(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポンプ手段は、ピストンロッドと、該ピストンロッドの一端に連結されたピストンと、該ピストンにより画成された非圧縮室及び圧縮室が形成されたシリンダチューブとを有する単動型又はテレスコピック型のシリンダを備え、
該シリンダは、液体輸送手段を介して前記液体噴出手段に連結され、
前記ピストンロッドの他端は、前記昇降手段に連結され、
該昇降手段の下降に連動して、前記ピストンロッドが前記ピストンを押圧して、前記圧縮室に蓄えられた液体を圧送し、かつ、前記シリンダが、前記昇降手段の下降に連動して、前記ピストンが押圧される方向と同一方向に移動することで、前記第1のポンプ動作を実行するように構成され、
前記第1の時間中、前記シリンダが、前記ピストンが押圧される方向と逆方向に移動して、前記ピストンが前記シリンダの圧縮室内の液体を圧送することで、前記第2のポンプ動作を実行するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴出装置。
前記第1の時間は、少なくとも前記第1の弾性手段の弾性変形からの復元時間で設定され、前記車両支持手段上面を走行する前記車両の重量に依存しないように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴出装置。
【背景技術】
【0002】
近年、家畜伝染病による甚大な被害が発生している。家畜伝染病の中でも、特に口蹄疫は極めて強い感染力を有するため、例えば、平成22年に宮崎県で発生した口蹄疫は、牛や豚などの家畜約29万頭の処分という未曾有の被害をもたらした。口蹄疫が一旦発生すると、家畜の殺処分だけでなく、移動制限区域や搬出制限区域が設けられ、畜産農家をはじめ、多くの産業に深刻な影響を与えることになる。
【0003】
また、家畜伝染病が発生すると、感染の拡大や流入の防止(いわゆる、防疫)のため、家畜へのワクチン投与、家畜の飼育施設の消毒、飼育施設を出入りする車両の消毒、主要な幹線道路及びその沿線を通行する車両の消毒等が行われる。
このように、家畜伝染病が発生した際に、防疫を目的として、通行車両を消毒するための消毒装置が設置される場所を消毒ポイントという。消毒ポイントは、家畜の飼育施設の出入り口、家畜の飼育施設への進入路、主要な幹線道路及びその沿線等に設置される。
【0004】
従来、口蹄疫が発生した際に防疫対策として行われる車両の消毒装置の消毒方式としては、主に5つの方式があり、以下、それらの方式の特徴、長所等について説明する。
【0005】
(1)散水車方式
車両タイヤ底面と路面を消毒するために、散水車を車道上で走行させながら消毒液を散布するもので、固定の消毒ポイントを設けずに、広範囲の消毒が可能である。
【0006】
(2)噴霧方式
車両タイヤ廻り又は車両全体を消毒するために、消毒ポイントにおいて、小型の動力式噴霧器を操作し、手作業で車両のタイヤ廻り又は車両全体に消毒液を散布する人力式のものと、門型設備等により、消毒液を車両全体に散布する固定設備式のものがあり、人力式及び固定設備方式のいずれでも、車両全体を消毒することができる。
【0007】
(3)消毒マット方式
車両タイヤ底面を消毒するために、消毒ポイントの車道上にマットを敷設し、その上に人力で消毒液を散布するもので、設置が比較的容易であり、汎用性が高い。
【0008】
(4)消毒槽方式
消毒ポイントの車道上に消毒液の一定の水深が確保可能な消毒槽を設け、この消毒槽に消毒液を注入するもので、一定の水深が確保されるため、タイヤ全体を消毒することができる。
【0009】
(5)自然流下方式
車両タイヤ底面と路面を消毒するために、消毒ポイントに設置され、タンク等に貯留した消毒液を自然流下方式によりタンクに接続されたパイプで路面に散布するもので、自然流下のため、要員体制は省力化が可能である。
【0010】
上記の「(2)噴霧方式」の固定設備式については、例えば、特許文献1に記載された「車両消毒装置」があり、上記の「(3)消毒マット方式」については、例えば、特許文献2に記載された「消毒マット」がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の「(1)散水車方式」と「(2)噴霧方式」は、車両を消毒するときに動力を利用する動力方式であり、上記の「(3)消毒マット方式」、「(4)消毒槽方式」、「(5)自然流下方式」は、車両を消毒するときに動力を利用しない非動力方式である。
以下、それぞれの方式の課題等について説明する。
【0013】
上記の「(1)の散水車方式」では、散水された消毒液で濡れた路面を車両が徐行走行することで、車両タイヤ底面の消毒を行うものであるから、消毒液が散水された路面が乾いてしまうと、通行する車両のタイヤの消毒効果が激減してしまう。そこで、消毒効果を高めるためには、頻繁に路面に消毒液を散水しなければならず、また、天候や季節によって路面の乾燥度合いが異なり、さらには、車両の通行量によっても路面に散水された消毒液の消費量が異なるので、散水頻度の管理が煩雑である。さらに、冬場では、路面が凍結し、車両のスリップ事故が発生する虞があるので、交通安全性にも十分に配慮する必要がある。
【0014】
上記の「(2)噴霧方式」において、人力方式では、人手で行うため消毒作業に時間が掛かり、多数の作業要員の確保が必要である。
特許文献1に記載の車両消毒装置を含む固定設備方式では、大がかりな設備が必要なので設置に時間が掛かり、家畜伝染病が発生したときの迅速な対応が困難である。また、一旦設置すると、別の消毒ポイントへ容易に移設することができない。
【0015】
特許文献2に記載の「消毒マット」を含む上記の「(3)消毒マット方式」では、消毒マットへの消毒液の注入は、人手作業により行われる。消毒マットに注入された消毒液の消費量は、通行する車両の数や通行する車両の重量によって異なるので、各消毒ポイント毎に設置された消毒マットの消毒液の交換時期は、人手作業により頻繁に監視しておく必要があり、この方式では、消毒液や消毒マット等の装置の管理、あるいは、車両の消毒作業を行うための作業要員等(以下、単に「要員」という。)の確保、管理の煩雑さ等の問題がある。
