(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記希土類磁石素材排出工程においては、複数の前記ロータを希土類磁石素材排出手段に投入して一度に処理する際に前記ロータ同士を衝突させる、請求項1に記載の希土類磁石素材の回収方法。
前記希土類磁石素材排出工程においては、前記希土類磁石を押さえるために前記ロータの端面に設けられた押さえ部材と当該押さえ部材を前記ロータに固定するための固定部材とが取り付けられている前記ロータに対し、前記ロータと前記押さえ部材との間に隙間が形成される程度の衝撃を与える、請求項1または2に記載の希土類磁石素材の回収方法。
前記希土類磁石素材排出工程の前に、前記ロータに嵌合されたシャフトを前記ロータから分離しておくシャフト分離工程を更に有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の希土類磁石素材の回収方法。
前記希土類磁石素材排出工程は、前記希土類磁石素材が組み込まれた前記ロータを撹拌手段に投入し、前記ロータに対して撹拌による衝撃を与えるものである、請求項1ないし4のいずれかに記載の希土類磁石素材の回収方法。
前記希土類磁石素材排出手段は、複数の前記ロータを一度に処理する際に前記ロータ同士を衝突させることが自在な構成を有する、請求項8に記載の希土類磁石素材の回収システム。
前記希土類磁石素材排出手段は、前記希土類磁石を押さえるために前記ロータの端面に設けられた押さえ部材と当該押さえ部材を前記ロータに固定するための固定部材とが取り付けられている前記ロータに対し、前記ロータと前記押さえ部材との間に隙間が形成される程度の衝撃を与えることが自在な構成を有する、請求項8または9に記載の希土類磁石素材の回収システム。
前記希土類磁石素材排出手段は撹拌手段であり、前記希土類磁石素材が組み込まれた前記ロータが前記撹拌手段に投入され、前記撹拌手段によって前記ロータに対して撹拌による衝撃が与えられる、請求項8ないし11のいずれかに記載の希土類磁石素材の回収システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の方法は、確かに、ロータから希土類磁石素材を回収することができる。しかしながら、この方法では、多くの作業量が必要となる。
【0010】
その原因の一つが、ロータの端部に設けられた押さえ板およびピンを取り外す工程にある。まず、ロータのピンを抜くためにピンの上部(かしめ)を切削する必要がある。一般に、回収処理の対象となるロータはメーカーにより形状が異なるし、ロータの径が異なるものがある。そのため、切削するピンの位置が一定とならない。そうなると、各ロータに対して、1個毎、ピンの位置を確認した上で、ドリルでピンの上部を手作業で切削しなければならない。更に、ピンおよび押さえ板をロータから外した後、ロータを1個毎に手作業で分離回収装置にセットする必要がある。
また、後述する比較例にて判明したことであるが、ロータの押さえ板はステンレス製のものが多いため、特許文献1に記載のようにピンの上部の切削をある程度繰り返すとドリルが磨耗し、切削効率が極端に低下して切削できなくなる。従って、ドリルの研磨および交換を頻繁にしなければならない。
その結果、特許文献1に記載の方法は、作業効率という点では難がある。
【0011】
それ以外にも、多くの作業量が必要となる原因として、ロータから希土類磁石素材を排出させるために、自重による排出、振動による排出、衝撃による排出というように、数多くの工程を設けているということも挙げられる。
【0012】
なお、特許文献2に記載の方法は、確かに、製品を破砕し、その後、篩分けを行うという簡素な手法である。ただ、製品ごと希土類磁石を破砕している。その結果、単に破砕した後の篩分けでは、磁石品位を30〜40%程度にしか達成することができない。高い磁石品位を達成するためには、更なる微粉化および篩分けが必要となり、作業量の増大につながる。
【0013】
確かに、特許文献1および2に記載の方法ならば、希土類磁石ないし希土類磁石素材の回収および再資源化を行うことができる。しかしながら、現在、希土類元素の回収は国家規模で行われており、高品位の希土類元素を高い回収率で回収することはもちろんのこと、回収に係る作業量を減らし、回収に要するコストをわずかでも低減することは、世界中の当業者にとって喫緊の課題である。そのためにも、高品位な希土類磁石素材の回収を高い回収率で実現することが強く求められている。
【0014】
本発明は、希土類磁石が組み込まれたロータを有するモータ部材から希土類磁石素材を分離する際に、高品位な希土類磁石素材の回収を高い回収率で実現することができ、しかも希土類磁石素材の回収に係る作業を大幅に簡略可能とする希土類磁石素材の回収方法および希土類磁石素材の回収システムを提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を行った。本発明者は、まず、高品位な希土類磁石素材の回収を高い回収率で実現するためには、特許文献2のように製品ごと希土類磁石を破砕するのではなく、特許文献1に記載のように、ロータから希土類磁石素材を排出させるという手法が適切なのでは、と推測した。ただその場合、上述のように、押さえ板およびピンの問題、ならびに、希土類磁石素材の排出に係る作業量が増大するという問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明者は、ロータから希土類磁石素材を効率よく排出する方法について、鋭意検討を行った。その結果、ロータに対して衝撃を与え、希土類磁石素材をロータから排出する際に、衝撃の度合としては、ロータが粉々に破砕してしまうほどの強い衝撃ではなく、かつ、ロータは変形せず希土類磁石素材がロータから排出されるのを手伝う程度の衝撃でもなく、ロータを変形させるようにロータに衝撃を与える(より詳細に言うと歪むに留まる程度の衝撃を与える)という手法を想到した。そのような衝撃をロータに与える結果、ロータは変形するのに留まるのに対し、ロータに組み込まれた希土類磁石素材は破砕されるという知見を本発明者は得た。そして、衝撃を与えられている間に、破砕されて微細な粒子となった希土類磁石素材がロータから排出されることにより、希土類磁石素材とロータとを分離するという知見を得た。
【0017】
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
希土類磁石が組み込まれたロータを有するモータ部材から、前記希土類磁石が脱磁されてなる希土類磁石素材を回収する希土類磁石素材の回収方法において、
前記モータ部材から分離された前記ロータに対し、前記ロータを変形させて、前記ロータに組み込まれた前記希土類磁石素材を破砕することにより、前記ロータの端部から前記希土類磁石素材を排出させる希土類磁石素材排出工程を有する、希土類磁石素材の回収方法である。
