特許第6137417号(P6137417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6137417変性植物繊維、ゴム用添加剤、その製造方法及びゴム組成物
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  • 特許6137417-変性植物繊維、ゴム用添加剤、その製造方法及びゴム組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137417
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】変性植物繊維、ゴム用添加剤、その製造方法及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/08 20060101AFI20170522BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20170522BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20170522BHJP
   C08B 3/20 20060101ALI20170522BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20170522BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C08L1/08
   C08L7/00
   C08L15/00
   C08L21/00
   C08B3/20
   C08G81/00
   D06M15/693
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-554745(P2016-554745)
(86)(22)【出願日】2016年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2016068550
(87)【国際公開番号】WO2016208634
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-124471(P2015-124471)
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】宮森 良
(72)【発明者】
【氏名】大平 脩一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 大輔
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246615(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053817(WO,A1)
【文献】 特開2002−115173(JP,A)
【文献】 特開2011−246509(JP,A)
【文献】 特開平03−224713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−1/32
7/00−7/02
15/00−15/02
21/00−21/02
C08B 3/00−3/30
C08G 81/00−81/02
D06M 15/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維(a)と変性合成ゴム(B)が共有結合しており、植物繊維(a)100質量部に対する変性合成ゴム(B)の比率が5〜100質量部である変性植物繊維(A)20〜75質量%とゴム用加工助剤(C)25〜80質量%を含み、ゴム用加工助剤(C)の数平均分子量が400〜60000であり、ゴム用加工助剤(C)のガラス転移点が100℃以下であり、植物繊維分を10〜65質量%の割合で含有するゴム用添加剤。
【請求項2】
変性植物繊維(A)が微細化変性植物繊維であることを特徴とする請求項に記載のゴム用添加剤。
【請求項3】
前記変性合成ゴム(B)が無水マレイン酸変性ジエン系ゴムである請求項1又は2に記載のゴム用添加剤。
【請求項4】
前記無水マレイン酸変性ジエン系ゴムが無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び/又は無水マレイン酸変性ポリイソプレンである請求項に記載のゴム用添加剤。
【請求項5】
前記ゴム用加工剤(C)中で前記植物繊維(a)と前記変性合成ゴム(B)を反応させて変性植物繊維含有混合物(D)を得る工程と、前記混合物(D)を第一工程より低い温度で混練し、繊維を微細化する工程とを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム用添加剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム用添加剤を含有し、マトリックスゴム100質量部に対して植物繊維分を0.01〜30質量部の割合で含有するゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムへの添加に好適な変性植物繊維、当該変性植物繊維を含むゴム用添加剤、当該ゴム用添加剤の製造方法及び当該ゴム用添加剤を含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形材料用樹脂に用いられる補強材料として、炭素繊維やガラス繊維等が広く一般的に使用されている。しかしながら、炭素繊維は難燃性であるためサーマルリサイクルに不向きで、かつ価格が高い。また、ガラス繊維は比較的安価であるが、廃棄に問題がある。
