(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)、および、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)を含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
前記ポリシクロオレフィンは、前記ジシクロペンタジエン系化合物、前記テトラシクロドデセン系化合物および前記ノルボルネン系化合物から選択される2種以上の化合物の開環メタセシス重合体であり、炭素−炭素二重結合が水素化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシーラントフィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シーラントフィルムへの内容物の吸着または吸収を抑制するために、シーラントフィルムの材料として、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)などの薬効成分、香気成分等の内容物が吸着または吸収され難い低吸着性の材料を使用することが検討されている。しかしながら、これらの材料は、シール強度が不足するといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、低吸着性およびシール強度に優れたシーラントフィルムについて検討した。その結果、シーラントフィルムとして、ポリオレフィン層と、特定のポリシクロオレフィンを主成分として含むポリシクロオレフィン層との積層フィルムを用いることが有効であることを見出した。なお、本願出願人は、このようなシーラントフィルムについて既に特許出願(特願2016−142373)を行っている。
【0008】
そして、さらに検討を進めた結果、このシーラントフィルムは、包装袋として使用される際に要求されるMAX強度(23N/15mm以上)を満たさない場合があることが判明した。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、低吸着性に優れ、かつ、23N/15mm以上のMAX強度を有するシーラントフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]
ポリオレフィンを含むポリオレフィン層と、
最外層としてポリシクロオレフィンを主成分として含むポリシクロオレフィン層とを備える、シーラントフィルムであって、
前記ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)、および、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)から選択される2種以上の構造単位を含み、
前記ポリシクロオレフィンのガラス転移温度が80℃以下であり、
前記ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)が5μm以上10μm以下であり、
前記ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)に対する前記ポリオレフィン層の厚み(T1)の比率(a)が、3以上9以下である、シーラントフィルム。
【0011】
[2]
前記ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)、および、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)を含む、[1]に記載のシーラントフィルム。
【0012】
[3]
前記ポリシクロオレフィンのガラス転移温度が40℃以上である、[1]または[2]に記載のシーラントフィルム。
【0013】
[4]
前記ジシクロペンタジエン系化合物はトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−3,8−ジエン(ジシクロペンタジエンと同義)もしくはその誘導体であり、前記テトラシクロドデセン系化合物はテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンもしくはその誘導体であり、前記ノルボルネン系化合物はビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンもしくはその誘導体である、[1]〜[3]のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【0014】
[5]
前記ポリシクロオレフィンは、前記ジシクロペンタジエン系化合物、前記テトラシクロドデセン系化合物および前記ノルボルネン系化合物から選択される2種以上の化合物の開環メタセシス重合体であり、炭素−炭素二重結合が水素化されている、[1]〜[4]のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【0015】
[6]
基材シートと、
[1]〜[5]のいずれかに記載のシーラントフィルムと、を積層してなる積層フィルム。
【0016】
[7]
さらに、ガスバリアフィルムを前記基材シートと前記シーラントフィルムとの間に積層してなる、[6]に記載の積層フィルム。
【0017】
[8]
厚みが100μm以下である、[6]または[7]に記載の積層フィルム。
【0018】
[9]
[6]〜[8]のいずれかに記載の積層フィルムを、前記シーラントフィルム同士が融着されるようにシールしてなる、包装袋。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低吸着性に優れ、かつ、23N/15mm以上のMAX強度を有するシーラントフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表す。