【0018】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出工程においては、複数の前記ロータを希土類磁石素材排出手段に投入して一度に処理する際に前記ロータ同士を衝突させる。
【0019】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出工程においては、前記希土類磁石を押さえるために前記ロータの端面に設けられた押さえ部材と当該押さえ部材を前記ロータに固定するための固定部材とが取り付けられている前記ロータに対し、前記ロータと前記押さえ部材との間に隙間が形成される程度の衝撃を与える。
【0020】
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出工程の前に、前記ロータに嵌合されたシャフトを前記ロータから分離しておくシャフト分離工程を更に有する。
【0021】
本発明の第5の態様は、第1ないし第4のいずれかの態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出工程は、前記希土類磁石素材が組み込まれた前記ロータを撹拌手段に投入し、前記ロータに対して撹拌による衝撃を与えるものである。
【0022】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、
前記撹拌手段を傾けた状態で前記希土類磁石素材排出工程が行われる。
【0023】
本発明の第7の態様は、第1ないし第6のいずれかの態様に記載の発明において、
前記モータ部材から前記ロータを分離するロータ分離工程と、
分離した前記ロータを加熱して、前記希土類磁石を脱磁して前記希土類磁石素材とする脱磁工程と、
前記希土類磁石素材排出工程を経たものに対して篩分を行い、前記希土類磁石素材を回収する篩分工程を更に有する。
【0024】
本発明の第8の態様は、
希土類磁石が組み込まれたロータを有するモータ部材から、前記希土類磁石が脱磁されてなる希土類磁石素材を回収する希土類磁石素材の回収システムにおいて、
前記モータ部材から分離された前記ロータに対し、前記ロータを変形させて、前記ロータに組み込まれた前記希土類磁石素材を破砕することにより、前記ロータの端部から前記希土類磁石素材を排出させる希土類磁石素材排出手段を有する、希土類磁石素材の回収システムである。
【0025】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出手段は、複数の前記ロータを一度に処理する際に前記ロータ同士を衝突させることが自在な構成を有する。
【0026】
本発明の第10の態様は、第8または第9の態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出手段は、前記希土類磁石を押さえるために前記ロータの端面に設けられた押さえ部材と当該押さえ部材を前記ロータに固定するための固定部材とが取り付けられている前記ロータに対し、前記ロータと前記押さえ部材との間に隙間が形成される程度の衝撃を与えることが自在な構成を有する。
【0027】
本発明の第11の態様は、第8ないし第10のいずれかの態様に記載の発明において、
前記ロータに嵌合されたシャフトを前記ロータから分離するシャフト分離手段を更に有する。
【0028】
本発明の第12の態様は、第8ないし第11のいずれかの態様に記載の発明において、
前記希土類磁石素材排出手段は撹拌手段であり、前記希土類磁石素材が組み込まれた前記ロータが前記撹拌手段に投入され、前記撹拌手段によって前記ロータに対して撹拌による衝撃が与えられる。
【0029】
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載の発明において、
前記撹拌手段は傾いた状態で配置されている。
【0030】
本発明の第14の態様は、第8ないし第13のいずれかの態様に記載の発明において、
前記モータ部材から前記ロータを分離するロータ分離手段と、
分離した前記ロータを加熱して、前記希土類磁石を脱磁して前記希土類磁石素材とする脱磁手段と、
前記希土類磁石素材排出手段による処理を経たものに対して篩分を行い、前記希土類磁石素材を回収する篩分手段と、を更に有する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、希土類磁石が組み込まれたロータを有するモータ部材から希土類磁石素材を分離する際に、高品位な希土類磁石素材の回収を高い回収率で実現することができ、しかも希土類磁石素材の回収に係る作業を大幅に簡略可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、次の順序で説明を行う。
1.希土類磁石素材の回収システム
1−A)モータ部材の基本的構成
1−B)回収システムの構成
2.希土類磁石素材の回収方法
2−A)シェルカット工程
2−B)脱コイル工程
2−C)ロータ分離工程(シャフト分離工程)
2−D)脱磁工程
2−E)希土類磁石素材排出工程
2−E−a)撹拌機へのロータを投入する投入工程
2−E−b)撹拌工程
2−E−c)排出処理後部材を撹拌機から排出する工程
2−F)篩分工程
3.実施の形態による効果
4.変形例等
なお、以下に記載が無い構成については、公知の構成(例えば特許文献1に記載の構成)を一部採用しても構わない。また、本実施形態において「希土類磁石素材」とは、希土類磁石が脱磁されてなるものとする。
【0034】
<1.希土類磁石素材の回収システム>
1−A)モータ部材の基本的構成
まず、本実施形態での処理対象となるモータ部材の基本的構成について、
図1を用いて説明する。
図1(a)は、本実施形態における希土類磁石素材の回収対象となるモータ部材1の概要を示す斜視図である。
図1(b)は、本実施形態における希土類磁石素材の回収対象となるロータ2の概要を示す分解斜視図である。
【0035】
本実施形態における「モータ」は、コンプレッサ筐体4の中に収められており、少なくとも、希土類磁石3が組み込まれたロータ2を備えている。本実施形態におけるモータは、円筒形状のロータ2、ロータ2の外周に設けられた電磁コイル(図示せず)、ロータ2の回転中心の貫通孔2aに挿入された長尺のシャフト5、シャフト5の先端に形成される回転体6を備えている。回転体6はロータ2とは離間して設けられている。回転体6は円盤形状を有しており、回転中心にシャフト5が位置している。一方、コンプレッサ筐体4の外装は、上部シェル4aと下部シェル4bにより構成されており、下部シェル4bは、回転体6の外周と一体に形成されている。
【0036】
なお、本明細書における「モータ部材1」は、電磁コイルが分離される前の状態のもの(いわゆるモータ)を含むし、モータから電磁コイルが分離されたものも含む。本実施形態においては、説明の便宜上、電磁コイルが分離される前の状態のものを「モータ」と称し、モータから電磁コイルが分離されたものを「モータ部材1」と称する。
