特許第6137455号(P6137455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137455
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20170522BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20170522BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B60R21/237
   B60R21/207
   B60R21/233
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-42350(P2013-42350)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169036(P2014-169036A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】二井 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3038479(JP,U)
【文献】 特開2005−138665(JP,A)
【文献】 特開平09−086329(JP,A)
【文献】 特開平10−338099(JP,A)
【文献】 特開平09−272396(JP,A)
【文献】 特開2009−006860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ本体と、該エアバッグ本体にガスを導入するガス導入手段とを備え、収納部に収納された前記エアバッグ本体を前記ガスの導入により車両のドアと乗員との間に膨張展開させるサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ本体は、前記ガス導入手段に接続され、前記ガス導入手段からのガスが流入する第1方向に沿って延設された第1チャンバと、前記第1方向に対して交差する第2方向に沿って延設された第2チャンバと、に区画されており、
前記エアバッグ本体は、前記第1チャンバを残して前記第2チャンバの全てが前記第2方向に沿って前記第1チャンバに向かって折り畳まれ、前記第1チャンバ及び前記第2方向に沿って折り畳まれた状態の前記第2チャンバが前記第1方向に沿って前記ガス導入手段に向かって折り畳まれて前記収納部に収納されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1チャンバは、前記ガス導入手段との接続部と同じ幅で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグ本体は、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを連通する開放部を有し、前記開放部は前記ガス導入手段とは反対側の端部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグ本体は、巻き折り又は蛇腹折りにより折り畳まれて収納されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記第1方向が車両の前後方向であり、前記第2方向が車両の上下方向であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員安全装置の一つとして、サイドエアバッグ装置がある。サイドエアバッグ装置は、シートバック(又はドアトリム)のフレームに固定されたインフレータと、インフレータより噴出したガスにより乗員とドアトリムとの間に膨張展開可能なバッグ本体とを備える。サイドエアバッグ装置は、側面衝突等により車両に衝撃が加わった場合に、このバッグ本体が膨張展開されることで、乗員を側面衝突による衝撃から保護する。
【0003】
サイドエアバッグ装置としては、インフレータとエアバッグ本体とを備え、エアバッグ本体が複数のチャンバに分割され、インフレータからのガスが流入して、インフレータに近いチャンバから順に膨張展開するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−56506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアトリム形状によっては、着座した乗員の胸部や腰部との間の間隙が狭く、衝突時にさらにこの間隙が狭くなることを考慮すると、エアバッグ本体が膨らみにくいことも考えられる。