特許第6137440号(P6137440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6137440光学素子保持装置及び光学素子保持装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137440
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】光学素子保持装置及び光学素子保持装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20060101AFI20170522BHJP
   G02B 7/18 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G02B7/00 F
   G02B7/18 100
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-94257(P2012-94257)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-222106(P2013-222106A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(72)【発明者】
【氏名】岸本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 英孝
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−182129(JP,A)
【文献】 特開平07−321418(JP,A)
【文献】 特開平05−270188(JP,A)
【文献】 特開2002−341271(JP,A)
【文献】 実開昭64−002208(JP,U)
【文献】 特開平06−027357(JP,A)
【文献】 米国特許第05694257(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18 − 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面を含む1つ以上の平面を有する光学素子を保持する光学素子保持装置であって、
前記第一の面と当接するベース面を有するベース部材と、
前記ベース部材の前記ベース面と前記光学素子の前記第一の面が同一平面となるように、前記ベース面と前記第一の面を当接させた状態で、前記光学素子の前記第一の面から所定の高さだけ離れた部位で前記光学素子の立ち上がり部を挟持可能にする複数の凸部と、
前記複数の凸部のうちで前記ベース面を介して対向して対をなす凸部の少なくとも一対の凸部と前記ベース面との間にあって、ばね構造を有するビーム部を形成するように前記ベース部材に設けられた切込み部と、
前記切込み部の前記ばね構造により発生する押圧力で前記光学素子の保持力を付与する保持力付与機構と、を備え
前記切込み部の少なくとも一方は、前記ベース部材に形成された前記ビーム部に沿って、前記ベース面側の先端から深さ方向の末端まで前記ベース面に対して斜めに形成されていることを特徴とする光学素子保持装置。
【請求項2】
前記ビーム部は、前記光学素子を保持した際に、前記対をなす凸部のうちの少なくとも一方の凸部が前記光学素子を介して前記ベース面からの反力を得るように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子保持装置。
【請求項3】
前記保持力付与機構は、前記対をなす凸部のうち少なくとも一方の前記ビーム部に対向する前記ベース部材に設けられた螺子穴に螺合する螺子を更に備え、
前記螺子が、前記ビーム部に係合して前記螺子穴に螺合されることで前記凸部が変位して前記押圧力が付与される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子保持装置。
【請求項4】
前記複数の凸部と前記ベース部材とは、一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学素子保持装置。
【請求項5】
前記ベース部材が、前記ベース面を介して対向して対をなす凸部の間で複数のブロックに分離可能とされおり、前記ブロックの数を変更することで前記対をなす凸部の間の距離が変更可能とされている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学素子保持装置。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記ベース面に凹部を備え、自身の側面の方向を変更することで前記凹部に1つ以上の組み合わせで嵌合可能な多角柱部材を有し、
前記多角柱部材において1つ以上の前記側面に設けられた突起部が、前記対をなす凸部の一方の凸部とされる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学素子保持装置。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記ビーム部の反対側に延在された延在部と、前記ビーム部に備えられた前記凸部を変位可能に支持する支持部と、を備え、
前記支持部が前記延在部によって変位させられた前記凸部の位置を元に戻そうとする復元力を発生させることで、前記押圧力が付与される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学素子保持装置。
【請求項8】
第一の面を含む1つ以上の平面を有する光学素子を保持する光学素子保持装置の製造方法であって、
光学素子を保持するベース部材を用意する工程と、
前記ベース部材に、前記光学素子の第一の面と同一平面となるように当接可能なベース面を形成する工程と、
