(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科医院におけるネットワークはその扱う情報の重要性から、ローカルネットワーク(LAN)で運用されている場合が多い。また、従来の治療説明ツールは、歯科医院に常設されているクライアントコンピュータ1台ずつにインストールされている形態が多いため、アップデート等のメンテナンスの際には各々のクライアントコンピュータで作業を行う必要があり、大変な手間と時間を要する。
【0005】
一方において、歯科医師の補助をする歯科衛生士等のスタッフの定着率は低い傾向にある。定着率の低いスタッフのために多大の費用をかけて教育を行うことは歯科医院経営においてリスクが高いため、スタッフに対する教育はあまり重要視されていなかった。また、スタッフの入れ替わりが激しいため、スタッフ、患者、歯科医師間のコミュニケーションと治療意識の共有は不足傾向にある。
【0006】
すなわち、従来においては、次のような解決すべき問題があった。
(1)歯科医院のスタッフは、患者との間でコミュニケーション不足という問題を抱えている。これは、従来の問診が紙などに印刷された定型的な質問のため、患者の嗜好、治療に対する考え方を明確に把握できない、スタッフと患者間のコミュニケーションを促す有用なツールやシステムがない、また、歯科医院はスタッフ(特に歯科衛生士)の定着率が低いため、スタッフ教育にあまりコストをかけない状況にあり、スタッフ間における治療理念等の意識統一が図られていない、ということに起因する。
【0007】
(2)歯科知識の低い患者は、歯科医師の治療方針が客観的に見て最良であるのか否かを判断できない傾向にあり、継続して通院する動機付けが難しい状況が存在する。
【0008】
(3)従来の歯科医院用システムの場合、システム導入に際して、中心となるシステムサーバーだけでなく、スタッフが扱う各端末にも専用のプログラムをインストールしてバージョンアップやメンテナンスを行う必要があり、維持管理に大変な手間と時間を要する。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、受診患者に対して当該歯科医院の治療理念や治療方針、治療のための問診等を端末画面に映し出しながら説明していくことにより、受診患者に対して丁寧で分かり易い歯科治療のためのプレゼンテーションを行うことができ、また、特別な教育を必要とすることなしにスタッフの知識向上を図ることができると共に、スタッフ、患者、歯科医師間のコミュニケーション向上と歯科治療に関する意識の共有を図ることができ、さらには、システムの導入やメンテナンスに関してもサーバーへの処理プログラムのインストールや追加・修正だけで済み、システムの維持・管理を極めて容易とした歯科医院用患者プレゼンテーション支援システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、院内LANを介して接続された院内サーバーと端末とからなり、
前記端末は、前記院内サーバーとの間で各情報のやり取りを行うためのウェブブラウザを備え、前記院内サーバーは、
前記端末を用いて、前記患者に閲覧させるプレゼンテーション画面
、および、分岐条件となる趣味または嗜好を示す選択肢を前記患者に選択させる分岐条件選択画面を格納したプレゼンテーション用情報格納手段と、
各々の前記選択肢に対応した質問内容からなる複数の問診票を格納した問診票格納手段と、
前記患者
によって選択
された選択肢に対応した問診票を前記問診票格納手段から選択する問診票選択手段と、前記
選択肢に対応した問診票による問診結果とそれに付随する各種の情報を
格納する問診票結果等格納手段と、
前記問診結果および患者情報を患者ごとに分類区分して管理するための患者番号を作成して前記問診結果等格納手段に送る患者番号作成手段と、
前記院内LAN
を介して前記端末と各情報の送受信
を行うデータ送受信手段と、前記各手段の動作を所定の処理手順に従って制御する処理コントロール手段とを備え、
前記処理コントロール手段は、前記プレゼンテーション用情報格納手段に格納されている前記プレゼンテーション画面を前記端末に表示させた後、前記プレゼンテーション用情報格納手段に格納されている前記分岐条件選択画面を前記端末に表示させ、前記分岐条件選択画面に含まれる任意の選択肢を選択する操作が前記端末になされたとき、前記問診票選択手段を用いて前記任意の選択肢を選択した患者のための専用質問を有する問診票を前記問診票格納手段に格納されているものから選択して前記端末に表示させ、前記問診票の各質問に対する返答となる操作が前記端末になされたとき、少なくとも、前記各質問の返答である問診結果と前記患者を示す患者番号を前記問診結果等格納手段に格納させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記院内サーバーが、前記プレゼンテーション用情報格納手段に格納された各種の表示情