このため、衝突時にさらに間隙が狭くなる前にエアバッグ本体を展開させて乗員を確実に保護することが考えられるが、この場合にはインフレータの出力を上昇させる必要があり好ましくない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、インフレータの出力を上昇させることなく早期に展開可能なサイドエアバッグ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサイドエアバッグ装置は、エアバッグ本体と、該エアバッグ本体にガスを導入するガス導入手段とを備え、収納部に収納された前記エアバッグ本体を前記ガスの導入により車両のドアと乗員との間に膨張展開させるサイドエアバッグ装置であって、前記エアバッグ本体は、前記ガス導入手段に接続され、前記ガス導入手段からのガスが流入する第1方向に沿って延設された第1チャンバと、前記第1方向に対して交差する第2方向に沿って延設された第2チャンバと、に区画されており、前記エアバッグ本体は、前記第1チャンバを残して前記第2チャンバの全てが前記第2方向に沿って前記第1チャンバに向かって折り畳まれ、前記第1チャンバ及び前記第2方向に沿って折り畳まれた状態の前記第2チャンバが前記第1方向に沿って前記ガス導入手段に向かって折り畳まれて前記収納部に収納されていることを特徴とする。前記ガス導入手段に接続され、前記ガス導入手段からのガスが流入する第1方向に沿って区画された第1チャンバと、前記第1方向に対して交差する第2方向に沿って区画された第2チャンバとを備え、前記エアバッグ本体は、前記第2チャンバが前記第2方向に沿って折り畳まれた状態で、前記第1チャンバが前記第1方向に沿って折り畳まれて前記収納部に収納されていることで、インフレータから噴出されたガスによりエアバッグ本体を早期に展開することができる。即ち、第1チャンバと第2チャンバとはそれぞれガスの流れる方向に沿って画成されると共に折り畳まれていることから、ガスが流入すると展開しやすく、結果として早期に膨張展開することが可能である。
前記第1チャンバは、前記ガス導入手段との接続部と同じ幅で形成されていることを特徴とすることが好ましい。さらに前記エアバッグ本体は、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを連通する開放部を有し、前記開放部は前記ガス導入手段とは反対側の端部に設けられていることが好ましい。
【0008】
前記エアバッグ本体は、巻き折り又は蛇腹折りにより折り畳まれて収納されていることが好ましい。このように折り畳まれていることで、ガスが流入した場合にガスの流れを妨げることがなくエアバッグ本体が展開しやすい。
【0009】
本発明の好ましい実施形態としては、前記第1方向が車両の前後方向であり、前記第2方向が車両の上下方向であることがあげられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のサイドエアバッグ装置によれば、インフレータの出力を上昇させることなく早期に展開可能であるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1にかかるサイドエアバッグ装置における展開状態を示す車両の側面模式図。
図2】実施形態1にかかるサイドエアバッグ装置における展開状態を示す車両の正面模式図。
図3】実施形態1のエアバッグ本体の折り畳み過程を説明するための模式図。
図4】実施形態1のエアバッグ本体の展開過程を説明するための模式図。
図5】実施形態2のエアバッグ本体の折り畳み過程を説明するための模式図。
図6】実施形態2のエアバッグ本体の展開過程を説明するための模式図。
図7】実施形態3のエアバッグ本体の折り畳み過程を説明するための模式図。
図8】実施形態3のエアバッグ本体の展開過程を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について図1〜4を用いて説明する。
【0015】
図1、2に示すように、サイドエアバッグ装置1は、エアバッグ本体2と、エアバッグ本体2にガスを導入するためのインフレータ(ガス導入手段)3とを備える。サイドエアバッグ装置1は、シート4のシートバック5の側方に、詳しくは後述するように早期に展開できるように折り畳まれて収納されている。サイドエアバッグ装置1は、車両Iが側面衝突を予知又は検出した場合に起動してインフレータ3からガスが噴出することで、エアバッグ本体2が乗員とドア6との間に膨張しつつ介在するように構成されている。このサイドエアバッグ装置1により、車両Iの側面衝突時の衝撃を吸収して、乗員を保護することが可能である。
【0016】
エアバッグ本体2は、側面視において、シート4に着座した乗員の肩部から腰部に対応して展開するように設けられている。エアバッグ本体2は、外形が矩形状であり、第1チャンバ21と、第2チャンバ22とからなる。
【0017】
第1チャンバ21は、着座した乗員の腰部に対応して展開するように設けられている。また、第2チャンバ22は、着座した乗員の肩部及び胴部に対応して展開するように設けられている。また、第1チャンバ21は、その端部に設けられたインフレータ接続部23においてインフレータ3に接続されている。なお、第1チャンバ21と第2チャンバ22とは後述するステッチ24で隔絶されているが、展開時においてはステッチ24が破れて第1チャンバ21と第2チャンバ22とは連通した状態となる。
【0018】
