(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137411
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20170522BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-530738(P2016-530738)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2014067595
(87)【国際公開番号】WO2016002018
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】木内 忠昭
【審査官】
戸次 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−046447(JP,A)
【文献】
特開2014−050177(JP,A)
【文献】
特開2002−068632(JP,A)
【文献】
特表2005−516570(JP,A)
【文献】
特開2011−072049(JP,A)
【文献】
特開2014−007786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B1/00−1/52
H02M1/00−1/44
7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路を構成する複数の半導体素子が搭載された回路基板と、
前記回路基板を収容する本体筐体と、
前記本体筐体の底面または上面に設けられ、前記電力変換回路に電力を入力する入力用コネクタの実装部及び前記電力変換回路で変換された電力を出力する出力用コネクタの実装部と、
前記本体筐体の前面または側面に形成され、前記電力変換回路に接続される補助コネクタの実装部が配設される窪み部と、
前記回路基板に電気的に接続され、一方の実装面に前記入力用コネクタの実装部または前記出力用コネクタの実装部が実装されるとともに、他方の実装面に前記補助コネクタの実装部が実装され、前記他方の実装面が前記本体筐体の前面と平行となる姿勢で前記本体筐体に収容される両面実装型の配線基板と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記補助コネクタは、前記出力用コネクタと並列に接続された補助出力用コネクタであり、
前記補助コネクタの実装部と前記出力用コネクタの実装部とを、前記配線基板の両面の対応する位置に配設したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記窪み部を前記本体筐体の前面に形成し、前記補助コネクタをストレート方式のコネクタとし、前記出力用コネクタをライトアングル方式のコネクタとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記回路基板を前記配線基板と平行となるように前記本体筐体の内部に配設したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記窪み部の内底面からの高さは、前記補助コネクタの実装部にケーブルが接続されたコンタクト部を装着し、前記ケーブルを前記窪み部の内底面に沿って曲げた場合に前記ケーブルが前記本体筐体の表面から突出しない高さであることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された電力を所望の電力に変換して出力する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電力変換装置としては、入力された交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路と、コンバータ回路で変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路とを備えて構成されたものが一般的である。コンバータ回路及びインバータ回路は、本体筐体の内部に収容された回路基板に構成されており、三相の入力端子を介して商用電源等の外部電源に接続され、かつ三相の出力端子を介してモータ等の負荷に接続されている。入力端子及び出力端子は、ケーブルとのコンタクト部が本体筐体の外部に突出する状態でコネクタとして設けられており、本体筐体の外部からケーブルを接続することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、入力用コネクタ及び出力用コネクタは、設置に必要となるスペースを削減するため、本体筐体の上面及び底面に設けられている。すなわち、本体筐体の上面や底面に入力用コネクタや出力用コネクタを設けた場合には、外部に突出するケーブルとのコンタクト部が本体筐体の投影域内に配置されるため、周囲に大きなスペースを確保することなく電力変換装置の設置が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−139012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した電力変換装置には、出力用コネクタの追加設定が要望されている。例えば、エレベータ装置において昇降箱を昇降駆動する同期モータに交流電力を出力する電力変換装置では、出力端子を短絡させることで同期モータに制動を加え、昇降箱の移動速度を制御しようというものがある。このような電力変換装置にあっては、同期モータに接続される出力用コネクタとは別に補助出力用コネクタを追加設定すれば、出力用コネクタに同期モータを接続した状態であっても、追加した補助出力用コネクタにスイッチ手段を容易に接続することができるようになる。
【0006】