【0016】
上記の「(4)消毒槽方式」では、槽の上部が開口されているため、降雨、降雪により、消毒槽内に雨水や雪等が混入して消毒液の濃度が低下するため、天候による消毒液の濃度管理が煩雑である。また、車両が通行する道路を掘削して消毒槽を設けるため、工期が長い。さらに、上記の「(2)噴霧方式」の固定設備方式と同様、一旦設置すると、容易に移設することができない。
なお、上記「(3)消毒マット方式」においても、特許文献2の「薬液マット」のように上部面の消毒液が常時外気に接しているような構造の場合、同様に、消毒液の濃度の問題が発生するので、天候による消毒液の管理が煩雑となる。
【0017】
上記の「(5)自然流下方式」では、路面に常時消毒液を流しているので、特に、通行車両が少ない場合は、多量の消毒液が路面に流れ続けることになり、その排水先への影響が問題となるので、事前評価や実施中のモニタリングが必要である。また、要員を常時配置しないので、消毒ポイント付近の交通安全管理を十分に行う必要がある。
【0018】
従来技術の「(1)の散水車方式」、「(2)噴霧方式」、「(3)消毒マット方式」、「(4)消毒槽方式」、「(5)自然流下方式」の5つの方式では、上述したように、それぞれ、利点もあるが、消毒装置の管理の煩雑さ、要員の確保・管理の煩雑さ、設置・移設の困難性等々、解決すべき課題も多い。
このため、本発明は、簡素な構成で装置の設置・移設が容易で、装置の管理が簡単で、要員体制の省力化が可能であり、防疫効果を有する車両消毒装置及び該車両消毒に用いる消毒液の噴出方法を提供することを目的とする。
なお、車両全体ではなく、車両のタイヤ及びその周辺部(以下、「タイヤ廻り」という。)及び車両の底部等、車両下部の一定範囲を消毒することで、車両全体を消毒可能な上記の「(2)噴霧方式」の固定設備方式と同程度の防疫効果を奏することが知られている。
【0019】
また、本発明の車両消毒装置及び車両消毒液の噴出方法は、消毒目的以外の薬液、さらには、薬品以外の溶液、例えば、通常の上水や注水を利用して、車両の簡易的な洗浄にも用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、液体噴出装置であって、走行する車両を支持し、該車両の走行に応答して下降・上昇可能に構成された車両支持手段と、該車両支持手段の下降に連動して下降し、所定時間経過後に前記車両支持
手段を上昇させるように構成された昇降手段と、該昇降手段と、液体噴出手段と、液体供給手段とに連結され、前記昇降手段の下降に応答して前記液体噴出手段へ液体を圧送する第1のポンプ動作を行い、前記昇降手段の上昇に応答して前記液体供給手段からの液体の吸引を行うように構成されたポンプ手段と、前記昇降手段が所定位置まで下降した状態で、該昇降手段の上昇を第1の時間停止するロック手段とを備え、前記第1の時間中、前記ポンプ手段が前記液体噴出手段に液体を圧送する第2のポンプ動作を行うように構成され、前記第1の時間完了に応答して、前記ロック手段が前記昇降手段の上昇動作の停止を解除して、前記昇降手段が前記車両支持
手段を上昇させるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体噴出装置であって、前記ポンプ手段は、ピストンロッドと、該ピストンロッドの一端に連結されたピストンと、該ピストンにより画成された非圧縮室及び圧縮室が形成されたシリンダチューブとを有する単動型又はテレスコピック型のシリンダを備え、該シリンダは、液体輸送手段を介して前記液体噴出手段に連結され、前記ピストンロッドの他端は、前記昇降手段に連結され、該昇降手段の下降に連動して、前記ピストンロッドが前記ピストンを押圧して、前記圧縮室に蓄えられた液体を圧送し、かつ、前記シリンダが、前記昇降手段の下降に連動して、前記ピストンが押圧される方向と同一方向に移動することで、前記第1のポンプ動作を実行するように構成され、前記第1の時間中、前記シリンダが、前記ピストンが押圧される方向と逆方向に移動して、前記ピストンが前記シリンダの圧縮室内の液体を圧送することで、前記第2のポンプ動作を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体噴出装置であって、前記シリンダに連結され、前記第2のポンプ動作の動作時間を制御する制御部を備え、該制御部は、前記シリンダの移動に連動して弾性変形する第1の弾性手段を有し、該第1の弾性手段の弾性変形からの復元により、前記第1の時間中、前記第2のポンプ動作を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液体噴出装置であって、前記第1の時間は、少なくとも前記第1の弾性手段の弾性変形からの復元時間で設定され、前記車両支持手段上面を走行する前記車両の重量に依存しないように構成されていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の液体噴出装置であって、
前記シリンダは、シリンダ支軸に軸支されて構成され、前記ロック手段は、
該シリンダ
支軸に連結されたロック解除手段を備え、該ロック解除手段は、前記第1の時間中、前記シリンダの前記逆方向への移動に連動して該逆方向へ移動し、前記第1の時間経過後に、前記昇降手段の上昇停止を解除して該
昇降手段を上昇させるように構成されていることを特徴とする。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の液体噴出装置であって、前記昇降手段は、該昇降手段の下降に連動して弾性変形する第2の弾性手段を有する上昇復帰手段を備え、該上昇復帰手段は、前記第1の時間経過後に、前記第2の弾性手段が弾性変形から復元することで、前記昇降手段を上昇させるように構成されていることを特徴とする。
【0026】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体噴出装置であって、前記昇降手段の上昇に連動して、前記ピストンロッドに連結された前記ピストンが、前記非圧縮室側に移動することで、前記
