特許第6137541号(P6137541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137541
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】校正印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 11/00 20060101AFI20170522BHJP
   B41F 9/00 20060101ALI20170522BHJP
   B41F 9/02 20060101ALI20170522BHJP
   B41F 31/30 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B41F11/00 Z
   B41F9/00 A
   B41F9/02
   B41F31/30
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-163855(P2013-163855)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-30262(P2015-30262A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 博美
(72)【発明者】
【氏名】日下 明広
(72)【発明者】
【氏名】尾上 平祐
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−039990(JP,A)
【文献】 特開平03−038347(JP,A)
【文献】 特開昭49−126409(JP,A)
【文献】 特表2006−516491(JP,A)
【文献】 特開2005−059259(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01602483(EP,A1)
【文献】 特開2000−301688(JP,A)
【文献】 特開2000−218768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 11/00
B41F 9/00
B41F 9/02
B41F 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されて外周に凹版を装着される有効面を具える版胴と、
前記版胴に対向するように回転可能に支持されて外周にシートを保持する有効面を具える圧胴と、
前記版胴に対向するように回転可能に支持されて外周にブランケットを装着される有効面を具えるコレクト胴と、
前記コレクト胴に対向するように回転可能に支持されて外周に部分版を装着される有効面を具えると共に当該コレクト胴の周方向に沿って複数配設されるシャブロン胴と、
前記シャブロン胴にそれぞれ対向するように回転可能に支持された複数の着けローラと、
前記着けローラへインキをそれぞれ供給する複数のインキ供給手段と、
前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所と当該版胴と前記圧胴との対向箇所との間で当該版胴に対向するように配設されて当該版胴の前記凹版の表面上のインキを除去するワイピング手段と
を備え、
前記版胴が、前記凹版を周方向に複数枚並べて装着可能な複数倍胴の大きさを有する一方、前記有効面を一つだけ具えるものであり、
前記シャブロン胴が、一倍胴であり、
前記版胴の一回転に伴って前記シャブロン胴が複数回回転する校正印刷機において、
前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所P1と、前記版胴と前記ワイピング手段との対向箇所P2との間の、上記対向箇所P1よりも当該版胴の回転方向下流側の当該版胴の外周の長さが、当該版胴の前記有効面の周方向の長さよりも長く、且つ、前記版胴と前記ワイピング手段との対向箇所P2と、前記版胴と前記圧胴との対向箇所P3との間の、上記対向箇所P2よりも当該版胴の回転方向下流側の当該版胴の外周の長さが、当該版胴の前記有効面の周方向の長さよりも長くなるように、前記版胴に対して前記圧胴と前記コレクト胴と前記ワイピング手段とがそれぞれ位置し、
前記コレクト胴及び前記シャブロン胴の回転に伴って、当該コレクト胴の前記有効面の回転方向下流側端部と当該シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側端部とを一致させて接触回転させるように、当該コレクト胴及び当該シャブロン胴の回転位相が設定され、
前記着けローラの外周面の周方向の長さが、前記シャブロン胴の前記有効面の周方向の長さと等しい長さを有している
ことを特徴とする校正印刷機。
【請求項2】
請求項1に記載の校正印刷機において、
前記シャブロン胴が、前記コレクト胴の周方向に沿って五つ配設されており、
前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所P1と、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向最上流側に位置する前記シャブロン胴と当該コレクト胴との対向箇所P4との間の、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向下流側の当該コレクト胴の外周の長さが、当該コレクト胴の前記有効面の周方向の長さよりも長く、且つ、前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所P1と、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向最下流側に位置する前記シャブロン胴と当該コレクト胴との対向箇所P5との間の、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向上流側の当該コレクト胴の外周の長さが、当該コレクト胴の前記有効面の周方向の長さよりも長くなるように、前記シャブロン胴がそれぞれ位置するものとなっている
ことを特徴とする校正印刷機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の校正印刷機において、
前記版胴の前記有効面の回転方向位置と前記コレクト胴の前記有効面の回転方向位置と前記圧胴に供給されるシートの位置とのうちの少なくとも一つの位置を検出する位置検出手段及び印刷機の位相を検出する位相検出手段の少なくとも一方の検出手段と、
前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラと対向するときに、当該着けローラの外周面の、当該シャブロン胴との対向位置の回転方向上流側と前記インキ供給手段からのインキ供給位置の回転方向下流側との間にインキが供給された状態となるように、前記検出手段からの情報に基づいて、前記インキ供給手段からのインキの供給を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする校正印刷機。
【請求項4】
請求項3に記載の校正印刷機において、
前記着けローラが前記シャブロン胴に対して接近離反移動できるように支持され、
前記インキ供給手段が、前記着けローラに接近離反移動できるように回転可能に支持されてインキ壺内のインキを前記着けローラへ供給する壺ローラを備え、
前記着けローラを回転させる着けローラ回転駆動手段と、
前記着けローラを前記シャブロン胴に対して接近離反移動させる着けローラ着脱駆動手段と、
前記壺ローラを回転させる壺ローラ回転駆動手段と、
前記壺ローラを前記着けローラに対して接近離反移動させる壺ローラ着脱駆動手段と
を備え、
