特許第6137421号(P6137421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6137421パワー半導体モジュール及びこれを用いた電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137421
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール及びこれを用いた電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20170522BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20170522BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01L23/48 G
   H01L23/48 P
   H01L25/04 C
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-564652(P2016-564652)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(86)【国際出願番号】JP2015083895
(87)【国際公開番号】WO2016104088
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2016年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-260666(P2014-260666)
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(72)【発明者】
【氏名】嶋川 茂
(72)【発明者】
【氏名】須永 崇
(72)【発明者】
【氏名】関根 孝明
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0251859(US,A1)
【文献】 特開2009−231805(JP,A)
【文献】 特開2009−110981(JP,A)
【文献】 特開2012−249457(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0032855(US,A1)
【文献】 特開2013−179744(JP,A)
【文献】 特開2004−236470(JP,A)
【文献】 特開平09−163681(JP,A)
【文献】 特開2012−239256(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0267742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48−23/50
H01L 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの外部接続端子が形成された金属板に1つの電極部分で接続されたパワー半導体ベアチップと前記パワー半導体ベアチップの他の電極部分と電気的に接続された他の外部接続端子とからなるパワー半導体要素を複数配列して同一のパッケージ内に収容して形成したパワー半導体モジュールであって、
前記複数のパワー半導体要素は基本的に同一の外形を有しており、
前記複数のパワー半導体要素の前記パワー半導体ベアチップの電極は、金属製コネクタにより、前記複数のパワー半導体要素間で相互接続されており、
前記パッケージは前記複数のパワー半導体要素を電気絶縁性の樹脂で封止した樹脂モールドパッケージであり、
前記パワー半導体要素は、単一のパワー半導体ベアチップのパワー半導体パッケージ内部に用いられるものと同様の構成要素であり、前記樹脂モールドパッケージに封止して前記相互接続することにより電気的結合から外れる外部接続端子をそのまま有し、
前記パワー半導体ベアチップは電界効果トランジスタのベアチップであり、
前記ベアチップのドレイン電極を前記1つの外部接続端子が形成された金属板に接合し、
前記ベアチップのゲート電極及びソース電極は前記ドレイン電極よりも前記1つの外部接続端子から離間した側に設けられ、
前記ベアチップの電極の一部は、前記パワー半導体要素間で2本の前記金属製コネクタにより相互接続されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項2】
前記パワー半導体要素を2つ並列に配列し、一方のパワー半導体要素のベアチップのソース電極を、他の一方のパワー半導体要素のベアチップのソース電極に2本の金属製コネクタにより電気的に接続させ、機能的に一体化するように構成した請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項3】
前記パワー半導体要素を3つ並列に配列し、一方の端のパワー半導体要素のベアチップのソース電極を、中央のパワー半導体要素の金属平板部分を介して前記中央のパワー半導体要素のベアチップのドレイン電極に2本の金属製コネクタにより電気的に接続させており、更に、前記中央のパワー半導体要素の金属平板部分を他の一方の端のパワー半導体要素のベアチップのソース電極に他の2本の金属製コネクタにより電気的に接続させ、機能的に一体化するように構成した請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項4】
前記1つの外部接続端子と前記他の外部接続端子とは、相互に平行に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項5】
前記配列は、前記パワー半導体要素を平面上に並列して配列したものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項6】
前記配列は、前記パワー半導体要素を仮想的な曲面に沿って並列して配列したものである請求項1乃至のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項7】
前記仮想的な曲面が円筒の側面であり、前記外部接続端子は前記円筒の主軸の方向と平行である請求項6に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項8】