【0022】
<シーラントフィルム>
[実施形態1]
図1を参照して、本実施形態のシーラントフィルム1は、ポリオレフィン層11(基材シート側)とポリシクロオレフィン層12(シール側)との2層からなるシーラントフィルムである。
【0023】
(ポリオレフィン層:基材シート側)
ポリオレフィン層11は、ポリオレフィンを含む。なお、ポリオレフィン層11の全量に対するポリオレフィンの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、ポリオレフィン層11は、ポリオレフィン以外の他の材料を含んでいてもよい。
【0024】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレンを好適に用いることができる。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを好適に用いることができる。
【0025】
(ポリシクロオレフィン層:シール側)
ポリシクロオレフィン層12は、ポリシクロオレフィンを主成分として含む。なお、「主成分として含む」とは、例えば、ポリシクロオレフィン層12の全量に対してポリシクロオレフィンの含有量が50質量%より多いことであり、ポリオレフィンの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。また、特許文献2に開示されるような他の高分子材料、各種添加剤などを配合してもよい。
【0026】
ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物、テトラシクロドデセン系化合物、および、ノルボルネン系化合物から選択される2種以上の化合物(シクロオレフィンモノマー)に由来する構造単位を含む。すなわち、ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)、および、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)から選択される2種以上の構造単位を含む。
【0027】
好ましくは、ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)、および、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)を含む。
【0028】
ポリシクロオレフィンが、構造単位(A)、(B)および(C)を含む場合、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)の比率は、好ましくは5〜80モル%である。テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)の比率は、好ましくは10〜90モル%である。ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)の比率は、好ましくは5〜50モル%である。なお、これらの比率は、構造単位(A)、(B)および(C)の合計を100モル%としたときの比率である。この場合でも、ポリシクロオレフィンは、構造単位(A)、(B)および(C)以外の構造単位を本発明の効果が損なわれない範囲で含んでいてもよい。
【0029】
ジシクロペンタジエン系化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−3,8−ジエン)およびその誘導体などが挙げられる。ジシクロペンタジエンの誘導体としては、例えば、2−メチルジシクロペンタジエン、2,3−ジメチルジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロキシジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0030】
また、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)としては、例えば、ジシクロペンタジエンに由来する構造単位が挙げられる。
【0031】
テトラシクロドデセン系化合物としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンおよびその誘導体が挙げられる。テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンの誘導体としては、例えば、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンなどが挙げられる。
【0032】
また、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンに由来する構造単位が挙げられる。
【0033】
ノルボルネン系化合物としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体が挙げられる。ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの誘導体としては、例えば、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどが挙げられる。
【0034】
また、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンに由来する構造単位が挙げられる。
【0035】
ポリシクロオレフィンは、好ましくは、上記のシクロオレフィンモノマーを開環メタセシス共重合し、その後C−C二重結合を水素化することで得られるものである。このようなポリシクロオレフィンの製造は、特許文献2に基づいて実施することができる。
【0036】
