(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記人体の前記移動速度を、所定の単位距離当たりにかかる時間に換算することにより、現時点から先の予測ラップタイムを前記支援情報として算出することを特徴とする請求項4に記載の運動支援装置。
前記制御部は、前記予測ラップタイムと予め設定された目標となるラップタイムとの差分を前記支援情報として算出することを特徴とする請求項5に記載の運動支援装置。
前記制御部は、前記人体の前記移動速度に基づいて、ゴールまでの移動距離を移動するためにかかる時間を算出することにより、予測ゴールタイムを前記支援情報として算出することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の運動支援装置。
前記制御部は、前記予測ゴールタイムと予め設定された目標となるゴールタイムとの差分を前記支援情報として算出することを特徴とする請求項7に記載の運動支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る運動支援装置、運動支援方法及び運動支援プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。なお、以下の説明では、運動の一例として、ユーザがマラソン大会に参加する場合や、ランニング等のトレーニングを行う場合について説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
(運動支援装置)
図1は、本発明に係る運動支援装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
図2は、本実施形態に係る運動支援装置の一構成例を示すブロック図である。
【0014】
第1の実施形態に係る運動支援装置は、例えば
図1(b)に示すように、リストウォッチ型(又は腕時計型)の外観を有する電子機器であって、
図1(a)に示すように、走行中のユーザUSの手首に装着される。運動支援装置100は、
図1(b)に示すように、大別して、ユーザに所定の情報を提供するための表示部120を備えた機器本体101と、ユーザUSの手首に巻き付けることにより機器本体101を手首に装着するためのベルト部102と、を有している。ここで、運動支援装置100は、少なくとも、ユーザUSがマラソンやランニング等の走行中に、表示部120に表示された情報を容易に視認することができるものであれば、手首以外の身体の任意の部位(例えば上腕部や頭部等)に装着するものであってもよい。また、外観形状についても、リストウォッチ型(又は腕時計型)に限定されるものではなく、例えば携帯電話機やスマートフォン等の表示装置を備えた電子機器を適用するものであってもよいし、眼鏡型の表示装置を備えた電子機器を適用するものであってもよい。
【0015】
運動支援装置100は、具体的には、例えば
図2に示すように、大別して、GPSアンテナ111を備えたGPS処理部(位置検出部)110と、表示部120と、操作部130と、制御部(CPU)140と、データ保存用メモリ150と、ROM160と、RAM180と、電源供給部180と、を有している。
【0016】
GPS処理部110は、GPSアンテナ111により受信した複数のGPS衛星からの電波を復調することにより、緯度経度からなる(地理的な)位置を示す測位データを取得する。GPS処理部110は、この測位データに基づいて、ユーザUSの現時点における位置情報及び時刻情報を生成する。これらの測位データ、位置情報、時間情報は、相互に関連付けられて、データ保存用メモリ150の所定の記憶領域に保存される。
【0017】
表示部120は、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等の表示装置を有し、少なくともユーザUSの走行中に、上述した測位データに基づいて取得されたユーザUSの現在位置や走行距離、走行時間、走行速度、又は、これらに基づいて取得された各種の情報を表示する。特に、本実施形態においては、表示部120には、走行中の現時点におけるラップタイムや走行速度、現時点から先の予測ラップタイムや予測ゴールタイム等の、当該走行に係る現時点及び現時点から先に予測される各種の数値情報が表示される。これらの情報は、表示部120に複数の情報が同時に表示されるものであってもよいし、操作部130を操作することにより、1乃至複数の情報が順次表示されるものであってもよい。また、表示部120には、上記の数値情報に加え、当該数値情報を分析して得られた、当該走行の状態を改善するためのアドバイスを含む文字情報や、現時点における心拍数やカロリー消費量等の他の情報が表示されるものであってもよい。なお、本明細書においては、表示部120に表示することにより、ユーザUSに提供される有益な情報全般を、「運動支援情報」と記す。
【0018】
操作部130は、例えば、
図1(b)に示したようなボタンスイッチや、表示部120の前面(視野側)に配置、又は、表示部120の前面に一体的に形成されたタッチパネルを有し、上述したGPS処理部110における測位データの検出開始や終了等の動作、表示部120に表示する情報項目の設定等の操作に用いられる。ここで、操作部130は、ボタンスイッチとタッチパネルの双方を備えているものであってもよいし、ボタンスイッチとタッチパネルを操作することにより実現される機能が同一である場合には、いずれか一方のみを備えているものであってもよい。
【0019】
データ保存用メモリ150は、上述したGPS処理部110により取得された測位データや位置情報、時間情報、また、後述する制御部140により算出されたユーザUSの走行距離(又は、移動距離)や走行時間(又は、経過時間)、走行速度(又は、移動速度)を、相互に関連付けて所定の記憶領域に保存する。ROM160は、GPS処理部110における測位データ等の検出動作や、表示部120における各種情報の表示動作等の、各構成における所定の動作を実行するための制御プログラム、及び、上記の走行距離や走行速度、走行時間に基づいて、現時点及びこれから先の予測ラップタイムの計測処理を実行するアルゴリズムプログラムを保存する。ここで、これらの制御プログラムやアルゴリズムプログラムが保存されるメモリは、読み出し専用のメモリ(ROM)に限らず、書き換え可能なフラッシュメモリであってもよい。RAM170は、上記制御プログラム及びアルゴリズムプログラムを実行する際に使用、または、生成される各種データを一時的に保存する作業用メモリである。なお、データ保存用メモリ150は、その一部または全部が、例えばメモリカード等のリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、運動支援装置100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
【0020】
制御部140は、上記のROM160に保存された制御プログラムに従って処理を行うことにより、GPS処理部110や表示部120、操作部130等の、各構成における動作を制御して所定の機能を実現する。また、制御部140は、所定のアルゴリズムプログラムに従って処理を行うことにより、制御部140内部でGPS処理部110により取得された測位データに基づいて、ユーザUSの走行速度や、現時点及び現時点から先のラップタイムを計測する動作や、当該ラップタイム等を表示部120に所定の表示形式で表示する動作を実行する。なお、ユーザUSの走行速度を算出する手法としては、例えばGPS衛星から送信される電波のドップラーシフト効果(ドップラー周波数)を利用する手法や、所定のサンプリング周期で取得した位置情報を微分する手法等、周知のGPS測位計算方法を適用することができる。また、制御部140において実行される制御プログラムやアルゴリズムプログラムは、予め制御部140内部に組み込まれているものであってもよい。
