(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータを駆動する電流が所定の上限を超えないように制限するモータ電流制限部を備え、前記上限が前記電源電圧の値に応じて設定されている請求項1乃至6のいずれかに記載のモータ制御装置。
請求項1乃至8のいずれかに記載のモータ制御装置を搭載し、少なくとも操舵トルクに基づいて演算された電流指令値により、車両の操舵系にアシスト力を付与することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置を搭載し、車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM制御のデューティの調整で行っている。
【0003】
電動パワーステアリング装置(EPS)の一般的な構成を
図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、電源としてのバッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、演算された電流指令値に補償等を施した電圧制御値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、モータ20に連結された回転センサから得ることもできる。
【0004】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VelはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続されている。
【0005】
このような電動パワーステアリング装置において、コントロールユニット30は主としてMCU(CPUやMCU等を含む)の制御部で構成されるが、制御部でプログラムにより実行される一般的な機能を示すと、例えば
図2に示されるような構成となっている。
【0006】
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10からの操舵トルクTh及び車速センサ12からの車速Velは電流指令値演算部31に入力され、電流指令値演算部31は操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて電流指令値Iref1を演算する。演算された電流指令値Iref1は加算部32Aで、特性を改善するための補償部34からの補償信号CMと加算され、加算された電流指令値Iref2が電流制限部33で最大値を制限され、最大値を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、モータ電流検出値Imと減算される。
【0007】
減算部32Bでの減算結果I(=Irefm−Im)はPI制御部35でPI(比例積分)制御され、PI制御された電圧制御値Vrefが変調信号(キャリア)CFと共にPWM制御部36に入力されてデューティを演算され、デューティを演算されたPWM信号でインバータ37を介してモータ20をPWM駆動する。モータ20のモータ電流値Imはモータ電流検出手段38で検出され、減算部32Bに入力されてフィードバックされる。
【0008】
補償部34は、検出若しくは推定されたセルフアライニングトルク(SAT)を加算部344で慣性補償値342と加算し、その加算結果に更に加算部345で収れん性制御値341を加算し、その加算結果を補償信号CMとして加算部32Aに入力し、特性改善する。
【0009】
モータ20が3相ブラシレスモータの場合、PWM制御部36及びインバータ37の詳細は例えば
図3に示すような構成となっており、PWM制御部36は、電圧制御値Vrefを所定式に従って3相分のPWMデューティ値D1〜D6を演算するデューティ演算部36Aと、PWMデューティ値D1〜D6で駆動素子としてのFETのゲートを駆動すると共に、デッドタイムの補償をしてON/OFFするゲート駆動部36Bとで構成されている。デューティ演算部36Aには変調信号(キャリア)CFが入力されており、デューティ演算部36Aは変調信号CFに同期してPWMデューティ値D1〜D6を演算する。インバータ37はFETの3相ブリッジで構成されており、各FETがPWMデューティ値D1〜D6でON/OFFされることによってモータ20を駆動する。
【0010】
なお、インバータ37とモータ20との間には、アシスト制御停止時等に電流の供給を遮断するためのモータ開放スイッチ23が介挿されている。モータ開放スイッチ23は、各相に介挿された寄生ダイオード付きのFETで構成されている。
【0011】
このような電動パワーステアリング装置では、近年、燃料消費量の節減及びエミッション(廃棄物)の低減を目的として、アイドルストップやセーリングファンクション等が搭載された車両が実用化されている。このような車両で、エンジン再始動時にクランキングする際のスタータは、一般に相当の電力を消費するため、特に停車及び発進を頻繁に繰り返す市街地走行などでは、エンジンの始動頻度の増加と共に、電源であるバッテリの消耗が甚だしくなる。この種のアイドルストップ車両では、エンジン自動停止中においても、電動パワーステアリング装置やエアコンディショナのファンの作動を継続させており、このような制御もバッテリの消耗を促進させる要因となっている。このため、エンジンのクランキングの瞬間にバッテリ電圧が一時的に大きく低下する現象が発生し、ECUやMCUが電源リセットされて、その時点までの学習内容等が消失してしまったりする不具合があった。
【0012】
また、上述のようなエンジンの始動頻度増加による低電圧対応のみならず、ECUやMCUといった制御部への低電圧における機能継続は、安全上きわめて高い要求となってきている。
【0013】