また、ポリシクロオレフィンのガラス転移温度(Tg)は、80℃以下であり、好ましくは75℃以下である。この場合、非吸着性に加えて、適正なシール強度と低温シール性を有するシーラントフィルムを得ることができる。なお、Tgは、JIS K7121に基づいて測定することができる。
【0037】
なお、ポリシクロオレフィンのTgが室温と同じになるとシーラントフィルムが溶融してしまう虞があるため、ポリシクロオレフィンのTgは、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上である。
【0038】
シーラントフィルム1は、例えば、上記のポリオレフィン層(フィルム状半成形体)とポリシクロオレフィン層(フィルム状半成形体)とを2層共押出しすることにより2層構造のフィルムとして作製することができる。シーラントフィルム1の厚みは、好ましくは100μm以下である。また、シーラントフィルム1の厚みは、好ましくは10μm以上である。
【0039】
本実施形態のシーラントフィルム1は、上記のような特定の2種以上のシクロオレフィンモノマーに由来する構造単位を含むポリシクロオレフィンから構成される層を備えることにより、内容物(薬効成分、香気成分など)の吸着または吸収が抑制された非吸着性のものであり、かつ十分なシール強度を備えている。
【0040】
本実施形態において、ポリシクロオレフィン層12の厚み(T2)は、5μm以上10μm以下である。また、ポリシクロオレフィン層12の厚み(T2)に対する前記ポリオレフィン層11の厚み(T1)の比率(a:T1/T2)が、3以上9以下である。
【0041】
なお、各層(ポリオレフィン層11およびポリシクロオレフィン層12)の厚みは、シーラントフィルムをカッター等で切断した後に、切断面を顕微鏡で観察することで、顕微鏡のスケールによって測定することができる。
【0042】
ポリオレフィン層11の厚み(T1)、および、ポリシクロオレフィン層12の厚み(T2)をこのような範囲に設計することで、低吸着性に優れ、かつ、23N/15mm以上のMAX強度を有するシーラントフィルム1を得ることができる。
【0043】
ここで、MAX強度とは、初期シール強度等ではなく、シール強度曲線が最大に達し安定したときのシール強度である。レトルト規格(JIS Z0238)では、MAX強度が23N/15mm以上であることが定められている。なお、シール強度(MAX強度)は、JIS Z0238により測定することができる。
【0044】
なお、シーラントフィルム1を構成するポリオレフィン層11は、フィルムを柔軟にする役割を有している。ジシクロペンタジエン系化合物、テトラシクロドデセン系化合物およびノルボルネン系化合物から選択される2種以上の化合物の開環メタセシス重合体からなるポリシクロオレフィン層12は単層だと、フィルムがかたく、コロナ処理や製膜が困難であり、包装袋として製造することが非常に難しい。そこで、ポリオレフィン層11をポリシクロオレフィン層12に隣接して用いることで、処理性、製膜適性を向上させることで包装袋として製造することが可能になった。
【0045】
また、本実施形態のシーラントフィルムは、低温シール性も備えている。低温シール性に関して、具体的には、例えば、シーラントフィルムのシール強度の立上り温度(シール可能な最低温度の指標)は、120℃以下であることが好ましい。なお、シール強度の立上り温度は、温度に水準を採りJIS Z0238により測定される。
【0046】
また、本実施形態のシーラントフィルムは、防湿性にも優れている。防湿性に関して、具体的には、シーラントフィルムとノンバリア性の基材シートとを貼り合わせてなる厚さ50μm以下の積層フィルムの水蒸気透過度は、5.0g/(m
2・24h)以下であることが好ましい。なお、透湿度(水蒸気透過度)は、JIS K7129Aに基づいて、40℃、90%RHの条件で測定される。
【0047】
<積層フィルム>
[実施形態2]
図2を参照して、本実施形態の積層フィルム2(包装材料)は、実施形態1のシーラントフィルム1と、接着層41と、基材シート31と、がこの順に積層されてなる積層フィルムである。積層フィルムの厚みは好ましくは100μm以下である。
【0048】
基材シート31としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば特に限定されないが、プラスチックフィルム、紙、不織布などが使用できる。プラスチックフィルムの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、6−ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミドなどが挙げられる。プラスチックフィルムは、好ましくは二軸延伸されたフィルムである。なお、本実施形態において、基材シート31は、PETフィルムである。
【0049】
接着層41を構成する接着剤としては、特に限定されないが、ドライラミネート用接着剤を好適に用いることができる。ドライラミネート用接着剤としては、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。尚、このような接着剤を用いてシーラントフィルム1とガスバリアフィルム6とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法が挙げられる。
【0050】
上記接着剤の中では、優れた接着力と内容物の化学成分で接着力が低下し難い二液硬化型接着剤を好適に用いることができる。二液硬化型接着剤は、主剤と硬化剤からなるものであり、例えば、ポリエステルポリオールと多官能ポリイソシアネートからなる二液硬化型接着剤が挙げられる。
【0051】
なお、上記の接着剤層の代わりに、アンカーコート剤(二液硬化型ウレタン接着剤、ポリアリルアミン等)などを用いてもよい。
【0052】