【0021】
電源供給部180は、運動支援装置100内部の各構成に駆動電力を供給する。電源供給部180は、例えば、市販のコイン型電池やボタン型電池等の一次電池、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が適用される。また、電源供給部180は、これらの電池のほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電(エナジーハーベスト)技術による電源等を適用することもできる。
【0022】
(運動支援方法)
次に、上述した運動支援装置に適用される運動支援方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る運動支援装置に適用される運動支援方法の一例を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態に係る運動支援方法において表示部に表示される情報の一例を示す概略図である。
【0023】
本実施形態に係る運動支援装置100における運動支援方法は、
図3に示すように、まず、制御部140は、ユーザUSのランニングやマラソン等の走行開始に合わせて計測処理を開始すると、GPS処理部110における測位データのサンプリング1回ごとにカウント値をアップ(増加)しつつ(ステップS101)、所定のサンプリング周期で測位データを順次取得する(ステップS102)。ここで、GPS処理部110における測位データのサンプリング周波数を例えば1Hzとした場合、サンプリング周期(間隔)は1秒となる。取得された測位データは、当該測位データに含まれる位置情報及び時間情報とともにデータ保存用メモリ150の所定の記憶領域に保存される。
【0024】
次いで、制御部140は、取得した測定データが計測処理に使用するデータとして有効であるか否かを判定する(ステップS103)。ここで、測位データの使用可否は、例えばGPS衛星の配置やユーザUSの地理的な位置、受信電波の強度等に基づいて判定される。すなわち、GPS処理部110のエラーの発生や、GPS衛星が見通せる上空が遮蔽された場所等により、測位データが受信されなかった場合や測位データの精度が極端に低い場合、測位データに基づく位置情報が十分収束(安定)せず確定されていない場合等には、取得した測位データは計測処理に使用されず削除される。すなわち、制御部140により測位データが使用不可能であると判定された場合には、当該時点の測位データは存在せず、欠落した状態となる。
【0025】
ステップS103において、測位データが計測処理に使用可能であると判定された場合には、制御部140は、取得された測定データに基づいて速度データを取得する(ステップS104)。ここで、速度データは、上述したように、制御部140において、GPS衛星から送信される電波のドップラーシフト効果(ドップラー周波数)を利用する手法や、所定のサンプリング周期で取得した位置情報を微分する手法等、周知のGPS測位計算方法を用いて導出される。
【0026】
次いで、制御部140は、今回取得された現時点の速度データと、1カウント前に取得された(前回カウント時の)速度データとの差分を算出する(ステップS105)。ここで、制御部140は、ステップS105の差分算出処理において、前回カウント時の速度データがあるか否かを判定する(ステップS106)。これにより、前回カウント時の測位データの精度が低かったり、GPS電波の受信エラーが生じたりして、上述したステップS103において、当該測位データが計測処理に使用不可能であると判定されて削除されているか(存在しない)が判別される。
【0027】
ステップS106において、前回カウント時の速度データがないと判定された場合には、制御部140は、今回取得された現時点の速度データと、前々回カウント時の速度データとの平均値を算出して速度データを補完し(ステップS107)、当該補完後の速度データを、次のステップS108以降の処理に使用する。一方、ステップS106において、前回カウント時の速度データがあると判定された場合には、制御部140は、前回カウント時の速度データ及び今回取得された現時点の速度データを、次のステップS108以降の処理にそのまま使用する。
【0028】
次いで、制御部140は、上述したステップS105において算出された速度データの差分(速度差)が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS108)。ここで、判定基準となる閾値については任意の数値に設定することができ、例えば閾値となる速度差として5km/hに設定される。これにより、前回カウント時の速度データと今回取得された現時点の速度データとの間で一定の閾値以上の速度差が生じている場合には、例えば、ランニング中に立ち止まったり、歩いたりして、短時間で急激にペースが変化した状態が発生したことが判別され、次のステップS109以降の平均速度やラップタイムの算出時に、速度の急変に起因して算出値の精度が低下する現象を排除又は抑制することができる。
【0029】
ステップS108において、速度データの差分(速度差)が所定の閾値以下であると判定された場合には、制御部140は、GPS処理部110における測位データの取得(計測)開始時点(カウント値[0])から現時点(カウント値[N])までの、速度データを平均して平均速度を算出する(ステップS109)。このように、速度差が所定の閾値以下であって、速度の変動が大きくないと判定されたカウント値[0]から[N]までの速度データを用いて、平均値を算出する手法を適用することにより、本計測処理における経過時間(カウント値[0]から[N]までの時間)が長くなるほど、算出される速度データの平均値(平均速度)の精度を上げることができる。ここで、カウント値[0]は、本計測処理において、計測開始動作やリセット動作により初期値を設定した時刻である。
【0030】
次いで、算出された平均速度に基づいて、現時点のラップタイム及び現時点から先の予測ラップタイムを算出する(ステップS110)。ここで、現時点におけるラップタイムは、今回取得された現時点の速度データにより算出された平均速度を、単位距離(例えば1km)当たりにかかる時間に換算することにより導出される。また、現時点から先の予測ラップタイムは、ステップS109において算出された平均速度(すなわち、カウント値[0]から[N]までの平均化された速度)を、単位距離(1km)当たりにかかる時間に換算することにより導出(推定)される。このように、現時点から先の予測ラップタイムについて、測位データのサンプリングを、例えば1秒のような短い時間間隔(周期)で行って、その時点の平均速度をラップタイムに換算する処理を順次実行することにより、その時点の平均速度で走行を続けた場合の、この先のラップタイム(すなわち、次の1kmを走行した場合の予測ラップタイム)を精度良く求めることができる。
【0031】