【0003】
一方、植物繊維は比較的安価であり、かつサーマルリサイクルに優れているため、ゴム材料の充填剤として活用する技術の開発が検討されている。しかしながら、親水性である植物繊維は、疎水性のゴム中での分散性が低いため、ゴムへ添加した植物繊維が凝集して補強効果が発現せず、逆に強度等の機械的特性が悪化する原因となる。
【0004】
このような課題に対して、植物繊維のゴム中での分散性を改善させるために各種検討がなされている。特許文献1においては、水中に分散した微細な植物繊維をゴムラテックスと共に撹拌しつつ混合し、水分を除去してゴム中での分散性が良いマスターバッチを得ている。また、特許文献2では、植物繊維へモノマー又はポリマーをグラフト化することで繊維/ゴム界面の親和性を高めている。しかしながら、これらの方法を用いる場合には、微細化した植物繊維を適度に分散させるためには植物繊維に対して数十倍量の水が必要となり、またラテックスと混合後に大量の水を除去する必要があるため、作業効率が悪いという問題点があった。
【0005】
特許文献3では、植物繊維表面へのビニル基導入により繊維/ゴム界面の親和性を高め、加硫時にゴムと繊維を結合させることで更に親和性を向上させる方法が示されている。しかしながら、植物繊維が十分に分散できていなかった。
【0006】
特許文献4では、乾燥植物繊維表面のヒドロキシル基と結合し得る官能基を有する変性ジエン系ゴムが20重量部以上含まれたジエン系ゴム100重量部に対して、植物繊維量として5重量部以上添加し混合して得られるゴム組成物を得ている。しかしながら、植物繊維は良好な分散状態には達しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−206864
【特許文献2】特開2009−263417
【特許文献3】特開2010−254925
【特許文献4】特開2011−006551
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ゴムとの親和性を高めた変性植物繊維、当該変性植物繊維をゴム中へ簡便かつ微細に分散させることができるゴム用添加剤、当該ゴム用添加剤の製造方法及び当該ゴム用添加剤を含むゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、植物繊維へ予め変性合成ゴムを共有結合させた変性植物繊維と、ゴムとの親和性が高いゴム用加工助剤とを混練して繊維を微細化することにより、ゴムへ添加した際に変性植物繊維が簡便かつ微細に分散する樹脂組成物を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)植物繊維(a)と変性合成ゴム(B)が共有結合しており、植物繊維(a)100質量部に対する変性合成ゴム(B)の比率が5〜100質量部である変性植物繊維(A)、
(2)前記(1)の変性植物繊維(A)20〜75質量%とゴム用加工助剤(C)25〜80質量%を含み、ゴム用加工助剤(C)の数平均分子量が400〜60000であり、ゴム用加工助剤(C)のガラス転移点が100℃以下であり、植物繊維分を10〜65質量%の割合で含有するゴム用添加剤、
(3)変性植物繊維(A)が微細化変性植物繊維である前記(2)のゴム用添加剤、
(4)前記変性合成ゴム(B)が無水マレイン酸変性ジエン系ゴムである前記(2)又は(3)のゴム用添加剤、
(5)前記無水マレイン酸変性ジエン系ゴムが無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び/又は無水マレイン酸変性ポリイソプレンである前記(4)のゴム用添加剤、
(6)前記ゴム用加工剤(C)中で前記植物繊維(a)と前記変性合成ゴム(B)を反応させて変性植物繊維含有混合物(D)を得る工程と、前記混合物(D)を第一工程より低い温度で混練し、繊維を微細化する工程とを有する前記(2)〜(5)のいずれか1項のゴム用添加剤の製造方法、
(7)前記(2)〜(6)のいずれか1項のゴム用添加剤を含有し、マトリックスゴム100質量部に対して植物繊維分を0.01〜30質量部の割合で含有するゴム組成物、
(8)変性植物繊維(A)が微細化変性植物繊維であることを特徴とする前記(1)に記載の変性植物繊維。
(9)前記変性合成ゴム(B)が無水マレイン酸変性ジエン系ゴムである前記(1)又は(8)に記載の変性植物繊維。
(10)前記無水マレイン酸変性ジエン系ゴムが無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び/又は無水マレイン酸変性ポリイソプレンである前記(9)に記載の変性植物繊維。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の変性植物繊維は、植物繊維に対して適度な量の変性合成ゴムを用いるため、十分に共有結合している。そのため、変性植物繊維と特定のゴム用加工助剤を混練することで得られるゴム用添加剤は、変性植物繊維が簡便かつ十分に微細化される。故に、本発明のゴム用添加剤をゴムへ添加すれば、変性植物繊維が高度に均一分散したゴム組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】植物繊維へRiconR130MA8(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン)を反応させ、エステル化して得た変性植物繊維のIRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の変性植物繊維(A)は、変性合成ゴム(B)を植物繊維(a)へ共有結合させて得られる。共有結合させる方法は公知の方法を用いることができる。
