特許第6137664号(P6137664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6137664-ハンドミキサーのアタッチメント 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137664
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ハンドミキサーのアタッチメント
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/044 20060101AFI20170522BHJP
   A47J 43/07 20060101ALI20170522BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A47J43/044
   A47J43/07
   B01F7/16 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-252694(P2012-252694)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-100632(P2014-100632A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100098109
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】池垣 育雄
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0064523(US,A1)
【文献】 特開2000−184971(JP,A)
【文献】 実開平02−057137(JP,U)
【文献】 実開平02−029637(JP,U)
【文献】 実開昭58−191995(JP,U)
【文献】 実公昭29−000985(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/00 − 7/32
A47J 42/00 − 44/02
A21C 1/00 − 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置に連結される回転軸と、該回転軸に取付けられた複数の攪拌羽根とを含み、少なくとも1つの攪拌羽根は半環状に形成され、且つその撹拌羽根は、その撹拌羽根に形成した長手方向に延びる開口により2つに分かれた一方の部分を、内側に膨出するように曲げて形成された補助攪拌羽根と、その補助撹拌羽根の残りの部分である半環状の主撹拌羽根と、を有するハンドミキサーのアタッチメントであって、この撹拌羽根は、片仮名のコ字形をなす半環状に曲げ形成され、平面をなす下面部を有し、補助撹拌羽根、撹拌羽根の前記平面をなす下面部から垂直に立ち上がり可能となるように、前記開口は、撹拌羽根の下側の端部付近まで延びており、その垂直に延びる直線部分を経て、途中で屈曲しながら主撹拌羽根に至り、長手方向に延びる開口により2つに分かれた他方の部分も垂直に延びる直線部分を有し、その他方の部分と補助撹拌羽根とにより被撹拌物の通路が形成されていることを特徴とするハンドミキサーのアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭で使用されるハンドミキサーの撹拌用アタッチメントに関し、特にマヨネーズやドレッシングやスープを作るために適したアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撹拌用アタッチメントの中には、特許文献1や特許文献2に記載されているように、複数の半環状攪拌羽根を有し、回転の最も外側を回転する外側攪拌羽根と、それよりも内側で撹拌作用をなす内側攪拌羽根を有するアタッチメントが開示されている。特許文献1は、外側を回転する攪拌羽根と、その内側の領域を回転する攪拌羽根とが同じ攪拌羽根に形成されているものでなく、外側を回転する攪拌羽根が通過してから90度回転した後に、別の攪拌羽根がその内側を通過する構成である。したがって、外側の攪拌羽根と内側の攪拌羽根が、一定の位置を通過するときに協働して撹拌作用をするものでなく、外側と内側の攪拌羽根が、一定の位置に対して時間をずらしてそれぞれ独自に撹拌作用をなすものである。このように、一定の位置で外側の撹拌と内側の撹拌がほぼ同時に行われることがないので、2つの攪拌羽根の協働によって可能になる複雑な液体の流れを生じさせることができず、効率良い撹拌作用が得られない。
【0003】
特許文献2は、外側攪拌羽根の内側に内側攪拌羽根が取り付けられているので、外側攪拌羽根と内側攪拌羽根とが同時に協働して撹拌作用をするものである。そして、内側攪拌羽根の両端はそれぞれ回転軸に結合されている。一般的なハンドミキサーに使用されるアタッチメントは、攪拌羽根と回転軸が金属で形成されているから、少なくとも攪拌羽根の上端部を回転軸に取り付けるためには、特別の金具を介在させて溶接等で結合するので、取り付けに手間がかかるのである。特許文献2の内側攪拌羽根は、その両端がそれぞれ回転軸に結合されており、攪拌羽根と回転軸を金属で形成したときは、内側攪拌羽根の上下2か所で金具を用いた溶接作業が必要となり、非常に手間がかかるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−29637号公報