一方、ステップS108において、速度データの差分(速度差)が所定の閾値以下ではない(閾値を超過する)と判定された場合には、制御部140は、前回カウント時に算出された平均速度のデータをリセットするとともに、カウンタのカウント値を[0]に戻す(ステップS111)。すなわち、現時点において本計測処理を中止し、当該時点から再度、計測処理を開始して、各カウント時に取得した速度データを使用して平均速度の算出(速度の平均化)を行う。
【0032】
次いで、制御部140は、表示部120の表示を更新するか否かを判定する(ステップS112)。ここで、表示の更新判定は、測位データのサンプリングごとに実行されるものであってもよいし、例えば5秒や10秒等の予め設定された時間間隔で実行されるものであってもよい。そして、制御部140は、表示の更新タイミングが到来したと判定した場合、上述した一連の処理(ステップS101〜S111)により算出された、現時点の平均速度やラップタイム等を、所定の表示形式で表示部120に表示する(ステップS113)。
【0033】
具体的には、例えば
図4(a)、(b)に示すように、表示部120の上段に現時点の速度データに基づいて算出された「現時点のラップタイム」が数値情報により表示され、表示部120の中段に現時点の平均速度が「走行速度」として数値情報により表示され、表示部120の下段に現時点の平均速度に基づいて算出された「予測ラップタイム」が数値情報により表示される。なお、
図4(a)、(b)に示した表示部120における表示は一例であって、これに限定されるものではない。すなわち、上述した「現時点のラップタイム」、「走行速度」、「予測ラップタイム」のいずれかに替えて、又は、これらに加えて、走行時間や走行距離、心拍数やカロリー消費量等の、他の情報を同時に又は順次表示するものであってもよい。
【0034】
一方、ステップS112において、表示部120の表示を更新しない場合には、表示部120に前回カウント時に算出された平均速度及びラップタイムが継続して表示される。また、上述したステップS103において、測位データが計測処理に使用不可能であると判定された場合においても、ステップS112において、表示部120の表示を更新しない場合には、表示部120に前回カウント時に算出された平均速度及びラップタイムが継続して表示される。
【0035】
以上説明した一連の運動支援方法は、制御部140により、ランニング等の走行中、上述した所定のサンプリング周期(例えば1Hz;1秒間隔)で繰り返し実行され、表示部120の表示が順次更新される。
【0036】
なお、本実施形態においては、上述したステップS108において、前回カウント時の速度データと今回取得された現時点の速度データとの速度差が所定の閾値以上である場合に、速度の急変があったものとして計測処理のリセットを行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものはない。すなわち、本発明に係る運動支援方法に適用される計測処理においては、所定の時間内に所定の閾値以上の速度差が生じている場合に、算出された平均速度への影響を排除又は抑制することができるものであればよい。したがって、前回と今回のカウント時のように、隣接するサンプリング間隔(例えば1秒間)に限定されず、例えば3秒間や5秒間等の任意の時間幅で、所定の閾値以上の速度差を生じている場合に計測処理のリセットを行うものであってもよい。
【0037】
次に、上述した一連の運動支援方法における計算結果について、一例を示して具体的に説明する。
図5は、本実施形態に係る運動支援方法により算出される走行速度とラップタイムの計算結果の一例を示す表であり、
図6は、本実施形態に係る運動支援方法により算出されるラップタイムの経時変化の一例を示すグラフであり、
図7は、本実施形態に係る運動支援方法により算出される走行速度の経時変化の一例を示すグラフである。
【0038】
ここで、
図5〜
図7においては、サンプリング周波数を1Hz(サンプリング間隔を1秒)に設定し、ステップS108における判定基準(閾値)となる速度差を5km/hに設定し、約10km/hのほぼ等速度のペースで、ランニングを行った場合について、測定データ及び計算結果の一例を示した。なお、運動支援方法の計測処理に利用されるデータは、GPSの標準フォーマットである「NMEA0183」フォーマットで出力された速度データを使用した。
【0039】
図5に示した測定データ及び計算結果において、「経過時刻」は、本実施形態に係る運動支援方法において、表示部120に平均速度やラップタイムが表示された、測位データのサンプリングごとの、時間の経過を示す。また、「元データ」は、1Hzのサンプリング周期で取得した各測位データに基づいて取得された速度データであり、「カウンタ」は、測位データのサンプリングごとにカウントアップされるカウント値である。「速度計算列」は、計測処理に使用可能な測位データに基づいて取得された速度データの各時点の平均速度の算出値であり、「計算結果・時速」は、表示部120に表示された平均速度(走行速度)である。また、「ラップタイム計算列」は、「速度計算列」に示された各時点の平均速度の算出値を換算することにより導出された各時点のラップタイムであり、「計算結果・ラップタイム」は、表示部120に表示されたラップタイム(予測ラップタイム)である。
【0040】
また、
図5に示した測定データ及び計算結果において、上述した運動支援方法に適用したGPS測位計算によって導出される速度データには一定の誤差が含まれるため、次に示すような処理(1−1)〜(1−4)を実行した。
【0041】
(1−1)計測処理開始後、又は、平均速度のデータリセット後は、2秒分の速度データを平均値の算出に使用しない。すなわち、
図5に示した測定データ及び計算結果において、計測処理開始後の「経過時刻」(1)〜(2)秒、平均速度のデータリセット後の「経過時刻」(4)〜(5)秒、及び、73〜74秒においては、GPS処理部110により取得される測位データが十分収束せず、「元データ」である速度データが安定していない。そこで、これらのデータを予め計測処理の対象から除外することにより、計測処理により算出される平均速度やラップタイムへの影響を抑制することができる。
【0042】
(1−2)計測処理開始後、又は、平均速度のデータリセット後、12秒以降の測位データを計測処理に使用する。すなわち、
図5に示した測定データ及び計算結果において、平均速度のデータリセット後の「経過時刻」(4)〜(14)秒、及び、73〜83秒の各11秒間においては、上述した計測処理において十分な測位データ(速度データ)の蓄積がなく、算出される平均速度やラップタイムの精度が低くなる。そこで、この期間中に算出された各時点の平均速度及びラップタイムは表示部120への表示に使用しないようにすることにより、ユーザUSに提供する走行速度(平均速度)や予測ラップタイム等の信頼性を確保することができる。
【0043】
(1−3)上記(1-2)の処理において、平均速度のデータリセット後の経過時間が0〜11秒までの間は、データリセット直前の平均速度やラップタイムをそのまま使用する。すなわち、
図5に示した測定データ及び計算結果において、上記(1-2)の処理においては、ランニング等の走行中に、平均速度のデータリセットが行われた場合、表示部120への表示が一時的に実行されず、ユーザUSに対して有益な情報を提供できない状態になる。そこで、「経過時刻」73〜83秒の11秒間に示すように、当該期間中の平均速度やラップタイムに最も近似し、かつ、最も信頼性が高いと推定される、データリセット直前の平均速度やラップタイムをそのまま使用して補完し、表示部120に走行速度や予測ラップタイムとして表示することにより、ユーザUSに適切な情報を継続的に提供することができる。