【0014】
前記変性植物繊維(A)を得るために用いることが出来る植物繊維(a)は、特に限定されないが、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートなどに含まれる植物由来の繊維、前記植物由来の繊維から得られるパルプ、マーセル化を施したセルロース繊維、レーヨンやリヨセル等の再生セルロース繊維、酸無水物変性セルロース繊維などが挙げられる。これらの中でも、好ましい植物繊維原料としては木材が挙げられ、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシアなどが挙げられる。そして、これらを原料として得られるパルプや紙、あるいは古紙を解繊したものが植物繊維として好適に用いられる。植物繊維は、1種単独で用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。
【0015】
前記パルプとしては、例えば、前記植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してパルプ化することで得られる機械パルプ(MP)、ケミカルパルプ(CP)、セミケミカルパルプ(SCP)等が挙げられ、より具体的には、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))等が挙げられ、これらの中でもクラフトパルプ(KP)が好ましい。
【0016】
前記植物繊維(A)は、変性合成ゴムとの反応性や置換度、樹脂に対する相溶性などに大きな影響を与えず、所望の分散性を有するゴム用添加剤を得るのに差支えない範囲であれば、変性植物繊維(A)が有する水酸基のエステル化されたものやカルボキシル基などの官能基により一部水酸基が置換されたものを用いても構わない。
【0017】
本発明で用いる変性合成ゴム(B)は、植物繊維(a)との反応が可能な官能基を有するゴムであれば特に限定されないが、分子内に二重結合を有することが好ましい。変性合成ゴムの分子内に二重結合が有れば、硫黄などの架橋剤を添加してゴム分子同士を架橋(以下、加硫と記載する)させる際に、ゴム分子と変性植物繊維(A)を架橋させて親和性を高められる。二重結合を有する変性合成ゴムはジエン系ゴムであることが好ましく、変性ポリブタジエン又は変性ポリイソプレンが更に好ましい。ゴムの重合方法は特に限定されず、ジエンモノマーが重合時に1,4付加した成分のほかに、1,2付加した成分が含まれた結果、分子の側鎖にビニル基が存在していても良い。
【0018】
前記変性合成ゴム(B)が有する植物繊維(a)との反応が可能な官能基としては、特に限定されないが、アルデヒド基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、酸無水物基等が挙げられる。中でも、反応性とハンドリングの観点から酸無水物基が好ましい。酸無水物と植物繊維(a)をエステル結合させる手法については特に限定されず、混合した上で加熱しても良く、触媒を用いても良い。
【0019】
変性合成ゴム(B)が分子内に有する酸無水物基としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の炭素数4〜10(好ましくは4〜6)の環状カルボン酸無水物などの構造が挙げられる。これらの中でも、植物繊維(a)との反応のし易さの観点から、酸無水物自身の単独重合性に乏しい無水コハク酸、無水マレイン酸変性合成ゴムが好適に用いられる。
【0020】
前記変性植物繊維(A)は植物繊維(a)のヒドロキシル基へ変性合成ゴム(B)を共有結合させて得られる。共有結合の種類としては特に限定されないが、ウレタン結合、エーテル結合、シリルエーテル結合、エステル結合が挙げられる。中でもエステル結合が好適に用いられる。エステル化反応を行う方法としては特に限定されず、通常用いられる方法によって行うことができ、触媒を加えても良い。例えば、次の方法が挙げられる。
(I)植物繊維(a)を溶媒に分散させた分散液中へ変性合成ゴム(B)を投入し、反応させる。
(II)植物繊維(a)を変性合成ゴム(B)と直接混合し、反応させる。
【0021】
植物繊維(a)に結合する変性合成ゴム(B)の量は、反応効率とゴムへの親和性を考慮すると植物繊維(a)の100質量部に対して5〜100質量部である必要があり、6〜85質量部が好ましく、7〜70質量部が更に好ましく、8〜60質量部が最も好ましい。5質量部を下回るとゴムとの親和性が不十分となり、分散が不十分となってゴム組成物の機械的強度が低下する。100質量部を超えるとゴムとしての性質が強くなり、繊維の形状を保たなくなる。なお、変性合成ゴム(B)の植物繊維(a)に対する付加率は、後述する実施例において行われる算出方法により算出することができる。
【0022】
本発明のゴム用添加剤は、変性植物繊維(A)とゴム用加工助剤(C)を複合化して得られる。ゴム用添加剤に含まれる変性植物繊維は20〜75質量%が好ましく、より好ましくは25〜70質量%である。変性植物繊維分がこの範囲であると、溶融混練時に十分なせん断力が掛かるために繊維同士の凝集が起こり難く、ゴムへの分散性に優れたゴム用添加剤を得ることができる。
【0023】
ゴム用添加剤に含まれる植物繊維分は10〜65質量%が好ましく、より好ましくは15〜60質量%である。植物繊維分とは、ゴム用添加剤に含まれる変性植物繊維(A)中の植物繊維(a)由来成分を指す。植物繊維分がこの範囲であると、溶融混練時に十分なせん断力が掛かるために繊維同士の凝集が起こり難く、ゴムへの分散性に優れたゴム用添加剤を得ることができる。
