(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137769
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ファイバ位置が制御される光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20170522BHJP
H01B 11/22 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
G02B6/44 361
H01B11/22
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-85775(P2011-85775)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2011-197678(P2011-197678A)
(43)【公開日】2011年10月6日
【審査請求日】2014年3月19日
(31)【優先権主張番号】61/315,492
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501209863
【氏名又は名称】コーニング オプティカル コミュニケイションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エイ レジスター ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】レジナルド ロバーツ
【審査官】
佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−281878(JP,A)
【文献】
特開2005−345805(JP,A)
【文献】
特開平11−111066(JP,A)
【文献】
特開2001−250427(JP,A)
【文献】
特開平09−243884(JP,A)
【文献】
特開昭61−026012(JP,A)
【文献】
特表平05−508482(JP,A)
【文献】
米国特許第7289704(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/036
6/44
H01B 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルであって、
内部にチャネルを有するポリマージャケットであって、前記チャネルは該チャネル内へ径方向内側に延びる4つの突起により画定される第1のスロットを、前記ケーブルの長さ方向にわたって有するポリマージャケットと、
前記第1のスロット内に設けられた少なくとも1本の光ファイバと、
第1の電気導体と、
第2の電気導体と、を備え、
前記光ファイバは、前記第1のスロット内に位置決めされ、前記光ファイバケーブルが最大量曲げられたとき、前記光ファイバの曲げ半径が前記光ファイバの最小曲げ半径以上であるように前記第1のスロット内で維持される、
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記ケーブルの直径は、2.8〜3.2ミリメートルであり、
前記第1のスロットの高さは、1.2〜1.8ミリメートルである、
請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記第1のスロットは、第1の軸線上に配置され、
第2の軸線が、前記第1及び前記第2の電気導体を通って延び、
前記ケーブルは、前記第2の軸線回りの最小曲げ慣性モーメントの優先的曲げ軸線を有する、
請求項2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記第1の電気導体は、第1の中心線を有し、前記第2の電気導体は、第2の中心線を有し、前記第1の中心線と前記第2の中心線との間の間隔は、1.2〜1.75ミリメートルである、
請求項3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記第1の電気導体は第1のスロットの第1の側に配置され、
前記第2の電気導体は第1のスロットの反対側に配置され、
前記電気導体は、24〜28アメリカンワイヤゲージ(AWG)の範囲内にあり、
前記第1および第2の電気導体は、絶縁材料で囲まれ、
前記第1および第2の電気導体は、ポリマージャケットに埋め込まれ、
