(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137530
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】グミキャンディ成型用のスターチ押し型およびグミキャンディの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 21/10 20160101AFI20170522BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20170522BHJP
A47J 43/20 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
A23L21/10
A23G3/00 101
A47J43/20
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-66079(P2013-66079)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-187931(P2014-187931A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391004218
【氏名又は名称】カンロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071238
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恒久
(72)【発明者】
【氏名】浅田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】塩松 洋造
(72)【発明者】
【氏名】浜口 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】前田 英克
(72)【発明者】
【氏名】加来 俊治
【審査官】
柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−273651(JP,A)
【文献】
トローリ ピーチオーズ みんなの品評・グミ・レビュー・詳細【グミキャンディ品評会】, [online], (2005.01.30), グミキャンディー専門サイト, [2016.12.14検索], インターネット, <http://gummycandy.net/everybody/hid/283>
【文献】
トローリ アップルオーズ みんなの品評・グミ・レビュー・詳細【グミキャンディ品評会】, [online], (2005.02.28), グミキャンディー専門サイト, [2016.12.14検索], インターネット, <http://gummycandy.net/everybody/hid/231>
【文献】
その他 ブルーラズベリーリング みんなの品評・グミ・レビュー・詳細【グミキャンディ品評会】, [online], (2006.04.27), グミキャンディー専門サイト, [2016.12.14検索], インターネット, <http://gummycandy.net/everybody/hid/59>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/00−21/25
A23L 29/20−29/206
A23L 29/231−29/30
A23G 3/34
A47J 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容されたスターチに押し当て、スターチに溶融物充填用の凹みを形成するためのスターチ押し型であって、該スターチ押し型の押し当て側とは反対側に、本体部に続く漏斗状部が形成されており、
該スターチ押し型における本体部の高さ寸法が、本体部の平面視での縦寸法および横寸法のうちの少なくとも一方よりも長いことを特徴とする、グミキャンディ成型用のスターチ押し型。
【請求項2】
上記スターチ押し型において、押し当て方向に通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグミキャンディ成型用のスターチ押し型。
【請求項3】
スターチ型を用いたグミキャンディの製造方法であって、
スターチに、本体部と漏斗状部を有するスターチ押し型を本体部側から押し当てるステップと、
スターチに内方寄りから順に本体部と漏斗状部の形状の凹みをプリントするステップと、
スターチにプリントされた漏斗状部の形状の凹みに溶融したグミキャンディを注ぎ入れるステップと、
グミキャンディの自重によって後段の成型部に流入させるステップと、
固化したグミキャンディを得るためにスターチを除去するステップと、
を含む、グミキャンディの製造方法。
【請求項4】
上記スターチ押し型における本体部の高さ寸法が、本体部の平面視での縦寸法および横寸法のうちの少なくとも一方よりも長いことを特徴とする請求項3に記載のグミキャンディの製造方法。
【請求項5】
上記スターチ押し型において、押し当て方向に通孔が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のグミキャンディの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディの成型に用いるスターチ押し型に関し、詳しくは、グミキャンディの成型デザインの自由度を向上させるスターチ押し型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グミキャンディはスターチ型を用いて成型していて、この成型法では、トレーにスターチを入れてスターチ面を平坦にし、次いで、スターチ面にスターチ押し型(最も広い面を天面あるいは底面としている)を押し当ててスターチ面にスターチ押し型の形状の凹みをプリントし、次いで、プリントされた凹みに溶融したグミキャンディ(グミキャンディシラップ)を充填して固化させ、その後スターチをふるい落とすとスターチ押し型と同形のグミキャンディが得られる。