【0044】
(1−4)測位データが途中で欠落した場合には、1カウント前と1カウント後の速度データの平均値により補完を行う。すなわち、
図5に示した測定データ及び計算結果において、ランニング等の走行中に、例えば「経過時刻」26秒の「元データ」である速度データがGPS処理部110のエラー等により欠落した場合、上述した運動支援方法のステップS106〜S107に示した補完方法を用いて、その1カウント前の「経過時刻」25秒と1カウント後の「経過時刻」27秒の各速度データを使用して算出した平均値により補完を行う。これにより、当該データ欠落時の速度データに最も近似し、かつ、最も信頼性が高いと推定される、前後のカウント時の速度データの平均値を計測処理に使用することができる。
【0045】
なお、
図5に示した測定データ及び計算結果において、「経過時刻」(1)〜(14)秒は、上述した(1−1)〜(1-4)の処理を実行した場合に、計測処理の開始時点から、算出された平均速度やラップタイムが表示部120に走行速度や予測ラップタイムとして実際に表示されるまでの期間を示している。すなわち、この期間においては、表示部120への表示は実行されない。
【0046】
また、上述した(1−1)〜(1−4)の処理は、GPS処理部110における受信感度や検出精度等の機器性能に応じて、必要に応じて単独で又は任意の複数の処理が実行されるものであってもよい。また、ここで示した数値は一例であり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
【0047】
図6に示したグラフは、
図5に示した計算結果に基づいて、横軸に表示部120に表示が開始された初期時刻0からの経過時間、縦軸に1km換算でのラップタイムを設定してグラフ化したものである。
図6に示したグラフにおいて、細点線は、GPS処理部110において取得した測位データに基づく元データ(速度データ)をそのまま使用して算出したラップタイムであり、多くのランダムな誤差を含んでいて、ばらつきの程度が極めて大きいことがわかる。
【0048】
一方、
図6において太点線は、現時点から過去10秒間の元データをそのまま使用して算出したラップタイムの移動平均値である。これによれば、元データに含まれる誤差の影響をある程度抑制することはできるが、その効果は十分ではなく、依然としてランダムな誤差の影響を受けていて、ばらつきの程度も比較的大きいことがわかる。すなわち、十分に時間が経過した状態(例えば経過時刻100秒)であっても、全速度データの平均値から算出されたラップタイム(図中、細実線)に収束する傾向は、極めて弱い。
【0049】
これに対して、
図6において太実線は、本実施形態に係る運動支援方法を適用して算出したラップタイムであり、元データをそのまま使用した場合(細点線)や移動平均値による場合(太点線)に比較して、元データに含まれるランダムな誤差の影響が大幅に緩和されて、ばらつきの程度が非常に小さくなっているとともに、全速度データの平均値から算出されたラップタイム(細実線)に収束する傾向も極めて強いことがわかる。すなわち、本実施形態によれば、算出されたラップタイム(表示部120に表示される予測ラップタイム)を迅速に収束させて、その精度を向上させることができる。
【0050】
また、
図7に示したグラフは、
図5に示した計算結果に基づいて、横軸に表示部120に表示が開始された初期時刻0からの経過時間、縦軸に平均速度を設定してグラフ化したものである。
図6に示したラップタイムのグラフと同様に、本実施形態に係る運動支援方法を適用して算出した平均速度(太実線)は、元データ(細点線)や移動平均値(太点線)に比較して、元データに含まれるランダムな誤差の影響が大幅に緩和されて、ばらつきの程度が非常に小さくなっているとともに、全速度データの平均値(細実線)に収束する傾向も極めて強いことがわかる。すなわち、本実施形態によれば、算出された平均速度(表示部120に表示される走行速度)を迅速に収束させて、その精度を向上させることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、GPS測位計算において測位データに含まれる誤差の影響を抑制して、所定のサンプリング周期で取得される速度データのばらつきを最小限に留めつつ、現時点から先の予測ラップタイムを精度良く算出することができる。したがって、走行中のユーザUSに算出された予測ラップタイムを提供することにより、ユーザUSに走行状態の改善を促すことができ、運動効果や記録の向上を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、上述したリストウォッチ型の運動支援装置に限らず、GPS処理部110や表示部120を標準的に備えた、携帯電話機やスマートフォン等の既存の単一の電子機器に対して、上述した運動支援方法を実行するためのアルゴリズムプログラムをアプリケーションソフトウェアとしてインストールすることにより、本実施形態に係る機能を容易に追加して実現することができる。
【0053】
(変形例)
上述した第1の実施形態においては、運動支援情報として、現時点の平均速度(走行速度)と、現時点のラップタイムと、現時点から先の予測ラップタイムとを表示部120に表示する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、各種のマラソンのように、予め走行する距離の全長(全走行距離)が決まっている場合には、上述した第1の実施形態に係る運動支援方法において、当該全走行距離を指定する操作を行った後、計測処理を開始し、走行中の各時点において、当該時点の平均速度で走行を続けた場合の予測ゴールタイムを算出して、表示部120に表示するものであってもよい。
【0054】
図8は、本実施形態に係る運動支援装置に適用される運動支援方法の他の例(変形例)を示すフローチャートである。また、
図9は、本変形例に係る運動支援方法において表示部に表示される情報の一例を示す概略図である。ここで、上述した第1の実施形態と同等の方法については、同等の符号を使用して説明を簡略化する。
【0055】
本実施形態に係る運動支援方法の他の例(変形例)においては、
図8に示すように、上述した第1の実施形態に示した一連の運動支援方法(
図3参照)に示したステップS110に替えて、予測ゴールタイムを算出する(ステップS130)。ここで、
図8に示したステップS121〜S129、及び、S131〜S133は、それぞれ、
図3に示したステップS101〜S109、及び、S111〜S113に相当する。
【0056】
予測ゴールタイムの算出方法は、具体的には、まず、GPS処理部110により取得した測位データに基づいて生成される位置情報により、ユーザUSの現時点の走行距離が算出され、これに基づいて、予め指定した全走行距離との差分、すなわちゴールまでの残りの走行距離が算出される。次いで、ステップS129により算出された現時点の平均速度で、残りの走行距離を走行した場合の予想走行時間を算出する。そして、現時点までの走行時間(経過時間)に、算出された予想走行時間を加算することにより、マラソン等におけるスタートしてからゴールまでに要する時間、すなわち予想ゴールタイムが導出される。
【0057】
このようにして導出された予想ゴールタイムは、例えば