【0024】
本発明で用いるゴム用加工助剤(C)は、ゴムの加工性を向上させるために添加する一般的なゴム用加工助剤であれば種類は特に限定されず、ゴムとの相溶性が良い添加剤であれば良い。例えば、石油系樹脂、石炭系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール樹脂、液状ゴム、プロセスオイル、ファクチス等が挙げられる。石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール樹脂、液状ゴムが好ましく、中でも、石油系樹脂、フェノール樹脂、液状ゴムが特に好ましい。
【0025】
前記石油系樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を付加した変性物が挙げられる。
【0026】
前記石炭系樹脂としては、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を付加した変性物が挙げられる。
【0027】
前記テルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を付加した変性物が挙げられる。
【0028】
前記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンや、前記ロジンを原料とした水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、(メタ)アクリル酸変性ロジン、アルコールと縮合したエステル化ロジン、フェノール変性ロジンが挙げられる。
【0029】
前記フェノール樹脂としては、フェノール骨格を有する化合物とホルムアルデヒドの反応物であれば特に限定されないが、例えば、ノボラック、レゾールが挙げられ、ノボラックが好ましく、中でも、硬化剤を含まないノボラックがより好ましい。
【0030】
前記液状ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、及びそれらの変性物が挙げられる。これらの中でもポリイソプレン、ポリブタジエン、及びこれらの変性物のうち何れか1種以上が好ましく、無水マレイン酸変性ポリブタジエン及び/又は無水マレイン酸変性ポリイソプレンが特に好ましい。
【0031】
本発明で用いるゴム用加工助剤(C)は、ガラス転移点が100℃以下のゴム用加工助剤の中から選ばれる少なくとも1種以上である。ガラス転移点が100℃を超えると、ゴム用添加剤をゴムへ添加した際に分散が不十分となり、ゴム組成物の機械的強度が低下する。ゴム用加工助剤(C)のガラス転移点としては90℃以下が特に好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましく、60℃以下が最も好ましい。
【0032】
本発明で用いるゴム用加工助剤(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量で400〜60000が好ましく、より好ましくは500〜55000、更に好ましくは600〜50000である。数平均分子量が400未満であると、溶融粘度が低過ぎるために変性植物繊維(A)の微細化が不十分となり、その結果、成形体の機械的強度を低下させる恐れがある。また、数平均分子量が60000を超えると溶融粘度が高くなるため、変性植物繊維(A)のゴム用加工助剤(C)との混練、もしくはゴム添加剤とゴムの混練が行い難く、変性植物繊維(A)の分散が不十分となり、成形体の機械的強度を低下させる恐れがある。
【0033】
本発明のゴム用添加剤は、植物繊維(a)と変性合成ゴム(B)を混練中に反応させてエステル化し、それを更にゴム用加工助剤(C)と混練して変性植物繊維(A)を微細化することでも得られる。この手法を用いた場合、溶剤を加えて変性する工程が無くなり、変性反応後に溶剤を取り除く工程も無くなるため、生産性が向上すると共に、環境負荷が低減される。
【0034】
本願発明において、変性植物繊維(A)が微細化されるとは、変性植物繊維(A)が解繊されることを意味し、具体的には、変性植物繊維が幅方向に5μm以下に解繊されていることを意味する。なお、繊維の解繊状態は後述する実施例において行われる方法により観察することができる。
【0035】
本発明のゴム用添加剤をゴムへ添加することで、変性植物繊維(A)が均一分散することで硬度の向上したゴム組成物が得られる。ゴム用添加剤を添加するゴム(以下、マトリックスゴムと記載する。)は特に限定されないが、具体的には天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、及びそれらの変性物が挙げられ、天然ゴム、ポリブタジエン、及びそれらの変性物が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
評価方法は、以下のとおりである。
(1)解繊状態の測定
ゴム用添加剤(もしくはゴム用添加剤を添加したゴム)0.2gとテトラヒドロフラン(もしくはトルエン)100gをフラスコに入れ、超音波を掛けて可溶部を溶かして変性植物繊維を分散させ、変性植物繊維スラリーを得た。その後スラリーをサンプリングし、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製 VHX−600)を用いて倍率1000倍で繊維の分散状態を観察した。
幅5μm以上の繊維が100本中1本又は0本である場合を○、
