051】
次に、第3工程S3は、モニター装置8に表示される各種算定値と判定結果とを確認しながらシーラーノズル3の位置を調整する工程である。各種算定値と判定結果は、モニター装置8の表示欄81、82、83に表示され、作業者から同時に確認することができる。シーラーノズル3が作業者から見えない位置にあっても、作業者は、ヘミング加工の重ね合わせ部W3にシーラー塗布するシーラーノズル3の位置を、モニター装置8に表示される各種算定値と判定結果とに基づいて簡単に調整することができる。
【0052】
次に、第4工程S4は、モニター装置8に表示される総合判定結果が良好となったシーラーノズル3の位置で、ティーチングデータを登録する工程である。ティーチングデータは、塗布ロボットの記憶装置に登録する。これによって、塗布ロボットのティーチングミスを未然に防止すると同時に、迅速かつ精度の良いティーチングが可能となる。また、第4工程にて、ティーチングデータが登録されるので、ワークWの形状変更に伴うティーチング修正の際、登録したティーチングデータを利用することによって、初めから塗布結果を確認して不良部位を位置補正することなど面倒なティーチング操作を回避することができる。
よって、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置におけるティーチング方法によれば、作業者の熟練を要することなく、塗布ロボット2を迅速かつ精度よくティーチングすることができる。
【0053】
なお、本シーラー塗布装置10は、シーラーガン1を塗布ロボット2から取り外した状態でティーチングすれば、シーラーノズル3をワークWに干渉させる心配がなく、迅速なティーチングが可能となるが、必ずしもシーラーガン1を塗布ロボット2から取り外す必要はない。
また、本シーラー塗布装置10には、演算装置7が算定した上記距離(例えば、吐出口と重ね合わせ部との隙間d1)を表示する表示装置を設けて、上記距離を作業者が確認しながら手動で塗布ロボット2を位置補正しても良いが、当該表示装置を設けず、演算装置7が算定した上記距離がシーラー塗布の最適値(所定値)となるように塗布ロボット2が自動で位置補正しても良い。
【0054】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る車両のシーラー塗布装置10によれば、撮像カメラ5は、ワーク表面W1に対して垂直方向(矢印Qの方向)から撮像し、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)は、撮像カメラ5の撮像方向(矢印Kの方向)に対して、傾斜方向(矢印Lの方向)からスリット状のレーザー光線LB1、LB2をワーク表面W1上に照射するので、塗布ロボット2を操作して、ワーク表面W1に対して垂直方向へ撮像カメラ5を移動させると、当該撮像カメラ5の移動量に比例して撮像したスリット光線画像G1、G2の位置がワーク表面W1に対して平行な方向へ移動する。
また、吐出口311は、シーラーSの吐出方向(矢印Jの方向)が撮像方向(矢印Kの方向)と反対方向(又は同一方向)に形成されたので、ワーク表面W1に対して垂直方向へ移動する撮像カメラ5の移動量は、シーラーSを塗布する重ね合わせ部W3に対して吐出口311が垂直方向へ移動する移動量に相当する。
また、撮像カメラ5が撮像するスリット光線画像G1、G2の基準位置からワーク表面W1に対して平行な方向へ移動する移動量に基づいて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離(例えば、隙間d1)を算定する演算装置7を備えるので、演算装置7が算定した上記距離をシーラー塗布の最適値(所定値)に合致させるように塗布ロボット2をティーチングすることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、光源装置4(レーザー光照射装置41、42)は、ワーク表面W1上にそれぞれ傾斜角α1、α2を有して照射する2つのスリット状のレーザー光線LB1、LB2を発生し、両レーザー光線LB1、LB2が撮像カメラ5の撮像範囲(図2のA視の範囲)内で交叉するので、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像したスリット光線画像G1、G2における交叉位置G3の基準位置G31からワーク表面W1に対して平行な方向へ移動する移動量L3に基づいて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離(例えば、隙間d1)を算定することができる。この場合、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像する光線画像をスリット光線画像G1、G2の交叉位置G3で点画像として特定することができるので、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離を、より一層精度よく算定することができる。
また、撮像カメラ5が撮像したスリット光線画像G1、G2における交叉位置G3は、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の垂直方向の距離が所定値に対して長い場合と短い場合とで、基準位置G31に対してそれぞれ反対向き(矢印P1、P2の向き)へ離間する。そのため、撮像カメラ5が撮像したスリット光線画像G1、G2の交叉位置G3が、基準位置G31に対して、どちらの方向へ離間しているかを判断することによって、塗布ロボット2のティーチングを迅速に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像したスリット光線画像G1、G2における交叉角βに基づいて、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γを算定するので、重ね合わせ部W3に対する吐出口311の吐出角γを適正範囲に保持しながら、塗布ロボット2をより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーSがワークWからはみ出すようなシーラー塗布不良等を未然に防止することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、演算装置7は、撮像カメラ5が撮像したワークWの外縁W2からスリット光線画像G1、G2の交叉位置G3までの距離d2に基づいて、シーラーノズル3とワークWの外縁W2との隙間d3を算定するので、シーラーノズル3とワークWの外縁W2との隙間d3を適正範囲に保持しながら、塗布ロボット2をより一層精度よくティーチングすることができる。