【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名 第15回宇宙太陽発電システムシンポジウム 開催日 平成24年9月26日 展示会名 JA2012国際航空宇宙展 開催日 平成24年10月 9日 集会名 第56回宇宙科学技術連合講演会 開催日 平成24年11月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記宇宙太陽光発電システムを構築又は維持するための装置には、前記発送電パネルを展開するための展開装置、及び、前記発送電パネルを収容するパネルコンテナ、のうち少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載のサービスユニット。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、宇宙太陽光発電システム(以下、単に「発電システム」と称す)の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態について説明する。後述する第2実施形態の発電システム200は実際の運用を想定した実用機であるが、第1実施形態の発電システム100は実用機の検証を行うための実証機にあたる。
【0019】
<全体構成>
まず、発電システム100の全体構成について説明する。発電システム100は、太陽光によって発電し、発電によって得たエネルギを地球に送るシステムである。
図1は、発電システム100の斜視図である。なお、以下では、便宜上、
図1の紙面右奥を「前」、紙面左手前を「後」、紙面右手前を「右」、紙面左奥を「左」、紙面上方を「上」、紙面下方を「下」と称して説明を行う。
【0020】
本実施形態の発電システム100は、いわゆる40m級であって、一辺の長さはおよそ40mである。本実施形態の発電システム100は、地上500kmの静止軌道上を回転し、地球の自転にあわせて宇宙空間を移動する。なお、発電システム100の下方側に地球が位置しており、発電システム100は後方に向かって移動する。
【0021】
図1に示すように、発電システム100は、発送電パネル10と、バス11と、テザーワイヤ12と、ワイヤ制御装置13と、を備えている。
【0022】
発送電パネル10は、太陽光によって発電を行うとともに、発電した電気のエネルギを電波又はレーサーを利用して地球へ送る装置である。本実施形態の発送電パネル10は、全体として平板状の形状を有しており、72枚の単体パネル14によって構成されている。各単体パネル14は、独立して発電及び送電を行うことができる。単体パネル14の詳細については後述する。
【0023】
バス11は、発送電パネル10のカウンターウエイトとして機能する部分である。本実施形態のバス11は、後述する1台のパネルコンテナ65によって構成される。バス11と発送電パネル10はテザーワイヤ12によって連結されているため、発電システム100の重心は発送電パネル10とバス11の間に位置することになる。これにより、地球の周りを回転し続ける発電システム100を宇宙空間で安定させることができる。
【0024】
テザーワイヤ12は、発送電パネル10とバス11を連結するワイヤである。
図1では、発送電パネル10の四隅からそれぞれ1本のテザーワイヤ12が延びているように図示しているが、実際には、四隅からそれぞれ2本のテザーワイヤ12が延びている。テザーワイヤ12は、複数の細いワイヤによって形成されたステンレスワイヤを用いてもよいが、本実施形態ではバネ材で形成された厚さ0.05mm程度の薄いテープ状のワイヤを使用しても良い。テザーワイヤ12をテープ状にすれば、宇宙塵による損傷が発生しても幅が広いことから、切断までは至りにくい。
【0025】
ワイヤ制御装置13は、テザーワイヤ12の長さ調整及び交換を行う装置である。発送電パネル10には、その四隅に1台ずつワイヤ制御装置13が配置されており、これに対応して4台のワイヤ制御装置13がバス11にも配置されている。発送電パネル10側のワイヤ制御装置13とバス11側のワイヤ制御装置13は、2台一組となって制御を行う。ワイヤ制御装置13の詳細については次に説明する。
【0026】
<ワイヤ制御装置>
続いて、ワイヤ制御装置13の詳細について説明する。
図2は、対応する2台のワイヤ制御装置13を示した図である。ワイヤ制御装置13は、冗長化のため2つの系統を有しており、系統毎に1本のテザーワイヤ12、合計2本のテザーワイヤ12を制御する。
【0027】
図2に示すように、各ワイヤ制御装置13は、系統毎に、ワイヤドラム16と、損傷検知部17と、駆動プーリー18と、テンションプーリー19と、弛み検知部20と、を有している。
【0028】
ワイヤドラム16は、テザーワイヤ12を巻き取って収容する部分である。ワイヤドラム16は、巻取モータ21によって回転駆動される。巻取モータ21として、トルクが低下すると回転速度が上がるトルクモータが採用されている。そのため、ワイヤドラム16はテザーワイヤ12に一定の張力を付与しつつ巻き取ることができる。
【0029】
損傷検知部17は、テザーワイヤ12の損傷の有無を検知するする部分である。本実施形態の損傷検出部17は、テザーワイヤ12を挟んで一方側に配置された発光部22と、他方側に配置された受光部23とを有している。テザーワイヤ12が損傷している場合、発光部22から照射された光は損傷箇所を通過して受光部23で受光される。そのため、損傷検知部17は、受光部23が受光したとき、テザーワイヤ12に損傷があると判断することができる。なお、損傷検知部17は、画像によってテザーワイヤ12の損傷の有無を検知するなど他の方法を採用してもよい。
【0030】
駆動プーリー18は、テザーワイヤ12の巻取り量又は繰出し量を調整する部分である。駆動プーリー18は、2つのローラ24、25で構成されており、そのうちの1つのローラ24にテザーワイヤ12が滑らないように1周巻き付けられている。これにより、テザーワイヤ12は、テザーワイヤ12が巻き付けられたローラ24の回転速度に比例した速度で巻取り又は繰出しが行われる。
【0031】
テンションプーリー19は、テザーワイヤ12に張力を付与する部分である。テンションプーリー19も2つのローラ26、27で構成されているが、各ローラ26、27の回転速度はテザーワイヤ12の速度に対してやや遅く、テザーワイヤ12はローラ26、27の間を滑るようにして通り抜ける。そのときのローラ26、27とテザーワイヤ12の間の摩擦力によってテザーワイヤ12に張力が発生する。
【0032】
弛み検知部20は、テザーワイヤ12の弛みを検知する部分である。発電システム100の運用時には、テザーワイヤ12は弛まないように制御される一方、発電システム100の構築作業時にはテザーワイヤ12を弛ませる場合も生じる。テザーワイヤ12の弛みは、テザーワイヤ12に光を照射し、その反射光の角度に基づいて検知してもよく、画像によって検知してもよく、さらに別の方法で検知してもよい。
【0033】
以上のように構成されたワイヤ制御装置13は、発電システム100の構築時にテザーワイヤ12の長さを調整するが、これに限られない。つまり、テザーワイヤ12は、宇宙塵等によって摩耗することが予想されるため、発電システム100の運用時においてテザーワイヤ12の交換も行う。本実施形態の場合、バス11と発送電パネル10との距離は約1kmであるが、ワイヤドラム16は約10kmのテザーワイヤ12を収容できるように構成されている。そして、テザーワイヤ12を一定期間毎に、又は、常時定速で巻取り及び繰出しを行うことで、テザーワイヤ12の交換を行う。
