【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ヒト胚幹細胞およびヒト人工多能性幹細胞等のヒト多能性幹細胞から、RPE細胞を分化させるための方法を提供する。この方法は、スクリーニング試験で使用するための多数の分化したRPE細胞を生成するために、RPEの基礎生物学を研究するために、および治療法として使用される。本明細書に説明されるように、本手法を使用して、ヒト胚幹細胞等の多能性幹細胞から分化されるRPE細胞は、ヒト胚幹細胞の他に、成人および胎児由来のRPE細胞とも分子的に異なる。
【0006】
本発明は、ヒト多能性幹細胞に由来するRPE細胞の製剤および医薬品も提供する。このようなRPE細胞の製剤は、ヒト胚幹細胞の他に、成人および胎児由来のRPE細胞とも分子的に異なる。
【0007】
本発明は、初めて、ヒト胚幹細胞から分化されるRPE細胞の詳細な分子的特徴付けを提供する。詳細な特徴付けは、他の源(例えば、成人RPE細胞および胎児RPE細胞)に由来するRPE細胞、並びにヒト胚幹細胞との比較を含む。この分析は、RPEのより深い理解を提供するだけでなく、ヒト胚幹細胞から分化されるRPE細胞が、これらの細胞と上述したRPE細胞とを区別する明白な分子的特性を有することも明らかにする。
【0008】
本発明は、実質的に精製したRPE細胞の製剤を含む、RPE細胞の製剤を提供する。例示的なRPE細胞は、ヒト胚幹細胞もしくはiPS細胞等のヒト多能性幹細胞から分化される。ヒト多能性幹細胞由来のRPE細胞は、網膜変性疾患を治療するのに使用および製剤化することができる。加えて、ヒト多能性幹細胞由来のRPE細胞は、(インビトロおよび/またはインビボでの)RPE細胞の生存を調節する薬剤を同定する、RPE細胞の成熟を研究する、またはRPE細胞の成熟を調節する薬剤を同定するために、スクリーニング試験で使用することができる。このようなスクリーニング試験を使用して同定される薬剤は、インビトロもしくはインビボで使用され得、かつ単独で、もしくは組み合わせて、網膜変性疾患を治療するのに使用することができるさらなる治療法を提供し得る。
【0009】
本発明は、胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞からRPE細胞を生成するための改良された方法を提供する。本発明の方法は、分化したRPE細胞を生成するのに使用することができる。任意で、分化したRPE細胞の成熟のレベルは、色素沈着レベルによって評価する時に、分化したRPE細胞、成熟RPE細胞、もしくはそれらの混合物が生成されるように調節することができる。また、眼障害の治療のための改良された方法も提供する。具体的には、これらの方法は、眼障害、特に内在性RPE層への損傷もしくはその破壊によって、全体的もしくは部分的に引き起こされる、または悪化する眼障害の症状を治療もしくは改善するために、ヒト胚幹細胞に由来するRPE細胞の使用を伴う。
【0010】
特定の態様において、本発明は、網膜色素上皮(RPE)細胞の培養物を生成するための方法を提供する。特定の実施形態において、培養物は、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99%を超える分化したRPE細胞(成熟度のレベルに関わらず、培養物のうちの少なくとも75%が、分化したRPE細胞である)を含有する、実質的に精製した培養物である。特定の実施形態では、実質的に精製した培養物が、少なくとも30%、35%、40%、もしくは45%の成熟分化したRPE細胞を含有する。特定の実施形態では、実質的に精製した培養物が、少なくとも50%の成熟分化したRPE細胞を含有する。他の実施形態では、実質的に精製した培養物が、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99%を超える成熟分化したRPE細胞を含有する。特定の実施形態では、分化したRPE細胞が、ヒト胚幹細胞、ヒトiPS細胞、もしくは他の多能性幹細胞に由来する。
【0011】
特定の実施形態において、当該方法は、
a)ヒト胚幹細胞を提供する工程と、
b)培地が任意で無血清のB−27サプリメントを含有する、富栄養性で低タンパク質の培地内で、胚様体としてヒト胚幹細胞を培養する工程と、
c)培地が任意で無血清のB−27サプリメントを含有する、富栄養性で低タンパク質の培地内で、付着培養物として胚様体を培養する工程と、
d)培地が無血清のB−27サプリメントを含有しない、富栄養性で低タンパク質の培地内で、(c)の細胞の付着培養物を培養する工程と、
e)高密度体細胞培養物の成長を支持することができ、それによってRPE細胞が細胞の培養物内に現れる培地内で、(d)の細胞を培養する工程と、
f)(e)の培養物と酵素とを接触させる工程と、
g)RPE細胞の富化培養物を生成するように、培養物からRPE細胞を選択して、RPE細胞を、成長因子を補充した培地を含有する別個の培養物に移入する工程と、
h)RPE細胞の富化培養物を繁殖させて、実質的に精製したRPE細胞の培養物を生成する工程と、を含む。
【0012】
特定の他の態様において、本発明は、成熟網膜色素上皮細胞(RPE)を生成する方法を提供し、当該方法は、
a)ヒト胚幹細胞を提供する工程と、
b)培地が任意で無血清のB−27サプリメントを含有する、富栄養性で低タンパク質の培地内で、胚様体としてヒト胚幹細胞を培養する工程と、
c)培地が任意で無血清のB−27サプリメントを含有する、富栄養性で低タンパク質の培地内で、付着培養物としてヒト胚幹細胞を培養する工程と、
d)培地が無血清のB−27サプリメントを含有しない、富栄養性で低タンパク質の培地内で、工程(c)の細胞の付着培養物を培養する工程と、
e)高密度体細胞培養物の成長を支持することができ、それによってRPE細胞が細胞の培養物内に現れる培地内で、(d)の細胞を培養する工程と、
f)(e)の培養物と酵素とを接触させる工程と、
g)RPE細胞の富化培養物を生成するように、RPE細胞を選択して、RPE細胞を、成長因子を補充した培地を含有する別個の培養物に移入する工程と、
h)RPE細胞の富化培養物を繁殖させる工程と、
i)成熟RPE細胞を生成するように、RPE細胞の富化培養物を培養する工程と、を含む。
【0013】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、実質的に精製したRPE細胞の培養物は、分化したRPE細胞および成熟分化したRPE細胞の両方を含有し得る。成熟RPE細胞の間で、色素のレベルが変動する場合がある。しかしながら、色素沈着レベルの増加およびより円柱形状であることに基づいて、成熟RPE細胞を、RPE細胞と視覚的に区別することができる。
【0014】
特定の実施形態では、培養物内の成熟分化したRPE細胞の割合を、培養物の密度を減少させることによって低減することができる。したがって、特定の実施形態において、当該方法は、より小さい割合の成熟RPE細胞を含有する培養物を生成するように、成熟RPE細胞の集団を二次培養する工程をさらに含む。
【0015】
特定の実施形態では、胚様体として細胞を培養する時に使用される培地が、胚様体として細胞を培養するのに適切な、あらゆる培地から選択され得る。例えば、当業者は、市販もしくは独自の媒体から選択することができる。ウイルス、細菌、もしくは真核生物の細胞培養のための培地等の、高密度培養物を支持することができる、あらゆる媒体が使用されてもよい。例えば、培地は、高栄養無タンパク質の培地、もしくは高栄養低タンパク質の培地であってもよい。例えば、ヒト胚幹細胞は、MDBK−GM、OptiPro SFM、VP−SFM、EGM−2、もしくはMDBK−MM内で培養されてもよい。特定の実施形態では、培地が、B−27サプリメントを含有し得る。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書で説明される培地に1つ以上の成長因子が補充され得る。使用され得る成長因子には、例えば、EGF、bFGF、VEGF、および組み換え型のインスリン様成長因子が挙げられる。培地は、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、アスコルビン酸、血清(例えば、ウシ胎児血清等)、もしくは成長マトリクス(例えば、マトリゲル(BD Biosciences)もしくはゼラチンからの細胞外マトリクス等)等のサプリメントも含有し得る。
【0017】
特定の実施形態では、胚様体の培養物内の非RPE細胞の培養物の中からRPE細胞を選択するために、または付着細胞の二次培養を容易にするために、機械的方法もしくは酵素法が使用される。例示的な機械的方法には、ピペットによる滴定、またはプルドニードル(pulled needle)による切断が挙げられるが、これに限定されない。例示的な酵素法には、細胞を解離するのに適切なあらゆる酵素(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ)が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、細胞を解離するために、例えばハンクスに基づく細胞解離バッファ等の、高いEDTAを含有する溶液等の非酵素溶液が使用される。
【0018】