【0003】
そして、スターチ型による成型の利点は、スターチ押し型をスターチ面に押し当てることで何度でも同一の充填型(凹み)を形成でき、また、新たな形のグミキャンディを製造する際も、スターチは共通として、スターチ押し型を石膏や樹脂などの素材で作製するだけで必要量に応じてスターチ型を安価に作製でき、また、成型品(グミキャンディ)を充填型(凹み)から分離する際もスターチをふるい落とすだけで容易に取り出せることである。
【0004】
しかしながら、スターチ型による成型では、グミキャンディシラップが粘性を有するものであるため該シラップが充填型(凹み)の隅々や角部分まで拡散せず、すなわち、グミキャンディシラップは自重によってスターチに形成された凹み内に薄く拡散していくので、該拡散の進行と共に自重が軽となって拡散速度が低下し、且つ拡散によりグミキャンディシラップが冷えて粘性も増加するため、該シラップが凹み内の角部分まで安定して行き渡らず、特に、硬めの食感のグミキャンディを製造する場合は、グミキャンディシラップの粘性もより強になることから、該シラップの拡散低下が顕著に表れ、これにより、グミキャンディが丸みをおびた形状(不定形)になって均一な形状のグミキャンディを製造できなかった。
【0005】
また、グミキャンディを丸型、波型、動物型、花形などの立体形状のデザインにする場合は、スターチに形成した充填型(凹み)の開口面がグミキャンディシラップの気液界面になるので、立体デザインを形成するための型は充填型(凹み)の底面部分にしか設けることができなかった。この理由で、従来法で製造されたグミキャンディでは、一方の側には立体デザインが形成されても、反対側は必ず平坦面になるしかなかった。
【0006】
さらに、充填型(凹み)内でグミキャンディシラップを乾燥して固化させる場合は、20℃〜50℃の乾燥室で1日〜3日間ほど乾燥させなければならないので、この乾燥を行うための乾燥工程用に広いスペースを必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−151825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、グミキャンディシラップをスターチに形成した充填型(凹み)内の隅々(角部も含め)まで安定して行き渡らすことができるようにし、また、グミキャンディの両側に立体デザインを形成できるようにし、さらに、乾燥工程用スペースの低減もできるようにして、グミキャンディの成型デザインの自由度向上と共に、乾燥工程用スペースの低減による製造効率向上を可能としたグミキャンディ成型用のスターチ押し型とこのスターチ押し型を用いたグミキャンディの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
容器に収容されたスターチに押し当て、スターチに溶融物充填用の凹みを形成するためのスターチ押し型であって、該スターチ押し型の押し当て側とは反対側に、本体部に続く漏斗状部が形成されていることを特徴とするグミキャンディ成型用のスターチ押し型を提示する。
【0010】
また、上記スターチ押し型における本体部の高さ寸法が、本体部の平面視での縦寸法および横寸法のうちの少なくとも一方よりも長いことを特徴とするグミキャンディ成型用のスターチ押し型を提示する。
【0011】
また、上記スターチ押し型に、押し当て方向に通孔が設けられていることを特徴とするグミキャンディ成型用のスターチ押し型を提示する。
【0012】
さらに、スターチ型を用いたグミキャンディの製造方法であって、スターチに、本体部と漏斗状部を有するスターチ押し型を本体部側から押し当てるステップと、スターチに内方寄りから
順に本体部と漏斗状部の形状の凹みをプリントするステップと、スターチにプリントされ
た漏斗状部
の形状の凹みに溶融したグミキャンディを注ぎ入れるステップと、グミキャンディの自重によって後段の成型部に流入させるステップと、固化したグミキャンディを得るためにスターチを除去するステップと、を含む、グミキャンディの製造方法を提示する。
【0013】
また、上記スターチ押し型における本体部の高さ寸法が、本体部の平面視での縦寸法および横寸法のうちの少なくとも一方よりも長いことを特徴とするグミキャンディの製造方法を提示する。
【0014】
また、上記スターチ押し型に、押し当て方向に通孔が設けられていることを特徴とするグミキャンディの製造方法を提示する。
【発明の効果】
【0015】
従来のスターチ押し型は、溶融物を水平方向に拡散させる鋳型(横型充填)をつくるものであって上面または底面を最も広い面とする鋳型をプリントするものであるが、本発明のグミキャンディ成型用のスターチ押し型は、溶融物を垂直方向に拡散させる鋳型(縦型充填)をつくると共に、この鋳型の成型部上縁に続けて漏斗状部を形成できるようにしているので、従来のスターチ充填製法では製造できなかった薄くて側面の広いグミキャンディを安定的に製造することができる。
【0016】
すなわち、鋳型の成型部上縁に続けて形成される漏斗状部に溶融グミキャンディを注ぐことで、先ず、該漏斗状部に溶融グミキャンディが留り、次いで、溶融グミキャンディが自重による圧力で漏斗状部に続く成型部に流入して行くと共に成型部の(角部も含め)隅々まで安定して行き渡る。
【0017】