さらに、前記第1のスロット内に配置された強度材料としてのアラミドヤーンをさらに備えている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的に、光ファイバケーブル及び光ファイバケーブル内における光ファイバの位置を制御する方法に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2010年3月19日に出願された米国特許仮出願第61/315,492号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を援用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
光ファイバの使用が多くの消費者エレクトロニクス用途、例えばコンピュータ周辺装置の接続に進出するにつれ、向上した性能及び広い使用範囲を持つケーブルについて消費者主導の期待が生じることになる。例えば、消費者の要求が小さなフットプリント(例えば、ケーブル外径が3.0ミリメートル(mm)未満を持つと同時にそれ自体「曲げて折り返される(bend back )」のに十分な柔軟性を持つ光ファイバケーブルに向けられる可能性が多分にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学性能及び光ファイバ健全性は、ケーブルの「曲げ折り返し」により悪影響を受ける。
図1は、典型的な光ファイバケーブルを曲げ折り返し形態で示している。光ファイバケーブル2は、全体として円形であり、外側曲げ周囲16及びケーブル直径又は厚さ6を有している。ケーブルの内部には光ファイバ10が設けられており、この光ファイバ10は、データを伝送する。光ファイバケーブル2が図示のように曲げて折り返されると、曲げ半径8は、最小の状態にあり、ケーブル直径6にほぼ等しい。ケーブル2内における光ファイバ10の配置場所は、光ファイバ10の曲げ半径12に影響を及ぼす。光ファイバ10が外側曲げ周囲16の近くに位置する場合、光ファイバは、大きな曲げ半径を有し、生じる減衰率が小さい。光ファイバ10がケーブルの内側部分の近くに位置する場合、光ファイバの曲げ半径は、小さく、それにより曲げに起因したΔ減衰率が大きくなる。曲げ半径12がかなり小さい場合、光ファイバは、光ファイバ10の外面18のところに亀裂を生じる場合があり、それにより、光ファイバ10の亀裂発生又は破断が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の実施形態によれば、光ファイバケーブルは、第1のスロットを備えるチャネルが設けられたポリマージャケットと、第1のスロット内に設けられた少なくとも1本の光ファイバと、第1の電気導体と、第2の電気導体とを有する。光ファイバは、第1のスロット内に位置決めされ、光ファイバケーブルが最大量曲げられても、光ファイバの曲げ半径が光ファイバの最小曲げ半径以上であるように第1のスロット内に位置したままである。ケーブルは、第1及び第2の優先的曲げ軸線を有するのが良く、ケーブルをいずれかの軸線回りに曲げて折り返すと、光ファイバは、これらの最小曲げ半径を超える曲げ半径で曲げられるようになる。ケーブルは、直径が2.8〜3.2ミリメートルの直径を持つ丸形断面を有するのが良く、第1のスロットの幾何学的中心は、ケーブルの幾何学的中心から0.2ミリメートル範囲内に存在するのが良い。
【0006】
第2の実施形態によれば、光ファイバケーブルは、チャネルが設けられたポリマージャケットと、チャネル内に設けられた少なくとも1本の光ファイバと、チャネルの第1の側に設けられた第1の電気導体と、チャネルの第2の側に設けられた第2の電気導体とを有する。光ファイバは、第1のスロット内に位置決めされ、光ファイバケーブルが最大量曲げられても、光ファイバの曲げ半径が光ファイバの最小曲げ半径以上であるように第1のスロット内に位置したままである。ケーブルは、チャネルと位置が合った優先的曲げ軸線を有するのが良く、ケーブルをチャネル周りに曲げて折り返すと、光ファイバは、これらの最小曲げ半径を超える曲げ半径で曲げられるようになる。ケーブルは、直径が2.8〜3.2ミリメートルの直径を持つ丸形断面を有するのが良く、チャネルの幾何学的中心は、ケーブルの幾何学的中心から0.2ミリメートル範囲内に存在するのが良い。
【0007】
第3の実施形態によれば、光ファイバケーブルは、チャネルが設けられたポリマージャケットを有し、ポリマージャケットの直径は、2.8〜3.2ミリメートルであり、チャネルの幅は、チャネルの高さの少なくとも2倍であり、光ファイバケーブルは、チャネル内に設けられた少なくとも1本の光ファイバと、チャネル内に設けられ、少なくとも1本の光ファイバに接触した抗張力体とを有する。光ファイバは、第1のスロット内に位置決めされ、光ファイバケーブルが最大量曲げられても、光ファイバの曲げ半径が光ファイバの最小曲げ半径以上であるように第1のスロット内に位置したままである。チャネルの幾何学的中心は、ケーブルの幾何学的中心から0.2ミリメートル範囲内に存在するのが良い。
