(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マグネシウム化合物に対する前記第二の内部電子供与性化合物の接触量が、前記第二の内部電子供与性化合物のモル量/前記マグネシウム化合物のモル量で表わされる比で0.001〜10である請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
前記マグネシウム化合物に対する前記第三の内部電子供与性化合物の接触量が、前記第三の内部電子供与性化合物のモル量/前記マグネシウム化合物のモル量で表わされる比で0.001〜10である請求項1または請求項2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
前記第一の内部電子供与性化合物、第二の内部電子供与性化合物および第三の内部電子供与性化合物を、第一の内部電子供与性化合物のモル量>第二の内部電子供与性化合物のモル量≧第三の内部電子供与性化合物のモル量の関係を満たすように接触させる請求項1〜請求項3の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
前記第三の内部電子供与性化合物を、四価のチタンハロゲン化合物の含有割合が0〜5質量%に制御された不活性有機溶媒中で接触させる請求項1〜請求項4の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法について説明する。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、下記一般式(I);
(R
1)
jC
6H
4−j(COOR
2)(COOR
3) (I)
(式中、R
1は炭素数1〜8のアルキル基またはハロゲン原子を示し、R
2およびR
3は炭素数1〜12のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよく、また、置換基R
1の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R
1は同一であっても異なっていてもよい。)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルから選ばれる一種以上の第一の内部電子供与性化合物とを接触させ、反応させた後、洗浄する第一の工程を施し、得られた生成物に対し、
一種以上の第二の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させた後、洗浄する第二の工程を施し、その後、
四価のチタンハロゲン化合物と、一種以上の第三の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させる第三の工程を施すこと
を特徴とするものである。
【0019】
[第一の工程]
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、マグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムおよびアルコキシマグネシウムハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0020】
上記マグネシウム化合物の内、ジアルコキシマグネシウムまたはマグネシウムジハライドが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジイオダイド等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムおよびマグネシウムジクロライドが特に好ましい。
【0021】
上記マグネシウム化合物のうち、ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。
【0022】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であるものが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。
【0023】
ジアルコキシマグネシウムとして球状のものを使用した場合、より良好な粒子形状を有し(より球状で)狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時に生成した重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成した重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の発生を抑制することができる。
【0024】
上記の球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的には、その粒子の円形度が、3以下であるものが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1〜1.5であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度とは、ジアルコキシマグネシウム粒子を500個以上走査型電子顕微鏡により撮影し、撮影した粒子を画像解析処理ソフトにより処理することで各粒子の面積Sと周囲長Lを求め、各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度を下記式
各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度=4π×S÷L
2
により算出したときの算術平均値を意味し、粒子の形状が真円に近づくほど、円形度は1に近い値を示す。
【0025】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)で1〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましい。
ジアルコキシマグネシウムが球状である場合、上記平均粒径は1〜100μmであることが好ましく、5〜60μmであることがより好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。
【0026】
また、ジアルコキシマグネシウムの粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものであることが好ましい。
具体的には、ジアルコキシマグネシウムは、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、5μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、100μm以上の粒子が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径、D10は体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径である。)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0027】
上記球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報等に例示されている。
【0028】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、マグネシウム化合物は、反応時に溶液状または懸濁液状であることが好ましく、溶液状または懸濁液状であることにより、反応を好適に進行させることができる。
【0029】
上記マグネシウム化合物が固体である場合には、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒に溶解することにより溶液状のマグネシウム化合物とすることができ、またはマグネシウム化合物の可溶化能を有さない溶媒に懸濁することによりマグネシウム化合物懸濁液とすることができる。
なお、マグネシウム化合物が液体状である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよいし、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にさらに溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよい。
【0030】
固体のマグネシウム化合物を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、エチレングリコールなどの炭素原子数が1〜18のアルコール、トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数が1〜18のハロゲン含有アルコール、メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルベンジルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素原子数が2〜20のエーテル、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウムなどの金属酸エステルなどが挙げられ、中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2−エチルヘキサノールが特に好ましい。
【0031】
一方、固体のマグネシウム化合物に対して可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒から選ばれる一種以上が挙げられる。
飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒は、安全性や工業的汎用性が高いことから、具体的にはヘキサン、ヘプタン、デカン、メチルヘプタンなどの沸点50〜200℃の直鎖状または分岐鎖状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの沸点50〜200℃の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物が挙げられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの沸点50〜200℃の直鎖状脂肪族炭化水素化合物や、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物が、好適である。
【0032】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第一の工程で使用する四価のチタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(V)
Ti(OR
10)
rX
4−r (V)
(式中、R
10は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の一種以上であることが好適である。
【0033】
チタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが挙げられる。
また、アルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が挙げられる。
四価のチタンハロゲン化合物としては、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0034】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程において、下記一般式(I)
(R
1)
jC
6H
4−j(COOR
2)(COOR
3) (I)
(式中、R
1は炭素数1〜8のアルキル基またはハロゲン原子を示し、R
2およびR
3は炭素数1〜12のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよく、また、置換基R
1の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R
1は同一であっても異なっていてもよい。)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステル(フタル酸ジエステルまたは置換基を有するフタル酸ジエステル)から選ばれる一種以上の第一の内部電子供与性化合物を使用する。
【0035】
一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R
1は、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基である。
【0036】
R
1がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる一種以上の原子が挙げられる。
【0037】
R
1が炭素数1〜8のアルキル基である場合、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0038】
R
1としては、メチル基、臭素原子、フッ素原子が好ましく、メチル基、臭素原子がより好ましい。
【0039】
一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R
2およびR
3は炭素数1〜12のアルキル基であり、R
2およびR
3は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0040】
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基である。この中でもエチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基を挙げることができ、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基であることが好ましい。
【0041】
一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、置換基R
1の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R
1(2つのR
1)は同一であっても異なっていてもよい。
jが0である場合、一般式(I)で表わされる化合物はフタル酸ジエステルであり、jが1または2である場合、一般式(I)で表わされる化合物は置換フタル酸ジエステルである。
jが1の場合、一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R
1が、ベンゼン環の3位、4位または5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
jが2の場合、一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R
1が、ベンゼン環の4位および5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
【0042】
一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジテキシル、フタル酸メチルエチル、フタル酸(エチル)n−プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n−ブチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸(エチル)n−ペンチル、フタル酸エチルイソペンチル、フタル酸エチルネオペンチル、フタル酸(エチル)n−ヘキシル等のフタル酸ジエステル、4−クロロフタル酸ジエチル、4−クロロフタル酸ジ−n−プロピル、4−クロロフタル酸ジイソプロピル、4−クロロフタル酸ジ−n−ブチル、4−クロロフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−プロピル、4−ブロモフタル酸ジイソプロピル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル等のハロゲン置換フタル酸ジエステル、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−プロピル、4−メチルフタル酸ジイソプロピル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチル、4−メチルフタル酸ジイソブチル等のアルキル置換フタル酸ジエステル等が挙げられる。
【0043】
上記芳香族ジカルボン酸ジエステルの中でも、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸(エチル)n−プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n−ブチル、フタル酸エチルイソブチル、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−プロピル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソペンチルおよび4−ブロモフタル酸ジネオペンチル等が好ましく、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸(エチル)n−プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n−ブチル、フタル酸エチルイソブチル、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−プロピル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジイソペンチルおよび4−ブロモフタル酸ジネオペンチルがより好ましい。
【0044】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルから選ばれる一種以上の第一の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させた後、洗浄する。
【0045】
第一の工程において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルを接触させ、反応させる処理は、不活性有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。
上記不活性有機溶媒としては、常温(20℃)下で液体で、かつ沸点50〜150℃であるものが好ましく、常温下で液体で、かつ沸点50〜150℃である芳香族炭化水素化合物または飽和炭化水素化合物がより好ましい。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下で液体で、沸点が50〜150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
【0046】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルは、適宜不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、接触させることができる。
【0047】
第一の工程においては、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルを接触させ、反応させる。
上記反応時の温度は、0〜130℃が好ましく、40〜130℃がより好ましく、30〜120℃がさらに好ましく、80〜120℃が一層好ましい。また、反応時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間〜6時間がさらに好ましく、30分間〜5時間が一層好ましく、1〜4時間がより一層好ましい。
【0048】
第一の工程においては、上記反応に先だって低温熟成を施してもよい。
【0049】
低温熟成は、反応時の温度よりも低温で各成分を接触させる予備反応であって、低温熟成時の温度は、−20〜70℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、−10〜30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間〜6時間が好ましく、5分間〜4時間がより好ましく、30分間〜3時間がさらに好ましい。
【0050】
第一の工程において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルを接触、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5〜100モルであることが好ましく、1〜50モルであることがより好ましく、1〜10モルであることがさらに好ましい。
【0051】
第一の工程において、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルを接触、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する一般式(I)で表される芳香族ジカルボン酸ジエステルの使用量は、0.01〜10モルであることが好ましく、0.01〜1モルであることがより好ましく、0.02〜0.6モルであることがさらに好ましい。
また、第一の工程で不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルに対し、0.001〜500モルであることが好ましく、0.5〜100モルであることがより好ましく、1.0〜20モルであることがさらに好ましい。
【0052】
第一の工程において、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記反応終了後、反応生成物は、反応液を静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にした上で、洗浄処理することが好ましい。
【0053】
上記反応終了後、反応液を静置し、上澄み液を適宜除去した上で、得られた反応生成物を洗浄処理する。
上記洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。
洗浄液としては、第一の工程で適宜使用する上記不活性有機溶媒と同様のものを挙げることができ、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の常温下で液体、かつ、沸点が50〜150℃の直鎖脂肪族炭化水素化合物や、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の常温下で液体、かつ、沸点が50〜150℃の環式脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の常温下で液体、かつ、沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記洗浄液を使用することにより、反応物中から、副生成物や不純物を容易に溶解し、除去することができる。
【0054】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程における洗浄処理は、0〜120℃の温度下で行うことが好ましく、0〜110℃の温度下で行うことがより好ましく、30〜110℃の温度下で行うことがさらに好ましく、50〜110℃の温度下で行うことが一層好ましく、50〜100℃の温度下で行うことがより一層好ましい。
【0055】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、洗浄処理は、反応生成物に対して所望量の洗浄液を加えて攪拌した後、フィルトレーション法(濾過法)もしくはデカンテーション法により、液相を除去することにより行うことが好ましい。