【0034】
<単体パネル>
続いて、単体パネル14の詳細について説明する。
図3は、隣接する2枚の単体パネル14の斜視図である。
図3に示すように、前後に隣接する2枚の単体パネル14は互いに連結されている(以下、この前後に連結された2枚一組の単体パネルを「単体パネルユニット」30と称する)。この単体パネル14(単体パネルユニット30)は、二つ折りの状態で地球から宇宙空間へと搬送される。
【0035】
図3に示すように、各単体パネル14は、いずれもフレーム部31と、パネル本体32と、ガイドローラ33と、左右連結部34と、被左右連結部35と、を有している。
【0036】
フレーム部31は、単体パネル14の骨組み部分であって、折り畳み可能に構成されている。フレーム部31は、矩形状の上枠36と下枠37を有しており、これらは上下方向に延びる連結部材38によって平行移動可能に連結されている。なお、単体パネルユニット30のうち、前後に隣接する上枠36は境界部分の部材を共有しており、前後に隣接する下枠37は境界部分の部材を共有している(後述するガイドローラ33、左右連結部34、及び被左右連結部35を含む)。また、上枠36と下枠37の間には、斜めに延びる複数のテレスコピック部材39、40が配置されている。
【0037】
ここで、「テレスコピック部材」とは、所定長さまで伸長又は収縮して固定される部材であり、例えば、外筒とその内部を摺動する内筒によって構成されている。前後のフレーム部31の境界付近に位置するテレスコピック部材39は、所定長さまで収縮して固定される収縮型のものである(
図3では収縮した状態)。一方、前後のフレーム部31の境界から遠いテレスコピック部材40は、所定長さまで伸長して固定される伸長型のものである(
図3では伸長した状態)。
【0038】
図4は、前後に隣接するフレーム部31(単体パネルユニット30)が折り畳まれた状態から展開するまでを示した側面図である。
図4(A)は、隣接するフレーム部31が完全に折り畳まれた状態を示している。上述したように、単体パネル14(単体パネルユニット30)は、フレーム部31が
図4(A)のように平面状に折り畳まれた状態で地球から宇宙空間へと搬送される。
【0039】
フレーム部31が
図4(A)の状態にあるとき、後側のフレーム部31の下端を固定したままで、前側のフレーム部31の下端を前方に引っ張ると、伸縮型のテレスコピック部材39が縮み、伸長型のテレスコピック部材40が延びて、フレーム部31は
図4(B)の状態へ移行する。さらに、前側のフレーム部31の下端を前方に引っ張ると、フレーム部31は
図4(B)の状態から
図4(C)の状態へ、そして、
図4(D)の状態へと移行する。フレーム部31が
図4(D)の状態に達すると各テレスコピック部材39、40の長さが固定されて、フレーム部31は
図3に示すような形状となる。
【0040】
パネル本体32は、実際に発送電を行う部分である。パネル本体32は、長方形の板状の形状を有しており、フレーム部31の下面側に着脱可能に固定されている。パネル本体32は、3箇所に埋め込まれた取付部41を有しており、この取付部41を介してフレーム部31に固定されている。
【0041】
図5は取付部41の概略図である。このうち、
図5(A)はパネル本体32が取り外されているときの取付部41の一部断面図であり、
図5(B)はパネル本体32が取りつけられているときの取付部41の部分断面図であり、
図5(C)は取付部41を下方から見た図である。
【0042】
図5(A)に示すように、単体パネル14のフレーム部31は、下方に突出する結合ピン42を有しており、パネル本体32の取付部41はこの結合ピン42と結合する。結合ピン42は、外周に係止溝43が形成されており、また、先端部44には、前側と後側に切欠部45が形成されている。
【0043】
一方、取付部41は、下面に長孔46が形成された円筒状の外殻部47と、上面が外殻部47に接するロック部材48とを有している。ロック部材48は、
図5(B)に示すように、爪部49を有している。爪部49は、先端が結合ピン42の係止溝43に挿入できるように構成されている。
図5(B)において爪部49は左右両側に位置しているが、前後(紙面手前及び紙面奥)には位置していない。この爪部49が係止溝43に挿入されているとき、ロック部材48はフレーム部31の結合ピン42に対して上下方向の移動が制限され、その結果、ロック部材48に接する取付部41も上下方向の移動が制限される(つまり、パネル本体32はフレーム部31に固定される)。
【0044】
また、
図5(B)に示す状態から、上下方向を回転軸としてロック部材48を90度回転させると、爪部49が結合ピン42の先端部44の切欠部45に対応する位置にまで移動する。そのため、この位置では、ロック部材48は結合ピン42に対して上下方向に移動することができる。なお、ロック部材48は、後述する簡易サービスユニット110の着脱シャフト125(
図12参照)の形状に対応する摘み部50を有している。
【0045】
ガイドローラ33(
図3の下側の拡大図参照)は、単体パネル14の展開時に使用される部材であり、後述する展開装置75の各レール78、79、80内を転がるように構成されている。ガイドローラ33には、上下方向を回転軸とする水平ローラ55と、左右方向を回転軸とする垂直ローラ56とが含まれる。ガイドローラ33は、いずれも上枠36及び下枠37の四隅付近に設けられている。
【0046】
左右連結部34(
図3の上側の拡大図参照)は、被左右連結部35に連結する部分であって、単体パネル14を左右方向に連結する際に使用する。左右連結部34は、上下方向に延びる縦挿入片57と、左右方向に変位する横挿入片58を有している。左右連結部34は、上枠36及び下枠37の左側前後両端部分に設けられている。
【0047】
被左右連結部35(
図3の右側の拡大図参照)は、左右連結部34に連結される部分である。被左右連結部35は、上下方向に延びる縦挿入孔59と、左右方向に延びる横挿入孔60を有している。被左右連結部35は、上枠36及び下枠37の右側前後両端部分に設けられている。
【0048】
左右連結部34及び被左右連結部35は、上記のように構成されているため、左側に位置する単体パネル14の被左右連結部35に、右側に位置する単体パネル14の左右連結部34が上方から覆うように接触することで、両者を連結することができる。つまり、被左右連結部35の縦挿入孔59と横挿入孔60に、左右連結部34の縦挿入片57と横挿入片58が挿入されて、被左右連結部35と左右連結部34は連結され、ひいては左右方向に隣接する単体パネル14が連結される。
【0049】
ここで、前後に連結された2枚の単体パネル14からなる単体パネルユニット30を単位とすると、単体パネルユニット30は、前端部分に設けられた前後連結部61と、後端部分に設けられた被前後連結部62とを有している。
【0050】