【0008】
以下の図のコンポーネントは、本発明の一般的原理を強調するよう示されており、必ずしも縮尺通りには描かれていない。対応のコンポーネントを示す参照符号は、必要に応じて、説明の首尾一貫性及び明確さのために図全体にわたって繰り返し用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】典型的な先行技術の光ファイバケーブルを曲げ折り返し形態で示す断面図であり、この断面がケーブルの長さに平行である状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態としての光ファイバケーブルの断面図であり、この断面がケーブルの長さに垂直な横断面である。
【
図3】本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図4】最大慣性モーメントを持つ軸線回りに曲げられている
図3の光ファイバケーブルの側面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の幾つかの態様は、光ファイバケーブルを収容した光ファイバケーブル及び光ファイバケーブル内における光ファイバの位置を制御する方法に関する。種々の実施形態によれば、本明細書において説明する光ファイバケーブルは、撚り又は相互撚り合わせが殆どなく又は全くない状態で配置された複数本の光ファイバを収容することができる。
【0011】
図2は、本発明の第1の実施形態としての光ファイバケーブル30の断面図である。ケーブル30は、外周部34及びチャネル周囲部36を備えたポリマージャケット32を有し、チャネル周囲部36は、チャネル38を画定している。図示の実施形態では、ケーブル30の断面は、全体として円形であり、その直径は、約3.0ミリメートル(mm)である。本明細書では、丸形ケーブルは、幾分不規則な断面及び様々な長円度を有しても良い。したがって、丸形ケーブルの直径や半径といった場合、これは、中央値又は平均値を意味している。本明細書では、「ポリマー」及び「重合の」という用語は、主としてポリマーで構成された材料を指しているが、非ポリマー添加剤及び他の物質、例えば難燃性コンパウンド等の混入及びブレンドの状態の他種類のポリマーの混入を許容する。
【0012】
ポリマージャケット32は、チャネル38を包囲しており、チャネル38は、ケーブル30の長さ全体にわたって延びるのが良い。ケーブル30は、1対の金属製電気導体40,42を更に有し、これら電気導体は、電力を周辺電気機器に供給する。電気導体40,42は、追加的に又は代替的に、データを伝送することができる。電気導体40,42は、それぞれ、絶縁体44,46により包囲されるのが良い。変形例として、電気導体40,42は、ジャケット32内に埋め込まれても良く、その結果、絶縁体を省くことができる。データ伝送光ファイバ48,50も又、ケーブル30内に収容される。光ファイバ48,50は、それぞれ、緩衝層58,60により包囲されるのが良い。電気導体40,42及び緩衝光ファイバ48,50は、チャネル38内に位置決めされている。追加の導体を全体として又は部分的にジャケット32内に埋め込むのが良い。光ファイバ48,50は、一般に、ケーブル30を曲げたときにチャネル38内で並進するようになる。
【0013】
図2では、光ファイバ48,50は、チャネル38内で、第1の軸線54に垂直な第1の軸線52に沿って並進することができ、電気導体40,42は、全体として、第1の軸線54に沿って整列している。チャネル38は、軸線52に沿って「高さ」又は長さ寸法56を有し、光ファイバは、この軸線52を通って並進することができる。例示の実施形態では、チャネル38は、「十字」又は「T」字形であり、ケーブル30は、全体として軸線52,54の交点のところに位置する幾何学的中心62を有している。光ファイバケーブル40,42は、第1のスロット72内に配置され、この第1のスロットは、軸線52と整列しており、電気導体40,42は、第2のスロット74内に配置され、この第2のスロットは、軸線54と整列している。スロット72,74は、一部が、4つの突起76により画定され、これら突起は、チャネル38内に半径方向内方に延びている。突起76は、丸形コーナ部の形態を有するのが良い。
【0014】