また、後述するように、洗浄回数が複数回(2回以上)である場合には、反応生成物に対して最後に添加した洗浄液を除去することなく、そのまま次工程の反応に供することもできる。
【0056】
第一の工程において、洗浄液の使用量は、反応生成物1gあたり1〜500mLであることが好ましく、3〜200mLであることがより好ましく、5〜100mLであることがさらに好ましい。
【0057】
洗浄回数は複数回であってもよく、洗浄回数は1〜20回が好ましく、2〜15回がより好ましく、2〜10回がさらに好ましい。
洗浄回数が複数回である場合であっても、洗浄液は、洗浄ごとに上述した量を使用することが好ましい。
【0058】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程において各成分を接触、反応させた後、洗浄処理することにより、反応生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン−カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
上記反応終了後、適宜、洗浄処理後の懸濁液を静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にしてもよいし、懸濁液の状態のまま第二の工程に供してもよい。懸濁液の状態のまま第二の工程に供した場合には、乾燥処理を省略できるとともに、第二の工程において不活性有機溶媒を加えることを省略することができる。
【0059】
[第二の工程]
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、上記第一の工程を施し、得られた生成物に対し、一種以上の第二の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させた後、洗浄する第二の工程を施す。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程で得られた生成物に対し、予備処理等を施した上で第二の工程を施してもよいが、予備処理等を施すことなく、第二の工程を連続的に施すことが好ましい。
【0060】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第二の工程で使用する第二の内部電子供与性化合物は、2以上の電子供与性部位を有する珪素を含まない有機化合物から選ばれる一種以上であることが適当である。電子供与性部位の例として、水酸基(−OH)、カルボニル基(>C=O)、エーテル結合(−OR)、アミノ基(−NH
2、−NHR、−NHRR’)、シアノ基(−CN)、イソシアネート基(−N=C=O)、アミド結合(−C(=O)NH−,−C(=O)NR−)が挙げられる。カルボニル基(>C=O)には、アルデヒド基(−(C=O)H)、カルボキシ基(−(C=O)OH)、ケト基(−(C=O)R)、カーボネート基(−O−(C=O)O)、エステル結合(−C(C=O)OR)、ウレタン結合(−NH−(C=O)O−)等が含まれる。これらの中でも、ポリカルボン酸エステル類などのエステル類や、ジエーテル類、エーテルカーボネート類等のエーテル化合物が好ましい。これらの内部電子供与性化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0061】
第二の工程で使用するポリカルボン酸エステル類としては、カルボン酸ジエステルや、分子骨格を形成する炭素原子に結合する水素原子の一部を他の基に置換した置換カルボン酸ジエステルを挙げることができる。
【0062】
カルボン酸ジエステルとしては、具体的には、フタル酸ジエステル、イソフタル酸ジエステル等の芳香族ジカルボン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、マロン酸ジエステル、グルタル酸ジエステル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル類、シクロアルカンジカルボン酸ジエステル、シクロアルケンジカルボン酸ジエステルの脂環式ジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。
また、置換カルボン酸ジエステルとしては、具体的には、水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたハロゲン置換カルボン酸ジエステル、水素原子が炭素数1〜8のアルキル基で置換されたアルキル置換カルボン酸ジエステル、水素原子がハロゲン原子および炭素数1〜8のアルキル基で置換されたハロゲン化アルキル置換カルボン酸ジエステル等が挙げられる。
置換カルボン酸ジエステルとしては、具体的には、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルを構成するシクロアルキル基の水素原子の一部がアルキル基等に置換された、置換基を有するシクロアルカンジカルボン酸ジエステル、置換マロン酸ジエステル、アルキル置換マレイン酸ジエステル等が挙げられる。
【0063】
第二の内部電子供与性化合物として芳香族ジカルボン酸ジエステルを使用する場合、芳香族ジカルボン酸ジエステルとしては、上述した一般式(I)で規定される芳香族ジカルボン酸ジエステルと同様のものを挙げることができる。
【0064】
第二の内部電子供与性化合物としてコハク酸ジエステルを使用する場合、コハク酸ジエステルとしては、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル等が挙げられ、コハク酸ジエチルまたは2,3−ジイソプロプルコハク酸ジエチルが好ましい。
【0065】
第二の内部電子供与性化合物としてマレイン酸ジエステルを使用する場合、マレイン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ペンチル、マレイン酸ジネオペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル等を例示することができ、これらの中でも、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、及びマレイン酸ジイソブチルが好ましい。
第二の内部電子供与性化合物としてアルキル置換マレイン酸ジエステルを使用する場合、アルキル置換マレイン酸ジエステルとしては、イソプロピルブロモマレイン酸ジエチル、ブチルブロモマレイン酸ジエチル、イソブチルブロモマレイン酸ジエチル、ジイソプロピルマレイン酸ジエチル、ジブチルマレイン酸ジエチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、ジイソペンチルマレイン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマレイン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマレイン酸ジメチル、(3−クロロ−n−プロピル)マレイン酸ジエチル、ビス(3−ブロモ−n−プロピル)マレイン酸ジエチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル等を例示することができ、これらの中でも、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル及びジイソブチルマレイン酸ジエチルが好ましい。
【0066】
第二の内部電子供与性化合物としてマロン酸ジエステルを使用する場合、マロン酸ジエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジ−n−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ−n−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジネオペンチル等が挙げられ、これらの中でもマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルまたはマロン酸ジイソブチルが好ましい。
また、第二の内部電子供与性化合物としては、置換マロン酸ジエステルが好適である。
第二の内部電子供与性化合物として置換マロン酸ジエステルを使用する場合、置換マロン酸ジエステルとしては、アルキル置換マロン酸ジエステル、ハロゲン置換マロン酸ジエステル、ハロゲン化アルキル置換マロン酸ジエステル等が挙げられ、上記の中でも、アルキル置換マロン酸ジエステルおよびハロゲン置換マロン酸ジエステルが好ましく、アルキル置換マロン酸ジエステルがより好ましい。
【0067】
上記アルキル置換マロン酸ジエステルとしては、メチルマロン酸ジメチル、メチルマロン酸ジエチル、メチルマロン酸ジプロピル、メチルマロン酸ジイソプロピル、メチルマロン酸ジブチル、メチルマロン酸ジイソブチル、メチルマロン酸ジネオペンチル、エチルマロン酸ジメチル、エチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジプロピル、エチルマロン酸ジイソプロピル、エチルマロン酸ジブチル、エチルマロン酸ジイソブチル、エチルマロン酸ジネオペンチル、プロピルマロン酸ジメチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジプロピル、イソプロピルマロン酸ジイソプロピル、イソプロピルマロン酸ジブチル、イソプロピルマロン酸ジイソブチル、イソプロピルマロン酸ジネオペンチル、イソブチルマロン酸ジメチル、イソブチルマロン酸ジエチル、イソブチルマロン酸ジプロピル、イソブチルマロン酸ジイソプロピル、イソブチルマロン酸ジブチル、イソブチルマロン酸ジイソブチル、イソブチルマロン酸ジネオペンチル、イソペンチルマロン酸ジメチル、イソペンチルマロン酸ジエチル、イソペンチルマロン酸ジプロピル、イソペンチルマロン酸ジイソプロピル、イソペンチルマロン酸ジブチル、イソペンチルマロン酸ジイソブチル、イソペンチルマロン酸ジネオペンチル等のモノアルキルマロン酸ジエステル、またはシクロペンチルメチルマロン酸ジメチル、シクロペンチルメチルマロン酸ジエチル、シクロペンチルメチルマロン酸ジプロピル、シクロペンチルメチルマロン酸ジイソプロピル、シクロペンチルメチルマロン酸ジブチル、シクロペンチルメチルマロン酸ジイソブチル、シクロペンチルメチルマロン酸ジネオペンチル、シクロペンチルエチルマロン酸ジメチル、シクロペンチルエチルマロン酸ジエチル、シクロペンチルエチルマロン酸ジプロピル、シクロペンチルエチルマロン酸ジイソプロピル、シクロペンチルエチルマロン酸ジブチル、シクロペンチルエチルマロン酸ジイソブチル、シクロペンチルエチルマロン酸ジネオペンチル、シクロペンチルプロピルマロン酸ジメチル、シクロペンチルイソプロピルマロン酸ジエチル、シクロペンチルイソプロピルマロン酸ジプロピル、シクロペンチルイソプロピルマロン酸ジイソプロピル、シクロペンチルイソプロピルマロン酸ジブチル、シクロペンチルイソプロピルマロン酸ジイソブチル、シクロペンチルイソプロピルマロン酸ジネオペンチル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジメチル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジエチル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジプロピル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジイソプロピル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジブチル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジイソブチル、シクロペンチルイソブチルマロン酸ジネオペンチル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジメチル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジエチル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジプロピル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジブチル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジイソブチル、シクロペンチルイソペンチルマロン酸ジネオペンチル、シクロヘキシルメチルマロン酸ジメチル、シクロヘキシルメチルマロン酸ジエチル、シクロヘキシルメチルマロン酸ジプロピル、シクロヘキシルメチルマロン酸ジイソプロピル、シクロヘキシルメチルマロン酸ジブチル、シクロヘキシルメチルマロン酸ジイソブチル、メチルマロン酸ジネオペンチル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジメチル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジエチル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジプロピル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジイソプロピル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジブチル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジイソブチル、シクロヘキシルエチルマロン酸ジネオペンチル、シクロヘキシルプロピルマロン酸ジメチル、シクロヘキシルイソプロピルマロン酸ジエチル、シクロヘキシルイソプロピルマロン酸ジプロピル、シクロヘキシルイソプロピルマロン酸ジイソプロピル、シクロヘキシルイソプロピルマロン酸ジブチル、シクロヘキシルイソプロピルマロン酸ジイソブチル、シクロヘキシルイソプロピルマロン酸ジネオペンチル、シクロヘキシルイソブチルマロン酸ジメチル、イソブチルマロン酸ジエチル、シクロヘキシルイソブチルマロン酸ジプロピル、シクロヘキシルイソブチルマロン酸ジイソプロピル、シクロヘキシルイソブチルマロン酸ジブチル、シクロヘキシルイソブチルマロン酸ジイソブチル、シクロヘキシルイソブチルマロン酸ジネオペンチル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジメチル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジエチル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジプロピル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジブチル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジイソブチル、シクロヘキシルイソペンチルマロン酸ジネオペンチル、フェニルメチルマロン酸ジメチル、フェニルメチルマロン酸ジエチル、フェニルメチルマロン酸ジプロピル、フェニルメチルマロン酸ジイソプロピル、フェニルメチルマロン酸ジブチル、フェニルメチルマロン酸ジイソブチル、フェニルメチルマロン酸ジネオペンチル、フェニルエチルマロン酸ジメチル、フェニルエチルマロン酸ジエチル、フェニルエチルマロン酸ジプロピル、フェニルエチルマロン酸ジイソプロピル、フェニルエチルマロン酸ジブチル、フェニルエチルマロン酸ジイソブチル、フェニルエチルマロン酸ジネオペンチル、フェニルプロピルマロン酸ジメチル、フェニルイソプロピルマロン酸ジエチル、フェニルイソプロピルマロン酸ジプロピル、フェニルイソプロピルマロン酸ジイソプロピル、フェニルイソプロピルマロン酸ジブチル、フェニルイソプロピルマロン酸ジイソブチル、フェニルイソプロピルマロン酸ジネオペンチル、フェニルイソブチルマロン酸ジメチル、フェニルイソブチルマロン酸ジエチル、フェニルイソブチルマロン酸ジプロピル、フェニルイソブチルマロン酸ジイソプロピル、フェニルイソブチルマロン酸ジブチル、フェニルイソブチルマロン酸ジイソブチル、フェニルイソブチルマロン酸ジネオペンチル、フェニルイソペンチルマロン酸ジメチル、フェニルイソペンチルマロン酸ジエチル、フェニルイソペンチルマロン酸ジプロピル、フェニルイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、フェニルイソペンチルマロン酸ジブチル、フェニルイソペンチルマロン酸ジイソブチル、フェニルイソペンチルマロン酸ジネオペンチル、ジイソプロピルマロン酸ジメチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジプロピル、ジイソプロピルマロン酸ジイソプロピル、ジイソプロピルマロン酸ジブチル、ジイソプロピルマロン酸ジイソブチル、ジイソプロピルマロン酸ジネオペンチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジプロピル、ジイソブチルマロン酸ジイソプロピル、ジイソブチルマロン酸ジブチル、ジイソブチルマロン酸ジイソブチル、ジイソブチルマロン酸ジネオペンチル、ジイソペンチルマロン酸ジメチル、ジイソペンチルマロン酸ジエチル、ジイソペンチルマロン酸ジプロピル、ジイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、ジイソペンチルマロン酸ジブチル、ジイソペンチルマロン酸ジイソブチル、ジイソペンチルマロン酸ジネオペンチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジメチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジプロピル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジイソプロピル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジブチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジイソブチル、イソプロピルイソブチルマロン酸ジネオペンチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジメチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジプロピル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジイソプロピル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジブチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジイソブチル、イソプロピルイソペンチルマロン酸ジネオペンチル等のジアルキルマロン酸ジエステル、
プロピリデンマロン酸ジメチル、プロピリデンマロン酸ジエチル、プロピリデンマロン酸ジ−n−プロピル、プロピリデンマロン酸ジイソブチル、プロピリデンマロン酸ジ−n−ブチル、ブチリデンマロン酸ジメチル、ブチリデンマロン酸ジエチル、ブチリデンマロン酸ジ−n−プロピル、ブチリデンマロン酸ジイソブチル、ブチリデンマロン酸ジ−n−ブチル、ペンチリデンマロン酸ジメチル、ペンチリデンマロン酸ジエチル、ペンチリデンマロン酸ジ−n−プロピル、ペンチリデンマロン酸ジイソブチル、ペンチリデンマロン酸ジ−n−ブチル、ヘキシリデンマロン酸ジメチル、ヘキシリデンマロン酸ジエチル、ヘキシリデンマロン酸ジ−n−プロピル、ヘキシリデンマロン酸ジイソブチル、ヘキシリデンマロン酸ジ−n−ブチル、(2−メチルプロピリデン)マロン酸ジメチル、(2−メチルプロピリデン)マロン酸ジエチル、(2−メチルプロピリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−メチルプロピリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−メチルプロピリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2,2−ジメチルプロピリデン)マロン酸ジエチル、(2−メチルブチリデン)マロン酸ジメチル、(2−メチルブチリデン)マロン酸ジエチル、(2−メチルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−メチルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−メチルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−エチルブチリデン)マロン酸ジメチル、(2−エチルブチリデン)マロン酸ジエチル、(2−エチルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−エチルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−エチルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−エチルペンチリデン)マロン酸ジメチル、(2−エチルペンチリデン)マロン酸ジエチル、(2−エチルペンチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−エチルペンチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−エチルペンチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−イソプロピルブチリデン)マロン酸ジメチル、(2−イソプロピルブチリデン)マロン酸ジエチル、(2−イソプロピルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−イソプロピルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−イソプロピルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(3−メチルブチリデン)マロン酸ジメチル、3−メチルブチリデン)マロン酸ジエチル、(3−メチルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(3−メチルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(3−メチルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2,3−ジメチルブチリデン)マロン酸ジメチル、(2,3−ジメチルブチリデン)マロン酸ジエチル、(2,3−ジメチルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2,3−ジメチルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2,3−ジメチルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−n−プロピルブチリデン)マロン酸ジメチル(2−n−プロピルブチリデン)マロン酸ジエチル、(2−n−プロピルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−n−プロピルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−n−プロピルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−イソブチル−3−メチルブチリデン)マロン酸ジメチル