このような問題を解決するものとして、特開2002−38984号公報(特許文献1)のアイドルストップ車両が提案されている。特許文献1に開示されたアイドルストップ車両は、電圧補償コントローラと電圧補償回路で構成されており、通常のエンジン運転時においては、電圧補償コントローラは電圧補償回路の放電用スイッチ及び充電用スイッチを共に開放しており、エンジン停止信号が入力されると、電圧補償コントローラは充電用スイッチを閉じ、バッテリからの電流が電圧補償回路のコンデンサに供給されてコンデンサが充電される。エンジン始動条件の成立に従ってスタートが作動されると、バッテリの消耗によりスタータ作動時に入力電圧が第1の設定値を下回ったときには、電圧補償コントローラは電圧補償回路内の充電用スイッチを開き、放電用スイッチを閉じてコンデンサに溜まった電荷を放電し、バッテリからの入力電圧が第2の設定値異常になると放電用スイッチを開いて初期の状態に復帰する。このように、エンジン始動前にコンデンサへ充電を行い、エンジン始動に同期させて電圧補償回路を作動させている。
【0014】
また、特開2005−256643号公報(特許文献2)の駆動電圧供給装置は、上記特許文献1の内容に加え、後段の装置の発熱に考慮しつつ、電気負荷への駆動電圧の供給を制御する駆動電圧供給方法であり、常時バッテリの電圧を監視し、最小電圧よりも低下したときに、制御装置と昇圧回路により電圧を昇圧している。特開2009−255742号公報(特許文献3)の装置は、スタータ駆動時のバッテリの状態を即座に判定して、電動パワーステアリングの機構のアクチュエータのアシスト力を減少させるなどを行っている。
【0015】
更に、特開2013−224097号公報(特許文献4)の車両用モータ制御装置は、バッテリとモータ駆動回路のコンデンサとの間にリレースイッチを設け、アイドリングストップからの復帰(スタータ始動)信号を受信すると、所定の時間だけリレーをオフにし、バッテリが低電圧になった場合にコンデンサからバッテリに放電する経路を絶ち、コンデンサから制御部への電源供給経路を介して制御部へ電源を供給することにより制御部のリセットを防ぐ。所定の時間が経過してリレーをオンにすると、モータ駆動制御を直ちに開始し、これによりエンジン再始動からモータ駆動までの時間の短縮を図っている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、クランキング等によるCANからのバッテリ電圧低下の警告信号の受信により、新たな昇圧回路等を追加することなく、現状の回路構成のまま制御部(MCU、マイコン等)への電源供給経路を変更し、制御部の電源リセットを回避する。従って、低コスト対応が可能で、構成も簡易である。
【0028】
実際には現状のインバータに搭載の大容量電解コンデンサに溜まった電荷を制御部の電源へ一時的に供給するため、バッテリからの電源供給ラインのFETスイッチをONからOFFに切り換えることにより、電源供給ラインを電解コンデンサへの変更が実現される。この切換中は、電解コンデンサからの供給が数百ms〜数秒可能(アシストの制限量によって変化)であり、他方のクランキングによるバッテリ電圧降下の時間は数十ms〜百msなので、供給は安定して実施される。また、バッテリ電圧降下の間はアシスト制限又はOFFとなるものの、クランキングに起因するバッテリ電圧降下による制御部の電源リセットが回避されて、その時点までの学習内容等が消失してしまったりする不具合がなくなり、電動パワーステアリング装置の動作を安定させることができる。
【0029】
また、本発明は、バッテリ電圧(電源電圧)のリミット低下を認識したとき、即ち、車両からのスタータ始動(クランキング)等のエンジンの始動を事前に通知する信号(以下、「スタータ通知信号」とする)を受信してバッテリ電圧が低下する状況を認識したときや、バッテリが所定の電圧(モータ駆動可能電圧)より低下したことを検出したとき等に、バッテリからの電源供給ラインに設置された逆流保護用のFETを一時的に遮断することにより、制御部への電源供給ラインを変更し、電源リセットを回避する。FETの遮断(OFF)により、モータ駆動電源ラインがバッテリから切り離され、モータ駆動回路に付属する大容量電解コンデンサに蓄えられた電荷を、MCUを含む制御部の電源に一時的に供給することで、バッテリ電圧低下による制御部電源の電圧低下時間を遅延させる。新たな昇圧回路等を追加することなく、電解コンデンサ及び逆流保護用のFETをそれぞれ充放電機構及び分離手段として使用するので、低コスト対応が可能で、構成も簡易である。
【0030】
バッテリ電圧が復帰し、バッテリが所定の電圧(モータ駆動許可電圧)より高くなったときや、エンジン回転数が所定の規定値を満たしたとき等に、FETをONにし、バッテリから電源供給されるようにする。
【0031】
上述のように、電解コンデンサに蓄えられた電荷のバッテリ側への放電の防止を逆流保護用のFETの遮断により行っているので、バッテリ電圧が復帰した場合にはFETをONにしなくても、寄生ダイオードを通してモータ駆動回路側への充電が可能であるから、電解コンデンサが充電され、さらに、モータを駆動制御するために必要最小限の電圧にモータ駆動許可電圧を設定すること等により、迅速にモータ駆動制御を開始することができる。また、バッテリへの逆流防止措置の開始条件に、スタータ通知信号だけではなく、バッテリがモータ駆動可能電圧より低下した場合という条件を加えることにより、低電圧時のリセット耐性を向上させることができる。
【0032】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0033】