前記光学素子の前記第一の面を前記ベース部材の前記ベース面に当接させる際に、前記光学素子の第一の面から所定の高さだけ離れた部位で前記光学素子の立ち上がり部を挟持可能な凸部を複数形成する工程と、
前記複数の凸部のうちで前記ベース面を介して対向して対をなす凸部の少なくとも一対の凸部の前記ベース面との間に、ばね構造を有するビーム部を形成するように前記ベース部材に切込み部を形成する工程と、
前記切込み部によって形成されるばね構造によって発生する押圧力で前記光学素子の保持力を付与可能とする保持力付与機構を前記ベース部材に設ける工程と、を含み、
前記切込み部の少なくとも一方は、前記ベース面側の先端から深さ方向の末端までばね構造を有する前記ビーム部を前記ベース面に対して斜めに形成される
ことを特徴とする光学素子保持装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子保持装置及び光学素子保持装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリズムなどの1つ以上の平面を有する光学素子を保持する機構としては、非特許文献1に示すような光学素子保持装置が用いられている。この光学素子保持装置は、具体的には、光学素子が配置されるベース部材と、そのベース部材に立設された2本のシャフトと、その2本のシャフト間に渡された保持部材とを備えている。この光学素子保持装置は、2本のシャフトに沿って保持部材を上下動させ、保持部材とベース部材との間で光学素子を把持する構成とされている。即ち、光学素子は、その底面と上面とで把持されることで、この光学素子保持装置で保持される。このような光学素子保持装置では、光学素子の脱着が容易であり、光学素子の破損などが生じても容易に交換が可能とされている。このため、このような光学素子保持装置は、光学実験で汎用的に使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】シグマ光機(株)、総合カタログ10 初版(2012年4月発行 D34、D35ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1においては、2本のシャフトが光学素子の側面に張り出し、更に、光学素子の上面に保持部材を配置している。このため、複数の光学素子を接近して配置することが困難で、光を集中、発散、反射、及び屈折させるためのレンズ、反射鏡、及びプリズムなどの組み合わせ(以下、「光学系」という)をコンパクトに構成することが困難である。同時に、光学素子へ入出射される光路に制限がでて、光学系の構成や用途が限定されるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、光学素子の容易な脱着を確保しつつ、コンパクトな構成で光学素子への光路を広範囲に確保し、安定した光学素子の保持が可能な光学素子保持装置及びその光学素子保持装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学素子保持装置は、第一の面を含む1つ以上の平面を有する光学素子を保持する光学素子保持装置であって、第一の面と当接するベース面を有するベース部材と、ベース部材のベース面と光学素子の第一の面が同一平面となるように、ベース面と第一の面を当接させた状態で、光学素子の第一の面から所定の高さだけ離れた部位で光学素子の立ち上がり部を挟持可能にする複数の凸部を備える。
また、複数の凸部のうちでベース面を介して対向して対をなす凸部の少なくとも一対の凸部とベース面との間にあって、ばね構造を有するビーム部を形成するように前記ベース部材に設けられた切込み部と、この切込み部ばね構造により発生する押圧力で光学素子の保持力を付与する保持力付与機構を備え、切込み部の少なくとも一方は、ベース部材に形成されたビーム部に沿って、ベース面側の先端から深さ方向の末端までベース面に対して斜めに形成されていることを特徴とする
【0007】
本発明では、光学素子の平面からの立ち上がり部を挟持可能な複数の凸部が、ベース部材に設けられている。また、ばね構造を有する保持力付与機構も、ベース部材に設けられている。このため、光学素子保持装置では複数の凸部以外の部分を光学素子から張り出すように設けることを回避できる。同時に、複数の凸部の大きさを光学素子の第1辺及び第2辺からの立ち上がり部を挟持可能な程度とすることができる。このため、光学素子の光路の自由度を高くすることができる。更に、ベース部材のベース面と当接する光学素子の平面の反対側には部材を設ける必要がない。このため、光学素子の配置をコンパクトにすることが容易である。そして、従来よりも、構成も簡素であるので低コスト化が可能であり、且つ可動部が少なく故障確率を低減することも可能である。
【0008】
また、本発明の光学素子保持装置の製造方法は、第一の面を含む1つ以上の平面を有する光学素子を保持する光学素子保持装置の製造方法であって、以下の工程(a)〜(e)を含む。すなわち、本発明の光学素子保持装置の製造方法は、
(a)光学素子を保持するベース部材を用意する工程、
(b)ベース部材に、光学素子の第一の面と同一平面となるように当接可能なベース面を形成する工程、
(c)光学素子の第一の面をベース部材のベース面に当接させる際に、光学素子の第一の面から所定の高さだけ離れた部位で光学素子の立ち上がり部を挟持可能な凸部を複数形成する工程、
(d)複数の凸部のうちでベース面を介して対向して対をなす凸部の少なくとも一対の凸部のベース面との間に、ばね構造を有するビーム部を形成するように前記ベース部材に切込み部を形成する工程
(e)切込み部によって形成されるばね構造によって発生する押圧力で光学素子の保持力を付与可能とする保持力付与機構を前記ベース部材に設ける工程、
