(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137761
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/06 20140101AFI20170522BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20170522BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
E05B77/06 A
E05B85/16 Z
B60J5/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-154983(P2015-154983)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-31745(P2017-31745A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳憲
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−004221(JP,A)
【文献】
特開2011−256654(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0120022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定されるベース部材と、
前記ベース部材に対し一端部を回動支点として回動可能に連結し、他端部である自由端部がドアから遠ざかる方向への開動作がなされるハンドル本体と、
前記自由端部に接続され、該自由端部の前記開動作とその逆の閉動作に応じて所定の回転軸線周りを往復回動するよう前記ベース部材に対し回動可能に組み付けられるとともに、ドアを閉位置に維持するドアロック装置に対し接続され、前記ハンドル本体に前記開動作が生じた場合には前記回転軸線周りを所定回動方向に回動して、前記ドアロック装置をドアが閉位置に維持されない非ロック状態とする一方、前記開動作とは逆の閉動作が生じた場合には前記所定回動方向とは逆方向に回動し、前記ドアロック装置をドアが所定の閉位置にある場合にその閉位置に維持されるロック状態とするベルクランクレバーと、
を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ベルクランクレバーは、前記回転軸線をなす第一回転軸線周りを往復回動するベルクランクレバー本体と、前記ベルクランクレバー本体に対し前記第一回転軸線とは異なる位置の第二回転軸線周りを往復回動するよう前記ベルクランクレバー本体に組み付けられ、前記ハンドル本体が操作されていない時においては該ベルクランクレバー本体に対し予め定められた回動初期位置をとるストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記ハンドル本体の前記開動作に伴い前記所定回動方向に回動する前記ベルクランクレバー本体の回転加速度が予め定められた基準レベルを上回らない場合には、該ベルクランクレバー本体に対し前記回動初期位置を維持したまま該ベルクランクレバー本体と共に回動し、前記ベース部材に設けられたストップ部を避ける回転軌跡を移動する一方、当該回転加速度が前記基準レベルを上回る場合には、前記第二回転軸線に対し径方向外側に位置する外端部側が前記ベルクランクレバー本体の回転に追従できず、該ベルクランクレバー本体に対し前記回動初期位置からずれて、その回転軌跡上に前記ベース部材の前記ストップ部が位置するようになり、該ストップ部と当接して該ベルクランクレバー本体と共に回転が阻止されることにより、前記開動作が阻止されることを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記ストッパ部材が前記回動初期位置に保持されるよう付勢する付勢部材を備え、前記ストッパ部材は、前記ハンドル本体の前記開動作に伴い所定回動方向に回動する前記ベルクランクレバー本体の回転加速度が前記基準レベルを上回る場合に、前記付勢部材の付勢力に打ち勝つ形で、前記ベルクランクレバー本体に対する位置が前記回動初期位置からずれる請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記ストッパ部材が前記ベルクランクレバー本体に対する前記回動初期位置を維持したまま該ベルクランクレバー本体と共に回動し、前記ベース部材の前記ストップ部を避ける回転軌跡を移動する際、該ストップ部を避けて移動した先で当該ストッパ部材に対し当接し、当該ストッパ部材を前記回動初期位置からずらす固着防止部を有する請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアを開閉するための車両用ドアハンドル装置には、例えば特許文献1のようなドア開放防止技術が搭載されている。例えば特許文献1のドアハンドル装置は、ドアに組み付けられるベース部材と、そのベース部材に対し車両外向きの引き起こし動作が可能となるよう組み付けられるハンドル本体と、そのハンドル本体及びドアロック機構に接続するベルクランクレバーと、そのベルクランクレバーと一体回転するとともにコイルスプリングの弾性付勢力によって回動初期位置(特許文献1の