特定の実施形態において、上述の関連する工程のうちのいずれかについて、細胞は、7日、7〜10日、7〜14日、もしくは14〜21日等の、約3日〜45日間培養される。特定の実施形態において、細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、もしくは約46日間培養される。特定の実施形態において、細胞は、約45、40、35、30、25、21、20、18、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1日以下の間、培養される。上述した関連する方法工程のそれぞれについて、細胞は、各工程において同じ期間、もしくは工程のうちの1つ以上において異なる期間、培養され得ることに留意されたい。
【0019】
特定の実施形態において、RPE細胞は、成熟RPE細胞の培養物を生成するために、さらに培養される。RPE細胞および成熟RPE細胞は、どちらも分化したRPE細胞である。しかしながら、成熟RPE細胞は、分化したRPE細胞と比較して、色素のレベルが増加していることを特徴とする。成熟度および色素沈着のレベルは、分化したRPE細胞の培養物の密度を増減させることによって調節することができる。したがって、成熟RPE細胞を生成するために、RPE細胞の培養物をさらに培養することができる。あるいは、成熟RPE細胞を含有する培養物の密度を減少させて、成熟分化したRPE細胞の割合を減少させ、かつ分化したRPE細胞の割合を増加させることができる。
【0020】
RPE細胞を培養するのに使用される培地は、細胞培養に適切な任意の培地であり、当業者によって選択することができる。例えば、ウイルス、細菌、もしくは動物細胞培養のための培地等の、高密度培養物を支持することができる、あらゆる培地が使用されてもよい。例えば、本明細書で説明される細胞は、VP−SFM、EGM−2、およびMDBK−MM内で培養されてもよい。
【0021】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、当該の実質的に精製したRPE細胞(成熟RPE細胞の有無に関わらず)の培養物は、貯蔵のために冷凍される。細胞は、例えば極低温冷凍といった従来技術において公知のあらゆる適切な方法によって貯蔵されてもよく、また、細胞の貯蔵に適切な任意の温度で冷凍されてもよい。例えば、細胞は、約−20℃、−80℃、−120℃、もしくは細胞の貯蔵に適切な任意の温度で冷凍されてもよい。極低温冷凍細胞は、適切な容器内で貯蔵され、細胞損傷のリスクを低減し、かつ解凍しても細胞が生存する可能性を最大化するように貯蔵するよう準備されている。他の実施形態では、RPE細胞は、室温で保たれるか、もしくは、例えば、約4℃で冷蔵される。
【0022】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、当該方法は、適正製造基準(GMP)に従って実行される。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞が分化されるヒト胚幹細胞は、適正製造基準(GMP)に従って誘導されたものであった。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞が分化されるヒト胚幹細胞は、残りの胚を破壊せずに初期胚から取り出される1つ以上の分割球に由来するものであった。
【0023】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、当該方法は、少なくとも1×10
5個のRPE細胞、少なくとも5×10
5個のRPE細胞、少なくとも1×10
6個のRPE細胞、少なくとも5×10
6個のRPE細胞、少なくとも1×10
7個のRPE細胞、少なくとも2×10
7個のRPE細胞、少なくとも3×10
7個のRPE細胞、少なくとも4×10
7個のRPE細胞、少なくとも5×10
7個のRPE細胞、少なくとも6×10
7個のRPE細胞、少なくとも7×10
7個のRPE細胞、少なくとも8×10
7個のRPE細胞、少なくとも9×10
7個のRPE細胞、少なくとも1×10
8個のRPE細胞、少なくとも2×10
8個のRPE細胞、少なくとも5×10
8個のRPE細胞、少なくとも7×10
8個のRPE細胞、もしくは少なくとも1×10
9個のRPE細胞を含む製剤を生成するのに使用される。特定の実施形態では、製剤内のRPE細胞の数には、成熟度のレベルに関わらず、かつ分化したRPE細胞および成熟RPE細胞の相対的割合に関わらず、分化したRPE細胞が含まれる。他の実施形態では、製剤内のRPE細胞の数は、分化したRPE細胞もしくは成熟RPE細胞のどちらかの数を指す。
【0024】
特定の実施形態において、当該方法は、移植に好適なRPE細胞の製剤を生成するための分化したRPE細胞および/または分化した成熟RPE細胞を製剤化する工程をさらに含む。
【0025】
別の態様において、本発明は、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防する方法であって、RPE細胞を含む有効量の製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、該RPE細胞は、ヒト胚幹細胞、iPS細胞、もしくは他の多能性幹細胞に由来する、方法を提供する。網膜変性を特徴とする状態には、例えば、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症(乾燥型もしくは滲出型)、糖尿病性網膜症、および網膜色素変性症が挙げられる。特定の実施形態では、RPE細胞が、本明細書で説明される方法のうちの1つ以上を使用して、ヒト多能性幹細胞から誘導される。
【0026】
特定の実施形態では、製剤を前もって凍結保存しておき、移植前に解凍した。
【0027】
特定の実施形態では、治療方法は、シクロスポリンもしくは1つ以上の他の免疫抑制剤の投与をさらに含む。免疫抑制剤が使用される際、免疫抑制剤は、全身的もしくは局所的に投与されてもよく、RPE細胞の投与前に、それと同時に、もしくはその後に投与されてもよい。特定の実施形態では、免疫抑制療法が、RPE細胞の投与後に、数週間、数ヶ月間、数年間、もしくは無制限に継続する。
【0028】
特定の実施形態では、治療方法は、単一用量のRPE細胞の投与を含む。他の実施形態では、治療方法は、ある期間にわたってRPE細胞が複数回投与される治療過程を含む。例示的な治療過程は、毎週、隔週、毎月、年4回、年2回、または、年1回の治療を含み得る。あるいは、治療は、並行して進める場合があり、それによって、最初に複数回投与(例えば、1週目における1日用量)が必要になり、その後回数および用量を減らすことが必要である。数多くの治療計画が意図される。
【0029】
特定の実施形態では、投与したRPE細胞が、分化したRPE細胞と成熟RPE細胞との混合集団を含む。他の実施形態では、投与したRPE細胞が、分化したRPE細胞もしくは成熟RPE細胞のどちらかの実質的に精製した集団を含む。例えば、投与したRPE細胞は、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、もしくは1%未満の他のRPE細胞型を含有し得る。
【0030】
特定の実施形態では、RPE細胞が、薬剤として許容される担体もしくは補形剤内で製剤化される。
【0031】
特定の実施形態では、RPE細胞を含む製剤が、懸濁液、マトリクス、もしくは基質内に移植される。特定の実施形態では、製剤が、眼の網膜下腔への注射によって投与される。特定の実施形態では、約10
4〜約10
6個の細胞が対象に投与される。特定の実施形態において、当該方法は、対象における網膜電図応答、視運動視力閾値、もしくは輝度閾値を測定することによって、治療もしくは予防の有効性を監視する工程をさらに含む。当該方法は、細胞の免疫原性もしくは眼の細胞の遊走を監視することによって、治療または予防の有効性を監視する工程も含み得る。
【0032】
特定の態様において、本発明は、有効量のRPE細胞を含む、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防するための医薬製剤であって、RPE細胞が、ヒト胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞に由来する、医薬製剤を提供する。医薬製剤は、投与の経路に従って、薬剤として許容される担体内で製剤化され得る。例えば、製剤は、眼の網膜下腔への投与のために製剤化され得る。組成物は、少なくとも10
4、10
5、5×10
5、6×10
5、7×10
5、8×10
5、9×10
5、10
6、2×10
6、3×10
6、4×10
6、5×10
6、6×10
6、7×10
6、8×10
6、9×10
6、もしくは10
7個のRPE細胞を含み得る。特定の実施形態では、組成物が、少なくとも2×10
7、5×10
7、6×10
7、7×10
7、8×10
7、9×10
7、1×10
8個のRPE細胞を含み得る。特定の実施形態では、RPE細胞が、成熟RPE細胞を含む場合があり、したがって、細胞数は、分化したRPE細胞および成熟分化したRPE細胞の両方の合計を含む。
【0033】