図9(a)、(b)に示すように、表示部120の上段に「現時点の走行時間」が表示され、表示部120の中段に現時点の平均速度が「走行速度」として表示され、表示部120の下段に現時点の平均速度に基づいて算出された「予測ゴールタイム」が表示される。
【0058】
このように、本変形例によれば、GPS測位計算において測位データに含まれる誤差の影響を抑制して、現時点における予測ゴールタイムを精度良く算出することができる。したがって、走行中のユーザUSに算出された予測ゴールタイムを提供することにより、ユーザUSに走行状態の改善を促すことができ、運動効果や記録の向上を図ることができる。
【0059】
なお、本変形例においては、第1の実施形態に示した予測ラップタイムに替えて、予測ゴールタイムを算出する(ステップS130)場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、第1の実施形態に示したステップS110のラップタイムの算出処理に加えて、予測ゴールタイムの算出処理を実行し、表示部120にラップタイムや予測ゴールタイムを、単独であるいは同時に表示するものであってもよい。
【0060】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る運動支援装置の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、ランニングやマラソン等の走行中の、各時点の平均速度に基づいて、予測ラップタイム又は予測ゴールタイムを算出して表示する手法について説明した。第2の実施形態においては、予め目標ラップタイムや目標ゴールタイムを設定し、各時点の平均速度に基づいて算出された予測ラップタイム又は予測ゴールタイムと、目標ラップタイム又は目標ゴールタイムとの差分を表示する手法を有している。
【0061】
図10は、本発明に係る運動支援装置の第2の実施形態に適用される運動支援方法の一例を示すフローチャートである。また、
図11は、本実施形態に係る運動支援方法において表示部に表示される情報の一例を示す概略図である。ここで、上述した第1の実施形態と同等の構成や方法については、同一の符号を使用して説明を簡略化する。
【0062】
第2の実施形態に係る運動支援装置は、上述した第1の実施形態(
図1、
図2参照)と同等の構成を有している。そして、本実施形態に係る運動支援方法は、
図10に示すように、まず、制御部140は、計測処理を開始すると、当該処理が初回の処理であるか否かを判定する(ステップS201)。初回の処理であると判定された場合には、制御部140は、ユーザUSに対して目標ラップタイム等の初期設定項目の入力を促す情報を表示部120に表示する。一方、初回の処理ではないと判定された場合には、制御部140は、所定のサンプリング周期で取得された測位データに基づいて、後述するステップS204を実行する。
【0063】
次いで、ユーザUSは、操作部130を操作することにより、少なくとも、これから行うランニングやマラソン等の走行における目標ラップタイムを入力設定する(ステップS202)。ここで、ランニングやマラソン等を行う場合、一般にラップタイムは1km当たりにかかる時間であるが、これに限らず、例えば5km等の所定の単位距離当たりにかかる時間を目標ラップタイムとしてもよい。この場合においては、ステップS202において、目標ラップタイムに加え、当該目標ラップタイムの対象となる単位距離を入力設定する。なお、本実施形態においては、一般的なラップタイム(1km当たりにかかる時間)を対象とする運動支援方法について説明する。
【0064】
次いで、制御部140は、ユーザUSのランニングやマラソン等の走行開始に合わせて、計測処理を開始する(ステップS203)。これにより、制御部140は、所定のサンプリング周期でGPS処理部110により測位データを順次取得する。取得された測位データはデータ保存用メモリ150の所定の記憶領域に保存される。
【0065】
次いで、制御部140は、取得した測定データに含まれる位置情報の変化(位置の差分)に基づいて現時点の走行距離を算出するとともに、測定データに含まれる時間情報の変化に基づいて、現時点の経過時間を計測する(ステップS204)。ここで、現時点の走行距離は、本実施形態においては1kmを単位距離として、1kmごとにポイントを設定し、現時点で走行している1km区間についてスタート地点からの距離を算出する。
【0066】
次いで、制御部140は、ステップS204において算出した走行距離に基づいて、現時点で走行している1km区間のゴール地点(すなわち、次の1km区間のスタート地点)までの、残りの走行距離を算出する(ステップS205)。すなわち、単位距離である1kmから現時点の走行距離を減算することにより、残りの走行距離が算出される。
【0067】
次いで、制御部140は、算出された残りの走行距離を、現時点における走行速度で除算することにより、当該走行速度で残りの距離を走行した場合にかかる時間(予測所要時間;図中<1>と表記)を算出する(ステップS206)。ここで、現時点の走行速度は、上述した第1の実施形態に示した手法を用いて導出される平均速度を適用する。
【0068】
次いで、制御部140は、現時点における経過時間に、算出された予測所要時間<1>を加算することにより、現時点で走行している1km区間の予測ラップタイムを算出する(ステップS207)。
【0069】
次いで、制御部140は、算出された予測ラップタイムと、ステップS202において予め設定した目標ラップタイムとを比較して差分を算出し(ステップS208)、当該差分を所定の表示形式で表示部120に表示する(ステップS209)。具体的には、例えば
図11(a)、(b)に示すように、表示部120の上段に予め設定した「目標ラップタイム」が数値情報により表示され、表示部120の下段に現時点の走行速度に基づいて算出された予測ラップタイムと目標ラップタイムとの「差分」が数値情報により表示される。ここでは、予測ラップタイムから目標ラップタイムを減算することにより、予測ラップタイムが目標ラップタイムを超過する場合(予測ラップタイムの方が遅い場合)には差分が+(プラス)の数値で表示され、一方、予測ラップタイムが目標ラップタイムを下回る場合(予測ラップタイムの方が早い場合)には差分が−(マイナス)の数値で表示される。なお、
図11(a)、(b)に示した表示部120における表示は一例であって、これに限定されるものではなく、「目標ラップタイム」、「差分」のいずれかに替えて、又は、これらに加えて、走行速度や走行時間、走行距離等の、他の情報を同時に又は順次表示するものであってもよい。
【0070】
上述した一連の運動支援方法は、制御部140により、ランニング等の走行中、単位距離(例えば1km)ごとに繰り返し実行され、表示部120の表示が順次更新される。すなわち、単位距離ごとに設定されたスタート地点において走行距離と経過時間の計測が開始され、ゴール地点(すなわち次の単位距離のスタート地点)に到達すると、計測された走行距離と経過時間がリセットされる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、GPS測位計算において測位データに含まれる誤差の影響を抑制して、所定のサンプリング周期で取得される速度データのばらつきを最小限に留めつつ、目標とするラップタイムと予測されるラップタイムとの差分を精度良く算出することができる。したがって、目標とするラップタイムと予測ラップタイムとの差分を、走行中のユーザUSにスピードのアップやダウンを指示する運動支援情報として提供することにより、ユーザUSに走行状態の改善を促すことができ、運動効果や記録の向上を図ることができる。