【特許文献2】実開昭63−183938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、外側の攪拌羽根と内側の攪拌羽根との協働により撹拌の効率が良く、内側の攪拌羽根の取付け乃至形成に手間がかからないアタッチメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、駆動装置に連結される回転軸と、該回転軸に取付けられた複数の攪拌羽根とを含み、少なくとも1つの攪拌羽根は半環状に形成され、且つその撹拌羽根は、その撹拌羽根に形成した長手方向に延びる開口により2つに分かれた一方の部分を、内側に膨出するように曲げて形成された補助攪拌羽根と、その補助撹拌羽根の残りの部分である半環状の主撹拌羽根と、を有するハンドミキサーのアタッチメントであって、この撹拌羽根は、片仮名のコ字形をなす半環状に曲げ形成され、平面をなす下面部を有し、補助撹拌羽根、撹拌羽根の前記平面をなす下面部から垂直に立ち上がり可能となるように、前記開口は、撹拌羽根の下側の端部付近まで延びており、その垂直に延びる直線部分を経て、途中で屈曲しながら主撹拌羽根に至り、長手方向に延びる開口により2つに分かれた他方の部分も垂直に延びる直線部分を有し、その他方の部分と補助撹拌羽根とにより被撹拌物の通路が形成されている構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、駆動装置に連結される回転軸と、該回転軸に取付けられた複数の攪拌羽根とを含み、少なくとも1つの攪拌羽根は半環状に形成され、且つその撹拌羽根は、その撹拌羽根に形成した長手方向に延びる開口により2つに分かれた一方の部分を、内側に膨出するように曲げて形成された補助攪拌羽根と、その補助撹拌羽根の残りの部分である半環状の主撹拌羽根と、を有するハンドミキサーのアタッチメントであって、この撹拌羽根は、片仮名のコ字形をなす半環状に曲げ形成され、平面をなす下面部を有し、補助撹拌羽根、撹拌羽根の前記平面をなす下面部から垂直に立ち上がり可能となるように、前記開口は、撹拌羽根の下側の端部付近まで延びており、その垂直に延びる直線部分を経て、途中で屈曲しながら主撹拌羽根に至り、長手方向に延びる開口により2つに分かれた他方の部分も垂直に延びる直線部分を有し、その他方の部分と補助撹拌羽根とにより被撹拌物の通路が形成されている。補助攪拌羽根が主攪拌羽根から内側に延びているので、攪拌羽根の回転中に、その主攪拌羽根と補助攪拌羽根は一定位置をほぼ同時に通過する。したがって、この撹拌は、主撹拌羽根と補助撹拌羽根との2つの攪拌羽根の協働による撹拌であるから、1枚の攪拌羽根による攪拌の場合に比べて、両攪拌羽根に囲まれた部分が液体に複雑な流れを生じさせることが可能で、効率良く撹拌することができる。
【0008】
また、本発明は以上のような構成であるから、補助攪拌羽根が、主攪拌羽根の少なくとも下方の部分には存在している。例えば、ドレッシングを作るときに、みじん切りにした玉ねぎを加えたり、コーンスープを作るときに牛乳にコーンを加えたりするが、このような場合、玉ねぎやコーンは容器の底に沈む。したがって、主攪拌羽根の下半部に補助攪拌羽根があれば、その補助攪拌羽根が容器の底に沈んでいる玉ねぎ等を効率的に撹拌することができる。また、このアタッチメントは、被撹拌物を単に混ぜ合わせることに使用された場合も、主攪拌羽根と補助攪拌羽根とが協働して効率的に撹拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の斜視図である。
図2図2は、本発明の側面図である。
図3図3は、中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
アタッチメント1は、駆動装置に連結される回転軸2と、4つの攪拌羽根3,3,4,4とを有する。対向する攪拌羽根3,3は、一枚の細長い金属板を環状に曲げることにより形成される。攪拌羽根3,3の上側端部5,5が回転軸2の下端部に取り付けられている連結金具6,7の間に固着されることにより、攪拌羽根3,3は回転軸に取り付けられる。他方の対向する攪拌羽根4,4も攪拌羽根3,3と同様にして回転軸2に取り付けられる。攪拌羽根3,3の下側端部13と攪拌羽根4,4の下側端部14は、重なり合って十字形に交差し、交差部分で溶接により固着されている。
【0011】
次に、攪拌羽根3,3,4,4の構成について説明するが、それら4つの攪拌羽根の構成は下側端部の交差部分を除き同一であるから、以下、1つの攪拌羽根3について説明する。攪拌羽根3は、一枚の細長い金属板を環状に曲げることにより形成された2つの攪拌羽根3,3の一方が該当する。攪拌羽根3は、半環状に形成された主攪拌羽根8と、その主攪拌羽根8に一体に形成されている補助攪拌羽根9とから成る。攪拌羽根3の細長い金属板からの形成方法は、その細長い金属板を環状に曲げる前に、まず、長手方向に延びる長さの等しい長孔状の2つの開口10,11を穿設する。開口10,11を穿設することにより、上側の開口10の下端と下側の開口11の上端の間にリブ12が形成される。また、攪拌羽根3は、開口10,11により2つに分かれて平行に延びる部分が形成され、最終的にその一方の部分が補助攪拌羽根9となる。このようにして、開口10,10,11,11が穿設された細長い金属板を環状に曲げることによって、半環状の攪拌羽根3の原形が形成されるが、それと同時に、下側の開口11により分かれた平行に延びる部分の一方をプレスして内側に膨出させることにより、補助攪拌羽根9が形成される。補助攪拌羽根9が形成されたとき、当初は長孔状であった下側の開口11は、図1又は図2に示すように形を変え、主攪拌羽根8とそれよりも内側の補助攪拌羽根9との間に被撹拌物の小さな通路15が構成される。このように、本実施例では、小さな通路15を構成している主攪拌羽根8の部分と補助攪拌羽根9とが攪拌羽根3の径方向にずれていると共に、その回転方向にもずれている。このようにして補助攪拌羽根9が形成され、その残された部分が主攪拌羽根8となって攪拌羽根3が形成される。