報を追加・修正するプレゼンテーション用情報追加・修正手段と、前記問診票格納手段に格納された問診票の追加および修正を行う問診票追加・修正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記端末が無線方式の通信技術を備えた携帯機器からなることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記院内サーバーがインターネット回線に接続可能とされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、歯科医院の受診患者に対して当該歯科医院の治療理念や治療方針、診療に必要な問診等を端末画面に映し出しながら順次進めていくことができるので、受診患者に対して丁寧で分かり易い歯科治療のためのプレゼンテーションを行うことができる。また、あらかじめ定められた内容に沿ってプレゼンテーションを進めて行くため、歯科知識の低いスタッフでも歯科知識の高いスタッフと同様に質の高いプレゼンテーションを行うことができると共に、学習効果に優れるため、スタッフ、患者、歯科医師間のコミュニケーション向上や促進、医療意識の共有を図ることができる。さらに、本発明システムの運用に際しては、院内サーバーにシステムプログラムをインストールするだけで済み、スタッフが操作する各端末はウェブブラウザを搭載した市販のパソコンを用いることができるので、システムの構築と維持管理が極めて容易となる。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、プレゼンテーション用情報追加・修正手段と、問診票追加・修正手段とを備えているので、プレゼンテーション用の各種の表示情報や問診票の追加および修正を簡単に行うことができ、本発明システムを導入した当該歯科医院に最適なシステムへとカスタマイズしていくことができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、端末が無線方式の通信技術を備えた携帯機器からなるので、院内の何処にでも持って行くことができ、患者の状況(例えば老人や足の悪い患者等)に応じて色々な場所でプレゼンテーションを行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、院内サーバーがインターネット回線に接続可能とされているので、本発明システムのバージョンアップや改変、修正に際して、システム管理会社の管理サーバーから直接行うことができ、システムの管理、運用をより簡単かつ確実に行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る歯科医院用患者プレゼンテーション支援システムの一実施例を図面と共に説明する。
図1は、本発明システムの全体構成を示すブロック図である。本発明システムは、図示するように、歯科医院に引かれた院内LAN(ローカルエリアネットワーク)4に、院内サーバー1、必要な台数(図示例では3台)の端末2
1〜2
3、その他の必要な機材、たとえばプリンタ3等を接続することにより構築される。
なお、院内LAN4は、有線、無線、いずれの方式であってもよい。
【0020】
院内サーバー1は、本発明の根幹をなす部分であって、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インターフェース等からなるコンピュータシステムで構成され、後述する
図3のフローチャートに示される処理動作を実行するための処理プログラムが格納されている。なお、この院内サーバー1は、インターネット回線へも接続可能とし、インターネット回線を介してシステム提供会社の管理サーバーにも接続可能とすることができる。
【0021】
端末2
1〜2
3は、院内サーバー1から送られてくる各種のプレゼンテーション情報や問診情報等を画面上に表示すると共に、問診等に対する回答を院内サーバー1へ送信するためのウェブ(Web)ブラウザを備えた入出力装置である。この端末2
1〜2
3は、通常、軽くて操作が簡単なタッチパネル式タブレットやノートパソコンで構成することが好ましい。また、これら端末2
1〜2
3は院内LAN4に無線で繋がれていてもよいし、有線で繋がれていてもよい。
【0022】
図2に、院内サーバー1の機能対応ブロック図を示す。
本発明の歯科医院用患者プレゼンテーション支援システムは、院内サーバー1に格納されている処理プログラムによってソフトウェア上で構築されるもので、
図2中の主要機能部分は処理プログラムのソフトウェア上で構築されているものである。なお、可能であればハードウェアで構築してもよい。
【0023】
処理コントロール手段101は、以下に述べる各手段を統括的に制御し、
図3のフローチャートに示す処理動作を実行するものである。
【0024】
プレゼンテーション用情報格納手段102は、患者に対する歯科治療のプレゼンーションのための種々の表示画面を格納した記憶部である。表示画面の例としは、たとえば、