図4参照)に付勢される回転レバーと、ベース部材に設けられ、車両の非衝突時においてベルクランクレバーの回転を妨げることの無いよう回転レバーに対し相対動作(特許文献1の
図6参照)するロックピンと、を有しており、これらによってドアの開放が防止されている。
【0003】
即ち、この車両用ドアハンドル装置では、車両の衝突時において、衝突により生じる慣性力によって回転レバーがコイルスプリングの弾性付勢力に抗して回動初期位置からロック位置(特許文献1の
図10参照)まで回転する。そして、ロック位置へと移動した回転レバーは、ロックピンによってベルクランクレバーの回転を妨げる。ベルクランクレバーが回転できなくなることにより、ドアロック機構をドアの閉状態を維持するロック状態から非ロック状態へと切り替えることができず、その結果、ドアの開放を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−4221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の車両用ドアハンドル装置においては、車両の衝突により生じる慣性力によってドアロック機構が作動し、ドアの開放を防いでいる。この慣性力は、衝突を直接受けたドアと直接は受けていない回転レバーとの間に相対移動が生じようとする際、回転レバーに対し作用する力である。この場合、衝突の際に、回転レバーに対し慣性力が働かない形で、ハンドル本体が車両外向きに引き起こされてしまうような想定外の現象が生じた際、ドアの開放を防止することはできない。
【0006】
本発明は、衝突時においてドアの開放を効果的に阻止できる新構造を有した車両用ドアハンドル装置を提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために本発明の車両用ドアハンドル装置は、
車両のドアに固定されるベース部材と、
前記ベース部材に対し一端部を回動支点として回動可能に連結し、他端部である自由端部がドアから遠ざかる方向への開動作がなされるハンドル本体と、
前記自由端部に接続され、該自由端部の前記開動作とその逆の閉動作に応じて所定の回転軸線周りを往復回動するよう前記ベース部材に対し回動可能に組み付けられるとともに、ドアを閉位置に維持するドアロック装置に対し接続され、前記ハンドル本体に前記開動作が生じた場合には前記回転軸線周りを所定回動方向に回動して、前記ドアロック装置をドアが閉位置に維持されない非ロック状態とする一方、前記開動作とは逆の閉動作が生じた場合には前記所定回動方向とは逆方向に回動し、前記ドアロック装置をドアが所定の閉位置にある場合にその閉位置に維持されるロック状態とするベルクランクレバーと、
を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ベルクランクレバーは、前記回転軸線をなす第一回転軸線周りを往復回動するベルクランクレバー本体と、前記ベルクランクレバー本体に対し前記第一回転軸線とは異なる位置の第二回転軸線周りを往復回動するよう前記ベルクランクレバー本体に組み付けられ、前記ハンドル本体が操作されていない時においては該ベルクランクレバー本体に対し予め定められた回動初期位置をとるストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記ハンドル本体の前記開動作に伴い前記所定回動方向に回動する前記ベルクランクレバー本体の回転加速度が予め定められた基準レベルを上回らない場合には、該ベルクランクレバー本体に対し前記回動初期位置を維持したまま該ベルクランクレバー本体と共に回動し、前記ベース部材に設けられたストップ部を避ける回転軌跡を移動する一方、当該回転加速度が前記基準レベルを上回る場合には、前記第二回転軸線に対し径方向外側に位置する外端部側が前記ベルクランクレバー本体の回転に追従できず、該ベルクランクレバー本体に対し前記回動初期位置からずれて、その回転軌跡上に前記ベース部材の前記ストップ部が位置するようになり、該ストップ部と当接して該ベルクランクレバー本体と共に回転が阻止されることにより、前記開動作が阻止されることを特徴とする。
【0008】