以上を踏まえ、
図1(a)の状態は、上部シェル4aを取り外しており、電磁コイルを既に分離しているため、上部シェル4aは破線で示し、電磁コイルは不図示としている。
【0037】
本実施形態における「ロータ2」は、円盤形状の電磁鋼板が複数枚積層された積層電磁鋼板を構成部材として備えており、積層電磁鋼板に形成された貫通孔2bに希土類磁石3が挿入されている。
【0038】
なお、円筒形のロータ2の上面部分および下面部分には、希土類磁石3が抜けないように押さえ板7が設けられている。押さえ板7は、ロータ2と略同一径を有する円盤形状を有しており、中心にはシャフト5を挿入するための貫通孔7aが設けられている。そして、押さえ板7をピン8によりロータ2へと固定すべく、ロータ2及び押さえ板7におけるシャフト5用の貫通孔2a,7aから等距離の位置にピン8を挿入するための4つの貫通孔2c,7bが、ロータ2及び押さえ板7に設けられている。4つの貫通孔2c,7bの各々は等間隔で同一円周上に設けられている。それに加え、ロータ2においては、各々の貫通孔2cの間に、希土類磁石3を挿入するための貫通孔2bが設けられている。
【0039】
なお、本実施形態における「希土類磁石3」とは、希土類元素を含む合金の形態である。「希土類元素」のうち主に製品として実用化されているものは、ネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)等々の元素である。
【0040】
なお、本実施形態で処理対象となるモータは、希土類磁石3が組み込まれたロータ2を有するモータであればよい。また、本実施形態で処理対象となるロータ2は、希土類磁石3が組み込まれたものであり、ロータ2の端部において希土類磁石3が露出している構造であればよい。
仮に、希土類磁石3がロータ2の構成部材により覆われているとしても、希土類磁石素材3aの回収工程の途中に覆いが剥がれ、破砕された希土類磁石素材3aがロータ2の端部から排出自在な構成を有していればよい。
【0041】
なお、ここで言う「ロータ2の端部」とは、内部に組み込まれた希土類磁石素材3aが排出され得る部分であってロータ2の外側部分のいずれかのことを指す。例えば、円筒形のロータ2の上面部分および下面部分であってもいい。本明細書においては、当該上面部分および下面部分の少なくともいずれかのことを「ロータ2の端面」と言う。
また、後述する希土類磁石素材排出手段によりロータ2が変形して歪む際に、ロータ2の外側を構成する積層電磁鋼板が変形して歪むことにより、各々の電磁鋼板の間に隙間が生じて当該隙間から希土類磁石素材3aが排出される場合、各々の電磁鋼板の間もロータ2の端部の一部とみなしても構わない。
【0042】
ちなみに、モータを例示すると、ハイブリッド車や電気自動車のモータや、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサや洗濯機に含まれるモータが挙げられる。ロータ2としては、当該モータを構成しているロータ2が挙げられる。
【0043】
1−B)回収システムの構成
次に、本実施形態における希土類磁石素材3aの回収システムの構成について、
図2を用いて説明する。
【0044】
図2は、本実施形態における希土類磁石素材3aの回収システムの概要を示す図である。
図2に示すように、本実施形態における希土類磁石素材3aの回収システムは、以下の構成を有している。
・モータを覆っているコンプレッサ筐体4(以降「シェル4」とも言う。)の上部である上部シェル4aを切断して取り外すシェルカット手段11
・モータを構成する電磁コイル(ステータ)をモータから分離する脱コイル手段12
・電磁コイルが分離されたモータ部材1から、ロータ2を分離するためのロータ分離手段13
・分離したロータ2を加熱して、希土類磁石3を脱磁して希土類磁石素材3aとする脱磁手段14
・ロータ2に対し、ロータ2を変形させ(ロータ2が歪むに留まる程度の衝撃を与え)、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕する希土類磁石素材排出手段15
・希土類磁石素材排出手段15により排出された希土類磁石素材3aとそれ以外の部材とを篩分ける篩分手段16
【0045】
なお、
図2における白抜き矢印は、処理対象物であるロータ2(またはモータ部材1)の流れを指す。特記の無い限り、各手段には、各手段による処理を受けた後の部材を回収するための手段(例えば回収コンベアや回収容器)を設けておくものとする。また、各手段の間(例えば希土類磁石素材排出手段15と篩分手段16との間)には、処理対象となる部材を運搬するための運搬手段(例えばベルトコンベア17)が設けられていても構わない。
【0046】
シェルカット手段11は、モータを覆っているシェル4を切断することが可能なものならば、例えばプラズマトーチのような公知の構成を用いても構わない。シェルカット手段11により、上部シェル4aを切断して取り外すことにより、シェル4内の部材であるモータ等を取り外しやすくする。
【0047】
脱コイル手段12は、ロータ2を回転させるための電磁コイルであってモータに内包される電磁コイルをモータから分離することが可能なものならば、公知の構成を用いても構わない。例えば、上部シェル4aが切断され取り外された後のモータを反転させることにより電磁コイルがモータから脱離するような構成を用いても構わない。
【0048】
ロータ分離手段13は、モータ部材1からロータ2を分離することが可能なものならば、公知の構成を用いても構わない。例えば、ロータ2を固定した上で、下部シェル4bと一体に形成されたシャフト5および回転体6を、ロータ2から離間する方向へと油圧シリンダによって圧力を加え、ロータ2を、下部シェル4b、シャフト5および回転体6から分離するという構成を採用しても構わない。
【0049】
なお、シャフト5がロータ2に嵌合されたままロータ2をモータ部材1から分離しても構わないが、本実施形態においては、ロータ2に嵌合されているシャフト5をロータ2から分離することが非常に好ましい(理由は後述)。そのため、モータ部材1からロータ2を分離するロータ分離手段13が、ロータ2に嵌合されたシャフト5をロータ2から分離するシャフト分離手段を兼ねても構わない。また、ロータ分離手段13は、ひとまずシェル4からシャフト5付きロータ2を分離する手段とシャフト5付きロータ2からシャフト5を分離する手段とを各々有する構成であっても構わない。
【0050】
本明細書においては「ロータ分離手段13」はシャフト5付きの状態であろうがシャフト5無しの状態であろうがモータ部材1からロータ2を分離する手段のことを指す。そして「ロータ分離手段13」は「シャフト分離手段」そのものを指す場合もあるし、「シャフト分離手段」を含む場合もある。なお、<2.希土類磁石素材の回収方法>で説明する「ロータ分離工程」と「シャフト分離工程」との関係についても同様である。
【0051】