別の態様において、本発明は、RPE細胞の生存を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするための方法を提供する。例えば、ヒト胚幹細胞から分化したRPE細胞は、RPEの生存を促進する薬剤をスクリーニングするのに使用することができる。同定した薬剤は、治療計画の一部として単独で、もしくはRPE細胞と組み合わせて使用することができる。あるいは、同定した薬剤は、インビトロで分化したRPE細胞の生存を高める培養方法の一部として使用することができる。
【0034】
別の態様において、本発明は、RPE細胞の成熟度を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするための方法を提供する。例えば、ヒトES細胞から分化したRPE細胞は、RPEの成熟を促進する薬剤をスクリーニングするのに使用することができる。
【0035】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、当該方法が、適正製造基準(GMP)に従って実行される。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞がそこから分化されるヒト胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞は、適正製造基準(GMP)に従って誘導された。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞がそこから分化されるヒト胚幹細胞は、残りの胚を破壊せずに初期胚から取り出される1つ以上の分割球に由来するものであった。
【0036】
別の態様において、本発明は、RPE細胞を生成するための出発材料もしくはその製剤を、ヒト胚幹細胞の代わりに、他の型のヒト多能性幹細胞とすることができることを意図している。一例として、本発明は、含まれる人工多能性幹(iPS)細胞を、本明細書で説明される方法を使用してRPE細胞を分化するための出発材料として使用することを意図している。このようなiPS細胞は、細胞バンクから得るか、あるいは前もって誘導することができる。あるいは、iPS細胞は、RPE細胞に対する分化を始める前に、新たに発生させることができる。
【0037】
ある実施形態では、iPS細胞を含む、多能性幹細胞から分化したRPE細胞もしくは製剤が、治療法で使用される。
【0038】
本発明は、ヒト胚幹細胞(hESC)もしくは他のヒト多能性幹細胞から最終分化した、機能ヒト網膜色素上皮(hRPE)細胞も提供する。ヒト以外の霊長類の移植実験において、これらのhRPEは、特有のmRNAおよびタンパク質の発現等のそれらの特有の物理的特徴によって、他の細胞から同定することができる。さらに、hRPEは、網膜変性の有効な動物モデルに植設される時に、罹患動物の網膜変性を治療し得る。したがって、本発明のhRPEは、種々の網膜変性障害に苦しむ患者の治療に有用である。本発明は、したがって、視覚変性疾患および障害の治療のために、GLP様およびGMPに準拠した状態の下で生成および製造することができる、hRPEの再生可能な源を提供する。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、ヒト胚幹細胞に由来するヒト網膜色素上皮細胞を提供し、この細胞は、色素性であり、ヒト網膜色素上皮細胞ではない細胞内では発現しない、少なくとも1つの遺伝子を発現する。特定の実施形態において、ヒト網膜色素上皮細胞は、少なくとも1つのタンパク質、分子、もしくは自然環境内に見られる他の不純物から単離される。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、ヒト胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞に由来するヒトRPE細胞を含む細胞培養物を提供するが、この細胞は、色素性であり、ヒトRPEではない細胞内では発現しない、少なくとも1つの遺伝子を発現する。このように使用した時に、色素性とは、任意の色素沈着のレベル、例えば、RPE細胞をES細胞から分化させる時に最初に生じる色素沈着のレベルを指す。色素沈着は、分化したRPE細胞の細胞密度および成熟度によって変動し得る。しかしながら、細胞が色素性であると称される場合、この用語は、いずれかの、および全ての色素沈着のレベルを指すものと理解されたい。
【0041】
いくつかの実施形態では、細胞培養物が、実質的に精製したヒトRPE細胞の集団を含む。実質的に精製したhRPE細胞の集団とは、hRPE細胞が、集団内の細胞のうちの少なくとも約75%で構成されるものである。他の実施形態において、実質的に精製したhRPE細胞の集団は、hRPE細胞が、集団内の細胞のうちの少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、99%、また、さらには99%超で構成されるものである。いくつかの実施形態では、細胞培養物内のhRPE細胞の色素沈着が均一である。他の実施形態では、細胞培養物内のhRPE細胞の色素沈着が不均一であり、RPE細胞の培養物は、分化したRPE細胞および成熟RPE細胞の両方を含む。本発明の細胞培養物は、少なくとも約10
1、10
2、5×10
2、10
3、5×10
3、10
4、10
5、10
6、10
7、10
8、もしくは少なくとも約10
9個のhRPE細胞を含み得る。
【0042】
本発明は、様々な色素沈着の程度を伴うヒト網膜色素上皮細胞を提供する。特定の実施形態において、ヒト網膜色素上皮細胞の色素沈着は、hRPE細胞の最終分化後の平均ヒト色素上皮細胞と同じである。特定の実施形態において、ヒト網膜色素上皮細胞の色素沈着は、hRPE細胞の最終分化後の平均ヒト網膜色素上皮細胞よりも色素性が多い。特定の他の実施形態において、ヒト網膜色素上皮細胞の色素沈着は、最終分化後の平均ヒト網膜色素上皮細胞よりも色素性が少ない。
【0043】
特定の実施形態において、本発明は、ES細胞もしくは他の多能性幹細胞から分化され、かつRPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fのうちの1つ以上(1、2、3、4、5、もしくは6つ)を(mRNAおよび/またはタンパク質レベルにおいて)1つ以上発現する、ヒトRPE細胞を提供する。特定の実施形態では、遺伝子発現が、mRNA発現によって測定される。他の実施形態では、遺伝子発現が、タンパク質発現によって測定される。特定の実施形態では、RPE細胞が、Oct−4、アルカリ性ホスファターゼ、nanog、および/またはRex−1等の、ES特異的遺伝子を実質的に発現しない。他の実施形態では、RPE細胞が、pax−2、pax−6、および/またはチロシナーゼのうちの1つ以上(1、2、もしくは3つ)を発現する。特定の実施形態では、pax−2、pax−6、および/またはチロシナーゼの発現が、成熟分化したRPE細胞と分化したRPE細胞とを区別する。他の実施形態では、RPE細胞が、表2に示されるマーカーのうちの1つ以上を発現し、1つ以上のマーカーの発現が、(もしあれば)ヒトES細胞内での発現に対して、RPE細胞内で上方制御される。他の実施形態では、RPE細胞は、表3に示されるマーカーのうちの1つ以上を発現し、1つ以上のマーカーの発現が、(もしあれば)ヒトES細胞内での発現に対して、RPE細胞内で下方制御される。
【0044】
特定の実施形態において、本発明は、ヒト胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞に由来するヒトRPE細胞を含む、医薬製剤を提供する。医薬製剤は、少なくとも約10
1、10
2、5×10
2、10
3、5×10
3、10
4、10
5、10
6、10
7、10
8、もしくは約10
9個のhRPE細胞を含み得る。
【0045】
他の実施形態において、本発明は、本明細書で説明されるRPE細胞の凍結保存製剤を提供する。凍結保存製剤は、貯蔵のために数日もしくは数年間冷凍され得る。細胞は、例えば極低温冷凍といった従来技術において公知のあらゆる適切な方法によって貯蔵されてもよく、また、細胞の貯蔵に適切な任意の温度で冷凍されてもよい。例えば、細胞は、約−20℃、−80℃、−120℃、もしくは細胞の貯蔵に適切な任意の温度で冷凍されてもよい。極低温冷凍細胞は、適切な容器内で貯蔵され、細胞損傷のリスクを低減し、かつ解凍しても細胞が生存している可能性を最大化するように貯蔵する準備がなされる。他の実施形態では、RPE細胞を、室温に保つ、もしくは、例えば約4℃で冷蔵することができる。本明細書で説明される組成物の凍結保存製剤は、少なくとも約10
1、10
2、5×10
2、10
3、5×10
3、10
4、10
5、10
6、10
7、10
8、もしくは約10
9個のhRPE細胞を含み得る。特定の実施形態において、本発明のhRPE細胞は、凍結保存後の貯蔵から回復される。特定の実施形態では、RPE細胞のうちの65%、70%、75%超、もしくは80%超が、凍結保存後も生存度を維持する。他の実施形態では、RPE細胞のうちの85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%超、もしくは99%が、超凍結保存後も生存度を維持する。
【0046】
別の態様において、本発明は、本明細書で説明される構造的、分子的、および機能的特徴の任意の組み合わせを有する、実質的に精製したヒトRPE細胞の製剤を提供する。このような製剤は、投与のための医薬製剤として製剤化されてもよく、および/または凍結保存のために製剤化されてもよい。
