特許第6137100号(P6137100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6137100-アクチュエータ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137100
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   H02N1/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-198362(P2014-198362)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-73045(P2016-73045A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】石河 範明
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4435691(JP,B2)
【文献】 特開2014−023206(JP,A)
【文献】 特開2014−021188(JP,A)
【文献】 特開2014−002242(JP,A)
【文献】 特開2008−116678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極と、
前記可動電極の回転軸となる軸部材と、
平面視で前記可動電極に対向している固定電極と、
平面視で前記可動電極に対向している検出用電極と、
前記可動電極に接続された第1直流電源と、
前記固定電極に接続された交流電源と、
前記検出用電極と前記可動電極の間の容量を検出する容量検出部と、
を備え、
前記容量検出部は、
仮想短絡されており、反転入力端子が前記検出用電極に接続しているオペアンプと、
前記オペアンプの非反転入力端子に接続された第2直流電源と、
を有し、
さらに、前記容量検出部の検出結果に応じて前記第1直流電源の出力電圧を制御するとともに、前記第1直流電源の出力電圧に応じて前記検出用電極の電圧を制御する制御部を備えるアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記制御部は、前記第2直流電源を制御することにより前記検出用電極の電圧を制御するアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記容量検出部は、前記第2直流電源と前記非反転入力端子の間に位置し、前記第2直流電源の出力電圧に前記第1直流電源の出力電圧を加算する加算器と、
を備えるアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転型アクチュエータは、例えば光スキャナーなどにおいて光の方向を変えるために用いられている。回転型アクチュエータは、可動部である可動電極及び固定電極を有している。可動電極の回転量は、可動電極と固定電極の間の電圧によって制御される(例えば特許文献1)。
【0003】
また特許文献2には、可動電極の共振周波数を検出するために、可動電極を支持するバーにピエゾ抵抗を配置することが記載されている。また特許文献3には、レーザーダイオードとフォトダイオードを用いて回転する部材の振幅を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69731号公報
【特許文献2】特開2009−229517号公報
【特許文献3】特表2009−533231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転型アクチュエータにおいて、可動電極に第2の固定電極(以下、検出用電極と記載)を対向させ、この検出用電極と可動電極の間の容量を検出することにより、可動電極の回転量を検出する技術がある。上記した容量を検出する方法の一つとして、仮想短絡したオペアンプを用いて上記した容量を検出することが考えられる。この場合、検出用電極は、オペアンプの反転入力端子に接続される。一方、オペアンプを仮想短絡するためには、オペアンプの出力端子と反転入力端子を、容量素子を介して接続する必要がある。
【0006】
この方法において、オペアンプの出力は、容量素子に蓄積されている電荷量によって変化する。この電荷量は、検出用電極と可動電極の間に蓄積されている電荷量が変化すると、変化する。一方、検出用電極と可動電極の間の電荷量は、検出用電極と可動電極の重なり面積(すなわち可動電極の回転量)と、可動電極に印加されている電圧のそれぞれによって変化する。このため、オペアンプの出力から可動電極の回転量を算出するためには、可動電極に印加されている電圧に基づいた補正を加える必要があった。従って、可動電極の回転量を算出するための演算が複雑になっていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、仮想短絡したオペアンプを用いて可動電極の回転量を検出する場合において、少ない演算量で可動電極の回転量を検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、アクチュエータは、可動電極、軸部材、固定電極、検出用電極、第1直流電源、交流電源、容量検出部、及び制御部を備えている。可動電極は軸部材を回転軸として回転する。固定電極及び検出用電極は、平面視で可動電極に対向している。第1直流電源は可動電極に接続されており、交流電源は固定電極に接続されている。容量検出部は可動電極と検出用電極の間の容量を検出する。容量検出部は、オペアンプ及び第2直流電源を備えている。オペアンプは仮想短絡されている。またオペアンプの反転入力端子は検出用電極に接続している。第2直流電源はオペアンプの非反転入力端子に接続している。制御部は、容量検出部の検出結果に基づいて第1直流電源を制御している。制御部は、さらに、検出用電極と可動電極の間の電圧が基準値となるように検出用電極の電圧を制御している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない演算量で可動電極の回転量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