、(2−イソブチル−3−メチルブチリデン)マロン酸ジエチル、(2−イソブチル−3−メチルブチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−イソブチル−3−メチルブチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−イソブチル−3−メチルブチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−n−ブチルペンチリデン)マロン酸ジメチル、(2−n−ブチルペンチリデン)マロン酸ジエチル、(2−n−ブチルペンチリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−n−ブチルペンチリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−n−ブチルペンチリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−n−ペンチルヘキシリデン)マロン酸ジメチル、(2−n−ペンチルヘキシリデン)マロン酸ジエチル、(2−n−ペンチルヘキシリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−n−ペンチルヘキシリデン)マロン酸ジイソブチル、(2−n−ペンチルヘキシリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(シクロヘキシルメチレン)マロン酸ジメチル、(シクロヘキシルメチレン)マロン酸ジエチル、(シクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(シクロヘキシルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(シクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(シクロペンチルメチレン)マロン酸ジメチル、(シクロペンチルメチレン)マロン酸ジエチル、(シクロペンチルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(シクロペンチルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(シクロペンチルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−メチルプロピリデン)マロン酸ジメチル、(1−メチルプロピリデン)マロン酸ジエチル、(1−メチルプロピリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−メチルプロピリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−メチルプロピリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−エチルプロピリデン)マロン酸ジエチル、(ジ−t−ブチルメチレン)マロン酸ジメチル、(ジ−t−ブチルメチレン)マロン酸ジエチル、(ジ−t−ブチルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(ジ−t−ブチルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(ジ−t−ブチルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(ジイソブチルメチレン)マロン酸ジメチル、(ジイソブチルメチレン)マロン酸ジエチル、(ジイソブチルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(ジイソブチルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(ジイソブチルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(ジイソプロピルメチレン)マロン酸ジメチル、(ジイソプロピルメチレン)マロン酸ジエチル、(ジイソプロピルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(ジイソプロピルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(ジイソプロピルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(ジシクロペンチルメチレン)マロン酸ジメチル、(ジシクロペンチルメチレン)マロン酸ジエチル、(ジシクロペンチルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(ジシクロペンチルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(ジシクロペンチルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(ジシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジメチル、(ジシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジエチル、(ジシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(ジシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(ジシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、ベンジリデンマロン酸ジメチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジ−n−プロピル、ベンジリデンマロン酸ジイソブチル、ベンジリデンマロン酸ジ−n−ブチル、(1−メチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−メチルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−メチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−メチルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−メチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−エチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−エチルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−エチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−エチルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−エチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−n−プロピルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−n−プロピルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−n−プロピルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−n−プロピルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−n−プロピルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−イソプロピルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−n−ブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−n−ブチルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−n−ブチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−n−ブチルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−n−ブチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−イソブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−イソブチルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−イソブチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−イソブチルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−イソブチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−t−ブチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−t−ブチルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−t−ブチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−t−ブチルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−t−ブチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−n−ペンチルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−n−ペンチルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−n−ペンチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−n−ペンチルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−n−ペンチルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−メチルフェニルメチレン)マロン酸ジメチル、(2−メチルフェニルメチレン)マロン酸ジエチル、(2−メチルフェニルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−メチルフェニルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(2−メチルフェニルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(4−メチルフェニルメチレン)マロン酸ジメチル、(2,6−ジメチルフェニルメチレン)マロン酸ジメチル、(2,6−ジメチルフェニルメチレン)マロン酸ジエチル、(2,6−ジメチルフェニルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2,6−ジメチルフェニルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(2,6−ジメチルフェニルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−メチル−1−(2−メチルフェニル)メチレン)マロン酸ジメチル、(1−メチル−1−(2−メチルフェニル)メチレン)マロン酸ジエチル、(1−メチル−1−(2−メチルフェニル)メチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−メチル−1−(2−メチルフェニル)メチレン)マロン酸ジイソブチル、(1−メチル−1−(2−メチルフェニル)メチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2−メチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジメチル、(2−メチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジエチル、(2−メチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2−メチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(2−メチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(2,6−ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジメチル、(2,6−ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジエチル、(2,6−ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(2,6−ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(2,6−ジメチルシクロヘキシルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−メチル−1−(2−メチルシクロヘキシル)メチレン)マロン酸ジメチル、(1−メチル−1−(2−メチルシクロヘキシル)メチレン)マロン酸ジエチル、(1−メチル−1−(2−メチルシクロヘキシル)メチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−メチル−1−(2−メチルシクロヘキシル)メチレン)マロン酸ジイソブチル、(1−メチル−1−(2−メチルシクロヘキシル)メチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(ナフチルメチレン)マロン酸ジメチル、(ナフチルメチレン)マロン酸ジエチル、(ナフチルメチレン)マロン酸ジ−n−プロピル、(ナフチルメチレン)マロン酸ジイソブチル、(ナフチルメチレン)マロン酸ジ−n−ブチル、(1−n−ヘキシルベンジリデン)マロン酸ジメチル、(1−n−ヘキシルベンジリデン)マロン酸ジエチル、(1−n−ヘキシルベンジリデン)マロン酸ジ−n−プロピル、(1−n−ヘキシルベンジリデン)マロン酸ジイソブチル、(1−n−ヘキシルベンジリデン)マロン酸ジ−n−ブチル等のアルキリデンマロン酸ジエステルから選ばれる一種以上が挙げられる。
上記の中でもジアルキルマロン酸ジエステルまたはアルキリデンマロン酸ジエステルが好ましく、エチルシクロペンチルマロン酸ジメチル、エチルシクロペンチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル等のジアルキルマロン酸ジエステル、ベンジリデンマロン酸ジメチルまたはベンジリデンマロン酸ジエチル等のアルキリデンマロン酸ジエステルがより好ましい。
【0068】
第二の内部電子供与性化合物としてシクロアルカンジカルボン酸ジエステルを使用する場合、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルとしては、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロオクタン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロノナン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロノナン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、シクロデカン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、シクロデカン−1,3−ジカルボン酸ジエステルなどが挙げられる。
【0069】
これらの中でも、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルとしては、シクロアルカン−1,2−ジカルボン酸ジエステル構造を有する化合物が好ましく、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジヘプチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエチルおよびシクロデカン−1,2−ジカルボン酸ジエチルであることが好ましい。
【0070】
また、第二の内部電子供与性化合物としては、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルを構成するシクロアルキル基の水素原子の一部がアルキル基等に置換された、置換基を有するシクロアルカンジカルボン酸ジエステルを使用する場合、該置換基を有するシクロアルカンジカルボン酸ジエステルとしては、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチルなどが挙げられる。
【0071】
第二の内部電子供与性化合物としてシクロアルケンジカルボン酸ジエステルを使用する場合、シクロペンテンジカルボン酸ジエステル、シクロヘキセンジカルボン酸ジエステル、シクロヘプテンジカルボン酸ジエステル、シクロオクテンジカルボン酸ジエステル、シクロデセンジカルボン酸ジエステル、ビフェニルジカルボン酸ジエステル等が挙げられ、具体的には、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、1−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、1−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル等の1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、
4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、4−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル等の4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、
3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル等の3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、
3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル等の3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジエステル、
4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジデシル等の4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、
4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、5−シクロオクテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、6−シクロデセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル等が挙げられる。好ましいものは、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種または2種以上である。
【0072】
第二の内部電子供与性化合物としてジエーテル類を使用する場合、ジエーテル類としては、
下記一般式(VI)
R
11kH
(3−k)C−O−(CR
12R
13)
m−O−C R
14nH
(3−n) (VI)
(一般式(VI)中、R
11とR
14は、ハロゲン原子または炭素数1〜20の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよく、R
12とR
13は、水素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。炭素数1〜20の有機基は、酸素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、およびホウ素原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよく、炭素数1〜20の有機基が複数存在する場合、複数の有機基は互いに結合して環を形成していてもよく、kは0〜3の整数であり、kが2以上の整数である場合、複数個存在するR
11は互いに同一でも異なっていてもよく、mは1〜10の整数であり、mが2以上の整数である場合、複数個存在するR
12およびR
13はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nは0〜3の整数であり、nが2以上の整数である場合、複数個存在するR
14は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる化合物を用いることができる。
【0073】
一般式(VI)で表わされる化合物において、R
11またはR
14がハロゲン原子である場合、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。
また、R
11またはR
14が炭素数1〜20の有機基である場合、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0074】
一般式(VI)で表わされる化合物において、炭素数1〜20の有機基が複数存在する場合、複数の有機基は互いに結合して環を形成していてもよい。この場合、環を構成する複数の有機基としては、(1)R
11同士(kが2以上である場合)、(2)R
14同士(nが2以上である場合)、(3)R
12同士(mが2以上である場合)、(4)R
13同士(mが2以上である場合)、(5)R
11とR
12、(6)R
11とR
13、(7)R
11とR
14、(8)R
12とR
13、(9)R
12とR
14、(10)R
13とR
14の組み合せを挙げることができ、このうち、(8)R
12とR
13の組み合せが好ましく、R
12とR
13が互いに結合してフルオレン環等を形成しているものがより好ましい。
【0075】
一般式(VI)で表される化合物として、具体的には、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパンまたは9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(エトキシメチル)フルオレン、9−メトキシ−9−エトキシメチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジメチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジイソプロピルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−3,6−ジイソブチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2−イソブチル−7−イソプロピルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2−クロロ−7−イソプロピルフルオレン等が挙げられ、好ましくは、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等が挙げられ、より好ましくは、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。上記の中でも、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが好ましい。