液体輸送手段を介して、前記液体供給手段から前記圧縮室内に前記液体が吸引されることを特徴とする。
【0027】
また、請求項8に記載の発明は、請求2乃至請求項7のいずれか1項に記載の液体噴出装置であって、前記第1のポンプ動作において、前記
液体噴出手段から噴出される液体の流量が、前記ピストンの移動量と、前記シリンダチューブの移動量との差分で設定されていることを特徴とする。
【0028】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液体噴出装置であって、前記液体が消毒用の薬液であることを特徴とする。
【0029】
また、請求項10に記載の発明は、請求項
6に記載の液体噴出装置を用いた液体噴出方法であって、前記車両の走行に応答して、前記車両支持
手段を下降するステップと、該車両支持
手段の下降に連動して、前記昇降手段を下降させ、前記第1のポンプ動作を実行させるとともに、前記ロック手段に設けられた第1の弾性手段、及び、前記上昇復帰手段に設けられた第2の弾性手段を弾性変形させるステップと、前記昇降手段が所定位置に下降した段階で、前記ロック手段により前記昇降手段の上昇動作を停止するステップと、該第1の弾性手段の弾性変形からの復元に連動して、前記第1の時間が経過するまで、前記第2のポンプ動作を実行するステップと、前記第1の時間が経過後に、前記第2のポンプ動作の実行を終了するとともに、前記ロック手段に設けられた前記ロック解除手段により、前記第2の弾性手段の弾性変形からの復元に応答して、前記昇降手段の上昇停止を解除して、前記昇降手段を上昇させるステップと、該昇降手段の上昇に連動して、前記車両支持
手段を上昇させるステップとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の液体噴出装置及び液体噴出方法によれば、車両の消毒装置として用いた場合に、構成が簡素であるので、設置が短期間に容易にでき、かつ、設置した装置の移設も容易に行える。また、消毒液の濃度管理を含む装置全体の管理が容易であり、要員も少なくて済む。したがって、家畜伝染病が発生した場合に、消毒ポイントの設置・移設を容易に行うことができ、迅速な防疫対策を行うことができる。また、道路だけでなく、個々の家畜飼育施設内でも、簡単にこの車両消毒装置を設置し、車両の消毒を実施することができる。
そして、車両のタイヤ廻り及び底部等、車両下部の一定範囲を消毒することで防疫効果を奏するので、家畜伝染病の発生を抑制することができ、もし家畜伝染病が発生したとしても、その万延を防止し、被害を最小限に留めることができる。
【0031】
さらに、本発明の液体噴出装置及び液体噴出方法を用いて、消毒液に代えて通常の上水や注水、あるいは、洗浄液等を用いて車両の簡易的な洗浄にも利用することができる。通常の上水や注水、あるいは、洗浄液等を用いて頻繁に車両の洗浄を行うことでも、防疫対策の所定の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
(第1の実施形態)
本発明の液体噴出装置の第1の実施形態として、防疫のための車両消毒装置1を例にとって説明する。まず、
図1〜
図13を参照しながら、本発明の車両消毒装置1の全体構成、車両消毒装置1の使用状態、及び、主要部である車両消毒装置本体部2の構成を説明する。
図1は、車両消毒装置1の全体構成を示す外観斜視図、
図2は、車両消毒装置1の全体構成を示す外観平面図である。なお、説明の便宜上、本明細書で示す前・後・左・右の方向は、図中で示す矢印の前・後・左・右の方向と対応するものとする。
図1、
図2に示すように、車両消毒装置1は、主な構成として、車両消毒装置本体部2と、液体供給手段である薬液供給タンク3と、液体噴出手段である薬液噴出装置4と、液体の輸送手段である薬液輸送ホース群5と、ダミー板6を備えている。
【0035】
車両消毒装置本体部2には、前後一対の車両支持板7F,7Rが設けられている。この車両支持板7F,7Rは、それぞれ、上面を走行する車両の重量に耐えられるように鋼板を矩形状に形成したものであり、図示するように、待機状態では、車両消毒装置本体部2の中央部において最も高くなるように傾斜して配設されている。なお、待機状態とは、車両V(
図3参照。)が走行する前、又は、車両Vが通過し所定時間経過後であって、薬液が噴出されていない状態をいう。車両支持板7Fは、前端部が枠体11の前端部に蝶番39Fで連結され、後端部が昇降手段12に支持されており、車両支持板7Rは、前端部が昇降支持手段12に支持され、後端部が枠体11の後端部に蝶番39Rで連結されている。車両支持板7F,7Rは、蝶番39F,39Rの回転軸によって回動可能に構成されている。車両消毒装置本体部2の構成の詳細については後述する。
【0036】
薬液噴出装置4は、走行する車両Vの主に左側を消毒する左側の薬液噴出装置4Lと、走行する車両Vの主に右側を消毒する右側の薬液
噴出装置4Rを備えている。薬液輸送ホース群5は、車両消毒装置本体部2とダミー板6とに連結された薬液輸送ホース5Mと、車両消毒装置本体部2と右側の薬液
噴出装置4Rとに連結された薬液輸送ホース5Rと、ダミー板6と左側の薬液噴出装置4Lとに連結された薬液輸送ホース5Lと、車両消毒装置本体部2と薬液供給タンク3とに連結された薬液輸送ホース5Tとを備えている。ダミー板6は、通過する車両Vの左右両側のタイヤの路面からの高さを同程度にして、車両Vの左右のバランスをとるために、車両消毒装置本体部2の外観形状を模して形成されたもので、消毒装置としての機能は必要ではなく、木枠、木板、鉄枠、鉄板、樹脂枠、樹脂板等、車両の重量に耐えられるものであれば、安価で単純な構成のものでよい。ダミー板6を設けることで、走行する車両Vの安全性、装置の経費削減の効果を奏することができる。なお、必要に応じて、ダミー板6に変えて、車両消毒装置本体部2をさらに設置してもよい。
【0037】