【0072】
(変形例)
上述した第2の実施形態においては、運動支援情報として、目標ラップタイムと、当該目標ラップタイムと予測ラップタイムとの差分とを表示部120に表示する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した第1の実施形態の変形例と同様に、各種のマラソンのように、予め走行する距離の全長が決まっている場合には、上述した第2の実施形態に係る運動支援方法において、当該全長距離と目標ゴールタイムを指定する操作を行った後、計測処理を開始し、走行中の各時点において、当該時点の平均速度で走行を続けた場合の予測ゴールタイムを算出して、目標ゴールタイムとの差分を表示部120に表示するものであってもよい。
【0073】
図12は、本実施形態に係る運動支援装置に適用される運動支援方法の他の例(変形例)を示すフローチャートである。また、
図13は、本変形例に係る運動支援方法において表示部に表示される情報の一例を示す概略図である。ここで、上述した第2の実施形態と同等の方法については、同等の符号を使用して説明を簡略化する。
【0074】
本実施形態に係る運動支援方法の他の例(変形例)においては、
図12に示すように、上述した第2の実施形態に示した一連の運動支援方法(
図10参照)に示したステップS207に替えて、予測ゴールタイムを算出する(ステップS227)。
【0075】
予測ゴールタイムの算出方法は、具体的には、上述した第2の実施形態に示したステップS202に替えて、目標ゴールタイム及び走行する距離の全長(全走行距離)を入力設定する(ステップS222)。ここで、全走行距離の設定方法は、42.195kmや21.095km等の数値を直接入力するものであってもよいし、予め複数用意された競技名等(例えば、フルマラソン、ハーフマラソン、10kmマラソン等)を選択することにより、所定の数値が設定されるものであってもよい。
【0076】
次いで、上述した第2の実施形態に示したステップS205に替えて、ステップS222において設定した全走行距離から、現時点の走行距離を減算することにより、残りの走行距離を算出する(ステップS225)。
【0077】
次いで、上述した第2の実施形態に示したステップS206、S207に替えて、ステップS225において算出された残りの走行距離を、現時点における走行速度で除算することにより算出された予測所要時間(図中<2>と表記)と、現時点における経過時間とを加算することにより、全走行距離を走り切った場合の予測ゴールタイムを算出する(ステップS226、S227)。
【0078】
次いで、上述した第2の実施形態に示したステップS208、S209に替えて、ステップS227において算出された予測ゴールタイムと、ステップS222において予め設定した目標ゴールタイムとを比較して差分を算出し(ステップS228)、当該差分を所定の表示形式で表示部120に表示する(ステップS229)。具体的には、例えば
図13(a)、(b)に示すように、表示部120の上段に予め設定した「目標ゴールタイム」が数値情報により表示され、表示部120の下段に現時点の走行速度に基づいて算出された予測ゴールタイムと目標ゴールタイムとの「差分」が数値情報により表示される。
【0079】
このように、本変形例によれば、GPS測位計算において測位データに含まれる誤差の影響を抑制して、予測ゴールタイムと目標ゴールタイムとの差分を精度良く算出することができる。したがって、走行中のユーザUSに算出された予測ゴールタイムと目標ゴールタイムとの差分を提供することにより、ユーザUSに走行状態の改善を促すことができ、運動効果や記録の向上を図ることができる。
【0080】
なお、本変形例においては、第2の実施形態に示した予測ラップタイムと目標ラップタイムとの「差分」に替えて、予測ゴールタイムと目標ゴールタイムとの「差分」を算出する(ステップS222〜S228)場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、第2の実施形態に示したステップS202〜S208の予測ラップタイムと目標ラップタイムとの「差分」の算出処理に加えて、予測ゴールタイムと目標ゴールタイムとの「差分」の算出処理を実行し、表示部120にラップタイムやゴールタイムを、単独であるいは同時に表示するものであってもよい。
【0081】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る運動支援装置の第3の実施形態について説明する。
上述した第1及び第2の実施形態においては、
図1、
図2に示すように、運動支援装置がリストウォッチ型の外観形状を有し、GPS処理部110や表示部120を含む各構成が、単一の電子機器に一体的に組み込まれている場合について説明した。第3の実施形態においては、GPS処理部を備えるセンサ機器と、表示部を備えるインターフェース機器とが、別体の機器として設けられた構成を有している。
【0082】
図14は、本発明に係る運動支援装置の第3の実施形態を示すブロック図である。ここで、上述した第1の実施形態(
図2参照)と同等の構成については、同等の符号を使用して説明を簡略化する。
【0083】
第3の実施形態に係る運動支援装置は、
図14(a)、(b)に示すように、表示部120を備えたインターフェース機器100Aと、GPS処理部210を備えたセンサ機器200と、を有している。
【0084】
インターフェース機器100Aは、
図14(a)に示すように、大別して、表示部120と、操作部130と、制御部140と、データ保存用メモリ150と、RAM160と、ROM170と、電源供給部180と、通信機能部190と、を有している。ここで、表示部120と、操作部130と、制御部140と、データ保存用メモリ150と、RAM160と、ROM170と、電源供給部180とは、上述した第1の実施形態と同等の構成を有している。通信機能部190は、センサ機器200との間で、所定の通信方式により種々のデータの伝送を行う。
【0085】
センサ機器200は、
図14(b)に示すように、大別して、GPS処理部210と、操作部230と、制御部240と、データ保存用メモリ250と、RAM260と、ROM270と、電源供給部280と、通信機能部290と、を有している。ここで、GPS処理部210と、制御部240と、データ保存用メモリ250と、RAM260と、ROM270と、電源供給部280とは、上述した第1の実施形態に示したGPS処理部110と、制御部140と、データ保存用メモリ150と、RAM160と、ROM170と、電源供給部180と同等の構成を有している。操作部230は、例えばボタンスイッチやスライドスイッチを有し、操作部230を操作することにより、電源供給部280からセンサ機器200内部の各構成への駆動電力の供給や、GPS処理部210におけるセンシング動作等が制御される。通信機能部290は、上述したインターフェース機器100Aとの間で、所定の通信方式により種々のデータの伝送を行う。
【0086】