スロット72,74の上記形状及び電気導体40,42の上記配置場所により、ケーブルが軸線52回りか軸線54回りかのいずれかに曲がるようにする或る程度の優先的曲げ特性をケーブル30に提供すると共に光ファイバ48,50の曲げ半径を増大させると共に光減衰率を減少させる場所まで光ファイバ48,50を並進させることができる。優先的曲げに関し、チャネル38の形状は、軸線54回りの材料の慣性モーメントを最小限に抑え、したがって、全体として、ケーブル30が曲げモーメントを受けたときにケーブル30は軸線54回りに曲がるようにする。ケーブル30を軸線54回りに曲げて折り返した場合、光ファイバ48,50は、ケーブル半径64にほぼ等しく又はこれよりも大きな曲げ半径を生じる。本発明の一観点によれば、光ファイバは、ケーブルをスロット72と整列した軸線54回りに曲げて折り返すと、光ファイバが過度の光減衰を生じないよう選択されるのが良い。例えば、例示の実施形態では、光ファイバ48,50は、結果的に約1.5dB〜2.0dBの許容可能なΔ減衰率が結果的に得られるようにする約1.5mmの最小曲げ半径を有するのが良い。曲げ折り返し半径に対応した例示のケーブル半径64は、約1.5mmであり、その結果、光ファイバ48,50は、軸線54回りの曲げの場合にこれらの最小曲げ半径よりも小さな半径では曲げられないようになる。
【0015】
ケーブル30がその好ましいモードで軸線54回りに曲げられる場合、光ファイバは、スロット72内で並進し、その結果、光ファイバ48,50は、これらの最小曲げ半径を下回る半径では曲がらないようになる。例えば、ケーブル30が軸線54回りに曲げ折り返されてケーブル34上における配置場所66がケーブルをそれ自体曲げて折り返した場所であるようにした場合、光ファイバは、スロット72内で、曲げ折り返し場所66から遠ざかって
図2に示されている向きに「下方に」並進するようになる。光ファイバ48は、場所66から遠ざかって光ファイバ48がその最も小さな歪状態にあるスロット72の「底部」に向かって動くことになる。光ファイバ50は又、曲げ折り返し場所66から遠ざかって小さな歪状態に向かって動くことになる。スロット72の高さ56は、スロット内の光ファイバがこれらの最小曲げ半径を下回る半径で曲がることがないよう選択される。例えば、例示の実施形態では、スロット72の高さ56は、約1.5mmであり、その結果、ケーブル30を曲げて折り返すと、曲げ折り返し場所の最も近くに位置する光ファイバは、少なくとも1.5mmの半径で曲げられるようになる。
【0016】
上述の実施形態によれば、ケーブル30の優先的曲げ特性は、ケーブル30内の光ファイバ48,50がこれらの最小曲げ半径を下回る半径で曲がるのを阻止する。電気導体40,42は、光ファイバ48,50がこれらのスロット72から出る恐れを減少させる光ファイバ48,50との交差を阻止するようスロット72内に拘束されている。スロット72の幾何学的中心は、丸形断面のものであるのが良いケーブル30の幾何学的中心62に一致するのが良く、又は、スロット72の幾何学的中心は、ケーブル30の中心から0.2mmの範囲内に位置するのが良い。図示の光ファイバ48,50は、緩衝層58,60を有しているが、緩衝層は、本明細書において説明する光ファイバにとって必要であるというわけではない。
【0018】
図2に示されているようなケーブル30の直径は、2.8〜3.2mmであり、スロット72の寸法56は、1.2〜1.8mmであり、2本の電気導体は、24〜28AWG(American wire gauge:アメリカンワイヤゲージ)の範囲内にある。電気導体40,42は、スロット72の互いに反対側に配置され、これらの中心線は、互いに1.2〜1.75mmの距離を隔てている。ケーブルジャケット102は、主として、熱可塑性ウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)又はポリ塩化ビニル(PVC)で構成される。
【0019】
図3は、本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブル100の概略断面図である。ケーブル100は、外周部104及びチャネル周囲部106を備えたポリマージャケット102を有し、チャネル周囲部106は、チャネル124を画定している。図示のケーブル100の断面は、全体として円形であり、その直径は、約3.0ミリメートル(mm)以下である。ジャケット102は、チャネル124を包囲しており、チャネル124は、ケーブル100の長さ全体にわたって延びるのが良い。ケーブル100は、複数本の電気導体108,110を更に有し、これら電気導体は、電力を周辺機器に供給することができる。電気導体108,110は各々、絶縁体112,114の各々によりそれぞれ包囲されるのが良い。ただし、電気導体108,110は、幾つかの実施形態では省かれてもよい。例えば、電気導体108,110を全体として又は部分的にチャネル124の各端部のところでジャケット102内に埋め込んでも良い。
【0020】