本実施形態の積層フィルムは、実施形態1のシーラントフィルムを備えることにより、実施形態1と同様に、内容物(薬効成分、香気成分など)の吸着または吸収が抑制された非吸着性のものであり、十分なシール強度等も備え、かつ、γ線滅菌による物性変化が抑制されたものである。
【0053】
[実施形態3]
図3を参照して、本実施形態の積層フィルムは、内容物の酸素ガスによる劣化、内容物の外部放散による減少などを抑制するために、ガスバリアフィルム6が中間に積層されている。この点以外は、実施形態2と同様である。なお、アルミニウム箔などのガスバリアフィルム6をシーラントフィルム1に接着するための接着層42を有している。
【0054】
ガスバリアフィルム6としては、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。他にも、アルミニウム蒸着膜を有するフィルム、無機酸化物蒸着膜を有するフィルムなどが使用できる。具体的には、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムなどの延伸フィルムにアルミニウム蒸着膜または無機酸化物蒸着膜を形成したものが使用できる。また、ガスバリアフィルム6として、エチレン・ビニルアルコール共重合体のフィルムも使用できる。
【0055】
接着層42を構成する接着剤としては、上記接着層41と同様の材料を用いることができる。なお、接着層41を構成する接着剤と接着層42を構成する接着剤とは、同じ成分であってもよく、異なる成分であってもよい。
【0056】
<包装袋>
上記のようにして形成された積層フィルムを用い、所望の形状に製袋し包装袋を形成する。例えば、ピロータイプの包装袋、カゼットタイプの包装袋、自立タイプの包装袋など(特許文献1参照)を、目的(包装袋のデザイン、内容量や使い易さなど)に応じて作製すればよい。このような包装袋は、上記の積層フィルムの少なくとも2枚が、シーラントフィルム同士が融着されるように少なくとも一部でシールされてなる。
【0057】
内容物としては、例えば、医薬品、医薬部外品、食品、飲料などが挙げられる。本実施形態の包装袋は、特に薬効成分、香気成分など(包装袋に吸着または吸収され易い成分、または、包装袋に吸着または吸収されることが問題となる成分)を含有する内容物について、好適に使用することができる。具体的には、本実施形態の包装袋は、例えば、薬効成分を含んだ経皮吸収剤または洗口液、香料などの香気成分を含んだ化粧品、コーヒーなどを収容するために好適に用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
実施形態2と同様に、基材シート31と、実施形態1のシーラントフィルム1と、を2液硬化型ポリエステル、ポリウレタン接着剤を介して積層し、実施例1〜5および比較例1〜5の積層フィルムを作製した。
【0060】
基材シート31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。基材シート31の厚みは12μmである。
【0061】
シーラントフィルム1は、ポリオレフィン層11およびポリシクロオレフィン層12からなる。ポリオレフィン(PO)層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる。
【0062】
ポリシクロオレフィン(PCO)層は、下記のポリシクロオレフィンAからなる。
ポリシクロオレフィンA:
トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−3,8−ジエン、
テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、および、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
からなる3種のシクロオレフィンモノマーの3元共重合体であり、これらのシクロオレフィンモノマーを開環メタセシス共重合し、その後C−C二重結合を水素化することで得られるものである。
【0063】
ポリオレフィン(PO)層11の厚み、および、ポリシクロオレフィン(PCO)層12の厚みは、表1に示すとおりである。
【0064】
(実施例6〜12、比較例6〜12)
実施形態3と同様に、基材シート31と、ガスバリアフィルム6と、実施形態1のシーラントフィルム1と、を2液硬化型ポリエステル、ポリウレタン接着剤を介して積層し、実施例6〜12および比較例6〜12の積層フィルムを作製した。
【0065】
基材シート31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。また、ガスバリアフィルム6は、アルミニウム箔である。基材シート31の厚みは12μmであり、ガスバリアフィルム6の厚みは7μmである。
【0066】
シーラントフィルム1は、ポリオレフィン層11およびポリシクロオレフィン層12からなる。ポリオレフィン(PO)層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる。
【0067】
ポリシクロオレフィン(PCO)層は、上記のポリシクロオレフィンAからなる。
ポリオレフィン(PO)層11の厚み、および、ポリシクロオレフィン(PCO)層12の厚みは、表1に示すとおりである。
【0068】
<評価試験1>
上記の実施例1〜12および比較例1〜12について、「シール強度」(MAX強度)の評価を行った。
【0069】
具体的には、実施例1〜12および比較例1〜12の各々の積層フィルムを、シーラントフィルムを内側にしてシールした。シール条件は、シール温度を170℃、シール圧を0.2MPa、シール時間を1.0秒とした。シールされた2枚の積層フィルムの剥離強度(N/15mm)を、短冊状にカットした積層フィルムについて、JIS Z0238に基づいて剥離強度(シール強度)を測定した。なお、シール強度は、シール強度曲線が安定した箇所での最大値をMAX強度として測定した。