図2】第2の実施形態に係る回転型アクチュエータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る回転型アクチュエータ10の構成を示す図である。本実施形態に係る回転型アクチュエータ10は、可動電極120、軸部材130、固定電極140、検出用電極150、第1直流電源400、交流電源410、容量検出部200、及び制御部300を備えている。可動電極120は軸部材130を回転軸として回転する。固定電極140及び検出用電極150は、平面視で可動電極120に対向している。第1直流電源400は可動電極120に接続されており、交流電源410は固定電極140に接続されている。容量検出部200は可動電極120と検出用電極150の間の容量を検出する。容量検出部200は、オペアンプ210及び第2直流電源240を備えている。オペアンプ210は仮想短絡されている。またオペアンプ210の反転入力端子(−)は検出用電極150に接続している。第2直流電源240はオペアンプ210の非反転入力端子(+)に接続している。制御部300は、容量検出部200の検出結果に基づいて第1直流電源400を制御している。制御部300は、さらに、検出用電極150と可動電極120の間の電圧が基準値となるように検出用電極150の電圧を制御している。以下、詳細に説明する。
【0013】
回転型アクチュエータ10はアクチュエータ本体100を有している。アクチュエータ本体100は、枠体110、可動電極120、軸部材130、固定電極140、及び検出用電極150を有している。アクチュエータ本体100は、導電性の部材、例えばシリコン基板を選択的にエッチングすることにより、形成されている。この場合、枠体110、可動電極120、及び軸部材130は一体的になっている。
【0014】
可動電極120の平面形状は矩形である。そして固定電極140は、平面視で可動電極120を挟むように2つ設けられている。可動電極120のうち固定電極140と対向する辺(図1においてX方向に伸びている辺)は、櫛歯形状となっている。枠体110は、可動電極120の4辺のうち固定電極140と対向していない2つの辺(図1においてY方向に伸びている辺)それぞれに対向している。軸部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している2辺それぞれに対して設けられている。詳細には、軸部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している辺の中心に接続している。そして2つの軸部材130を結ぶ線が、可動電極120の回転軸となっている。
【0015】
固定電極140のうち可動電極120と対向する辺は、櫛歯形状となっており、可動電極120の櫛歯部分とかみ合っている。このため、固定電極140と可動電極120は、互いに対向する部分の面積が大きくなり、その結果、可動電極120の駆動力は大きくなる。
【0016】
アクチュエータ本体100の可動電極120は、例えば上面が鏡面になっている。この鏡面は、例えば可動電極120の上面に金属膜(例えばAl膜)を形成することにより、形成されている。そして可動電極120の角度を変えることにより、可動電極120に入射してきた光の反射角を変える。アクチュエータ本体100は、例えば光スキャナーなどの光走査装置やモーションセンサに用いられる。
【0017】
アクチュエータ本体100の駆動電力は、第1直流電源400及び交流電源410によって供給される。
【0018】
第1直流電源400は枠体110に接続している。上記したように、枠体110、可動電極120、及び軸部材130は一体的になっている。このため、第1直流電源400は、枠体110及び軸部材130を介して可動電極120に電圧を印加することができる。第1直流電源400の出力電圧は可変であり、制御部300によって制御されている。
【0019】
交流電源410は固定電極140に接続している。本実施形態において、交流電源410の出力は一定である。
【0020】
また、アクチュエータ本体100は検出用電極150を有している。検出用電極150は、固定電極140と並んでおり、可動電極120のうち固定電極140と対向している辺に対向している。本図に示す例では、固定電極140は、可動電極120の辺の中心部分に対向している。そして検出用電極150は、固定電極140を挟むように設けられており、可動電極120の辺の両端それぞれに対向している。固定電極140は、検出用電極150よりも大きい。本図に示す例では、検出用電極150は、可動電極120のうち対向する2辺に設けられている。すなわち検出用電極150は、軸部材130を基準として線対称となるように設けられている。ただし、検出用電極150は、可動電極120の一辺にのみ設けられていても良い。また、検出用電極150と固定電極140の位置が逆であってもよい。
【0021】
可動電極120の回転量は、容量検出部200を用いて検出される。具体的には、可動電極120と検出用電極150の間の容量は、可動電極120の回転量によって変化する。容量検出部200は、この容量を検出することにより、可動電極120の回転量を検出する。
【0022】
本図に示す例において、容量検出部200はオペアンプ210、容量素子220、抵抗素子230、及び第2直流電源240を有している。
【0023】
容量素子220及び抵抗素子230は互いに並列であり、かつ、オペアンプ210の反転入力端子及びオペアンプ210の出力端子に接続されている。言い換えると、オペアンプ210の反転入力端子及び出力端子は、容量素子220を介して互いに接続しており、かつ抵抗素子230を介して互いに接続している。このようにして、オペアンプ210は仮想接地されている。
【0024】
第2直流電源240はオペアンプ210の非反転入力端子に接続されている。第2直流電源240の出力電圧は可変であり、制御部300によって制御されている。
【0025】