ここで、本体筐体の上面及び底面には、既に入力用コネクタや出力用コネクタが設けられているため、新たに出力用コネクタを設けるためのスペースを確保することが困難である。また、本体筐体の前面や側面といった周面に出力用コネクタを設けた場合には、上述したように、突出する出力用コネクタとの干渉を避けるために周囲にスペースを確保しなければならず、設置場所に大きな制限が加えられることになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、設置場所に大きな制限を加えることなく出力用コネクタを追加設定することのできる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る電力変換装置は、電力変換回路を構成する複数の半導体素子が搭載された回路基板と、前記回路基板を収容する本体筐体と、前記本体筐体の底面または上面に設けられ、前記電力変換回路に電力を入力する入力用コネクタの実装部及び前記電力変換回路で変換された電力を出力する出力用コネクタの実装部と、前記本体筐体の外部に設けられ、前記電力変換回路に接続される補助コネクタの実装部とを備えた電力変換装置であって、前記本体筐体の周面に窪み部を形成し、前記窪み部の内底面に前記補助コネクタの実装部を設けたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述した電力変換装置において、実装面が前記本体筐体の前面に平行となる姿勢で配線基板を前記本体筐体の内部に配設するとともに、前記窪み部を前記本体筐体の前面に形成し、前記配線基板の前面には、前記本体筐体の窪み部に対応する部位に前記補助コネクタの実装部を配設したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述した電力変換装置において、前記配線基板を両面実装型とし、前記配線基板の後面には、前記入力用コネクタの実装部または前記出力用コネクタの実装部を配設したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述した電力変換装置において、前記補助コネクタは、前記出力用コネクタと並列に接続された補助出力用コネクタであり、前記出力用コネクタの実装部を前記配線基板の後面に配設したことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上述した電力変換装置において、前記補助コネクタの実装部と前記出力用コネクタの実装部とを、前記配線基板の両面の対応する位置に配設したことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上述した電力変換装置において、前記補助コネクタをストレート方式のコネクタとし、前記出力用コネクタをライトアングル方式のコネクタとしたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上述した電力変換装置において、前記回路基板を前記配線基板と平行となるように前記本体筐体の内部に配設したことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上述した電力変換装置において、前記窪み部の内底面からの高さは、前記補助コネクタの実装部にケーブルが接続されたコンタクト部を装着し、前記ケーブルを前記窪み部の内底面に沿って曲げた場合に前記ケーブルが前記本体筐体の前面から突出しない高さであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本体筐体の前面や側面といった周面に窪み部を形成し、この窪み部の内底面から外部に突出する状態で補助コネクタを配設するようにしているため、本体筐体の周面からの補助コネクタの突出量が窪み部の高さ分だけ小さくなる。これにより、周囲にスペースを確保することなく補助コネクタを追加設定した電力変換装置を設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である電力変換装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した電力変換装置の本体筐体に対する配線基板、出力用コネクタ及び補助出力用コネクタの配置位置を示す透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る電力変換装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態である電力変換装置を示したものである。ここで例示する電力変換装置は、例えばエレベータ装置において昇降箱を昇降駆動する同期モータMに交流電力を出力するもので、
図4に示すように、入力された交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路1及びコンバータ回路1で変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路2を備えている。これらコンバータ回路1及びインバータ回路2を構成する半導体素子は、
図2に示すように、本体筐体10の内部に収容した回路基板20に実装してある。回路基板20は、
図2に示すように、実装面が本体筐体10の前面10aに平行となる姿勢で本体筐体10に支持してある。
【0020】
本体筐体10の内部には、回路基板20と平行となるように、インターフェース用の配線基板30が配設してある。配線基板30は、本体筐体10の前面10aに対向する前面30a及び本体筐体10の後面10bに対向する後面30bの双方が実装面となる両面実装型のもので、図示せぬ接続コネクタによって回路基板20と電気的に接続してある。
【0021】
この配線基板30には、入力用コネクタ31(
図4参照)、出力用コネクタ32及び補助出力用コネクタ33が設けてある。入力用コネクタ31は、
図4に示すように、商用電源等の外部電源から入力される交流電力をコンバータ回路1に供給するための入力インターフェースであり、R、S、T三相の入力端子を備えている。出力用コネクタ32は、インバータ回路2から出力された交流電力を同期モータM等の負荷に供給するための出力インターフェースであり、U、V、W三相の出力端子を備えている。補助出力用コネクタ33は、出力用コネクタ32と同様、U、V、W三相の出力端子を備えた出力インターフェースであり、インバータ回路2に対して出力用コネクタ32と並列となるように接続してある。
【0022】
出力用コネクタ32及び補助出力用コネクタ33は、
図2に示すように、それぞれが分割可能となる実装部32a,33a及びコンタクト部32b,33bを備えたものである。実装部32a,33aは、配線基板30に実装される部分であり、コンタクト部32b,33bは、