【0076】
一般式(VI)で表わされる化合物において、kは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。kが2以上の整数である場合、複数個存在するR
11は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(VI)で表わされる化合物において、mは1〜10の整数であり、1〜8の整数であることが好ましく、1〜6の整数であることがより好ましい。mが2以上の整数である場合、複数個存在するR
12およびR
13は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(VI)で表わされる化合物において、nは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。nが2以上の整数である場合、複数個存在するR
14は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
第二の内部電子供与性化合物としてエーテルカーボネート類を使用する場合、エーテルカーボネート類としては、下記一般式(VII);
R
15−O−C(=O)−O−Z−OR
16 (VII)
(一般式(VII)中、R
15およびR
16は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基(但し、結合末端がC=N基であるものを除く)、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基(但し、結合末端がカルボニル基であるものを除く)、または結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基(但し、結合末端がC=P基であるものを除く)を示し、R
15およびR
16は同一であっても異なっていてもよく、Zは、炭素原子又は炭素鎖を介して結合する結合性基を示す。)で表わされる化合物を用いることができる。
【0078】
一般式(VII)で表わされる化合物において、R
15またはR
16が炭素数1〜20の直鎖状アルキル基である場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基が挙げられる。
【0079】
R
15またはR
16が炭素数3〜20の分岐アルキル基である場合、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12の分岐アルキル基が挙げられる。
【0080】
R
15またはR
16が炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基である場合、例えば、アリル基、3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、10−ドデセニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0081】
R
15またはR
16が炭素数3〜20の分岐アルケニル基である場合、例えば、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、2−エチル−3−ヘキセニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12の分岐アルケニル基が挙げられる。
【0082】
R
15またはR
16が炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基である場合、例えば、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n−プロピル基、ハロゲン化n−ブチル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−ヘキシル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−オクチル基、ハロゲン化ノニル基、ハロゲン化デシル基、ハロゲン置換ウンデシル基、ハロゲン置換ドデシル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
【0083】
R
15またはR
16が炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基である場合、例えば、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化2−エチルヘキシル基、ハロゲン化ネオペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
【0084】
R
15またはR
16が炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基である場合、例えば、2−ハロゲン化ビニル基,3−ハロゲン化アリル基、3−ハロゲン化−2−ブテニル基、4−ハロゲン化−3−ブテニル基、パーハロゲン化−2−ブテニル基、6−ハロゲン化−4−ヘキセニル基、3−トリハロゲン化メチル−2−プロペニル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12のハロゲン置換アルケニル基が挙げられる。
【0085】
R
15またはR
16が炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基である場合、例えば、3−トリハロゲン化−2−ブテニル基、2−ペンタハロゲン化エチル−3−ヘキセニル基、6−ハロゲン化−3−エチル−4−ヘキセニル基、3−ハロゲン化イソブテニル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基が挙げられる。
【0086】
R
15またはR
16が炭素数3〜20のシクロアルキル基である場合、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ブチルシクロペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられる。
【0087】
R
15またはR
16が炭素数3〜20のシクロアルケニル基である場合、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネン基、等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0088】
R
15またはR
16が炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基である場合、例えば、ハロゲン置換シクロプロピル基、ハロゲン置換シクロブチル基、ハロゲン置換シクロペンチル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンチル基、ハロゲン置換シクロヘキシル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキシル基、ハロゲン置換シクロヘプチル基、ハロゲン置換シクロオクチル基、ハロゲン置換シクロノニル基、ハロゲン置換シクロデシル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基が挙げられる。
【0089】
R
15またはR
16が炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基である場合、例えば、ハロゲン置換シクロプロペニル基、ハロゲン置換シクロブテニル基、ハロゲン置換シクロペンテニル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンテニル基、ハロゲン置換シクロヘキセニル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキセニル基、ハロゲン置換シクロヘプテニル基、ハロゲン置換シクロオクテニル基、ハロゲン置換シクロノネニル基、ハロゲン置換シクロデセニル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンテニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基が挙げられる。
【0090】
R
15またはR
16が炭素数6〜24の芳香族炭化水素基である場合、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、1,8−ジメチルナフチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0091】
R
15またはR
16が炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である場合、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化メチルフェニル基、トリハロゲン化メチルフェニル基、パーハロゲン化ベンジル基、パーハロゲン化フェニル基、2−フェニル−2−ハロゲン化エチル基、パーハロゲン化ナフチル基、4−フェニル−2,3−ジハロゲン化ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0092】
なお、前記一般式(VII)で表わされる化合物中、R
15またはR
16がハロゲン原子を含有する基である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子が挙げられる。
【0093】
また、R
15またはR
16が、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基(但し、結合末端がC=P基であるものを除く)である場合、例えば、ジメチルホスフィノメチル基、ジブチルホスフィノメチル基、ジシクロヘキシルホスフィノメチル基、ジメチルホスフィノエチル基、ジブチルホスフィノエチル基、ジシクロヘキシルホスフィノエチル基などのジアルキルホスフィノアルキル基、ジフェニルホスフィノメチル基、ジトリルホスフィノメチル基などのジアリールホスフィノアルキル基、ジメチルホスフィノフェニル基、ジエチルホスフィノフェニル基等のホスフィノ基置換アリール基などが挙げられ、好ましくは炭素数2〜12のリン含有炭化水素基が挙げられる。
【0094】
なお、R
15またはR
16の結合末端とは、一般式(VII)で表わされる化合物において、R
15またはR
16が結合する酸素原子側末端の原子又は基を意味する。
【0095】
R
15としては、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基または分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が好ましく、
炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましく、
炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がさらに好ましい。
【0096】
R
16としては、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のシクロアルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のシクロアルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または結合末端が−CH
2−である炭素数7〜12の芳香族炭化水素基が好ましく、
炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐アルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐アルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のシクロアルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のシクロアルケニル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、結合末端が−CH
2−である炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または結合末端が−CH
2−である炭素数7〜12の芳香族基炭化水素基がより好ましく、
炭素数1〜12の直鎖状炭化水素基、結合末端が−CH
2−である炭素数3〜12の分岐アルキル基、または結合末端が−CH
2−である炭素数7〜12の芳香族基炭化水素基がさらに好ましい。
【0097】
なお、R
16の結合末端とは、一般式(I)で表わされる化合物において、R
16が結合する酸素原子側末端を意味する。
【0098】
R
15およびR
16の組み合わせしては、上述した各基のうち、好ましいもの同士の組み合わせを挙げることができ、より好ましい同士の組み合せであることが好ましい。
【0099】
一般式(VII)で表わされる化合物において、Zは、カーボネート基とエーテル基(OR
16基)を結合する二価の結合性基である、炭素原子または炭素鎖を介して結合する結合性基であり、例えば、Zが結合する2つの酸素原子間を炭素鎖で結合する結合性基を挙げることができ、該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されている結合性基であることが好ましい。
【0100】
Zは、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、炭素数3〜20の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基または分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルケニレン基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、炭素数1〜24の窒素原子含有炭化水素基、炭素数1〜24の酸素原子含有炭化水素基、または炭素数1〜24のリン含有炭化水素基であることが好ましい。
【0101】
Zは、炭素数2のエチレン基、炭素数3〜12の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基または分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基、炭素数3〜12のシクロアルケニレン基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基、炭素数2〜12の窒素原子含有炭化水素基、炭素数2〜12の酸素原子含有炭化水素基、または炭素数2〜12のリン含有炭化水素基であり、
特に好ましい基は、炭素数2のエチレン基および炭素数3〜12の分岐アルキレン基から選ばれる2座の結合性基であることがより好ましい(なお、2座の結合性基とは、Zが結合する2つの酸素原子間が炭素鎖で結合され、当該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されているものを意味する)。
【0102】
Zが炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基である場合、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基など挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12の直鎖状アルキレン基である。更に好ましくはエチレン基が挙げられる。
Zの炭素数3〜20の分岐アルキレン基である場合、例えば、1−メチルエチレン基、2−メチルトリメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルヘキサメチレン基、4−メチルヘプタメチレン基、4−メチルオクタメチレン基、5−メチルノナメチレン基、5−メチルデカメチレン基、6−メチルウンデカメチレン基、7−メチルドデカメチレン基、7−メチルトリデカメチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐アルキレン基が挙げられる、より好ましくは、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基が挙げられる。
【0103】
Zが炭素数3〜20の直鎖状アルケニレン基である場合、例えば、プロペニレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、オクタデセニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状アルケニレン基が挙げられる。
【0104】
Zが炭素数3〜20の分岐アルケニレン基である場合、例えば、イソプロペニレン基、1−エチルエテニレン基、2−メチルプロペニレン基、2,2−ジメチルブテニレン基、3−メチル−2−ブテニレン基、3−エチル−2−ブテニレン基、2−メチルオクテニレン基、2,4−ジメチル−2−ブテニレン基などが挙げられ、好ましくは、連結部がエテニレン基である炭素数3〜12の分岐アルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、イソプロペニレン基、1−エチルエテニレン基が挙げられる。
【0105】
Zが炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、ジクロロメチレン基、クロロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラクロロエチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、ジクロロエチレン基、ジフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基が挙げられる。
【0106】
Zが炭素数1〜20の分岐ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、1,2−ビスクロロメチルエチレン基、2,2−ビス(クロロメチル)プロピレン基、1,2−ビスジクロロメチルエチレン基、1,2−ビス(トリクロロメチル)エチレン基、2,2−ジクロロプロピレン基、1,1,2,2−テトラクロロエチレン基、1−トリフルオロメチルエチレン基、1−ペンタフルオロフェニルエチレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、1−クロロエチルエチレン基、1−トリフルオロメチルエチレン基、1,2−ビス(クロロメチル)エチレン基が挙げられる。
【0107】
Zが炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基である場合、例えば、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基、3,3−ジクロロプロペニレン基、1,2−ジフルオロプロペニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基が挙げられる。
【0108】
Zが炭素数1〜20の分岐ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、3,4−ジクロロ−1,2−ブチレン基、2,2−ジクロロ−1,3−ブチレン基、1,2−ジフルオロ−1,2−プロピレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、クロロメチルエテニレン基、トリフルオロメチルエテニレン基、3,4−ジクロロ−1,2−ブテニレン基が挙げられる。
【0109】
Zが炭素数3〜20のシクロアルキレン基である場合、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロプロピレン基、2−メチルシクロプロピレン基、シクロブチレン基、2,2−ジメチルシクロブチレン基、2,3−ジメチルシクロペンチレン基、1,3,3−トリメチルシクロヘキシレン基、シクロオクチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルキレン基が挙げられ、より好ましくは、1,2−シクロアルキレン基、あるいは炭化水素基置換−1,2−シクロアルキレン基が挙げられる。
【0110】
Zが炭素数3〜20のシクロアルケニレン基である場合、例えば、シクロペンテニレン基、2,4−シクロペンタジエニレン基、シクロヘキセニレン基、1,4−シクロヘキサジエニレン基、シクロヘプテニレン基、メチルシクロペンテニレン基、メチルシクロヘキセニレン基、メチルシクロヘプテニレン基、ジシクロデシレン基、トリシクロデシレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、1,2−シクロアルケニレン基、あるいは炭化水素基置換−1,2−シクロアルケニレン基が挙げられる。
【0111】
Zが炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキレン基である場合、例えば、3−クロロ−1,2−シクロペンチレン基、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−シクロヘキシレン基、3,3−ジクロロ−1,2−シクロプロピレン基、2−クロロメチルシクロプロピレン基、3,4−ジクロロ−1,2−シクロブチレン基、3,3−ビス(ジクロロメチル)−1,2−シクロブチレン基、2,3−ビス(ジクロロメチル)シクロペンチレン基、1,3,3−トリス(フルオロメチル)−1,2−シクロヘキシレン基、3−トリクロロメチル−1,2−シクロオクチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキレン基が挙げられる。
【0112】
Zが炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニレン基である場合、例えば、5−クロロ−1,2−シクロ−4−ヘキセニレン基、3,3,4,4−テトラフルオロ−1,2−シクロ−6−オクテニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニレン基が挙げられる。
【0113】
Zが炭素数6〜24の芳香族炭化水素基である場合、例えば、1,2−フェニレン、3−メチル−1,2−フェニレン、3,6−ジメチル−1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、2,3−ナフチレン、5−メチル−1,2−ナフチレン、9,10−フェナンスリレン、1,2−アントラセニレン等が挙げられ、好ましくは、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0114】