を含み、切込み部の少なくとも一方は、ベース面側の先端から深さ方向の末端までばね構造を有するビーム部をベース面に対して斜めに形成されることを特徴としている。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学素子の容易な脱着を確保しつつ、コンパクトな構成で光学素子への光路を広範囲に確保でき、安定した光学素子の保持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の光学素子保持装置の一例を示す全体斜視図である。
図2図1の光学素子保持装置の側面図である。
図3】本発明の第2実施形態の光学素子保持装置の一例を示す全体斜視図である。
図4図3の光学素子保持装置の側面図である。
図5】本発明の第3実施形態の光学素子保持装置の一例を示す全体斜視図である。
図6図5の光学素子保持装置の上面図である。
図7】本発明の第4実施形態の光学素子保持装置の一例を示す側面図である。
図8】本発明の第5実施形態の光学素子保持装置の一例を示す側面図である。
図9】本発明の第6実施形態の光学素子保持装置の一例を示す全体斜視図である。
図10図9の光学素子保持装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法比率などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろん言うまでもない。
【0012】
<第1実施形態>
最初に、第1実施形態の全体構成について、図1及び図2を用いて概略的に説明する。なお、本実施形態で使用される光学素子100のX軸方向の長さ100Cは、第1凸部114のベース面112A側先端から第2凸部116のベース面112A側先端間の長さL(図2(B)、凸部間距離Lと称する)以上とする。
【0013】
光学素子保持装置110は、図1及び図2に示す如く、ベース部材112に、第1凸部114及び第2凸部116を備えている。ベース部材112は、光学素子100の底面102(平面)と当接するベース面112Aを有する。第1凸部114及び第2凸部116は、ベース部材112に設けられるとともに、底面102をベース面112Aに当接させた状態で光学素子100の底面102の第1辺100A及び第2辺100Bからの立ち上がり部104A、104Bを挟持することができる。即ち、第1凸部114と第2凸部116とは、ベース面112Aを介して対向して対をなしている。そして、第1凸部114とベース面112Aとの間及び第2凸部116とベース面112Aとの間のベース部材112にそれぞれ、第1切込み部118及び第2切込み部120が設けられている。この第1切込み部118及び第2切込み部120により、第1凸部114及び第2凸部116はX軸方向に弾性的に変位可能であり、押圧力を生じさせるばね構造を構成する。特に、第1切込み部118は深く設定されていることで、保持力付与機構はより弾力性のあるばね構造を有することができる。従って、光学素子保持機構110は、特に、第1切込み部118によって形成されるビーム部112Cを備えたばね構造を有し、そのばね構造で発生する押圧力で光学素子100の保持力を付与する保持力付与機構を備えていると言うことができる。勿論、第1切込み部は、第2切込み部と同様に深く設定されていなくてもよい。その場合であっても、第1切込み部及び第2切込み部には相応のビーム部(図示せず)が形成されている。なお、ばね構造を形成する切込み部は、対をなす凸部のうち少なくとも一方の凸部側に設けられていればよい。
【0014】
なお、図1及び図2に示す如く、第1切込み部118及び第2切込み部120はそれぞれ、第1凸部114及び第2凸部116と隣接して設けられている。このため、ベース部材112の形成が切削加工やワイヤ加工などで行われ第1凸部114及び第2凸部116とベース面112Aとの間の角が直角加工されなくても、頂角が角(直角)である光学素子100を、損傷させることなく第1凸部114及び第2凸部116とベース面112Aに密着させ安定的に保持することを可能としている。
【0015】
なお、光学素子100は、図1に示す如く、プリズムなどの略直方体形状とされているが、光学素子100はビームスプリッタ(BS)、フィルター、ミラーなどであってもよい。いずれであっても、その側面104から光(図1及び図2(A)に示す白抜き矢印で示す)が入出射可能とされる。
【0016】
以下、各構成要素について詳細に説明を行う。
【0017】
図1に示す如く、前記ベース部材112のベース面112Aの両端には、第1凸部114及び第2凸部116が設けられている。このため、第1凸部114及び第2凸部116で、光学素子100の第1辺100A及び第2辺100Bからの立ち上がり部104A、104Bを挟持することができる(即ち、第1凸部114及び第2凸部116のベース面112AからのZ軸方向の高さは、光学素子100を挟持可能な程度に短くされている)。光学素子100の立ち上がり部104A、104Bはそれぞれ、図2(A)に示される第1辺100A及び第2辺100Bの近傍領域とされ、第1凸部114及び第2凸部116のベース面112AからのZ軸方向の高さがそれと同等されている。ここで、光学素子100の側面104の一辺の長さの90パーセントを直径とする円を光学素子100の側面104の中心位置を基準として想定し、その円の内側を光学素子100の有効範囲と仮定した場合、立ち上がり部104A、104Bの領域は、例えばその有効範囲に影響を及ぼさない程度とされている。ベース部材112には、その下面方向に螺子などのロッド(図示せず)で螺合可能な雌螺子孔112Dが設けられており、そのロッドを介して光学実験のための光学定盤など(図示せず)の上にベース部材112が固定可能とされている。なお、ベース部材112は、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属で構成してもよいが、樹脂やセラミックスなどであってもよい。
【0018】
