(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体の内部に立設された仕切板によって、熱交換器および送風ファンを含む送風機室と、下部に圧縮機が配置され上部に電装部品が収納される電装品ユニットを有する機械室とに区画され、上記電装品ユニットは上記仕切板に取り付けられ、上記電装品ユニットに接する上記仕切板に、上記電装品ユニット内の空気が上記送風機室側に流入する通気口が設けられている空気調和機の室外機において、
上記通気口には、上記送風機室から上記電装品ユニットに向けての水の浸入を阻止するために、上記送風機室側に、遮水板と遮水蓋からなる第1遮水手段が設けられているとともに、上記電装品ユニット側に、上記電装品ユニット側に張り出すように形成され、上面および上記通気口に対向する側面のみが開放された遮水箱からなる第2遮水手段が設けられており、
上記遮水箱は、横並びに配置された少なくとも2つ以上の通気口に対向してそれぞれ設けられ、上記仕切板に上記電装部品を固定する基板ホルダーと一体に形成されることを特徴とする空気調和機の室外機。
上記遮水箱は、その底面に上記電装品ユニット側から上記送風機室側に向かって下り勾配となる傾斜面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。
上記第1遮水手段は、2つ以上の上記通気口それぞれに所定の間隔をもって対向する衝立板を有する遮水板と、周面に通気部を有し上記遮水板の全体を覆うように箱状に形成された遮水蓋とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【背景技術】
【0002】
室外機の筐体内部は、通常、ほぼ垂直に立設された仕切板を介して、熱交換器および送風ファンを含む送風機室と、圧縮機および電装品ユニットを含む機械室とに区画されている(例えば、特許文献1の特に
図3参照)。
【0003】
多くの場合、圧縮機とその配管類は、機械室側の下部側に配置され、電装品ユニットは、その上部側に配置されている。電装品ユニット内には、圧縮機を駆動するための電気部品や回路基板、電源ユニットなどの電装部品が収納されている。
【0004】
これら電装部品の中には、リアクタコイルやインバータ回路といった発熱部品が含まれており、これら発熱部品を冷却する必要がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、電装品ユニット内の仕切板の上部に複数の通気孔を設け、送風ファンの駆動によって送風機室内が負圧になるのを利用して、電装品ユニット内の空気を送風機室側に吸い込むことにより、電装品ユニット内の熱を排熱するようにしている。
【0006】
このように、従来の室外機においては、電装品ユニット内の発熱部品を冷却するため、電装品ユニットと送風機室とを通気口により連通させているが、送風機室側から通気孔を伝って滴り落ち、電装品ユニット内に水が浸入するおそれがある。
【0007】
すなわち、送風機室内には、熱交換器や送風ファンの空気吹出グリル等から水が入り込みやすく、ドレン水や浸入した水が底板に溜まり送風ファンによって掻き上げられて電装品ユニット内に浸入することもある。
【0008】
そこで、特許文献1では、送風機室側に通気孔を覆う遮水蓋と遮水箱とによる遮水手段を取り付けて、電装品ユニット内への水の浸入を阻止するようにしている。
【0009】
しかしながら、例えば台風などの暴風雨時においては、より多くの水が送風機室内に入り込むため、上記送風機室側の遮水手段だけでは不十分で、送風機室内に入り込んだ水の一部が遮水手段を越えて電装品ユニット内に浸入し、電装部品に悪影響を与え、最悪の場合、電装部品が故障してしまうおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
まず、
図1および
図2を参照して、この実施形態に係る空気調和機の室外機1は、前面(
図1の手前側)に送風ファン2の吹出グリル41を備えた筐体4を有し、筐体4の内部に立設された仕切板5によって、その内部が送風機室FCと機械室MCとに区画されている。
【0020】
送風機室FCは、その内部に送風ファン2および熱交換器3を備え、
図1において筐体4の正面左側に配置されている。
【0021】