幅5μm以上の繊維が100本中2本以上存在し、かつ、幅10μm以上の繊維が100本中1本又は0本である場合を△、
幅10μm以上の繊維が100本中2本以上存在する場合を×とした。
(2)変性反応進行の確認
変性反応の進行はPerkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光分析装置「Spectrum one」を用いて観察した。具体的には1650〜1750cm−1に生じるエステル結合のカルボニル炭素と酸素の伸縮振動に由来するピーク強度が変性反応の進行に伴い増強することから、定性的に確認した。
(3)変性合成ゴムの植物繊維に対する付加率の測定
付加率は式(I)の通り、植物繊維の変性前後の質量変化から算出した。付加率を評価するサンプルは十分な量の溶剤で洗浄した上で測定に供した。洗浄溶剤には変性合成ゴムの良溶媒を適宜選択して用いた。

Wp=(W-Ws)×100/Ws・・・(I)

Wp :変性合成ゴムの植物繊維に対する付加率(質量%)
W :変性した植物繊維(変性植物繊維)の乾燥質量(g)
Ws :変性前の植物繊維の乾燥質量(g)
(4)固形分の測定
固形分の測定には赤外線水分計((株)ケット科学研究所製:「FD−620」)を用いた。
(5)分散状態の確認
マトリックスゴム(天然ゴム)100質量部へゴム添加剤を植物繊維分が5質量部となるように添加し、混練した。得られた混練物を100℃でプレスし、厚さ0.1mmのゴムフィルムを作成した。その後、ゴムフィルムをクロスニコルの状態とした偏光板で挟み、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製 VHX−600)を用いて倍率100倍でゴム中での繊維の分散状態を観察した。短軸長100μm以上の繊維凝集物が存在する場合を×とし、短軸長100μm以上の繊維凝集物が無い場合を○とした。
(6)ゴム硬度測定
A型硬さ試験機(株式会社テクロック製、GS−706N)を使用し、JIS K 6253に則って円盤状ゴム成形物のゴム硬度を測定した。
【0038】
(実施例1)
[変性植物繊維(A−1)の製造]
容器へ水を含んだ針葉樹晒クラフトパルプ(以下、NBKPと記載する。)250.0質量部(固形分50.0質量部)とN-メチルピロリドン200.0質量部を仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、RiconR 130MA13(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、1,2付加率28%)を50.0質量部と、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.5質量部投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性植物繊維A−1を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性植物繊維A−1における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は36質量%(植物繊維100質量部に対して、付加した変性合成ゴムの比率が36質量部。以下、実施例2以降の「付加率」は、特に断りが無い場合は植物繊維100質量部に対する付加した変性合成ゴムの質量部を示す。)であった。
【0039】
(応用実施例1)
天然ゴム(TSR20)100質量部に対して、植物繊維分が5質量部となるように変性植物繊維A−1を6.8質量部添加し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で混練した。得られた混練物を100℃でプレスして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0040】
(応用比較例1)
天然ゴム(TSR20)100質量部に対して、植物繊維分が5質量部となるように乾燥NBKPを添加し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で混練した。得られた混練物を100℃でプレスして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0041】
(応用比較例2)
RiconR 130MA13 20質量部と、天然ゴム(TSR20)80質量部を混合して得たマトリックスゴム100質量部に対して、植物繊維分が5質量部となるようにNBKPを添加し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で混練した。得られた混練物を100℃でプレスして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0042】
【表1】
【0043】
表3中の略号は以下の通りである。
天然ゴム:TSR20
130MA13:RiconR130MA13(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン)、数平均分子量2,900
【0044】
(実施例2)
[変性植物繊維(A−2)の製造]