前記配列は、前記パワー半導体要素を仮想的な三角柱の各側面に沿って並列して配列したものであり、前記仮想的な三角柱の内側にはヒートシンクを配し、前記外部接続端子は前記三角柱の主軸の方向と平行である請求項3又は4に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項9】
前記金属板の材料が銅又はアルミニウムである請求項1乃至8のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項10】
前記金属板は前記パッケージ内部から外部へ露出する露出部分を有しており、前記露出部分を外部に設けた放熱器に接続可能な請求項1乃至9のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項11】
請求項2及び3に記載のパワー半導体モジュールを用いた、電動パワーステアリング装置の制御装置であって、
前記電動パワーステアリング装置に用いる3相ブラシレスモータの各1相の制御のための前記パワー半導体要素3つを同一のパッケージ内に収容した請求項3に記載のパワー半導体モジュールを3組有すると共に、前記電動パワーステアリング装置の電源側の制御のための前記パワー半導体要素2つを同一のパッケージ内に収容した請求項2に記載のパワー半導体モジュールを1組有し、
これら4組のパワー半導体モジュールは、前記電動パワーステアリング装置の制御装置又は前記3相ブラシレスモータの側面形状に合わせて曲面形状に形成され、前記電動パワーステアリング装置の制御装置又は前記3相ブラシレスモータの側面に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールを用いることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板に実装されたパワー半導体を、少なくとも2つ以上機能的に連結して、単一のパッケージ内に収めた、パワー半導体モジュール及びこれを用いた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ回路や電源回路のように、大電力を扱うパワー半導体等を用いた電子回路は、こうした回路を用いる機器の小型化に合わせて、更に一層の小型化が要請される場合がある。そして、このようなパワー半導体を用いた回路の一層の小型化のためには、併せて、小型化のために高密度に実装されたパワー半導体等の放熱を低コストで効率的に行うことも必要となっている。
【0003】
例えば、自動車などの車両に用いられる電動パワーステアリング装置(EPS)に使用されるモータなどの回転電気機器の制御装置では、インバータ回路やリレー回路が複数のパワー半導体などにより構成されている。そのため、これらの複数のパワー半導体を単一のモジュールとして一体化できれば、上記制御装置の一層の小型化を通じて、上記電動パワーステアリング装置(EPS)全体の小型化に貢献することが可能である。
【0004】
一方、こうした複数のパワー半導体をモジュール化したものとして、例えば、特許第454884号公報(特許文献1)や再公表特許WO2012/127696号公報(特許文献2)のような技術が開示されている。
【0005】
そして、上記のうち、特許文献1には、導電性の放熱基板と、前記放熱基板上に直接に配設された半導体素子と、それぞれの一方端が前記半導体素子の主電極に電気的に接続された複数の主電極板と、前記放熱基板、前記半導体素子、前記複数の主電極板を樹脂封止する樹脂パッケージと、を備え、前記放熱基板の外形寸法は、前記樹脂パッケージの外形寸法と同等の大きさであって、前記複数の主電極板の、それぞれの他方端は、前記樹脂パッケージの上面側において外部に露出し、前記樹脂パッケージは、モールド成形により一体で成形されている半導体装置が記載されている。そして、上記導電性の放熱基板の半導体素子が配設された面とは反対面側部分のモールドパッケージは薄く成形されており、本導体素子からの発熱は、放熱基板を経て、上記半導体装置の外部に取付けられたヒートシンクなどに放熱される構成となっている。
【0006】
また、上記特許文献2には、同一平面状に配置された複数の第1金属板、この第1金属板に搭載されたパワー半導体チップ、及び橋桁部とこの橋桁部を支える脚部とで構成され、且つこの脚部によって、上記パワー半導体チップの電極間、パワー半導体チップの電極と上記第1金属板間を適宜ハンダ接合する跨線橋状第2金属板を有し、これらの部材を電気絶縁性樹脂で封止した樹脂パッケージで構成されたパワー半導体モジュールであって、上記脚部のハンダ接合部は、折り曲げ加工によって平面状に形成されるとともに上記橋桁部より低い位置に設けたことを特徴とするパワー半導体モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4540884号公報
【特許文献2】再公表特許WO2012/127696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載された半導体装置では、複数の主電極板(外部接続電極板)と放熱基板とは、それぞれ個別に用意されたものを半田付けなどで接合した構成を有していた。そのため、こうした個別の要素を接合するための領域が別途必要となり、その領域に必要とされる面積の分だけモジュールが余分に大きくなってしまい、小型化を阻害する問題があった。また、インバータ回路等を構成する際にはモジュール側基板上に回路配線を施す必要があり、結果として、モジュールの小型化を阻害する問題があった。
【0009】
さらに、上記特許文献1に記載された半導体装置では、素子乃至外部接続電極板間を複数のアルミニウム配線WRによって電気的に接続している。しかし、こうした構造を採用する場合には加工上の制約があり、また、多数の配線を行う必要があることから信頼性の面で問題があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された半導体モジュールは、上記特許文献1に記載されたものとは異なり、パッケージされていないパワー半導体チップを複数の第1金属板に搭載して、これを跨線橋状第2金属板で電気的に接続し、全体を樹脂パッケージで封止したものである。そのため、上記特許文献2に記載された発明では、上記第1金属板と第2金属板とを上記発明の実施のために別途形成して準備する必要があることから高コストであり、更に上記第2金属板と第2金属板との接合作業を行う必要があるため、更に加工の際の信頼性の問題が生じると共に一層のコストアップになってしまうという課題があった。