図1及び図2に示す如く、第1凸部114と隣接したベース面112Aの間(第1凸部114とベース面112Aとの間)には、第1切込み部118(切込み部)が設けられている。第1切込み部118は、その深さ方向で終端部118Aまでほぼ一定の幅Wで、第1凸部114側のベース部材112の側面112Bに沿って設けられている。このため、第1切込み部118により、ベース部材112には、その先端に一体的に形成された第1凸部114を備える弾性変形可能なビーム部112Cが構成されている。第1切込み部118の終端部118Aは、特定の角度で応力集中が生じないようにXZ平面における断面を図2(B)に示す如く円形形状とすることが好ましい。
【0019】
なお、図1及び図2に示す如く、ベース部材112の側面112Bは、ベース面112Aに直交する方向(Z軸方向)に対して斜め上向きとなるよう角度θ(図2(B)ではX軸方向に対しての角度を表示)で傾斜している。このため、側面112Bに沿う第1切込み部118も同じ角度θで傾斜し、第1切込み部118で形成されるビーム部112Cも同じ角度θで傾斜している。そして、光学素子100が配置された際にはビーム部112Cの傾斜する角度はθからθ1に変化するが、図2(B)に示す如く、角度θ1は、90度未満とされている。即ち、ビーム部112Cは、光学素子100を保持した際に、少なくとも第1凸部114が光学素子100を介してベース面112Aからの反力を得るように形成されている。つまり、角度θ1よりも小さい角度θは光学素子100を保持した際に光学素子100をベース面112A側に押し付ける押付力Fz(図2(B))を有する角度の範囲で設定される。したがって、第1切込み部118の角度θは最大でも90度未満に設定することが望ましい。
【0020】
図1及び図2に示す如く、光学素子100を光学素子保持装置110に設置すると、光学素子100から第1凸部114を介してビーム部112Cに対して力が付与される。このため、第1凸部114から光学素子100に押圧力が付与されるため、図2(B)の破線で示す如く、ビーム部112Cがたわみ第1切込み部118の幅Wが増加する。これに伴い、第1凸部114が第2凸部116の反対側に変位する。このように、第1切込み部118によって形成されたビーム部112Cがたわみ弾性変形することでばね構造が構成されている。そして、本実施形態においては、この構成を有している機構を保持力付与機構と称している。
【0021】
図1及び図2(A)に示す如く、第2凸部116と隣接したベース面112Aとの間には、第2切込み部120が設けられている。第2切込み部120においても、程度は小さいが図示しないビーム部が形成され、前述した保持力付与機構が構成されている。同時に、第2切込み部120は、光学素子100をベース部112に配置した際に光学素子100の第2辺100Bを構成する頂角の損傷を避け、且つ光学素子100の立ち上がり部104Bが第2凸部116の側面と面で、且つ光学素子の底面102とベース面112Aが面で当接するように設けられている。
【0022】
次に、光学素子保持装置110の製造方法について、図1及び図2を用いて以下に説明する。
【0023】
まず、直方体状部材を用意する。次に、直方体状部材に、光学素子100の底面102が当接可能なベース面112Aを有するベース部材112を形成するとともに、光学素子100の底面102をベース面112Aに当接させた際に光学素子100の第1辺100A及び第2辺100Bからの立ち上がり部104A、104Bを挟持可能な第1凸部114及び第2凸部116を形成する。
【0024】
次に、第1凸部114とベース面112Aとの間及び第2凸部116とベース面112Aとの間のベース部材112に第1切込み部118及び第2切込み部120を形成する。
次に、特に、第1切込み部118によって形成されるビーム部112Cを備えたばね構造で発生する押圧力で光学素子100の保持力を付与可能とする保持力付与機構をベース部材112に設ける。
【0025】
このように本実施形態においては、光学素子100の底面102の第1辺100A及び第2辺100Bからの立ち上がり部104A、104Bを挟持可能な第1凸部114及び第2凸部116が、ベース部材112に設けられている。また、第1凸部114及び第2凸部116とベース面112Aとの間に、第1切込み部118及び第2切込み部120を設けることにより生じるばね構造を有する保持力付与機構も、ベース部材112に設けられている。このため、光学素子保持装置110では第1凸部114及び第2凸部116以外の部分を光学素子100から張り出すように設けることを回避できる。
【0026】
同時に、第1凸部114及び第2凸部116のベース面112AからのZ軸方向の高さを光学素子100の第1辺100A及び第2辺100Bからの立ち上がり部104A、104Bを挟持可能な程度とすることができる。さらに、第1凸部114及び第2凸部116のY軸方向の長さは、安定して光学素子100を保持できる範囲であれば、(図1及び図2とは異なるが)光学素子100のY軸方向の長さより短く設定することもできる。このため、光学素子100の光路の自由度を高くすることができる。
【0027】
同時に、ベース部材112のベース面112Aと当接する光学素子100の底面102の反対側(上面側)には部材を設ける必要がない。このため、光学素子100の配置をコンパクトにすることが容易である。更に、従来よりも、構成も簡素であるので低コスト化が可能であり、且つ可動部が少なく故障確率を低減することも可能である。
【0028】