【0012】
攪拌羽根3の主攪拌羽根8は、片仮名のコ字形をなす半環状に曲げ形成されているので、攪拌羽根3の上面部16と下面部17はそれぞれ平面をなしている。攪拌羽根3の上側の開口10は、攪拌羽根3のリブ12から上側の端部5付近まで延び、下側の開口11は、攪拌羽根3のリブ12から下側の端部13付近まで延びている。補助攪拌羽根9は、攪拌羽根3の下面部17から垂直に立ち上がり、途中で屈曲しながらリブ12付近まで延びている。補助攪拌羽根9の垂直に延びる直線部分と、主攪拌羽根8の垂直に延びる直線部分との間の距離は、回転中心線と主攪拌羽根8の垂直に延びる直線部分との間の距離の約30%である。また、補助攪拌羽根9の高さ幅は、主攪拌羽根8の高さ幅の約40%である。このよう
15が画定される。なお、攪拌羽根3の高さ幅は約58mmであり、一対の攪拌羽根3,3の間の距離は約44mであるが、本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。
【0013】
本実施例のアタッチメント1は、被撹拌物を単に混ぜ合わせるほかに、マヨネーズやドレッシングやスープを作るために適している。例えば、マヨネーズを作る場合について詳述すると、まず、数個の卵黄と酢と塩コショウと小量の油を加えてアタッチメントで撹拌する。卵黄は粘性が高く、表面に被膜を有しているので他の材料とすぐにはなじみづらい。しかし、本実施例では被撹拌物の小さな通路15が攪拌羽根3の下半部にあるので、その通路15を通過する卵黄に対して、主攪拌羽根8とその内側の補助攪拌羽根9とがほとんど同時に2箇所で卵黄を切り裂くように回転してすぐに他の食材になじませることができ、効率的に撹拌することができる。そして、それらが良く混ざったところで、さらに撹拌しながら少しずつ油を足していく。この場合に、主攪拌羽根8と補助攪拌羽根9とが協働して、1箇所に少しずつ足される油を効率的に満遍なく分散して撹拌することができる。油の全量を加え終えてさらに混ぜ続けると、被撹拌物が乳化されるので、最後に酢を加えて撹拌する。材料のほぼ全量が容器に投入されて乳化したときは、攪拌羽根3の全体が被撹拌物の中につかるが、補助攪拌羽根9は攪拌羽根3の下半部だけにあって、攪拌羽根3の上半部にないので、その分、被撹拌物から受ける抵抗を抑制することができる。また、みじん切りにした玉ねぎ入りのドレッシングを作るときや、粒状コーン入りのコーンスープを作るときも、被撹拌物の下に沈んでいる玉ねぎやコーンを主攪拌羽根8とその内側の補助攪拌羽根9の2枚の羽根がほぼ同時に撹拌するから、一つの攪拌羽根で撹拌するよりも効率的に撹拌することができる。また、これらのドレッシングやコーンスープが乳化に近い状態になるまで撹拌されたときに、攪拌羽根3の上半部に補助攪拌羽根9がないので、マヨネーズを作るときと同様に、被撹拌物から受ける抵抗を抑制することができる。
【0014】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、攪拌羽根3の高さ幅に対する補助攪拌羽根9の高さ幅の割合は、20%から80%の間の割合としてもよく、好ましくは、実施例のように40%とするほか、30%から60%の間の値とする。また、補助攪拌羽根9は内側に膨出しているが、その補助攪拌羽根9が延びている区間に該当する主攪拌羽根8の部分も内側に膨出させたものでもよい。ただし、主攪拌羽根8の膨出度は補助攪拌羽根9の膨出度を超えることはない。このように、その部分の主攪拌羽根8を内側に膨出させると、ボウルのように撹拌容器の内径が底に行くに従って小さくなる容器に使用したときに、主攪拌羽根8が容器の底近くの内面に当たりにくくなるという効果を奏する。また、補助攪拌羽根9の内側への膨出の度合を、攪拌羽根ごとに異なるものにしてもよい。その場合、各補助攪拌羽根の回転する位置が径方向に異なり、容器の底に近い部分を満遍なく撹拌することができるから撹拌効率が上昇する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
攪拌羽根3は、主攪拌羽根8のほかに補助攪拌羽根9を有しているので効率的に撹拌できると共に、補助攪拌羽根9の高さ幅を、主攪拌羽根8の高さ幅よりも小さくすることによって、撹拌中に被撹拌物が乳化したときに被撹拌物から受ける抵抗を抑制することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 アタッチメント、 2 回転軸、 3 攪拌羽根、 4 攪拌羽根、5 攪拌羽根の上側端部、 6 取付け金具、 7 取付け金具、 8 主攪拌羽根、 9 補助攪拌羽根、 10 開口、 11 開口、 12 リブ、 13 攪拌羽根の下側端部、 14 攪拌羽根の下側端部、 15 小さな通路、 16 攪拌羽根の上面部、 17 攪拌羽根の下面部
図1
図2
図3