前記検出手段が、少なくとも前記位相検出手段を備え、
前記制御手段が、
前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラと対向するときに、当該着けローラの外周面の、当該シャブロン胴との対向位置の回転方向上流側と前記壺ローラとの対向位置の回転方向下流側との間にインキが供給された状態となるように、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラに接触させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御すると共に、当該壺ローラ及び当該着けローラを回転させるように前記着けローラ回転駆動手段及び前記壺ローラ回転駆動手段を制御し、
前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラに対向すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記シャブロン胴の上記有効面の前記部分版に上記着けローラを接触させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御し、
前記着けローラにインキが供給され始めてから当該着けローラが一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラから離反させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御し、
前記着けローラが前記シャブロン胴の前記有効面の前記部分版に接触してから一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記着けローラを上記シャブロン胴から離反させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御すると同時に、当該着けローラの回転を停止させるように前記着けローラ回転駆動手段を制御するものである
ことを特徴とする校正印刷機。
【請求項5】
請求項4に記載の校正印刷機において、
前記圧胴にシートを供給するシート供給手段を備え、
前記制御装置が、
前記シャブロン胴から前記コレクト胴の前記ブランケットにインキを転写して、当該コレクト胴の当該ブランケットから前記版胴の前記有効面の前記凹版にインキを転写し終えると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、前記圧胴にシートを供給するように前記シート供給手段を制御するものである
ことを特徴とする校正印刷機。
【請求項6】
請求項5に記載の校正印刷機において、
前記制御装置が、
前記シャブロン胴から前記コレクト胴の前記ブランケットにインキを転写して、当該コレクト胴の当該ブランケットから前記版胴の前記有効面の前記凹版にインキを転写し終えた後、当該シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラと再び対向するときに、当該着けローラの外周面の、当該シャブロン胴との対向位置の回転方向上流側と前記壺ローラとの対向位置の回転方向下流側との間にインキが再び供給された状態となるように、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラに再び接触させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御すると共に、当該壺ローラ及び当該着けローラを再び回転させるように前記着けローラ回転駆動手段及び前記壺ローラ回転駆動手段を制御し、
前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラに対向すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記シャブロン胴の上記有効面の前記部分版に上記着けローラを再び接触させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御し、
前記着けローラにインキが再び供給され始めてから当該着けローラが一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラから再び離反させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御し、
前記着けローラが前記シャブロン胴の前記有効面の前記部分版に再び接触してから一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記着けローラを上記シャブロン胴から再び離反させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御すると同時に、当該着けローラの回転を再び停止させるように前記着けローラ回転駆動手段を制御するものである
ことを特徴とする校正印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、校正印刷を行う校正印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、凹版印刷機でシートに凹版印刷を行う際には、本印刷に先立って、印刷状態を確認する校正印刷を行う場合がある。このような校正印刷を行う校正印刷機は、圧胴がシートを一枚ずつ保持する一方、各インキ供給装置からの各色のインキを各シャブロン胴に供給し、各シャブロン胴からコレクト胴にそれぞれ転写して版胴の凹版面に転写し、当該版胴の凹版の表面上の余剰のインキをワイピングローラで除去してから、前記圧胴に保持された前記シートに対して、上記版胴の上記凹版の凹部分に供給された上記インキを転写した後、上記シートを上記圧胴から解放することにより、シートに対して校正印刷を施すことができるようになっている(例えば、下記特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−039990号公報
【特許文献2】実公平6−047724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような従来の校正印刷機においては、前記コレクト胴から前記版胴の前記凹版に前記インキを転写しているときや、当該版胴の当該凹版から前記圧胴の前記シートへインキを転写しているときに、当該版胴の当該凹版の表面上の余剰のインキを前記ワイピングローラが除去すると、当該版胴に対する当該ワイピングローラの押圧力が外乱となって、シートへの転写ムラを生じて、印刷不良となってしまう場合があった。
【0005】