また、溶融物を垂直方向に拡散させる鋳型(縦型充填)なので、最も広い面を側面側にすることができ、従って、この広い側面の両面に立体デザインを形成できるので、従来の片面だけが立体的なグミキャンディと比して、楽しさや美観が格段に向上する。本発明で形成する立体デザインとしては、波型、U字型、ちくわ(円筒)型、X型、ギザギザ型の形状のグミキャンディとすることができる。
【0018】
そして、本発明で形成する立体デザインとして、波型やギザギザ型にすることで、グミキャンディの表面積を広くすることは、果汁などの味を提供する呈味面積を広くできるとともに、グミキャンディの食感を良くすることにも寄与する。
【0019】
波型やギザギザ型の形状に形成されたグミキャンディは、単に半球型や直方体型に形成されたグミよりも、噛んだときの弾力性(抵抗)が強いため、口の中での存在感が大きく、グミキャンディを食べる楽しさを強く感じることができる。
【0020】
そして、本発明のスターチ押し型を用いてグミキャンディを製造することは、グミキャンディシラップの気液界面の面積を従来法よりも小さい面積にすることができるので、鋳型内でグミキャンディシラップを乾燥・固化させる乾燥工程での占有スペースを抑えることにも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るグミキャンディ成型用のスターチ押し型を示す斜視図。
【
図2】
図1に示したスターチ押し型を側面から見た図。
【
図3】
図1に示したスターチ押し型を底面から見た図。
【
図4】
図1のスターチ押し型により成型されるグミキャンディの斜視図。
【
図5】本発明のスターチ押し型の他の形態を示す斜視図。
【
図6】
図5に示したスターチ押し型を側面から見た図。
【
図7】
図5に示したスターチ押し型を底面から見た図。
【
図8】
図5のスターチ押し型により成型されるグミキャンディの斜視図。
【
図9】
図5中の矢印A方向から見たスターチ押し型の一例を示す図。
【
図10】本発明のスターチ押し型の他の形態を示す斜視図。
【
図11】本発明のスターチ押し型の他の形態を示す斜視図。
【
図12】本発明のスターチ押し型を用いたグミキャンディの製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るグミキャンディ成型用のスターチ押し型とこのスターチ押し型を用いたグミキャンディの製造方法を、添付図面に示す具体例に基づいて説明する。
【0023】
図1は、グミキャンディ成型用のスターチ押し型1を示しており、スターチ押し型1の本体部2に続いて漏斗状部3が形成されている。なお
図1においては、スターチ押し型1の長手方向に漏斗状部3が設けられているものを示している。
図2は、スターチ押し型1を側面から見たものであり、
図3は、スターチ押し型1を底面側から見たものである。
【0024】
図4は、スターチ押し型1を用いて形成されるグミキャンディ4を示したものであり、グミキャンディ4は薄い波板状に成型される。すなわち、従来法では製造不可能であった両側面を立体形状にすることが可能であると共に、角部もくっきりと再現することができる。
【0025】
図5は、
図1のものと同様に、スターチ押し型1の本体部2に続いて漏斗状部3が形成されているものである。なお、
図5は、スターチ押し型1の長手方向および短手方向の両方に漏斗状部3を設けているものを示している。
図6は、スターチ押し型1を側面から見たものであり、
図7は、スターチ押し型1を底面側から見たものである。
【0026】
図8は、スターチ押し型1を用いて形成されたグミキャンディ4を示している。グミキャンディ4は薄板状に成型されている。
【0027】
図9は、スターチ押し型1を
図5中の矢印A方向から見たものであり、スターチ押し型1における本体部2の厚みが、先細りのテーパ状(テーパ部5)の形状で、粘性の高いグミキャンディシラップ(溶融したグミキャンディ)を用いる場合や、極薄のグミキャンディをつくりたい場合に適しているもの(
図9(a))と、均等な厚さのグミキャンディをつくりたい場合に適しているもの(
図9(b))と、を示している。
【0028】
図10(a)および
図11(a)に示されるように、スターチ押し型1の押し当て方向に通孔7を設けることで、
図10(b)および
図11(b)に示されるように、グミキャンディ4を、リング状の形状に成型できる。
図10(b)は、グミキャンディ4を中空の円柱状に成型したものを示しており、
図11(b)は、グミキャンディ4を中空の三角柱状に成型したものを示している。
図10(a)および
図11(a)においては、漏斗状部3は全周に亘って連続的に設けられているが、グミキャンディシラップ(溶融したグミキャンディ)の粘度などに応じて、全周に亘って漏斗状部3を設けるのではなく、断続的に設ける場合もある。また、漏斗状部3の通孔7側の辺を、斜傾ではなく垂直の辺にする場合もある。
【0029】
図12は、スターチ押し型1を用いたグミキャンディの製造方法を示しており、グミキャンディは、典型的には以下の(1)〜(7)のステップで製造される。
(1)スターチ押し型1を本体部2側からスターチ8に押し当てる。
(2)スターチ押し型1をスターチ8内に埋没させる。
(3)スターチ8内にスターチ押し型1の形状をプリントする。
(4)スターチ8内にプリントされたスターチ型9内の漏斗状部10に、グミキャンディシラップ11(溶融したグミキャンディ)を注ぎ入れる。
(5)漏斗状部10のグミキャンディシラップ11を自重によって本体部12内に流入させる。
(6)本体部12内のグミキャンディシラップ11を固化させる。
(7)グミキャンディシラップ11が固化したらスターチ8を除去してグミキャンディ13を取り出す。
【符号の説明】
【0030】
1…スターチ押し型
2…本体部
3…漏斗状部
4…グミキャンディ
5…テーパ部
6…ストレート部
7…通孔
8…スターチ
9…スターチ型
10…漏斗状部
11…グミキャンディシラップ
12…本体部
13…グミキャンディ