(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137710
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの合成
(51)【国際特許分類】
C07C 17/25 20060101AFI20170522BHJP
C07C 17/38 20060101ALI20170522BHJP
C07C 21/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C17/38
C07C21/04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-180988(P2015-180988)
(22)【出願日】2015年9月14日
(62)【分割の表示】特願2013-542006(P2013-542006)の分割
【原出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2015-221840(P2015-221840A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】61/418,566
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ディー.ロウゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジャクソン
【審査官】
安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−066613(JP,A)
【文献】
特公昭51−004967(JP,B1)
【文献】
特開昭62−198628(JP,A)
【文献】
特開昭53−065805(JP,A)
【文献】
米国特許第02725411(US,A)
【文献】
特公平02−047969(JP,B2)
【文献】
特開2010−229047(JP,A)
【文献】
特許第5838219(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの製造方法であって、
(a)液相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、閉じた容器内で少なくとも175℃に少なくとも1時間加熱し、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを含む生成物の混合物を生成させる工程と、
(b)前記混合物を冷却する工程と、
(c)HClを前記生成物の混合物から分離する工程と、
(d)1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを回収する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを生じる選択性が少なくとも90%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを生じる選択性が少なくとも95%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
液相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、少なくとも200℃に加熱することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
液相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、少なくとも175℃に少なくとも2時間加熱することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年12月1日に提出された米国特許仮出願第61/418、566の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して塩素化オレフィンの合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モントリオール議定書の結果として、オゾンを破壊するクロロフルオロカーボン(CFCs)とハイドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)が段階的に廃止されているために、過去二、三十年の間、クロロフルオロカーボン工業界は、それらに代替する冷却剤を見つける努力をしてきた。多くの応用のための解決策は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)化合物を冷却材、溶媒、消化剤、発泡剤および高圧ガスに使用するために商業化することである。これらの新規化合物は、例えばHFC冷却材など、即ちHFC−134aおよびHFC−125が、今日最も広く用いられているが、オゾンを破壊する可能性がなく、従ってモントリオール議定書の結果としての現行の規制による段階的廃止には影響を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0106263号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】CRC Handbook of Chemistry and Physics、81stEdition(2000−2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オゾンの破壊の懸念事項に加えて、地球温暖化が、多くのこれらの適用において、他の環境の懸念事項である。従って、これらの化合物には、低いオゾン破壊の基準、並びに地球温暖化の可能性が低いことの双方に合致した組成物の必要性がある。いくつかのハイドロフルオロオレフィンは、両方の目的を満たすものと信じられている。したがって、塩素を含まず、地球温暖化の起こす可能性も低いハロゲン化炭化水素およびフルオロオレフィンを提供する製造方法の必要性がある。
【0007】
カーエアコン市場(mobile air-conditioning market)用に、地球温暖化の可能性を低減した新規冷却材を開発することにもかなりの興味がある。
【0008】
HFC−1234yf(CF
3CF=CH
2)およびHCF−1234ze(CF
3CH=CHF)は、両方ともオゾン破壊がなく、且つ地球温暖化の可能性が低いものであり、潜在的な冷却剤として確認されている。先行技術文献1には、CF
3CF
2CH
3またはCF
3CHFCH
2Fの触媒気相脱フッ化水素反応によるHFC−1234yfの製造および、CF
3CH
2CHF
2の気相触媒による脱フッ化水素反応によるHFC−1234ze(E−体およびZ体の異性体の混合物)の製造が開示されている。
【0009】