図4は本発明の第1実施形態を示しており、ECUに内臓された制御部としてのMCU100はアシスト指令ACによりインバータ121を介してモータ120を駆動制御する。インバータ121とモータ120との間にはモータ開放スイッチ122が介挿されており、インバータ121にはインバータ電源VRが供給される。モータ開放スイッチ122は、各相に介挿されたFETで構成されており、各FETには寄生ダイオードが接続されている。インバータ電源VRは、逆流防止用のダイオードD2を経てMCU100の電源110に供給されると共に、大容量の電解コンデンサC1を充電するようになっている。電解コンデンサC1は、通常インバータ121の電源平滑用コンデンサとして機能する。
【0034】
電源としてのバッテリ101の電圧Vbatは、コモンモードやノーマルモードのEMC(electromagnetic compatibility)ノイズ対策としてノイズフィルタ102を経て、更に逆流防止用のダイオードD1を経て電源110に供給される。電源110とダイオードD1,D2の接続点には、システム電源のバイパスコンデンサとして用いられるコンデンサC2が接続されている。
【0035】
MCU100には、CANよりバッテリ電圧Vbatの降下(解除を含む)を報知する警告信号VFがCANより入力され、インバータ電源VRとバッテリ101との間には、FET11及びFET12がON/OFFスイッチとして接続され、FET11及びFET12はMCU100からのスイッチ信号SW1及びSW2によってON/OFFされる。また、FET11及びFET12にはそれぞれ、寄生ダイオードpd11及びpd12が接続されている。
【0036】
FET11は緊急遮断用のON/OFFスイッチであり、FET12は逆流保護の機能を有すると共に、分離手段としてのON/OFFスイッチであり、FET12が警告信号VFのMCU100への入力に基づき、スイッチ信号SW2によってON/OFFされる。
【0037】
このような構成において、その動作例(第1実施形態)を
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
動作がスタートすると通常時はFET11はONとなっており、スイッチ信号SW2によってFET12がONされ(ステップS1)、図示経路1による電源がMCU100に供給される(ステップS2)。即ち、バッテリ101のバッテリ電圧Vbatはノイズフィルタ102を経て、更にダイオードD1を経て電源110に供給される。なお、インバータ電圧VRは、バッテリ電圧Vbatがノイズフィルタ102、FET11、FET12を経て電解コンデンサC1を充電した結果の電圧となっている。
【0039】
そして、MCU100がアシスト指令ACを出力すれば(ステップS3)、モータ120は別途演算された電流指令値によりインバータ121で駆動される(ステップS4)。そして、クランキング等によりバッテリ電圧が低下して、CANより警告信号VFがMCU100に入力されるまでステップS1にリターンし(ステップS5)、上記動作を繰り返す。
【0040】
上記ステップS5において、CANより警告信号VFが入力されると、MCU100はスイッチ信号SW2を出力して分離手段としてのFET12をOFFする(ステップS10)。FET12がOFFされることによりバッテリ101が電解コンデンサC1に充電されている電荷、つまりインバータ電圧VRと一時的に分離され、電解コンデンサC1に充電されていた電荷がダイオードD2を経て経路2で電源110に供給される(ステップS11)。この際、FET12の寄生ダイオードpd12により、バッテリ101側に逆流することはない。MCU100がアシスト指令ACを出力すれば(ステップS12)、モータ120は別途演算された電流指令値によりインバータ121で駆動され(ステップS13)、CANより警告解除の信号VFが入力されるまで上記ステップS11にリターンして上記動作を繰り返す(ステップS14)。
【0041】
バッテリ電圧が復旧し、警告解除の信号VFが入力された場合には、上記ステップS1にリターンし、スイッチ信号SW2によってFET12がONされる(ステップS1)。このとき、FET12が完全にONしていない場合にも、寄生ダイオードpd12を介してインバータ電源VR側に電源供給が可能となり、即座にアシスト制御が可能である。
【0042】
また、上記ステップS3及びS12においてアシスト指令ACが出力されない場合には、いずれも終了となる。
【0043】
図6は第2実施形態を
図4に対応させて示しており、ECU内の制御部123はMCU100、電源生成部110及び電圧検出部130を備えている。MCU100は、アシスト指令ACによりモータ駆動回路121を介してモータ120を駆動制御する。電源生成部110は、外部から供給される電源を基にしてMCU100に電源を供給する。電圧検出部130は、FETのドレイン端の電圧VBAT0をバッテリ電圧として検出し、検出された値をバッテリ電圧検出値VBDとしてMCU100に出力する。モータ駆動回路121とモータ120との間にはモータリレー122が介挿されており、モータ駆動回路121にはモータ駆動電圧VRが供給される。モータリレー122は、各相に介挿されたFETで構成されており、各FETには寄生ダイオードが接続されている。
【0044】
制御部123及びモータ駆動回路121には、バッテリ101(電圧VB)からノイズフィルタ102を経て(電圧VBAT0)、電源供給される。ノイズフィルタ102を経た後、制御部123には逆流保護用のダイオードD1を介して電源生成部110に電源供給され、モータ駆動回路にはFET11及びFET12を通して電源供給される。なお、FET11は必要に応じて削除可能である。
【0045】
モータ駆動回路121には大容量の電解コンデンサC1が接続されており、通常、モータ駆動回路121の電源平滑用として使用される。
【0046】