ここで、インターフェース機器100Aとセンサ機器200との間のデータの伝送方法については、例えば無線通信による方式として、デジタル機器用の近距離無線通信規格であるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))や、この通信規格において低消費電力型の規格として策定されたブルートゥースローエナジー(Bluetooth(登録商標) low energy)、Wi-Fi(登録商標)等を良好に適用することができる。また、本実施形態に適用可能な他の伝送方法としては、例えば通信ケーブルを介した有線による通信方式を適用することもできる。
【0087】
本実施形態においても、上述した第1又は第2の実施形態と同様の運動支援方法を実行することにより、同等の作用効果を得ることができる。すなわち、本実施形態においては、センサ機器200に内蔵されたGPS処理部210により取得された測位データが、データ保存用メモリ250に保存されるとともに、上述した第1又は第2の実施形態に示した運動支援方法を適用することにより、取得された測位データに基づいて平均速度、現時点や予測されるラップタイム又はゴールタイム、現時点と予測におけるラップタイムの差分又はゴールタイムの差分等が算出される。そして、これらの平均速度やラップタイム、ゴールタイム等の算出データは、通信機能部290を介してインターフェース機器100Aに伝送される。これらの一連の動作は制御部240により制御される。
【0088】
一方、通信機能部190を介してインターフェース機器100Aに伝送された上記の平均速度やラップタイム、ゴールタイム等の算出データは、データ保存用メモリ150に保存されるとともに、上述した第1又は第2の実施形態に示した運動支援方法を適用することにより、所定の表示形式で表示部120に表示されて、ユーザUSに運動支援情報として提供される。これらの一連の動作は制御部140により制御される。
【0089】
なお、本実施形態においては、上述した運動支援方法に限定されず、センサ機器200に内蔵されたGPS処理部210により取得された測位データが、データ保存用メモリ250に保存されるとともに、通信機能部290を介してインターフェース機器100Aに伝送されるものであってもよい。この場合、インターフェース機器100Aは、通信機能部190を介して伝送された測位データを、データ保存用メモリ150に保存するとともに、上述した第1又は第2の実施形態に示した運動支援方法を適用することにより、当該測位データに基づいて平均速度、現時点や予測されるラップタイム又はゴールタイム、現時点と予測におけるラップタイムの差分又はゴールタイムの差分等を算出する。そして、算出された平均速度やラップタイム、ゴールタイム等は、所定の表示形式で表示部120に表示されて、ユーザUSに運動支援情報として提供される。
【0090】
このように、本実施形態によれば、上述した第1及び第2の実施形態と同様に、GPS測位計算において測位データに含まれる誤差の影響を抑制して、所定のサンプリング周期で取得される速度データのばらつきを最小限に留めつつ、予測ラップタイムや予測ゴールタイム、ラップタイムやゴールタイムの目標値と予測値の差分を精度良く算出して、走行中のユーザUSに提供することができる。これにより、ユーザUSに走行状態の改善を促すことができ、運動効果や記録の向上を図ることができる。
【0091】
特に、本実施形態においては、GPS処理部210を備えるセンサ機器200と、表示部120を備えるインターフェース機器100Aとが別体の機器として構成されているので、GPS衛星からの電波の受信感度が良好となるユーザUSの任意の部位に、センサ機器200を装着することができ、ユーザUSが運動中に表示部120に表示された情報を容易に視認することができるユーザUSの任意の部位に、インターフェース機器100Aを装着することができる。したがって、GPS処理部210により取得される測位データの精度を高めて、より適切な運動支援情報をユーザUSが視認しやすい形態で提供することができる。
【0092】
なお、本実施形態においては、インターフェース機器100Aやセンサ機器200に適用される電子機器について、特に限定するものではないが、例えばインターフェース機器100Aとしては、上述したリストウォッチ型の電子機器や、眼鏡型の表示装置を備えた電子機器等を良好に適用することができる。また、センサ機器200としては、例えば携帯電話機やスマートフォン等の、少なくともGPS受信機能を備えた汎用の電子機器を良好に適用することができる。
【0093】
また、上述した各実施形態に示した運動支援装置において、データ保存用メモリ150、250に保存された種々のデータは、ランニング等の運動の終了後に、無線や有線等の通信方式を適用して、あるいは、メモリカード等を介して、パーソナルコンピュータや携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の外部電子機器に伝送することができるものであってもよい。これによれば、例えば、上述した運動支援方法により算出された種々のデータを、外部電子機器に備えられた表示装置に表示、閲覧することができるので、自己の運動効果や記録を検証したり、分析して、次回以降の競技やトレーニングの際に有効に活用したりすることができる。
【0094】
また、上述した各実施形態においては、本発明に係る運動支援装置や運動支援方法が適用される運動の一例として、ランニングやマラソンを行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばウォーキングやサイクリング等の他の競技やトレーニングを行う場合であっても適用することができる。
【0095】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0096】
(付記)
[1]
人体の運動中の地理的な位置を示す測位データを、複数のサンプリングタイミングの各々で取得する位置検出部と、
前記サンプリングタイミング毎に、前記測位データに基づいて、少なくとも、前記人体の移動速度と、該移動速度に基づく前記人体の運動状態の改善を促す支援情報と、を算出する演算処理を有する制御部と、
前記制御部により制御され、前記人体の前記運動中に視認可能に構成され、少なくとも前記支援情報を表示する表示部と、
を備え、
前記制御部は、
前記測位データに含まれる位置情報及び時間情報に基づいて速度データを取得し、
前記サンプリングタイミングが、当該サンプリングタイミングでの速度データの値の、該サンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングでの速度データの値との差分の絶対値が所定の閾値より小さい値である第1のサンプリングタイミングであるとき、該第1のサンプリングタイミングでの前記移動速度を、該第1のサンプリングタイミングでの前記速度データと、該第1のサンプリングタイミングの直前の連続する第1所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データと、を平均化して算出し、
前記サンプリングタイミングが、当該サンプリングタイミングでの前記速度データの値の、該サンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングでの前記速度データの値との差分の絶対値が前記閾値以上の値である第2のサンプリングタイミングであるとき、当該第2のサンプリングタイミングでの前記移動速度の算出を行わず、