また、上記特許文献2に記載された発明では、上記のように複数の第1金属板に上記半導体チップを搭載し、一つのパッケージ内に収めることにより小型化が可能ではあるものの、半導体モジュールを構成する半導体の数と比較して、上記半導体チップが直接搭載される第一金属板の放熱に用いることの可能な面積が相対的に減少するため、十分な放熱が図れないという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、従来技術に存在する上記問題や課題の解決を目的としたものであり、汎用品から構成されるパワー半導体要素を複数個用いて、必要なパワー半導体要素間内部接続を行い、小型化、放熱性向上、内部抵抗低減等を達成し、低コストかつ信頼性の高いパワー半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、少なくとも1つの外部接続端子が形成された金属板に1つの電極部分で接続されたパワー半導体ベアチップと前記パワー半導体ベアチップの他の電極部分と電気的に接続された他の外部接続端子とからなるパワー半導体要素を複数配列して同一のパッケージ内に収容して形成したパワー半導体モジュールであって、前記複数のパワー半導体要素は基本的に同一の外形を有しており、前記複数のパワー半導体要素の前記パワー半導体ベアチップの電極は、金属製コネクタにより、前記複数のパワー半導体要素間で相互接続されており、前記パッケージは前記複数のパワー半導体要素を電気絶縁性の樹脂で封止した樹脂モールドパッケージであり、前記パワー半導体要素は、単一のパワー半導体ベアチップのパワー半導体パッケージ内部に用いられるものと同様の構成要素であり、前記樹脂モールドパッケージに封止して前記相互接続することにより電気的結合から外れる外部接続端子をそのまま有し、前記パワー半導体ベアチップは電界効果トランジスタのベアチップであり、前記ベアチップのドレイン電極を前記1つの外部接続端子が形成された金属板に接合し、前記ベアチップのゲート電極及びソース電極は前記ドレイン電極よりも前記1つの外部接続端子から離間した側に設けられ、前記ベアチップの電極の一部は、前記パワー半導体要素間で2本の前記金属製コネクタにより相互接続されていることを特徴とするパワー半導体モジュールを提供する。
【0013】
また、上記課題の解決は、前記パワー半導体要素を2つ並列に配列し、一方のパワー半導体要素のベアチップのソース電極を、他の一方のパワー半導体要素のベアチップのソース電極に2本の金属製コネクタにより電気的に接続させ、機能的に一体化するように構成したことにより、或いは、前記パワー半導体要素を3つ並列に配列し、一方の端のパワー半導体要素のベアチップのソース電極を、中央のパワー半導体要素の金属平板部分を介して前記中央のパワー半導体要素のベアチップのドレイン電極に2本の金属製コネクタにより電気的に接続させており、更に、前記中央のパワー半導体要素の金属平板部分を他の一方の端のパワー半導体要素のベアチップのソース電極に他の2本の金属製コネクタにより電気的に接続させ、機能的に一体化するように構成したことにより、或いは、前記1つの外部接続端子と前記他の外部接続端子とは、相互に平行に配置されていることにより、より効果的に達成される。
【0014】
また、上記課題の解決は、前記配列は、前記パワー半導体要素を平面上に並列して配列したものであることにより、又は、前記配列は、前記パワー半導体要素を仮想的な曲面に沿って並列して配列したものであることにより、又は、前記仮想的な曲面が円筒の側面であり、前記外部接続端子は前記円筒の主軸の方向と平行であることにより、若しくは、前記配列は、前記パワー半導体要素を仮想的な三角柱の各側面に沿って並列して配列したものであり、前記仮想的な三角柱の内側にはヒートシンクを配し、前記外部接続端子は前記三角柱の主軸の方向と平行であることにより、より効果的に達成される。
【0015】
また、上記課題の解決は、前記金属板の材料が銅又はアルミニウムであることにより、或いは、前記金属板は前記パッケージ内部から外部へ露出する露出部分を有しており、前記露出部分を外部に設けた放熱器に接続可能なことにより、より効果的に達成される。
【0016】
また、上記課題を解決するために本発明は、パワー半導体要素を2つ並列に配列し機能的に一体化するように構成したパワー半導体モジュール及びパワー半導体要素を3つ並列に配列し機能的に一体化するように構成したパワー半導体モジュールを用いた、電動パワーステアリング装置の制御装置であって、前記電動パワーステアリング装置に用いる3相ブラシレスモータの各1相の制御のための前記パワー半導体要素3つを同一のパッケージ内に収容したパワー半導体モジュールを3組有すると共に、前記電動パワーステアリング装置の電源側の制御のための前記パワー半導体要素2つを同一のパッケージ内に収容したパワー半導体モジュールを1組有し、これら4組のパワー半導体モジュールは、前記電動パワーステアリング装置の制御装置又は前記3相ブラシレスモータの側面形状に合わせて曲面形状に形成され、前記電動パワーステアリング装置の制御装置又は前記3相ブラシレスモータの側面に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置を提供する。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明は、上記に記載のパワー半導体モジュールを用いることを特徴とする電動パワーステアリング装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、専ら汎用品として入手が容易なパワー半導体要素を複数個(例えば、2個〜3個)用いて、それらを平面上又は曲面上に相互に並行に配列する。そして、上記パワー半導体要素を構成する外部接続端子(リード)は基本的に汎用品をそのまま使用するが、大電流が流れる上記外部接続端子(リード)部分については、上記パワー半導体要素を構成する半導体ベアチップ間をクリップまたはワイヤで部分的に接続して配線抵抗と発熱を低減し、更に、上記複数のパワー半導体要素を樹脂パッケージで一体に成形するという構成を採用している。
【0019】
そのため、一体化された複数のパワー半導体要素からなる本発明の半導体モジュールを、例えば、三相誘導モータのインバータ制御に用いる場合には、通常一相分の制御に使用される3個のFET(上側アーム部、下側アーム部、モータリレー部)を1セットとして組み合わせて使用することが可能である。そして、このような使用により、低コスト(汎用品を使用)、小型化(省スペース)、省配線化(パワー半導体チップ間の直接接続による効果)、発熱対策(3個のFETが同時にONしない(1つが必ずOFFしている))等の効果を得ることが可能である。