このようなことから、本発明は、シートへの転写ムラを低減して印刷不良の発生を低減することができる校正印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係る校正印刷機は、回転可能に支持されて外周に凹版を装着される有効面を具える版胴と、前記版胴に対向するように回転可能に支持されて外周にシートを保持する有効面を具える圧胴と、前記版胴に対向するように回転可能に支持されて外周にブランケットを装着される有効面を具えるコレクト胴と、前記コレクト胴に対向するように回転可能に支持されて外周に部分版を装着される有効面を具えると共に当該コレクト胴の周方向に沿って複数配設されるシャブロン胴と、前記シャブロン胴にそれぞれ対向するように回転可能に支持された複数の着けローラと、前記着けローラへインキをそれぞれ供給する複数のインキ供給手段と、前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所と当該版胴と前記圧胴との対向箇所との間で当該版胴に対向するように配設されて当該版胴の前記凹版の表面上のインキを除去するワイピング手段とを備え、前記版胴が、前記凹版を周方向に複数枚並べて装着可能な複数倍胴の大きさを有する一方、前記有効面を一つだけ具えるものであり、前記シャブロン胴が、一倍胴であり、前記版胴の一回転に伴って前記シャブロン胴が複数回回転する校正印刷機において、前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所P1と、前記版胴と前記ワイピング手段との対向箇所P2との間の、上記対向箇所P1よりも当該版胴の回転方向下流側の当該版胴の外周の長さが、当該版胴の前記有効面の周方向の長さよりも長く、且つ、前記版胴と前記ワイピング手段との対向箇所P2と、前記版胴と前記圧胴との対向箇所P3との間の、上記対向箇所P2よりも当該版胴の回転方向下流側の当該版胴の外周の長さが、当該版胴の前記有効面の周方向の長さよりも長くなるように、前記版胴に対して前記圧胴と前記コレクト胴と前記ワイピング手段とがそれぞれ位置し、前記コレクト胴及び前記シャブロン胴の回転に伴って、当該コレクト胴の前記有効面の回転方向下流側端部と当該シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側端部とを一致させて接触回転させるように、当該コレクト胴及び当該シャブロン胴の回転位相が設定され、前記着けローラの外周面の周方向の長さが、前記シャブロン胴の前記有効面の周方向の長さと等しい長さを有していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る校正印刷機は、上述した校正印刷機において、前記シャブロン胴が、前記コレクト胴の周方向に沿って五つ配設されており、前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所P1と、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向最上流側に位置する前記シャブロン胴と当該コレクト胴との対向箇所P4との間の、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向下流側の当該コレクト胴の外周の長さが、当該コレクト胴の前記有効面の周方向の長さよりも長く、且つ、前記版胴と前記コレクト胴との対向箇所P1と、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向最下流側に位置する前記シャブロン胴と当該コレクト胴との対向箇所P5との間の、上記対向箇所P1よりも当該コレクト胴の回転方向上流側の当該コレクト胴の外周の長さが、当該コレクト胴の前記有効面の周方向の長さよりも長くなるように、前記シャブロン胴がそれぞれ位置するものとなっていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る校正印刷機は、上述した校正印刷機において、前記版胴の前記有効面の回転方向位置と前記コレクト胴の前記有効面の回転方向位置と前記圧胴に供給されるシートの位置とのうちの少なくとも一つの位置を検出する位置検出手段及び印刷機の位相を検出する位相検出手段の少なくとも一方の検出手段と、前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラと対向するときに、当該着けローラの外周面の、当該シャブロン胴との対向位置の回転方向上流側と前記インキ供給手段からのインキ供給位置の回転方向下流側との間にインキが供給された状態となるように、前記検出手段からの情報に基づいて、前記インキ供給手段からのインキの供給を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る校正印刷機は、上述した校正印刷機において、前記着けローラが前記シャブロン胴に対して接近離反移動できるように支持され、前記インキ供給手段が、前記着けローラに接近離反移動できるように回転可能に支持されてインキ壺内のインキを前記着けローラへ供給する壺ローラを備え、前記着けローラを回転させる着けローラ回転駆動手段と、前記着けローラを前記シャブロン胴に対して接近離反移動させる着けローラ着脱駆動手段と、前記壺ローラを回転させる壺ローラ回転駆動手段と、前記壺ローラを前記着けローラに対して接近離反移動させる壺ローラ着脱駆動手段とを備え、前記検出手段が、少なくとも前記位相検出手段を備え、前記制御手段が、前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラと対向するときに、当該着けローラの外周面の、当該シャブロン胴との対向位置の回転方向上流側と前記壺ローラとの対向位置の回転方向下流側との間にインキが供給された状態となるように、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラに接触させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御すると共に、当該壺ローラ及び当該着けローラを回転させるように前記着けローラ回転駆動手段及び前記壺ローラ回転駆動手段を制御し、前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラに対向すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記シャブロン胴の上記有効面の前記部分版に上記着けローラを接触させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御し、前記着けローラにインキが供給され始めてから当該着けローラが一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラから離反させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御し、前記着けローラが前記シャブロン胴の前記有効面の前記部分版に接触してから一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記着けローラを上記シャブロン胴から離反させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御すると同時に、当該着けローラの回転を停止させるように前記着けローラ回転駆動手段を制御するものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る校正印刷機は、上述した校正印刷機において、前記圧胴にシートを供給するシート供給手段を備え、前記制御装置が、前記シャブロン胴から前記コレクト胴の前記ブランケットにインキを転写して、当該コレクト胴の当該ブランケットから前記版胴の前記有効面の前記凹版にインキを転写し終えると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、前記圧胴にシートを供給するように前記シート供給手段を制御するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る校正印刷機は、上述した校正印刷機において、前記制御装置が、前記シャブロン胴から前記コレクト胴の前記ブランケットにインキを転写して、当該コレクト胴の当該ブランケットから前記版胴の前記有効面の前記凹版にインキを転写し終えた後、当該シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラと再び対向するときに、当該着けローラの外周面の、当該シャブロン胴との対向位置の回転方向上流側と前記壺ローラとの対向位置の回転方向下流側との間にインキが再び供給された状態となるように、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラに再び接触させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御すると共に、当該壺ローラ及び当該着けローラを再び回転させるように前記着けローラ回転駆動手段及び前記壺ローラ回転駆動手段を制御し、前記シャブロン胴の前記有効面の回転方向下流側の端部が前記着けローラに対向すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記シャブロン胴の上記有効面の前記部分版に上記着けローラを再び接触させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御し、前記着けローラにインキが再び供給され始めてから当該着けローラが一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記壺ローラを上記着けローラから再び離反させるように前記壺ローラ着脱駆動手段を制御し、前記着けローラが前記シャブロン胴の前記有効面の前記部分版に再び接触してから一回転すると、前記位相検出手段からの情報に基づいて、上記着けローラを上記シャブロン胴から再び離反させるように前記着けローラ着脱駆動手段を制御すると同時に、当該着けローラの回転を再び停止させるように前記着けローラ回転駆動手段を制御するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る校正印刷機によれば、コレクト胴のブランケットから版胴の凹版へインキを転写しているときに、ワイピング手段が版胴の凹版に対接しないので、凹版に外乱が加わってしまうことを防止でき、ブランケットから凹版にムラを生じさせることなくインキを転写することができると共に、ワイピング手段が版胴の凹版の表面上の余剰インキをすべて除去し終えてから、圧胴の有効面に保持されたシートに版胴の凹版が対接してインキを転写するので、版胴の凹版からシートへインキを転写するときに、凹版に外乱が加わってしまうことを防止でき、凹版からシートにムラを生じさせることなくインキを転写することができる。このため、シートへの転写ムラを低減して印刷不良の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る校正印刷機の主な実施形態の概略構成図である。
図2図1の校正印刷機の要部の制御ブロック図である。
図3A図1の校正印刷機の作動の説明図である。
図3B図3Aに続く作動の説明図である。
図3C図3Bに続く作動の説明図である。
図3D図3Cに続く作動の説明図である。
図3E図3Dに続く作動の説明図である。
図3F図3Eに続く作動の説明図である。
図3G図3Fに続く作動の説明図である。
図3H図3Gに続く作動の説明図である。
図3I図3Hに続く作動の説明図である。
図3J図3Iに続く作動の説明図である。
図3K図3Jに続く作動の説明図である。
図3L図3Kに続く作動の説明図である。
図3M図3Lに続く作動の説明図である。
図3N図3Mに続く作動の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る校正印刷機の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
〈主な実施形態〉
本発明に係る校正印刷機の主な実施形態を図1,2及び図3A〜3Nに基づいて以下に説明する。
【0016】
図1に示すように、シートを一枚ずつ送給するシート供給手段であるシート供給装置の給紙テーブル101の先端側には、当該シートを保持する周方向の長さL1の保持面(有効面)111aを外周に一つだけ具える圧胴111が回転可能に配設されている。前記圧胴111は、シートの先端側(くわえ側)をくわえることにより、当該シートを上記保持面(有効面)111a上に保持するくわえ装置(図示省略)を有すると共に、周方向にシートを二枚並べて保持可能な大きさ、すなわち、いわゆる「二倍胴」のサイズをなすように、その直径が設定されている。
【0017】
前記圧胴111には、凹版を装着する周方向の長さL2(=L1)の装着面(有効面)112aを外周に一つだけ具える版胴112が回転可能に対向配設されている。前記版胴112は、周方向に前記凹版を二枚並べて装着可能な大きさ、すなわち、いわゆる「二倍胴」のサイズをなすように、その直径が設定されている。
【0018】
前記版胴112には、ゴム製のブランケットを装着する周方向の長さL3(=L1)の装着面(有効面)113aを外周に一つだけ具えるコレクト胴であるコレクト胴113が回転可能に対向配設されている。前記コレクト胴113は、周方向に前記ブランケットを四枚装着可能な大きさ、すなわち、いわゆる「四倍胴」のサイズをなすように、その直径が設定されている。
【0019】
前記コレクト胴113には、樹脂製の部分版を装着する周方向の長さL4(=L1)の装着面(有効面)114Aa〜114Eaを外周に一つだけ具える回転可能なシャブロン胴114A〜114Eが周方向に沿って所定の間隔で複数(本実施形態では五つ)対向配設されている。前記シャブロン胴114A〜114Eは、周方向に上記装着面(有効面)114Aa〜114Eaを一つ設置可能な大きさ、すなわち、いわゆる「単胴(一倍胴)」のサイズをなすように、その直径が設定されている。
【0020】
前記シャブロン胴114A〜114Eには、着けローラ115A〜115Eがそれぞれ回転可能に対向配設されている。前記着けローラ115A〜115Eは、その外周面の周方向の長さL5が、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの周方向の長さL4と同じ長さ(L5=L4(=L1))となるように、その直径が設定されている。
【0021】
前記着けローラ115A〜115Eには、壺ローラ116A〜116Eがそれぞれ回転可能に対向配設されている。前記壺ローラ116A〜116Eは、その外周面の周方向の長さL6が、前記着けローラ115A〜115Eの周方向の長さL5と同じ長さ(L6=L5(=L4=L1))となるように、その直径が設定されている。前記壺ローラ116A〜116Eには、インキを貯留するインキ壺117A〜117Eがそれぞれ設けられている。
【0022】
前記版胴112と前記コレクト胴113との対向箇所P1よりも当該版胴112の回転方向下流側と、当該版胴112と前記圧胴11との対向箇所P3よりも当該版胴112の回転方向上流側との間の、当該版胴112の外周面には、当該版胴112の前記凹版の表面上のインキを除去するワイピングローラ118が回転可能に対向配設されている。
【0023】
そして、前記圧胴111と前記版胴112と前記コレクト胴113と前記シャブロン胴114A〜114Eとは、同期して回転できるようにギヤトレインを介して互いに連結されている。前記版胴112には、当該版胴112の回転位相を検出する、すなわち、前記胴111〜113,114A〜114Eの回転位相を検出する、言い換えれば、印刷機の位相を検出する位相検出手段であるロータリエンコーダ131(図2参照)が設けられている。
【0024】
また、図3Aに示すように、前記壺ローラ116A〜116Eは、前記着けローラ115A〜115Eに対して、接近離反移動(着脱)できるように支持されている。前記インキ壺117A〜117Eは、前記壺ローラ116A〜116Eの上記移動に伴って一体的に移動できるように支持されている。前記着けローラ115A〜115Eは、前記シャブロン胴114A〜114Eに対して、接近離反移動(着脱)できるように支持されている(例えば、前記特許文献2に記載の機構)。
【0025】