【0047】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者の状態を治療する薬物の製造における、本明細書で説明されるヒトRPE細胞の使用を提供する。別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者の状態を治療する薬物の製造における、本明細書で説明されるヒトRPE細胞を含む細胞培養物の使用を提供する。別の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者の状態を治療する薬物の製造における、本明細書で説明されるヒトRPE細胞を含む医薬製剤の使用を提供する。治療され得る状態には、スタルガルト黄斑ジストロフィ、網膜色素変性症、黄斑変性症、緑内障、および糖尿病性網膜症等の、網膜の変性疾患が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、本発明は、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防する方法であって、RPE細胞を含む有効量の製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、RPE細胞が、哺乳類の胚幹細胞に由来する、方法を提供する。網膜変性を特徴とする状態には、例えば、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、および網膜色素変性症が挙げられる。
【0048】
他の実施形態において、本発明は、ヒト胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞に由来するヒトRPE細胞の溶液を提供し、このRPE細胞は、本明細書で説明される特質の任意の組み合わせを有する。このような溶液は、本明細書で説明されるように、少なくとも約10
1、10
2、5×10
2、10
3、5×10
3、10
4、10
5、10
6、10
7、10
8、もしくは約10
9個のhRPE細胞を含み得る。このような溶液は、対象への注射に好適である。このような溶液は、本明細書に説明される凍結保存に好適である。本発明は、例えば眼の網膜変性疾患等の、RPE細胞の投与によって治療することができる疾患を治療する薬物の製造に対する、これらの溶液の使用も提供する。
【0049】
別の態様において、本発明のRPE細胞は、GMPの規定の下で前もって誘導した、ヒト胚幹細胞もしくは他の能性幹細胞に由来する。ある実施形態において、ヒトES細胞は、任意で胚を破壊せずに、初期卵割期胚の1つ以上の分割球に由来する。別の実施形態において、ヒトES細胞は、ヒト胚幹細胞のライブラリに由来する。特定の実施形態において、当該のヒト胚幹細胞のライブラリは、ヒト集団内に存在する少なくとも1つのMHC対立遺伝子についてそれぞれがヘミ接合性、ホモ接合性、もしくはヌル接合性である幹細胞を含み、当該のヒト胚幹細胞のライブラリの各メンバは、ライブラリの残りのメンバに対する異なる組のMHC対立遺伝子についてヘミ接合性、ホモ接合性、もしくはヌル接合性である。さらなる実施形態において、ヒト胚幹細胞のライブラリは、ヒト集団内に存在する全てのMHC対立遺伝子についてヘミ接合性、ホモ接合性、もしくはヌル接合性である幹細胞を含む。特定の他の実施形態において、本発明は、ヒト集団内に存在する少なくとも1つのMHC対立遺伝子についてそれぞれがヘミ接合、ホモ接合、もしくはヌル接合であるRPE細胞のライブラリであって、当該のRPE細胞のライブラリの各メンバが、ライブラリの残りのメンバに対する異なる組のMHC対立遺伝子についてヘミ接合、ホモ接合、もしくはヌル接合であるRPE細胞のライブラリを提供する。さらなる実施形態において、本発明は、ヒト集団内に存在する全てのMHC対立遺伝子についてヘミ接合性、ホモ接合性、もしくはヌル接合性であるヒトPRE細胞のライブラリを提供する。
【0050】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、当該の実質的に精製したRPE細胞(成熟RPE細胞の有無に関わらず)の培養物は、貯蔵のために冷凍される。細胞は、例えば極低温冷凍といった従来技術において公知のあらゆる適切な方法によって貯蔵されてもよく、また、細胞の貯蔵に適切な任意の温度で冷凍されてもよい。例えば、細胞は、約−20℃、−80℃、−120℃、もしくは細胞の貯蔵に適切な任意の温度で冷凍されてもよい。極低温冷凍細胞は、適切な容器内に貯蔵され、細胞損傷のリスクを低減し、かつ解凍しても細胞が生存している可能性を最大化するように貯蔵する準備がなされる。他の実施形態では、RPE細胞を、室温に保つ、もしくは、例えば約4℃で冷蔵することができる。
【0051】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、ヒトRPE細胞は、適正製造基準(GMP)に従って生成される。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞がそこから分化されるヒト胚幹細胞を、適正製造基準(GMP)に従って誘導したものとした。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞がそこから分化されるヒト胚幹細胞を、残りの胚を破壊せずに初期胚から取り出される1つ以上の分割球に由来するものとした。このように、本発明は、実質的に精製したRPE細胞の製剤を含む、GMPに準拠したRPE細胞の製剤を提供する。このような製剤は、実質的にウイルス、細菌、および/または菌類の汚染または感染の無いものである。
【0052】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞の組成物もしくは製剤が、少なくとも1×10
5個のRPE細胞、少なくとも5×10
5個のRPE細胞、少なくとも1×10
6個のRPE細胞、少なくとも5×10
6個のRPE細胞、少なくとも1×10
7個のRPE細胞、少なくとも2×10
7個のRPE細胞、少なくとも3×10
7個のRPE細胞、少なくとも4×10
7個のRPE細胞、少なくとも5×10
7個のRPE細胞、少なくとも6×10
7個のRPE細胞、少なくとも7×10
7個のRPE細胞、少なくとも8×10
7個のRPE細胞、少なくとも9×10
7個のRPE細胞、少なくとも1×10
8個のRPE細胞、少なくとも2×10
8個のRPE細胞、少なくとも5×10
8個のRPE細胞、少なくとも7×10
8個のRPE細胞、もしくは少なくとも1×10
9個のRPE細胞を含む。特定の実施形態では、製剤内のRPE細胞の数が、成熟度のレベルに関わらず、かつ分化したRPE細胞および成熟分化したRPE細胞の相対的割合に関わらず、分化したRPE細胞を含む。他の実施形態では、製剤内のRPE細胞の数が、分化したRPE細胞もしくは成熟RPE細胞のどちらかの数を指す。
【0053】
特定の実施形態において、当該方法は、移植に好適なRPE細胞の製剤を生成するように、分化したRPE細胞および/または分化した成熟RPE細胞を製剤化する工程をさらに含む。
【0054】
別の態様において、本発明は、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防する方法であって、RPE細胞を含む有効量の製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、該RPE細胞が、ヒト多能性幹細胞に由来する、方法を提供する。特定の実施形態では、RPE細胞が、本明細書で説明される方法のうちのいずれかを使用して誘導される。網膜変性を特徴とする状態には、例えば、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症(乾燥型もしくは滲出型)、糖尿病性網膜症、および網膜色素変性症が挙げられる。
【0055】
特定の実施形態では、製剤を前もって凍結保存しておき、移植前に解凍した。
【0056】
特定の実施形態では、治療方法は、シクロスポリンもしくは1つ以上の他の免疫抑制剤の投与をさらに含む。使用時に、免疫抑制剤は、全身的もしくは局所的に投与されてもよく、またそれらは、RPE細胞の投与前に、それと同時に、もしくはその後に投与されてもよい。特定の実施形態では、免疫抑制療法が、RPE細胞の投与後に、数週間、数ヶ月間、数年間、もしくは無制限に継続する。
【0057】
特定の実施形態では、治療方法が、単一用量のRPE細胞の投与を含む。他の実施形態では、治療方法が、ある期間にわたってRPE細胞が複数回投与される治療過程を含む。例示的な治療過程は、毎週、隔週、毎月、年4回、年2回、または、年1回の治療を含み得る。あるいは、治療は、並行して進める場合があり、それによって、最初に複数回投与(例えば、1週目における1日用量)が必要になり、その後回数および用量を減らすことが必要である。数多くの治療計画が意図される。
【0058】
特定の実施形態では、投与したRPE細胞が、分化したRPE細胞と成熟RPE細胞との混合集団を含む。他の実施形態では、投与したRPE細胞が、分化したRPE細胞もしくは成熟RPE細胞のどちらかの実質的に精製した集団を含む。例えば、投与したRPE細胞は、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、もしくは1%未満の他のRPE細胞型を含有し得る。