【0020】
また、同様に、電動モータ等の電源側の制御に用いる複数のパワー半導体を1パッケージからなる半導体モジュールとして構成する事で、上記同様の効果を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電動パワーステアリング装置の一般的な構成を示した図である。
図2】電動パワーステアリング装置のコントロールユニット(ECU)を示すブロック図である。
図3】電動パワーステアリング装置のモータ制御部の構成例を示す線図である。
図4】本発明のパワー半導体要素の例を示す斜視図であり、(A)はその全体像を示した斜視図、(B)はFETの構成例を示した斜視図である。
図5】本発明のパワー半導体モジュールの例を示す図であり、(A)はパッケージ部分を含まない正面図、(B)はその回路図、(C)は正面図、(D)はその背面図である。
図6】本発明のパワー半導体モジュールの例を示す斜視図であり、(A)はその全体像を示した斜視図、(B)はパッケージ部分を含まない斜視図である。
図7】本発明のパワー半導体モジュールの例を示す図であり、(A)はパッケージ部分を含まない正面図、(B)はその回路図、(C)は正面図、(D)はその背面図である。
図8】本発明のパワー半導体モジュールの例を示す斜視図であり、(A)はその全体像を示した斜視図、(B)はパッケージ部分を含まない斜視図である。
図9】本発明のパワー半導体モジュールの例を示す斜視図である。
図10】本発明のパワー半導体モジュールの例を示す図であり、(A)は、パッケージ部分を含まない斜視図であり、(B)は、その上面図、(C)は、その全体像を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明のパワー半導体モジュールの構成例を車両の電動パワーステアリング装置などに用いられる電動モータの制御装置に用いた場合を例として、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
ここで、上記電動パワーステアリング装置は、車両のステアリング機構に電動モータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与するものである。そして、上記電動パワーステアリング装置では、電力供給部(インバータ)から供給される電力により制御されるモータの駆動力を、減速機構を介して、ギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に上記操舵補助力を付与するようになっている。そして、このような電動パワーステアリング装置(EPS)は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるために、モータ電流のフィードバック制御を行っている。
【0024】
かかるフィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)と電動モータ電流検出値との差が小さくなるように電動モータ印加電圧を調整するものであり、電動モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティ(Duty)の調整で行っている。
【0025】
上記の電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構3の減速ギア、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10及び操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速機構3の減速ギア(ギア比n)を介してコラム軸2に連結されている。
【0026】
そして、上記の電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)100には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。
【0027】
このように構成されるコントロールユニット100では、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって電動モータ20に供給する電流を制御する。なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、電動モータ20に連結されたレゾルバ等の回転位置センサから操舵角を取得することも可能である。
【0028】
また、上記コントロールユニット100には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)50が接続されており、車速VelはCAN50から受信することも可能である。また、コントロールユニット100には、CAN50以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN51も接続されている。
【0029】
また、上記コントロールユニット100は主としてCPU(MPUやMCU等も含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
【0030】
図2を参照してコントロールユニット100を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTh及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN50からの)車速Velは、電流指令値Iref1を演算する電流指令値演算部101に入力される。電流指令値演算部101は、入力された操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて、電動モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。電流指令値Iref1は加算部102Aを経て電流制限部103に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部102Bにフィードバック入力され、モータ電流値Imとの偏差I(Irefm−Im)が演算され、その偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI制御部104に入力される。PI制御部104で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部105に入力され、更にインバータ106を介して電動モータ20がPWM駆動される。電動モータ20の電流値Imはモータ電流検出器107で検出され、減算部102Bにフィードバックされる。インバータ106は駆動素子としてのFETのブリッジ回路で構成されている。