かかるエアバッグ本体2は、ドア6のドアトリム61と着座した乗員の間に展開するものであるが、ドアトリム61の車室側に突出した突出部62と乗員の腰部との間の間隙が狭いので、側面衝突時にはさらに狭くなってしまってエアバッグ本体が乗員とドアとの間に介在しにくくなることを防止する必要がある。
【0019】
そこで、本実施形態のサイドエアバッグ装置1では、側面衝突時にエアバッグ本体2が乗員とドア6との間に介在することができるように構成されている。以下、図3、4を用いて詳細に説明する。
【0020】
本実施形態では、図3(1)に示すように、エアバッグ本体2は、第1チャンバ21と第2チャンバ22とを有するものであり、第1チャンバ21と第2チャンバ22とは、ステッチ(仕切部)24で隔絶されている。ステッチ24は、第1チャンバ21は所定の圧力で破れるものであり、第1チャンバ21にガスが充満すると破れるように構成されている。図1、2に示す状態では、このステッチ24は破れている。
【0021】
第1チャンバ21は、インフレータ接続部23から、インフレータからのガスの流入方向(以下、第1方向Xとする)に沿って延設されたものである。本実施形態では、第1チャンバ21は、インフレータ接続部23と同じ幅で形成されている。第2チャンバ22は、インフレータからのガスの流入方向とは直交する方向(以下、第2方向Yとする)に沿って第1チャンバ21から延設されたものである。また、第1チャンバ21は、第2チャンバ22よりも容量が小さい。
【0022】
かかるエアバッグ本体2を、早期に展開できるように以下のようにして折り畳んでいく。図3(2)に示すように、エアバッグ本体2は、初めに、第2チャンバ22を、第2方向Yに沿って第1チャンバ21に向かって折り畳んでいく。本実施形態では、折り畳みは、第2チャンバ22の端部を内側へ巻き込んでいくことで行ういわゆる巻き折りにより行う。図3(3)に示すように、第1チャンバ21のみを残して第2チャンバの折り畳みを終了する。第2チャンバは、すべて第2方向に沿って折り畳まれた状態である。
【0023】
次いで、図3(4)に示すように、第1チャンバ21及び折り畳まれた第2チャンバ22を、第2方向Yに沿ってインフレータ接続部23に向かって第1チャンバ21の端部を内側へ巻き込む巻き折りにより折り畳んでいく。
【0024】
このようにして図3(5)に示すように、エアバッグ本体2を収容状態とする。
【0025】
このようなエアバッグ本体2は、側面衝突が感知されると、以下のように展開する。
【0026】
図4(1)(2)に示すように、収納状態であるエアバッグ本体2には、インフレータ3からインフレータ接続部23を介してガスが流入する。第1チャンバ21は、このガスの第1方向Xへの流れに沿うように延設され、かつ、この第1方向Xに沿って折り畳まれているのでガスが流れを妨げられず、流れやすい。このため、第1チャンバ21は車両前方に向かって早期に展開することができる。
【0027】
そして、図4(3)に示すように、第1方向に第1チャンバ21が展開し、第1チャンバ21にガスが充満すると、図4(4)に示すように、ステッチ24が破れる。これにより、ガスの流れは第1チャンバ21から第2方向Yへ、即ち上方へ流れるようにガス流れが変化する。そして、第2チャンバ22、このガスの第2方向Yへの流れに沿うように延設され、かつ、この第2方向Yに沿って折り畳まれているのでガスが流れを妨げられず、流れやすい。このため、第2チャンバ22も車両上方に向かって早期に展開することができる。
【0028】
このようにして、図4(5)に示すように、エアバッグ本体2が全て展開される。
【0029】
このように、本実施形態では、エアバッグ本体2を第1チャンバ21と第2チャンバ22とに区画している。そして、第1チャンバ21は、インフレータ接続部23から第1方向Xに沿うように延設されると共に、インフレータ接続部23からガスが流れる第1方向Xに沿って折り畳まれているので第1方向Xにガスが流入することで展開しやすい。
【0030】
また、第2チャンバ22が第2方向Yに沿うように第1チャンバ21から延設されていると共に、第2チャンバ22も第1チャンバ21からガスが流れる第2方向Yに沿って折り畳まれているので第2方向Yにガスが流入することで展開しやすい。
【0031】
即ち、本実施形態では、エアバッグ本体2は、二つのチャンバ21,22をステッチ24によりガス流れを規制するように形成すると共にこのガス流れに沿って各チャンバ21,22を折り畳むことで、展開しやすいように構成されており、その結果、乗員をより早期に保護することができる。
【0032】
さらに着座した乗員の腰部に対応する第1チャンバ21は初めにガスが流入するだけでなくエアバッグ本体2内で小さく区画してあるので、より早期に膨張することが可能である。これにより、ドアトリムの突出部と乗員の腰部との間に早期に第1チャンバ21が膨張展開でき、早期に腰部を保護する。
【0033】
このように、本実施形態では、エアバッグ本体2が展開しやすいように区画され、折り畳まれていることで、インフレータ3の出力を変更せずに早期に展開して乗員の腰部並びに肩部及び胴部を早期に保護することができる。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態は、実施形態1とはエアバッグ本体2Aのチャンバの構成が異なっているものである。