【0059】
特定の実施形態では、RPE細胞が、薬剤として許容される担体もしくは補形剤内で製剤化される。
【0060】
特定の実施形態では、RPE細胞を含む製剤が、懸濁液、マトリクス、もしくは基質内に移植される。特定の実施形態では、製剤が、眼の網膜下腔への注射によって投与される。特定の実施形態では、製剤が、経角膜的に投与される。特定の実施形態では、約10
4〜約10
6個の細胞が対象に投与される。特定の実施形態において、当該方法は、対象における網膜電図応答、視運動視力閾値、もしくは輝度閾値を測定することによって、治療もしくは予防の有効性を監視する工程をさらに含む。当該方法は、細胞の免疫原性もしくは眼の細胞の遊走を監視することによって、治療または予防の有効性を監視する工程も含み得る。
【0061】
特定の態様において、本発明は、有効量のRPE細胞を含む、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防するための医薬製剤であって、RPE細胞が、ヒト胚幹細胞もしくは他の多能性幹細胞に由来する、医薬製剤を提供する。医薬製剤は、投与の経路に従って、薬剤として許容される担体内で製剤化され得る。例えば、製剤は、眼の網膜下腔もしくは角膜への投与のために製剤化され得る。組成物は、少なくとも10
4、10
5、5×10
5、6×10
5、7×10
5、8×10
5、9×10
5、10
6、2×10
6、3×10
6、4×10
6、5×10
6、6×10
6、7×10
6、8×10
6、9×10
6、もしくは10
7個のRPE細胞を含み得る。特定の実施形態では、組成物が、少なくとも2×10
7、5×10
7、6×10
7、7×10
7、8×10
7、9×10
7、1×10
8個のRPE細胞を含み得る。特定の実施形態では、RPE細胞が、成熟RPE細胞を含む場合があり、したがって、細胞数は、分化したRPE細胞および成熟分化したRPE細胞の両方の合計を含む。
【0062】
別の態様において、本発明は、RPE細胞の生存を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするための方法を提供する。例えば、ヒト胚幹細胞から分化したRPE細胞は、RPEの生存を促進する薬剤をスクリーニングするのに使用することができる。同定した薬剤は、治療計画の一部として単独で、もしくはRPE細胞と組み合わせて使用することができる。あるいは、同定した薬剤は、インビトロで分化したRPE細胞の生存を高める培養方法の一部として使用することができる。
【0063】
別の態様において、本発明は、RPE細胞の成熟度を調節する薬剤を同定するためにスクリーニングするための方法を提供する。例えば、ヒトES細胞から分化したRPE細胞は、RPEの成熟を促進する薬剤をスクリーニングするのに使用することができる。
【0064】
上述した特定の実施形態のいずれにおいても、当該方法は、適正製造基準(GMP)に従って実行される。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞がそこから分化されるヒト胚幹細胞を、適正製造基準(GMP)に従って誘導したものとした。上述した特定の実施形態のいずれにおいても、RPE細胞がそこから分化されるヒト胚幹細胞を、残りの胚を破壊せずに初期胚から取り出される1つ以上の分割球に由来するものとした。
【0065】
別の態様において、本発明は、RPE細胞を生成するための出発材料もしくはその製剤を、ヒト胚幹細胞の代わりに、他の型のヒト多能性幹細胞とすることができることを意図している。一例として、本発明は、hESの特徴を有する、含まれる人工多能性幹(iPS)細胞を、本明細書で説明される方法を使用してRPE細胞を分化させるための出発材料として同様に使用できることを意図している。このようなiPS細胞は、細胞バンクから得るか、あるいは前もって誘導することができる。あるいは、iPS細胞は、RPE細胞に対する分化を始める前に、新たに発生させることができる。
【0066】
ある実施形態では、iPS細胞を含む、多能性幹細胞から分化したRPE細胞もしくは製剤が、治療法で使用される。
【0067】
本発明は、上述もしくは下述の態様および実施形態の任意の組み合わせを意図している。例えば、分化したRPE細胞および成熟RPE細胞の任意の組み合わせを含むRPE細胞の製剤は、本明細書で説明される疾患および状態のうちのいずれかの治療で使用することができる。同様に、出発材料としてヒト胚幹細胞を使用した、RPE細胞を生成するための本明細書で説明される方法は、出発材料として任意のヒト多能性幹細胞を使用して同様に実行され得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
実質的に精製した網膜色素上皮(RPE)細胞の培養物を生成する方法であって、
a)ヒト胚幹細胞を提供する工程と、
b)富栄養性で低タンパク質の培地内で、胚様体として前記ヒト性幹細胞を培養する工程と、
c)富栄養性で低タンパク質の培地内で、付着培養物として前記胚様体を培養する工程と、
d)培地が無血清のB−27サプリメントを含有しない、富栄養性で低タンパク質の培地内で、前記(c)の細胞の付着培養物を培養する工程と、
e)高密度体細胞培養物の成長を支持することができ、それによってRPE細胞が前記細胞の培養物内に現れる培地内で、前記(d)の細胞を培養する工程と、
f)前記(e)の培養物と酵素とを接触させる工程と、
g)前記培養物から前記RPE細胞を選択して、前記RPE細胞を、成長因子を補充した培地を含有する別個の培養物に移入して、RPE細胞の富化培養物を生成する工程と、
h)前記RPE細胞の富化培養物を繁殖させて、実質的に精製したRPE細胞の培養物を生成する工程と、
を含む、方法。
(項目2)
前記RPE細胞は、成熟RPE細胞の培養物を生成するようにさらに培養される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記(b)および/または(c)の培地は、無血清のB−27サプリメントを含有する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記細胞は、VP−SFM、EGM−2、およびMDBK−MMから成る群より選択される培地内で培養される、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記(g)の成長因子は、EGF、bFGF、VEGF、および組み換え型のインスリン様成長因子から成る群より選択される、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記培地は、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、もしくはアスコルビン酸のうちの1つ以上を含有する、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記(b)の細胞は、7〜14日間培養される、項目1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記(c)の細胞は、7日間培養される、項目1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記(d)の細胞は、7〜10日間培養される、項目1〜8のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記(e)の細胞は、14〜21日間培養される、項目1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記(b)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目1〜10のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記(c)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目1〜11のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記(d)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目1〜12のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記(e)の培地は、MDBK−MM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目1〜13のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記(g)の培地は、EGM−2およびMDBK−MMから成る群より選択される、項目1〜14のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記(g)の成長因子は、EGF、bFGF、VEGF、および組み換え型のインスリン様成長因子から成る群より選択される、項目1〜15のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記(g)の培地は、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、もしくはアスコルビン酸のうちの1つ以上を含有する、項目1〜16のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記(f)の酵素は、トリプシン、コラゲナーゼ、およびディスパーゼから成る群より選択される、項目1〜17のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記hES細胞は、複雑さを低減したHLA抗原を有する、項目1〜18のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記方法は、適正製造基準(GMP)に従って実施される、項目1〜19のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