脱磁手段14は、分離したロータ2を加熱して、希土類磁石3を脱磁して希土類磁石素材3aとすることが可能なものならば、公知の構成を用いても構わない。例えば、電気炉のような加熱炉と空気の噴射による冷却が可能な冷却室を備えた構成を採用しても構わない。
【0052】
希土類磁石素材排出手段15は、本実施形態における特徴部分の一つである。希土類磁石素材排出手段15について、
図3を用いて説明する。
【0053】
図3は、本実施形態における希土類磁石素材排出手段15の概要を示す斜視図である。
図3における白抜き矢印は、各部の動き(回転または開閉)を示す。本実施形態においては、希土類磁石素材排出手段15が撹拌機の場合について述べる。撹拌機15は比較的シンプルな構成を有する装置であり、扱いやすいという利点がある。また、ロータ2に対して連続的に衝撃を与えることが可能となるため好ましい。この場合、希土類磁石素材3aが組み込まれたロータ2を撹拌機15に投入し、ロータ2に対して撹拌による衝撃を与えることになる。そして、その衝撃は、「ロータ2を変形させるような衝撃」且つ「ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕するような衝撃」である。
【0054】
ロータ2を変形させることにより、ロータ2が破砕されるのを抑制でき、ロータ2の残骸が微細な粒子となるのを抑制することができる。そして、希土類磁石素材3aが破砕する程度の衝撃を与えることにより、希土類磁石素材3aは微細な粒子へと変化する。つまり、上記の衝撃を与えることにより、ロータ2の残骸と希土類磁石素材3aとが微細な粒子として混ざり合うことを抑制できる。その結果、篩分けにより、希土類磁石素材3aをほぼ確実に分別することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態における希土類磁石素材排出手段15は、単数のロータ2を処理しても構わないが、複数のロータ2を一度に処理する際にロータ2同士を衝突させることが自在な構成を有するのが非常に好ましい。希土類磁石素材排出手段15が撹拌機の場合だと、これを容易に実現できる。つまり、撹拌機15の収容部200に複数のロータ2を投入し、複数のロータ2に対して一度に撹拌処理を行う。こうすることにより、撹拌機15の収容部200の内壁と各ロータ2が衝突することに加え、各ロータ2同士でも衝突が起こる。つまり、ロータ2同士を衝突させることが可能となるため、ロータ2が衝撃を受ける機会を飛躍的に増加させることができる。しかも、その衝撃は、ロータ2が破砕しない程度の衝撃となる。その結果、ロータ2が変形して歪むに留まる程度の比較的マイルドな衝撃(ロータ2が破砕されない程度の衝撃)を与えながらも、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕する程度の強い衝撃を与えることが可能となる。
【0056】
なお、マイルドな衝撃によりロータ2の一部が千切れることはあり得る。しかしながら、本実施形態における「マイルドな衝撃」とは、ロータ2が砕かれることにより外形を留めないくらいの強い衝撃とは全く異なる。本実施形態においては、仮に、ロータ2の一部が千切れたとしても、ロータ2が変形して歪んでいると判別できる程度にロータ2の外形を留めることができる程度の衝撃をロータ2に与えている。
【0057】
本実施形態における撹拌機15は、ロータ2を収納するための円筒形の収容部200と、収納されたロータ2を撹拌機15の中で撹拌するための撹拌羽根により構成される撹拌部300を有している。
【0058】
収容部200の上端(天地方向の天の方向)には投入口210および上蓋211が設けられている。ロータ2を投入口210から撹拌機15の中に投入する際には上蓋211が上蓋用アーム212により開かれる。そして、撹拌が行われる際には、上蓋211が閉じられる。その一方、収容部200の底部220の近傍の側部230には排出口240および排出口蓋241が設けられている。ロータ2に対する撹拌が行われる際には、排出口蓋241が閉じられる。そして、撹拌処理を受けてロータ2から排出された希土類磁石素材3aおよびそれ以外の部材(希土類磁石素材3aが排出された後のロータ2の残骸)(以降、まとめて「排出処理後部材」とも言う。)を収容部200から取り出す際には、排出口蓋241が排出口蓋用アーム242により開かれる。
【0059】
なお、本実施形態における撹拌機15は、排出口240が地の方向を向くように、天地方向に対して傾いた状態で配置されている。こうすることにより、排出口蓋241を開くと、排出処理後部材が自重により撹拌機15から排出される構成となっている。また、撹拌機15が傾いた状態で配置されると、撹拌の際にロータ2同士が比較的衝突しやすくなると同時にロータ2が収容部200の側部230や底部220と衝突する機会が増加する。その結果、ロータ2が変形して歪むに留まる程度でありながらも組み込まれている希土類磁石素材3aを破砕する程度の強い衝撃をロータ2に対して効率よく与えることが可能となる。
なお、撹拌機15を傾ける方向は、ベルトコンベア17の上をロータ2が流れる方向に対して逆方向に傾けても構わないが、順方向に傾ける場合、ベルトコンベア17の下部のスペースに撹拌機15を配置することが可能となり、本実施形態における回収システム全体の省スペース化を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態における撹拌羽根は、円筒形の収容部200の底部220の中心位置に設置されているが、結局のところ、収容部200に投入されたロータ2を収容部200内で撹拌することができる構成を有していればよい。
【0061】
また、希土類磁石素材排出手段15は、希土類磁石3を押さえるためにロータ2の端面に設けられた押さえ板7と当該押さえ板7をロータ2に取り付けるためのピン8とが取り付けられているロータ2に対し、ロータ2と押さえ板7との間に隙間が形成される程度の衝撃を与えることが自在な構成を有するのが極めて好ましい。希土類磁石素材排出手段15が撹拌機の場合、仮にロータ2に押さえ板7とピン8とが取り付けられている場合であっても、ロータ2を撹拌機15に投入して撹拌処理すると、ロータ2、押さえ板7およびピン8の少なくともいずれかが変形して歪むことにより、ロータ2と押さえ板7との間に隙間を形成することができる。そして、当該隙間から希土類磁石素材3aを排出させることが可能となる。
つまり、特許文献1に記載の技術における押さえ板7およびピン8の取り外し工程が不要となるし、それと同時に希土類磁石素材3aを排出させることも可能となるという一石二鳥の効果を奏する。
【0062】
なお、ロータ2に取り付けられるものは押さえ板7のような板状部材以外であっても、例えば塊状の別部材により希土類磁石3を押さえている場合であっても、本実施形態の技術を適用可能である。同様に、ロータ2に取り付けられるものはピン8以外であっても、例えばネジやその他の固定部材であっても、本実施形態の技術は適用可能である。