また、本実施形態においては、図2(B)を用いて説明すると、光学素子100が光学素子保持装置110に設置されることで第1凸部114はX軸方向で外側に変位する。その際に、ビーム部112Cが終端部118AよりX軸方向で外側にたわみ、実線の位置から破線の位置にビーム部112Cが傾斜(角度θ→θ1)する。ここで、ビーム部112Cは、図2(B)に示す如く、ベース面112Aに直交する方向(Z軸方向)に対して傾斜している(角度θは90度未満)。このため、第1凸部114の先端部114Aに注目し、そこで生ずる力を保持力Fとする。すると、この保持力Fは、第1凸部114と第2凸部116との間の挟持力Fxだけでなく、ビーム部112Cの傾斜した角度θ1が90度未満であることからベース面112A側への押付力Fzを含んでいる。即ち、光学素子保持装置110は、第1凸部114と第2凸部116との間の単なる挟持力Fxだけで光学素子100を保持するのではなく、光学素子100をいわば「ベース面112A側に押し付ける」押付力Fzを生じさせる。即ち、ビーム部112Cは、光学素子100を保持した際に、少なくとも第1凸部114が光学素子100を介してベース面112Aからの反力を得るように形成されている。このため、本実施形態では光学素子100を強固に安定して保持することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態においては、第1凸部114及び第2凸部116とベース部材112とは、一体的に形成されている。このため、光学素子保持装置110を形成するための工数を低減できるので低コスト化が可能である。同時に、光学素子保持装置110を小型にしながら高い剛性構造とすることが可能である。
【0030】
さらに、本実施形態においては、光学素子100のX軸方向の長さ(光学素子幅)100Cが予め分かっている場合、光学素子100に当接する第2凸部116から光学素子100の中心までの距離が必ず光学素子幅100Cの半分となる。したがって、第2凸部116の位置を基準とすることで、光学素子100の中心位置の推定が容易となる。このため、基準線を明確化することが困難な非特許文献1のような光学素子保持装置に比べて、光軸調整の手間を低減することができる。
【0031】
即ち、本実施形態によれば、光学素子100の容易な脱着を確保しつつ、コンパクトな構成で光学素子100への光路を広範囲に確保でき、安定した光学素子100の保持が可能となる。
【0032】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0033】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態の全体構成について、図3及び図4を用いて概略的に説明する。なお、本実施形態で使用される光学素子200のX軸方向の長さ200Cは、凸部間距離Lより、長くても短くても同一でもよい(図4(B)及び(C))。
【0034】
光学素子保持装置210は、図3及び図4に示す如く、第1実施形態と同様のベース部材212に、保持力付与機構としてビーム部212Cに対向するベース部材212に設けられた螺子穴222Cに螺合する螺子(図示せず)を更に備えている。そして、光学素子保持装置210は、螺子がビーム部212Cに係合して螺子穴222Cに螺合されることで第1凸部214が変位し光学素子200への押圧力が付与される構成とされている。即ち、本実施形態においては、螺子の螺子穴222Cへの螺合により、第1凸部214及び第2凸部216は光学素子200に強い押圧力を付与し、その保持力を高めることを可能としている。
【0035】
以下、各構成要素について詳細に説明を行う。なお、螺子及び螺子穴222Cに係る保持力付与機構以外の構成要素は第1実施形態と同様なので、螺子及び螺子穴222Cに係る保持力付与機構以外については説明を省略する。
【0036】
図3及び図4(A)に示す如く、第1切込み部218で互いに対向するベース部材212及びビーム部212Cには、それぞれ螺子穴222C及び螺子配置部222が設けられている。螺子穴222Cは、ビーム部212C(の側面212B)に設けられた螺子配置部222に連続している。
【0037】
図3及び図4(A)に示す如く、螺子配置部222は、座ぐり穴部222Aと貫通孔部222Bとを備える。座ぐり穴部222Aは、螺子の頭部(図示せず)の少なくとも一部を回転可能に収納することができる。なお、座ぐり穴部222Aは必要に応じて設けなくてもよい。貫通孔部222Bは、座ぐり穴部222Aに続く部分で、ビーム部212Cから第1切込み部218まで貫通している。なお、貫通孔部222Bは、螺子の頭部が通過不能な孔径とされている。
【0038】
図3及び図4(A)に示す如く、螺子穴222Cは、螺子の雄螺子部(図示せず)に螺合される部分であり、貫通孔部222Bに続くように設けられている。このため、螺子の雄螺子部がビーム部212Cを貫通し第1切込み部218を通過し螺子の頭部が座ぐり穴部222Aに収納された状態で、螺子の雄螺子部が螺子穴222Cに螺合される。この螺合により、ビーム部212Cが終端部218Aからたわむ。
【0039】
なお、光学素子200のX軸方向の長さ200Cが凸部間距離Lと比較して小さければ、図4(B)の破線で示す如く第1凸部214が第2凸部216側に変位(角度θからθ1に変化)する。また、光学素子200のX軸方向の長さ200Cが凸部間距離Lと比較して等しいか大きければ、光学素子200の配置の際に第1凸部214が第2凸部216側の反対側に変位(図4(C)の実線)して一旦第1切込み部218の幅Wが拡げられる。そして、図4(C)の破線で示す如くビーム部212Cがたわむ(角度θからθ1に変化する)。
【0040】
いずれにしても、図4(B)、(C)に示す如く、ビーム部212Cの傾斜した角度θ1は、90度未満でありZ軸方向に対して傾斜している。即ち、ビーム部212Cは、光学素子200を保持し、螺子を螺合した際に、少なくとも第1凸部214が光学素子200を介してベース面212Aからの反力を得るように形成されている。したがって、図4(B)、(C)の第1切込み部218の角度θは最大でも90度以下に設定することが望ましい。以上のことから、本実施形態では、螺子配置部222を介した螺子の螺子穴222Cへの螺合により挟持力Fxだけでなく押付力Fzも増大させることができ、光学素子200の保持力をさらに大きくして付与することができる。
【0041】