成熟網膜色素上皮(RPE)細胞を生成する方法であって、
a)ヒト胚幹細胞を提供する工程と、
b)富栄養性で低タンパク質の培地内で、胚様体として前記ヒト胚幹細胞を培養する工程と、
c)富栄養性で低タンパク質の培地内で、付着培養物として前記ヒト胚幹細胞を培養する工程と、
d)培地が無血清のB−27サプリメントを含有しない、富栄養性で低タンパク質の培地内で、前記工程(c)の細胞の付着培養物を培養する工程と、
e)高密度体細胞培養物の成長を支持することができ、それによってRPE細胞が前記細胞の培養物内に現れる培地内で、前記(d)の細胞を培養する工程と、
f)前記(e)の培養物と酵素とを接触させる工程と、
g)前記RPE細胞を選択して、前記RPE細胞を、成長因子を補充した培地を含有する別個の培養物に移入して、RPE細胞の富化培養物を生成する工程と、
h)前記RPE細胞の富化培養物を繁殖させる工程と、
i)前記RPE細胞の富化培養物を培養して、成熟網膜色素上皮細胞を生成して、成熟RPE細胞を生成する工程と、
を含む、方法。
(項目22)
前記(b)および/または(c)の培地は、無血清のB−27サプリメントを含有する、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記(b)の細胞は、7〜14日間培養される、項目21もしくは22に記載の方法。
(項目24)
前記(c)の細胞は、7日間培養される、項目21〜23のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記(d)の細胞は、7〜10日間培養される、項目21〜24のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記(e)の細胞は、(e)14〜21日間培養される、項目21〜25のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記(b)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目21〜26のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記(c)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目21〜27のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記(d)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目21〜28のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記(e)の培地は、MDBK−MM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目21〜29のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記(g)の培地は、EGM−2およびMDBK−MMから成る群より選択される、項目21〜30のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記(g)の成長因子は、EGF、bFGF、VEGF、および組み換え型のインスリン様成長因子から成る群より選択される、項目21〜31のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記(i)の細胞は、VP−SFM、EGM−2、およびMDBK−MMから成る群より選択される培地内で培養される、項目21〜32のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記(g)もしくは(i)の培地は、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、もしくはアスコルビン酸のうちの1つ以上を含有する、項目21〜33のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記(f)の酵素は、トリプシン、コラゲナーゼ、およびディスパーゼから成る群より選択される、項目21〜34のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記hES細胞は、複雑さを低減したHLA抗原を有する、項目21〜35のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記方法は、適正製造基準(GMP)に従って実行される、項目21〜36のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防する方法であって、RPE細胞を含む有効量の製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、RPE細胞が、項目1〜37もしくは53〜76のうちのいずれか1項に記載の方法による、ヒト多能性幹細胞に由来する、方法。
(項目39)
前記状態は、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症、もしくは網膜色素変性症から成る群より選択される、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記製剤は、懸濁液、マトリクス、もしくは基質内に移植される、項目38もしくは39に記載の方法。
(項目41)
前記製剤は、注射によって眼の網膜下腔内に投与される、項目38〜40のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
約10
4〜約10
6個のRPE細胞が前記対象に投与される、項目38〜41のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
対象における網膜電図応答、視運動視力閾値、もしくは輝度閾値を測定することによって、治療もしくは予防の有効性を監視する工程をさらに含む、項目38〜42のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
有効量のRPE細胞を含む、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防するための医薬製剤であって、RPE細胞が、項目1〜37もしくは53〜76のうちのいずれか1項に記載の方法による、ヒト多能性幹細胞に由来する、医薬製剤。
(項目45)
前記状態は、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症、もしくは網膜色素変性症から成る群より選択される、項目44に記載の製剤。
(項目46)
組成物は、眼の網膜下腔への投与のために製剤化される、項目44もしくは45に記載の製剤。
(項目47)
前記組成物は、懸濁液、マトリクス、もしくは基質の形態である、項目44〜46のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目48)
前記組成物は、少なくとも10
4個のRPE細胞を含む、項目44〜47のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目49)
前記組成物は、少なくとも10
5個のRPE細胞を含む、項目44〜48のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目50)
前記組成物は、少なくとも10
6個のRPE細胞を含む、項目44〜49のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目51)
前記RPE細胞は、成熟RPE細胞を含む、項目44〜50のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目52)
前記RPE細胞は、本質的に成熟RPE細胞で構成される、項目44〜51のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目53)
実質的に精製した網膜色素上皮細胞(RPE)の培養物を生成する方法であって、
a)ヒト多能性幹細胞を提供する工程と、
b)富栄養性で低タンパク質の培地内で、前記ヒト多能性幹細胞を培養する工程と、
c)富栄養性で低タンパク質の培地内で、付着培養物として前記ヒト多能性幹細胞を培養する工程と、