【0031】
上記電動モータ20にはレゾルバ等の回転センサ21が連結されており、回転センサ21からモータ回転角度θが出力され、更にモータ速度ωがモータ速度演算部22で演算される。
【0032】
また、加算部102Aには補償信号生成部110からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部110は、セルフアライニングトルク(SAT)113と慣性112を加算部114で加算し、その加算結果に更に収れん性111を加算部115で加算し、加算部115の加算結果を補償信号CMとしている。
【0033】
また、上記電動モータ20が3相ブラシレスモータの場合、PWM制御部105及びインバータ106の詳細は例えば図3に示すような構成となっており、PWM制御部105は、電圧制御指令値Vrefを所定式に従って3相分のPWMデューティ値D1〜D6を演算するデューティ演算部105Aと、PWMデューティ値D1〜D6で駆動素子としてのFETのゲートを駆動すると共に、デッドタイムの補償をしてON/OFFするゲート駆動部105Bとで構成されている。インバータ106は半導体スイッチング素子としてのFETの3相ブリッジ(FET1〜FET6)で構成されており、PWMデューティ値D1〜D6でON/OFFされることによってモータ20を駆動する。また、インバータ106と電動モータ20との間の電力供給線には、電力供給を行い又は遮断(ON/OFF)するための、モータ開放スイッチからなるモータリレー23が接続されている。そして、図3では、モータ開放スイッチとして、半導体スイッチング素子(例えば、FET7〜9)を使用したモータリレー23により、3相のうちの2相の電力供給をON/OFFする例を示している。
【0034】
そして、上記のように構成される電動パワーステアリング装置において、上記コントロールユニット100において使用される、本発明の半導体モジュールは、次のように構成されている。なお、以下の説明では、同一の構成要素については、他の形態を採り得るものについても同一の記号を用い、重複する説明や構成については、一部省略する場合がある。
【0035】
本発明は、2以上のパワー半導体用要素を機能的に接続して一つのパッケージ内に収めて、パワー半導体モジュールを構成するものである。そこで、最初に上記パワー半導体要素について、適宜図面を参照して説明する。
【0036】
図4は、本発明を構成するパワー半導体要素の例として、TO−220パッケージに用いられるようなパーツを例として示した図である。そして、図4(A)はその斜視図を示したものであり、図4(B)は、上記パワー半導体要素を構成するベアチップの例として、電界効果トランジスタ(FET)を用いた場合の当該FETの斜視図を示したものである。
【0037】
本発明を構成するパワー半導体要素400は、1つの外部接続端子410Bが形成された金属板410と、他の外部接続端子415と、パワー半導体ベアチップ430と、ワイヤ450とを基本構成要素としている。
【0038】
上記パワー半導体要素400のうち、1つの外部接続端子410Bが形成された金属板410は、上記パワー半導体ベアチップ430を実装するための金属平板部分410Aと上記1つの外部接続端子410Bとからなっている。そして、上記金属平板部分410Aは、銅やアルミニウムなどの金属からなる長方形状の平板により形成されており、上記平板の片面側には上記パワー半導体ベアチップ430が実装されており、本実施形態の場合には、更に、上記金属平板部分410Aを基板などの外部機器等に固定可能にするための穴410Cが穿設されている。なお、上記金属平板部分410Aについては、樹脂材によりパッケージングする際に、上記金属平板部分410Aの一部を外部に露出させることにより、上記外部機器等に接続するための電極及び放熱のための放熱板として活用することも可能である。そのため、上記のように放熱板として活用する場合には、上記穴410Cにボルト等を通して上記金属平板部分410Aを外部に設けたヒートシンク等に固定することも可能である。
【0039】
また、上記1つの外部接続端子部(外部接続端子という場合もある)410Bは、上記金属平板部分410Aから一体として構成された、上記金属平板部分410Aよりも小さな細長い長方形状の平板であり、上記パワー半導体ベアチップ430が実装された側に多少シフトして、上記金属平板部分410Aとは平行に形成されている。そして、上記1つの外部接続端子部410Bは、本発明のパワーモジュールが樹脂材によりパッケージングされて完成された後には、外部機器乃至デバイス等と上記ベアチップの一部とを基板などを通じて電気的に接続するための接続端子としての機能を果たす。
【0040】
また、上記パワー半導体要素400のうち、他の外部接続端子415は、上記半導体ベアチップ430の電極のうち上記金属板410に接続されたものとは別の電極を接続して、上記別の電極と、上記外部機器乃至デバイス等とを基板などを通じて電気的に接続するための接続端子としての機能を果たすものである。
【0041】
そのため、上記外部接続端子415は、接続される上記半導体ベアチップ430の種類により変動する電極の数に応じて、複数必要となる。本実施形態の場合には、上記半導体ベアチップ430として上記電極の数が3つであるFETを用いており、上記3つの電極のうちの1つは上記金属平板部分410Aに接続されていることから、上記外部接続端子415の数は2つとなっている。また、上記外部接続端子415の形態は特に限定を設けるものではないが、本実施形態では、上記金属板410に形成されている外部接続端子部410Bとほぼ同形の細長い長方形状をした板状を基本とする形態をしており、上記外部接続端子部410Bと上記外部接続端子415とを構成する上記細長い長方形状の長辺部分が、相互に平行になるように配設されている。
【0042】
また、上記外部接続端子415は、上記金属板410とは電気的に絶縁されているため、構成上も別体になっており、パッケージングされた場合に上記金属板410に形成されている外部接続端子410Bと上記のように平行な一列になるように、上記金属板410が形成する平面よりも上記パワー半導体が形成された方向に多少シフトして配置するようになっている。