上記特許文献1の場合、ドアへの衝突時に車両内向きの衝撃力が発生した際に、車両外向きに作用する慣性力を利用して回転レバーを変位させ、ベルクランクレバーの回転を規制しているのに対し、上記本発明の場合は、ベルクランクレバーに対し過加速度の回転が発生した場合に、その逆となる回転方向後方側に向かって作用する力(例えば慣性力)を利用してストッパ部材をベルクランクレバーに対し相対変位させ、ベルクランクレバーの回転を規制するという点に違いがある。つまり、上記特許文献1の場合は、ドアへの衝突があったときにのみベルクランクレバーの回転を規制してドアの開放を防ぐのに対し、上記本発明の場合は、ドアへの衝突があった時だけでなく、ベルクランクレバーが過加速度で回転する事象全てにおいてベルクランクレバーの回転を規制してドアの開放を防ぐことができる。そして、上記本発明の場合、ハンドル本体がユーザーによる通常の引き起こし操作を受けた場合には、ベルクランクレバーは通常の加速度で回転するため規制はかからず、ユーザーの意図通りドアを開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両用ドアハンドル装置の代表的な設置例を示す車両の側面図。
【
図2】本発明の一実施例である車両用ドアハンドル装置をドアに取り付けた状態を示す側面図。
【
図3】
図2の車両用ドアハンドル装置の分解斜視図。
【
図9A】ハンドル本体が引き起こされていない時(非操作時)の
図5のA−A断面図。
【
図9B】ハンドル本体が引き起こされた時(操作時)の
図5のA−A断面図。
【
図10A】ハンドル本体が引き起こされていない時(非操作時)の
図5のB−B断面図。
【
図10B】ハンドル本体が引き起こされた時(操作時)の
図5のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、自動車(車両)Vの前部ドアD1及び後部ドアD2には、開閉のために車両用ドアハンドル装置1が設けられている。車両用ドアハンドル装置1は、
図2に示すように、車両のドア(ここではドアのアウターパネルDP)に固定されるベース部材2と、そのベース部材2に対し一端部31を回動支点として回動可能に連結され、他端部32である自由端部32がドアから遠ざかる方向DAの開動作及びこの逆方向DBの閉動作の往復運動を行うハンドル本体3と、ベース部材2により回動可能に支持されたベルクランクレバー4と、を備える。ベルクランクレバー4は、そのハンドル本体3の自由端部32に接続されるとともにドアを閉位置に維持するドアロック装置5に接続され、
図9A及び
図9Bに示すように、ハンドル本体3の往復運動に追従して第一回転軸線4Xの周りに回動することにより、自身のレバー部15を介してドアロック装置5を、ドアがロック位置に維持されるロック状態と維持されない非ロック状態とを切り替える。
【0012】
ハンドル本体3の自由端部32は、
図9A及び
図9Bに示すように、ベース部材2内に出入り可能に入り込む接続部33を有する。この接続部33は、ベース部材2に形成されたガイド部23により直線的に往復移動できるように案内されるアームであり、アーム先端側の係合部34に対しベルクランクレバー4のレバー部14が係合する。
【0013】
ベルクランクレバー4は、
図3に示すように、回動中心部13から第一回転軸線4Xに対し互に異なる径方向に延出する一対のレバー部14,15を有したL字形状を有する一方で、ベース部材2に設定される第一回転軸線4Xの周りを回動可能となるよう、ベース部材2に対し組み付けられる回動部材である。ハンドル本体3に対し車両外向きに引き起こす引き起こし操作(即ちドア開操作)がなされると、その操作力がこのレバー部14を介してベルクランクレバー4の第一回転軸線4Xの周りの回動に変換される。これにより、ベルクランクレバー4は所定回動方向10Cに回転し、レバー部15を介してドアロック装置5(
図2参照)に作用する。このときドアロック装置5では、上述のロック状態のドアが非ロック状態へと切り替わり、ドアを開けることが可能になる。
【0014】
第一回転軸線4Xを形成する回動軸部6の周りには、図示しない付勢部材が配置されており(例えばねじりコイルばねが巻回されており)、ベルクランクレバー4は、ハンドル本体3の引き起こし操作によって生じる所定回動方向10Cへの回転に対し、その逆方向への付勢力を受ける。この付勢力によって、ハンドル本体3はベース部材2に格納された状態で保持される。ドアの閉状態においてハンドル本体3がこの格納状態となると、レバー部15に接続するドアロック装置5は、ドアをロック位置に維持するロック状態(ラッチ状態ともいう)となる。一方で、このロック状態において、ハンドル本体3に対し引き起こし操作がなされると、ドアロック装置5は、ドアをロック位置に維持しない非ロック状態に切り替わり、手動や電動でのドアの開動作が可能になる。なお、ドアロック装置5、及びドアロック装置5とベルクランクレバー4との接続形態については周知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0015】
ベルクランクレバー4は、
図6及び
図7に示すように、既に述べた一対のレバー部14,15を有したL字状のベルクランクレバー本体10と、ベルクランクレバー本体10に設定される回転軸線であって第一回転軸線4Xとは異なる位置となる第二回転軸線10Xの周りを回動可能となるよう、ベルクランクレバー本体10に対し組み付けられるストッパ部材40と、を備える。