図4(a)、(b)に示すような当該歯科医院の理念を示す表示画面、
図5(a)、(b)に示すような当該歯科医院の治療方針を示す表示画面、
図6に示すような患者の趣味・嗜好等に応じたプレゼンテーションを行うための分岐条件選択画面、
図7(a)(c)、
図8(a)〜(c)、
図9(a)〜(c)に示すような条件分岐に対応した歯科治療のための説明画面が予め格納されている。
【0025】
プレゼンテーション用情報追加・修正手段103は、前記プレゼンテーション用情報格納手段102に格納された各種の表示情報を追加・修正してカスタマイズ化するための追加・修正手段である。
【0026】
問診票格納手段104は、
図6の分岐条件選択画面で選択される各条件A,B,Cのそれぞれに対応した問診票A,B,Cを格納した情報記憶部である。一例として、問診表Aについてその内容を例示すると、たとえば
図10(a)〜
図10(f)に示すような質問内容からなる問診票が格納されている。すなわち、図示例の問診票Aには、例えば、歯科診療全般に共通する一般質問(
図10(a)〜(d))に加え、分岐条件Aに対応した専用の質問(
図10(e)(f))が用意されている。同様に、問診票B,Cについても、問診票Aと同じ一般質問に加え、分岐条件B,Cのそれぞれに対応した専用の質問が付加されている。
【0027】
問診票選択手段105は、分岐条件A,B,Cに対応した問診票A,B,Cを問診票格納手段104内から選択する手段である。また、問診票追加・修正手段106は、新たな問診票を追加、質問内容を修正するための手段である。
【0028】
問診結果等格納手段107は、問診結果およびそれに付随する各種の関連情報を格納記憶するための記憶手段である。患者番号作成手段108は、問診結果等格納手段107に格納した問診結果および各種の患者情報を患者ごとに分類区分して管理するための患者番号を作成する手段である。
【0029】
データ送受信手段109は、院内サーバー1から院内LAN4に向けて種々の情報を送信すると共に、端末2
1〜2
3から送られてくる種々の情報を受信するための通信手段である。なお、図中に点線で示すように、必要に応じてインターネット回線へも接続可能とされている。110はモニタ、111は入力手段としてのキーボードである。
【0030】
次に、
図3のフローチャートを参照して、上記本発明システムの動作を説明する。なお、この実施例で用いる端末2
1〜2
3としては、タッチパネル式タブレットを用いるものとし、タブレットの液晶画面に表示されるアイコン等をタッチすることにより操作できるものとする。
【0031】
今、歯科医院を訪れた治療患者に対してプレゼンテーションを行うため、歯科医院のスタッフ(歯科衛生士等)が例えば端末2
1を起動すると、端末2
1 は院内LAN4を介して院内サーバー1に接続される。そして、端末2
1 の液晶画面上に表示されたスタートボタンにタッチすると、本発明システムによるプレゼンテーションが開始される。
【0032】
まず最初に、院内サーバー1の処理コントロール手段101は、プレゼンテーション用情報格納手段102から
図4(a)、(b)順に治療理念画面をタッチする度に次々と読み出だされ、端末2
1に表示する(
図3ステップS1)。スタッフは、この治療理念画面を患者に見せながら当該医院の治療理念を説明する。
【0033】
ついで、端末画面上の<次へ>のボタンをタッチすると、プレゼンテーション用情報格納手段102から
図5(a)、(b)順に診療方針画面をタッチする度に次々と読み出され、表示される(
図3ステップS2)。スタッフは、この治療方針画面を見せながら当該医院の治療方針を説明する。
【0034】
ついで、
図5(b)の画面中の<次へ>ボタンを押すと、プレゼンテーション用情報格納手段102から
図6の分岐条件選択画面が読み出され、端末画面に表示される。患者はこの表示画面を見て、趣味・嗜好等を勘案して自分の治療目的に合った項目を選択し、当該項目のアイコンをタッチする(
図3ステップS3、S4)。
図6の画面例の場合、選択項目としては、<A.思いっきり笑いたい>、<B.おしゃべりが好き>、<C.食べる事が好き>の3つが用意されている。
【0035】
例えばいま、<A.思いっきり笑いたい>のアイコンをタッチしたものとすると(
図3ステップS4のYES)、処理はステップS5へ移行し、プレゼンテーション用情報格納手段102からこの選択したアイコンに対応した
図7(a)〜(c)の<思いっきり笑いたい>ための予防歯科のためのメンテナンス方法の説明画面が順次表示される。患者はこれらの画面を順次見ていくことにより、<思いっきり笑いたい>ために必要な予防歯科の知識を吸収していく。
【0036】
図7(c)の画面まで説明が進み、画面上の<問診>のアイコンをタッチすると、問診動作に入る。問診票選択手段105は、問診票格納手段104内から<A.思いっきり笑いたい>を選択した患者のための問診票A(