【0035】
図5(1)に示すように、エアバッグ本体2Aは、第1チャンバ21Aと第2チャンバ22Aとを備える。第1チャンバ21Aは着座した乗員の肩部に対応するように、第2チャンバ22Aは着座した乗員の胴部及び腰部に対応するように、設けられている。即ち、本実施形態では、着座した乗員の肩部を最も早期に保護することができる。
【0036】
第1チャンバ21Aは、インフレータ接続部23Aからインフレータからのガスの流入方向である第1方向Xに沿って延設され、第2チャンバ22Aは、第1チャンバ21Aから第1方向Xに対して直交する第2方向Yに沿って延設される。第1チャンバ21Aと第2チャンバ22Aとは所定の圧力が印加されると破れるステッチ24Aにより区画されている。また、本実施形態においても第1チャンバ21Aは第2チャンバ22Aよりも容量が小さい。
【0037】
このエアバッグ本体2Aについても、図5(2)に示すように、第2チャンバ22Aを初めに第1チャンバ21Aに向かって端部を内部に巻き込むようにして巻き折りにより折り畳んでいく。第2チャンバ22Aを巻き終わると(図5(3)参照)、図5(4)に示すように第1チャンバ21Aをインフレータ接続部23Aに向かって端部を内側に巻き込むようにして折り畳んでいく。このようにして図5(5)に示すようにエアバッグ本体2Aを収納状態とする。
【0038】
かかるエアバッグ本体2Aの展開過程について図6を用いて説明する。図6(1)に示すように、エアバッグ本体2Aのインフレータ接続部23Aにはインフレータ3Aが接続されており、インフレータ3Aからガスが第1チャンバ21Aに流入する。第1チャンバ21Aはガスの流れる方向に沿って折り畳まれているので、ガスが流れると車両前方へ展開される(図6(2)参照)。そして、第1チャンバ21Aにガスが充満すると(図6(3)参照)、図6(4)に示すように第1チャンバ21A内の圧力が所定の圧力を超えるのでステッチ24Aが破れてガスが第2方向Yへ流れを変えて第2チャンバ22Aへ流入する。第2チャンバ22Aは、このガスの流れる第2方向Yに沿って折り畳まれているので、ガスが流れると車両下方に展開される(図6(5)参照)。
【0039】
このように、本実施形態でも、エアバッグ本体2Aは、二つのチャンバ21A,22Aをステッチ24Aによりガス流れを規制するように形成すると共にこのガス流れに沿って各チャンバ21A,22Aを折り畳むことで、展開しやすいように構成されており、その結果、乗員をより早期に保護することができる。
【0040】
さらに着座した乗員の肩部に対応する第1チャンバ21Aは初めにガスが流入するだけでなくエアバッグ本体2A内で小さく区画してあるのでより早期に膨張することが可能である。これにより、ドアトリムの突出部と乗員の肩部との間により早期に第1チャンバ21Aが膨張展開でき、より早期に肩部を保護する。
【0041】
このように、本実施形態においても、エアバッグ本体2Aが展開しやすいように区画され、折り畳まれていることで、インフレータ3の出力を変更せずに早期に展開して乗員の腰部並びに肩部及び胴部を早期に保護することができる。
【0042】
(第3実施形態)
本実施形態は、実施形態1,2とはエアバッグ本体2Bの構成が異なる。
【0043】
図7(1)に示すように、エアバッグ本体2Bは、一つの第1チャンバ21Bと、この第1チャンバ21Bの上下にそれぞれ設けられた二つの第2チャンバ22Bとを備える。第1チャンバ21Bは着座した乗員の胴部に対応すると共に、第2チャンバ22Bは、それぞれ着座した乗員の肩部及び腰部にそれぞれ対応する。即ち、本実施形態では、着座した乗員の胴部を最も早期に保護することができる。
【0044】
第1チャンバ21Bは、インフレータ接続部23Bからインフレータからのガスの流入方向である第1方向Xに沿って延設される。各第2チャンバ22Bは、第1チャンバ21Bから第1方向Xに対して直交する第2方向Y、即ち第1チャンバ21Bの上下方向にそれぞれ沿って延設される。第1チャンバ21Bと第2チャンバ22Bとステッチ24Bにより区画されているが、第1チャンバ21Bのインフレータ接続部23Bとは逆側の端部は開放されて第2チャンバ22Bと連通するように構成されている。即ち、第1チャンバ21Bと各第2チャンバ22Bとは、それぞれステッチ24Bが設けられていない開放部25Bを介して連通している。本実施形態においては、このようなステッチ24Bと開放部25Bにより各チャンバを区画している。また、本実施形態においても第1チャンバ21Bは各第2チャンバ22Bよりも容量が小さい。
【0045】
このエアバッグ本体2Bについても、図7(2)に示すように、各第2チャンバ22Bを初めに第1チャンバ21Bに向かって端部を内部に巻き込むようにして巻き折りにより折り畳んでいく。各第2チャンバ22Bを巻き終わると(図7(3)参照)、図7(4)に示すように第1チャンバ21Bをインフレータ接続部23Bに向かって端部を内側に巻き込むようにして巻き折りにより折り畳んでいく。なお、本実施形態では、各第2チャンバ22Bが巻き終わり時に若干残ることとなるが、このような状態であっても第2チャンバ22Bの巻き終わりとする。このようにして図7(5)に示すようにエアバッグ本体2Bを収納状態とする。