機械室MCは、下部に圧縮機61やレシーバタンク62およびその配管類(図示しない)を有し、圧縮機61やレシーバタンク62の上部に室外機1を駆動するのに必要な回路基板やアクティブフィルタモジュール(以下、「ACTPM」と略記)71やリアクタ72のような発熱電装部品を含む電装部品が収納される電装品ユニット7を備え、
図1において筐体4の正面右側に配置されている。機械室MC側で筐体4の背面側には、機械室MC内に空気を取り込み、電装品ユニット7に流通させるための吸気孔11が設けられている。
【0022】
本発明において、送風ファン2、筐体4、熱交換器3、圧縮機61やレシーバタンク62およびその配管類の具体的構成は任意であってよく、その説明は省略する。
【0023】
仕切板5は、剛性の高い金属板の成形品からなり、筐体4の底面から天井面にかけてほぼ垂直に立設されている。また、仕切板5は、筐体4の底面から電装品ユニット7の下に至るまでの高さで形成しておき、その上端面に電装品ユニット7の一部を構成する電装品ユニット仕切板を載置するようにしてもよい。
【0024】
図3に示すように、電装品ユニット7内において、仕切板5の上部側には、送風ファン2の運転に伴って生ずる気圧差(負圧)により、吸気孔11から機械室MC内に入った空気が、発熱電装部品を冷却して送風機室FC側に流入する通気路を形成する通気口50が設けられている。
【0025】
この実施形態では、通気口50として2つの通気口51,52を備えている。通気口51,52は、左右の横並びに配置されており、それぞれ長方形状の孔からなる。通気口51,52を区別する必要がない場合には、総称して通気口50とする。
【0026】
通気口50(51,52)の送風機室FC側には、送風機室FC側から電装品ユニット7に水が浸入しないようにするための第1遮水手段8が設けられているが、第1遮水手段8については後述する。
【0027】
仕切板5の電装品ユニット7側には、ACTPM71の基板ホルダー53が設けられている。基板ホルダー53は、難燃性合成樹脂製の板状パネルからなり、仕切板5に沿ってネジ止めされている。
【0028】
基板ホルダー53の上部には、通気口51,52をそれぞれ囲むように遮水箱54a,54bが基板ホルダー53と一体に設けられている。遮水箱54a,54bは同一構成であり、区別する必要がない場合には、総称して遮水箱54とする。
【0029】
遮水箱54は、上記第1遮水手段8で防げなかった水が電装品ユニット7内に浸入するの阻止する第2遮水手段として機能する。すなわち、この室外機1は、第1および第2の2重の遮水手段8,54を備えている。
【0030】
図10を併せて参照して、遮水箱54は、通気口50の下辺から電装品ユニット7内に向けて延在する底板541と、底板541の前端面から上方に向けてほぼ直角に折り曲げられた前板542と、底板541の両側端面の各辺から上方に向けてほぼ直角に折り曲げられた左右一対の側板543,543とを有し、通気口50に対向する残された一側面と、上面544とが開口されている。
【0031】
底板541は、電装品ユニット7側から通気口50に向かうにつれて所定の角度θで徐々に下り勾配となる傾斜面を形成している。これにより、第1遮水手段8を越えて遮水箱54内に水が浸入しても、底板541の傾斜面によって第1遮水手段8側に自然に戻るようになっている。なお、底板541の傾斜角θは仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0032】
再び
図3を参照して、この実施形態において、基板ホルダー53には、開口部55が形成されており、開口部55には、仕切板5を挟んで送風機室FC側に張り出すように設置された図示しないヒートシンクとヒートシンクの対面にACTPM71が載置されている。ACTPM71の右隣には、リアクタ72が並置されている。リアクタ72は、仕切板5に取り付けられたリアクタ取付板56を介して仕切板5に装着されている。
【0033】
ACTPM71およびリアクタ72は、ともにインバータ機器に用いられる高発熱部品(発熱電装部品)であり、この実施形態において、ACTPM71は、一方の通気口51(以下、第1通気口51という)の下部側に配置されており、リアクタ72は、他方の通気口52(以下、第2通気口52という)の下部側に配置されている。
【0034】