薬液輸送ホース5Tと薬液供給タンク3との連結部、薬液輸送ホース5Tと車両消毒装置本体部2との連結部、車両消毒装置本体部2と薬液輸送ホース5Mとの連結部のそれぞれには、逆止弁CV1,CV2,CV3が設けられ、車両消毒装置本体部2から左右の薬液噴出装置4L,4Rに薬液が圧送される際には、薬液供給タンク3に薬液が流入しないように、また、車両消毒装置本体部2に薬液供給タンク3から薬液を吸引する際には、左右の薬液噴出装置4L,4Rから車両消毒装置本体部2に薬液が流入しないように、また、薬液噴出装置4L,4Rの薬液噴出ノズルから外気や異物等が吸引されないように構成されている。逆止弁は、必要に応じて適宜設けられてよい。
【0038】
車両消毒装置本体部2、ダミー板6のそれぞれの前後端部には、段差プレート8が設けられている。段差プレート8は、車両Vが、車両消毒装置本体部2に乗り降りする際の段差を低減するために一定の傾斜を備えている。ダミー板6は、鉄製とすることもできるが、木製又は樹脂製(天然樹脂又は合成樹脂)でもよい。本実施形態では、4つの段差プレート8は、全て同一形状に形成されている。
【0039】
薬液供給タンク3は、車両消毒用の薬液10を貯留する装置であり、内容量、つまり、タンクの大きさは、通行する車両の大きさ・台数、薬液10の使用頻度等を考慮し、必要に応じて適宜設定される。薬液供給タンク3には、口蹄疫や鳥インフルエンザ等の家畜伝染病を防疫するための消毒液としての薬液10が貯蔵されており、この貯蔵された薬液10は、薬液輸送ホース5Tを介して車両消毒装置本体部2に供給される。
ここで、「薬液」とは、薬品を溶かした液体のことであり、「消毒液」とは、薬液のうち消毒用の薬品の溶液のことである。第1の実施形態でいう薬液10は、口蹄疫や鳥インフルエンザ等の家畜伝染病を防疫するための消毒用の薬品の溶液のことである。
【0040】
図示するように、薬液供給タンク3は、略直方体形状をなし、内部に薬液10が貯留される。薬液供給タンク3上部には、上蓋3aとエアー流入口(不図示)が設けられている。また、薬液供給タンク3の底部には、排液管としてのドレーン(不図示)が設けられている。薬液供給タンク3のドレーンと反対側には、薬液輸送ホース5Tが連結されている。
【0041】
薬液供給タンク3に貯留されている薬液10の残量管理は、要員が目視で行ってもよいし、薬液供給タンク3内に薬液検知センサーを設けて、薬液10が一定量に減少すると自動的に検知するようにしてもよい。また、車両消毒装置1を通過する車種、通過台数を検出して、薬液10の消費量を算出し、一定量を消費したことを検出するようにしてもよい。そして、一定量の残量が検知されたり、一定量の消費量が検知されたときには、要員が薬液供給タンク3に薬液10の補充を行ってもよいし、また、さらに容量の大きい薬液供給タンクから自動的に補充が行われるようにしてもよい。
【0042】
左右の薬液噴出装置4L,4Rは、車両Vが走行する際に、主に車両の左右側面を消毒できるように、車両が走行する方向に対して略直交するように配設される。薬液噴出装置4L,4Rは、支柱の上端部に、薬液10を噴出するための複数の薬液噴出ノズルが設けられ、支柱の下端部には薬液輸送ホース5L,5Rのいずれか一方が連結された構成をなしている。ダミー板6が薬液噴出機能を有しないので、薬液輸送ホース5Mと薬液輸送ホース5Lは、別体で設けなくてもよく、一体形成された一本の薬液輸送ホースをダミー板6に単に挿通する構成であってもよい。
【0043】
図示していないが、車両消毒装置本体部2とダミー板6との間には、走行する車両の底部を消毒できるように薬液10を噴出するため、車両底部消毒用の薬液噴出ノズルが所定数配設されている。車両底部消毒用の薬液噴出ノズルは、薬液輸送ホース5Mに所定数設けてもよいし、薬液輸送ホース5Mの一部又は全部を鋼管パイプ状の部材に代えて、この部材に所定数設けてもよい。なお、車両の側面消毒用及び底部消毒用の薬液噴出ノズルに外部から外気、異物、雨水、雪等が流入しないように逆止弁を設けてもよい。
【0044】
図3は、本発明の車両消毒装置1の使用状態を示す外観斜視図である。
図3は、車両Vの右側前輪RFTが、車両消毒装置本体部2の前側の段差プレート8に乗っている状態であり、車両消毒装置本体部2内に設けられたポンプ手段14がまだ動作しておらず、待機状態である。車両Vの左側前輪LFTは、ダミー板6の前側の段差プレート8に乗っている。このように車両消毒装置本体部2とダミー板6とは、車両Vの車幅に応じた間隔をおいて、車両Vの走行する方向に沿って並設されている。
図3では、車両Vは、乗用車を例にとっているが、例えば、大型の貨物自動車の消毒に用いるときは、薬液の噴霧時間、装置の耐久性等を考慮して、車両消毒装置1の配設数、配設位置、大きさも適宜設計変更される。
【0045】
車両消毒装置1は、動作原理の詳細は後述するが、
図3の待機状態から、車両Vが車両支持板7F,7R上を走行すると、車両Vの重量を外圧として車両支持板7F,7Rが下降し、車両支持板7F,7Rに連結された昇降手段12が車両支持板7L,7Rの下降に連動して下降し、さらに、昇降手段12に連結されたポンプ手段14が昇降手段12の下降に連動してプレ・ポンプ動作を開始して、薬液噴出装置4L,4Rから、車両Vに向けて薬液10の噴出を開始し、昇降手段12が予め定められた最下位置に下降したら、昇降手段12の上昇(つまり、車両支持板7F,7Rの上昇)を一旦停止させ、ポンプ手段14がメイン・ポンプ動作を開始して、車両Vの後輪RRT,LRTが通過完了後所定時間経過するまで、車両Vに薬液10を噴出し続け、この所定時間が経過すると昇降手段12が上昇して車両支持板7F,7Rが元の位置に復帰し、同時に薬液10の噴出が停止されて、ポンプ手段14に薬液供給タンク3から薬液10が吸引されるように構成されている。
【0046】
以下、車両消毒装置本体部2の構成について、
図4〜
図13を参照しながら説明する。
図4は、車両消毒装置本体部2の正面図、
図5は、車両消毒装置本体部2の背面図、
図6は、車両消毒装置本体部2の左側面図、
図7は、車両消毒装置本体部2の右側面図、
図8は、車両消毒装置本体部2の平面図を示す。
図9〜