d)培地が無血清のB−27サプリメントを含有しない、富栄養性で低タンパク質の培地内で、前記(c)の細胞の付着培養物を培養する工程と、
e)高密度体細胞培養物の成長を支持することができ、それによってRPE細胞が前記細胞の培養物内に現れる培地内で、前記(d)の細胞を培養する工程と、
f)前記(e)の培養物と酵素とを接触させる工程と、
g)前記培養物から前記RPE細胞を選択して、前記RPE細胞を、成長因子を補充した培地を含有する別個の培養物に移入して、RPE細胞の富化培養物を生成する工程と、
h)前記RPE細胞の富化培養物を繁殖させて、実質的に精製したRPE細胞の培養物を生成する工程と、
を含む、方法。
(項目54)
前記RPE細胞は、成熟RPE細胞の培養物を生成するようにさらに培養される、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記ヒト多能性幹細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である、項目53もしくは54に記載の方法。
(項目56)
工程(b)において、前記ヒト多能性幹細胞が、凝集物として培養される、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記ヒト多能性幹細胞は、ヒト胚幹細胞である、項目53〜56のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
工程(b)において、前記ヒト胚幹細胞が、胚様体として培養される、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記(b)および/または(c)の培地は、無血清のB−27サプリメントを含有する、項目53〜58のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記細胞は、VP−SFM、EGM−2、およびMDBK−MMから成る群より選択される培地内で培養される、項目54に記載の方法。
(項目61)
前記(g)の成長因子は、EGF、bFGF、VEGF、および組み換え型のインスリン様成長因子から成る群より選択される、項目54に記載の方法。
(項目62)
前記培地は、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、もしくはアスコルビン酸のうちの1つ以上を含有する、項目54に記載の方法。
(項目63)
前記(b)の細胞は、7〜14日間培養される、項目53〜62のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記(c)の細胞は、7日間培養される、項目53〜63のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目65)
前記(d)の細胞は、7〜10日間培養される、項目53〜64のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記(e)の細胞は、14〜21日間培養される、項目53〜65のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記(b)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目53〜66のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目68)
前記(c)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目53〜67のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目69)
前記(d)の培地は、MDBK−GM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目53〜68のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
前記(e)の培地は、MDBK−MM、OptiPro SFM、およびVP SFMから成る群より選択される、項目53〜69のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
前記(g)の培地は、EGM−2およびMDBK−MMから成る群より選択される、項目53〜70のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目72)
前記(g)の成長因子は、EGF、bFGF、VEGF、および組み換え型のインスリン様成長因子から成る群より選択される、項目53〜71のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目73)
前記(g)の培地は、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、もしくはアスコルビン酸のうちの1つ以上を含有する、項目53〜72のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
前記(f)の酵素は、トリプシン、コラゲナーゼ、およびディスパーゼから成る群より選択される、項目53〜73のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目75)
前記多能性細胞は、複雑さを低減したHLA抗原を有する、項目53〜74のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目76)
前記方法は、適正製造基準(GMP)に従って実行される、項目53〜75のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目77)
網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防する方法であって、RPE細胞を含む有効量の製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、RPE細胞が、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞に由来する、方法。
(項目78)
前記状態は、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症、もしくは網膜色素変性症から成る群より選択される、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記製剤は、懸濁液、マトリクス、もしくは基質内に移植される、項目77もしくは78に記載の方法。
(項目80)
前記製剤は、注射によって前記眼の前記網膜下腔内に投与される、項目77〜79のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目81)
約10
4〜約10
6個のRPE細胞が前記対象に投与される、項目77〜80のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目82)
対象における網膜電図応答、視運動視力閾値、もしくは輝度閾値を測定することによって、治療もしくは予防の有効性を監視する工程をさらに含む、項目77〜81のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目83)
有効量のRPE細胞を含む、網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防するための医薬製剤であって、RPE細胞が、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞に由来する、医薬製剤。
(項目84)
前記状態は、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症、もしくは網膜色素変性症から成る群より選択される、項目83に記載の製剤。
(項目85)
前記組成物は、眼の網膜下腔への投与のために製剤化される、項目83もしくは84に記載の製剤。
(項目86)
前記組成物は、懸濁液、マトリクス、もしくは基質の形態である、項目83〜85のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目87)
前記組成物は、少なくとも10
4個のRPE細胞を含む、項目83〜86のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目88)
前記組成物は、少なくとも10
5個のRPE細胞を含む、項目83〜87のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目89)
前記組成物は、少なくとも10
6個のRPE細胞を含む、項目83〜88のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目90)
前記RPE細胞は、成熟RPE細胞を含む、項目83〜89のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目91)