容器へ水を含んだNBKP250.0質量部(固形分50.0質量部)とN-メチルピロリドン200.0質量部を仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、RicobondR 1756(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、1,2付加率70%)を50.0質量部と、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.5質量部投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性植物繊維A−2を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性植物繊維A−2における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は27質量%であった。
【0045】
(実施例3)
[変性植物繊維(A−3)の製造]
容器へ水を含んだNBKP250.0質量部(固形分50.0質量部)とN-メチルピロリドン200.0質量部を仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、POLYVESTR MA75(エボニック社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、1,2付加率1%)を50.0質量部と、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.5質量部投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性植物繊維A−3を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性植物繊維A−3における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は39質量%であった。
【0046】
(実施例4)
[変性植物繊維(A−4)の製造]
容器へ水を含んだNBKP250.0質量部(固形分50.0質量部)とN-メチルピロリドン200.0質量部を仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、RiconR 130MA13を20.0質量部と、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.5質量部投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性植物繊維A−4を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性植物繊維A−4における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は12質量%であった。
【0047】
(実施例5)
[変性植物繊維(A−5)の製造]
容器へ水を含んだNBKP250.0質量部(固形分50.0質量部)とN-メチルピロリドン200.0質量部を仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、RicobondR 1731(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、1,2付加率28%)を50.0質量部と、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.5質量部投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性植物繊維A−5を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性植物繊維A−5における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は43質量%であった。
【0048】
(実施例6)
[変性植物繊維(A−6)の製造]
容器へ水を含んだNBKP250.0質量部(固形分50.0質量部)とN-メチルピロリドン200.0質量部を仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、RiconR 130MA8を50.0質量部と、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.5質量部投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性植物繊維A−5を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性植物繊維A−6における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は50質量%であった。
【0049】
[比較例用変性剤RB−1の合成]
容器にプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート 540.0質量部を投入し、146℃に加熱した。系内を146℃に保ち、窒素置換を行った後、ブチルアクリレート 350.0質量部とスチレン 50.0質量部と無水マレイン酸 50.0質量部とプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート 50.0質量部と2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル 22.5質量部を4時間かけて滴下した。滴下終了後、系内を146℃で2時間保持し、その後更に減圧したまま2時間保持することによりプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートを留去して数平均分子量1500、重量平均分子量4000の、変性合成ゴムではない変性剤RB−1を得た。