図1に示すように、ケーブルCが接続される部分である。出力用コネクタ32及び補助出力用コネクタ33は、ケーブルCとのコンタクト部32b,33bが本体筐体10の外部に突出する状態で設けられており、本体筐体10の外部からU相、V相、W相それぞれの出力端子にケーブルCを接続することが可能である。
【0023】
本実施の形態では、
図2に示すように、配線基板30の後面30bに出力用コネクタ32が実装してあるとともに、配線基板30の前面30aに補助出力用コネクタ33が実装してある。出力用コネクタ32は、ライトアングル方式のものであり、コンタクト部32bが本体筐体10の底面10cから外部に突出するように、配線基板30において後面30bの下端部から下方に向けて突出している。補助出力用コネクタ33は、ストレート方式のものであり、コンタクト部33bが本体筐体10の前面10aから外部に突出するように、配線基板30において前面30aの下端部から前方に向けて突出している。これら出力用コネクタ32及び補助出力用コネクタ33は、本体筐体10を正面から見た場合、いずれも配線基板30において本体筐体10の右下隅部に対応する部分に実装してある。従って、インバータ回路2から出力用コネクタ32及び補助出力用コネクタ33に設ける接続用配線パターンの総延長を短縮化することが可能となる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、出力用コネクタ32のコンタクト部32bが突出する本体筐体10の底面10cは、ほぼ平坦状に形成してある。これに対して補助出力用コネクタ33のコンタクト部33bが突出する本体筐体10の前面10aには、正面向かって右側となる縁部分に窪み部11が設けてある。窪み部11は、
図1及び
図3に示すように、その内底面11aが本体筐体10の前面10aに対して後面10b側に一段低くなるように構成したもので、本体筐体10の上方、下方及び右側方にそれぞれ開口するように設けてある。本実施の形態では、補助出力用コネクタ33の実装部33aにコンタクト部33bを接続した場合に、窪み部11の内底面11aからコンタクト部33bの突出端までの距離よりも大きな高さを有するように窪み部11が設けてある。より具体的には、
図3に示すように、窪み部11の内底面から本体筐体10の前面10aまでの高さは、補助出力用コネクタ33の実装部33aにケーブルCが接続されたコンタクト部33bを装着し、ケーブルCを窪み部11において上下方向に沿って配置した場合、あるいは右方向に曲げて配置した場合に、ケーブルCが本体筐体10の前面10aより突出しないような高さとしてある。
【0025】
尚、図には明示していないが、入力用コネクタ31は、本体筐体10の上面からコンタクト部が突出するように設けてある。また、
図1中の符号40は、本体筐体10の後面10bに設けた冷却ユニットである。冷却ユニット40は、IGBTやコンデンサ等の発熱モジュール(半導体素子)を冷却するためのものである。
【0026】
上記のように構成した電力変換装置では、出力用コネクタ32に対して独立した位置に補助出力用コネクタ33が設けてあるため、
図4に示すように、出力用コネクタ32に同期モータMのケーブルCを接続した状態であっても、補助出力用コネクタ33のそれぞれの出力端子に対してスイッチ手段SのケーブルCを容易に接続することができる。これにより、出力端子を短絡させることで同期モータMに制動を加え、昇降箱の移動速度を制御することが可能となる。
【0027】
しかも、本体筐体10の上面に入力用コネクタ31を配設するとともに、本体筐体10の底面10cに出力用コネクタ32を配設しているため、入力用コネクタ31のコンタクト部及び出力用コネクタ32のコンタクト部32bやこれらに接続したケーブルCが本体筐体10の前方や側方といった周囲に突出することがない。さらに、補助出力用コネクタ33についても、本体筐体10の前面10aに設けた窪み部11の内底面11aから外部に突出するようにしているため、
図3に示すように、コンタクト部33bや接続したケーブルCが本体筐体10の周囲に突出することがない。これらの結果、周囲にスペースを確保することなく補助出力用コネクタ33を追加設定した電力変換装置を設置することが可能となる。
【0028】
尚、上述した実施の形態では、配線基板30の後面30bに出力用コネクタ32を実装する一方、配線基板30の前面30aに補助出力用コネクタ33を実装するようにしているため、それぞれの実装部32a,33aからインバータ回路2までの間に設ける配線パターンの長さを大幅に削減することができ、配線基板30及び本体筐体10の小型化を図ることが可能である。しかしながら、配線基板30に対する出力用コネクタ32及び補助出力用コネクタ33の実装形態は、実施の形態のものに限らない。
【0029】
また、上述した実施の形態では、本体筐体10の前面10aに窪み部11及び補助出力用コネクタ33を設けるようにしているが、本体筐体10の側面に窪み部11を設け、この窪み部11の内底面11aに補助出力用コネクタ33を配設するように構成しても良い。尚、本体筐体10の周面に設ける窪み部11としては、必ずしも上端から下端にわたる部位の全長に設ける必要はなく、補助出力用コネクタ33を配設することのできる大きさがあれば良い。
【0030】
さらに、上述した実施の形態では、補助出力用コネクタ33に出力端子を短絡するためのスイッチ手段Sを接続するようにしているが、補助出力用コネクタ33の用途はこれに限らない。
【0031】
また、上述した実施の形態では、出力用コネクタ32に並列接続される補助出力用コネクタ33を対象としているが、入力用コネクタ31に並列接続される入力用の補助コネクタを対象としても良いし、電力変換装置の直流中間回路に設けられる直流用の補助コネクタを対象としても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1 コンバータ回路
2 インバータ回路
10 本体筐体
10a 前面
11 窪み部
11a 内底面
30 配線基板
30a 前面
30b 後面
32 出力用コネクタ
32a 実装部
32b コンタクト部
33 補助出力用コネクタ
33a 実装部
33b コンタクト部