そして、前記圧胴111は、前記版胴112に対して、接近離反移動(着脱)できるように偏心軸受等を介して支持されている。前記給紙テーブル101等を含めた前記シート供給装置は、前記圧胴111の移動に追従して移動できるように支持されている。
【0026】
また、前記シャブロン胴114A〜114E及び前記コレクト胴113は、回転に伴って、前記装着面(有効面)114Aa〜114Ea,113a同士が対向するときに、互いに一致して接触回転する、すなわち、当該コレクト胴113の当該装着面(有効面)113aの回転方向下流側の端部と、当該シャブロン胴114A〜114Eの当該装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向下流側の端部とを一致させて接触回転させるように、その回転位相が設定されており(図3E参照)、当該装着面(有効面)114Aa〜114Ea,113a同士が対向するとき以外、互いに接触しないようになっている。
【0027】
前記コレクト胴113及び前記版胴112は、回転に伴って、前記装着面(有効面)113a,112a同士が対向するときに、互いに一致して接触回転する、すなわち、当該コレクト胴113の当該装着面(有効面)113aの回転方向下流側の端部と、当該版胴112の当該装着面(有効面)112aの回転方向下流側の端部とを一致させて接触回転させるように、その回転位相が設定されており(図3G〜3I参照)、当該装着面(有効面)113a,112a同士が対向するとき以外、互いに接触しないようになっている。
【0028】
前記圧胴111は、前記版胴112に接近して回転しているときに、前記保持面(有効面)111aが、当該版胴112の前記装着面(有効面)112aと一致して接触回転できるように、その回転位相が設定されている(図3L参照)。
【0029】
そして、前記版胴112と前記コレクト胴113との対向箇所P1と、前記版胴112と前記ワイピングローラ118との対向箇所P2との間の、上記対向箇所P1よりも当該版胴112の回転方向下流側の当該版胴112の外周の長さL11が、当該版胴112の前記装着面(有効面)112aの前記長さL2よりも長く(L11>L2)、且つ、前記版胴112と前記圧胴111との対向箇所P3と、前記対向箇所P2との間の、当該対向箇所P2よりも当該版胴112の回転方向下流側の当該版胴112の外周の長さL12が、当該版胴112の前記装着面(有効面)12aの前記長さL2よりも長く(L12>L2)なるように、前記圧胴111と前記コレクト胴113と前記ワイピングローラ118とは、前記版胴112に対してそれぞれ位置している。
【0030】
さらに、前記対向箇所P1よりも前記コレクト胴113の回転方向最上流側に位置する前記シャブロン胴114Aと当該コレクト胴113との対向箇所P4と、上記対向箇所P1との間の、当該対向箇所P1よりも当該コレクト胴113の回転方向下流側の当該コレクト胴113の外周の長さL13が、当該コレクト胴113の前記装着面(有効面)113aの前記長さL3よりも長く(L13>L3)、且つ、前記対向箇所P1よりも前記コレクト胴113の回転方向最下流側に位置する前記シャブロン胴114Eと当該コレクト胴113との対向箇所P5と、上記対向箇所P1との間の、当該対向箇所P1よりも当該コレクト胴113の回転方向上流側の当該コレクト胴113の外周の長さL14が、当該コレクト胴113の前記装着面(有効面)113aの前記長さL3よりも長く(L14>L3)なるように、前記最上流側及び前記最下流側に位置する前記シャブロン胴114A,114Eと共に、当該シャブロン胴114A,114Eの間に位置する他の前記シャブロン胴114B〜114Dは、前記コレクト胴113に対してそれぞれ位置している。
【0031】
くわえて、前記給紙テーブル101から前記圧胴111の前記保持面(有効面)111aへの前記シート1の供給箇所P6と、上記対向箇所P3との間の、上記供給箇所P6よりも当該圧胴111の回転方向下流側の当該圧胴111の外周の長さL15が、当該圧胴111の上記保持面(有効面)111aの前記長さL1よりも長く(L15>L1)、且つ、上記供給箇所P6と上記対向箇所P3との間の、当該供給箇所P6よりも当該圧胴111の回転方向上流側の当該圧胴111の外周の長さL16が、当該圧胴111の上記保持面(有効面)111aの前記長さL1よりも長く(L16>L1)なるように、前記給紙テーブル101は、前記圧胴111に対して位置している。
【0032】
図2に示すように、前記ロータリエンコーダ131は、制御手段である制御装置130の入力部に電気的に接続されている。前記制御装置130の出力部は、前記胴111〜113,114A〜114Eを回転させる駆動モータ121と、前記着けローラ115A〜115Eを回転させる着けローラ回転駆動手段である駆動モータ122A〜122Eと、前記壺ローラ116A〜116Eを回転させる壺ローラ回転駆動手段である駆動モータ123A〜123Eと、前記ワイピングローラ118を回転させる駆動モータ124と、前記版胴112に対して前記圧胴111を接近離反移動(着脱)させるように前記偏心軸受等を回動させるエアシリンダ等の圧胴着脱駆動手段である圧胴着脱装置125と、前記着けローラ115A〜115Eに対して前記壺ローラ116A〜116Eを接近離反移動(着脱)させるように当該壺ローラ116A〜116E及び前記インキ壺117A〜117Eを移動させる壺ローラ着脱駆動手段であるインキ供給着脱装置126A〜126Eと、前記シャブロン胴114A〜114Eに対して前記着けローラ115A〜115Eを接近離反移動(着脱)させるように当該着けローラ115A〜115Eを移動させる着けローラ着脱駆動手段である着けローラ着脱装置127A〜127Eと、前記給紙テーブル101からシートを送給する前記シート供給装置の送給器128とに電気的に接続されている。
【0033】
前記制御装置130の入力部には、印刷運転を開始する旨の信号を出力する印刷運転開始スイッチ130aが電気的に接続されており、当該制御装置130は、前記スイッチ130a及び前記ロータリエンコーダ131からの信号に基づいて、前記モータ121,122A〜122E,123A〜123E,124及び前記着脱装置125,126A〜126E,127A〜127E並びに前記送給器128の作動を制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0034】
なお、本実施形態においては、前記壺ローラ116A〜116E、前記インキ壺117A〜117E等により、複数(五つ)のインキ供給手段を構成し、前記ワイピングローラ118、前記駆動モータ124等により、ワイピング手段を構成し、前記駆動モータ121、前記ギヤトレイン等により、胴回転駆動手段を構成している。
【0035】
次に、上述した本実施形態に係る校正印刷機100の作動を図3A〜3Nに沿って説明する。なお、図面の煩雑化を避けるため、図3A〜3Nにおいては、シャブロン胴114B〜114Dの装着面(有効面)114Ba〜114Daの記載を省略すると共に、図3B〜3Nにおいては、着けローラ115B〜115E及び壺ローラ116B〜116E並びにインキ壺117B〜117Eの記載を省略する。
【0036】
前記校正印刷機100は、当初、前記圧胴111が前記版胴112に対して離反(脱)する位置に位置すると共に、前記着けローラ115A〜115Eが前記シャブロン胴114A〜114Eに対して離反(脱)する位置に位置し、前記壺ローラ116A〜116Eが前記着けローラ115A〜115Eに対して離反(脱)する位置に位置している(図3A参照)。
【0037】
そして、前記給紙テーブル101上にシート1を載置し、前記印刷運転開始スイッチ130aから前記制御装置130に印刷運転を開始する旨の信号を出力すると、当該制御装置130は、上記印刷運転開始スイッチ130aからの信号に基づいて、前記胴111〜113,114A〜114Eを同期回転させるように前記駆動モータ121の作動を制御すると共に、前記ワイピングローラ118を回転させるように前記駆動モータ124の作動を制御する。