【0050】
[ゴム用添加剤の製造]
(実施例7)
変性植物繊維A−1とゴム用加工助剤(C)であるペトコールRLX(東ソー(株)製、石油樹脂、数平均分子量700、ガラス転移点49℃)を植物繊維分が40質量%となるようにラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、溶融混練してゴム用添加剤E−1を得た。
【0051】
(実施例8〜12)
変性植物繊維として表2に示す変性植物繊維を使用し、植物繊維分を表2に示す通りとした他は実施例7と同様にしてゴム用添加剤E−2〜E−6を得た。
【0052】
(実施例13)
乾燥NBKP 20.0質量部、ジメチルラウリルアミン 1.0質量部、RiconR 130MA13 10.0質量部、ペトコールRLX 19.0質量部をラボプラストミルへ投入し、溶融混練して変性植物繊維A−7を含むゴム用添加剤E−7を得た。変性植物繊維A−7における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は33質量%であった。
【0053】
(実施例14)
乾燥NBKP 30.0質量部、ジメチルラウリルアミン 1.5質量部、LIR−403((株)クラレ製、無水マレイン酸変性ポリイソプレン、数平均分子量34000、ガラス転移点−60℃) 18.5質量部をラボプラストミルへ投入し、混練物を得た。得られた混練物 33.3質量部とゴム加工助剤(C)であるLIR−403 16.7質量部をラボプラストミルへ投入し、混練して変性植物繊維A−8を含むゴム用添加剤E−8を得た。変性植物繊維A−8における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は51質量%であった。
【0054】
(実施例15)
乾燥NBKP 20.0質量部、ジメチルラウリルアミン 1.0質量部、RiconR 130MA13 12.5質量部、ゴム用加工助剤(C)であるPR−12686F(住友ベークライト(株)製、ノボラックレジン、数平均分子量900、ガラス転移点45℃) 16.5質量部をラボプラストミルへ投入し、溶融混練して変性植物繊維A−9を含むゴム用添加剤E−9を得た。変性植物繊維A−9における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は15質量%であった。
【0055】
(実施例16)
乾燥NBKP 20.0質量部、ジメチルラウリルアミン 1.0質量部、RicobondR1756(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン)6.0質量部、ヘキサデセニルコハク酸無水物 4.0質量部をラボプラストミルへ投入し、変性植物繊維含有混練物を得た。得られた混練物 30.0質量部とゴム加工助剤(C)であるRicobondR1756 20.0質量部をラボプラストミルへ投入し、混練して変性植物繊維A−10を含むゴム用添加剤E−10を得た。変性植物繊維A−10における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は28質量%であった。
【0056】
(比較例1)
乾燥NBKP 20.0質量部とペトコールRLX 30.0質量部をラボプラストミルへ投入し、溶融混練してゴム用添加剤RE−1を得た。
【0057】
(比較例2)
乾燥NBKP 20.0質量部とRiconR 130MA13 10.0質量部とペトコールRLX 20.0質量部をラボプラストミルへ投入し、溶融混練して変性植物繊維RA−1を含む混練物を得た。変性植物繊維RA−1における、植物繊維に対する変性合成ゴムの付加率は3質量%であった。得られた混練物をラボプラストミルへ投入し、混練してゴム用添加剤RE−2を得た。
【0058】
(比較例3)
乾燥NBKP 20.0質量部、ジメチルラウリルアミン 1.0質量部、変性合成ゴムではない変性剤RB−1 10.0質量部、ペトコールRLX 19.0質量部をラボプラストミルへ投入し、溶融混練して変性植物繊維RA−2を含むゴム用添加剤RE−3を得た。変性植物繊維RA−2における、植物繊維に対するRB−1の付加率は19質量%であった。
【0059】
(比較例4)
変性植物繊維A−1とゴム用加工助剤(C)である日石ネオポリマー170S(JX日鉱日石エネルギー(株)製、石油樹脂、数平均分子量990、ガラス転移点105℃)を植物繊維分が40質量%となるようにラボプラストミル(東洋精機(株)製)へ投入し、溶融混練してゴム用添加剤RE−4を得た。
【0060】
(比較例5〜7)
変性植物繊維として表2に示す変性植物繊維を使用し、植物繊維分を表2に示す通りとした他は実施例2と同様にしてゴム用添加剤RE−5〜7を得た。
【0061】
【表2】
【0062】
表2中の略号は以下の通りである。
ペトコールRLX:東ソー(株)製、石油系樹脂、数平均分子量700、ガラス転移点49℃
LIR−403:(株)クラレ製、無水マレイン酸変性ポリイソプレン、
数平均分子量34000、ガラス転移点−60℃
PR−12686F:住友ベークライト(株)製、ノボラックレジン、
数平均分子量900、ガラス転移点45℃
日石ネオポリマー170S:JX日鉱日石エネルギー(株)製、石油系樹脂、
数平均分子量990、ガラス転移点105℃
RicobondR1756:クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、
数平均分子量2500、ガラス転移点−18℃
【0063】
(応用実施例2)