HFC−1234yfの製造のための、より選択的で効率的な製造方法の継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、反応領域において、気相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、鉄を含む触媒と接触させて、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを含む生成物の混合物を生成させる工程と、製造された生成物の混合物から1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを回収する工程を含む、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素反応である。
【0011】
他の実施形態では、本開示は、液相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、少なくとも175℃の温度に少なくとも1時間加熱し、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを含む生成物の混合物を生成させる工程と、前記生成物の混合物を冷却する工程と、HClを前記生成物の混合物から分離する工程と、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを回収する工程を含む、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素反応である。
【0012】
上述の一般的記述および以下の詳細な説明は、単なる例示および説明であり、添付の特許請求の範囲で定義される本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素の方法であって、反応領域において、気相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、鉄を含む触媒と接触し、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを含む生成物の混合物を生じさせる工程と、製造された前記生成物の混合物から1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを回収する工程を含む工程である。
【0014】
他の実施形態では、本開示は1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素の方法であって、液相中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、少なくとも175℃の温度に少なくとも1時間加熱し、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを含む生成物の混合物を生成する工程と、前記生成物の混合物を冷却する工程と、HClを前記生成物の混合物から分離する工程と、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを回収する工程を含む方法である。
【0015】
多くの態様及び実施形態が先に記載されており、これは単に例示であり、制限ではない。本明細書を読んだ後に、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者は他の態様および実施形態が可能であることを認識するだろう。
【0016】
いずれか一以上の実施形態の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明とおよび特許請求の範囲から明らかであろう。
【0017】
以下に記載される実施形態の詳細を取り扱う前に、いくつかの用語が定義され、あるいは明確にされる。
【0018】
本明細書において使用されるように、不活性キャリアガスは、記載された反応に関与しない任意の不活性ガスをいう。
【0019】
本明細書において使用されるように、反応領域は、入口および出口を有する任意の領域が限定されたチャンバまたは管であり、本明細書に記載された方法に適した温度を保持することができ、出発原料、生成物、もしくは副生成物に対して不活性である内表面を含む。
【0020】
一実施形態では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、鉄を含む触媒の存在下、気相中で脱塩化水素化されて1,1,3−トリクロロ−1−プロペンを生成する。一実施形態では、触媒は鉄ウール(iron wool)を含む。
【0021】
一実施形態では、本方法は、反応領域の中で、連続法で行われる。別の実施形態では、本方法はバッチベースで行われる。一実施形態では、反応領域は、触媒を詰めた管型反応器である。
【0022】
一実施形態では、反応領域の温度の設定点は少なくとも300℃に設定される。別の実施形態にでは、反応領域の温度の設定点は少なくとも350℃に設定される。さらに、別の実施形態では、反応領域の温度の設定点は少なくとも400℃に設定される。
【0023】
一実施形態では、本方法は不活性キャリアガスの流れの存在下で行われる。一実施形態では、前記キャリアガスは、窒素、アルゴン、ヘリウムおよびキセノンから選択される。一実施形態では前記キャリアガスは窒素である。
【0024】
別の実施形態では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは液相で脱塩化水素化される。一実施形態では、反応は、一般に、閉じた容器内で所定時間、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを加熱することによって行われる。一実施形態では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは少なくとも175℃に加熱される。別の実施形態では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは少なくとも200℃に加熱される。一実施形態では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは少なくとも1時間、175℃に加熱される。別の実施形態では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは少なくとも2時間、175℃に加熱される。一般に、より短い反応時間は、より低い出発原料の変換をもたらし、副生成物の量もまた少ない結果となる。
【0025】
一般に、用語「バッチ法」は、化学方法を実施する形式であって、当該方法が適切な時間、適切な反応条件下で反応され、生成物に変換される試薬を用いて開始される形式をいう。この方法は、次に停止され、生成物を含有する反応物の混合物が収集される。この反応混合物は、未反応の出発原料から生成物を単離し、精製するために、典型的には、さらに処理される。一方で、用語「連続法」は、化学的方法を実施する形式であって、当該方法が一度確立されると、試薬が容器に添加され、この容器内で反応が起こり、生成物が同時に除去される形式をいう。理想的には、連続法は、実質的に連続的な出発原料の流れが実質的に連続的な生成物の流れに変換されるように稼動される。化学的な方法の一部として実施される、試薬の添加、生成物の除去又は他の操作(例えば、加熱、冷却、撹拌等)を言う場合の「実質的に連続的に」または「実質的に連続な」とは、操作がその方法が進行する間の所定時間にわたって実施されることを意味する。これらの用語は、操作の周期的な中断の可能性を排除することを意味しない。