【0038】
次に、前記制御装置130は、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向下流側の端部が前記着けローラ115A〜115Eと対向するときに、当該着けローラ115A〜115Eの外周面の、当該シャブロン胴114A〜114Eとの対向位置の回転方向上流側と前記壺ローラ116A〜116Eとの対向位置の回転方向下流側との間にインキが供給された状態となるように(図3C参照)、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、前記壺ローラ116A〜116Eを前記着けローラ115A〜115Eに接触(着)させるように前記インキ供給着脱装置126A〜126Eの作動を制御すると共に、当該壺ローラ116A〜116E及び当該着けローラ115A〜115Eを回転させるように前記駆動モータ122A〜122E,123A〜123Eの作動を制御する(図3B参照)。
【0039】
これにより、前記壺ローラ116A〜116Eの回転に伴って、前記インキ壺117A〜117E内のインキが引き出され、前記着けローラ115A〜115Eの外周面にインキが供給される。
【0040】
続いて、前記制御装置130は、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向下流側の端部が前記着けローラ115A〜115Eに対向すると、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、上記シャブロン胴144A〜144Eの上記装着面(有効面)114Aa〜114Eaに装着された部分版に上記着けローラ115A〜115Eを接触(着)させるように前記着けローラ着脱装置127A〜127Eの作動を制御する(図3C参照)。
【0041】
これにより、前記着けローラ115A〜115Eの外周面に供給されたインキは、最初の部分が、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版の前記回転方向下流側端部から供給され始める。
【0042】
このように前記壺ローラ116A〜116Eから前記着けローラ115A〜115Eを介して前記シャブロン胴114A〜114Eの前記部分版にインキを供給して、当該着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向全長にわたってインキが供給される、言い換えれば、当該壺ローラ116A〜116Eから当該着けローラ115A〜115Eにインキが供給され始めてから一回転すると、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ130からの情報に基づいて、上記壺ローラ116A〜116Eを上記着けローラ115A〜115Eから離反(脱)させるように前記インキ供給着脱装置126A〜126Eの作動を制御すると同時に、当該壺ローラ116A〜116Eの回転を停止させるように前記駆動モータ123A〜123Eの作動を制御する(図3D参照)。
【0043】
これにより、前記着けローラ115A〜115Eは、その外周面に、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記長さL4と同じ長さの分だけのインキが供給される。
【0044】
そして、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向上流側の端部が前記着けローラ115A〜115Eと対向する、言い換えれば、当該着けローラ115A〜115Eが当該シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版に接触してから一回転すると、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、上記シャブロン胴144A〜144Eから上記着けローラ115A〜115Eを離反(脱)させるように前記着けローラ着脱装置127A〜127Eの作動を制御すると同時に、当該着けローラ115A〜115Eの回転を停止させるように前記駆動モータ122A〜122Eの作動を制御する(図3E参照)。
【0045】
これにより、前記着けローラ115A〜115Eの外周面に供給されたインキが、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版の全長にわたって余すことなく供給される。
【0046】
このようにして前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版にインキが供給されると、前記コレクト胴113の回転に伴って、当該コレクト胴113の前記装着面(有効面)113aに装着されたブランケットに順次転写される(図3F参照)。
【0047】
このとき、先に説明したように、前記着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向の長さL5が、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの周方向の長さL4と同じ長さ(L5=L4)となっているので、当該着けローラ115A〜115Eから当該シャブロン胴114A〜114Eの前記部分版の全長にわたって均一な厚さでインキを供給することが容易にでき、前記コレクト胴113の前記ブランケットへインキを均一に転写することが高精度にできる。
【0048】
このようにしてすべての前記シャブロン胴114A〜114Eから前記コレクト胴113の前記ブランケットにインキが転写し終わると、当該コレクト胴113の当該ブランケットが、前記版胴112の前記装着面(有効面)112aに装着された凹版に接触して前記インキを転写する(図3G参照)。
【0049】
ここで、前記コレクト胴113の前記ブランケットから前記版胴112の前記凹版へインキを転写しているときに、前記ワイピングローラが当該版胴112の当該凹版に接触しないことから、当該凹版に外乱が加わってしまうことを防止できるので、当該ブランケットから当該凹版にムラを生じさせることなくインキを転写することができる。
【0050】
さらに、すべての前記シャブロン胴114A〜114Eが前記コレクト胴113の前記ブランケットへインキを転写し終えてから、当該コレクト胴113の当該ブランケットが前記版胴112の前記凹版にインキを転写するので、当該コレクト胴113の当該ブランケットから当該版胴112の当該凹版へインキが転写されるときに、当該ブランケットに外乱が加わってしまうことを防止でき、当該ブランケットから当該凹版にムラを生じさせることなくインキを転写することがより確実にできる。
【0051】
次に、前記制御装置130は、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向下流側の端部が前記着けローラ115A〜115Eと再び対向するときに、当該着けローラ115A〜115Eの外周面の、当該シャブロン胴114A〜114Eとの対向位置の回転方向上流側と前記壺ローラ116A〜116Eとの対向位置の回転方向下流側との間にインキが再度供給された状態となるように(図3I参照)、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、前記壺ローラ116A〜116Eを前記着けローラ115A〜115Eに再び接触(着)させるように前記インキ供給着脱装置126A〜126Eの作動を制御すると共に、当該壺ローラ116A〜116E及び当該着けローラ115A〜115Eを再び回転させるように前記駆動モータ122A〜122E,123A〜123Eの作動を制御する(図3H参照)。