前後連結部61及び被前後連結部62は、互いに連結できるように構成されており、単体パネルユニット30を前後方向に連結する際に使用する。つまり、前方に位置する単体パネルユニット30の被前後連結部62と、その後方に位置する単体パネルユニット30の前後連結部61を連結させることで、前後に隣接する単体パネルユニット30同士を連結させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、単体パネルユニット30が前後連結部61及び被前後連結部62を有するが、前後に配置されている全ての単体パネル14が予め連結されていてもよい。つまり、本実施形態では、後述するように前後方向に6枚の単体パネル14が連結されるが、これらが全てが予め連結されていてもよい。この場合は、各単体パネルユニット30が前後連結部61及び被前後連結部62を有する必要はない。
【0052】
<パネルコンテナ>
続いて、パネルコンテナ65について説明する。前述したように、パネルコンテナ65は、バス11を構成するが、本来的には単体パネル14を収容する装置である。
図6は、パネルコンテナ65の斜視図である。
【0053】
図6に示すように、パネルコンテナ65は、外枠部66と、送出部67と、スラスタ68と、位置決めガイド69と、を有している。
【0054】
外枠部66は、パネルコンテナ65の外郭を形成する部分であり、直方体の形状を有している。本実施形態の外枠部66は、折り畳んだ状態の単体パネル14を80枚収容することができる。ただし、本実施形態では、パネルコンテナ65は72枚の単体パネル14を搭載して宇宙空間へ搬送される。また、外枠部66は、後述する簡易サービスユニット110が搭載可能であり、簡易サービスユニット110を搭載した状態で、地球から宇宙空間へと搬送される。なお、外枠部66には、簡易サービスユニット110を取り付けるための凸状の把持突起が複数箇所に設けられている。
【0055】
送出部67は、パネルコンテナ65に収容されている単体パネル14を後述する展開装置75へ送り出す部分である。送出部67は、上面側の2箇所と、下面側の2箇所に配置された送出コンベヤ70を有している。送出コンベヤ70は折り畳まれた状態の単体パネル14の端部に接しており、送出コンベヤ70が駆動することで、単体パネル14を前方へと送り出すことができる。なお、送出コンベヤ70の表面には、単体パネル14を把持する把持部を設けてもよい。
【0056】
スラスタ68は、パネルコンテナ65を宇宙空間で移動させるための装置である。スラスタ68は、燃料タンク71と噴射ノズル72を有している。燃料タンク71にはキセノンガスが収容されており、このキセノンガスを噴射ノズル72から噴射することで、推進力を得ることができる。なお、噴射ノズル72は、噴射角度が任意に変更できるように構成されている。
【0057】
位置決めガイド69は、後述する展開装置75とパネルコンテナ65の位置合わせを行うための部材である。位置決めガイド69は、パネルコンテナ65の左側面に設けられており、上下方向に対して傾斜する台形状の板材である。展開装置75にも位置決めガイド74が設けられており(
図7参照)、パネルコンテナ65の位置決めガイド69と展開装置75の位置決めガイド74が接することで、パネルコンテナ65と展開装置75の位置合わせが行われる。
【0058】
<展開装置>
続いて、展開装置75について説明する。展開装置75は、単体パネル14を展開する装置である。
図7は、展開装置75の斜視図である。また、
図8は、
図7のVIII面における断面図である。この展開装置75は、折畳み構造(トラス構造)として宇宙空間で展開してもよく、組立構造として宇宙空間で組み立ててもよい。
【0059】
図7に示すように、展開装置75は、アーム部76と、駆動部77と、既設パネルレール78と、展開パネルレール79と、補助パネルレール80と、展開部81と、スライド部82と、を有している。
【0060】
アーム部76は、前後方向(展開方向)に延び、上下方向から見てL字状の形状を有している。アーム部76は、上方側に位置する上アーム83と、下方側に位置する下アーム84とを有しており、上アーム83と下アーム84はそれらの端部において互いに連結されている。上アーム83には、展開部81のピニオンギア85に噛み合うラック86が前後方向に形成されているとともに、上面の後端部分と前後方向中央部分には把持突起87が形成されている。また、上アーム83には、パネルコンテナ65の位置決めガイドに対応する位置決めガイド74が設けられている。さらに、上アーム83及び下アーム84には、それぞれ展開部81をガイドするガイド溝88(
図8)が前後方向に形成されている。
【0061】
駆動部77は、展開装置75を前後方向に駆動する部分である。駆動部77は、単体パネル14のフレーム部31(
図3参照)を掴む複数の把持部材89と、これらの把持部材89を前後方向に移動させる移動手段90とを有している。移動手段90はいわゆる無端ベルトであり、その表面に把持部材89が固定されている。把持部材89が単体パネル14のフレーム部31を掴んだ状態で移動することで、展開装置75を前後方向に駆動することができる。
【0062】
既設パネルレール78は、既に展開されている(左側に位置する)単体パネル14(既設パネル)のガイドローラ33が挿入されるレールである(
図8の二点鎖線参照)。既設パネルレール78は、上アーム83と下アーム84のそれぞれに互いに対向するように設けられている。展開装置75は、この既設パネルレール78を用いることで、既に展開されている単体パネル14に沿って移動することができる。
【0063】
展開パネルレール79は、これから展開する(右側に位置する)単体パネル14のガイドローラ33が挿入されるレールである(
図8の二点鎖線参照)。展開パネルレール79は、下アーム84にのみ設けられている。
図8では、展開パネルレール79は、下アーム84に設けられた既設パネルレール78よりも上方に位置しており、両レールに段差が生じている。ただし、展開パネルレール79は前方側が低くなるように傾斜しており、前端部分においては下側の既設パネルレール78との段差は無くなる。
【0064】
補助パネルレール80は、これから展開する(右側に位置する)単体パネル14の右下、右上、左上に配置されたガイドローラ33が挿入されるレールである。補助パネルレール80は、アーム部76の先端部分の3箇所に設けられている。
【0065】
展開部81は、無重力の環境下で単体パネル14を展開するための部分である。展開部81は、上面部91、下面部92、及び側面部93から主に構成される移動枠部94を有している。移動枠部94の上面部91及び下面部92にはガイド挿入部95が形成されており(
図8)、このガイド挿入部95はアーム部76のガイド溝88に挿入されている。また、移動枠部94の上面部91及び下面部92にはアーム部76のラック86に噛み合うピニオンギア85が設けられている。このピニオンギア85が回転することによって、展開部81はアーム部76に対して前後方向に移動することができる。
【0066】
また、展開部81は、上面部91の内側に設けられた保持部96を有している。本実施形態の保持部96は、板状に形成されており、展開する単体パネル14のフレーム部31に接する。なお、保持部96はフレーム部31を把持できるように構成されていてもよい。また、保持部96は、上下方向に伸長し、フレーム部31に接触する位置と接触しない位置の間で移動できるように構成されている。
【0067】