このような構成において、容量素子220に蓄積された電荷量が変化すると、オペアンプ210の出力も変化する。ここで、可動電極120と検出用電極150の間の容量が変化して検出用電極150に蓄積された電荷量が変化すると、これに伴って容量素子220に蓄積された電荷量も変化する。一方、可動電極120の電圧が変化しても検出用電極150に蓄積された電荷量が変化するため、容量素子220に蓄積された電荷量が変化する。このように、オペアンプ210の出力に影響を与える因子には、可動電極120と検出用電極150の間の容量の他に、可動電極120の電圧がある。
【0026】
制御部300には、オペアンプ210の出力、すなわち可動電極120の回転量が入力される。そして制御部300は、可動電極120の回転量に基づいて、第1直流電源400の出力電圧(すなわち可動電極120の電圧)及び第2直流電源240の出力電圧を制御する。なお、上記したようにオペアンプ210は仮想接地されている。このため、オペアンプ210の反転入力端子の電圧は、オペアンプ210の非反転入力端子の電圧にほぼ等しくなる。このため、制御部300は、第2直流電源240の出力電圧を制御することにより、検出用電極150の電圧を制御することができる。
【0027】
次に制御部300の動作について説明する。まず、制御部300は、可動電極120の回転量を所望の値となるように、第1直流電源400の出力電圧を制御する。ここで、制御部300は第2直流電源240の出力電圧を制御する。具体的には、第1直流電源400の出力電圧と第2直流電源240の出力電圧の差が基準範囲に入るように、第2直流電源240の出力電圧を変化させる。上記したように、オペアンプ210は仮想接地されているため、第2直流電源240の出力電圧は検出用電極150の電圧になる。従って、可動電極120と検出用電極150の間の電圧は基準範囲に入っている。
【0028】
ここで、可動電極120の温度が変わって可動電極120の形状が歪むなどの理由により、第1直流電源400の出力電圧を所望の回転量が得られるはずの値にしても、可動電極120の回転量は所望の値にならない場合が出てくる。このような場合、制御部300は、容量検出部200からの出力を用いて、可動電極120の回転量が指定された量になるように、第1直流電源400の出力電圧をフィードバック制御する。具体的には、容量検出部200から出力された回転量(電圧)が基準範囲内にない場合、制御部300は第1直流電源400の出力電圧を変化させる。これにより、可動電極120の回転量が変化する。また、これに伴い、検出用電極150と可動電極120の間の容量も変化し、その結果、容量検出部200の検出値(出力電圧)も変化する。
【0029】
一般的なオペアンプ210の使用方法においては、オペアンプ210の非反転入力端子は接地されている。この場合、可動電極120の回転量を制御するために可動電極120の電圧を変化させると、検出用電極150と可動電極120の間の電圧も変化する。この場合、容量検出部200の検出値(出力電圧)の変化の原因となる因子は、検出用電極150と可動電極120の間の容量と、検出用電極150の電圧の2つになる。従って、容量検出部200の検出値(出力電圧)の変化量から、可動電極120の電圧の変化に起因した変化量を除去する必要が出てくる。
【0030】
これに対して本実施形態では、制御部300は、第1直流電源400の出力電圧の変化に合わせて第2直流電源240の出力電圧も変化させる。具体的には、第1直流電源400の出力電圧と第2直流電源240の出力電圧の差が基準範囲から出ないように、第2直流電源240の出力電圧を変化させる。これにより、制御部300が可動電極120の電圧を変化させても、検出用電極150と可動電極120の間の電圧は変化しない。従って、容量検出部200の検出値(出力電圧)の変化の原因となる因子は、検出用電極150と可動電極120の間の容量のみになる。このため、容量検出部200の検出値(出力電圧)の変化量から、可動電極120の電圧の変化に起因した変化量を補正する必要はなくなる。言い換えると、可動電極120と検出用電極150の間の電圧は一定になるため、可動電極120に蓄積された電荷量に影響を与える因子は、可動電極120の回転量のになる。従って、本実施形態によれば、制御部300における演算量を少なくすることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る回転型アクチュエータ10の構成を示す図である。本実施形態に係る回転型アクチュエータ10は、以下の点を除いて第1の実施形態に係る回転型アクチュエータ10と同様の構成である。
【0032】
まず、制御部300は第2直流電源240の出力電圧を制御していない。言い換えると、第2直流電源240の出力電圧は固定値である。
【0033】
また、第2直流電源240とオペアンプ210の非反転入力端子の間には、加算器250が設けられている。加算器250は、第2直流電源240の出力電圧に第1直流電源400の出力電圧を加える。言い換えると、オペアンプ210の非反転入力端子には、第2直流電源240の出力電圧に第1直流電源400の出力電圧を加えた電圧が印加される。
【0034】
本実施形態によれば、制御部300が可動電極120の電圧を変化させても、オペアンプ210の反転入力端子に印加される電圧と第1直流電源400の電圧の差は、第2直流電源240の出力電圧になっている。このため、制御部300が可動電極120の電圧を変化させても、検出用電極150と可動電極120の間の電圧は変化しない。従って、第1の実施形態と同様の理由により、制御部300における演算量を少なくすることができる。
【0035】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10 回転型アクチュエータ
100 アクチュエータ本体
110 枠体
120 可動電極
130 軸部材
140 固定電極
150 検出用電極
200 容量検出部
210 オペアンプ
220 容量素子
230 抵抗素子
240 第2直流電源
250 加算器
300 制御部
400 第1直流電源
410 交流電源
図1
図2