Zが炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である場合、例えば、3−クロロ−1,2−フェニレン、3−クロロメチル−1,2−フェニレン、3,6−ジクロロ−1,2−フェニレン、3,6−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,2−フェニレン、3−クロロ−1,2−ナフチレン、3−フルオロ−1,2−ナフチレン、3,6−ジクロロ−1,2−フェニレン、3,6−ジフルオロ−1,2−フェニレン、3,6−ジブロモ−1,2−フェニレン、1−クロロ−2,3−ナフチレン、5−クロロ−1,2−ナフチレン、2,6−ジクロロ−9,10−フェナンスリレン、5,6−ジクロロ−1,2−アントラセニレン、5,6−ジフルオロ−1,2−アントラセニレン等が挙げられ、好ましくは、炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0115】
Zが炭素数1〜24の窒素原子含有炭化水素基である場合、例えば、1−ジメチルアミノエチレン基、1,2−ビスジメチルミノエチレン基、1−ジエチルアミノエチレン基、2−ジエチルアミノ−1,3−プロピレン基、2−エチルアミノ−1,3−プロピレン基、4−ジメチルアミノ−1,2−フェニレン基、4,5−ビス(ジメチルアミノ)フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12の窒素原子含有炭化水素基が挙げられる。
【0116】
Zが炭素数1〜24の酸素原子含有炭化水素基である場合、例えば、1−メトキシエチレン基、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパニレン基、2−エトキシ−1,3−プロパニレン基、2−t−ブトキシ−1,3−プロパニレン基、2,3−ジメトキシ−2,3−ブチレン基、4−メトキシ−1,2−フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜12の酸素原子含有炭化水素基が挙げられる。
【0117】
Zが炭素数1〜24のリン含有炭化水素基である場合、例えば、1−ジメチルホスフィノエチレン基、2,2−ビス(ジメチルホスフィノ)−1,3−プロパニレン基、2−ジエチルホスフィノ−1,3−プロパニレン基、2−t−ブトキメチルホスフィノ−1,3−プロパニレン基、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,3−ブチレン基、4−メチルホスフェート−1,2−フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜12のリン含有炭化水素基が挙げられる。
【0118】
なお、Zがシクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ハロゲン置換シクロアルキレン基、ハロゲン置換シクロアルケニレン基、芳香族炭化水素基またはハロゲン置換芳香族炭化水素基等の環状の基である場合、Zが結合する2つの酸素原子間は炭素鎖で結合され、該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されている結合性基とは、環状を構成する炭素鎖の中の隣接する2個の炭素鎖が、当該Zが結合する2つの酸素原子間にある炭素鎖であることを意味する。
【0119】
一般式(VII)で表される化合物の具体例としては、
2−メトキシエチルメチルカーボネート、2−エトキシエチルメチルカーボネート、2−プロポキシエチルメチルカーボネート、2−(2−エトキシエチルオキシ)エチルメチルカーボネート、2−ベンジルオキシエチルメチルカーボネート、
(2−メトキシプロピル)メチルカーボネート、2−エトキシプロピルメチルカーボネート、
2−メチル(2−メトキシ)ブチルメチルカーボネート、2−メチル(2−エトキシ)ブチルメチルカーボネート、
2−メチル(2−メトキシ)ペンチルメチルカーボネート、2−メチル(2−エトキシ)ペンチルメチルカーボネート、
1−フェニル(2−メトキシ)プロピルカーボネート、1−フェニル(2−エトキシ)プロピルメチルカーボネート、1−フェニル(2−ベンジルオキシ)プロピルメチルカーボネート、
1−フェニル(2−メトキシ)エチルメチルカーボネート、1−フェニル(2−エトキシ)エチルメチルカーボネート、
1−メチル−1−フェニル(2−メトキシ)エチルメチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−エトキシ)エチルメチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−ベンジルオキシ)エチルメチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−(2−エトキシエチルオキシ))エチルメチルカーボネート、
2−メトキシエチル−エチルカーボネート、2−エトキシエチル−エチルカーボネート
1−フェニル(2−メトキシ)エチル−エチルカーボネート、1−フェニル(2−エトキシ)エチル−エチルカーボネート、1−フェニル(2−プロポキシ)エチル−エチルカーボネート、1−フェニル(2−ブトキシ)エチル−エチルカーボネート、1−フェニル(2−イソブチルオキシ)エチル−エチルカーボネート、1−フェニル(2−(2−エトキシエチルオキシ))エチル−エチルカーボネート、
1−メチル−1−フェニル(2−メトキシ)エチル−エチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−エトキシ)エチル−エチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−プロポキシ)エチル−エチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−ブトキシ)エチル−エチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−イソブチルオキシ)エチル−エチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−ベンジルオキシ)エチル−エチルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−(2−エトキシエチルオキシ))エチル−エチルカーボネート、
2−メトキシエチルフェニルカーボネート、2−エトキシエチルフェニルカーボネート、2−プロポキシエチルフェニルカーボネート、2−ブトキシエチルフェニルカーボネート、2−イソブチルオキシエチルフェニルカーボネート、2−ベンジルオキシエチルフェニルカーボネート、2−(2−エトキシエチルオキシ)エチルフェニルカーボネート、2−メトキシエチル−p−メチルフェニルカーボネート、2−エトキシエチル−p−メチルフェニルカーボネート、2−プロポキシエチル−p−メチルフェニルカーボネート、2−ブトキシエチル−p−メチルフェニルカーボネート、2−イソブチルオキシエチル−p−メチルフェニルカーボネート、2−ベンジルオキシエチル−p−メチルフェニルカーボネート、2−(2−エトキシエチルオキシ)エチル−p−メチルフェニルカーボネート、
2−メトキシエチル−o−メチルフェニルカーボネート、2−エトキシエチル−o−メチルフェニルカーボネート、2−プロポキシエチル−o−メチルフェニルカーボネート、2−ブトキシエチル−o−メチルフェニルカーボネート、2−イソブチルオキシエチル−o−メチルフェニルカーボネート、2−ベンジルオキシエチル−o−メチルフェニルカーボネート、2−(2−エトキシエチルオキシ)エチル−o−メチルフェニルカーボネート、
2−メトキシエチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、2−エトキシエチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、2−プロポキシエチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、2−ブトキシエチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、2−イソブチルオキシエチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、2−ベンジルオキシエチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、2−(2−エトキシエチルオキシ)エチル−o,p−ジメチルフェニルカーボネート、
2−メトキシプロピルフェニルカーボネート、2−エトキシプロピルフェニルカーボネート、2−プロポキシプロピルフェニルカーボネート、2−ブトキシプロピルフェニルカーボネート、2−イソブチルオキシプロピルフェニルカーボネート、2−(2−エトキシエチルオキシ)プロピルフェニルカーボネート、
2−フェニル(2−メトキシ)エチルフェニルカーボネート、2−フェニル(2−エトキシ)エチルフェニルカーボネート、2−フェニル(2−プロポキシ)エチルフェニルカーボネート、2−フェニル(2−ブトキシ)エチルフェニルカーボネート、2−フェニル(2−イソブチルオキシ)エチルフェニルカーボネート、2−フェニル(2−(2−エトキシエチルオキシ))エチルフェニルカーボネート、
1−フェニル(2−メトキシ)プロピルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−エトキシ)プロピルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−プロポキシ)プロピルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−イソブチルオキシ)プロピルフェニルカーボネート、
1−フェニル(2−メトキシ)エチルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−エトキシ)エチルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−プロポキシ)エチルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−ブトキシ)エチルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−イソブチルオキシ)エチルフェニルカーボネート、1−フェニル(2−(2−エトキシエチルオキシ))エチルフェニルカーボネート、
1−メチル−1−フェニル(2−メトキシ)エチルフェニルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−エトキシ)エチルフェニルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−プロポキシ)エチルフェニルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−ブトキシ)エチルフェニルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−イソブチルオキシ)エチルフェニルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−ベンジルオキシ)エチルフェニルカーボネート、1−メチル−1−フェニル(2−(2−エトキシエチルオキシ))エチルフェニルカーボネート、が挙げられ、特に好ましくは(2−エトキシエチル)メチルカーボネート、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート、(2−プロポキシエチル)プロピルカーボネート、(2−ブトキシエチル)ブチルカーボネート、(2−ブトキシエチル)エチルカーボネート、(2−エトキシエチル)プロピルカーボネート、(2−エトキシエチル)フェニルカーボネート、(2−エトキシエチル)−p−メチルフェニルカーボネートから選ばれる1種または2種以上を挙げることができる。
上記の中でも、(2−エトキシエチル)メチルカーボネート、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート、(2−エトキシエチル)フェニルカーボネートが特に好ましい。
【0120】
第二の内部電子供与性化合物としては、特に、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジメチル、およびベンジリデンマロン酸ジエチルから選ばれる一種以上が好ましい。
【0121】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第二の工程において、第一の工程で得られた反応生成物に対し、一種以上の第二の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させる。
第二の工程において、第二の内部電子供与性化合物は、適宜、第一の工程で例示したものと同様の不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、好適に接触させることができる。
【0122】
第二の工程において各成分を接触させ、反応させる条件は、特に制限されないが、具体的には、第一の反応工程と同様の接触、反応条件を挙げることができる。
【0123】
第二の工程において、第一の工程で得られた反応生成物に対して、第二の内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対する第二の内部電子供与性化合物類の使用量のモル比(第二の内部電子供与性化合物のモル量/マグネシウム化合物のモル量)は、0.001〜10であることが好ましく、0.002〜1であることがより好ましく、0.003〜0.6であることがさらに好ましい。
【0124】
また、第二の工程において、第一の工程で得られた反応生成物に対して、第二の内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、(第一の工程で加えた)第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステル1モルに対する第二の内部電子供与性化合物類の使用量のモル比(第二の内部電子供与性化合物のモル量/第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルのモル量)は、0.01〜0.9であることが好ましく、0.01〜0.6であることがより好ましく、0.02〜0.4であることがさらに好ましい。
【0125】
第二の内部電子供与性化合物のモル量/第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルのモル量で表わされる比が上記範囲内にあることにより、第二の内部電子供与性化合物と四価のチタンハロゲン化合物からなる錯化合物が過剰に形成されることを抑制し易くなり、得られる固体触媒成分を用いてオレフィン類を重合させたときに、重合活性や立体規則性を容易に向上させることができる。
【0126】
また、第二の工程で不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対し、0.001〜500モルであることが好ましく、0.5〜100モルであることがより好ましく、1.0〜20モルであることがさらに好ましい。
【0127】
第二の工程において不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒中に含有される四価のチタンハロゲン化合物(未反応の四価のチタンハロゲン化合物)の量が少ない程、第三の内部電子供与性化合物と四価のチタンハロゲン化合物との相互作用を抑制でき、かつ、得られる固体触媒成分中への第三の内部電子供与性化合物と四価のチタンハロゲン化合物から形成された錯体化合物の沈着を抑制できることから、不活性有機溶媒中に含有される四価のチタンハロゲン化合物の濃度を、0〜5質量%に制御することが好ましく、0〜3質量%に制御することがより好ましく、0〜1質量%に制御することがさらに好ましい。
このように、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第二の工程においては、反応系に四価のチタンハロゲン化合物を加えないことが望まれる。
【0128】
また、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、反応の効率性等を考慮して、マグネシウム化合物は第一の工程で必要量の全量を反応系に加えることが好ましく、第二の工程においては、マグネシウム化合物を反応系に加えないことが好ましい。
【0129】
第二の工程において、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記反応終了後、反応液を静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にした上で、洗浄処理することが好ましい。
【0130】
第二の工程においては、上記反応終了後、得られた反応物を洗浄処理する。
上記洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。洗浄液としては、第一の工程で例示したものと同様のものを挙げることができる。
また、第二の洗浄工程における処理温度、処理方法、洗浄液の使用量、洗浄回数等は、上述した第一の工程における洗浄処理と同様である。
【0131】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程において各成分を接触、反応させた後、洗浄処理することにより、反応生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン−カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
【0132】
上記反応終了後、適宜、洗浄処理後の懸濁液を静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にしてもよいし、懸濁液の状態のまま第三の工程に付してもよい。懸濁液の状態のまま第三の工程に付した場合には、乾燥処理を省略できるとともに、第三の工程において不活性有機溶媒を加えることを省略することができる。
【0133】
[第三の工程]
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、上記第二の工程を施し、得られた生成物に対し、四価のチタンハロゲン化合物と一種以上の第三の内部電子供与性化合物とを接触させ、反応させる第三の工程を施す。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第二の工程で得られた反応生成物に対し、予備処理を施した上で第三の工程を施してもよいが、予備処理等を施すことなく、第三の工程を連続的に施すことが好ましい。
第二の工程で得られた反応生成物に予備処理を施す場合、例えば、第二工程の洗浄処理終了後、得られた生成物に対し、更に予備処理として四価のチタンハロゲン化合物と接触させ、洗浄する態様を挙げることができる。本予備処理における洗浄は、第二の工程の洗浄と同様に行うことができる。
【0134】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第三の工程で使用する四価のチタンハロゲン化合物としては、第一の工程で使用する四価のチタンハロゲン化合物と同様のものを挙げることができる。
【0135】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第三の内部電子供与性化合物としては、第二の内部電子供与性化合物として挙げた上記化合物と同様のものを挙げることができる。
第三の内部電子供与性化合物は、第一の内部電子供与性化合物と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよく、第二の内部電子供与性化合物と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0136】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第三の工程において、第二の工程で得られた反応生成物に対し、四価のチタンハロゲン化合物および第三の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させる。
第三の工程において、四価のチタンハロゲン化合物および第三の内部電子供与性化合物は、適宜、第一の工程で例示した不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、好適に接触させることができる。
【0137】
第三の工程において第三の内部電子供与性化合物を接触させ、反応させる条件は、特に制限されず、具体的には、第一の反応工程と同様の接触、反応条件を挙げることができる。
【0138】
第三の工程において、第二の工程で得られた反応生成物に対して四価のチタンハロゲン化合物および第三の内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.1〜50モルであることが好ましく、0.2〜20モルであることがより好ましく、0.3〜10モルであることがさらに好ましい。
【0139】
第三の工程において、第二の工程で得られた反応生成物に対して、第三の内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対する第三の内部電子供与性化合物の使用量の比(第三の内部電子供与性化合物のモル量/マグネシウム化合物のモル量)は、0.001〜10であることが好ましく、0.002〜1であることがより好ましく、0.003〜0.6であることがさらに好ましい。
【0140】
また、第三の工程において、第二の工程で得られた反応生成物に対して、四価のチタンハロゲン化合物および第三の内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、(第一の工程で加えた)第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステル1モルに対する第三の内部電子供与性化合物の使用量のモル比(第三の内部電子供与性化合物のモル量/第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルのモル量)は、0.01〜0.9であることが好ましく、0.01〜0.6であることがより好ましく、0.02〜0.4であることがさらに好ましい。
第三の内部電子供与性化合物のモル量/第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルのモル量で表わされる比が上記範囲内にあることにより、第三の内部電子供与性化合物と四価のチタンハロゲン化合物からなる錯化合物が過剰に形成されることを抑制し易くなり、得られる固体触媒成分を用いてオレフィン類を重合させたときに、重合活性や立体規則性を容易に向上させることができる。
【0141】
また、第三の工程で使用する第三の内部電子供与性化合物のモル量は、第一の工程で使用した第一の内部電子供与性化合物のモル量よりも少なく、第二の工程で使用した第二の内部電子供与性化合物のモル量と同じかまたは少ない(第一の内部電子供与性化合物のモル量>第二の内部電子供与性化合物のモル量≧第三の内部電子供与性化合物のモル量である)ことが好ましい。
【0142】
さらに、第二の工程で使用する第二の内部電子供与性化合物と第三の工程で使用する第三の内部電子供与性化合物との合計量は、第一の工程で使用する第一の内部電子供与性化合物の量よりも少ない(第一の内部電子供与性化合物のモル量>(第二の内部電子供与性化合物のモル量+第三の内部電子供与性化合物のモル量)である)ことが好ましい。