モータ駆動電圧VRラインから制御部供給電圧VBAT1ラインには順方向でダイオードD2が介挿されており、供給電圧VBAT1がモータ駆動電圧VRよりも低い電圧の場合、モータ駆動電圧VRから供給電圧VBAT1に電源供給可能な構成になっている。このルートは、制御部123への電源供給ルートに設けられた逆流保護用のダイオードD1がオープン故障したときにモータ駆動回路121からも制御部123に電源供給できるように構成されたものである。
【0047】
制御部123の電源生成部110とダイオードD1及びD2の接続点には、電源生成部110のバイパスコンデンサとして用いられる電解コンデンサC2が接続されている。
【0048】
このような構成において、その動作例を
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
動作がスタートすると、通常時はFET11がONとなっており、スイッチ信号SW2によってFET12がONされ(ステップS20)、
図6に示される経路1により電源が制御部123に供給される(ステップS21)。即ち、バッテリ101のバッテリ電圧VBはノイズフィルタ102を経て、更にダイオードD1を経て制御部123の電源生成部110に供給される。なお、モータ駆動電圧VRは、バッテリ電圧VBがノイズフィルタ102、FET11及びFET12を経て電解コンデンサC1を充電した結果の電圧となっている。
【0050】
制御部123のMCU100がアシスト指令ACを出力すれば(ステップS22)、モータ120は別途演算された電流指令値によりモータ駆動回路121で駆動される(ステップS23)。電圧検出部130はバッテリ電圧を検出し(ステップS24)、バッテリ電圧検出値VBDとしてMCU100に出力する。
【0051】
バッテリ電圧検出値VBDがモータ駆動可能電圧以上の間はステップS20にリターンし(ステップS25)、上記動作を繰り返す。
【0052】
上記ステップS25において、クランキング等によりバッテリ電圧が低下し、バッテリ電圧検出値VBDがモータ駆動可能電圧より低下したことをMCU100が検知した場合、モータ120の駆動を停止し(ステップS26)、スイッチ信号SW2により分離手段としてのFET12をOFFにする(ステップS27)。FET12がOFFされることにより、バッテリ電圧が低下しても、モータ駆動電圧VR側の電解コンデンサC1からバッテリ101側に電流が流れることを防ぐことができる。制御部123では、制御部供給電圧VBAT1がモータ駆動電圧VR以上のときは(ステップS28)、供給電圧VBAT1側の電解コンデンサC2に蓄えられた電荷が消費され(ステップS30)、供給電圧VBAT1がモータ駆動電圧VRよりも低下したときに(ステップS28)、
図6に示される経路2で、電解コンデンサC1に蓄えられた電荷がダイオードD2を経て電源生成部110に供給される(ステップS31)。小容量の電解コンデンサC2だけでは制御部123の駆動のために必要な電力がすぐに消費され、MCUが電源リセットとなる電圧(以下、「リセット電圧」とする)まで供給電圧VBAT1が低下するが、大容量の電解コンデンサC1から補完する形で電源供給することにより、供給電圧VBAT1の低下時間を緩やかにすることができ、供給電圧VBAT1をリセット電圧以上に保つことができる。供給電圧VBAT1の低下時間は、電解コンデンサC1の容量を大きくすることで、より緩やかにすることができるので、想定されるバッテリ電圧の低下時間に応じて電解コンデンサC1の容量を調整すればよい。
【0053】
その後、バッテリ電圧が復帰し、モータ駆動電圧VRよりも高くなると、OFFとなっているFET12の寄生ダイオードpd12を通して電解コンデンサC1が充電される。電圧検出部130はバッテリ電圧の検出を継続しており(ステップS32)、電圧検出部130からのバッテリ電圧検出値VBDがモータ駆動許可電圧以下のときは(ステップS33)、ステップS28にリターンし、上記動作を繰り返すが、モータ駆動許可電圧より高くなったことをMCU100が検知したときは(ステップS33)、ステップS20にリターンし、スイッチ信号SW2によりFET12をONにする動作(ステップS20)から繰り返すことにより、モータ120が駆動される。なお、モータ駆動許可電圧はモータ駆動可能電圧と同じ値でも異なる値でも良い。
【0054】
上記ステップS22においてアシスト指令ACが出力されない場合には、終了となる。
【0055】
また、
図8は他の構成例(第3実施形態)を示しており、
図6に示される第2実施形態と比べると、制御部223が、MCU100、電源生成部110及び電圧検出部130の他に、通信部140を備えている。通信部140は、スタータ通知信号、エンジン回転数、ステアリング速度等の信号を車両との間で送受信する。これらの信号は、
図1に示されているCAN40との間で送受信するが、非CAN41との間での送受信も可能である。通信部140は、受信した信号のうち、スタータ通知信号ES及びエンジン回転数ERをMCU200に出力する。MCU200は、スタータ通知信号ESの入力によりバッテリ電圧VBが低下する状況であることを認識する。また、MCU200は、エンジン回転数ERが所定の規定値を満たしたとき、具体的にはエンジンの最大許容回転数に対するエンジン回転数ERの割合[%]が所定の規定値を超えたときに、スイッチ信号SW2によりFET12をOFFからONにする。即ち、第2実施形態では、バッテリ電圧検出値VBDがモータ駆動可能電圧より低下したとき(以下、「OFF条件1」とする)をバッテリ電圧のリミット低下と認識しているが、第3実施形態ではスタータ通知信号ESを入力したとき(以下、「OFF条件2」とする)をバッテリ電圧のリミット低下と認識する。また、バッテリ電圧が復帰し、OFFとなっているFET12をONにするタイミングを、第2実施形態ではバッテリ電圧検出値VBDがモータ駆動許可電圧より高くなったとき(以下、「ON条件1」とする)としているが、第3実施形態ではエンジン回転数ERが所定の規定値を満たしたとき(以下、「ON条件2」とする)とする。