【0043】
また、上記パワー半導体要素400のうち、パワー半導体ベアチップ430は、図4(B)に斜視図で示したように、半導体等により、全体として四角形状に構成されており、上記のように、金属板410の片面側に実装されるものである。そして、本実施形態の場合には、上記パワー半導体ベアチップ430は、FETであり、上記FETのドレイン電極435が上記パワー半導体ベアチップ430の下面に配され、ソース電極431とゲート電極433とが、上記ドレイン電極435よりも上側になるように構成されている。そのため、上記パワー半導体ベアチップ430を上記金属板410に上記ドレイン電極435側から実装した場合には、上記ソース電極431とゲート電極433とは、上記金属板410側から離間するような配置となる。
【0044】
また、上記ソース電極431とゲート電極433とは、基本的には、上記外部接続端子415とワイヤ450によって電気的にそれぞれ接続されるが、本発明の半導体モジュールでは、上記パワー半導体要素400を複数集めて機能的に配置する際に、後述するように、上記FETの電極相互間を金属製コネクタ(クリップ)510またはワイヤ450により、電気的に接続する場合がある。
【0045】
本発明を構成するパワー半導体要素400は、例えば、上記のように構成されるものであるが、上記に例示したTO−220パッケージに用いられるようなものに限られるものではない。そのため、単一のパワー半導体パッケージ内部に用いられているパワー半導体の構成要素であれば、本発明の趣旨に沿って、汎用品等であっても、本発明のパワー半導体モジュールに活用することが可能である。
【0046】
次に、本発明を構成する上記パワー半導体要素を複数集めて機能的に一体化した本発明のパワー半導体モジュールについて、適宜図面を参照して説明する。
【0047】
図5及び図6は、上記のようなパワー半導体要素400を3つ集めた上で、更に機能的に結合して単一のパッケージとしてまとめ、本発明のパワー半導体モジュールとして完成させた、実施形態500の例を示したものである。
【0048】
そして、図5のうち、(A)はパッケージ部分を含まない正面図、(B)はその回路図、(C)は正面図、(D)はその背面図を示し、図6のうち、(A)はその全体像を示した斜視図、図6(B)はパッケージ部分を含まない斜視図を示している。
【0049】
本発明の上記実施形態500では、図5(A)に示したように、上述したようなパワー半導体要素400を3つ並列に平面上に配列したうえで、これを金属製コネクタ(クリップ)510またはワイヤ450により相互に結合している。ここで上記クリップ510は銅やアルミニウムなどの金属製の素材から構成されている。そして、上記クリップ510は、上記パワー半導体要素400に用いられていたワイヤ450と同等乃至それ以上の断面積を有する導体線を1本または、同図に記載したように複数本使用しており、これにより上記ワイヤ450のみを単独で使用した場合よりも、配線抵抗の低減を図っている。
【0050】
また、上記クリップ510またはワイヤ450は、上記図5(A)に示したように、図中左端のパワー半導体要素400のパワー半導体430のソース電極431を、図中中央のパワー半導体400の金属平板部分410Aを介してパワー半導体430のゲート電極435に電気的に接続させており、更に、図中中央のパワー半導体400の金属平板部分410Aを図中右端のパワー半導体要素400のパワー半導体430のソース電極431に電気的に接続させ、機能的に一体化するように構成している。
【0051】
図5(B)は、上記のようなパワー半導体要素400間における上記クリップ510またはワイヤ450によるパワー半導体430の接続関係を示したものである。上記図5(B)で、同図中a〜gまでの記号は、上記図5(A)に記載したパワー半導体要素400の外部接続端子(410B及び415)に対応して示している。また、上記図5(A)に記載したパワー半導体要素400の外部接続端子(410B及び415)には、同図中両端のパワー半導体要素400の右端の外部接続端子に対応する記号が設けられていないが、これは、上記クリップ510またはワイヤ450によるパワー半導体要素400間の結合により電気的な結合から外れる端子である。そのため、上記外部接続端子は上記パワー半導体ユニットの構成に含めないことも可能である。
【0052】
したがって、本発明のパワー半導体ユニットによれば、上記パワー半導体要素400を複数集めて機能的に一体化するに際し、上記パワー半導体要素400を単一のパワー半導体パッケージ内部に用いられているパワー半導体の構成要素から更に限定して用いることが可能であり、これによりコストの低減を図ることも可能である。
【0053】
なお、上記実施形態500の場合には、上記電気的な結合から外れる外部接続端子415も含めて1つにパッケージ化しているが、この場合であっても、小型化と放熱性の向上は図られている。
【0054】
また、図5(C)、(D)に示した正面図と背面図は、上記図5(A)で示したように接続した3つのパワー半導体要素400を電気絶縁性の樹脂530で封止した状態を表したものである。
【0055】
上記電気絶縁性の樹脂530は、上記パワー半導体要素400を構成する各パーツを固定して、各構成要素間及びこれらの基幹部分を外部から絶縁すると共に、上記各パーツからの熱を外部に伝導するためのものである。
【0056】
そのため、上記電気絶縁性の樹脂530は、上記パワー半導体要素400のうち、上記金属平板部分410Aのパワー半導体ベアチップ430が実装されている部分と、クリップ510またはワイヤ450により接続されている部分、及び、上記外部接続端子410Bが上記金属平板部分410Aから延伸されている部分と、上記外部接続端子415の上記金属平板部分410A側寄りの部分とを樹脂モールドパッケージにより、封止している。
【0057】
ただし、上記外部接続端子(410B、415)は、上記のように、外部機器等との電気的接続のために、上記外部接続端子のうち、上記金属平板部分410A寄りと反対側は上記樹脂モールドパッケージからは露出するように構成されている。また、上記金属平板部分410Aのうち、上記外部接続端子(410B、415)寄りの側とは反対側の穴410Cが設けられている側も、同様に、上記樹脂モールドパッケージからは露出するように構成されている。
【0058】