図13は、車両消毒装置本体部2の車両支持板7F,7Rを取り外した状態、つまり、車両消毒装置本体部2の内部構成を説明する図であり、
図9は、車両消毒装置本体部2を右側前方から見た要部説明斜視図、
図10は、
図9の要部拡大斜視図、
図11は、
図10の拡大図、
図12は、
図9を右後方から見た斜視図、
図13は、
図9を右後方別角度から見た斜視図である。
図4〜
図13は、車両消毒装置1が待機状態の構成を示している。
【0047】
図4の正面図では、一対の車両支持板7F,7Rのうち、前側の車両支持板7Fが視認される。前側の車両支持板7Fは、上面を走行する車両Vのタイヤの幅に対応した幅に形成された矩形状をなし、前端部が、蝶番39Fによって枠体11の前端部に連結されている。前側の車両支持板7Fは、この蝶番39Fを支点にして回動可能に構成されている。前側の車両支持板7Fの後端部は、昇降手段12の一部である中央支持板13の上面に載置されている。中央支持板13には、補強用に2本の鋼管パイプ13F,13Rが並設されている。
図4では、前側の鋼管パイプ13Fの両端部が視認されている。枠体11の前部には、前述した段差プレート8が設置されている。また、
図4では、枠体11の右側面にロック手段15が視認されている。
【0048】
図5の背面図では、一対の車両支持板7F,7Rのうち、後側の車両支持板7Rが視認される。後側の車両支持板7Rは、上面を走行する車両Vのタイヤの幅に対応した幅に形成された矩形状をなし、後端部が、蝶番39Rによって枠体11の後端部に連結されている。後側の車両支持板7Rは、この蝶番39Rを支点にして回動可能に構成されている。後側の車両支持板7Rの前端部は、昇降手段12の一部である中央支持板13の上面に載置されている。中央支持板13には、補強用に2本の鋼管パイプ13F,13Rが並設されている。
図5では、後側の鋼管パイプ13Rの両端部が視認されている。枠体11の後部には、前述した段差プレート8が設置されている。後側の車両支持板7Rは、前側の車両支持板7Fと同一形状であり、前端部が前側の車両支持板7Fの後端部に近接して対向するように、中央支持板13の上面に載置されている。また、
図5では、右側にロック手段15が視認されている。
【0049】
図6、
図7の側面図に示すように、車両消毒装置本体部2は、枠体11と、4つの段差プレート8と、車両支持板7F,7Rと、昇降手段12と、ポンプ手段14と、ロック手段15と、ポンプ動作時間制御部26を備えている。図示するように、ロック手段15は、車両消毒装置本体部2の右側にのみ設けられ、ロック部16とロック制御部17を備えている。なお、車両消毒装置1の左側にも、ロック部16,ロック制御部17と同様の構成を設けてもよい。枠体11は、例えば、4本のH鋼の端部同士を溶接して、平面視矩形状に形成し、適宜加工を行ったものである。段差プレート8は、前述したように、消毒のために車両Vが、車両消毒装置1に乗り降りする際の衝撃を緩和するために設けられている。車両支持板7F,7Rは、前述したように、平面視矩形状の鋼製の平板で、同一形状のものが一対設けられている。前側の車両支持板7Fの前端は、枠体11の前端に蝶番39Fを介して連結され、後側の車両支持板7Rの後端は、枠体11の後端に蝶番39Rを介して連結されている。
【0050】
図8に示すように、平面視では、昇降手段12,ポンプ手段14、ロック手段15等が、車両消毒装置本体部2の内部に配設されており、上面は車両支持板7F,7Rで被装されているので、車両Vが走行する際の安全性が確保されている。
【0051】
車両支持板7F,7Rは、図示するように、待機状態では、車両消毒装置本体部2の中央部に配設された昇降手段12に支持される位置が最も高くなるように傾斜して配設されている。車両Vが走行する際には、車両支持板7F,7Rは、車両Vの重量による外圧で、枠体11の上面に当接する位置まで下降する。この状態では、車両Vのタイヤが車両支持板7F,7Rを介して、H鋼で形成された枠体11で支持されることになるので、車両Vの重量に対して十分な強度を備えている。車両Vが通過して所定時間経過すると、車両支持板7F,7Rは、昇降手段12の上昇によって待機状態の位置に復帰可能に構成されている。
【0052】
昇降手段12は、中央支持板13と、左右の昇降ジャッキ18L,18Rと、昇降手段本体部19とを備えている。中央支持板13は、平面視長方形状に形成された鋼製の平板で、左右の長手方向に沿って、補強用の鋼管パイプ13F,13Rが並設されている。中央支持板13の上面は、車両支持板7Fの後部と、車両支持板7Rの前部を支持しており、中央支持板13の下面は、昇降ジャッキ18L,18Rの上面に溶接又は螺設等で固定されている。昇降ジャッキ18L,18Rは、公知の自動車用パンタグラフ型ジャッキを改良したもので、ねじ棒(「スクリューシャフト」ともいう。)が取り外されているので、ねじ棒に依存することなく、所定長の範囲で上下方向に伸縮自在である。したがって、車両Vが車両支持板7F,7R上を走行すると、車両支持板7F,7R、中央支持板13の下降・上昇に連動して昇降ジャッキ18L,18Rが縮長・伸長される。
【0053】
昇降手段本体部19は、ポンプ手段14のピストンロッド21の前端が連結された上部支軸20と、この上部支軸20の左右端部に形成され中央支持板13を支持する支持ローラー部20L,20Rと、上端部が上部支軸20に軸支され、下端部が下部支軸23に固設された連結軸22と、下部支軸23の左右端部に下端部が固設された側片24L,24Rと、側片24L,24Rの上端部に連結された上昇復帰手段25L,25Rとを備えている。また、下部支軸23には、下部支軸23よりも長い内部支軸23aが同軸で挿通されており、この内部支軸23aの左右端部は枠体11の左右側面に軸支され、内部支軸23aの左右端部にはスプリング26L,26Rの前端部が掛止されている。このスプリング26L,26Rの後端部は、枠体11の後部側面位置で、ポンプ手段14のシリンダ33後端部に連結されたシリンダ支軸33bの左右端部に掛止されている。このスプリング26L,26Rは、ポンプ手段14のメイン・ポンプ動作時間(特許請求の範囲に記載された「第1の時間」に対応する。)を制御するポンプ動作時間制御部26として設けられている。なお、本実施形態のポンプ動作時間制御部26では、スプリング26L,26Rを伸長させて弾性変形させ、縮長する復元力を利用しているが、スプリングを縮長させて弾性変形させ、伸長する復元力を利用する構成にしてもよいし、弾性手段として、スプリング以外の弾性手段を用いてもよい。