このため、第一の工程で使用する第一の内部電子供与性化合物1モルに対する第二の工程で使用する第二の内部電子供与性化合物および第三の工程で使用する第三の内部電子供与性化合物との合計モル量の比(第二の工程で使用する第二の内部電子供与性化合物および第三の工程で使用する第三の内部電子供与性化合物の合計モル量/第一の工程で使用する第一の内部電子供与性化合物のモル量)が、0.02〜0.95であることが好ましく、0.02〜0.9であることがより好ましく、0.02〜0.8であることがさらに好ましい。
【0143】
なお、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第一の工程で使用する第一の内部電子供与性化合物が一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステル、第二の工程で使用する第二の内部電子供与性化合物がカルボン酸ジエステル類、第三の工程で使用する第三の内部電子供与性化合物がカルボン酸ジエステル類である場合、第一の内部電子供与性化合物のエステル残基の炭素数、第二の内部電子供与性化合物のエステル残基の炭素数、第三の内部電子供与性化合物のエステル残基の炭素数の合計が、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0144】
一般的に、エステル残基の炭素数が小さい内部電子供与性化合物は、担体への吸着力が高く、固体触媒成分の粒子を凝集させやすいものの、上記エステル残基の炭素数が小さい内部電子供与性化合物のみを担持させた固体触媒成分は、重合時の活性が低下し易い傾向にある。
一方、エステル残基の炭素数が大きい内部電子供与性化合物は、担体への吸着力が弱いものの、重合活性を高める作用がある。このため、エステル残基の炭素数が大きく、担体への吸着力が弱い内部電子供与性化合物を優先的に固体触媒成分中に含有させた後に、エステル残基の炭素数が小さく、担体への吸着力が強い傾向にある内部電子供与性化合物を少量接触、反応させるか、または分割添加により接触、反応させることが、触媒粒子の凝集や、重合時の活性低下といった現象を緩和できる点から好ましい。
【0145】
また、第三の工程で不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対し、0.001〜500モルであることが好ましく、0.5〜100モルであることがより好ましく、1.0〜20モルであることがさらに好ましい。
なお、上述したように、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、反応の効率性等を考慮して、マグネシウム化合物は第一の工程で必要量の全量を反応系に加えることが好ましく、第三の工程においては、マグネシウム化合物を反応系に加えないことが好ましい。
【0146】
第三の工程において、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記反応終了後、反応液を静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にした上で、洗浄処理することが好ましい。
【0147】
第三の工程においては、上記反応終了後、得られた反応物を洗浄処理することが好ましい。
上記洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。洗浄液としては、第一の工程で例示したものと同様のものを挙げることができる。
また、第三の洗浄工程における処理温度、処理方法、洗浄液の使用量、洗浄回数等は、上述した第一の工程における洗浄処理と同様である。
【0148】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第三の工程において各成分を接触、反応させた後、洗浄処理することにより、反応生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン−カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
【0149】
上記反応終了後、適宜、洗浄処理後の懸濁液を静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にしたりしてもよい。
また、洗浄処理終了後、得られた生成物をそのままオレフィン類重合用固体触媒成分としてもよいし、洗浄終了後、後処理として、得られた生成物に対し、さらに四価のチタンハロゲン化合物または四価のチタン化合物と内部電子性供与化合物と接触させ、洗浄処理した上で、オレフィン類重合用固体触媒成分としてもよい上記後処理時の洗浄は、第三の工程における洗浄と同様に行うことができる。
【0150】
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分は、噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子状に成形してもよく、スプレードライ法により粒子状に成形することにより、第一の工程において球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、球状でかつ粒度分布のシャープなオレフィン類重合用固体触媒成分を容易に得ることができる。
【0151】
なお、第二の工程および第三の工程において、反応系内のアルミニウム化合物およびケイ素化合物は、少量であるか、全く加えないことが好ましい。特に、反応系内に対し、アルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、アルコキシシランなどの有機ケイ素化合物は、加えないことが好ましい。
アルキルアルミニウム化号物や、アルキルアルミニウムハライド等の有機アルミニウム化合物の共存下に第二の工程や第三の工程の反応を施すと、生成物に担持させた内部電子供与性化合物が引き抜かれる反応が生じ易く、アルコキシシラン等のケイ素化合物の共存下に第二の工程や第三の工程を施すと、添加した内部電子供与性化合物とSi化合物との吸着が競合し、期待する効果が得られ難くなる。
【0152】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法における好ましい態様としては、以下の態様が挙げられる。
第一の工程において、球状のマグネシウム化合物を不活性有機溶媒に懸濁して懸濁液を調製し、次いでこの懸濁液に四価のチタンハロゲン化合物を接触させ、反応処理を行う。上記懸濁液に四価のチタンハロゲン化合物を接触させる前または接触させた後に、第一の内部電子供与性化合物である一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルを、−20〜130℃で接触させた後、不活性有機溶媒で洗浄し、固体状の反応生成物(α)を得る。上記一般式(I)で表わされる第一の内部電子供与性化合物を、接触させる前または後に、低温熟成反応を行なうことが好ましい。
次いで、第二の工程において、上記第一の工程で得られた固体状の反応生成物(α)に、不活性有機溶媒の存在下、第二の内部電子供与性化合物を20〜130℃、好ましくは30〜120℃、さらに好ましくは80℃〜110℃で接触させ、反応処理を行った後、不活性有機溶媒で洗浄し、固体反応生成物(β)を得る。上記四価のチタンハロゲン化合物と接触、反応させ、洗浄する処理を更に複数回繰り返してもよい。
次いで、第三の工程において、上記第二の工程で得られた固体状の反応生成物(β)に、不活性有機溶媒の存在下、四価のチタンハロゲン化合物および第三の内部電子供与性化合物を20〜130℃、好ましくは30〜120℃、さらに好ましくは80℃〜110℃で接触させ、反応させる処理を行ない、目的とするオレフィン類重合用固体触媒成分を得る。
【0153】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の内部電子供与性化合物として、一般式(I)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルを使用するものであり、この第一の内部電子供与性化合物に対する、第二の内部電子供与性化合物、第三の内部電子供与性化合物の好ましい組み合せを表1に示す。
表1に示すように、第一の内部電子供与性化合物、第二の内部電子供与性化合物、第三の内部電子供与性化合物の組合せとして、それぞれ、(1)芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族ジカルボン酸ジエステル、(2)芳香族ジカルボン酸ジエステル、エーテルカーボネート類、芳香族ジカルボン酸ジエステル、(3)芳香族ジカルボン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステルの組み合せが好ましい。
【0155】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第一の内部電子供与性化合物〜第三の内部電子供与性化合物として、上記(1)〜(3)のいずれかの組み合わせからなるものを使用した場合、MFRや立体規則性に優れたオレフィン類の単独重合体や共重合体を容易に製造することができる。
【0156】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程における各成分の接触および反応を、第三成分であるポリシロキサンの存在下に行ってもよい。
【0157】
ポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm
2/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm
2/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0158】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3−ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、またジシロキサン以外のポリシロキサンとしてジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0159】
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、マグネシウム原子の含有量は、10〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、チタン原子の含有量は、0.5〜8.0質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%が好ましく、0.5〜3.0質量%がさらに好ましい。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、ハロゲン原子の含有量は、20〜88質量%が好ましく、30〜 85質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましく、45〜75質量%が一層好ましい。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、第一の内部電子供与性化合物の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜25質量% がより好ましく、1.0〜20質量% がさらに好ましい。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、第二の内部電子供与性化合物の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜20質量% がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、第三の内部電子供与性化合物の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜20質量% がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分において、第一の内部電子供与性化合物、第二の内部電子供与性化合物および第三の内部電子供与性化合物の合計量は、1.5〜30質量%であることが好ましく、3.0〜25質量%であることがより好ましく、6.0〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0160】
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分は、例えば、マグネシウム原子の含有量が15〜25質量%、チタン原子の含有量が0.5〜3.0質量%、ハロゲン原子の含有量が45〜75質量%、第一の内部電子供与性化合物の含有量が2〜20質量%、第二の内部電子供与性化合物の含有量が0.3〜10質量%、第三の内部電子供与性化合物の含有量が0.3〜10質量%、第一の内部電子供与性化合物、第二の内部電子供与性化合物および第三の内部電子供与性化合物の合計量が6.0〜25質量%である場合に、固体触媒成分としての性能をバランスよく発揮することができる。
【0161】
本出願書類において、固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、固体触媒成分を塩酸溶液で溶解し、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、JIS 8311−1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中の、第一の内部電子供与性化合物の含有量、第二の内部電子供与性化合物の含有量、第三の内部電子供与性化合物の含有量、第一の内部電子供与性化合物〜第三の内部電子供与性化合物の合計含有量は、後述する方法により測定した値を意味するものとする。
【0162】
本発明によれば、オレフィン類の単独重合または共重合を行う場合に、オレフィン類の重合活性および重合時の対水素活性に優れるとともに、MFRや立体規則性が高く優れた剛性を有するオレフィン類重合体を高い重合活性持続性の下で製造し得る新規なオレフィン類重合用固体触媒成分を簡便に製造する方法を提供することができる。
【0163】
[オレフィン類重合用触媒]
次に、本発明のオレフィン類重合用触媒について説明する。
本発明のオレフィン類重合用触媒は、本発明の製造方法により得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、下記一般式(II)
R
4pAlQ
3−p (II)
(式中、R
4は炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物、および外部電子供与性化合物を接触させてなることを特徴とするものである。
【0164】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、上述したとおりである。
【0165】
一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物において、R
4は炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。
【0166】
上記一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Qがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0167】
一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上を挙げることができ、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適である。
【0168】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、外部電子供与性化合物としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、具体的には、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物、中でもSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物またはSi−N−C結合を有するアミノシラン化合物等が挙げられる。
【0169】
上記外部電子供与性化合物のなかでも、安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3−ジエーテル類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を含むアミノシラン化合物が好ましく、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物類が特に好ましい。
【0170】
上記外部電子供与性化合物のうち、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(III)
R
5Si(OR
6)
4−q (III)
(式中、R
5は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。R
6は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基であり、同一または異なっていてもよい。q は0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0171】
また、上記外部電子供与性化合物のうち、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物としては、前記一般式(IV)
(R
7R
8N)
sSiR
94−s (IV)
(式中、R
7とR
8は水素原子、炭素数1〜20の直鎖または炭素数3〜20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アリール基であり、同一でも異なってもよく、またR
7とR
8が互いに結合して環を形成してもよい。R
9は炭素数1〜20の直鎖状または炭素数3〜20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アリール基またはアリールオキシ基であり、R
9が複数ある場合、複数のR
9は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)で表わされる有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0172】
上記一般式(III)または一般式(IV)で表わされる有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができる。具体的には、n−プロピルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、ビス(エチルアミノ)t−ブチルメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等が挙げられ、中でも、n−プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0173】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、本発明の製造方法で得られるオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与性化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定することができ、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法で得られるオレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物が、1〜2000モルであることが好ましく、50〜1000モルであることがより好ましい。また、有機アルミニウム化合物1モルあたり、外部電子供与性化合物が、0.002〜10モルであることが好ましく、0.01〜2モルであることがより好ましく、0.01〜0.5モルであることがさらに好ましい。
【0174】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分、(β)有機アルミニウム化合物および(γ)外部電子供与性化合物を、公知の方法で接触させることにより作製することができる。
上記各成分を接触させる順序は任意であるが、例えば、以下の接触順序を例示することができる。
(i)(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分→(γ)外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物
(ii)(β)有機アルミニウム化合物→(γ)外部電子供与性化合物→(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分
(iii)(γ)外部電子供与性化合物→(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物
(iv)(γ)外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物→(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分
上記接触例(i)〜(iv)において、接触例(ii)が好適である。
なお、上記接触例(i)〜(iv)において、「→」は接触順序を意味し、例えば、「(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物→(γ)外部電子供与性化合物」は、(α)本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分中に(β)有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、(γ)外部電子供与性化合物を添加して接触させることを意味する。
【0175】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、本発明の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与性化合物を、オレフィン類不存在下で接触させてなるものであってもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてなるものであってもよい。
【0176】
本発明によれば、オレフィン類の単独重合または共重合を行う場合に、オレフィン類の重合活性および重合時の対水素活性に優れるとともに、MFRや立体規則性が高く優れた剛性を有するオレフィン類重合体を高い重合活性持続性の下で製造し得る新規なオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0177】
次に、本発明のオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明のオレフィン類重合体の製造方法は、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類の重合を行うことを特徴とするものである。
【0178】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、エチレン、プロピレンまたは1−ブテンが好適であり、プロピレンがより好適である。
【0179】
プロピレンを重合する場合、他のオレフィン類との共重合を行ってもよく、プロピレンと他のα―オレフィンとのブロック共重合であることが好ましい。ブロック共重合により得られるブロック共重合体とは、2種以上のモノマー組成が連続して変化するセグメントを含む重合体であり、モノマー種、コモノマー種、コモノマー組成、コモノマー含量、コモノマー配列、立体規則性などポリマーの一次構造の異なるポリマー鎖(セグメント)が1分子鎖中に2種類以上繋がっている形態のものをいう。