【0056】
なお、エンジン回転数ERに対する所定の規定値を上記のような割合ではなく、回転数そのものを対象として設定しても良い。即ち、エンジン回転数ERが所定の回転数を超えたときに、FET12をOFFからONにしても良い。
【0057】
第3実施形態での動作例を
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0058】
図7に示される第2実施形態での動作例と比べると、電圧検出部130から出力されるバッテリ電圧検出値VBDが使用されないので、ステップS24及びS32がなく、ステップS25の代わりにステップS25Aが、ステップS33の代わりにステップS33Aがそれぞれ実行されている。それ以外の動作は第2実施形態の動作例と同一であり、説明は省略する。
【0059】
ステップS25Aにおいて、通信部140がCAN40よりスタータ通知信号ESを受信し、MCU200に出力し、MCU200がスタータ通知信号ESを入力したら、モータ120の駆動を停止し(ステップS26)、スイッチ信号SW2によりFET12をOFFにする(ステップS27)。スタータ通知信号ESを受信する前は、ステップS20にリターンし、それ以降の動作を繰り返す。
【0060】
ステップS33Aにおいては、通信部140がCAN40からエンジン回転数ERを受信し、MCU200に出力し、MCU200はエンジンの最大許容回転数に対するエンジン回転数ERの割合を算出し、その割合が所定の規定値を超えていたとき、ステップS20にリターンし、スイッチ信号SW2によりFET12をONにする動作(ステップS20)から繰り返すことにより、モータ120を駆動する。エンジン回転数ERの割合が所定の規定値以下のときは、ステップS28にリターンする。
【0061】
なお、第2実施形態ではOFF条件2及びON条件2の組合せを採用しているが、OFF条件1及びON条件2の組合せ又はOFF条件2及びON条件1の組合せを採用しても良い。或いは、どちらかの条件が成立したときに所定の動作を実行するということにしても良い。即ち、OFF条件1又はOFF条件2が成立したときにバッテリ電圧のリミット低下と認識しても良く、ON条件1又はON条件2が成立したときにFET12をONにしても良い。さらに、両方の条件が成立したときに所定の動作を実行するということにしても良い。即ち、OFF条件1及びOFF条件2の両方が成立したときにバッテリ電圧のリミット低下と認識しても良く、ON条件1及びON条件2の両方が成立したときにFET12をONにしても良い。条件の組合せを変更可能とすることにより、より柔軟な対応をとることができる。
【0062】
図10は本発明の第4実施形態を示しており、
図6に示される第2実施形態と比べると、制御部323の電圧検出部330は、FETのドレイン端の電圧VBAT0ではなく、ソース端の電圧をバッテリ電圧として検出している。ドレイン端の電圧VBAT0とソース端の電圧とは連動して変化するので、ドレイン端の電圧VBAT0の代わりに、ソース端の電圧をバッテリ電圧として検出することが可能である。
【0063】
第4実施形態での動作例は、電圧検出部330がソース端の電圧をバッテリ電圧として検出する以外は、
図7に示される第2実施形態での動作例と同一である。
【0064】
更に、
図11は本発明の第5実施形態を示しており、
図6に示される第2実施形態と比べると、制御部423のMCU400がモータ電流制限部410を備えている。モータ電流制限部410は、モータを駆動する電流の上限(以下、「電流上限」とする)をバッテリ電圧の値に応じて設定しており、電圧検出部130から出力されるバッテリ電圧検出値VBDを入力し、バッテリ電圧検出値VBDに基づいて電流上限を決定し、モータを駆動する電流を制限する。本構成例では、モータを駆動する電流として電流指令値を使用し、電流指令値の最大許容値に対する割合[%]を電流上限の対象とする。例えば、電流指令値に制限を設けず、最大許容値まで値を取り得る場合、電流上限は100%となる。これにより、バッテリ電圧が低下し、モータ駆動回路121内のFETを駆動する電圧が低下した状態で、モータ120に大電流が流れた場合のFETの発熱故障を防止する。モータ電流制限部410は、第2実施形態の動作例で説明した、バッテリ電圧検出値VBDとモータ駆動可能電圧との比較並びにバッテリ電圧検出値VBDとモータ駆動許可電圧との比較も実行する。なお、モータ電流制限部410を、
図2に示される電流制限部33との共用としても良い。
【0065】
電流上限の設定例を
図12に示して説明する。
【0066】
図12に示されるように、バッテリ電圧がV1未満では電流上限を0%、即ち電流指令値を0とし、バッテリ電圧がV1以上V2未満ではA%〜100%の範囲でバッテリ電圧に比例するように電流上限を設定し、バッテリ電圧がV2以上V3未満では電流上限を100%とし、バッテリ電圧がV3以上では再度電流上限を0%、即ち電流指令値を0とする。バッテリ電圧が高電圧時にはスイッチングサージ等によるFET故障が発生する恐れがあるので、それを防ぐためにV3以上では電流上限を0%とする。Aの値は、必要に応じて0%〜100%の範囲で設定する。また、モータ駆動可能電圧及びモータ駆動許可電圧をV1とすることにより、MCUへの電源供給ラインの変更と連動して、電流指令値の制限を行うことができる。
【0067】
第5実施形態での動作例を
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
図7に示される第2実施形態での動作例と比べると、電流指令値に制限をかけるステップS24Aが追加されている。それ以外の動作は第2実施形態の動作例と同一であるから、説明は省略する。なお、ステップS25及びS33はモータ電流制限部410で実行される。
【0069】