また、データ伝送緩衝光ファイバ116,118が電気導体108,100相互間に設けられた状態でケーブル100内に収容されている。光ファイバ116,118は又、それぞれ、緩衝層120,122でそれぞれ包囲されている。電気導体108,110及び緩衝光ファイバ116,118は、チャネル124内に位置決めされている。光ファイバ116,118は、一般に、ケーブル100を曲げたとき、チャネル124内で電気導体108,110相互間で並進するようになる。チャネル124は、第2の軸線128に垂直な第1の軸線126に沿って延びるスロットの形状をしている。
【0021】
ケーブル100は、抗張力体130、例えばアラミドヤーンを更に有する。抗張力体130は、チャネル124内に配置されている。この実施形態によれば、
図3に示されているように、抗張力体130は、光ファイバ116,118及び電気導体108,110を包囲している。抗抗力体130は、一般に、チャネル124全体にわたって配置されると共に電気導体108,110及び光ファイバ116,118の間に分布して配置されるのが良い。抗張力体130は、これにより光ファイバ116,118が制限された程度までジャケット102内で動くことができるほど十分ルーズに実装されている。
【0022】
チャネル又はスロット124は、最大高さ132及び最大幅134を有するのが良い。幅134は、例えば、高さ132の少なくとも2倍又はそれどころか3倍であるのが良い。チャネル124の形状は、ケーブル30が曲げ応力を受けたときに軸線126回りに曲がるようにする優先的曲げ特性をケーブル100に提供する。好ましくない曲げ方向は、第2の軸線128回りである。この実施形態の一観点によれば、光ファイバ48,50は、ケーブル100がそれ自体軸線128回りに曲がって反転しても、光ファイバがこれらの最小曲げ半径を下回る半径で曲がることがないよう選択されている。例えば、例示のケーブル100の外径は、約3.0ミリメートル以下である(即ち、半径132は、1.5mm以下である)。光ファイバ166,168は、約1.2mmの最小曲げ半径を有する。したがって、ケーブル100をそれ自体軸線128回りに曲げて折り返すと(即ち、軸線回りの好ましい方向が最小慣性モーメントを有する)、光ファイバ116,118は、これらの最小曲げ半径を下回る曲げ半径を示すことはない。
【0023】
ケーブル100を軸線128回りに曲げた場合(即ち、好ましくない方向及び最大慣性モーメントを持つ軸線)、光ファイバ116,118のうちの一方は、その最小曲げ半径を下回る半径で曲げられる可能性がある。しかしながら、
図4を参照すると、1本のケーブル100が最大慣性モーメントを持つ軸線回りに曲げられた場合、ケーブル100は、約90°回転して最小慣性モーメントを持つ軸線をケーブル100の曲げの中心である軸線に整列させる傾向がある。例えば、1本のケーブル100を場所135で曲げた場合、ケーブル100の外部に設けられているストライプ136,137は、約90°回転するように見える。これは、ケーブル100の断面の回転に相当しており、最小慣性モーメントを持つ軸線は、曲げ軸線になる。この回転が生じるようにするためには、ケーブル100を最大慣性モーメントを持つ軸線128回りに曲げるのに必要な曲げエネルギーとケーブル100を最小慣性モーメントを持つ軸線126回りに曲げるのに必要な曲げエネルギーの比は、少なくとも1.5:1であるべきであり、4:1という大きな比であるのが良い。ケーブル100をそれ自体曲げ折り返して軸線126が90°回転すると、光ファイバ116,118の断面も又回転し、光ファイバ116,118は、最小曲げ半径未満の半径で曲げられるようになる。
【0024】
曲げエネルギー及び慣性は、ケーブルの断面幾何学的形状並びに個々のケーブルの材料特性(例えば、少し挙げて見ただけでも、ケーブルジャケット、電気導体及び光ファイバ)で決まり、容易に計算可能である。チャネル144又は光ファイバチャネル124の形状は、光ファイバ116,118がこれらの最小曲げ半径未満の半径で曲げられることがないようにするために慣性及び曲げエネルギーの計算結果に基づいて定められるのが良い。チャネル124の幾何学的中心は、丸形断面ものであるのが良いケーブル100の幾何学的中心に一致するのが良く、又は、チャネル124の幾何学的中心は、ケーブル100の中心から0.2mmの範囲内に位置するのが良い。
【0026】
図3に示されているようなケーブル100の直径は、2.8〜3.2mmであり、チャネル124の高さ132は、0.6〜1.4mm、その幅134は、1.5〜2.8mmであり、2本の電気導体は、24〜28AWGの範囲内にある。電気導体40,42は、光ファイバ116,118の互いに反対側に配置されている。ケーブルジャケット102は、主として、熱可塑性ウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)又はポリ塩化ビニル(PVC)で構成される。
【0027】