基板ホルダー53にはさらに、後述する通気ダクト9と仕切板5との間で独立した2つの通気路92,93を形成するための一方の間仕切板(以下、第1間仕切板)57が設けられている。
【0035】
第1間仕切板57は、基板ホルダー53の板面53aからほぼ垂直に立設された板体であって、ACTPM71とリアクタ72との間に位置している。第1間仕切板57は、上端側が各通気口51,52の上方まで設けられており、下端側がACTPM71とリアクタ72よりも下方まで延在している。
【0036】
図2に示すように、電装品ユニット7内にはさらに、第1回路基板73と、第2回路基板74とが設けられている。
図3を併せて参照して、第1回路基板73には、発熱電装部品としてインバータ用のスイッチング素子や大型電解コンデンサ731が実装されており、基板ホルダー53の下部側に取り付けられている。
【0037】
第2回路基板には、主に制御系と電源系の電子部品が実装されている。仕切板5の上
端中央から電装品ユニット7内に向けて突設された片持ち式のアーム58は第2回路基
板74近傍の電装品ユニット7に取り付けられている。
【0038】
ACTPM71およびリアクタ72は、電装部品の中でも特に高温を発する電気部品であり、効率的に冷却することが望まれる。そこで、ACTPM71およびリアクタ72の付近の空気の流速を高めて、冷却効率を高めるため、ACTPM71およびリアクタ72の上方にそれぞれ通気口51,52が設けられ通気路が形成される。通気路には、通気ダクト9が設けられている。
【0039】
図4〜
図6に示すように、通気ダクト9は、その内面(仕切板5に対向する面)に上記第1間仕切板57に合致する第2間仕切板91が通気ダクト9の内面からほぼ垂直に立設されている。通気ダクト9は、電気絶縁材である合成樹脂板から形成されることが好ましい。
【0040】
図6に示すように、第2間仕切板91の先端と、第1間仕切板57の先端とが互いに接することにより、仕切板5と通気ダクト9との間に2つの独立した通気路92,93が形成される。
【0041】
一方の通気路92(以下、第1通気路92とする)は、ACTPM71を覆う第1カバー部94と、第1通気口51を覆う第2カバー部95とを有し、それらが一体的に形成されている。
【0042】
この実施形態において、第1カバー部94は、下端のほかに、他の設計上の要請から左側面側も開口された状態でACTPM71を覆うように配置されており、このような態様も本発明に含まれる。
【0043】
第2カバー部95は、第1通気口51に設けられている遮水箱54aの周りに所定の空気通路を確保した状態で、遮水箱54aの全面を覆うように形成されており、その下面側が第1カバー部94の上端側に一体的に連設されている。
【0044】
ここにおいて、第1カバー部94の高さを、ACTPM71の高さに応じて、第2カバー部95よりも低くして仕切板5との間の距離が短くすることにより、ACTPM71付近における空気の流れをより速くすることができ、その結果、ACTPM71をより効率的に冷却することができる。
【0045】
他方の通気路93(以下、第2通気路93とする)は、リアクタ72および第2通気口52に設けられている遮水箱54bの全体を覆うように形成されており、下端側のみが開口されている。この実施形態において、第2通気路93を構成する通気ダクト9の高さは、その上端から下端にかけて同じである。
【0046】
図4に示すように、この実施形態において、通気ダクト9の右側面側の一部(切欠部93a)は切り欠かれており、その切欠部93aを仕切板5から立設された遮蔽板96が覆うことにより、右側面側が塞がれるようになっている。遮蔽板96はリアクタ72から発生するノイズの放射を防ぐものである。
【0047】
これによれば、送風機室FC内の送風ファン2の運転に伴って、吸気孔11から吸い込まれた空気が上昇し、電装品ユニット7内の第1通気路92と第2通気路93内に吸い込まれ、各通気路92,93内でその流速が高められて第1通気口51および第2通気口52より送風機室FC側に流入するため、発熱電装部品であるACTPM71とリアクタ72とを効率的に冷却することができる。
【0048】
また、通気ダクト9の下端側に配置されている第1回路基板73も、通気ダクト9に吸い込まれる空気流に晒されることから、回路基板73に実装されている発熱電装部品をも効率的に冷却することができる。
【0049】