電流指令値はモータ120を駆動するために使用され、電流上限はバッテリ電圧検出値VBDに基づいて決定されるので、電流指令値の制限(ステップS24A)はモータ駆動(ステップS23)及びバッテリ電圧検出(ステップS24)の後に実行される。ステップS24Aでは、電圧検出部130から出力されたバッテリ電圧検出値VBDを用いて、
図12に示される特性に基づいてモータ電流制限部410が電流上限を決定し、決定された電流上限により電流指令値に制限がかけられる。即ち、電流指令値の最大許容値に電流上限の値を乗算し、その乗算値より電流指令値が大きい場合はその乗算値を電流指令値とし、乗算値以下の場合は電流指令値はそのままとする。
【0070】
なお、電流上限を設定する対象を、電流指令値の最大許容値に対する割合ではなく、電流指令値そのものにしても良い。
【0071】
ここで、タイムチャートを用いて、本発明による動作例を、電源供給ラインの変更を行わない従来例と比較して説明する。
【0072】
まず、スタータ通知信号の入力をバッテリ電圧のリミット低下と認識し(OFF条件2)、バッテリ電圧検出値がモータ駆動許可電圧より高くなったときにFET12をONにし(ON条件1)、モータ電流制限部410による電流指令値の制限を実行し、モータ駆動可能電圧及びモータ駆動許可電圧をV1とした場合の動作例(実施例1)について説明する。なお、従来例においても電流指令値の制限を実行する。
【0073】
図14は従来例でのタイムチャート、
図15は実施例1でのタイムチャートである。
図14において、
図14(A)にはバッテリ電圧VB(又はバッテリ電圧検出値VBD)、モータ駆動電圧VR及び制御部供給電圧VBAT1の変化の様子を、VB(VBD)は実線で、モータ駆動電圧VRは破線で、供給電圧VBAT1は一点鎖線でそれぞれ示している。なお、通常時のバッテリ電圧は12Vとし、V1及びV2は
図12に示されるV1及びV2で、V0はリセット電圧である。
図14(B)にはECUの状態を、
図14(C)にはFET11のON/OFFの状態を、
図14(D)にはFET12のON/OFFの状態を、
図14(E)にはスタータ通知信号の受信状態を、
図14(F)には電流上限をそれぞれ示している。
図15も同様である。なお、
図14(F)に示されている電流上限は、電流上限が有効に使用されているときのデータを示しており、モータ駆動が開始されていないときは0としている。
【0074】
図14に示されるように、従来例では、時点t
11でスタータが始動すると、スタータ通知信号を受信する構成となっていないので、スタータ通知信号は通知無しだが(
図14(E)参照)、バッテリ電圧VB(バッテリ電圧検出値VBD)が急激に低下し始める(
図14(A)参照)。時点t
12でバッテリ電圧検出値VBDがV2以下になると、電流上限が減少し始め(
図14(F)参照)、電流指令値の制限が始まる(
図14(B)参照)。時点t
13でバッテリ電圧検出値VBDがV1より低くなると、電流上限は0%となり(
図14(F)参照)、モータ駆動は停止する(
図14(B)参照)。その後もバッテリ電圧検出値VBDは下がり、制御部供給電圧VBAT1も下がる。時点t
14で制御部供給電圧VBAT1がリセット電圧V0を下回ると、制御部にリセットがかかる(
図14(B)参照)。このとき、FET11及びFET12をOFFにする(
図14(C)、(D)参照)。バッテリ電圧が復帰し、制御部供給電圧VBAT1が上がり、時点t
15で制御部供給電圧VBAT1がリセット電圧V0を上回ると、制御部のリセットが解除される(
図12(B)参照)。リセット解除後は、初期診断が始まり(
図14(B)参照)、初期診断中の時点t
16でFET11及びFET12をONにする(
図12(C)、(D)参照)。そして、初期診断が時点t
17で終了すると、モータ駆動が正常に実行される(
図14(B)参照)。
【0075】
このように、従来例では、スタータ始動によりバッテリ電圧が降下すると制御部にリセットがかかり、さらにモータ駆動が開始されるまでに時間がかかる。
【0076】
一方、
図15に示されるように、実施例1では、スタータ始動前の時点t
21でスタータ通知信号が通知され(
図15(E)参照)、時点t
22においてモータ駆動が停止し、FET12をOFFにする(
図15(B)、(D)参照)。なお、FET11はONのままとする(
図15(C)参照)。時点t
23でスタータが始動すると、バッテリ電圧VB(バッテリ電圧検出値VBD)が急激に低下し始めるが、電解コンデンサC1からの電源供給により制御部供給電圧VBAT1はリセット電圧V0を下回らずにすむ(
図15(A)参照)。そして、バッテリ電圧が復帰し、時点t
24でバッテリ電圧検出値VBDがV1を上回る、即ちモータ駆動許可電圧を上回ると、FET12をONにし、モータ駆動が開始される(
図15(B)、(D)参照)。この段階では電流指令値には制限がかかっているが、時点t
25でバッテリ電圧検出値VBDがV2を上回ると、電流指令値に対する制限が解除され、モータはフル稼働可能となる(
図15(B)参照)。
【0077】
このように、実施例1では、FET12及び電解コンデンサC1の活用により、スタータ始動でバッテリ電圧が降下しても制御部にリセットがかからず、モータ駆動が開始されるまでの時間も短縮することができる。
【0078】
次に、バッテリ電圧のリミット低下と認識するタイミングがOFF条件2ではなくOFF条件1、即ちバッテリ電圧検出値がモータ駆動可能電圧より低下したときとした場合の動作例(実施例2)について説明する。他の条件は実施例1と同じである。
【0080】
図16に示される従来例での各データの変化は、バッテリ電圧降下から復帰までの間での各電圧値の変化に多少の違いはあるが、基本的には
図14に示されている変化と同じ変化をする。なお、実施例2では、バッテリ電圧の降下は、必ずしもスタータ始動によってでなくても良い。