同時に、螺子の螺子穴222Cへの螺合する際の力は、ビーム部212Cの相応の距離を経てベース部材212に設けられた第1凸部214に伝達されて光学素子200の保持力となる。即ち、螺子の螺子穴222Cへの螺合によって生じる押圧力は均一化されて光学素子200の保持力として付与されるので、光学素子200で生じるひずみを低減することができる。
【0042】
なお、螺子と螺子穴222Cとを備える保持力付与機構も、ベース部材212に設けられている。このため、本実施形態の光学素子保持装置210においても、第1凸部214及び第2凸部216以外の部分を光学素子200から張り出すように設けることを回避できる。このため、保持力付与機構を簡素且つ小型に構成でき、光学素子200に付与される保持力を再現性良く発生・制御することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、第1凸部214側のベース部材212の側面212Bが、ベース面212Aに直交する方向(Z軸方向)に対して傾斜されている。このため、側面212Bに配置される螺子の螺合状態を容易に調整することができる。
【0044】
本発明について第2実施形態を挙げて説明したが、本発明は第2実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0045】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態の全体構成について、図5及び図6を用いて説明する。本実施形態に適用される光学素子300は、略直方体形状ではない、例えば、片面が一方向には曲率を持つがそれと直交する方向には曲率を持たない円筒面で構成されている平凸シリンドリカルレンズなどである。なお、図5及び図6に示す如く、第1凸部314以外の構成要素は第2実施形態と同様なので、第1凸部314以外については説明を省略する。
【0046】
光学素子保持装置310は、図5及び図6に示す如く、第2実施形態と同様の構成とされている。しかし、光学素子300の第1辺300AはY軸方向と平行な直線ではなく、曲線とされている。このため、第1辺300Aからの立ち上がり部に当接する第1凸部314は2つの凸部314A、314Bから構成されている。即ち、図5及び図6に示す如く、第1凸部314は第2実施形態の第1凸部214の中央部に凹部314Cを設けた形態とされている。なお、図6の符号324は螺子である。
【0047】
このような第1凸部314の構成により、図6に示す如く、凸部314A、314Bそれぞれが光学素子300に当接可能となる。このため、本実施形態においては、略直方体形状ではない、例えば円筒面を有した平凸型の光学素子であっても、安定して保持することが可能である。
【0048】
また、本実施形態においては、円筒面を有した平凸型の光学素子の中心が、凹部314CのY軸方向の幅の中心に常に配置される形状となっており光学素子300の中心位置の推定が容易となる。このため、基準線を明確化することが困難な非特許文献1のような光学素子保持装置に比べて、光軸調整の手間を低減することができる。
【0049】
勿論、本実施形態においては、光学素子が円筒面を有した平凸型に限定されず、当然略直方体形状であってもよいし、その他の曲面や曲線を備える光学素子に適用することができる。
【0050】
<第4実施形態>
第4実施形態においては、図7(A)及び(B)に示す如く、ベース部材412がベース面412Aを介して対向して対をなす第1凸部414と第2凸部416との間で複数のブロックに分離可能とされている。なお、第1凸部414と第2凸部416の間のベース部材412以外の構成要素は第1実施形態、第2実施形態若しくは第3実施形態と同様なので、第1凸部414と第2凸部416の間のベース部材412以外については説明を省略する。
【0051】
図7(A)に示す如く、ベース部材412が前段部分413A、中段部分413B、後段部分413Cの3つのブロックから構成されている。光学素子の厚みが厚いときには中段部分413Bを組み合わせ、光学素子の厚みが薄いときには中段部分413Bを取り外し、図7(B)に示す如く、直接前段部分413Aと後段部分413Cとでベース部材412を構成することができる。即ち、ブロック(前段部分413A、中段部分413B、後段部分413C)の数を変更することで対をなす第1凸部414と第2凸部416の間の距離(凸部間距離L)が変更可能とされている。なお、前段部分413A、中段部分413B、後段部分413Cの固定には、ボルトなど(図示せず)を用いることが可能である。
【0052】
即ち、第4実施形態においては、ブロックの数を変更することで第1凸部414と第2凸部416との間の距離が変更可能とされている。このため、厚みの異なる光学素子であっても兼用してその光学素子を保持でき、光学素子保持装置410を更に汎用的に使用することが可能となる。
【0053】
<第5実施形態>
第5実施形態においては、図8(A)〜図8(D)に示す如く、ベース部材512がベース面512Aに凹部521を備えている(凹部521を備えたベース部材512を本体部513Aと称する)。そして、本実施形態における光学素子保持装置510は、自身の側面の方向を変更することで凹部521に4つの組み合わせで嵌合可能な四角柱部材513B(多角柱部材)を有する。なお、凹部521及び四角柱部材513B以外の構成要素は第1実施形態、第2実施形態、若しくは第3実施形態と同様なので、凹部521及び四角柱部材513B以外については説明を省略する。
【0054】
図8(A)に示す如く、凹部521は第2凸部516とベース面512Aとの間に設けられている。四角柱部材513Bは、その凹部521に嵌合可能な形状である。四角柱部材513Bは、その4つの側面のうちの互いに裏となる2つの面にそれぞれ突起部513BA、513BBを備える。突起部513BA、513BBは、それぞれの側面において位置関係が異なるように設けられている。なお、符号513AAは、凹部521の側面に設けられた窪みであり、図8(D)に示すように、突起部513BBを収納可能とするため設けられている。なお、本実施形態においては、四角柱部材513Bが凹部521に嵌合された際には、突起部513BA、513BBを除く四角柱部材513Bの側面がベース面512Aと同一平面を構成するようにされている。