共重合されるオレフィン類としては、炭素数2〜20のα−オレフィン(炭素数3のプロピレンを除く)であることが好ましく、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等を挙げることができ、これ等のオレフィン類は一種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。
【0180】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。
また、重合対象となるオレフィン類は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0181】
オレフィン類の重合は、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類導入し、加熱、加圧状態下に行う。
【0182】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は、通常200℃以下であるが、100℃以下が好ましく、活性や立体規則性の向上の観点からは、60〜100℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましい。本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応は一段で行ってもよいし、二段以上で行ってもよい。
【0183】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、プロピレンと他のオレフィン類とのブロック共重合反応は、通常、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下、前段でプロピレン単独あるいは、プロピレンと少量のα−オレフィン(エチレン等)とを接触させ、次いで後段でプロピレンとα−オレフィン(エチレン等)とを接触させることにより実施することができる。なお、上記前段の重合反応を複数回繰り返し実施してもよいし、上記後段の重合反応を複数回繰り返し多段反応により実施してもよい。また、プロピレン等のオレフィンモノマーは、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0184】
プロピレンと他のオレフィン類とのブロック共重合反応は、具体的には、前段で(最終的に得られる共重合体に占める)ポリプロピレン部の割合が20〜90重量%になるように重合温度および時間を調整して重合を行ない、次いで後段において、プロピレンおよびエチレンあるいは他のα−オレフィンを導入し、(最終的に得られる共重合体に占める)エチレン−プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が10〜80重量%になるように重合する。
前段及び後段における重合温度は共に、200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、重合圧力は10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
上記共重合反応においても、連続重合法、バッチ式重合法のいずれの重合法も採用することができ、重合反応は1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
また、重合時間(反応炉内の滞留時間)は、前段または後段の各重合段階のそれぞれの重合段階で、あるいは連続重合の際においても、1分〜5時間であることが好ましい。
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられ、バルク重合法または気相重合法が好適であり、後段の反応は一般的にはEPRのPP粒子からの溶出を抑える目的から気相重合反応であることが好ましい。
【0185】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部または全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0186】
予備重合を行うに際して、本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分およびオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。または、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで外部電子供与性化合物を接触させ、更に本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。
予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0187】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性および粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0188】
本発明によれば、MFRや立体規則性が高く優れた剛性を有するオレフィン類重合体を高い重合活性持続性の下で製造する新規な方法を提供することができる。
【0189】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
なお、以下に示す実施例および比較例において、ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度、固体触媒成分中のマグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子および内部電子供与性化合物の含有量は、以下の方法により測定したものである。
【0190】
(ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度)
ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度は、ジアルコキシマグネシウム粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−7500F)により、500〜1000個の粒子が一画面に表示される程度の倍率で撮影し、撮影した粒子の中から無作為に500個以上を抽出し、画像解析処理ソフト(株式会社MOUNTECH製、MacView バージョン4.0)により各粒子の面積Sと周囲長Lを測定した後、各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度を下記式により算出したときの算術平均値として求めた。
各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度=4π×S÷L
2
【0191】
(固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量)
固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、予め加熱減圧乾燥により溶媒成分を完全に除去した固体触媒成分を秤量後、塩酸溶液で溶解し、指示薬のメチルオレンジと飽和塩化アンモニウム溶液を加え、アンモニア水で中和後に加熱し、冷却後に一定容としたものをろ別して沈殿物(Tiの水酸化物)を除去し、得られたろ液を一定量分取し、加熱後に緩衝液とEBT混合指示薬を加え、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した。
【0192】
(固体触媒成分中のチタン原子含有量)
固体触媒成分中のチタン原子含有量は、JIS 8311−1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した。
【0193】
(固体触媒成分中のハロゲン原子含有量)
固体触媒成分中のハロゲン原子含有量は、予め加熱減圧乾燥により溶媒成分を完全に除去した固体触媒成分を秤量し、硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後に一定容としたものを所定量分取し、自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM−1500)を用い、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した。
【0194】
(固体触媒成分中の内部電子供与性化合物の含有量)
固体触媒成分中に含まれる第一の内部電子供与性化合物〜第三の内部電子供与性化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−14B)を用いて下記の条件にて測定することで求めた。また、各成分(各内部電子供与性化合物)のモル数については、ガスクロマトグラフィーの測定結果より、予め既知濃度において測定した検量線を用いて求めた。
<測定条件>
カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE−30 10%,Chromosorb WAW DMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
検出器:FID(Flame Ionization Detector,水素炎イオン化型検出器)
キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、または気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
【0195】
(実施例1)
<固体触媒成分の調製>
(1)第一の工程
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、四塩化チタン40ml(364ミリモル)およびトルエン60ml(565ミリモル)を装入して、混合溶液を形成した。
次いで、球状のジエトキシマグネシウム(球形度l/w:1.10)20g(175ミリモル)とトルエン80ml(753ミリモル)および、フタル酸ジ−n−プロピル1.8ml(7.8ミリモル)を用いて形成された懸濁液を、前記混合溶液中に添加した。その後、−5℃で1時間攪拌し、110℃まで昇温した。昇温途中で、フタル酸ジ−n−プロピル5.4ml(23.4ミリモル)を分割添加した。110℃に維持し、2時間攪拌しながら反応させた後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
上記スラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン187mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を4回繰り返すことにより洗浄した後、上記スラリー状の反応生成物に対し、トルエン170ml(1600ミリモル)および四塩化チタン30ml(273ミリモル)を加えて110℃まで昇温し、2時間攪拌しながら反応させた後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物を得た。
【0196】
(2)第二の工程
上記スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物に、トルエンを加え、反応液中の四塩化チタンの濃度を0.2質量%に調整した上で昇温し、80℃で(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)を添加し、100℃で1時間攪拌しながら反応させ、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の固体成分(II)を含む反応生成物を得た。
【0197】
(3)第三の工程
上記スラリー状の固体成分(II)を含む反応生成物に、トルエン170ml(1600ミリモル)および四塩化チタン30ml(273ミリモル)を加えて110℃まで昇温し、1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、トルエンの上澄みを除去し、さらにトルエン180mlおよび四塩化チタン20ml(182ミリモル)を加えて昇温し、80℃で(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)を添加した後、110℃まで昇温し、2時間攪拌しながら反応させ、反応終了後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
反応終了後、得られたスラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン187mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を2回繰り返し、得られたスラリー状の反応生成物を、さらに60℃のn−ヘプタン150ml添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を5回繰り返すことにより洗浄して、オレフィン類重合用固体触媒成分(A1)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分中(A1)のマグネシウム原子の含有率は20.3質量%、チタン原子の含有率は1.3質量%、ハロゲン原子の含有率は61.2質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は15.8質量%、(2−エトキシエチル)エチルカーボネートの含有量は1.9質量%であった。
【0198】
<プロピレン重合触媒の形成およびプロピレン重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルおよび上記固体触媒成分(A1)をチタン原子として0.0013ミリモル装入して、オレフィン類重合用触媒を調製した。
上記内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、さらに水素ガス9.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃、1.1MPaで5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃、3.5MPaで1時間重合反応を行なうことにより、プロピレン重合体(ポリプロピレン)を得た。
上記重合反応時における固体触媒成分1g当たりのプロピレン重合活性を以下の方法で測定するとともに、重合体のメルトフローレート(MFR)、重合体のp−キシレン可溶分の割合(XS)および重合体のアイソタクチック・ペンタッド分率(NMR−mmmm)を以下の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0199】
<プロピレン重合活性>
固体触媒成分1g当たりのプロピレン重合活性を、下記式により求めた。
プロピレン重合活性(kg−pp/g−触媒)=ポリプロピレンの質量(kg)/オレフィン類重合用触媒中の固体触媒成分の質量(g)
【0200】
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)(g/10分間)は、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
【0201】
<重合体のキシレン可溶分(XS)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp−キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物の重量を求め、生成した重合体(ポリプロピレン)に対する相対割合(質量%)を算出して、キシレン可溶分(XS)とした。
【0202】
<重合体のアイソタクチック・ペンタッド分率(NMR−mmmm)>
アイソタクチック・ペンタッド分率(NMR−mmmm)は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖(換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖)の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率(%)であり、13C−NMRを用いて算出する。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピークに対するmmmmピークの面積分率を、アイソタクチック・ペンタッド分率として求めた。
重合体のアイソタクチック・ペンタッド分率(NMR−mmmm)は、日本電子(株)製JNM−ECA400を用いて、以下の条件で13C−NMR測定を行うことにより、算出した。
(13C−NMR測定条件)
測定モード : プロトンデカップリング法
パルス幅 : 7.25μsec
パルス繰り返し時間 : 7.4sec
積算回数 : 10,000回
溶媒 : テトラクロロエタン−d2
試料濃度 : 200mg/3.0ml
【0203】
<曲げ弾性率(FM)>
JIS K 7171に従い、上記重合体を用いて物性測定用の試験片を射出成形し、23℃に調節された恒温室内で、状態調節を144時間以上行なった後、表面に液体や粉体の滲出が認められなかったものを試験片として用い、試験片の曲げ弾性率(FM)(MPa)を測定した。
【0204】
<共重合触媒の形成およびエチレン・プロピレンブロック共重合>
上記で得られた固体触媒成分(A1)を用いて以下のとおり共重合触媒を調製した後、以下の方法により多段重合を実施して共重合体を作製し、以下の方法により、共重合時におけるエチレン・プロピレンブロック共重合活性(ICP(インパクトコポリマー)重合活性)を測定して重合活性持続性を評価するとともに、さらに得られたエチレン・プロピレンブロック共重合体のブロック率、曲げ弾性率(FM)、アイゾッド衝撃強度を測定した。
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム2.4ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.24ミリモルおよび上記固体触媒成分(A1)をチタン原子換算で0.003ミリモル装入し、エチレン−プロピレン共重合触媒(B1)を調製した。
上記エチレン−プロピレン共重合触媒(B1)を含む攪拌機付オートクレーブに、さらに液化プロピレン15モルと水素ガス0.20MPa(分圧)を装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後、70℃で75分間、一段目のプロピレン(ホモ段)重合反応を行なった後、常圧に戻し、次いでオートクレーブ内を窒素置換してからオートクレーブの計量を行なった。 次に、エチレン/プロピレン/水素を、それぞれモル比が1.0/1.0/0.043となるように上記撹拌機付オートクレーブ内に装入した後、70℃まで昇温し、エチレン/プロピレン/水素を、それぞれリットル/分が2/2/0.086の割合となるように導入しつつ、1.2MPa、70℃、1時間の条件で反応させることにより、エチレン−プロピレン共重合体を得た。
エチレン−プロピレン共重合活性(kg−ICP/(g−cat・時間))を以下の方法により測定するとともに、得られたエチレン−プロピレン共重合体について、上述した方法により曲げ弾性率(FM)を測定し、さらに、以下の方法により、ブロック率(質量%)およびアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表3に示す。
【0205】
<エチレン・プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)(kg−ICP/(g−cat・時間))>
エチレン・プロピレンブロック共重合体形成時におけるエチレン・プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)は、以下の式により算出した。
エチレン・プロピレンブロック共重合活性(kg−ICP/(g−cat・時間))=((I(kg)−G(kg))/オレフィン類重合用触媒に含まれる固体触媒成分の質量(g))/1.0(時間)
ここで、Iは共重合反応終了後のオートクレーブ質量(kg)、GはホモPP重合終了後、未反応モノマーを除去した後のオートクレーブ質量(kg)である。
【0206】
<ブロック率(質量%)>
得られた共重合体のブロック率は、以下の式により算出した。
ブロック率(質量%)={(I(kg)−G(kg))/(I(kg)−F(kg))}×100
ここで、Iは共重合反応終了後のオートクレーブ質量(kg)、GはホモPP重合終了後、未反応モノマーを除去した後のオートクレーブ質量(kg)、Fはオートクレーブ質量(kg)である。
【0207】
<アイゾッド衝撃強度>
得られたエチレン−プロピレン共重合体に対し、IRGANOX 1010(BASF社製)0.10重量%、IRGAFOS 168(BASF社製)0.10重量%、およびステアリン酸カルシウム0.08重量%を配合し、単軸押出機にて混練造粒してペレット状のエチレン−プロピレン共重合体を得た。
次いで、上記ペレット状の共重合体を、金型温度60℃、シリンダー温度230℃に保持した射出成形機に導入し、射出成形により物性測定用の試験片を射出成形した。
成型後の試験片について、23℃に調節された恒温室内で、状態調節を144時間以上行った後、IZOD試験機(株式会社東洋精機製作所製、アイゾット衝撃試験機 型番A−121804405)を用い、JIS K7110 「アイゾット衝撃強さの試験方法」に従い、23℃と−30℃における試験片のアイゾット衝撃強度を測定した。
試験片形状:ISO 180/4A、厚さ3.2mm、幅12.7mm、長さ63.5mm
ノッチ形状:タイプAノッチ(ノッチ半径0.25mm)、ノッチ付き金型にて形成
温度条件:23℃および−30℃
衝撃速度:3.5m/s
公称振り子エネルギー:23℃測定時 5.5J、−30℃測定時 2.75J
【0208】
(実施例2)
第三の工程において、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)の代わりにフタル酸ジ−n−プロピル0.5ml(2.2ミリモル)を用いる以外は、実施例1と同様に処理して固体触媒成分(A2)を調製し、オレフィン類重合用固体触媒成分(A2)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分中(A1)のマグネシウム原子の含有率は20.3質量%、チタン原子の含有率は1.6質量%、ハロゲン原子の含有率は60.5質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は16.1質量%、(2−エトキシエチル)エチルカーボネートの含有量は1.1質量%であった。
固体触媒成分(A1)の代わりに上記固体触媒成分(A2)を用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0209】
(実施例3)
実施例2において得られた固体触媒成分(A2)を用い、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルおよび0.24ミリモルに代えて、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(DCPEAS)0.13ミリモルおよび0.24ミリモルを用いた以外は実施例2と同様に処理して、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0210】
(実施例4)