【0052】
続いて、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向下流側の端部が前記着けローラ115A〜115Eに再び対向すると、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、上記シャブロン胴144A〜144Eの上記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版に上記着けローラ115A〜115Eを再び接触(着)させるように前記着けローラ着脱装置127A〜127Eの作動を制御する(図3I参照)。
【0053】
これにより、先の場合と同様に、前記着けローラ115A〜115Eの外周面に供給されたインキは、最初の部分が、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版の前記回転方向下流側端部から供給され始める。
【0054】
他方、前記コレクト胴113の前記ブランケット上のインキが前記版胴112の前記凹版に転写し終わると(図3I参照)、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、前記圧胴111を前記版胴112に接近(着)させるように前記圧胴着脱装置125の作動を制御すると共に、前記給紙テーブル101上からシート1を前記圧胴111に供給するように前記送給器128の作動を制御する。
【0055】
これにより、前記給紙テーブル101上の前記シート1の先端側(くわえ側)が、前記圧胴111の前記くわえ装置にくわえられて前記保持面(有効面)111aに保持され、また、前記版胴112の前記凹版の表面上の余剰のインキが、前記ワイピングローラ118で除去されるようになる(図3J参照)。
【0056】
一方、先に説明した場合と同様に、前記壺ローラ116A〜116Eから前記着けローラ115A〜115Eを介して前記シャブロン胴114A〜114Eの前記部分版にインキを供給して、当該着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向全長にわたってインキが再び供給される、言い換えれば、当該壺ローラ116A〜116Eから当該着けローラ115A〜115Eにインキが再び供給され始めてから一回転すると、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ130からの情報に基づいて、上記壺ローラ116A〜116Eを上記着けローラ115A〜115Eから再び離反(脱)させるように前記インキ供給着脱装置126A〜126Eの作動を制御すると同時に、当該壺ローラ116A〜116Eの回転を再び停止させるように前記駆動モータ123A〜123Eの作動を制御する(図3J参照)。
【0057】
これにより、先に説明した場合と同様に、前記着けローラ115A〜115Eは、その外周面に、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記長さL4と同じ長さの分だけのインキが再び供給される。
【0058】
そして、先に説明した場合と同様に、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの回転方向上流側の端部が前記着けローラ115A〜115Eと再び対向する、言い換えれば、当該着けローラ115A〜115Eが当該シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版に接触してから一回転すると、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ131からの情報に基づいて、上記シャブロン胴144A〜144Eから上記着けローラ115A〜115Eを再び離反(脱)させるように前記着けローラ着脱装置127A〜127Eの作動を制御すると同時に、当該着けローラ115A〜115Eの回転を再び停止させるように前記駆動モータ122A〜122Eの作動を制御する(図3K参照)。
【0059】
これにより、前記着けローラ115A〜115Eの外周面に改めて供給されたインキが、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版の全長にわたって余すことなく改めて供給される。
【0060】
続いて、先に説明した場合と同様に、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの前記部分版にインキが再び供給されると、前記コレクト胴113の回転に伴って、当該コレクト胴113の前記装着面(有効面)113aの前記ブランケットに再び順次転写される(図3L〜3N参照)。
【0061】
このとき、先に説明したように、前記着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向の長さL5が、前記シャブロン胴114A〜114Eの前記装着面(有効面)114Aa〜114Eaの周方向の長さL4と同じ長さ(L5=L4)となっているので、当該着けローラ115A〜115Eから当該シャブロン胴114A〜114Eの前記部分版の全長にわたって均一な厚さでインキを供給することが容易にでき、前記コレクト胴113の前記ブランケットへインキを均一に転写することが高精度にできる。
【0062】
他方、前記シート1が前記圧胴111の前記保持面(有効面)111aに全面にわたって保持されて搬送されると共に、前記ワイピングローラ118が前記版胴112の前記凹版の表面上の余剰インキをすべて除去し終えると(図3K参照)、前記圧胴111の前記保持面(有効面)111a上の前記シート1と前記版胴112の前記凹版とが接触して、当該シート1に当該凹版の絵柄に対応したインキが転写される(図3L参照)。
【0063】
このとき、前記ワイピングローラ118が前記版胴112の前記凹版の表面上の余剰インキをすべて除去し終えてから、前記圧胴111の前記保持面(有効面)111aに保持されて搬送されている前記シート1に当該版胴112の当該凹版が対接してインキを転写するので、当該凹版から当該シート1へインキが転写されるときに、当該凹版に外乱が加わってしまうことを防止でき、当該凹版から当該シート1にムラを生じさせることなくインキを転写することができる。
【0064】
さらに、前記圧胴111の前記保持面(有効面)111aが前記給紙テーブル101からの前記シート1を全面にわたって保持してから、前記版胴112の前記凹版に当該圧胴111の当該シート1が対接してインキを転写されるので、当該凹版から当該シート1へインキが転写されるときに、当該シート1に外乱が加わってしまうことを防止でき、当該凹版から当該シート1にムラを生じさせることなくインキを転写することがより確実にできる。
【0065】
このようにして前記版胴112の前記凹版から前記圧胴111の前記シート1へのインキの転写を終えると、前記制御装置130は、前記ロータリエンコーダ131からの信号に基づいて、前記圧胴111を前記版胴112から離反(脱)させるように前記圧胴着脱装置125の作動を制御する(図3M参照)。
【0066】
これにより、前記圧胴111の前記保持面111aに保持されている前記シート1の先端側(くわえ側)が前記くわえ装置から開放され、当該圧胴111の当該保持面111aから当該シート1が回収される(図3N参照)。
【0067】
以下、図3F〜3Nの作動を繰り返し行うことにより、必要な枚数のシート1に転写ムラを著しく低減した校正印刷を連続して施すことができる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る校正印刷機100によれば、印刷不良の発生を顕著に低減することができる。