【0055】
まず、図8(A)に示す如く四角柱部材513Bを凹部521に嵌合させると、突起部513BAが、第1凸部514と対をなす凸部の一方の凸部となる。即ち、第1凸部514と突起部513BAとにより凸部間距離Lが定められ、第1凸部514と突起部513BAとで光学素子の立ち上がり部を挟持することが可能となる。
【0056】
次に、図8(A)の状態の四角柱部材513BをX軸回りで180度回転させ四角柱部材513Bを凹部521に嵌合させると、図8(B)に示す如く、突起部513BBが、第1凸部514と対をなす凸部の一方の凸部となる。即ち、第1凸部514と突起部513BBとにより凸部間距離Lが定められ、第1凸部514と突起部513BBとで光学素子の立ち上がり部を挟持することが可能となる。
【0057】
次に、図8(B)の状態の四角柱部材513BをY軸回りで180度回転させ四角柱部材513Bを凹部521に嵌合させると、図8(C)に示す如く、突起部513BAが、第1凸部514と対をなす凸部の一方の凸部となる。即ち、第1凸部514と突起部513BAとにより凸部間距離Lが定められ、第1凸部514と突起部513BAとで光学素子の立ち上がり部を挟持することが可能となる。
【0058】
なお、図8(B)の状態の四角柱部材513BをY軸回りで反時計方向に90度回転させ四角柱部材513Bを凹部521に嵌合させると、図8(D)に示す如く、突起部513BBが窪み513AAに収納され、四角柱部材513Bの突起部のない側面がベース面512Aと同一平面を構成する(即ち、突起部のない側面が光学素子の底面と当接する)。そして、第2凸部516が、第1凸部514と対をなす凸部の一方の凸部となる。即ち、第1凸部514と第2凸部516とにより凸部間距離Lが定められ、第1凸部514と第2凸部516とで光学素子の立ち上がり部を挟持することが可能となる。この場合には、四角柱部材513Bが凹部521に嵌合されることで、光学素子の底面の当接する領域を広くでき、光学素子をより安定して保持することが可能となる。この場合、勿論、四角柱部材513Bが凹部521に嵌合されていなくてもよい。
【0059】
即ち、第5実施形態においては、四角柱部材513Bの側面の方向を変更して、四角柱部材513Bを凹部521に嵌合することで、凸部間距離Lが変更可能とされている。このため、厚みの異なる光学素子であっても兼用してその光学素子を保持でき、光学素子保持装置510を更に汎用的に使用することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態においては、凹部521に嵌合されるのが四角柱部材513Bであったが、3角柱部材や5角柱部材などの多角柱部材であってもよい。そして、多角柱部材の1つ以上の側面に突起部が設けられていればよい。
【0061】
<第6実施形態>
第6実施形態においては、図9及び図10に示す如く、光学素子保持装置610が正方形形状とされた底面602(平面)を有する光学素子600を保持する。光学素子600の底面602は正方形形状であることから、光学素子600は、平行な第1辺600A及び第2辺600Bだけでなく、それらに直交する方向(Y軸方向)で平行な第3辺600C及び第4辺600Dを備える。
【0062】
図9に示す如く、光学素子保持装置610のベース部材611はX軸ベース部材612とY軸ベース部材613とを互いに直交させたものであり、ベース面612A、613Aが同一平面を構成している。X軸ベース部材612(Y軸ベース部材613)には、光学素子600の第1辺600A及び第2辺600B(第3辺600C及び第4辺600D)の立ち上がり部を挟持可能な第1凸部614及び第2凸部616(615及び617)が設けられている。なお、立ち上がり部と第1凸部614及び第2凸部616(615及び617)とは図2(A)に示した関係と同一である。X軸ベース部材612とY軸ベース部材613の機能は光学素子600の保持する方向のみ異なるだけで同一の機能を有するので、以下X軸ベース部材612のみについて説明し、Y軸ベース部材613については説明を省略する。
【0063】
X軸ベース部材612において、第1凸部614の第2凸部616側に隣接したベース面612A(第1凸部614とベース面612Aとの間)には、図10に示す如く、第1切込み部618(切込み部)が設けられている。第1切込み部618は、その深さ方向で終端部までほぼ一定の幅(図10ではビーム部612Cが状態Aとなるが状態Aは作図上の都合でその幅が狭まっている)で、第1凸部614側のベース部材612の側面612Bに沿って設けられている。このため、第1切込み部618により、結果としてX軸ベース部材612には、その先端に一体的に形成された第1凸部614を備えるビーム部612C、及びビーム部612Cを介して第1凸部614を変位可能に支持する支持部612Eが形成されている。即ち、X軸ベース部材612は、ビーム部612Cに備えられた第1凸部614を変位可能に支持する支持部612Eを備えている。光学素子600が第1凸部614及び第2凸部616で把持される際には、当初角度θであったビーム部612C(状態A)の角度(位置)は、第1凸部614の位置が外側に変位し(図10では右側に移動し)、角度θ1まで大きくなる(ビーム部612Cは状態Cとなる)。このため、支持部612Eは、光学素子600を保持する際に変位したビーム部612Cの位置を戻そうとする復元力を発生させることとなる。即ち、支持部612Eも第1切込み部618によって生じたばね構造の一部をなすので、上述した復元力が発生することで光学素子600に対する押圧力が付与されることとなる。なお、ビーム部612Cの位置が状態Cのときであってもその角度θ1は、90度未満であり、第1凸部614は第2凸部616側に傾斜しており、第1凸部614の先端部614Aのみが光学素子600の側面604に当接している。即ち、支持部612Eは、当初から第1凸部614を第2凸部616側に傾斜させているものの、光学素子600を保持する際にも、第1凸部614を第2凸部616側に傾斜させることで第1凸部614及び第2凸部616に光学素子600の保持力を付与している。