前記RPE細胞は、本質的に成熟RPE細胞で構成される、項目83〜90のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目92)
実質的に精製したヒトRPE細胞の製剤であって、前記RPE細胞が、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fのうちの1つ以上を発現する、製剤。
(項目93)
前記製剤は、少なくとも75%のRPE細胞を含む、項目92に記載の製剤。
(項目94)
前記RPE細胞は、少なくとも30%の成熟RPE細胞を含む、項目92に記載の製剤。
(項目95)
前記RPE細胞は、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fのうちの2つ以上を発現する、項目92〜94のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目96)
前記RPE細胞は、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fのうちの3つ以上を発現する、項目95に記載の製剤。
(項目97)
前記RPE細胞は、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fのうちの4つ以上を発現する、項目96に記載の製剤。
(項目98)
前記RPE細胞は、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fのうちの5つ以上を発現する、項目97に記載の製剤。
(項目99)
前記RPE細胞は、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fを発現する、項目98に記載の製剤。
(項目100)
前記RPE細胞は、ES細胞遺伝子Oct−4、nanog、および/またはRex−1の実質的な発現が不足する、項目92〜99のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目101)
前記発現は、mRNA発現である、項目92〜100のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目102)
前記発現は、タンパク質発現である、項目92〜100のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目103)
前記発現は、mRNAおよびタンパク質発現の両方を含む、項目92〜100のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目104)
前記RPE細胞は、pax−2、pax−6、チロシナーゼのうちの1つ以上を発現する、項目92〜100のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目105)
前記製剤は、成熟RPE細胞を含み、前記成熟RPE細胞は、pax−2、pax−6、およびチロシナーゼを発現する、項目92〜100のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目106)
前記RPE細胞は、表2に列記される遺伝子のうちの1つ以上を発現し、ヒトES細胞での発現と比較して、前記RPE細胞で前記1つ以上の遺伝子の発現が増加する、項目92〜105のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目107)
前記RPE細胞は、表3に列記される遺伝子のうちの1つ以上を発現し、ヒトES細胞での発現と比較して、前記RPE細胞で前記1つ以上の遺伝子の発現が減少する、項目92〜106のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目108)
前記製剤は、少なくとも1×10
5個のRPE細胞を含む、項目92〜107のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目109)
前記製剤は、少なくとも1×10
6個のRPE細胞を含む、項目108に記載の製剤。
(項目110)
前記製剤は、ヒトES細胞から分化される、項目92〜109のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目111)
前記製剤は、ヒト人工多能性幹細胞から分化される、項目92〜109のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目112)
前記製剤は、項目1〜37もしくは53〜76のうちのいずれか1項に記載の方法を使用して、ヒト多能性幹細胞から分化される、項目92〜109のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目113)
前記製剤は、実質的にウイルス、細菌、および/または菌類の汚染もしくは感染が無い、項目92〜112のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目114)
前記製剤は、GMPに準拠する、項目92〜113のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目115)
薬剤として許容される担体内で製剤化される、項目92〜114のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目116)
前記眼への投与のために製剤化される、項目115に記載の製剤。
(項目117)
前記網膜下腔または角膜への投与のために製剤化される、項目116に記載の製剤。
(項目118)
前記RPE細胞は、移植の際に前記網膜内に組み込むことができる、機能RPE細胞である、項目92〜117のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目119)
少なくとも1×10
5個のヒトRPE細胞を含む凍結保存製剤であって、前記製剤は、ヒト多能性幹細胞に由来する実質的に精製したヒトRPE細胞の製剤であり、前記RPE細胞は、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2、およびMit−Fを発現する、製剤。
(項目120)
前記ヒトRPE細胞は、ヒト胚幹細胞に由来する、項目119に記載の製剤。
(項目121)
前記ヒトRPE細胞は、人工多能性幹細胞に由来する、項目119に記載の製剤。
(項目122)
前記RPE細胞のうちの少なくとも65%は、解凍後も生存度を維持する、項目119〜121のうちのいずれか1項に記載の製剤。
(項目123)
治療を必要とする患者の状態を治療する薬物の製造における、項目92〜118のうちのいずれか1項に記載の製剤の使用。
(項目124)
網膜変性を特徴とする状態を治療もしくは予防する方法であって、項目92〜118のうちのいずれか1項に記載の有効量の製剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、RPE細胞が、ヒト多能性幹細胞に由来する、方法。
(項目125)
前記状態は、スタルガルト黄斑ジストロフィ、加齢性黄斑変性症、もしくは網膜色素変性症から成る群より選択される、項目124に記載の方法。
(項目126)
前記製剤は、懸濁液、マトリクス、もしくは基質内に移植される、項目124もしくは125に記載の方法。
(項目127)
前記製剤は、注射によって前記眼の前記網膜下腔内に投与される、項目124〜126のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目128)
約10
4〜約10
6個のRPE細胞が前記対象に投与される、項目124〜127のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目129)
対象における網膜電図応答、視運動視力閾値、もしくは輝度閾値を測定することによって、治療もしくは予防の有効性を監視する工程をさらに含む、項目124〜128のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目130)
ヒト多能性幹細胞から分化される実質的に精製したヒトRPE細胞の製剤であって、前記RPE細胞は、mRNAおよびタンパク質レベルにおいて、RPE−65、ベストロフィン、PEDF、CRALBP、Otx2を発現し、前記細胞は、Oct−4、nanog、およびRex−1の実質的な発現が不足する、製剤。
(項目131)
前記RPE細胞は、分化したRPE細胞と成熟分化したRPE細胞とを含み、少なくとも前記分化したRPE細胞は、mRNAおよびタンパク質レベルにおいて、pax−2、pax−6、チロシナーゼをさらに発現する、項目130に記載の製剤。
(項目132)
前記RPE細胞は、ヒト胚幹細胞から分化される、項目130もしくは131に記載の製剤。
(項目133)
前記RPE細胞は、ヒト人工多能性幹細胞から分化される、項目130もしくは131に記載の製剤。
(項目134)
前記RPE細胞は、分化したRPE細胞と成熟分化したRPE細胞とを含み、少なくとも前記分化したRPE細胞は、mRNAおよびタンパク質レベルにおいて、pax−2、pax−6、チロシナーゼをさらに発現する、項目130〜133のうちのいずれか1項に記載の製剤。