【0081】
図17に示されるように、実施例2では、バッテリ電圧VB(バッテリ電圧検出値VBD)が低下し、時点t
31でバッテリ電圧検出値VBDがV2以下になると、電流上限が減少し始め(
図75(F)参照)、電流指令値の制限が始まる(
図17(B)参照)。さらにバッテリ電圧検出値VBDが下がり、時点t
32でV1より低く、即ちモータ駆動可能電圧より低くなると、モータ駆動を停止し、FET12をOFFにする(
図17(B)、(D)参照)。なお、FET11はONのままとする(
図17(C)参照)。その後もバッテリ電圧検出値VBDは下がるが、電解コンデンサC1からの電源供給により制御部供給電圧VBAT1はリセット電圧V0を下回らずに済む(
図17(A)参照)。そして、バッテリ電圧が復帰し、時点t
33でバッテリ電圧検出値VBDがV1を上回る、即ちモータ駆動許可電圧を上回ると、FET12をONにし、モータ駆動が開始される(
図17(B)、(D)参照)。この段階では電流指令値には制限がかかっているが、時点t
34でバッテリ電圧検出値VBDがV2を上回ると、電流指令値に対する制限が解除され、モータはフル稼働可能となる(
図17(B)参照)。
【0082】
このように、実施例2でも、FET12及び電解コンデンサC1の活用により、バッテリ電圧が降下しても制御部にリセットがかからず、さらにモータ駆動が開始されるまでの時間を短縮することができる。
【0083】
次に、FET12をONにするタイミングがON条件1ではなくON条件2、即ちエンジン回転数が所定の規定値を満たしたときとした場合の動作例(実施例3)について説明する。他の条件は実施例1と同じである。
【0084】
従来例は
図14に示されるものと同じであるから、実施例3でのタイムチャートのみを
図18に示す。
図18には、
図15に示されているデータの他に、エンジンの最大許容回転数に対するエンジン回転数の割合を
図18(G)に示す。
【0085】
図18において、時点t
23までは
図15に示されるタイミングチャートと同じ変化をする。時点t
23以降、バッテリ電圧が復帰し、時点t
24でバッテリ電圧検出値VBDがV1を上回ると、電流指令値への制限状態になり、さらに時点t
25でバッテリ電圧検出値VBDがV2を上回ると電流指令値への制限解除状態になるが、エンジン回転数の割合が規定値を超えていないので、電流指令値は0で、モータ駆動は開始されない(
図18(B)、(G)参照)。そして、時点t
26でエンジン回転数の割合が規定値を超えると、FET12をONにし、モータ駆動が開始される(
図18(B)、(D)参照)。
【0086】
実施例3においても、FET12及び電解コンデンサC1の活用により、実施例1及び2と同等の効果を得ることができる。
【0087】
上述の実施形態では、FET11及び12としてN型(Nチャネル)FETを使用しているが、P型(Pチャネル)FETを使用しても良い。また、モータを駆動するためにMCUからモータ駆動回路にアシスト指令を出力しているが、電流指令値にアシスト指令の機能を持たせても良い。
【0088】
近年、操舵系の冗長化が要請され、アシスト制御用のモータも多系統モ−タ巻線を有するモータが使用される。例えば
図19はスター結線の3相モータを示しており、1系統がU相巻線UW1、V相巻線VW1、W相巻線WW1で構成され、他の1系統がU相巻線UW2、V相巻線VW2、W相巻線WW2で構成されている。巻線UW1〜WW1又は巻線UW2〜WW2に3相電流を流すことによってモータが駆動される。また、
図20はデルタ結線の3相モータを示しており、1系統がU相巻線UW1、V相巻線VW1、W相巻線WW1で構成され、他の1系統がU相巻線UW2、V相巻線VW2、W相巻線WW2で構成されている。巻線UW1〜WW1又は巻線UW2〜WW2に3相電流を流すことによってモータが駆動される。このような多系統モータ巻線を有するモータの制御に対しても、制御部(MCU、マイコン)の電源リセットをできるだけ回避することが望まれている。
【0089】
図21は、多系統モータ巻線を有するモータ150に対する制御装置の構成例(第6実施形態)を示しており、本実施形態では、
図19又は
図20に示すような2系統モータ巻線を有するモータ150を例に挙げた二重化を説明する。そのため、インバータも二重化(121A,121B)されている。
【0090】
通常の制御部への電源供給は、バッテリ101(Vbat)から供給される。ECUに内臓されたMCU100はアシスト指令ACにより、モータ120の第1系統巻線をインバータ121Aを介して駆動制御し、モータ150の第2系統巻線をインバータ121Bを介して駆動制御する。インバータ121Aとモータ150の第1系統巻線との間にはモータ開放スイッチ122Aが介挿され、インバータ121Bとモータ150の第2系統巻線との間にはモータ開放スイッチ122Bが介挿されており、インバータ121Aにはインバータ電源VR1が供給され、インバータ121Bにはインバータ電源VR2が供給される。モータ開放スイッチ122A及び122Bは、それぞれ各相(U1〜W1,U2〜W2)に介挿されたFETで構成されており、各FETには寄生ダイオードが接続されている。
【0091】
インバータ電源VR1は、逆流防止用のダイオードD2を経てMCU100の電源110に供給されると共に、大容量の電解コンデンサC2を充電するようになっている。また、インバータ電源VR2は、逆流防止用のダイオードD3を経てMCU100の電源110に供給されると共に、大容量の電解コンデンサC3を充電するようになっている。電解コンデンサC2及びC3は、それぞれ通常インバータ121A及び121Bの電源平滑用コンデンサとして機能する。電源110に接続されている電解コンデンサC1は、システム電源のバイパスコンデンサとして機能する。
【0092】