さらに、展開部81は、上面部91の内側に設けられた押込みローラ97を有している。押込みローラ97は、展開する前後の単体パネル14を互いに平行にするための部材である。押込みローラ97は、左右方向を回転軸として回転する。仮に、展開した単体パネル14が前後で平行にない場合には、それらの単体パネル14の境界部分(単体パネルユニットの中央部分)は盛り上がる。この場合、展開部81が前後方向に移動する際に、押込みローラ97がその境界部分に接触する。これにより、前後に隣接する単体パネル14が互いに平行にすることができる。
【0068】
スライド部82は、後述する簡易サービスユニット110と連結して、展開装置75を左右方向にスライドさせる部分である。スライド部82は、アーム部76の前端に設けられており、固定部材98と可動部材99とを有している。固定部材98は左右方向に延びるレール状の部材であり、可動部材99はこの固定部材98に沿って左右方向に移動することができる。また、可動部材99の左右両端には、連結孔101が形成されている。
【0069】
<簡易サービスユニット>
続いて、簡易サービスユニット110について説明する。簡易サービスユニット110は、発電システム100の組立作業等を行う装置である。
図9は、簡易サービスユニット110の平面図である。また、
図10は、簡易サービスユニット110の側面図である。
【0070】
図9及び
図10に示すように、簡易サービスユニット110は、土台部111と、マニピュレータ112とを有している。
【0071】
土台部111は、マニピュレータ112を支持する部分であって、単体パネル14やパネルコンテナ65に取り付けできるように構成されている。土台部111は、枠体113と、把持レール114と、移動防止部材115と、連結部116と、太陽電池パネル117と、パネル着脱部118と、を有している。
【0072】
枠体113は、土台部111のベースとなる部分である。枠体113は、矩形枠状の形状を有しており、その大きさは単体パネル14にほぼ等しい。枠体113の四隅には、凸状のマニピュレータコネクタ119が設けられており、マニピュレータ112のハンド部129によって把持できるように構成されている。土台部111は、このマニピュレータコネクタ119を介して、マニピュレータ112へ電源及び制御信号を供給することができる。
【0073】
把持レール114は、枠体113の下面側に配置され、前後方向に延びるレール状の部材である。把持レール114は、単体パネル14のガイドローラ33を把持できるとともに、把持されたガイドローラ33はこの把持レール114内をスライドできるように構成されている。
図11は、把持レール114の断面図である。把持レール114には、水平ローラ55を把持する水平把持レール120と、垂直ローラ56を把持する垂直把持レール121が含まれる。このうち垂直把持レール121は、垂直ローラ56の上下方向外側を覆う外側部材122と、垂直ローラ56の上下方向内側を覆うとともに水平方向に移動可能な内側部材123とによって主に構成されている。
【0074】
このように構成された把持レール114は、特に垂直ローラ56を次のようにして把持することができる。まず、
図11(A)に示すように、垂直ローラ56の上下方向外側から把持レール114を接近させる。そして、
図11(B)に示すように、垂直ローラ56に外側部材122を接触させる。この状態で、
図11(C)に示すように、内側部材123を左右方向に移動させ、垂直ローラ56の上下方向内側に配置する。これにより、把持レール114は垂直ローラ56を把持することができる。
【0075】
移動防止部材115は、単体パネル14上で土台部111が前後左右に移動するのを防止する部材である。本実施形態の移動防止部材115は板状に形成されており、枠体113の前後左右の外面に設けられている。また、移動防止部材115は、
図10に示すように、上下方向に回動可能に構成されている。ある単体パネル14上で移動防止部材115を下方に位置させると、その単体パネル14のフレーム部31を囲むように各移動防止部材115を配置することができる。これにより、その単体パネル14に対して土台部111が前後左右に移動するのを防止することができる。
【0076】
連結部116は、展開装置75などに連結するための部分である。連結部116は、枠体113の後端部の左右両側に位置する一組の狭持部材124を有している。各狭持部材124は、左右方向に移動することができるように構成されており、両狭持部材124の間隔を変更することで、狭持対象となる部材を狭持することができる。また、両狭持部材124の内側には連結ピン130が設けられている。連結ピン130は、展開装置75の可動部材99に形成された連結孔101(
図7参照)に挿入することができる。
【0077】
太陽電池パネル117は、簡易サービスユニット110の電源を確保する部分である。太陽電池パネル117は、枠体113の内側中央部分に位置している。太陽電池パネル117は、太陽光によって発電を行い、発電によって得たエネルギを簡易サービスユニット110の動力として使用している。なお、太陽電池パネル117は、必ずしも枠体113の内側中央部分に配置しなくてもよく、例えば枠体113に沿って(矩形枠状に)配置してもよい。
【0078】
パネル着脱部118は、単体パネル14のパネル本体32を着脱する部分である。
図12は、パネル着脱部118を用いてパネル本体32を着脱する方法を示した側面図である。なお、パネル本体32の交換は下方から行うため、
図12の上下と
図10の上下は逆になっている。
図12に示すように、パネル着脱部118は、着脱シャフト125と、着脱シャフト125を回転させるアクチュエータ126を有している。着脱シャフト125は水平方向に延びる羽根部127を有している。この羽根部127は、上下方向から見た場合、パネル本体32の取付部41に形成された長孔46に対応する形状となっている。
【0079】
パネル着脱部118は以上のように構成されているため、次のようにして、パネル本体32を取り外すことができる。
図12(A)に示すように、着脱シャフト125を外殻部47の内側に挿入し、
図12(B)に示すように着脱シャフト125を摘み部50に結合させる。そして、
図12(C)に示すように、着脱シャフト125を90度回転させる。これにより、ロック部材48によるロックが解除される。その後、
図12(D)に示すように、パネル着脱部118を下方に引き下ろせば、着脱シャフト125の羽根部127が外殻部47の内面に引っ掛かり、パネル本体32全体をフレーム部31から取り外すことができる。
【0080】
マニピュレータ112は、土台部111から延びて、種々の凸状部材を把持する装置である。マニピュレータ112は、複数の関節を有するアーム部128と、アーム部128の両端に設けられたハンド部129を有している。ハンド部129は、凸状部材を把持できるように構成されている。ここでいう凸状部材には、土台部111に設けられたマニピュレータコネクタ119、単体パネル14に設けられたガイドローラ33、パネルコンテナ65に設けられた把持突起、及び、展開装置75に設けられた把持突起87などが含まれる。
【0081】
<単体パネルの展開方法>
続いて、
図13から
図18を参照して、単体パネル14の展開方法について説明する。
図13から
