(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137538
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】2剤混合容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20170522BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B65D81/32 T
B65D83/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-138302(P2013-138302)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-9878(P2015-9878A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】角田 義幸
(72)【発明者】
【氏名】保坂 明弘
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−003984(JP,U)
【文献】
実開平06−031612(JP,U)
【文献】
特開2007−326579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端開放の胴部(4)から口頸部(6)を起立した容器体(2)と、
上記口頸部(6)に装着され、胴部(4)内の内容物を吸込み口(26)から吸い込むとともに、口頸部(6)の上方に開口するノズル(32)から吐出するように設けた吐出装置(10)と、
胴部(4)の下部内面に液密に嵌合された周壁部(42)の上面を、上底壁部(48)で閉鎖するとともに、周壁部(42)内に昇降可能にかつ液密に下底壁部(60)を嵌合してなる底部材(40)と、
上記周壁部(42)の下部に押上げによる上昇可能に取り付けられ、その押上げ力を下底壁部(60)へ伝達することができるように当該下底壁部(60)と別体又は一体として構成された基盤(74)と、
上記底部材(40)の周壁部(42)と基盤(74)との間に嵌挿されるストッパ(80)と、
を具備し、
上記上底壁部(48)に栓孔(50)を開口するとともに、上記下底壁部(60)から起立する栓棒(68)の上端部の栓体(70)で上記栓孔(50)を液密に閉塞し、上底壁部(48)の上面と上底壁部(48)より上方の容器体部分内面とで囲まれる空間を第1剤収納室(A)に、上底壁部(48)と下底壁部(60)とで挟まれる空間を第2剤収納室(B)にそれぞれ形成し、
上記ストッパ(80)を外して、上記下底壁部(60)を上昇させることで、栓孔(50)が開いて、第1剤収納室(A)と第2剤収納室(B)とが連通するように設けたことを特徴とする、2剤混合容器。
【請求項2】
上記基盤(74)から支持筒部(76)が起立されており、
上記ストッパ(80)は、上記支持筒部(76)の外面へ離脱可能に取り付けた平面視C字形のストッパ本体(82)と、ストッパ本体(82)の外面に形成した操作片(84)とからなり、
上記下底壁部(60)を、上記支持筒部(76)の上に載置するとともに、この支持筒部(76)の外周面に、上記底部材(40)の周壁部(42)の下部から内方突出した内向きフランジ部(46)を嵌合させており、
上記内向きフランジ部(46)の下面と基盤(74)との間にストッパ本体(82)を挿入させたことを特徴とする、請求項1記載の2剤混合容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤混合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種容器として、容器体の内部を2室に仕切って各室に異なる薬剤をそれぞれ収納し、かつ一定の操作により仕切りを外して2室を連通させ、混合させるものが知られている。例えば特許文献1の容器は、容器体の胴部の上端開口にトリガー式液体吐出装置を装着するとともに、この吐出装置から胴部の底部側へ液体吸上げ管を垂下した液体吐出容器において、胴部の下半部を形成する大径周壁部から、上内方へ傾斜する段差を介して、胴部上半部である小径周壁部を形成するとともに、上記液体吸上げ管に付設して小径周壁部の下端部を閉塞する仕切り板を設けている。胴部全体は弾性材料で形成されており、容器の上部を押し下げることで、上記段差が下内方への傾斜状態へと弾性変形し、仕切り板が小径周壁部の下端から下方へ離脱し、2室が連通して2剤が混合するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−254990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によれば、外部からの不意の衝撃、例えば容器を床に落としたときの衝撃により、胴部が変形し、2剤が混合してしまう可能性がある。また、特許文献1の発明を適用するためには、胴部の下半部が大径、上半部が小径であるという特殊な形態を採用しなければならないため、胴部の径が一定である既存の普通の容器体に対して当該発明を適用することが困難である。
【0005】
本発明の第1の目的は、2剤を確実に分離収納することができかつ混合操作が容易である2剤混合容器を提供することである。
本発明の第2の目的は、既存の一般的な形態の容器にも適用できる2剤混合容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、
下端開放の胴部4から口頸部6を起立した容器体2と、