電源としてのバッテリ101の電圧Vbatはノイズフィルタ102を経て、更に逆流防止用のダイオードD1を経て電源110に供給される。電源110とダイオードD1,D2,D3の接続点には、システム電源のバイパスコンデンサとして用いられるコンデンサC1が接続されている。
【0093】
MCU100には、CANよりバッテリ電圧Vbatの降下(解除を含む)を報知する警告信号VFがCANより入力され、インバータ電源VR1とバッテリ101との間には、FET11及びFET12がアシストON/OFFスイッチとして接続され、FET11及びFET12はMCU100からのスイッチ信号SW1及びSW2によってON/OFFされる。同様に、インバータ電源VR2とバッテリ101との間には、FET13及びFET14がアシストON/OFFスイッチとして接続され、FET13及びFET14はMCU100からのスイッチ信号SW3及びSW4によってON/OFFされる。
【0094】
FET11及びFET13は緊急遮断用のON/OFFスイッチであり、FET12及びFET14は逆流保護の機能を有すると共に、分離手段としてのON/OFFスイッチであり、FET12及びFET14が警告信号VFのMCU100への入力に基づき、スイッチ信号SW2及びSW4によってON/OFFされる。
【0095】
なお、FET11〜FET14はNチャネルタイプで構成されており、Pチャネルタイプも可能ではあるが、部品追加等が必要となり、搭載性、コスト面で現実的ではない。
【0096】
このような構成において、その動作例を
図22のフローチャートを参照して説明する。
【0097】
動作がスタートすると通常時はFET11及びFET13はONとなっており、スイッチ信号SW2及びSW4によってFET12及びFET14がONされ(ステップS40)、図示経路1→経路1→経路1による電源がMCU100に供給される(ステップS41)。即ち、バッテリ101のバッテリ電圧Vbatはノイズフィルタ102を経て、更にダイオードD1を経て電源110に供給される。なお、インバータ電圧VR1は、バッテリ電圧Vbatがノイズフィルタ102、FET11、FET12を経て電解コンデンサC2を充電した結果の電圧となっており、インバータ電圧VR2は、バッテリ電圧Vbatがノイズフィルタ102、FET13、FET14を経て電解コンデンサC3を充電した結果の電圧となっている。
【0098】
そして、MCU100がアシスト指令ACを出力すれば(ステップS42)、モータ120は別途演算された電流指令値によりインバータ121A及び121Bで駆動される(ステップS43)。そして、クランキング等によりバッテリ電圧Vbatが低下して、CANより警告信号VFがMCU100に入力されるまでステップS40にリターンし(ステップS44)、上記動作を繰り返す。
【0099】
上記ステップS44において、CANより警告信号VFが入力されるとMCU100はアシストをONからOFF(若しくは制限)する。そして、MCU100は、スイッチ信号SW2及びSW4を出力して分離手段としてのFET12及び14をONからOFFする(ステップS50)。FET12がOFFされることによりバッテリ101が電解コンデンサC2に充電されている電荷、つまりインバータ電圧VR1と一時的に分離され、電解コンデンサC2に充電されていた電荷がダイオードD2を経て経路2→経路4で電源110に供給される(ステップS51)。また、FET14がOFFされることによりバッテリ101が電解コンデンサC3に充電されている電荷、つまりインバータ電圧VR2と一時的に分離され、電解コンデンサC3に充電されていた電荷がダイオードD3を経て経路5→経路3→経路6で電源110に供給される(ステップS51)。これにより、MCU100の電源リセットが回避される。この際、FET12の寄生ダイオードpd12により、バッテリ101側に逆流することはなく、FET14の寄生ダイオードpd14により、バッテリ101側に逆流することはない。
【0100】
その後、電源復帰(バッテリ電圧VbatがMCUリセット電圧以上)したか否かを判定し(ステップS60)、電源復帰した場合にはスイッチ信号SW2及びSW4によりFET12及びFET14をONにし(ステップS61)、アシストOFFからONにする。このとき、FET12及びFET14が完全にONしていなくても、FET12及びFET14の寄生ダイオードpd12及びpd14を介して自動的に(スイッチの制御を必要とすることなく)、電源VR1及びVR2側に電源供給が可能になり、即座にアシストを開始することができる。
【0101】
そして、MCU100がアシスト指令ACを出力すれば(ステップS62)、モータ120は別途演算された電流指令値によりインバータ121A及び121Bで駆動され(ステップS63)、CANより警告解除の信号VFが入力されるまで上記ステップS51にリターンして上記動作を繰り返す(ステップS64)。バッテリ電圧が復旧し、警告解除の信号VFが入力された場合には、上記ステップS41にリターンする。
【0102】
バッテリ電圧Vbatが復帰した場合には、再度FET12及びFET14をONしなくても、瞬時にFETの寄生ダイオードを通してモータ駆動回路側に充電可能である。また、FETをOFFした後に再度ONするタイミングを所定時間ではなく、モータ駆動可能電圧が検出されたタイミングとしているため、迅速にモータ駆動制御を開始することが可能となる。
【0103】
また、上記ステップS42及びS62においてアシスト指令ACが出力されない場合には、いずれも終了となる。
【0104】
なお、上記実施形態では2系統巻線を有するモータの2重化装置の場合を説明しているが、3重化以上の多重化についても同様な適用が可能である。また、多系統巻線を有するモータ150は、前述した第2実施形態〜第5実施形態についても同様に適用することができる。