図18は、単体パネル14の展開方法を示した概略平面図である。本実施形態では、展開装置75及び簡易サービスユニット110を用いて、パネルコンテナ65に搭載された単体パネル14の展開を行う。なお、パネルコンテナ65には、予め簡易サービスユニット110が取り付けられている。本実施形態では、前後方向に6枚の単体パネル14(3組の単体パネルユニット30)を連結し、左右方向に12枚の単体パネル14(12組の単体パネルユニット30)を連結する。
【0082】
まず、
図13(A)に示すように、いわゆるマニピュレータバーシングを行い、パネルコンテナ65と展開装置75をドッキングさせる。具体的には、パネルコンテナ65に取り付けられた簡易サービスユニット110が展開装置75の把持突起87を把持し、展開装置75をパネルコンテナ65に接近させる。展開装置75とパネルコンテナ65は、互いに対応する位置決めガイド69、74を有しているため、展開装置75とパネルコンテナ65は所定の位置関係でドッキングすることができる。なお、パネルコンテナ65は、展開装置75の後方部分に位置する。
【0083】
次に、
図13(B)に示すように、展開装置75は展開部81をパネルコンテナ65側に移動させる。このとき、パネルコンテナ65は単体パネル14を少し前に送り出し、その単体パネル14の前端を展開部81の保持部96(
図7等参照)で保持する。
【0084】
次に、
図13(C)に示すように、展開部81が単体パネル14の前端を保持した状態で、展開部81を前方に移動させる。これにより、単体パネル14の先端は、展開装置75の展開パネルレール79(
図7等参照)に沿って前方に引っ張られる。その結果、この前端が引っ張られた単体パネル14(1組目の単体パネルユニット30)が次第に展開される。
【0085】
次に、
図13(D)に示すように、展開部81がアーム部76の前端にまで達すると、展開部81は保持部96を引き上げて、単体パネル14の保持を解除する。
図13(D)に示す状態では、単体パネル14はおおよそ展開された状態となるが、宇宙空間は無重力であるため、単体パネルユニット30の中央部分が盛り上がったままで、前後に隣接する単体パネル14が互いに平行でない(同一平面状にない)場合もある。
【0086】
そこで、次に、
図14(A)に示すように、展開部81を再びパネルコンテナ65に向かって移動させる。これにより、前後の単体パネル14が平行でない場合には、展開部81の押込みローラ97(
図8参照)が単体パネル14の上面側に接触し、単体パネル14が下方に押し込まれる。その結果、前後の単体パネル14は平行な状態となる。これにより、1組目の単体パネルユニット30の展開が終了する。
【0087】
次に、
図14(B)に示すように、展開部81がパネルコンテナ65にまで達すると、2組目の単体パネルユニット30を構成する単体パネル14の前端を保持部96で保持する。このようにして、2組目の単体パネルユニット30の展開が開始される。
【0088】
次に、
図14(C)に示すように、展開部81が単体パネル14の前端を保持し、その状態で展開部81を前方に移動させる。これにより、2組目の単体パネルユニット30が次第に展開される。さらに、2組目の単体パネルユニット30の前後連結部61(
図3参照)が、1組目の単体パネルユニット30の被前後連結部62(
図3参照)に連結され、1組目の単体パネルユニット30は前方に押し出される。
【0089】
次に、
図14(D)に示すように、展開部81がアーム部76の前端にまで達すると、展開部81が単体パネル14の保持を解除した後、パネルコンテナ65に向かって展開部81を再び移動させる。これにより、2組目の単体パネルユニット30の前後の単体パネル14は互いに平行な状態となる。これで、2組目の単体パネルユニット30の展開が終了する。その後、2組目と同様の手順を経て、3組目の単体パネルユニット30の展開を行う。
【0090】
以上で、1列目にあたる1組目から3組目までの単体パネルユニット30の展開が完了する。なお、詳しくは後述するが、1列目の単体パネル14の左側には、予めテザーワイヤ12が取り外し可能に固定されている(
図19等参照)。また、1列目の最も前に位置する単体パネル14には1台のワイヤ制御装置13が取り付けられており、1列目の最も後の単体パネル14には3台のワイヤ制御装置13が取り付けられている(
図19等参照)。
【0091】
次に、
図15(A)に示すように、パネルコンテナ65に取り付けられた簡易サービスユニット110からマニピュレータ112を伸ばし、そのマニピュレータ112のハンド部129で展開装置75の把持突起87を把持する。
【0092】
次に、
図15(B)に示すように、パネルコンテナ65に取り付けられていた簡易サービスユニット110の土台部111を取り外し、マニピュレータ112を利用して土台部111を前方に移動させる。
【0093】
次に、
図15(C)に示すように、土台部111を展開済みの単体パネル14に乗せ、土台部111の把持レール114でその単体パネル14のガイドローラ33を把持する。なお、ガイドローラ33を把持する方法は、
図11で説明した通りである。これにより、土台部111は、単体パネル14に対して前後方向にスライド可能となる。
【0094】
次に、
図15(D)に示すように、土台部111を展開装置75に接触するまで移動させる。そして、土台部111の後端に位置する狭持部材124(
図9参照)によって展開装置75の先端に位置する可動部材99(
図7参照)を狭持し、土台部111と展開装置75を連結する。
【0095】
次に、
図16(A)に示すように、土台部111を後方に移動させる。これにより、展開装置75(及びパネルコンテナ65)も後方に移動する。マニピュレータ112のハンド部129で展開済みの単体パネル14のガイドローラ33を掴み、アーム部128を伸縮させれば、土台部111を前後方向にスライドさせることができる。
【0096】
次に、
図16(B)に示すように、展開装置75が展開済みの単体パネル14よりも後方に位置させる。これにより、当該単体パネル14のガイドローラ33は、展開装置75の展開パネルレール79から外れる。この状態で、展開装置75の可動部材99を固定部材98に対して左側に移動させると、展開装置75は土台部111に対して右側に移動する。なお、このとき、土台部111は、移動防止部材115(
図10参照)を下方に回動することで、前後左右に移動するのを防止する。
【0097】
次に、
図16(C)に示すように、簡易サービスユニット110を前方へ移動させる。これにより、展開済みの単体パネル14のガイドローラ33が、展開装置75の既設パネルレール78に嵌め込まれる。そして、展開装置75は、駆動部77(
図7参照)の把持部材89で単体パネル14を把持し、その把持部材89を移動させることで、自力で前後方向に駆動することができる。
【0098】
次に、
図17(A)に示すように、1列目の前端の単体パネル14にまで展開装置75が達し、土台部111がその単体パネル14の前端よりも前方に位置すると、展開装置75は可動部材99を駆動し、簡易サービスユニット110を右側に移動させる。
【0099】
次に、
図17(B)に示すように、展開装置75は、展開部81の保持部96で単体パネル14の前端を保持し、その状態で展開部81を前方に移動させ、単体パネル14の前端を前方へ引っ張る。これにより、2列目にあたる単体パネル14の展開が開始される。