上記口頸部6に装着され、胴部4内の内容物を吸込み口26から吸い込むとともに、口頸部6の上方に開口するノズル32から吐出するように設けた吐出装置10と、
胴部4の下部内面に液密に嵌合された周壁部42の上面を、上底壁部48で閉鎖するとともに、周壁部42内に昇降可能にかつ液密に下底壁部60を嵌合してなる底部材40と、
上記周壁部42の下部に押上げによる上昇可能に取り付けられ、その押上げ力を下底壁部60へ伝達することができるように当該下底壁部60と別体又は一体として構成された基盤74と、
上記底部材40の周壁部42と基盤74との間に嵌挿されるストッパ80と、
を具備し、
上記上底壁部48に栓孔50を開口するとともに、上記下底壁部60から起立する栓棒68の上端部の栓体70で上記栓孔50を液密に閉塞し、上底壁部48の上面と上底壁部48より上方の容器体部分内面とで囲まれる空間を第1剤収納室Aに、上底壁部48と下底壁部60とで挟まれる空間を第2剤収納室Bにそれぞれ形成し、
上記ストッパ80を外して、上記下底壁部60を上昇させることで、栓孔50が開いて、第1剤収納室Aと第2剤収納室Bとが連通するように設けた。
【0007】
本手段では、
図1に示すように胴部4内に底部材40を嵌合するとともに、この底部材40の周壁部42及び支持部材72の基盤74との間にストッパ80を嵌装しており、このストッパ80を外して基盤74を押し上げたときに基盤74とともに底部材40の下底壁部60及び栓棒68が上昇するように構成している(
図3参照)。これにより、栓棒68の上端の栓体70が栓孔50から離脱して、第1剤収納室A及び第2剤収納室Bが連通する。下底壁部60と基盤74とは別体又は一体として形成できる。これについては後述する。また栓棒68も、下底壁部60と別体又は一体として形成することができる。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記基盤74から支持筒部76が起立されており、
上記ストッパ80は、上記支持筒部76の外面へ離脱可能に取り付けた平面視C字形のストッパ本体82と、ストッパ本体82の外面に形成した操作片84とからなり、
上記下底壁部60を、
上記支持筒部76の上に載置するとともに、この支持筒部76の外周面に、上記底部材40の周壁部42の下部から内方突出した内向きフランジ部46を嵌合させており、
上記内向きフランジ部46の下面と基盤74との間にストッパ本体82を挿入させた。
【0009】
本手段では、
図4に示す平面視C字形のストッパ本体82を有するストッパ80を用いて支持部材72の基盤74と底部材40の周壁部42の内向きフランジ部46との間に上記ストッパ本体82が挿入されるように構成している(
図2参照)。
【発明の効果】
【0010】
第1の手段に係る発明によれば、ストッパ80を容器体の胴部4と基盤74との間に挿入したので、不意の衝撃によっても第1剤収納室及び第2剤収納室の仕切りが解除されて2剤が混合することがなく、また胴部内に挿入した底部材40の内部に第2剤収納室を形成するから、既存の通常の形態の容器体にも適用できる。
第2の手段に係る発明によれば、内向きフランジ部46の下面と基盤74との間にストッパ本体82を挿入させたから、容器体2の内容物の重さを十分に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る2剤混合容器の半縦断面図である。
【
図2】
図1の2剤混合容器の要部の断面拡大図である。
【
図4】
図1の2剤混合容器の部材(ストッパ)の平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る2剤混合容器の要部の断面拡大図である。
【
図6】
図5の2剤混合容器の部材(ストッパ)の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1から
図4は、本発明の第1の実施形態に係る2剤混合容器を示している。この2剤混合容器は、容器体2と、吐出装置10と、オーバーキャップ34と、底部材40と、支持部材72と、ストッパ80とで構成されている。これら各部材は、たとえば合成樹脂や金属で形成することができる。
【0013】
容器体2は、下面開放の胴部4から肩部を介して口頸部6を起立している。
【0014】
吐出装置10は、装着筒部材12と、ポンプ本体20とで構成されている。装着筒部材12は、上記口頸部6の外面に嵌合(図示例では螺合)された装着筒部14と、装着筒部14の上端に付設された内向きフランジ16とを有し、この内向きフランジ16と上記口頸部6との間にポンプ本体20の鍔部24及びパッキン18を挟持することが可能に形成している。なお、上記内向きフランジ16の外周部上面からはガイド筒部17が起立されている。ガイド筒部17の内側には、縦溝17aが縦設されている。
【0015】
上記ポンプ本体20は、上端に鍔部24を有するシリンダ22を有し、このシリンダ22の下端に吸込み口26を開口するとともに、シリンダ22の内部を上方付勢されて昇降する筒状ピストン(図示せず)から起立するステム28を起立し、このステム28の上部にノズル32付きの押下げヘッド30を付設してなる。図示例では、押下げヘッド30の外面下端に付設した係合突部30aを、上記縦溝17a内に挿入して、ノズル32の開口方向を規制している。上記シリンダ22は、容器体2内に挿入された状態で上記装着筒部材12により口頸部6に固定される。図示していないが、吐出装置10は、押下げヘッド30の上昇によりシリンダ22内部が負圧化して、容器体2の内容物を吸込み口26から第1逆止弁を介してシリンダ22内へ吸い込み、かつ押下げヘッド30の押下げにより、シリンダ22内の内容物が第2逆止弁を介してノズル32から突出されるように設ける。