【0070】
<評価試験2>
上記の実施例6〜12および比較例6〜12について、低吸着性の評価を行った。
【0071】
具体的には、実施例6〜12および比較例6〜12の各々の積層フィルムを所定の形状にカットし、2枚の積層フィルムをシーラントフィルム同士が接触するように重ねた状態で製袋機に載置し、所定の領域をシールすることで、3方製袋タイプの包装袋を作成した。尚、この時点では、包装袋の上端(天シール部)は、内容物を充填するために未だシールされていない。
【0072】
次に上記包装袋の上端より、l−メントール(0、1、3または6Mの水溶液)を窒素雰囲気下で充填し、包装袋の上端(天シール部)をシールすることで、内容物を密封した。なお、この成分は、一般にシーラントフィルムに吸着されやすい成分である。
【0073】
上記のようにして内容物が収容された包装袋を、40℃に維持された恒温槽内で ヶ月間保存した。保存後に包装袋を開封して、シーラントフィルム中のみからエタノール抽出により各成分を抽出し、抽出された各成分の量を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。その測定値を基に、初期量に対する各保存期間後の残存量の比率を残存率(%)として算出した。
【0074】
なお、実施例6〜12および比較例6〜12は、ガスバリアフィルム(アルミニウム(AL)箔)が設けられており、内容物から基材への吸収を防止できるため、シーラントフィルムに対する吸着性を評価することが可能である。
【0075】
以上の評価試験1および2の結果を表1に示す。なお、「剥離面」の欄には、評価試験1で剥離が生じた面(剥離面)の状態について記載した。
【0076】
なお、実施例1〜12および比較例1〜12に用いたポリシクロオレフィン層について、示差走査熱量分析計を用いてJIS K 7121に基づいて測定したガラス転移温度(Tg)は、70℃であった。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示されるように、ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)が5μm以上10μm以下であり、かつ、ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)に対するポリオレフィン層の厚み(T1)の比率(a)が、3以上9以下である、実施例1〜12においては、23N/15mm以上のMAX強度が付与されていることが分かる。
【0079】
これに対して、T2およびa(T1/T2)が上記の範囲外である比較例1〜8、11および12においては、MAX強度が23N/15mm未満である。
【0080】
これは、表1の剥離面の項に記載したように、実施例1〜12では、PCO層の厚みをある程度薄くすることで、剥離が強度の低いPCO層から開始するが、途中で剥離面が強度の高いPO層へ移行するため、MAX強度が高くなるためであると考えられる。
【0081】
一方、比較例4、5、11および12のように、PCO層の厚みが厚くなると、剥離がPCO層から開始して、剥離面がそのまま強度の低いPCO層内にあるため、MAX強度が高くならないと考えられる。また、比較例1〜3および6〜8のように、PCO層を薄くしても、PO層も薄い場合(比率aが小さい場合)は、剥離がPCO層から開始して、途中で剥離面が強度の高いPO層へ移行しても、PO層が十分に伸びないため、MAX強度が高くならないと考えられる。
【0082】
また、実施例6〜12についての低吸着性(残存率)の評価結果から、本発明のシーラントフィルムが低吸着性に優れていることが分かる。これは、シーラントフィルムが、2種以上の特定のシクロオレフィンポリマーの共重合体であり、ガラス転移温度(Tg)が80℃以下であるポリシクロオレフィンを含むポリシクロオレフィン層と、ポリオレフィン層との積層体であるためである。
【0083】
なお、T2が上記の範囲内であり、a(T1/T2)が9を超えている比較例9および10では、MAX強度は23N/15mm以上であるが、(特に内容物の濃度が高くなったときに、)低吸着性が悪くなることが分かる。これは、PO層が厚くなるとPO層への吸着量が多くなり、低吸着性が悪くなったと考えられる。
【0084】
以上の結果から、ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)が5μm以上10μm以下であり、かつ、ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)に対するポリオレフィン層の厚み(T1)の比率(a)が、3以上9以下である場合に、低吸着性に優れ、かつ、23N/15mm以上のMAX強度を有するシーラントフィルム1を得ることができると考えられる。
【0085】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】ポリオレフィンを含むポリオレフィン層と、最外層としてポリシクロオレフィンを主成分として含むポリシクロオレフィン層とを備える、シーラントフィルム。ポリシクロオレフィンは、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位(A)、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位(B)、および、ノルボルネン系化合物由来の構造単位(C)から選択される2種以上の構造単位を含み、ポリシクロオレフィンのガラス転移温度が80℃以下であり、ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)が5μm以上10μm以下であり、ポリシクロオレフィン層の厚み(T2)に対するポリオレフィン層の厚み(T1)の比率(a)が、3以上9以下である。