【0100】
次に、
図17(C)に示すように、展開部81がアーム部76の前端にまで達すると、展開部81は保持部96を引き上げて、単体パネル14の保持を解除する。
【0101】
次に、
図18(A)に示すように、展開部81をパネルコンテナ65に向かって移動させる。これにより、展開部81の押込みローラ97が単体パネル14の上面側に接触し、前後に隣接する単体パネル14は互いに平行な状態となる。その後、展開装置75は、展開部81の保持部96によって、次に展開する単体パネル14の前端を保持する。
【0102】
次に、
図18(B)に示すように、展開装置75は展開済みの(1列目の)単体パネル14に沿って後方へ移動する。前述したように、展開パネルレール79は前方側が低くなるように傾斜しており、前端部分においては下側の既設パネルレール78との段差は無くなる。そのため、展開装置75が後方に移動すると、展開装置75の先端部分の通過に伴って、左右連結部34と被左右連結部35(
図3参照)が結合し、左右方向に隣接する単体パネル14同士が連結されてゆく。
【0103】
上記のように展開装置75は後方に移動するが、この移動速度と同じ速度で展開部81は展開装置75に対して前方に移動する。つまり、展開済みの(1列目の)単体パネル14を基準とすると、展開部81は移動していない。そのため、次に展開する単体パネルユニット30は、展開部81が単体パネル14の前端を保持し、パネルコンテナ65が単体パネル14の後端を後方に引っ張っていると考えることができる。
【0104】
次に、
図18(C)に示すように、展開部81がアーム部76の前端に達すると展開中の単体パネルユニット30はおおよそ展開される。そして、展開部81をパネルコンテナ65側にまで移動することで、前後に隣接する単体パネル14は互いに平行な状態となる。さらに、2列目における3組目の単体パネル14も2組目の場合と同様の手順を経ることで、展開することができる。これにより、2列目の展開が完了する。
【0105】
そして、以上で説明した2列目の展開方法を12列目まで続ければ、発送電パネル10全体の展開が完了する。なお、発送電パネル10の最も右側に位置する12列目の単体パネル14の右側には、予めテザーワイヤ12が取り外し可能に固定されている(
図19等参照)。また、12列目の最も前に位置する単体パネル14には1台のワイヤ制御装置13が取り付けられており、12列目の最も後の単体パネル14にも1台のワイヤ制御装置13が取り付けられている。
【0106】
<テザーワイヤの張り方>
次に、
図19から
図23を参照して、テザーワイヤ12の張り方について説明する。
図19から
図22は、テザーワイヤ12の張り方を示した概略平面図であり、
図23は、テザーワイヤ12の張り方を示した概略斜視図である。
【0107】
本実施形態においては、発送電パネル10を展開した後にテザーワイヤ12が張られる。まずは、発送電パネル10を展開した直後の状態について説明する。
図19は、発送電パネル10を展開した後の発送電パネル10の状態を示している。
【0108】
図19に示すように、発送電パネル10の左前の角には1台のワイヤ制御装置13が取り付けられており、そのワイヤ制御装置13から延びるテザーワイヤ12が発送電パネル10の左側の辺に取り外し可能に取り付けられている。なお、このテザーワイヤ12に対応するもう1台のワイヤ制御装置13は、発送電パネル10の左後の角に取り付けられている。このワイヤ制御装置13は、後でバス11(パネルコンテナ65)に取り付けられる。
【0109】
また、発送電パネル10の左後の角には、上述したワイヤ制御装置13とは別のワイヤ制御装置13が2台取り付けられている。この2台のワイヤ制御装置13は協働してテザーワイヤ12の制御を行うものであり、このうちの1台が、後でバス11(パネルコンテナ65)に取り付けられる。
【0110】
また、発送電パネル10の右前の角には1台のワイヤ制御装置13が取り付けられており、そのワイヤ制御装置13から延びるテザーワイヤ12が発送電パネル10の右側の辺に取り外し可能に取り付けられている。このテザーワイヤ12に対応するもう1台のワイヤ制御装置13は、パネルコンテナ65に予め取り付けられており、両ワイヤ制御装置13の間にはテザーワイヤ12が予め渡されている。
【0111】
また、発送電パネル10の右後の角には1台のワイヤ制御装置13が取り付けられており、これに対応するもう1台のワイヤ制御装置13はパネルコンテナ65に予め取り付けられている。この両ワイヤ制御装置13の間にはテザーワイヤ12が予め渡されている。展開した後の発送電パネル10は以上のような状態であり、この状態から以下で説明するようにしてテザーワイヤ12が張られる。
【0112】
まず、
図19に示すように、簡易サービスユニット110、展開装置75、及びパネルコンテナ65が一体となって後方に移動し、展開装置75を発送電パネル10よりも後方側に位置させる。
【0113】
次に、同じく
図19に示すように、簡易サービスユニット110は、マニピュレータ112を左側に伸ばして、土台部111よりも左側に位置する単体パネル14のガイドローラ33を把持する。そして、土台部111の把持レール114が把持するガイドローラ33の把持を解除し、マニピュレータ112によって土台部111を持上げて、土台部111を単体パネル14から離間させる。
【0114】
次に、
図20に示すように、マニピュレータ112を用いて、土台部111を離間させた単体パネル14よりも左側の単体パネル14上に土台部111を乗せる。そして、土台部111の把持レール114を移動先の単体パネル14のガイドローラ33に把持させる。さらに、マニピュレータ112を左側に伸ばして、同じ動作を繰り返す。これにより、土台部111、並びに、土台部111に連結された展開装置75及びパネルコンテナ65が左側へと移動する。
【0115】
次に、
図21に示すように、土台部111が発送電パネル10の左後の角付近にまで移動すると、簡易サービスユニット110は、発送電パネル10の左後の角に取り付けられたワイヤ制御装置13のうち、バス11(パネルコンテナ65)に取り付けるワイヤ制御装置13をマニピュレータ112で取り外す。なお、ワイヤ制御装置13の表面には、マニピュレータ112のハンド部129が把持可能な凸状の把持突起が設けられている。
【0116】
次に、
図22に示すように、マニピュレータ112を用いて、発送電パネル10の左後の角に取り付けられたワイヤ制御装置13のうちの2台をパネルコンテナ65に取り付ける。
【0117】
次に、
図23に示すように、4台のワイヤ制御装置13を搭載したパネルコンテナ65を上昇させる。パネルコンテナ65に設けられたスラスタ68により、進行方向(後方)と反対側の方向(前方)に噴射を行うことにより、パネルコンテナ65は次第に上昇してゆく。そして、パネルコンテナ65が所定の位置にまで達すると、テザーワイヤ12を張る作業は完了する。
【0118】
なお、パネルコンテナ65を上昇させる際には、発送電パネル10に固定されたテザーワイヤ12を取り外すために、パネルコンテナ65を左右に移動させる。つまり、左側にパネルコンテナ65を移動させて発送電パネル10の左側に取り付けられたテザーワイヤ12を引っ張って外した後、右側にパネルコンテナ65を移動させて発送電パネル10の右側に取り付けられたテザーワイヤ12を引っ張って外す。また、このときテザーワイヤ12が発送電パネル10の角に引っ掛からないように、ワイヤ制御装置13によってテザーワイヤ12の長さを調整する。