図10(a)〜(f))を順次選択して端末2
1に送り、端末2
1の画面上に順次表示する(
図3ステップS6)。患者は、この問診画面を見ながら各質問に答えていく。この各問診の回答は院内サーバー1へ送られ、問診結果等格納手段107に順次格納される(
図3ステップS13)。
【0037】
上記問診票Aは、歯科診療全般に共通する一般質問(
図10(a)〜(d))と、<A.思いっきり笑いたい>を選択した患者のための専用質問(
図10(e)(f))が用意されている。このため、問診を終わった時点で、一般的な歯科治療情報と共に、<A.思いっきり笑いたい>患者の治療に適した歯科治療データも同時に収集することができる。
【0038】
従来の歯科医院における問診は、患者共通の質問を印刷した紙の問診票を用いて行うのが一般的であり、治療患者の趣味・嗜好、治療目的に応じて動的に質問内容を変えることができなかった。これに対して、本発明システムでは、患者の趣味・嗜好、治療目的に応じて問診内容を動的に変えることができ、最良の歯科治療情報を収集することができる。
【0039】
上記のようにして問診票Aによる問診がすべて終了すると、患者番号作成手段108は当該患者を識別するための患者番号を生成して問診結果等格納手段107に送り(
図3ステップS14)、患者の基礎データ、選択した趣味・嗜好、問診結果等と共に問診結果格納手段107に格納して保存する。これによって、患者毎に詳細な歯科治療データがファイリングされ、<A.思いっきり笑いたい>患者のためのその後の歯科治療に資することができる。これらの収集情報は、必要ならプリンタ3を用いて印刷し、患者等に渡すこともできる。
【0040】
一方、
図6の分岐条件選択画面において、<B.おしゃべりが好き>を選んだ場合には、処理は
図3のステップS7、S8、S9へ移動し、<B.おしゃべりが好き>に対応した問診票Bが選択され、<B.おしゃべりが好き>に対応した問診が行われる(問診票Bの具多例は省略)。そして、この問診結果は、前記問診票Aの場合と同様に、患者番号、患者の基礎データ、選択した趣味・嗜好等と共に問診結果格納手段107に格納保存される。
【0041】
また、
図6の分岐条件選択画面において、<C.食べる事が好き>を選んだ場合には、処理は
図3のステップS10、S11、S12へ移動し、<C.食べる事が好き>に対応した問診票Bが選択され、<C.食べる事が好き>に対応した問診が行われる(問診票Cの具多例は省略)。そして、その問診結果は、前記問診票Aの場合と同様に、患者番号、患者の基礎データ、選択した趣味・嗜好等と共に問診結果格納手段107に格納保存される。
【0042】
上記のようにして、本発明システムによれば、端末の画面上に表示される歯科医院の理念や治療方針、質問事項について順次選択しながら進めていくだけで、当該患者の治療に必要な基本情報を簡単に収集することができる。
【0043】
また、歯科衛生士等のスタッフも、本発明システムを用いて患者にプレゼンテーションを繰り返し行うことにより、特別な教育を受けることなしに、自然に当該歯科医院の治療理念や治療方針等を確認しながら覚えることができ、スタッフ、患者、歯科医師間のコミュニケーションの向上と治療意識の共有化を図ることができる。
【0044】
また、本発明システムの場合、スタッフが操作する端末2
1〜2
3は公知のウェブラウザを備えているだけでよく、主要な機能は院内サーバー1内のソフトウェアによって実現されるので、システムの構築、改変、拡張を簡単に行うことができる。
【0045】
また、院内サーバー1をインターネット回線を介してシステム提供会社の管理サーバーに接続可能としておけば、システム提供会社の遠隔制御によって、システムのバージョンアップ、拡張、修正、さらには日々の運用管理を簡単に行うことができる。
【0046】
さらに、プレゼンテーション内容や問診内容の追加・修正も、院内サーバー1に備えられたモニタ110、キーボード111から、プレゼンテーション情報追加・修正手段103、問診票追加・修正手段を用いて簡単に行うことができ、本発明システムを当該歯科医院に最適なシステムにカスタマイズしていくことができる。
【0047】
以上、本発明の一実施例について詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨内において種々の変更が可能である。例えば、
図3のフローチャートにおいて、ステップS1の<医院理念を表示>処理と、ステップS2の<治療方針を表示>処理はその処理順を逆にしてもかまわないし、ステップS14の<患者番号を作成・表示>処理は、例えばステップS13の<・患者の基礎データ、選択した趣味・嗜好、問診結果を保存する>処理の前に行ってもよい。また、ステップS2〜S12のいずれの処理の間で行うことも可能であり、前記ステップ以外の処理が必要となった場合には適宜、必要となった処理をフローに追加可能とする。これら変更は、本発明の趣旨を逸脱しない限り可能である。