【0063】
篩分手段16は、希土類磁石素材排出手段15により排出された希土類磁石素材3aとそれ以外の部材とを篩分けることが可能なものならば、公知の構成を用いても構わない。但し、本実施形態における篩分手段16は、篩の空隙部分の最大幅が6mm以下のものを用いるのが好ましい。
【0064】
先程も述べたが、ロータ2に対して希土類磁石素材排出手段15による処理を行った後、ロータ2が変形して歪む程度の衝撃しか与えないけれども、ロータ2の外側部分の一部が千切れる可能性もある。しかしながら、本発明者が調べたところ、モータに用いられるロータ2は積層電磁鋼板により構成されており、積層電磁鋼板が千切れたとしても、殆どの場合、最小幅が6mmを超えた大きさのかけら(粗粒子)となる。そのため、篩の空隙部分の最大幅が6mm以下の篩分手段16を用いることにより、変形して歪むに留まるロータ2の残骸に起因して生じる粗粒子と、衝撃により微細な粒子となってロータ2の端部から排出される希土類磁石素材3aである微粒子とを、確実に篩分けることが可能となる。
【0065】
なお、篩の空隙部分の最大幅が6mm以下の篩分手段16の具体例としては、目開き4mmの網を用いるのが好ましい。対角線の長さが5.7mmであり、千切れた積層電磁鋼板を確実に篩に留めることが可能だからである。また、φ6mm以下のパンチ網を用いても構わない。
【0066】
ただ、近年のモータの小型化に伴い、積層電磁鋼板が千切れる際の最小幅も変化することも予想される。そのため、篩の空隙部分の最大幅については、モータの種類およびサイズならびに積層電磁鋼板の種類等々を考慮に入れて適宜設定すればよい。いずれにせよ、微細な粒子となった希土類磁石素材3aとそれ以外の部材とを篩分けることを可能とするような篩を用いればよい。
【0067】
なお、上記の構成以外にも、希土類磁石素材3aの品位を向上させるための磁選や更なる篩分けなど適宜必要となる手段を設けても構わない。
【0068】
<2.希土類磁石素材の回収方法>
次に、本実施形態における希土類磁石素材3aの回収方法について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態における希土類磁石素材3aの回収方法を示すフローチャートである。なお、以下の工程の内容は、1−B)回収システムの構成にて説明した内容と重複する部分もある。そのため、以下に記載が無い内容については、1−B)回収システムの構成にて説明した通りである。
【0069】
2−A)シェルカット工程
シェルカット工程においては、モータを覆っているシェル4を切断し、上部シェル4aを取り外す。
【0070】
2−B)脱コイル工程
脱コイル工程においては、上部シェル4aが取り外された後でモータ部材1を反転させることにより電磁コイルをモータ部材1から脱離させる。
【0071】
2−C)ロータ分離工程(シャフト分離工程)
ロータ分離工程においては、ロータ2を固定した上で、下部シェル4bと一体に形成されたシャフト5および回転体6を、ロータ2から離間する方向へと油圧シリンダによって圧力を加え、ロータ2を、下部シェル4b、シャフト5および回転体6から分離する。このように本実施形態においてはモータ部材1からロータ2を分離する際にシャフト5をもロータ2から分離しているため、ロータ分離工程はシャフト分離工程のことを指す。
【0072】
なお、シャフト5を分離した状態のロータ2に対し、後述の2−E)希土類磁石素材排出工程を行うのが、非常に好ましい。本実施形態を例にとると、シャフト5を分離した方が、ロータ2を撹拌機15で撹拌するにしても、ロータ2そのもの、ひいてはロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aに対して極めて効率よく衝撃を与えることが可能になる。その結果、希土類磁石素材3aが微細化しやすくなり、ロータ2の端部から効率よく排出させることが可能となる。
【0073】
また、シャフト5が無い方が、2−D)脱磁工程において加熱炉および冷却室により多くのロータ2を一度に処理することが可能となるし、2−E)希土類磁石素材排出工程において撹拌機15の収容部200に多くのロータ2を投入することができる。そのため、シャフト分離工程を設けることは、作業効率を向上させるという点でも好ましい。
【0074】
2−D)脱磁工程
本実施形態においては、シャフト分離工程を経た複数のロータ2に対し、脱磁工程を行う。脱磁工程においては、分離したロータ2を加熱および冷却して、希土類磁石3を脱磁して希土類磁石素材3aとする。なお、加熱および冷却条件は、希土類磁石3が脱磁可能であるのなら、任意に設定しても構わない。
【0075】
2−E)希土類磁石素材排出工程
希土類磁石素材排出工程においては、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕後、ロータ2から排出させる。希土類磁石素材排出工程においては、少なくとも以下の3工程を行う。
【0076】
2−E−a)撹拌機へのロータを投入する投入工程
本工程においては、撹拌機15の底部220近傍の側部230に設けられた排出口240が下方に位置するように撹拌機15を傾けた上で、撹拌機15の上蓋211を開き、撹拌機15の収容部200に複数のロータ2を投入する。その後、上蓋211を閉じ、撹拌機15のスイッチをONにする。
【0077】
2−E−b)撹拌工程
本工程においては、撹拌機15において複数のロータ2を撹拌する。こうして、モータ部材1から分離されたロータ2に対し、ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃を連続的に与える。それと共に、複数のロータ2を撹拌機15に投入して一度に処理する際にロータ2同士を衝突させる。繰り返しになるが、こうすることにより、撹拌機15の収容部200の内壁と各ロータ2が衝突することに加え、各ロータ2同士でも衝突が起こる。各ロータ2に対して衝撃が与えられる機会を飛躍的に増加させることにより、ロータ2が変形して歪むに留まる程度のマイルドな衝撃を与えながらも、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕する程度の強い衝撃を与えることが可能となる。
【0078】
この衝撃は、ロータ2を破砕する程度の衝撃に比べると弱い。その一方、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕する程度の強い衝撃はロータ2に対して与える。この条件を満たす撹拌条件は、ロータ2の種類や撹拌機15の構成部材の強度や収容部200の容量などによって適宜決定すればよい。
【0079】