【0069】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、前記着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向の長さL5と同じ周方向長さL6(=L5)の外周面を有する壺ローラ116A〜116Eを適用した場合について説明したが、例えば、前記着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向の長さL5よりも長い周方向長さL6’(>L5)の外周面を有する壺ローラや、前記着けローラ115A〜115Eの外周面の周方向の長さL5よりも短い周方向長さL6”(<L5)の外周面を有する壺ローラであっても、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0070】
また、前述した実施形態においては、前記壺ローラ116A〜116Eを前記着けローラ115A〜115Eから離反(脱)させたときに、当該壺ローラ116A〜116Eの回転を一旦停止させるようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記壺ローラ116A〜116Eを前記着けローラ115A〜115Eから離反(脱)させたときでも、当該壺ローラ116A〜116Eの回転を停止させることなくそのまま継続させるようにすることも可能である。
【0071】
また、前述した実施形態においては、前記着けローラ115A〜115Eを回転させる駆動モータ122A〜122Eと前記壺ローラ116A〜116Eを回転させる駆動モータ123A〜123Eとを独立して設けるようにしたが、他の実施形態として、例えば、着けローラと壺ローラとを同じ駆動モータに電磁クラッチ等を介して接続し、当該電磁クラッチ等を入切する作動の制御を行うようにすることも可能である。
【0072】
さらに、前記着けローラ115A〜115Eを回転させる前記駆動モータ122A〜122Eを省略し、前記着けローラ115A〜115Eを前記壺ローラ116A〜116Eや前記シャブロン胴114A〜114Eに接触(着)させることにより、当該壺ローラ116A〜116Eや当該シャブロン胴114A〜114Eの回転に伴う自然な連れ回りだけで当該着けローラ115A〜115Eを回転させるようにする、すなわち、前記駆動モータ121、前記駆動モータ123A〜123E、前記インキ供給着脱装置126A〜126E、前記着けローラ着脱装置127A〜127E等により、着けローラ回転駆動手段を構成するようにすることも可能である。
【0073】
このとき、例えば、前記着けローラ115A〜115Eの回転を停止させるブレーキシュー等を有する着けローラ回転制動手段を設け、当該着けローラ115A〜115Eを前記壺ローラ116A〜116Eや前記シャブロン胴114A〜114Eに接触(着)させるときには、当該壺ローラ116A〜116Eや当該シャブロン胴114A〜114Eの回転に伴う当該着けローラ115A〜115Eの連れ回りが可能となるように前記着けローラ回転制動手段の作動を制御手段で制御し、当該着けローラ115A〜115Eを前記壺ローラ116A〜116Eや前記シャブロン胴114A〜114Eから離反(脱)させたときには、当該着けローラ115A〜115Eの回転を迅速に停止させるように前記着けローラ回転制動手段の作動を制御手段で制御するようにすることも可能である。
【0074】
また、前述した実施形態においては、前記壺ローラ116A〜116E及び前記インキ壺117A〜117Eを前記インキ供給着脱装置126A〜126Eによって前記着けローラ115A〜115Eに対して接近離反移動(着脱)できるようにすると共に、前記着けローラ115A〜115Eを前記着けローラ着脱装置127A〜127Eによって前記シャブロン胴114A〜114Eに対して接近離反移動(着脱)できるようにしたが、他の実施形態として、例えば、着けローラを着けローラ着脱駆動手段によって壺ローラ及びシャブロン胴に対してそれぞれ接近離反移動(着脱)できるようにすることも可能である。
【0075】
また、前述した実施形態においては、前記版胴112に設けた前記ロータリエンコーダ131によって、当該版胴112の回転位相を検出する、すなわち、前記胴111〜113,114A〜114Eの回転位相を検出する、言い換えれば、印刷機の位相を検出する位相検出手段であるロータリエンコーダ131を適用した場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記コレクト胴113や前記版胴112の外周面に対向するように光電センサ等を配設することにより、当該コレクト胴113の前記装着面(有効面)112aの回転方向位置や当該版胴112の前記装着面(有効面)112aの回転方向位置を検出する位置検出手段を構成して、インキ供給手段からのインキの供給を制御するようにすることも可能である。
【0076】
ここで、例えば、前記給紙テーブル101、前記送給器128等を備えた前記シート供給装置に代えて、給紙台上に多数枚積み重ねられたシートをフィーダボード上へ順次送り出してスイング装置で圧胴に一枚ずつ供給するシート供給装置を備えた場合には、他の実施形態として、例えば、当該フィーダボード上に対向するように光電センサ等を配設することにより、上記圧胴に供給されるシートの位置を検出する位置検出手段を構成して、インキ供給手段からのインキの供給を制御するようにすることも可能である。
【0077】
また、前述した実施形態においては、前記圧胴111と前記版胴112と前記コレクト胴113と前記シャブロン胴114A〜114Eとを、ギヤトレインを介して互いに連結して前記駆動モータ121の作動により同期して回転できるようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記胴111〜113,114A〜114Eに駆動モータをそれぞれ連結し、これら駆動モータを同期して作動させるように制御手段で制御することにより、当該胴111〜113,114A〜114Eを同期して回転させるようにすることも可能である。
【0078】
また、前述した実施形態においては、二倍胴の前記圧胴111と、二倍胴の前記版胴112と、四倍胴の前記コレクト胴113とを適用した校正印刷機100の場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、圧胴と、版胴と、コレクト胴とを同倍の胴とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る校正印刷機は、シートへの転写ムラを低減して印刷不良の発生を低減することができるので、印刷産業において極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 シート
100 校正印刷機
101 給紙テーブル
111 圧胴
111a 保持面(有効面)
112 版胴
112a 装着面(有効面)
113 コレクト胴
113a 装着面(有効面)
114A〜114E シャブロン胴
114Aa〜114Ea 装着面(有効面)
115A〜115E 着けローラ
116A〜116E 壺ローラ
117A〜117E インキ壺
118 ワイピングローラ
121,122A〜122E,123A〜123E,124 駆動モータ
125 圧胴着脱装置
126A〜126E インキ供給着脱装置
127A〜127E 着けローラ着脱装置
128 送給器
130 制御装置
130a 印刷運転開始スイッチ
131 ロータリエンコーダ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N