【0026】
本明細書で用いられる「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含有している(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」または、これらの用語の他の任意のバリエーションは、非排他的な包含を補償するものであることが意図される。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、製品または装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されるものではなく、明白にリストされていない他の要素、または、そのようなプロセス、方法、製品または装置に固有の他の要素を含んでいてもよい。さらに、明白な反対の記述がない限り、「または(or)」は、包含的なまたは(or)であり、排他的なまたは(or)ではない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれかひとつを満たす:Aは真(または存在する)且つBは偽(または存在しない)、Aは偽(または存在しない)およびBは真(または存在する)、並びにAおよびBが真(または存在する)。
【0027】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載される要素および構成を記載するために使用される。これは、単に便宜的になされるものであり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるものである。この記載は、ひとつまたはすくなくともひとつを含む様に読むべきであり、単数形は、それが別の意味であることが明白でない限り、複数形を含む。
【0028】
元素の周期律表内の縦の列に対応する族の番号は、非特許文献1に見られる「新表記」法を用いる。
【0029】
特に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術的、および科学的な用語は、この発明の属する技術分野における当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似のまたは同等の方法および材料は、本発明の実施形態の実行および試験に使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。本明細書で言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の引用文献は、特定の節が引用されていない限り、引用文献によってその全体が取り込まれる。抵触する場合には、定義を含む本明細書を基準とする。加えて、材料、方法、および実施例は、単に例示であり、制限することを意図しない。
【実施例】
【0030】
本明細書に記載された概念は、以下の実施例でさらに記載されるが、これらは特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない。
【0031】
(実施例1)
実施例1は、気相における鉄触媒による1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素反応を例示する。
【0032】
A1/2”OD×10”の管型反応器に、あらかじめクロロホルムで洗浄しておいた4.4gの鉄ウールを充填した。ほぼ5ccのらせん状のニクロム線を鉄ウールの頂部に配置し、気化器として作用させた。熱伝対を、鉄ウールの頂部の下、約1/2”に挿入した。管型反応器を、窒素ガス流れの下で250℃から420℃の間の温度に加熱した。1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、シリンジポンプで管型反応器に供給した。生成物を、pH7のリン酸塩緩衝液を含有する50mLの管に集め、GC/MSで分析した。接触時間の幅は5−7秒であった。結果を表1にまとめた。1,1,3−トリクロロ−1−プロペンへの選択性は99%以上であった。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例2)
実施例2は、液相における1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素反応を例示する。
【0035】
ハステロイ振とう管に40グラムの1,1,1,3−テトラクロロプロパンを添加した。前記管を密封し、振とうしながら175℃に加熱した。6時間経過後、この管を室温に冷却し、HClガスを排した。残留した有機生成物の混合物を水で洗浄し、GC/MSで分析した。結果は、95%の1,1,1,3−テトラクロロプロパンの変換率と、80.7%の1,1,3−トリクロロプロプ−1−エンの形成と、19.3%の、ほとんどがC6化合物の塩化物である未知の物を示した。
【0036】
(実施例3)
実施例3は、液相における1,1,1,3−テトラクロロプロパンの脱塩化水素反応を例示する。
【0037】
ハステロイ振とう管に200グラムの1,1,1,3−テトラクロロプロパンを添加した。この管を密封し、振とうしながら175℃に加熱した。2時間経過後、この管を室温に冷却し、HClガスを排気した。残留した有機生成物の混合物を水で洗浄し、GC/MSで分析した。結果は、71.5%の1,1,1,3−テトラクロロプロパンの変換と、69.9%の1,1,3−トリクロロプロプ−1−エンの生成と、1.6%は未知の物を示した。
【0038】
ここで留意すべきことは、一般的な記述または実施例で先に記述された行為のすべてが必要とされるわけではなく、特別な行為の一部は必要ではなくてもよく、ひとつ以上のさらなる行為、記述されたものに加えて実施されてもよい。さらに、列記した行為の順序は、必ずしも実施された順序である必要はない。
【0039】
先の明細書において、概念を、実施形態を参照して記載した。しかしながら、当業者は、本発明の様々な改良および変更が以下の特許請求の範囲で規定された範囲から逸脱することなくなし得ることを理解するであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的意味というよりもむしろ例示とみなすものであり、すべてのそのような改良は本発明の範囲の中に含まれるものとして意図されるものである。
【0040】
利益、他の利点および問題の解決は、特定の実施形態に関して上述されている。しかしながら、任意の利益や、利点、または解法をより明確に生じさせる、または、より明確にする、利益、利点また問題の解決は、特許請求の範囲のいずれかまたは全ての不可欠な特徴、必要とされる特徴、または本質的な特徴として解決されるべきではない。
【0041】
ある特徴は、明確さのために、別々の実施形態の文脈で本明細書に記載されており、単一の実地形態で組み合わせて提供されていてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔さのために、単一の文脈で記載された様々な特徴は、別々に、または、任意の部分的組み合わせにおいて供給されうる。さらに、ある範囲で記述された数値への言及は、その範囲内の各数値およびあらゆる数値を含む。