【0119】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態について説明する。上述したように、第2実施形態の発電システム200は、実際の運用を想定した実用機にあたる。
【0120】
<全体構成>
まず、発電システム200の全体構成について説明する。
図24は、本実施形態に係る発電システム200の概略図斜視図である。本実施形態に係る発電システム200は、いわゆる2500m級であって、一辺の長さは約2500mである。本実施形態の発電システム200は、地上36000kmという非常に高い静止軌道上を回転する。
【0121】
図24に示すように、発電システム200は、第1実施形態と同様に、発送電パネル10と、バス11と、テザーワイヤ12と、ワイヤ制御装置13と、を備えるとともに、ストレージユニット131(
図25)と、コマンダユニット132(
図26)と、をさらに備えている。
【0122】
発送電パネル10は、一辺の長さがおよそ2500mであり、一辺の長さが約500mである25個のブロックに分けられる。そして、各ブロックは、約11000枚の単体パネル14によって構成されている。そのため、発送電パネル10全体としては、約30万枚の単体パネル14によって構成されている。
【0123】
テザーワイヤ12は、発送電パネル10の各ブロックの四隅からバス11へ延びている。テザーワイヤ12は、左右方向中央において最も長く、左右方向外側では短くなるように構成されている。ただし、前後方向(すなわち発電システム200の移動方向)においては、同じ長さである。テザーワイヤ12の長さをこのように設定することで、発電システム200の慣性モーメントを大きくし、発電システム200の姿勢が崩れるのを抑えることができる。
【0124】
バス11は、本実施形態においては、ブロック毎に設けられている。また、本実施形態のバス11は、1台のパネルコンテナ65によって構成されるのではなく、64機のパネルコンテナ65(コンテナセット142)によって構成されている。
【0125】
ワイヤ制御装置13は、各ブロックの四隅に1台ずつと、各ブロックに対応するバスに4台ずつ配置されている。本実施形態のワイヤ制御装置13の構成は、第1実施形態で説明した構成と基本的に同じである。
【0126】
ストレージユニット131は、交換用のパネル本体32を収容する装置である。本実施形態の発電システム200は、永続的な運用を予定しているため、パネル本体32が破損した場合にはそのパネル本体32を交換する。
図25は、ストレージユニット131の概略図である。ただし、
図25(A)はストレージユニット131の側面図であり、
図25(B)はストレージユニット131の平面図である。なお、ストレージユニット131は、発送電パネル10の端部の複数箇所に配置されている。
【0127】
また、ストレージユニット131は、交換用のパネル本体32を収容する収容部133と、収容されたパネル本体32を下方側に送り出す送出部134とを有している。本実施形態では、交換用である未使用のパネル本体32は収容部133の下方側から取り出され、使用済みのパネル本体32は収容部133の上方側から回収されるが、これが逆であってもよい。さらに、ストレージユニット131は、発電システム200の軌道を維持するためのスラスタ135を有している。
【0128】
コマンダユニット132は、各機器を制御する装置である。
図26は、コマンダユニット132の概略斜視図である。コマンダユニット132は、冗長化のために、発送電パネル10の端部の2箇所に配置されている。コマンダユニット132は、制御装置を内蔵する本体136と、各機器と通信を行うためのアンテナ137と、地上オペレータとの通信を行うためのパラボラアンテナ138と、電源を確保するための太陽電池パネル139とを有している。コマンダユニット132は、地上オペレータからの指令に基づいて、バス11、各サービスユニット110、141、ワイヤ制御装置13、ストレージユニット131等に無線により制御信号を送信する。
【0129】
<サービスユニット>
続いて、サービスユニット141について説明する。サービスユニット141は、発電システム200の構築及び維持を行うための装置であり、発電システム200の各箇所に複数台常駐させている。
図27は、サービスユニット141の平面図である。
図27に示すように、サービスユニット141は、土台部111を2台有している点で簡易サービスユニット110と異なるが、それ以外は土台部111及びマニピュレータ112の構造を含め両者は基本的に同じ構成を有している。サービスユニット141は、2つの土台部111を有しているため、パネル本体32の交換作業等を効率よく行うことができる。
【0130】
<コンテナセット>
続いて、コンテナセット142について説明する。
図28は、コンテナセット142の概略斜視図である。本実施形態の発送電パネル10は、非常に多くの単体パネル14によって構成されている。そのため、単体パネル14は1台のパネルコンテナ65ではなく、
図28に示すような複数のパネルコンテナ65が連なったコンテナセット142によって地球から宇宙空間へ搬送される。なお、コンテナセット142は、パネルコンテナ65の他、ストレージユニット131を含んでいてもよい。
【0131】
コンテナセット142を構成するパネルコンテナ65は、
図6に示すものと基本的には同じであるが、スラスタ68は各パネルコンテナ65が備えるのではなく、コンテナセット142全体としてスラスタ68を有している。また、各パネルコンテナ65には、80枚の単体パネル14が収容されている。なお、この80枚の単体パネル14を連結したときの長さは、発送電パネル10の各ブロックの一辺の長さに一致する。
【0132】
さらに、コンテナセット142には、簡易サービスユニット110又はサービスユニット141が複数取り付けられている。これら簡易サービスユニット110等は、コンテナセット142上を自由に移動することができる。なお、このコンテナセット142の全部又は一部が、バス11の一部を構成することとなる。
【0133】
<単体パネルの展開方法>
続いて、
図29及び
図30を参照して、単体パネル14の展開方法について説明する。
図29及び
図30は、単体パネル14の展開方法を示した概略平面図である。本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、展開装置75及び簡易サービスユニット110(又はサービスユニット141)を使用して単体パネル14の展開を行う。
【0134】
まず、
図29(A)に示すように、簡易サービスユニット110を用いて、コンテナセット142から1台のパネルコンテナ65を切離す。そして、切り離したパネルコンテナ65と展開装置75をドッキングさせる。ドッキングの方法は、第1実施形態で説明した通りである。
【0135】
次に、