【0046】
かかるエアバッグ本体2Bの展開過程について図8を用いて説明する。図8(1)に示すように、エアバッグ本体2Bのインフレータ接続部23Bにはインフレータ3Bが接続されており、インフレータ3からガスが第1チャンバ21Bに流入する。第1チャンバ21Bはガスの流れる第1方向Xに沿って折り畳まれているので、ガスが流れると車両前方に展開される(図8(2)参照)。そして、第1チャンバ21Bにガスが充満すると(図8(3)参照)、図8(4)に示すように開放部25Bを介してガスが各第2チャンバ22Bへ流入する。即ち、開放部25Bによりガスの流れが第1方向Xから第2方向Yへ変化する。各第2チャンバ22Bは、このガスの流れる第2方向Yに沿って折り畳まれているので、ガスが流れると車両上下方向にそれぞれ展開される(図8(5)参照)。
【0047】
このように、本実施形態でも、エアバッグ本体2Bは、二つのチャンバ21B,22Bをステッチ24Bによりガス流れを規制するように形成すると共にこのガス流れに沿って各チャンバ21B,22Bを折り畳むことで、展開しやすいように構成されており、その結果、乗員をより早期に保護することができる。
【0048】
さらに着座した乗員の胴部に対応する第1チャンバ21Bは初めにガスが流入するだけでなくエアバッグ本体2B内で小さく区画してあるのでより早期に膨張することが可能である。これにより、ドアトリムの突出部と乗員の胴部との間により早期に第1チャンバ21Bが膨張展開でき、より早期に胴部を保護する。
【0049】
この場合に、本実施形態では第1チャンバ21Bと第2チャンバ22Bとを接続する開放部25Bがインフレータ3Bとは逆側の端部に設けられていることで、第1チャンバ21Bが初めに展開され、すぐに乗員とドアトリムとの間に介在することができる。例えば、開放部25Bがインフレータ接続部23B近傍に設けられているとすれば、第1チャンバ21Bを早期に展開することができない。従って、本実施形態のように開放部25Bはインフレータ3Bとは逆側の端部に設けられていることが望ましい。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、実施形態3における開放部25Bに、実施形態1、2に示すような所定の圧力がかかると破れるステッチを形成してもよいし、また、実施形態3において第1チャンバ21Bと第2チャンバ22Bとを全て所定の圧力がかかると破れるステッチにより区画してもよい。また、実施形態1、2において、実施形態3に示すような開放部を有するステッチ24Bを設けてもよい。さらにまた、所定の圧力がかかると破れるステッチと破れないステッチとを交互に設けて構成してもよい。さらにまた、異なる圧力で破れる複数のステッチを設けてもよい。このように、第1チャンバと第2チャンバとがガスの流入方向に従って区画されていればその区画手段については限定されない。例えばステッチではなく、内部に仕切壁を設けていてもよいし所定の圧力で開く弁を設けてもよい。
【0051】
上述した各実施形態では、第1チャンバ21は、インフレータ接続部23と同じ幅で形成されているが、これに限定されない。インフレータ接続部23とは異なる幅でもうけられていてもよいが、ガスの流れを妨げないように本実施形態のような同幅で設けることが好ましい。
【0052】
上述した各実施形態では、エアバッグ本体は端部を内側に巻き込む巻き折りとして折り畳んだが、これに限定されない。例えば、蛇腹折り(アコーディオン折り)とすることも可能である。また、巻き折りと蛇腹折りとを組み合わせてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、エアバッグ本体2の外形は矩形状であるが、これに限定されない。第1方向X及び第2方向Yに延設されていれば異なる形状であってもよい。
【0054】
なお、上述した実施形態1では、第1チャンバ21の位置は、着座した乗員とドアトリム61との間の間隙が最も狭い部分、即ちドアトリム61の突出部62と乗員との間が衝突時にさらに狭くなることを考慮して設けられたものであったが、より早期に保護したい部分に併せて第1チャンバの位置を形成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のサイドエアバッグ装置はインフレータの出力を上昇させることなく早期に展開可能である。従って、自動車製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 サイドエアバッグ装置
2 エアバック本体
3 インフレータ
4 シート
5 シートバッグ
6 ドア
21 第1チャンバ
22 第2チャンバ
23 インフレータ接続部
24 ステッチ
25B 開放部
61 ドアトリム
62 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8