上記の工程を経ることにより、ロータ2が変形して歪むと同時に、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aが脆性的に破壊を起こして微細化する。そして、ロータ2の端部から希土類磁石素材3aを排出することが可能となる。希土類磁石素材排出工程を経ることにより、希土類磁石素材3aを破砕し、微細な粒子となった希土類磁石素材3aと、比較的大きなサイズを有するロータ2の残骸とを、容易に分別可能な状態へと変化させることが可能となる。つまり、希土類磁石素材排出工程は、「希土類磁石素材3aの破砕」および「希土類磁石素材3aを分別可能な状態へと変化させる」という役割を同時に果たす。
【0080】
上記の効果は、希土類磁石3が露出しているロータ2の端部が押さえ板7により覆われ、押さえ板7がピン8により固定されている場合には極めて有効となる。特に、少なくとも3本のピン8により固定されている場合には極めて有効となる。もちろん本発明はピン8の数によって限定されるものではない。
【0081】
特許文献1に記載の手法では、ロータ2から押さえ板7およびピン8を手作業で取り除かなければならない。しかしながら本実施形態の希土類磁石素材排出工程においては、ロータ2に対してロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃が与え、且つ、押さえ板7とピン8とが取り付けられているロータ2に対し、ロータ2と押さえ板7との間に隙間が形成される程度の衝撃を与えている。
【0082】
これにより、ロータ2、押さえ板7およびピン8の少なくともいずれかが変形して歪み、ロータ2の端部と押さえ板7との間に隙間ができる。そうなると、上記の衝撃により微細化された希土類磁石素材3aが、ロータ2の端部から当該隙間を通過して外部へと排出されることになる。つまり、本実施形態の技術を適用することにより、ロータ2に押さえ板7およびピン8が設けられていたとしても、押さえ板7およびピン8の取り外しのための工程が不要となる。
【0083】
この場合、希土類磁石素材排出工程は、「希土類磁石素材3aの破砕」および「希土類磁石素材3aを分別可能な状態へと変化させる」という役割に加え「ロータ2に取り付けられた他部材の取り外し工程の省略化」という役割も同時に果たすことが可能となる。
【0084】
ただ、本発明は、押さえ板7およびピン8を手作業で取り外す場合であっても、「希土類磁石素材3aの破砕」および「希土類磁石素材3aを分別可能な状態へと変化させる」という効果を奏する。そのため、本発明は、押さえ板7およびピン8を手作業で取り外す場合を排除するものではない。しかしながら、押さえ板7およびピン8が取り付けられたロータ2に対して希土類磁石素材排出工程を行う方が非常に好ましいことは上述の通りである。
【0085】
2−E−c)排出処理後部材を撹拌機から排出する工程
本工程においては、撹拌機15のスイッチをOFFにし、撹拌機15の排出口蓋241を開く。こうすると、自重により排出処理後部材が排出口240から撹拌機15の外部へと排出される。
【0086】
2−F)篩分工程
その後、排出処理後部材に対し、篩分工程が行われる。そして、微細な粒子となった希土類磁石素材3a(微粒子)と、希土類磁石素材3aが取り出されたロータ2の残骸(粗粒子)とに分別される。その後、希土類磁石素材3aの品位を向上させるための磁選工程、ロータ2の残骸からステンレス、真鍮および鉄へと選別する金属回収工程や更なる篩分工程など適宜必要となる工程を行っても構わない。
こうして、モータ部材1から希土類磁石素材3aを回収する。
【0087】
ところで、2−E)希土類磁石素材排出工程〜2−F)篩分工程を自動化しても構わない。具体的に言うと、2−D)脱磁工程を経た後のロータ2をホッパなどの貯蔵部に溜めておき、一定量ごとにベルトコンベア17に載せ、希土類磁石素材排出手段15へとロータ2を投入可能な構成を採用しても構わない。そして、所定の時間、希土類磁石素材排出工程を行い、希土類磁石素材排出手段15から排出処理後部材が自動的にベルトコンベア17に排出され、排出処理後部材がベルトコンベア17により篩分手段16に搬送可能な構成を採用しても構わない。これらの構成を採用することにより、希土類磁石素材3aの回収システムの大幅な自動化およびロータ2の大量処理が可能となり、作業効率が著しく向上する。
【0088】
<3.実施の形態による効果>
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0089】
本実施形態においては、ロータ2に対して衝撃を与え、希土類磁石素材3aをロータ2から排出する際に、衝撃の度合としては、ロータ2が粉々に破砕してしまうほどの強い衝撃ではなく、かつ、ロータ2は変形せず希土類磁石素材3aがロータ2から排出されるのを手伝う程度の衝撃でもなく、ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃を与える。そのような衝撃をロータ2に与える結果、ロータ2は変形して歪むに留まるのに対し、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aは破砕される。そして、衝撃を与えられている間に、破砕されて微細な粒子となった希土類磁石素材3aがロータ2から排出されることにより、希土類磁石素材3aとロータ2とを分離することが可能となる。
【0090】
そのため、希土類磁石素材3aを破砕するのみならず、微細な粒子となった希土類磁石素材3aと、比較的大きなサイズを有するロータ2の残骸とを、容易に分別可能な状態へと変化させることが可能となる。つまり、希土類磁石素材排出工程または希土類磁石素材排出手段15により、「希土類磁石素材3aの破砕」および「希土類磁石素材3aを分別可能な状態へと変化させる」という一石二鳥の効果を奏する。
【0091】
また、ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃を与えることにより、ロータ2が破砕されるのを抑制でき、ロータ2の残骸が微細な粒子となるのを抑制することができる。そのため、ロータ2の残骸と希土類磁石素材3aとが微細な粒子として混ざり合うことを抑制できる。その結果、篩分けにより、希土類磁石素材3aをほぼ確実に分別することが可能となる。
【0092】
更に、高品位の希土類元素を高い回収率で回収することはもちろんのこと、回収に係る作業量を減らし、回収に要するコストを大きく低減することが可能となる。これは、国家規模で行われている希土類元素の回収および再資源化において、極めて大きな効果をもたらす。
【0093】
以上の通り、本実施形態によれば、希土類磁石3が組み込まれたロータ2を有するモータ部材1から希土類磁石素材3aを分離する際に、高品位な希土類磁石素材3aの回収を高い回収率で実現することができ、しかも希土類磁石素材3aの回収に係る作業を大幅に簡略可能となる。
【0094】
<4.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0095】
(撹拌機以外の希土類磁石素材排出手段)