また、上記実施形態500では、更に、上記金属平板部分410Aの、上記パワー半導体430が実装された側とは反対側の面も、上記樹脂モールドパッケージからは露出するように構成されており、上記露出部分を上記本発明のパワー半導体モジュールに隣接して設けたヒートシンクなどに接触させて取付け、これにより放熱性の向上を図ることが可能である。
【0059】
なお、上記電気絶縁性の樹脂530については、特に材質に限定を設けるものではないが、電気絶縁性が高く熱伝導性の高いエラストマーなどを用いることが望ましい。
【0060】
上記のように構成される本発明の実施形態500では、上記パワー半導体要素400を機能的に結合して組み合わせている事により、小型化及び内部配線の省略化並びにこれらを通じた放熱性の向上を図り、併せてこれを低コストで行うことが可能である。
【0061】
また、本発明では、上記のように、FETからなるパワー半導体430を3つまとめて、1つのパワー半導体モジュールとして形成することが可能であり、後述する実施形態900と1000の場合も同様である。そのため、上述したような電動パワーステアリング装置のコントロールユニット100にそのまま用いることも可能である。
【0062】
したがって、例えば、図3に示したコントロールユニット100のインバータ106とモータリレー23のうち、上記電動モータ20の三相(U,V,W相)のうちの一相分の制御に使用されるFETを、一つのモジュールにより構成し、あわせて3つの本発明のパワー半導体モジュールを用いることにより、上記三相モータの制御に活用することが可能である。
【0063】
そのため、例えば、上記図3に示したように、上側アーム部のFET1と下側アーム部のFET4とモータリレー部23のFET7とから構成される電動モータ20のU相に相当する一相分を上記本発明のパワー半導体モジュールにより構成することが可能であり、他の二相分(V相、W相)についても同様の構成を採用することにより、上記電動パワーステアリング装置のコントロールユニット100の一層の小型化と放熱性の向上等とを図ることが可能である。
【0064】
次に、上記のようなパワー半導体要素400を2つ集めたうえで、更に機能的に結合して単一のパッケージとしてまとめ、本発明のパワー半導体モジュールとして完成させた実施形態700の例を、図7及び図8を参照して説明する。
【0065】
ここで、上記図7及び図8は上記本発明の実施形態700を図示したものであり、図7のうち、(A)はパッケージ部分を含まない正面図、(B)は回路図、(C)は正面図、(D)はその背面図を示し、図8のうち、(A)はその全体像を示した斜視図、図8(B)はパッケージ部分を含まない斜視図を示している。
【0066】
本発明の上記実施形態700は、基本的には上記実施形態500の場合と同様の構成を有しているが、上記パワー半導体要素400を2つ使用している点が異なっている。
【0067】
そのため、上記2つのパワー半導体要素400は、上記図7(A)に示したように、図中左側のパワー半導体要素400のパワー半導体430のソース電極431を、図中右側のパワー半導体要素400のパワー半導体430のソース電極431に電気的に接続させ機能的に一体化している。
【0068】
そして、図7(B)は、上記図7(A)に示したようなパワー半導体要素400間における上記クリップ510またはワイヤ450によるパワー半導体430の接続関係を示したものである。上記図7(B)で、同図中a〜eまでの記号は、上記図7(A)に記載したパワー半導体要素400の外部接続端子(410B及び415)に対応して示している。また、上記図7(A)に記載したパワー半導体要素400の外部接続端子(410B及び415)には、同図中左側のパワー半導体要素400の右端の外部接続端子415に対応する記号が設けられていないが、これは、上記クリップ510またはワイヤ450によるパワー半導体要素400間の結合により電気的な結合から外れる端子である。
【0069】
上記のように構成される本発明の実施形態700では、上記実施形態500の場合と同様に、上記パワー半導体要素400を機能的に結合して組み合わせる事により、小型化および内部配線の省略化及びこれらを通じた放熱性の向上を図り、併せてこれを低コストで行うことが可能である。
【0070】
また、上記のように構成される本発明の実施形態700の半導体モジュールを上記のような電動パワーステアリング装置に用いる場合には、上記電動パワーステアリング装置の電源側の制御にパワー半導体が2つ使用される場合があるため、こうしたパワー半導体2つを一つのモジュールとし、更に一層の小型化等を図ることも可能である。
【0071】
次に、上記のようなパワー半導体要素400を複数まとめて、上記のように平面上ではなく、仮想的な曲面形状等に沿って配列させた場合の例を説明する。
【0072】
図9は、上述したような、3つのパワー半導体要素400を仮想的な曲面に沿って並列に配列した本発明の実施形態900の例を斜視図により示したものであり、ここでは、特に、上記仮想的な曲面が、円筒Cの側面である場合の例を示している。
【0073】
なお、上記実施形態900では、上記パワー半導体要素400が曲面に配置された結果、立体的に形成され、それに応じてパッケージングされている他は、基本的な構成や電気的な接続関係は、上記実施形態500と同様である。
【0074】
本実施形態900の場合には、上記仮想的な円筒Cは、同図9に鎖線で示したようなものであり、上記3つのパワー半導体要素400を構成している細長い長方形状の外部接続端子(410B、415)の長辺が上記円筒Cの主軸Sと平行になるように、上記仮想的な円筒Cの側面に沿って配列されている。
【0075】
また、上記図9においては、上記パワー半導体要素400は、上記仮想的な円筒Cの外側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの露出した部分の面(放熱面)を向けている。しかし、上記仮想的な円筒Cの側面に沿った上記3つのパワー半導体要素400の配列方法は上記に限られるものではない。そのため、上記仮想的な円筒Cの外側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの放熱面とは反対側の面を向けても良いし、或いは、上記仮想的な円筒Cの内側に上記パワー半導体要素400を配して、上記円筒Cの内側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの放熱面側を向けても良く、或いは、上記仮想的な円筒Cの内側にパワー半導体要素400を配したうえで、上記円筒Cの内側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの放熱面とは反対側の面を向けたものであっても良い。