なお、空気調和機の仕様によっては、一例として、ACTPM71側の発熱量がさほど多くなく、リアクタ72側のみが発熱量が大きい場合がある。
【0050】
このような場合においては、特にACTPM71については、積極的に冷却を必要としないため、
図7に示す別の実施形態のように、通気ダクト9をリアクタ専用の通気ダクト9Aとして、発熱量の大きいリアクタ72のみを覆うようにすればよい。なお、電装品ユニット7は、電装品およびそれらの基板等を含み、仕切板5の上方に配置される電装品箱であってもよい。
【0051】
次に、
図8ないし
図10を参照して、送風機室FC側に設けられる第1遮水手段8の具体的な構成について説明する。
【0052】
この実施形態において、第1遮水手段8は、遮水蓋81と、遮水蓋81の内部に配置される遮水板82とを備え、仕切板5の送風機室FC側の側面に第1および第2通気口51,52を覆うように取り付けられている。
【0053】
遮水蓋81は、仕切板5に対する取り付け面が開口された箱体からなり、その周面には上部にひさしを設けたスリット状の通風口83が多数設けられている。遮水蓋81の開口部の周縁には、仕切板5に取り付けるためのフランジ部84が設けられている。遮水蓋81は、板金を折曲加工して形成される。
【0054】
遮水板82は、仕切板5に取り付けられる基端部85と、基端部85の上辺から遮水蓋81内に向けてほぼ直角に折り曲げられた水平板部86と、水平板部86の端部から上方に向けてほぼ直角に折り曲げられ、通気口51,52に対して通気路となる所定の間隔をもって配置される一対の衝立部87,87とを備え、衝立部87,87の間には、遮水蓋81内に向けてほぼ直角に折り曲げられた舌片88が形成されている。遮水板82は、板金を折曲加工して形成され、水平板部86が水平になるように仕切板5に取り付けられる。
【0055】
遮水板82は、その基端部85が、仕切板5と遮水蓋81のフランジ部84との間に挟まれた状態で仕切板5に取り付けられ、遮水板82を覆うように遮水蓋81が溶着によって仕切板5に取り付けられている。
【0056】
この遮水構造によれば、送風機室FC内に入り込んだ水は、第1遮水手段8の遮水蓋81と遮水板82とによって、そのほとんど遮水されるが、例えば暴風雨時等において、送風機室FC内に多量の水が入り込み、第1遮水手段8を越えて電装品ユニット7側に浸入したとしても、電装品ユニット7側には、第2遮水手段としての遮水箱54が設けられているため、その浸入水が電装品ユニット7内に滴下するおそれはない。
【0057】
なお、ミスト水(霧状の水)については、送風ファンの運転により、通気口50(51,52)には、電装品ユニット7側から送風機室FC側に向かう気流が発生していることから、ミスト水が電装品ユニット7内に入り込むことはほとんどない。
【0058】
上述した実施形態においては、主に冷却する部品がACTPM71とリアクタ72の2部品であることから、これに対応して、通気口50を通気口51,52の2つとしているが、1つの通気口50で複数の発熱電装部品(この例では、ACTPM71とリアクタ72)を冷却することもできる。
【0059】
すなわち、
図11に示すように、ACTPM71とリアクタ72の上方に、通気口50として、それらに跨がるような横長の通気口51Aを形成し、この通気口51Aに対応した横長の遮水箱54Aを設ける。遮水箱54Aの基本形態は、上述した遮水箱54(54a,54b)と同一で、その上面は開放されている。
【0060】
図11の実施形態では、この通気口51AからACTPM71とリアクタ72にかけてを覆うように通気ダクト9が取り付けられるが、通気ダクト9内を、上記実施形態と同じく、ACTPM71側の第1通気路92と、リアクタ72側の第2通気路93とに分ける場合、その間仕切板57,91(
図6参照)は、遮水箱54Aの下面から下方に向けて延びるように設けられる。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、送風機室HCと電装品ユニット7とを連通する通気口50の送風機室HC側に第1遮水手段8を設けるとともに、通気口50の電装品ユニット7側に遮水箱54からなる第2遮水手段を設けて、二重の遮水構造としたことにより、暴風雨などの際に送風機室に入り込んだ水の電装品ユニット内への浸入を確実に阻止することができる。