【0054】
上昇復帰手段25L,25Rは、いわゆるサスペンション構成をなしており、側片24L,24Rの上端部に軸支されたダンパー部27L,27R、ダンパー部27L,27Rに連結されたピストンロッド28L,28R、ピストンロッド28L,28Rの回りにピストンロッド28L,28Rと同軸に配設されたコイルスプリング29L,29Rを備え、ピストンロッド28L,28Rの後端部は枠体11の側面に軸支されている。車両支持板7F,7Rが下降すると、これに連動して上部支軸20が連結軸22を介して下部支軸23を支点にして後回りに回転下降する。そうすると下部支軸23は内部支軸23aを支点にして後回りに回転し、これに連動して側片24L,24Rが内部支軸23aを支点にして、ダンパー部27L,27Rを押圧するように後回りに回転する。押圧されたダンパー部27L,27Rはコイルスプリング29L,29Rを後側に押圧し、コイルスプリング29L,29Rに前側に付勢力(復元力)を与える。この付勢力により、上述と逆の動作で昇降手段本体部19が元の状態に戻ることで、車両支持板7F,7Rを元の待機状態の位置に上昇させることができる構成になっている。なお、上部支軸20が最下位置まで回転下降しても、中央支持板13から支持ローラ部20L,20Rが外れないように設計されている。また、本実施形態の上昇復帰手段25L,25Rでは、コイルスプリング29L,29Rを縮長させて弾性変形させ、伸長する復元力を利用しているが、コイルスプリングを伸長させて弾性変形させ、縮長する復元力を利用する構成にしてもよいし、弾性手段として、コイルスプリング以外の弾性手段を用いてもよい。
【0055】
ポンプ手段14は、ピストンロッド21と、ピストンロッド21に連結されたピストン30と、シリンダチューブ33aを有する一般的な単動型のシリンダ33を備えている。シリンダチューブ33aは、ピストン30により画成された非圧縮室31及び圧縮室32とを備えている(
図6参照。)。本実施形態では、3組の単動型シリンダ33を用いている。なお、単動型のシリンダ33に代えてテレスコピック型のシリンダを用いてもよい。ポンプ手段14は、薬液輸送ホース5L,5M,5Rを介して薬液噴出装置4L,4Rに連結され、薬液輸送ホース5Tを介して薬液供給タンク3に連結され、圧縮室32には、薬液供給タンク3から供給された薬液10が貯留されている。ピストンロッド21の前端部は、昇降手段本体部19の上部支軸20に固設され、後端部は、ピストン30に連結されている。シリンダ33の後端部はシリンダ支軸33bに軸支され、シリンダ支軸33bの左右端部には、枠体11の側面位置で、ポンプ動作時間制御部26としてのスプリング26L,26Rの後端部が掛止されている。さらに、シリンダ支軸33bの右端部には、ロック制御部17としてのロック解除棒34の後端部が掛止されており、ロック解除棒34の前端部は、ロック部16に当接されている。枠体11の左右側面には、シリンダ支軸33bの左右端部が前後方向に摺動可能なように所定長のシリンダ支軸可動部35L,35Rが開口されている。ロック解除棒34には、シリンダ支軸33bの摺動に連動して枠体11の側面凹部を摺動可能なガイド部材34aが設けられている。
【0056】
シリンダ支軸33bの内部は圧縮室32と連通されており、シリンダ支軸33bとシリンダチューブ33aとの連結部は、シリンダチューブ33a径に合わせて拡径されている。シリンダ支軸33bの左右端部は、逆止弁を備えた薬液輸送ホース5R,5Mに連結されている。昇降手段12が下降すると、この下降に連動してピストンロッド21がピストン30を押圧する。押圧されたピストン30は、圧縮室32の薬液10を薬液輸送ホース5R,5Mに圧送するように作用するが、このとき、シリンダチューブ33aは固定されておらず、シリンダ支軸33bの左右端部がシリンダ支軸可動部35L,35Rを摺動して後側に可動する(ピストン30とシリンダチューブ33aとが、同一方向に移動する)ので、薬液10の圧送流量、つまり、薬液噴出装置4L,4Rからの薬液噴出流量は、ピストン30の移動量とシリンダチューブ33aの移動量(シリンダ支軸33bの移動量)との差分で調整することができる。つまり、シリンダチューブ33aの移動量が押圧されたピストン30の移動量よりも小さいほど、薬液10の噴出量は大きくなる。このときの、薬液10の圧送動作を、プレ・ポンプ動作という。なお、シリンダチューブ33aの移動量が押圧されたピストン30の移動量以上にも大きいときは、薬液10は噴出されない。
【0057】
ロック手段15は、枠体11の右側中央部に設けられたロック部16と、ロック解除棒34を有するロック制御部17を備えている。ロック部16は、上部に中央支持板13を係止するロック爪36を有し、枠体11側面に固定されたロック部固定部材37に中央部が軸支され、中央部よりも下方部にロック解除棒34の前端が当接可能に構成されている。つまり、ロック部16は、中央部の軸支位置を軸に回動可能である。そして、ロック部16の上部と中央部との間にロックスプリング38の後端が掛止され、ロック部固定部材37にロックスプリング38の前端が掛止されている。車両消毒装置1が待機状態のときは、スプリング26Rの弾性力によりシリンダ支軸33bが、枠体11の前方向へ摺動し、ロック解除棒34の前端部がロック部16の下方部に当接されているので、ロック部16が後回転してロック爪36が解放された状態にされている。このとき、ロックスプリング38は、伸長しているので、ロック部16が前回転するように付勢力(復元力)が与えられている。この待機状態が、ロック解除状態である。
【0058】