上記の実施形態では、希土類磁石素材排出手段15として撹拌機を挙げた。その一方、撹拌機以外であっても、「ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃」であって「ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aが破砕される程度の衝撃」をロータ2に対して与えることができる手段を用いればよい。例えば、振蕩機や回転式ドラムなどが挙げられる。なお、これらの装置も内容物を撹拌可能と言う点では同じ機能を有していることから、本明細書においては、これらをまとめて「撹拌手段」と称する。
【0096】
撹拌手段以外の手段としては、ハンマーのような直接的打撃による衝撃を外部から与えるような構成も挙げられる。もちろん、このような構成を採用したとしても、ロータ2に与える衝撃を、ロータ2が破砕しない程度に留めつつもロータ2が変形して歪む程度の衝撃とする必要がある。且つ、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕する程度の衝撃を与える必要があり、衝撃の強さを加減する必要がある。また、場合によっては単数のロータ2毎にしか衝撃を与えられない可能性もある。
【0097】
単数のロータ2に対して直接的打撃による衝撃を与える手法に本発明の技術的思想を適用させることはもちろん可能ではあるが、複数のロータ2を希土類磁石素材排出手段15に投入して一度に処理する方が、ロータ2同士を衝突させることが可能となるため、ロータ2が衝撃を受ける機会を飛躍的に増加させることができる。しかも、その衝撃は、ロータ2が破砕しない程度の衝撃となる。更に、ロータ2に対して直接的打撃ではなく、撹拌手段のようにロータ2同士で衝撃を連続的に与え合わせる方が、「ロータ2が破砕せずに変形して歪む程度」且つ「組み込まれた希土類磁石素材3aは破砕される程度」の衝撃をロータ2に対して与えることが確実となる。
【0098】
また、撹拌手段以外の手段としては、ロータ2を落下させる手段も考えられる。例えば、ロータ2をベルトコンベア17で高所へと運び、高所から所定の容器内へとロータ2を落下させるような構成が挙げられる。ただ、打撃による衝撃を与える手法と同様、衝撃を加減する必要がある。そのため、撹拌手段に複数のロータ2を投入するのが非常に好ましい。
【0099】
(希土類磁石素材排出手段をシャフト分離手段として使用)
上記の実施形態では、シャフト分離手段によりロータ2からシャフト5を分離した後に、希土類磁石素材排出工程を行う場合について述べた。その一方、希土類磁石素材排出工程の最中にロータ2からシャフト5を分離しても構わない。上記の実施形態で述べたシャフト分離手段は、シャフト5を、ロータ2から離間する方向へと油圧シリンダによって圧力を加え、ロータ2を、シェル4、シャフト5および回転体6から分離している。その際に、希土類磁石素材排出工程で与えられるはずの「変形して歪むに留まる程度の衝撃」をロータ2に与えても構わない。この手法を適用する場合、希土類磁石素材排出手段15は、シャフト分離手段を兼ねることになる。別の言い方をすると、既存のシャフト分離手段を適宜改良し、希土類磁石素材排出手段15として使用することも可能となる。こうすることにより、撹拌機15のような比較的シンプルな構成を有する装置を用意することすらも不要となり、希土類磁石素材3aの回収システムを更に簡素なものとすることができる。
【0100】
(モータ部材がモータそのものである場合)
上記の実施形態においては、電磁コイルが分離される前の状態のものを「モータ」と称し、モータから電磁コイルが分離されたものを「モータ部材1」と称した。その一方、本発明の技術的思想は、モータから電磁コイルが分離されたものからロータ2を更に分離することに限定されるものではない。そのため、モータ部材1がモータそのものである場合、「モータ部材1からロータ2を分離するロータ分離手段13(工程)」は、モータからロータ2を分離するための一連の手段(工程)を含むものとする。
【0101】
(複数のロータを処理することによるロータ同士の衝突)
上記の実施形態では、「ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃」であって「ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aが破砕される程度の衝撃」をロータ2に対して与えることを前提にしている。その上で、好ましい例として、希土類磁石素材排出工程において、複数のロータ2を希土類磁石素材排出手段15に投入して一度に処理する際にロータ2同士を衝突させる例について述べた。
【0102】
その一方、本発明の見方を変えると、「複数のロータ2を希土類磁石素材排出手段15に投入して一度に処理する際にロータ2同士を衝突させる」ことにより、本発明の効果を達成しているとも言える。「ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃」であって「ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aが破砕される程度の衝撃」をロータ2に対して与えるという技術的思想も新しい一方、「ロータ2同士を衝突させて希土類磁石素材3aを排出する」という技術的思想も新しい。
【0103】
上記の見方を反映させた希土類磁石素材3aの回収方法は、以下の通りとなる。
希土類磁石3が組み込まれたロータ2を有するモータ部材1から、前記希土類磁石3が脱磁されてなる希土類磁石素材3aを回収する希土類磁石素材3aの回収方法において、
前記モータ部材1から分離された複数の前記ロータ2を希土類磁石素材排出手段15に投入して一度に処理する際に前記ロータ2同士を衝突させ、前記ロータ2に組み込まれた前記希土類磁石素材3aを破砕することにより、前記ロータ2の端部から前記希土類磁石素材3aを排出させる希土類磁石素材排出工程を有する、希土類磁石素材3aの回収方法。
【0104】
また、希土類磁石素材3aの回収システムについては、以下の通りとなる。
希土類磁石3が組み込まれたロータ2を有するモータ部材1から、前記希土類磁石3が脱磁されてなる希土類磁石素材3aを回収する希土類磁石素材3aの回収システムにおいて、
前記モータ部材1から分離された前記ロータ2を一度に処理する際に前記ロータ2同士を衝突させ、前記ロータ2に組み込まれた前記希土類磁石素材3aを破砕することにより、前記ロータ2の端部から前記希土類磁石素材3aを排出させる希土類磁石素材排出手段15を有する、希土類磁石素材3aの回収システム。
【0105】
上記の構成がもたらす効果としては、既に述べたところであるが、各ロータ2に対して衝撃が与えられる機会を飛躍的に増加させることにより、ロータ2が変形して歪むに留まる程度のマイルドな衝撃を与えながらも、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕する程度の強い衝撃を与えることが可能となる。それに加え、上記の構成により、押さえ板7やピン8がロータ2に取り付けられていたとしても、押さえ板7やピン8を手作業により取り外す必要なく、希土類磁石素材3aをロータ2から排出することが可能となる。