天然ゴム(TSR20)100質量部に対して、植物繊維分が5質量部となるようにゴム用添加剤E−1を添加し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で混練した。得られた混練物を100℃でプレスして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0064】
(応用実施例3〜11)
ゴム用添加剤として表3に示すゴム用添加剤を使用し、植物繊維分を表3に示す通りとした他は応用実施例2と同様にして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0065】
(応用比較例3)
天然ゴム(TSR20)100質量部に対して、植物繊維分が5質量部となるようにゴム用添加剤RE−1を添加し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で混練した。得られた混練物を100℃でプレスして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0066】
(応用比較例4)
20質量部のRiconR 130MA13と80質量部の天然ゴム(TSR20)80重質量部を混合して得たマトリックスゴム100質量部に対して、植物繊維分が5質量部となるようにRE−1を添加し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)で混練した。得られた混練物を100℃でプレスして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0067】
(応用比較例5〜10)
ゴム用添加剤として表3に示すゴム用添加剤を使用し、植物繊維分を表3に示す通りとした他は応用比較例3と同様にして厚さ0.1mmのゴムフィルムを得た。
【0068】
【表3】
【0069】
表3中の略号は以下の通りである。
天然ゴム:TSR20
130MA13:RiconR130MA13(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン)
【0070】
(応用実施例12)
天然ゴム(TSR20)100質量部へ植物繊維分が1.88質量部となるようにゴム用添加剤E−1を加え、更にステアリン酸1.5質量部、酸化亜鉛3.0質量部、硫黄2.0質量部、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド1.5質量部を添加して混練物を作製した。得られた混練物を160℃で20分間のプレス成形と加硫を行い、直径25mm、厚さ3mmの円盤状に成形したゴム物組成物F−1を得た。
【0071】
(応用実施例13)
ゴム用添加剤E−3を使用し、実施例18と同様の方法でゴム組成物F−2を得た。
【0072】
(応用比較例11)
ゴム用添加剤RE−3を使用し、実施例18と同様の方法でゴム組成物RF−1を得た。
【0073】
(応用比較例12)
RiconR130MA13を20質量部と天然ゴム(TSR20)80質量部に対して、植物繊維分が1.88質量部となるようにNBKPを添加し、その他は実施例18と同様の方法でゴム組成物RF−2を得た。
【0074】
【表4】
【0075】
表4中の略号は以下の通りである。
天然ゴム:TSR20
130MA13:RiconR130MA13(クレイバレー社製、無水マレイン酸変性ポリブタジエン)
【0076】
応用実施例1と応用比較例1〜2の結果から、植物繊維(a)に変性合成ゴム(B)を共有結合させることでゴム中での分散状態が改善することがわかる。
【0077】
応用実施例2〜11と応用比較例3〜4から、植物繊維を変性しなければ繊維を十分に解繊することができず、変性合成ゴム(B)を植物繊維(a)へ共有結合させなければ解繊性と分散性を両立することができないとわかる。
【0078】
応用実施例2と応用比較例5から、十分な量の変性合成ゴム(B)を植物繊維(a)へ共有結合させなければ、繊維を十分に解繊できず、分散性も確保出来ないとわかる。
【0079】
応用実施例2と応用比較例6から、変性合成ゴム(B)を植物繊維(a)へ予め共有結合させなければ分散性を確保出来ないとわかる。
【0080】
応用実施例2と応用比較例7から、ゴム用加工助剤(C)のガラス転移点が100℃を超えると、解繊性と分散性が共に確保出来ないとわかる。
【0081】
ゴム用添加剤が変性植物繊維(A)を67質量%含む応用実施例5と、78質量%含む応用比較例8との比較から、ゴム用添加剤中の変性植物繊維(A)が75質量%を超えると、解繊性と分散性が共に確保出来ないとわかる。
【0082】
応用実施例2と応用比較例10から、ゴム用加工助剤(C)の数平均分子量が400を下回ると、解繊性と分散性が共に確保出来ないとわかる。
【0083】
応用実施例2,3,7,9から、変性合成ゴム(B)はゴムの種類に依らず効果が有り、重合方法の差とそれに伴う詳細な化学構造が異なっても解繊性と分散性が確保できるとわかる。
【0084】
応用実施例2と8から、植物繊維の変性手法を変えても解繊性と分散性が確保できるとわかる。
【0085】
応用実施例8、9、10、11から、ゴム用加工助剤(C)の種類を変えても解繊性と分散性が確保できるとわかる。
【0086】
応用実施例12〜13と応用比較例11〜12から、変性合成ゴム(B)を植物繊維(a)へ予め共有結合させることでゴム組成物の硬度が向上することがわかる。
【0087】
応用実施例1〜13より、本発明のゴム用添加剤を利用すれば、植物繊維とゴムとの複合化に水を用いなくとも植物繊維をゴム中へ簡便かつ良好に分散させ得ることがわかる。
図1