【0016】
ベルクランクレバー本体10は、ベース部材2の回動支持部26によって、第一回転軸線4Xの周りを回動可能に支持される。本実施例の回動支持部26には、別体の回動軸部(回動軸部材ともいう)6が組み付けられており、ベルクランクレバー本体10、ひいてはベルクランクレバー4は、この回動軸部6の周りを回動するよう組み付けられる。本実施例のベルクランクレバー本体10は、
図3に示すように、この回動軸部6を挿通する軸挿通部4hを有する。他方、ベース部材2の回動支持部26は、一対の対向壁部26,26であり、それら対向壁部26,26は、それぞれ回動軸部6を挿通する軸挿通部26h,26hを有する。ベルクランクレバー4は、それら対向壁部26,26に挟まれる形で配置され、回動軸部6は、それらの軸挿通部26h,4h,26hを貫通する形で配置されて、ベース部材2に対し組み付けられる。
【0017】
なお、本実施例における第一回転軸線4Xは、引き起こし操作がされずにベース部材2に格納されている状態のハンドル本体3の動作方向DA,DB(即ち、車両左右方向)に対し、直交する方向に設定される。本実施例の第一回転軸線4Xは、車両Vの前後方向に延出している。
【0018】
ストッパ部材40は、
図10Aに示すように、ハンドル本体3が操作されていない非操作時においてはベルクランクレバー本体10に対して予め定められた回動初期位置をとる。なお、ハンドル本体3が操作されていない時とは、ハンドル本体3が車両外向きに引き起こされた位置にない時のことであり、ハンドル本体3がベース部材2に格納された状態にある時のことである。そして、ストッパ部材40は、ハンドル本体3の車両外向きへの引き起こし動作(開動作)に伴いベルクランクレバー本体10と共に予め定められた回動方向10Cへと回動する。この回動時に、ベルクランクレバー本体10の回転加速度が予め定められた基準レベルを上回らない場合には、ストッパ部材40は、当該回転加速度による慣性力40Cを受けたとしてもベルクランクレバー本体10に対し上記の回動初期位置を維持したまま該ベルクランクレバー本体10と共に回動する(
図10B参照)。この際、ストッパ部材40は、ベース部材2に設けられたストップ部21を避ける回転軌跡40A(
図10A参照)を移動することになる。
【0019】
ところが、この回動時に、ベルクランクレバー本体10の回転加速度が上記基準レベルを上回る場合には、ストッパ部材40は、当該回転加速度による慣性力40Cを受けて、第二回転軸線10Xに対し径方向外側に位置するストッパ外端部41側がベルクランクレバー本体10の回転に追従できず、ベルクランクレバー本体10に対し上記回動初期位置(
図10A参照)から回動阻止位置(
図10C参照)へとずれてしまう。回動阻止位置にずれたストッパ部材40は、
図10Cに示すように、その回転軌跡40B上にベース部材2のストップ部21が位置するようになるから、ベルクランクレバー本体10が回動する際に、ストッパ外端部41がストップ部21と当接して回転が阻止され、これによりベルクランクレバー本体10の回転も阻止される。そして、ベルクランクレバー本体10の回転が阻止されることにより、ベルクランクレバー4は当然回転できず、その結果、ドアロック装置5は作動せずロック状態が維持されるから、ドアの開動作が阻止される。
【0020】
なお、ストッパ部材40がベルクランクレバー本体10に対し回動初期位置を維持するとは、ストッパ部材40がベルクランクレバー本体10に対し回動初期位置から相対移動していないことを意味するのではなく、少なくともストッパ部材40がストップ部21を避ける回転軌跡を移動できる位置にあり続けることを意味するものとする。
【0021】
本実施例における第二回転軸線10Xは、第一回転軸線4Xに対する径方向の外側に位置し、第一回転軸線4Xと平行に設けられる。
【0022】
本実施例のストッパ部材40は、一対のレバー部14,15のうちの一方に設けられる。ここでのストッパ部材40は、
図6及び
図7に示すように、レバー部15のうち第二回転軸線10Xの延出方向の一方の側の端部に設けられている。本実施例のレバー部15は、第二回転軸線10Xの延出方向の一方の端面15a(
図3参照)から突出する回動軸部19を一体に有しており、ストッパ部材40は、その回動軸部19を自身に形成された軸挿通孔40hに挿通させる形で配置する。これにより、ストッパ部材40は、回動軸部19の周り(つまりは第二回転軸線10X周り)を回動可能となる。
【0023】
なお、本実施例においては、
図6に示すように、回動軸部19の先端側に、ベース部材2に設けられた壁部25が近接対向している。これにより、回動軸部19に対し回動可能に配置されたストッパ部材40の、回動軸部19の先端側からの抜けが防止されている。つまり、この壁部25がストッパ部材40の抜け止め部として機能している。さらにいえば、本実施例のストッパ部材40は、