その結果、例えば、シーラーノズル3がワークWと干渉して変形や損傷等することを未然に防止することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、シーラーノズル3の先端部31は、略L字状に形成され、吐出口311は、シーラーガン1に対峙する方向に向けて開口されているので、シーラーノズル3の吐出口311とシーラーガン1とをワークWを挟んで対向する位置に配置しながら、シーラー塗布することができる。そのため、本シーラー塗布装置10は、ワークWを車両VのボディーBに取り付けた状態で、ワークWに対して車両外方にシーラーガン1を配置し、車両内方からシーラー塗布することができ、例えば、電着塗装後で中塗り前の工程にて、シーラー塗布することができる。
よって、本シーラー塗布装置10によれば、電着塗装の直前に行われるシャワー洗浄に先立ち、シーラーSを加熱によって予備硬化(プレキュア)する必要がなく、予備硬化(プレキュア)に対応する高価なシーラー(プレキュアシーラー)を用いず、安価なシーラーSを用いることができる。また、予備硬化のための加熱設備や、加熱エネルギーを省略でき、シーラーコストの大幅な低減が可能となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、演算装置7の算定値を表示するとともに、各種算定値毎の判定結果と全体の総合判定結果とを表示するモニター装置8を備えるので、作業者は、モニター装置8に表示される算定値と、各種算定値毎の判定結果とを洩れなく確認することができる。そのため、作業者は、塗布ロボット2のティーチングミスを未然に防止することができる。また、モニター装置8は、全体の総合判定結果を表示するので、先ず全体の総合判定結果を優先して確認することによって、迅速なティーチングが可能となる。
【0060】
また、他の実施形態に係る車両のシーラー塗布装置10のティーチング方法によれば、演算装置7の算定値に対する良品条件を構成する範囲を定める閾値を登録する第1工程S1を備えるので、シーラーノズル3の位置が、シーラー塗布の良品条件を構成する範囲内か否かを数量的に明確にすることができる。
また、塗布ロボット2を操作して、シーラーノズル3の位置をティーチングポイント近傍に移動する第2工程S2と、モニター装置8に表示される各種算定値と判定結果とを確認しながらシーラーノズル3の位置を調整する第3工程S3とを備えるので、作業者から見えない位置であっても、ヘミング加工の重ね合わせ部W3にシーラー塗布するシーラーノズル3の位置を、モニター装置8に表示される各種算定値と判定結果とに基づいて調整することができる。
また、モニター装置8に表示される総合判定結果が良好となったシーラーノズル3の位置で、ティーチングデータを登録する第4工程S4を備えるので、塗布ロボット2のティーチングミスを未然に防止すると同時に、精度の良いティーチングが可能となる。また、第4工程S4にて、ティーチングデータが登録されるので、ワークWの形状変更に伴うティーチング修正の際、登録したティーチングデータを利用することによって、初めから塗布結果を確認して不良部位を補正することなど面倒なティーチング操作を回避することができる。よって、作業者の熟練を要することなく、塗布ロボット2を迅速かつ精度よくティーチングすることができる。
【0061】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することができる。
(1)本実施形態では、シーラーノズル3の先端部31は、略L字状に形成され、吐出口311は、シーラーガン1に対峙する方向に向けて開口されているが、必ずしも、これに限ることはない。
例えば、シーラーノズルの先端部は、直線状に形成され、吐出口は、ヘミング加工の重ね合わせ部に対峙する方向に向けて開口されていても良い。この場合、撮像カメラの撮像方向は、シーラーの塗布方向と同一となる。
(2)また、本実施形態では、2つの光源装置4(レーザー光線照射装置41、42)が塗布ロボット2に装着されているが、必ずしも、これに限ることはない。
例えば、1つの光源装置を塗布ロボットに装着するだけでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えば、車両用ドアのヘミング加工による重ね合わせ部にシーラーを塗布する車両のシーラー塗布装置及びそのティーチング方法に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 シーラーガン
2 塗布ロボット
3 シーラーノズル
4 光源装置
5 撮像カメラ
7 演算装置
8 モニター装置
10 シーラー塗布装置
31 先端部
41、42 レーザー光照射装置(光源装置)
311 吐出口
α、α1、α2 傾斜角
β 交叉角
γ 吐出角
B ボディー
d1 隙間(距離)
d2 距離
d3 隙間
D1、D2、D3 移動量
G1、G2 スリット光線画像(光線画像)
G3 交叉位置
G31 基準位置
J 吐出方向
K 撮像方向
L 傾斜方向
LB スリット光線(光線)
LB1、LB2 レーザー光線(光線、スリット光線)
L1、L2、L3 移動量
Q 垂直方向
S シーラー
d1、d3、γ 算定値
S1 第1工程
S2 第2工程
S3 第3工程
S4 第4工程
V 車両
W ワーク
W1 ワーク表面
W2 外縁
W3 重ね合わせ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10