前記第2のサンプリングタイミング以降の第3のサンプリングタイミングでの前記移動速度を、該第3のサンプリングタイミングでの前記速度データと、該第3のサンプリングタイミングの直前の、前記第2のサンプリングタイミング以降で連続する前記第1所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データと、を平均化して算出することを特徴とする運動支援装置である。
【0097】
[2]
前記制御部は、前記位置検出部が前記測位データの取得を開始した直後の連続する第2所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データ、及び、前記第3のサンプリングタイミング及び該第3のサンプリングタイミングの直後の連続する第3所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データ、を前記移動速度の算出に用いないことを特徴とする[1]に記載の運動支援装置である。
[3]
前記制御部は、前記第2のサンプリングタイミング及び該第2のサンプリングタイミング後に前記第1所定数と前記第3所定数を加算した数の前記サンプリングタイミングが経過する間、前記第2のサンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングで算出した前記支援情報を、前記表示部に表示させることを特徴とする[2]に記載の運動支援装置である。
[4]
前記制御部は、第4のサンプリングタイミングで、前記位置検出部が取得する前記測位データに基づいて前記速度データの欠落が生じたとき、該第4のサンプリングタイミングでの前記速度データの値を、該第4のサンプリングタイミングの前後の前記サンプリングタイミングで取得された前記速度データを用いて補完した値にする[1]乃至[3]のいずれかに記載の運動支援装置である。
[5]
前記制御部は、前記人体の前記移動速度を、任意の単位距離当たりにかかる時間に換算することにより、現時点から先の予測ラップタイムを前記支援情報として算出することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の運動支援装置である。
[6]
前記制御部は、前記予測ラップタイムと任意に設定された目標となるラップタイムとの差分を前記支援情報として算出することを特徴とする[5]に記載の運動支援装置である。
[7]
前記制御部は、前記人体の前記移動速度に基づいて、任意の移動距離を移動するためにかかる時間を算出することにより、予測ゴールタイムを前記支援情報として算出することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の運動支援装置である。
[8]
前記制御部は、前記予測ゴールタイムと任意に設定された目標となるゴールタイムとの差分を前記支援情報として算出することを特徴とする[7]に記載の運動支援装置である。
[9]
前記位置検出部、前記制御部及び前記表示部は、単一の機器に設けられていることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載の運動支援装置である。
[10]
前記位置検出部と前記表示部は、別体の機器に個別に設けられていることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載の運動支援装置である。
【0098】
[11]
所定の時間間隔毎に設定された複数のサンプリングタイミングの各々で、人体の運動中の地理的な位置を示す測位データを取得し、
前記サンプリングタイミング毎に、前記測位データに基づいて、少なくとも、前記人体の移動速度と、該移動速度に基づく、現時点から先の前記人体の運動状態に関連し前記人体の前記運動状態の改善を促す支援情報と、を算出し、
前記人体の前記運動中に、少なくとも前記支援情報を表示し、
前記移動速度の算出は、
前記測位データに含まれる位置情報及び時間情報に基づいて速度データを取得し、
前記サンプリングタイミングが、当該サンプリングタイミングでの速度データの値の、該サンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングでの速度データの値との差分の絶対値が所定の閾値より小さい値である第1のサンプリングタイミングであるとき、前記第1のサンプリングタイミングでの前記移動速度を、前記第1のサンプリングタイミングでの前記速度データと、前記第1のサンプリングタイミングの直前の連続する第1所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データと、を平均化して算出し、
前記サンプリングタイミングが、当該サンプリングタイミングでの前記速度データの値の、該サンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングでの前記速度データの値との差分の絶対値が前記閾値以上の値である第2のサンプリングタイミングであるとき、当該第2のサンプリングタイミングでの前記移動速度の算出を行わず、
前記第2のサンプリングタイミング以降の第3のサンプリングタイミングでの前記移動速度を、該第3のサンプリングタイミングでの前記速度データと、該第3のサンプリングタイミングの直前の、前記第2のサンプリングタイミング以降で連続する前記第1所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データと、を平均化して算出することを特徴とする運動支援方法である。
【0099】
[12]
コンピュータに、
所定の時間間隔毎に設定された複数のサンプリングタイミングの各々で、人体の運動中の地理的な位置を示す測位データを取得させ、
前記サンプリングタイミング毎に、前記測位データに基づいて、少なくとも、前記人体の移動速度と、該移動速度に基づく、現時点から先の前記人体の運動状態に関連し前記人体の前記運動状態の改善を促す支援情報と、を算出させ、
前記人体の前記運動中に、少なくとも前記支援情報を表示させ、
前記移動速度の算出は、
前記測位データに含まれる位置情報及び時間情報に基づいて速度データを取得させ、
前記サンプリングタイミングが、当該サンプリングタイミングでの速度データの値の、該サンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングでの速度データの値との差分の絶対値が所定の閾値より小さい値である第1のサンプリングタイミングであるとき、前記第1のサンプリングタイミングでの前記移動速度を、前記第1のサンプリングタイミングでの前記速度データと、前記第1のサンプリングタイミングの直前の連続する第1所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データと、を平均化して算出させ、
前記サンプリングタイミングが、当該サンプリングタイミングでの前記速度データの値の、該サンプリングタイミングの一つ前の前記サンプリングタイミングでの前記速度データの値との差分の絶対値が前記閾値以上の値である第2のサンプリングタイミングであるとき、当該第2のサンプリングタイミングでの前記移動速度の算出を行わず、
前記第2のサンプリングタイミング以降の第3のサンプリングタイミングでの前記移動速度を、該第3のサンプリングタイミングでの前記速度データと、該第3のサンプリングタイミングの直前の、前記第2のサンプリングタイミング以降で連続する前記第1所定数の前記サンプリングタイミングでの前記速度データと、を平均化して算出させることを特徴とする運動支援プログラムである。