実施例2において得られた固体触媒成分(A2)を用い、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルおよび0.24ミリモルに代えて、ジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルおよび0.24ミリモルを用いた以外は実施例2と同様に処理して、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0211】
(実施例5)
実施例2の第二の工程における(2−エトキシエチル)エチルカーボネートの添加量を0.4ml(2.5ミリモル)から0.6ml(3.7ミリモル)に変更し、さらに、第三の工程におけるフタル酸ジ−n−プロピルの添加量を0.5ml(2.2ミリモル)から0.6ml(2.6ミリモル)に変更した以外は、実施例2と同様に処理して、オレフィン類重合用固体触媒成分(A3)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分中(A3)のマグネシウム原子の含有率は19.9質量%、チタン原子の含有率は1.3質量%、ハロゲン原子の含有率は61.3質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は15.7質量%、(2−エトキシエチル)エチルカーボネートの含有量は2.0質量%であった。
固体触媒成分(A1)の代わりに上記で得られた固体触媒成分(A3)を用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンを調製して、プロピレン重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0212】
(実施例6)
実施例2の第二の工程において、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)の代わりに同モルの3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタンを用いる以外は、実施例2と同様に処理して固体触媒成分(A4)を調製した。
なお、この固体触媒成分(A4)中、マグネシウム原子の含有率は20.4質量%、チタン原子の含有率は1.3質量%、ハロゲン原子の含有率は60.8質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は14.6質量%、3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタンの含有量は1.8質量%であった。
固体触媒成分(A1)の代わりに上記で得られた固体触媒成分(A4)を用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンを調製して、プロピレン重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0213】
(実施例7)
実施例6の第三の工程において、フタル酸ジ−n−プロピル0.5ml(2.2ミリモル)の代わりに同モルの3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタンを用いる以外は、実施例6と同様に処理して固体触媒成分(A5)を調製した。なお、この固体触媒成分中(A5)中、マグネシウム原子の含有率は20.2質量%、チタン原子の含有率は1.2質量%、ハロゲン原子の含有率は61.6質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は15.3質量%3,3−ビス(メトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタンの含有量は3.7質量%であった。
固体触媒成分(A1)の代わりに上記で得られた固体触媒成分(A5)を用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンを調製して、プロピレン重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0214】
(実施例8)
<固体触媒成分の調製>
(1)第一の工程
窒素ガスで十分に置換した容量500mlの丸底フラスコに、n−ヘプタン120ml(819ミリモル)を導入し、更に、無水塩化マグネシウム15g(158ミリモル)、テトラブトキシチタン106ml(274ミリモル)を添加して、90℃で1.5時間反応させて均一な溶解液とした後、40℃に冷却し、40℃の温度に保持したままメチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を24ml(88ミリモル)添加し、5時間析出反応を行った。得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た後、得られた反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、窒素ガスで充分に置換した、攪拌装置を備えた容量500mlの丸底フラスコに、上記反応生成物を40g導入し、更にn−ヘプタンを導入して、反応生成物の濃度が200mg/mlになる様に調整した後、さらにSiCl
4を12ml(105ミリモル)添加して、90℃で3時間反応を行った。得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た後、得られた反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、得られた反応生成物のスラリー濃度が100mg/mlになる様にn−ヘプタンを導入し、TiCl
420ml(182ミリモル)を加えた後、フタル酸ジブチル7.2ml(27.1ミリモル)を添加し、95℃で3時間反応させた後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
上記スラリー状の反応生成物に対し、n−ヘプタン120mLを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を7回繰り返すことにより洗浄して、スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物を得た。
【0215】
(2)第二の工程
上記スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物に、n−ヘプタン100ml(695ミリモル)を加えて100℃まで昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、ヘプタンの上澄みを除去し、さらにn−ヘプタン100mlを導入した。次いで、(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.6ml(3.8ミリモル)を添加した後、95℃で3時間反応させ、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の固体成分(II)を含む反応生成物を得た。
【0216】
(3)第三の工程
上記スラリー状の固体成分(II)を含む反応生成物に、トルエン187ml(1760ミリモル)および、四塩化チタン20ml(182ミリモル)を加えて昇温し、80℃でフタル酸ジエチル1.0ml(5.0ミリモル)を添加した後、還流下で1時間攪拌しながら反応させ、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
反応終了後、得られたスラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン187mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を2回繰り返し、さらに60℃のn−ヘプタン150ml添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を5回繰り返すことにより洗浄して、オレフィン類重合用固体触媒成分(A6)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分(A6)中の中、マグネシウム原子の含有率は19.7質量%、チタン原子の含有率は2.0質量%、ハロゲン原子の含有率は62.1質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は12.6質量%、(2−エトキシエチル)エチルカーボネートの含有量は1.4質量%であった。
【0217】
<プロピレン重合触媒の形成およびプロピレン重合>
固体触媒成分(A1)に代えて上記固体触媒成分(A6)を用いる以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンを調製して、プロピレン重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0218】
(比較例1)
<固体触媒成分の合成>
以下に示すように、第三の工程を施すことなく、固体触媒成分を調製した。
(1)第一の反応工程
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン20ml(182ミリモル)およびトルエン40ml(376ミリモル)を装入して、混合溶液を形成した。
次いで、球状ジエトキシマグネシウム(球形度l/w:1.10)10g(88ミリモル)およびトルエン47ml(442ミリモル)により形成された懸濁液を、上記混合溶液中に添加した。その後、4℃で1時間攪拌し、フタル酸ジ−n−ブチル2.7ml(10.2ミリモル)を加えた後、105℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
上記スラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン87mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を4回繰り返すことにより洗浄した後、さらに四塩化チタン20mlおよびトルエン80mlを加え、100℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
上記スラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン87mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を4回繰り返すことにより洗浄して、スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物を得た。
【0219】
(2)第二の反応工程
上記スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物に、四塩化チタン20ml(182ミリモル)、トルエン47ml(442ミリモル)およびフタル酸ジ−n−ブチル0.54ml(2.0ミリモル)を加えて100℃まで昇温し、2時間攪拌しながら反応させ、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の固体成分(II)を含む反応生成物を得た。
反応終了後、得られたスラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン87mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を4回繰り返し、さらに40℃のn−ヘプタン67mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を10回繰り返すことにより洗浄して、スラリー状の固体触媒成分(a1)を得た。
なお、この固体触媒成分(a1)中のマグネシウム原子の含有率は18.8質量%、チタン原子の含有率は1.9質量%、ハロゲン原子の含有率は64.0質量%であり、フタル酸ジエステルの合計含有量は14.9質量%であった。
【0220】
<オレフィン重合触媒の形成およびオレフィン重合>
固体触媒成分(A1)に代えて上記固体触媒成分(a1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0221】
(比較例2)
上記比較例1の(2)第二の反応工程において、フタル酸ジ−n−ブチル0.54ml(2.0ミリモル)をジイソブチルマロン酸ジメチル3.3ml(13.4ミリモル)に変更した以外は、比較例1と同様に処理して、固体触媒成分(a2)を調製した。
なお、この固体触媒成分(a2)中のマグネシウム原子の含有率は18.6質量%、チタン原子の含有率は1.5質量%、ハロゲン原子の含有率は64.9質量%であり、フタル酸ジエステルとジイソブチルマロン酸ジエステルの合計含有量は13.8質量%であった。
固体触媒成分(A1)に代えて上記固体触媒成分(a2)を用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0222】
(実施例9)
第二の工程の(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)をフタル酸ジ−n−プロピル0.7ml(3.0ミリモル)、第三の工程の(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)をフタル酸ジ−n−プロピル0.7ml(3.0ミリモル)とした以外は、実施例1と同様に処理して固体触媒成分(A7)を調製し、オレフィン類重合用固体触媒成分(A7)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分中(A7)のマグネシウム原子の含有率は18.6質量%、チタン原子の含有率は2.3質量%、ハロゲン原子の含有率は59.0質量%であり、フタル酸ジエステルの合計含有量は20.0質量%であった。
固体触媒成分(A1)の代わりに上記で得られた固体触媒成分(A7)を用い、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルおよび0.24ミリモルの代わりに、それぞれジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルおよび0.24ミリモルを用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0223】
(実施例10)
第二の工程の(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)をイソブチルマロン酸ジメチル0.8ml(3.2ミリモル)、第三の工程の(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)をイソブチルマロン酸ジメチル0.8ml(3.2ミリモル)とした以外は、実施例1と同様に処理して固体触媒成分(A8)を調製し、オレフィン類重合用固体触媒成分(A8)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分中(A8)のマグネシウム原子の含有率は19.0質量%、チタン原子の含有率は2.1質量%、ハロゲン原子の含有率は60.1質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は18.8質量%、ジイソブチルマロン酸ジエチルの含有量は4.7質量%であった。
固体触媒成分(A7)に代えて上記固体触媒成分(A8)を用いた以外は実施例9と同様にして、プロピレン重合触媒およびエチレン−プロピレン共重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンおよびエチレン・プロピレンブロック共重合体を調製して、プロピレン重合活性およびエチレン・プロピレンブロック共重合(ICP)活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2および表3に示す。
【0224】
(実施例11)
第二の工程の(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)をベンジリデンマロン酸ジエチル0.4ml(1.8ミリモル)、第三の工程の(2−エトキシエチル)エチルカーボネート0.4ml(2.5ミリモル)をベンジリデンマロン酸ジエチル0.4ml(1.8ミリモル)とした以外は、実施例1と同様に処理して固体触媒成分(A9)を調製し、オレフィン類重合用固体触媒成分(A9)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分中(A9)のマグネシウム原子の含有率は19.4質量%、チタン原子の含有率は1.7質量%、ハロゲン原子の含有率は61.3質量%であり、内部電子供与性化合物の合計含有量は16.9質量%、ベンジリデンマロン酸ジエチルの含有量は6.0質量%であった。
固体触媒成分(A1)に代えて上記固体触媒成分(A9)を用いた以外は実施例1と同様にして、プロピレン重合触媒を形成し、さらにポリプロピレンを調製して、プロピレン重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0225】
(実施例12)
<固体触媒成分の調製>
(1)第一の工程
窒素ガスで十分に置換した、容量500mlの丸底フラスコに、n−ヘプタン120ml(819ミリモル)を導入し、更に、無水塩化マグネシウム15g(158ミリモル)、テトラブトキシチタン106ml(274ミリモル)を添加して、90℃で1.5時間反応させて均一な溶解液とした後、40℃に冷却し、40℃の温度に保持したままメチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を24ml(88ミリモル)添加し、5時間析出反応を行った。得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た後、得られた反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、窒素ガスで充分に置換した、攪拌装置を備えた容量500mlの丸底フラスコに、上記反応生成物を40g導入し、更にn−ヘプタンを導入して、反応生成物の濃度が200mg/mlになる様に調整した後、さらにSiCl
4を12ml(105ミリモル)添加して、90℃で3時間反応を行った。得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た後、得られた反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、得られた反応生成物のスラリー濃度が100mg/mlになる様にn−ヘプタンを導入し、TiCl
420ml(182ミリモル)を加えた後、フタル酸ジブチル7.2ml(27.1ミリモル)を添加し、95℃で3時間反応させた後、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
上記スラリー状の反応生成物に対し、n−ヘプタン120mLを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を7回繰り返すことにより洗浄して、スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物を得た。
【0226】
(2)第二の工程
上記スラリー状の固体成分(I)を含む反応生成物に、n−ヘプタン100ml(695ミリモル)を加えて100℃まで昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、ヘプタンの上澄みを除去し、さらにn−ヘプタン100mlを導入した。次いで、フタル酸ジ−n−プロピル1.0ml(4.4ミリモル)を添加した後、95℃で3時間反応させ、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の固体成分物(II)を含む反応生成物を得た。
【0227】
(3)第三の工程
上記スラリー状の固体成分(II)を含む反応生成物に、トルエン187ml(1760ミリモル)および、四塩化チタン20ml(182ミリモル)を加えて昇温し、80℃でフタル酸ジエチル1.0ml(5.0ミリモル)を添加した後、還流下で1時間攪拌しながら反応させ、得られた反応液を静置し、上澄み液を除去することにより、スラリー状の反応生成物を得た。
反応終了後、得られたスラリー状の反応生成物に対し、100℃のトルエン187mlを添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を2回繰り返し、さらに60℃のn−ヘプタン150ml添加し、攪拌し、静置した後、上澄み液を除去する処理を5回繰り返すことにより洗浄して、オレフィン類重合用固体触媒成分(A10)約20gを得た。
なお、この固体触媒成分(A10)中のマグネシウム原子の含有率は18.9質量%、チタン原子の含有率は1.8質量%、ハロゲン原子の含有率は63.6質量%であり、カルボン酸ジエステルの合計含有量は15.4質量%、フタル酸ジエチルの含有量は2.5質量%であった。
【0228】
<重合触媒の形成およびプロピレン重合>
固体触媒成分(A7)に代えて上記固体触媒成分(A10)を用い、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルの代わりにジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルを用い、さらに水素ガス添加量を9.0リットルから6.0リットルに変更した以外は、実施例9と同様にして、プロピレン重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0229】
(実施例13)
実施例12において得られた固体触媒成分(A10)を用い、ジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルの代わりにジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(DCPEAS)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例12と同様にして、重合用触媒の形成およびプロピレン重合を行い、重合活性の評価を実施するとともに、得られた重合体の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0232】
表2および表3の結果から、実施例1〜実施例13で得られた固体触媒成分を用いて調製されたオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類の重合活性が高く、ICP重合活性が高いことから共重合時におけるオレフィン類の重合持続性に優れ、また、得られたプロピレン重合体は、溶融流れ性(MFR)が良好であることから成形性に優れるとともに、キシレン可溶分(XS)およびアイソタクチック・ペンタッド分率(NMR−mmmm)が良好であることから立体規則性に優れ、さらに、得られた共重合体のブロック率が良好であることから、インパクトコポリマー(ICP)共重合性能に優れることが分かる。また、剛性と耐衝撃性のバランスも改善されていることが分かる。
一方、表2および表3の結果から、比較例1および比較例2で得られたオレフィン類重合用触媒は、第二の工程または第三の工程を施すことなく調製された固体触媒成分を用いてなるものであり、得られたプロピレン重合体は、キシレン可溶分(XS)およびアイソタクチック・ペンタッド分率(NMR−mmmm)が低いことから、立体規則性に劣ることが分かる。また、ICP重合活性が低いことから共重合時におけるオレフィン類の重合持続性に劣り、得られた共重合体のブロック率が低いことから共重合活性に劣り、さらに得られた共重合体は、曲げ弾性率(FM)およびアイゾット衝撃強度のバランスに改善の余地があり、十分な剛性を有さないものであることが分かる。