【実施例】
【0106】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
<実施例>
本実施例においては、エアコンに用いられるコンプレッサ筐体4内のモータに対して、2−A)シェルカット工程〜2−F)篩分工程を行った。具体的な各工程内容および各工程で用いられた手段については、上記の実施形態に記載の通りとした。
なお、2−D)脱磁工程においては、電気炉にて450℃で30分間、シャフト5を分離したロータ2に対して熱処理を行い、脱磁を行った。
また、2−E)希土類磁石素材排出工程においては、約6kg分の複数のロータ2を撹拌機15に投入し、撹拌羽根を750rpmで15秒間動かすことにより、ロータ2が変形して歪むに留まる程度の衝撃を与え、ロータ2に組み込まれた希土類磁石素材3aを破砕した。なお、本実施例におけるロータ2としては、押さえ板7および4本のピン8が取り付けられたままのものを用いた。また、攪拌機15としては、パーツセパレータ(平田機械工業株式会社製 型番:PS−2)を用いた。
また、2−F)篩分工程においては、排出処理後部材に対して目開き4mmの振動篩を用い、変形して歪むに留まるロータ2の残骸に起因して生じる粗粒子と、衝撃により微細な粒子となってロータ2の端部から排出される希土類磁石素材3aである微粒子とを、篩分けした。
【0108】
なお、2−D)脱磁工程以降の工程を実施するのに、以下の時間を要した。なお、以下の時間は、10個のロータを攪拌機に投入した場合に要する時間である。
・2−E−a)撹拌機へのロータを投入する投入工程 :20秒
・2−E−b)撹拌工程 :15秒
・2−E−c)排出処理後部材を撹拌機から排出する工程:20秒
・2−F)篩分工程 :20秒
合計 :75秒(但し、1個あたり7.5秒)
【0109】
<比較例>
比較例においては、特許文献1に記載されている内容に倣い、希土類磁石素材の回収工程を行った。具体的に言うと、本実施例で言うところの2−D)脱磁工程までを実施例と同じ条件で行った後、それ以降の工程を、特許文献1に記載されている手法(特に特許文献1の[0041]〜[0050])に倣って行った。つまり、一個ずつのロータに対し、ピンの切削を行い、希土類磁石素材をロータから分離した。
【0110】
その結果、脱磁工程以降の工程を実施するのに、以下の時間を要した。なお、以下の時間は、1個のロータに要する時間である。
・固定冶具セット :30秒
・ピン位置の特定 :30秒
・ピン位置情報入力 :20秒
・ピン切削等 :40秒
・ロータ移動等 :30秒
・希土類磁石素材分離:30秒
合計 :(1個あたり)180秒
【0111】
<結果>
本実施例において、以上の希土類磁石素材3aの回収工程をモータ部材1に対して行った結果を、
図5および
図6を用いて以下に示す。
【0112】
まず、希土類磁石素材3aの回収工程を経るとロータ2は実際にどうなるのかを写真を基に説明する。
図5(a)は、本実施例においてロータ2から希土類磁石素材3aが回収された後の様子を示す図である。
図5(b)は、本実施例においてロータ2から回収された希土類磁石素材3aの様子を示す図である。
図5(a)に示すように、ロータ2の外側部分を構成する積層電磁鋼板は破砕されることなく変形して歪むに留まっていた。その一方、希土類磁石素材排出手段15によりロータ2に与えられた衝撃により、ピン8の大半がロータ2から外れており、それに伴い、押さえ板7の大半がロータ2から外れていた。
そして、
図5(b)に示すように、ロータ2に組み込まれていたはずの希土類磁石素材3aは破砕され、ロータ2からほぼ全て排出されていた。
【0113】
次に、希土類磁石素材3aの回収工程を経たときの磁石品位および磁石回収率を数値として説明する。
図6は、本実施例における重量分布率、磁石品位および磁石回収率を示す図である。
【0114】
なお、「重量分布率」は、目開き4mmの篩を通過したものについて言うと、篩分工程を受ける排出処理後部材の重量に対し、目開き4mmの篩を通過したものの重量%のことを指す。
「磁石品位」は、目開き4mmの篩を通過したものについて言うと、目開き4mmの篩を通過したものに対する希土類磁石素材3aの重量%のことを指す。
「磁石回収率」は、目開き4mmの篩を通過したものについて言うと、モータ部材1における希土類磁石3の重量に対し、目開き4mmの篩を通過することにより回収された希土類磁石素材3aの重量%のことを指す。
【0115】
図6に示すように、目開き4mmの篩を通過したものは、重量分布率が13.9%であった。そして、目開き4mmの篩を通過したものに対して磁石品位を調べたところ99.0%であり、希土類磁石素材3a以外の物質が殆ど混入していなかった。また、磁石回収率を調べたところ、97.6%であり、ロータ2に組み込まれた希土類磁石3の殆どを希土類磁石素材3aという形で回収することができた。
【0116】
なお、目開き4mmの篩に残存したものについても、同様の調査を行った。その結果、目開き4mmの篩に残存したものは、重量分布率が86.1%であり、磁石品位は0.4%であり、磁石回収率は2.4%であった。つまり、ロータ2の残骸には希土類磁石素材3aが殆ど含まれていなかった。
【0117】
ところで、目開き4mmの篩に残存したものの観点から見ると、残存したものから鉄などの金属を適宜回収する工程を行うことにより、再資源化を実施することができる。この再資源化においては希土類磁石素材3aが不純物となるため、ロータ2の残骸から希土類磁石素材3aが殆ど取り除かれることは、ロータ2の残骸を再資源化するという観点から見ても、極めて意味がある。
【0118】
更に、2−D)脱磁工程以降に要した時間について言うと、ロータ1個あたり7.5秒という極めて短時間で、希土類磁石素材3aをロータ2から分離し、しかも篩分けまで実施することができた。
【0119】
その一方、比較例においては、磁石回収率が80%程度であった上、脱磁工程以降に要した時間について言うと、ロータ1個あたり180秒であり極めて長時間だった。更に、ロータの押さえ板はステンレス製のものが多いため、特許文献1に記載のようにピンの上部の切削をある程度繰り返すとドリルが磨耗し、切削効率が極端に低下して切削できなくなった。従って、比較例においては、ドリルの研磨および交換を頻繁にしなければならないことがわかった。
【0120】
つまり、本実施例の場合、ピンの切削に用いるドリルの研磨および交換の必要は全くなく、ロータ2の大量処理が可能であり、ロータ1個あたりに要する時間は、比較例の時間の1/24まで短縮可能であることが分かった。しかもそれでいて、磁石品位および磁石回収率を100%近くまで向上させることが可能であることが分かった。