【0016】
オーバーキャップ34は、上記装着筒部14の外面に嵌合されている。
【0017】
底部材40は、周壁部42と、上底壁部48と、下底壁部60と、栓棒68と、で構成されている。
【0018】
上記周壁部42は、上記胴部4の下部内面に嵌着されている。周壁部42の上端部は小外径部44に形成されており、周壁部42の下端からは内向きフランジ部46を内方突出している。
【0019】
上記上底壁部48は、中央部に栓孔50を有するリング板状であり、その栓孔50の孔縁から短筒部52を、上底壁部48の外周部から第1連結筒部54を、また裏面内周部から突き当て凸部56をそれぞれ垂下している。図示の突き当て凸部56は、筒壁の周方向に間欠的に切欠き56aを縦設してなる。もっとも図示例と異なり、当該筒壁から切欠きを省略して単なる筒体としてもよく、或いはボス状(或いは中実棒状)の突き当て凸部56を上底壁部48の裏面適所から垂下してもよい。また突き当て凸部56全体を省略してもよい。上記第1連結筒部54は、上記周壁部42の小外径部44に嵌着されている。上記突き当て凸部56は、後述の栓体70が栓孔50から離脱したときに下底壁部60に突き当たるように長さを設定している。上底壁部48の外周からは、胴部4内面に圧接するストッパ片58を突出している。胴部4へのストッパ片58の圧接により、胴部4に対して上底壁部48を固定している。
【0020】
下底壁部60は、上面中央部に嵌合穴62を有する底板として形成され、その底板の外周部に上下スカート状の筒状ピストン64を周設するとともに、当該底板の裏面内周部から第2連結筒部66を垂下している。この第2連結筒部に関しては後述する。上記筒状ピストン64は、上記胴部4内面に液密かつ昇降可能に当接している。
【0021】
上記栓棒68は、好適な図示例において大径下端部68aを有し、この下端部を嵌合穴62内に嵌着させて周壁部42内部へ起立している。栓棒68の上端部は、その周囲を鍔状に水平方向へ突出させて栓体70とし、この栓体70を上記栓孔50に液密に嵌合させている。
【0022】
上記上底壁部48の上面と上底壁部48より上方の容器体部分内面とで囲まれる空間は第1剤収納室Aを、また底部材40の内部は第2剤収納室Bをそれぞれ形成する。
【0023】
支持部材72は、水平な基盤74の中央部から支持筒部76を起立してなる。支持筒部76の長手方向中間部には、上記内向きフランジ部46を嵌合させている。また支持筒部76の上部外面は上記第2連結筒部66の外面に嵌合させてあり、かつ支持筒部76の上端面は下底壁部60裏面に突き当てている。この状態で胴部4及び周壁部42の各下端と基盤74との間には、後述のストッパ80の挿入代をとる。なお、図示例とは異なり、基盤74を下底壁部60と一体として形成することもできる。例えば基盤74及び下底壁部60の各中央部を支持棒で一体的に連結したような構造としてもよい。
【0024】
ストッパ80は、
図4に示すように、図面左方を切り欠いた平面視C字形のストッパ本体82と、このストッパ本体82の外面のうち切欠き箇所と反対側に形成した操作片84とで構成されている。図示の操作片84は胴部4の周面の外方へ突出している。ストッパ本体82は周方向全体に亘って一定の幅を有し、かつ基盤74と内向きフランジ部46との間に嵌挿させている。C字形のストッパ本体82の両端部からは、支持筒部76へ装着する際に支持筒部76外面へ当接させるための一対の当接用突片82aが突出されている。また上記操作片84は垂直板状であり、その先端部を上下方向に巾広でありかつ平面視T字形の摘み部84aに形成している。
【0025】
上記構成によれば、
図1の状態からストッパを引抜き、容器体2の胴部4を把持して、支持部材72の基盤74を押し上げると、基盤74とともに底部材40の下底壁部60及び栓棒68が底部材40の周壁部42及び上底壁部48に対して上昇する。これにより栓棒68の上端の栓体70が栓孔50から離脱し、これにより、第1剤収納室A及び第2剤収納室Bが連通し、第1剤及び第2剤が混合する。
【0026】
図5から
図6は、本発明の第2実施形態に係る2剤混合容器を示している。本実施形態の説明において、第1実施形態と同じ事柄に関しては、説明を省略する。本実施形態では、
図5に示す通り、ストッパ80を、図面左方を切り欠いた平面視C字形のストッパ本体82と、このストッパ本体82の外面のうち図面上下方向に位置する箇所に付設した一対の操作片84とで構成している。図示例の操作片84は
図6に想像線で描く胴部4の周面の外へは突出していない。
【0027】
このストッパ80を外すときには、基盤74と胴部4との間に指を入れて、一対の摘み部84aに指を掛けて外方へ引っ張ればよい。
【符号の説明】
【0028】
2…容器体 4…胴部 6…口頸部
10…吐出装置 12…装着筒部材 14…装着筒部 16…内向きフランジ
17…ガイド筒部 17a…縦溝
18…パッキン 20…ポンプ本体 22…シリンダ 24…鍔部
26…吸込み口 28…ステム 30…押下げヘッド 30a…係合突部
32…ノズル 34…オーバーキャップ
40…底部材 42…周壁部 44…小外径部 46…内向きフランジ部
48…上底壁部 50…栓孔 52…短筒部 54…第1連結筒部
56…突き当て凸部 56a…切欠き
58…ストッパ片
60…下底壁部 62…嵌合穴 64…筒状ピストン 66…第2連結筒部
68…栓棒 68a…大径下端部
70…栓体 72…支持部材 74…基盤 76…支持筒部
80…ストッパ 82…ストッパ本体 82a…当接用突片
84…操作片 84a…摘み部
A…第1剤収納室 B…第2剤収納室