ロック状態を説明する。車両Vが車両消毒装置1を走行すると、車両Vの重量を外圧として中央支持板13が下降するので、これに連動してシリンダ支軸33bが、シリンダ支軸可動部35R内を枠体11後部側に摺動する。そうすると、シリンダ支軸33bに掛止されたロック解除棒34も連動して枠体11後部側に移動するので、ロック解除棒34の前端部がロック部16から外れることにより、ロックスプリング38に与えられていた付勢力によりロック部16が、ロック爪36を閉じるように前回転し、閉じた状態のロック爪36は、最下位置に下降した中央支持板13を係止して、中央支持板13の上昇を一定時間停止する。この状態がロック状態である。ロック爪
36は、図示するように、上辺部が前方に降下傾斜して形成されているので、下降してきた中央支持板13の下面がロック爪36の上辺に当接したときに、一旦後回転して中央支持板13を通過させ、その後ロックスプリング38の付勢力で前回転して、中央支持板13の上面を係止するように構成されている。
【0059】
ここで、前述したように、シリンダ支軸33bの左右端部には、スプリング26L,26Rの後端部が掛止されている。シリンダ支軸33bがシリンダ支軸可動部35Rの後部に摺動している状態では、スプリング26L,26Rは、後方に伸長している状態であるので、前方に付勢力が与えられている。この付勢力により、スプリング26L,26Rは徐々に縮長していく。そうすると、スプリング26L,2
6Rの縮長に連動してシリンダ支軸33bも前方に移動していく。同時に、シリンダ支軸33bに連結されたシリンダチューブ33aも前方に移動していく。一方、中央支持板13はロック爪36に係止されて上昇が停止されているので、中央支持板13を支持している上部支軸20も前回転上昇が停止されている。そして、上部支軸20に連結されたピストンロッド21の前端部も固定された状態になっている。したがって、前方に移動するシリンダチューブ33a内の圧縮室32に貯留されている薬液10は、ピストンロッド21の後端部に連結されたピストン30によって押圧されることになる。この結果、圧縮室32の薬液10は薬液輸送ホース5R,5M,5Lに圧送されて、薬液噴出装置4L,4Rか車両Vに向けて噴出されることになる。この動作が、メイン・ポンプ動作である。
【0060】
シリンダ支軸33bが前方に移動すると、これに連動してロック解除棒34も前方に移動し、一定時間経過後に、ロック解除棒34の前端部がロック部16の下部に当接し、前述したように、ロック部16が後回転して、ロック爪36が中央支持板13の係止から解放されてロックが解除される。そうすると、上昇復帰手段25L,25Rの作用で上部支軸20が前回転上昇を開始して、ピストンロッド21が前方への移動を開始するので、メイン・ポンプ動作が終了するとともに、圧縮室32内に薬液輸送ホース5Tを介して薬液供給タンク3から薬液10の吸引が開始される。このメイン・ポンプ動作が開始されてから終了するまでの時間(特許請求の範囲に記載された「第1の時間」に対応する。)、この動作時の薬液の噴出量は、車両Vの重量に依存せず、シリンダ33のストローク長、シリンダ33の容量、スプリング26L,26Rの弾性率等で制御されることになる。これらのパラメータを適宜調整することにより、メイン・ポンプ動作時間、薬液噴出量を可変することができる。なお、メイン・ポンプ動作が終了すると、前述したようにロック状態が解除されて昇降手段12が上昇し、車両支持板7F,7Rが待機状態の位置に復帰する。
【0061】
このように構成された車両消毒装置1の動作原理について、以下、
図14〜
図19を参照しながら説明する。なお、適宜、
図4〜
図13と、その説明も参照する。
[待機状態]
まず、
図14は、待機状態を示し、車両消毒装置1に車両Vが走行する前の状態である。この状態では、上昇復帰手段25L,25Rに設けられたコイルスプリング29L,29Rの作用により、昇降手段本体部19の上部支軸20が前回転上昇して、支持ローラー部20L,20Rを介して中央支持板13を予め設定された最高位置まで上昇させ、中央支持板13の上昇に連動して車両支持板7F,7Rも対応する最高位置まで上昇させた状態である。この状態では、スプリング26L,26Rは、自身の弾性により縮長し、ロック解除棒34によってロック爪36が解放されている。シリンダ33の圧縮室32には、薬液10が吸引された状態である。図中の円内には、薬液噴出手段4の動作を示す。待機状態では、薬液10は、噴出されていない。
【0062】
[プレ・ポンプ動作段階]
次に、
図15に示すように、車両Vの右側前輪RFTが車両支持板7Fの前端部に乗ると、車両Vの重量を外圧として、車両支持板7F,7Rが下降を開始する。車両支持板7F,7Rの下降に連動して、昇降手段12が下降し始め、ピストンロッド21が、ピストン30の押圧を開始する。この状態では、前述したように、ピストン30の移動量とシリンダチューブ33aの移動量との差分により、プレ・ポンプ動作が開始され、薬液10が、薬液噴出装置4L,4Rから徐々に噴出を開始される。コイルスプリング29L,29Rは押圧されて縮長を開始し、スプリング26L,26Rは、シリンダ支軸33bに引っ張られて伸長を開始する。
図15の黒太矢印は、ピストン30、シリンダチューブ33a等の移動方向を示す。
【0063】
昇降手段12が下降し始めると、シリンダ支軸33bが後方に移動するので、ロック解除棒34がロック部16から外れることになる。そうすると、ロック部16は、ロックスプリング38の付勢力により前回転し、
図15に示すように、垂直方向に沿った状態にされる。
【0064】
[ロック段階]
次に、
図16に示すように、車両Vの右側前輪RFTが車両支持板7Fの略中央部に乗った状態では、車両支持板7F,7Rが最下位置まで下降する。これに連動して昇降手段12も最下位置まで下降する。コイルスプリング29L,29R(
図6,7,9〜13等参照。)は、所定範囲内で最短に縮長され、スプリング26L,26Rは、所定範囲内で最長に伸長された状態であり、いずれも、
図16の黒太矢印で示す前方向に付勢されている。車両支持板7F,7Rは、枠体11の上面に当接し、昇降手段12、ポンプ手段14は、枠体11の内部に格納されるまで下降しているので、車両Vの重量は枠体11で支持され、装置の耐久性が確保されている。