図11に示すように、ベース部材2における壁部25と、レバー部15における回動軸部19の基部18との間に挟まれる形で配置されることで、回動軸部19からの脱落が防止されている。
【0024】
また、本実施例のベルクランクレバー4には、付勢部材9が配置されており、ストッパ部材40の回動初期位置から回動阻止位置へと向かう回転移動に対し、その逆方向への付勢力が作用している。本実施例の付勢部材9は、ねじりコイルばね9であり、回動軸部19に巻回されるとともに、その一端側が位置決め部11に掛止めされる形で回動軸部19に対し非回転に保持されている。
【0025】
また、本実施例において、ストッパ部材40のベルクランクレバー本体10に対する回動初期位置の維持は、
図8に示すように、付勢部材9の付勢力9Sによって、ストッパ外端部41がベルクランクレバー本体10(ベルクランクレバー4)に設けられた位置決め部11に当接することにより実現される。この位置決め部11は、レバー部15において第二回転軸線10Xの延出方向の一方の端面15a(
図3参照)から突出する壁部として形成されている。
【0026】
また、本実施例のストッパ部材40は、ベルクランクレバー本体10に対し回動阻止位置をとった状態(
図10C参照)で所定回動方向10Cに回動しようとする際、ストップ部21と当接するだけでなく、その当接方向の逆側において、ベルクランクレバー本体10に設けられた回転阻止部12に対しても当該回動方向10Cとは逆側に向かって当接する。つまり、本実施例のストッパ部材40は、ベルクランクレバー本体10の回転加速度が上記基準レベルを上回る場合に、ストップ部21と回転阻止部12との間に挟まれる形で回転不可状態となる。この回転阻止部12は、レバー部15において第二回転軸線10Xの延出方向の一方の端面15aから突出する壁部として形成されている。
【0027】
また、本実施例のベース部材2は、ストッパ部材40がベルクランクレバー本体10に対する回動初期位置を維持したままベルクランクレバー本体10と共に回動し、ベース部材2のストップ部21を避ける回転軌跡40Aを移動する際、該ストップ部21を避けて移動した先で当該ストッパ部材40に対し当接し、当該ストッパ部材40を回動初期位置からずらす固着防止部28を有する。本実施例においては、
図10Bに示すように、ストッパ部材40は、固着防止部28に当接して回動初期位置からずれるにあたって、回動初期位置に維持されていたときに当接していた位置決め部11からは離間している。本実施例の固着防止部28は、
図5に示すように、壁部25からストッパ部材40側へと突出形成された突出部として形成されている。
【0028】
このように、本実施例の車両用ドアハンドル装置1では、ハンドル本体3への引き起こし動作に連動して第一回転軸線4Xの周りを回動するベルクランクレバー4に対し、それとは異なる第二回転軸線10Xの周りを回動するストッパ部材40が組み付けられる。ベルクランクレバー4が基準レベルを上回らない回転加速度で回動する際には、ストッパ部材40はベルクランクレバー4と一体に回転し、その回転が妨げられることはないが、ベルクランクレバー4が基準レベルを上回る回転加速度で回動する際には、ベルクランクレバー4の回転に追従できないストッパ部材40がストップ部21に当接してベルクランクレバー4の回転を阻止する。本実施例においては、このような過加速度でベルクランクレバー4が回転しようとする際に、その回転が阻止されることで、ドアロック装置5が作動せず、車両のドアの開放を防止することができる。
【0029】
なお、ベルクランクレバー4の回転加速度に対し設定される基準レベルは、本実施例においては、付勢部材9の付勢力により調整可能である。本実施例の付勢部材9は、ねじりコイルばね9であるから、弾性付勢力の異なるものを選ぶことで調整することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施形態において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0031】
例えば、ストッパ部材40の回動初期位置の維持は、上記実施例のような付勢手段(付勢部材)9の付勢力ではなく、ストッパ部材40自身の自重によって生じるように構成してもよい。この場合、付勢手段9は不要とすることができる。また、この場合、ベルクランクレバー4の回転加速度に対し設定される基準レベルは、ストッパ部材40の重さによって調整できる。ストッパ部材40が樹脂製であれば、それよりも重い金属等の重り部材を装着させて重さを調整することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用ドアハンドル装置
2 ベース部材
21 ストップ部
3 ハンドル本体
4 ベルクランクレバー
4X 第一回転軸線
10 ベルクランクレバー本体
10X 第二回転軸線
40 ストッパ部材