図29(B)に示すように、展開装置75を用いてパネルコンテナ65に収容されていた単体パネル14(単体パネルユニット30)を順に前方へ送り出して展開する。この1列目における単体パネル14の展開方法は、第1実施形態で説明した通りである。ただし、本実施形態では、1台のパネルコンテナ65に収容された全て(80枚)の単体パネル14を連続して展開し、これを1列目とする。なお、空になったパネルコンテナ65は、簡易サービスユニット110によって、コンテナセット142のもとの位置に戻される。そして、単体パネル14を収容した別のパネルコンテナ65をコンテナセット142から切り離し、そのパネルコンテナ65を展開装置75にドッキングさせる。
【0136】
次に、
図29(C)に示すように、簡易サービスユニット110を使用して、展開装置75を展開した単体パネル14の後端まで移動させ、その後、展開装置75を右側にスライドさせる。具体的な方法は、第1実施形態で説明した通りである。
【0137】
次に、
図29(D)に示すように、展開装置75を1列目の最も前方の単体パネル14まで移動し、2列目の単体パネル14の展開を開始する。なお、コンテナセット142は、簡易サービスユニット110を用いて(又は専用の装置を用いて)、展開済みの単体パネル14に連結しておく。2列目についても、展開装置75はパネルコンテナ65に収容された全ての単体パネル14を、後方に移動しながら展開する。同様にして、3列目、4列目と順に単体パネル14の展開を行い、150列目まで展開すると、1つのブロックが完成する。なお、コンテナセット142の全てのパネルコンテナ65が空になった場合は、別のコンテナセット142が搬送される。
【0138】
次に、
図30に示すように、別のブロックに相当する単体パネル14の展開を開始する。具体的には、150列目に引き続き、151列目、152列目と展開を進めることで、完成したブロックの右側に別のブロックを形成する。また、完成したブロックの1列目の後端から単体パネル14の展開を開始することで、完成したブロックの後側に別のブロックを形成する。このように展開を進めることで、発送電パネル10を構成する全てのブロックが完成する。
【0139】
<ワイヤの張り方>
続いて、
図31から
図33を参照して、テザーワイヤ12の張り方について説明する。
図31から
図33は、テザーワイヤ12の張り方を説明した斜視図である。上述したように、発送電パネル10のブロックごとにテザーワイヤ12が張られるが、本実施形態では、一部のブロックが完成した後に、テザーワイヤ12を順次張ってゆく。
【0140】
まず、
図31に示すように、サービスユニット141を用いて、テザーワイヤ12を張るブロックの角の近傍にまでコンテナセット142(又はコンテナセット142の一部)を搬送する。サービスユニット141は、2台の土台部111を有するため、2台の土台部111を交互に進め、二足歩行するようにして移動することができる。本実施形態では、2台ある土台部111のうちの1台にコンテナセット142を乗せ、その状態で移動する。なお、コンテナセット142と土台部111の連結は、専用のアダプタを用いて行ってもよい。
【0141】
次に、
図32に示すように、コンテナセット142を持上げて、その下面部分にワイヤ制御装置13を取り付ける。コンテナセット142の持ち上げは、コンテナセット142を搬送したサービスユニット141のマニピュレータ112で行うことができる。具体的には、マニピュレータ112のうちコンテナセット142を乗せていた方の土台部111に連結されていたハンド部129を切り離し、切り離したハンド部129でコンテナセット142を把持して持上げる。また、ワイヤ制御装置13の取付けは、別の簡易サービスユニット110又はサービスユニット141で行うことができる。なお、コンテナセット142に取り付けられたワイヤ制御装置13に対応するもう一方のワイヤ制御装置13は、テザーワイヤ12を張るブロックの角に予め取り付けておく。以上と同じ作業を、テザーワイヤ12を張るブロックの四隅の他の3箇所でも行う。
【0142】
次に、
図33に示すように、スラスタ135を用いてワイヤ制御装置13を取り付けたコンテナセット142をブロックの四隅からそれぞれ上昇させる。各コンテナセット142は、バス11が配置される所定の高さにまで上昇させる。そして、所定の高さにまで上昇させたコンテナセット142は、搭載されている簡易サービスユニット110を用いて互いに連結する。以上の作業を行うことで、各コンテナセット142が互いに結合してバス11が形成され、テザーワイヤ12を張る作業が完了する。
【0143】
<パネル本体の交換方法>
続いて、
図34及び
図35を参照して、パネル本体32の交換方法について説明する。
図34は、ストレージユニット131からのパネル本体32の取得方法及びストレージユニット131におけるパネル本体32の回収方法を示した側面図である。また、
図35は、パネル本体32の交換方法を説明する図であり、発送電パネル10を下方から見た図である。なお、
図35において、黒く塗られているものが交換対象のパネル本体32であり、斜線が施されているものが交換用のパネル本体32である。パネル本体32の交換は、サービスユニット141を用いて行う。パネル本体32の交換が必要になった場合は、次のようにして交換を行う。
【0144】
まず、
図34(A)に示すように、サービスユニット141をストレージユニット131の近傍、かつ、発送電パネル10の下面側に移動させる。そして、サービスユニット141は、ストレージユニット131の下方から送り出される交換用のパネル本体32を一方の土台部111で保持する。なお、ガイドローラ33は単体パネル14の上面側だけでなく下面側にも形成されているため、このガイドローラ33を把持してサービスユニット141は発送電パネル10の上面側と下面側を行き来することができる。なお、上記のように、サービスユニット141を発送電パネル10の下面側に移動させるのは、パネル本体32は単体パネル14の下方から取り外しを行うからである。
【0145】
次に、
図35(A)に示すように、一方の土台部111にパネル本体32を保持したままで、交換対象となるパネル本体32の近傍まで移動する。
【0146】
次に、
図35(B)に示すように、2台ある土台部111のうち、交換用のパネル本体32を保持していない方の土台部111を交換対象となるパネル本体32の下面側に配置する。そして、交換対象のパネル本体32の下面側に配置した土台部111のパネル着脱部118を用いて、交換対象のパネル本体32を単体パネル14から取り外す。パネル本体32を取り外す方法は、
図12で説明したとおりである。
【0147】
次に、
図35(C)に示すように、取り外したパネル本体32を土台部111で保持したまま、サービスユニット141を隣接する別の場所に移動させる。
【0148】
次に、
図35(D)に示すように、交換用のパネル本体32を保持する土台部111を、パネル本体32を取り外した単体パネル14の下面に配置し、保持する交換用のパネル本体32を単体パネル14に取り付ける。パネル本体32の取付け方法は、パネル本体32の取り外しと逆の手順を経ることで行うことができる。これにより、パネル本体32の交換が完了する。
【0149】
なお、
図34(B)に示すように、パネル本体32を交換した後は、交換したパネル本体32をストレージユニット131まで搬送し、上面側からストレージユニット131において回収する。
【0150】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。