【0065】
ここで、下降してきた中央支持板13の下面がロック爪36の上辺部に当接するが、前述したように、ロック部16は一旦後回転して中央支持板13をロック爪16下方に通過させた後、ロックスプリング38の付勢力で前回転し、ロック爪16で中央支持板13の上面を係止する。これにより、中央支持板13、昇降手段12、車両支持板13等の上昇動作が停止(ロック)される。
【0066】
[メイン・ポンプ動作段階]
次に、
図17に示すように、昇降手段12がロックされた状態では、上昇復帰手段25L,25Rは動作せず、メイン・ポンプ動作時間制御部26が動作開始する。つまり、伸長されたスプリング26L,26Rの付勢力(復元力)によって、シリンダ支軸33bが前方への移動を開始する。そうすると、ピストンロッド21に連結されたピストン30が固定された状態で、シリンダチューブ33aが前方に移動し、シリンダチューブ33aの圧縮室32内の薬液10が、ピストン30に押圧されて、薬液輸送ホース5L,5M,5Rを介して、薬液噴出装置4L,4Rから噴出される。このメイン・ポンプ動作は、車両Vの後輪(LRT,RRT)が通過して所定時間が経過するまで実行されるように設定されている。
図17の黒太矢印は、スプリング26L,26R、シリンダ支軸33b、シリンダチューブ33a、ロック解除棒34の移動する方向を示している。
【0067】
[ロック解除段階]
次に、
図18に示すように、車両Vの後輪(LRT,RRT)が通過して所定時間が経過すると、シリンダ支軸33bに掛止されたロック解除棒34が、ロック手段15のロック部16に当接して昇降手段12の上昇ロック状態を解除する。つまり、ロック爪36が中央支持板13から外れ、昇降手段12の上昇が可能になる。
【0068】
[薬液吸引段階]
次に、
図19に示すように、昇降手段12の上昇が可能になると、上昇復帰手段25L,25Rのコイルスプリング29L,29Rの付勢力(復元力)により、上部支軸20が前回転上昇する。そうすると、ポンプ手段14のピストンロッド21が、上部支軸20の前回転上昇に連動してピストン30を前方に引っ張るので、圧縮室32には、薬液輸送ホース5Tを介して、薬液供給タンク3から薬液10が吸引される。昇降手段14、車両支持板7F,7Rが、待機状態の位置まで上昇すると、全ての上昇動作が完了し、薬液10の吸引動作も終了して、[待機状態]に戻る。
図19の黒太矢印は、ピストンロッド21、ピストン30等の移動する方向を示している。
【0069】
このように、本発明の車両消毒装置1では、車両Vが通過して所定時間が経過するまで、薬液10を車両Vに噴出するので、確実に車両Vの消毒を行うことができる。特に、車両Vの前輪LFT,RFTが通過しても、後輪LRT,RRTが走行するまで、昇降手段12が上昇ロックされて、薬液を噴出し続けるので、前輪LFT,RFTと後輪LRT,RRTの走行間に薬液噴出が途切れることがない。また、メイン・ポンプ動作時の薬液噴出量や、メイン・ポンプ動作時間は、車両Vの重量に依存することなく、シリンダ33のストローク長、シリンダ33の容量、スプリング26L,26Rの弾性率等で制御されることになるので、重量の異なる広範囲の車種に対応することができる。
【0070】
なお、本実施形態において、車両Vが車両消毒装置1の前方向から走行することを前提に説明したが、車両Vが車両消毒装置1の後方から走行しても、同様の作用・効果を奏することができる。
【0071】
[別の使用状態]
図20は、第1実施形態の車両消毒装置1の別の使用状態を示す外観斜視図である。
図20では、
図3の乗用車に代えて、大型の貨物トラックTRに使用した状態を示す。基本的な使用状態は、
図20に示すように、
図3と同様である。図示していないが、車両底部消毒用の薬液噴出ノズルが所定数配設されている。
図20のように、大型の貨物トラックTRの場合は、車長が長く、
図3と同じサイズの車両消毒装置1を用いると、後輪が走行する前にメイン・ポンプ動作が完了してしまう場合がある。このような場合には、車両消毒装置1を大型化して、メイン・ポンプ動作時間を長くしたものを用いてもよい。また、車両消毒装置1として、複数の車両消毒装置本体部2を車長方向に配設したものを用いれば、同一サイズの車両消毒装置本体部2を全ての車種に対応させることができるので、車両装置本体部2の製造コスト低下になる。
【0072】
以上のように、本実施形態の車両消毒装置によれば、構成が簡素であるので、設置が短期間に容易にでき、かつ、設置した装置の移設も容易に行える。また、消毒液の濃度管理を含む装置全体の管理が容易であり、要員も少なくて済む。したがって、家畜伝染病が発生した場合に、消毒ポイントの設置・移設を容易に行うことができ、迅速な防疫対策を行うことができる。また、道路だけでなく、個々の家畜飼育施設内でも、簡単にこの車両消毒装置を設置し、車両の消毒を実施することができる。そして、車両の側面、タイヤ廻り及び底部等の車両下部の一定範囲を消毒することで防疫効果を奏するので、家畜伝染病の発生を抑制することができ、もし家畜伝染病が発生したとしても、その万延を防止し、被害を最小限に留めることができる。
【0073】
さらに、本実施形態の車両消毒装置を用いて、消毒液に代えて通常の上水や注水、あるいは、洗浄液等を用いて車両の簡易的な洗浄にも利用することができる。通常の上水や注水、あるいは、洗浄液等を用いて頻繁に車両の洗浄を行うことでも、防疫対策の所定の効果を奏することができる。
を上昇させる昇降手段と、該昇降手段と、液体噴出手段と、液体供給手段とに連結され、前記昇降手段の下降に応答して前記液体噴出手段へ液体を圧送する第1のポンプ動作を行い、前記昇降手段の上昇に応答して液体の吸引を行うポンプ手段と、前記昇降手段が所定位置まで下降した状態で、該昇降手段の上昇を第1の時間停止するロック手段とを備え、該第1の時間中、前記ポンプ手段が液体を圧送する第2のポンプ動作を行うように構成され、前記第1の時間完了に応答して、前記ロック手段が前記上昇動作の停止を解除するように構成されていることを特徴とする。