【0064】
ビーム部612Cの反対側には、図10に示す如く、延在部612Dが延在されている。即ち、X軸ベース部材612は、ビーム部612Cの反対側に延在された延在部612Dを備える。このため、延在部612DにX軸方向の力を作用すると、支持部612Eを支点として、ビーム部612Cの先端の第1凸部614の変位量をX軸方向に与えることができる。即ち、延在部612Dによって第1凸部614の位置を変位させることができる。
【0065】
第2凸部616の第1凸部614側に隣接したベース面612Aには、図9に示す如く、第1切込み部618と同一形状の第2切込み部620(切込み部)が設けられている。即ち、第2込み部620により、結果的としてベース部材612には、その先端に一体的に形成された第2凸部616を備えるビーム部612C、及びビーム部612Cを変位可能に支持する支持部612Eが形成されている。そして、そのビーム部612Cの反対側には、図9に示す如く、延在部612Dが延在されている。これらの部材の機能は前述した機能を備える。
【0066】
このように、第6実施形態においては、X軸ベース部材612及びY軸ベース部材613が、ビーム部612C、613Cの反対側に延在された延在部612D、613Dと、ビーム部612C、613Cに備えられた第1凸部614、615及び第2凸部616、617を変位可能に支持する支持部612E、613Eと、を備えている。そして、支持部612E、613Eが延在部612D、613Dによって変位させられた第1凸部614、615及び第2凸部616、617の位置を元に戻そうとする復元力を発生させることで、光学素子600に対する押圧力を付与する。つまり、保持力付与機構をX軸ベース部材612及びY軸ベース部材613とは別に設ける必要がない。このため、光学素子保持装置610の、より小型且つ低コスト化が可能となる。同時に、光学素子600は、第1凸部614、615及び第2凸部616、617で把持された状態でベース面612A、613A上のXY軸方向で相応に移動可能となる(例えば図10で示すビーム部612Cでは状態Aと状態Bの間で変位が可能なことによる)。このため、光学素子600の中心位置の調整(センタリング)を容易に実現することができる。
【0067】
また、X軸ベース部材612及びY軸ベース部材613はビーム部612C、613Cの反対側に延在された延在部612D、613Dを備えている。このため、延在部612D、613Dを変位させることで支持部612E、613Eが支点となり、ビーム部612C、613Cを図10の状態A〜状態Cと容易に変位させることができる。このため、第1凸部614、615及び第2凸部616、617の光学素子600に対する当接する際の当り具合を容易に調整でき、光学素子600に与える衝撃を低減し且つ光学素子600の保持をより容易に安定して実現することができる。
【0068】
また、光学素子600は底面602に更に平行な第3辺600C及び第4辺600Dを備えている。そして、ベース部材611が第3辺600C及び第4辺600Dからの立ち上がり部を挟持可能な(Y軸ベース部材613による)第1凸部615及び第2凸部617を更に備えている。そして、第3辺600C及び第4辺600Dに対応して保持力付与機構(支持部613E)を更に備える。更には、支持部612E、613Eは各辺600A、600B、600C、600Dに対応して(即ち4か所に)備えられている。このため、光学素子保持装置610は、光学素子600の4辺から光学素子600を保持可能となるので、光学素子600をより強固に且つ安定して保持することができる。
【0069】
なお、第6実施形態においては、保持力付与機構が支持部とされ4か所に備えられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2実施形態で示した保持力付与機構を4か所すべてに備えてもよいし、一部のみに使用してもよい。また、第1実施形態で示した第2切込み部120をX軸、Y軸ベース部材それぞれで採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、1つ以上の平面を有するプリズム、ビームスプリッタ(BS)、フィルター、ミラー、シリンドリカルレンズなどの様々な形状の光学素子を保持するのに汎用的に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100、200、300、600…光学素子
102、202、302、602…光学素子の底面
104、304、604…光学素子の側面
110、210、310、410、510、610…光学素子保持装置
112、212、312、412、512、611…ベース部材
112A、212A、312A、412A、512A、612A、613A…ベース面
112C、212C、312C、412C、512C、612C、613C…ビーム部
114、214、314、414、514、614、615…第1凸部
116、216、316、416、516、616、617…第2凸部
118、218、318、418、518、618、619…第1切込み部
120、220、320、420、520、620、621…第2切込み部
222、322…螺子配置部
222C、322C…螺子穴
324、524…螺子
513B…四角柱部材
513BA、513BB…突起部
521…凹部
612D、613D…延在部
612E、613E…支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10