【0076】
本発明の上記実施形態900は、上記のような構成を採用することにより、例えば、上記の電動パワーステアリング装置のコントロールユニット100の筐体が上記電動モータ20などの形態に合わせた円筒形状等からなる曲面形状をしている場合には、上記コントロールユニット100の筐体や電動モータ20の円筒形状の側面に沿って本パワー半導体モジュールを配置することにより、上記コントロールユニット100の筐体等の側面をヒートシンク等として効率的に活用することが可能である。
【0077】
また、図10は、上述したような、3つのパワー半導体要素400を仮想的な多角形からなる角柱の各側面に沿って並列に配列した例を図示したものであり、ここでは、特に、上記仮想的な多角形が三角形である、三角柱Tの場合の実施形態1000の例を図示したものである。
【0078】
ここで、図10(A)は、上記実施形態900において、電気絶縁性の樹脂530によるパッケージ前のパワー半導体要素400を並列に配置した場合の相互の接続状態を示した斜視図であり、図10(B)はこの上面図、図10(C)は、上記樹脂によるパッケージ後の斜視図である。
【0079】
上記図10(A)に示したように、本実施形態1000では、同図に鎖線で示したような仮想的な三角柱Tの各3つの側面に沿って、上記パワー半導体要素400を、上記金属平板部分410の放熱面側を上記側面に向けて配列している。
【0080】
そのため、平面的に上記パワー半導体要素400を配列するよりも一層小型のものとなっている。
【0081】
また、上記実施形態1000では、上記パワー半導体要素400が仮想的な多角形からなる角柱の各側面に沿って並列に配置された結果、立体的に形成され、それに応じてパッケージングされている他は、基本的な構成や電気的な接続関係は、上記図5に示した実施形態500と基本的には同様である。
【0082】
ただし、本実施形態1000の場合には、仮想的な三角柱Tの側面に3つのパワー半導体要素400を並列して配列するものであるため、上記3つのパワー半導体要素400は相互に隣接する関係となる。
【0083】
そのため、上記図10(B)に示したように、上記図5(B)で示したような電気的接続関係を維持したまま、上記図5(A)の両端に位置したものに相当するパワー半導体要素400に設けられたパワー半導体430の、ソース電極431相互間をクリップ510またはワイヤ450により直接接続し、配線抵抗を低減することが可能である。なお、上記図10(B)において、点線で示した枠は、電気絶縁性の樹脂530によるパッケージを行った場合の輪郭を示している。
【0084】
また、上記図10(A)〜図10(C)においては、上記パワー半導体要素400は、上記仮想的な三角柱Tの外側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの露出面(放熱面)を向けている。
【0085】
しかし、上記仮想的な三角柱Tの側面に沿った上記3つのパワー半導体要素400の配列方法は上記に限られるものではない。
【0086】
そのため、上記仮想的な三角柱Tの外側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの放熱面とは反対側の面を向けても良いし、或いは、上記仮想的な三角柱Tの内側に上記パワー半導体要素400を配して、上記三角柱Tの内側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの放熱面を向けても良く、或いは、上記仮想的な三角柱Tの内側にパワー半導体要素400を配したうえで、上記三角柱Tの内側面に上記金属平板410Aのパッケージ530からの露出面とは反対側の面を向けたものであっても良い。
【0087】
本発明の上記実施形態1000は、上記のような構成を採用することにより、更に一層上記パワー半導体モジュールを小型化することが可能となる。
【0088】
また、例えば、上記の電動パワーステアリング装置のコントロールユニット100の基板に上記実施形態1000のパワー半導体モジュールを取り付けて、上記配列により内側に向けて上記放熱面が配置されている場合には、その内側に三角柱状のヒートシンクを設けることにより、或いは、上記配列により外側に向けて放熱面が配置されている場合には、その三角柱状の外形の外側を囲むようにヒートシンクを設けることにより、上記実施形態1000のパワー半導体モジュールの放熱を行うことが可能である。
【0089】
以上のように、本発明のパワー半導体モジュールによれば、汎用品から構成する事が可能なパワー半導体要素を複数個用いて、必要なパワー半導体要素間内部接続を行い、これを一体化することにより、小型化、放熱性向上、内部抵抗低減等を達成し、低コストかつ信頼性の高いパワー半導体モジュールを提供することが可能である。
【0090】
なお、上記実施形態は本発明の構成の例を示したものである。そのため、本発明は、上記実施形態に示す構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で、種々の変形を施すことも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
3 減速機構
4a 4b ユニバーサルジョイント
5 ピニオンラック機構
6a 6b タイロッド
7a 7b ハブユニット
8L 8R 操向車輪
10 トルクセンサ
11 イグニションキー
12 車速センサ
13 バッテリ
14 舵角センサ
20 電動モータ
23 モータリレー
100 制御装置(コントロールユニット、ECU)
101 電流指令値演算部
104 PI制御部
105 PWM制御部
106 インバータ
110 補償信号生成部
400 パワー半導体要素
410 金属板
410A 金属平板部分
410B 外部接続端子部
410C 穴
415 外部接続端子
430 パワー半導体ベアチップ
431 ソース電極
433 ゲート電極
435 ドレイン電極
450 ワイヤ
500 700 900 1000 実施形態
510 金属製コネクタ(クリップ)
530 電気絶縁性の樹脂(パッケージ)
C 仮想的な円柱
S 仮想的な円柱の主軸
T 仮想的な三角柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10