図5は、本発明の別の実施形態としての光ファイバケーブル140の概略断面図である。ケーブル140は、外周部142及びチャネル周囲部144を備えたポリマージャケット141を有し、チャネル周囲部144は、チャネル又は光チャネル145を画定している。ケーブル140の断面は、全体として円形であり、その直径は、約3.0ミリメートル以下又はより一般的に言えば2.8〜3.2mmである。ジャケット141は、チャネル145を包囲しており、チャネル145は、ケーブル140の長さ全体にわたって延びるのが良い。ケーブル140は、複数本の電気導体148,150を更に有し、これら電気導体は、電力を周辺機器に供給することができる。また、データ伝送緩衝光ファイバ152,154がケーブル140内に収容されている。電気導体148,150及び光ファイバ152,154は、チャネル145内に位置決めされている。幾つかの実施形態では、電気導体148,150は、全体的に又は部分的に外周部142とチャネル周囲部144との間でジャケット141内に埋め込まれるのが良い。ケーブル140は、抗張力体146、例えばアラミドヤーンを更に有する。図示のように、抗張力体146は、チャネル周囲部144に隣接した状態でジャケット141内に配置されている。抗張力体146をそのように配置したり、ジャケット内に任意の好都合な向き又は配置状態で配置することは必要であるというわけではない。
【0028】
ケーブル140は、チャネル145を占めた非導電性エラストマー材料156を更に有する。EMI(電磁干渉)遮蔽作用を提供するため又は他の特性を得るために必要ならば導電性エラストマー材料を用いても良い。エラストマー材料156は、電気導体148,150及び光ファイバ152,154の位置を維持するよう機能する。エラストマー材料156は、ケーブルコンポーネント(即ち、電気導体及び光ファイバ)の位置を維持するのに十分強固であると共にケーブル140が広い運動範囲にわたって動くことができるほど十分柔軟性のある材料であればどのような材料であっても良く、例えばポリマー又は樹脂である。また、エラストマー材料156は、座屈を最小限に抑えるために小さい熱膨張率を有することが望ましい。エラストマー材料156は、光ファイバ152,154を光ファイバケーブル140の中心に位置決めするために使用されるのが良い。そのようにすることにより、光ファイバ152,154の曲げ半径は、一定になり、ケーブル140をどのように曲げようともこれとは無関係である。
【0029】
エラストマー材料156をジャケット141を押し出しているときに同時押し出しプロセスによりチャネル145中に導入するのが良い。光ファイバ152,154並びにチャネル145内に存在している場合には電気導体は、本質的には、エラストマー材料156中に埋め込み状態になるのが良い。ジャケット141の弾性率は、1〜2,500MPaである。エラストマー材料156の弾性率は、3,000〜10,000MPaであるのが良い。
【0031】
図5に示されているケーブル140の直径は、2.8〜3.2mmであり、2本の電気導体は、24〜28AWGの範囲内にある。ケーブルジャケット102は、主として、弾性率が2,500MPa未満の熱可塑性ウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)又はポリ塩化ビニル(PVC)で構成される。エラストマー材料156は、EMI遮蔽特性を備える共にジャケット141と同時押し出しされる3,000〜10,000MPaの弾性率を持つ熱可塑性エラストマーである。EMI遮蔽特性を備えていないエラストマー材料の弾性率は、500MPa未満である。
【0032】
図6、
図7及び
図8は、
図5の実施形態の原理を利用した種々の実施形態を示している。
図6は、
図5の光ファイバケーブル140の構成要素の全てを有する光ファイバケーブル140′を示しているが、ケーブル140′のジャケット141′内に配置された追加のデータ伝送コンポーネント160,162を有している。かかる形態は、上位互換性光ファイバUSBケーブル140′と呼ばれている。
【0033】
図7は、
図6の実施形態に類似しているが、光ファイバケーブルコンポーネントの異なる内部構成を備えた光ファイバケーブル170を示している。光ファイバケーブル170は、外周部173及びチャネル周囲部175を備えたジャケット172を有し、チャネル周囲部175は、チャネル190を画定している。電気導体176,178及び光ファイバ182,184は、エラストマー材料190によって定位置に保持されている。データ伝送導体186,188をジャケット172内に配置するのが良い。抗張力体174がチャネル周囲部175に隣接して配置されている。この実施形態では、光ファイバ182,184及び電気導体176,178は、小径の光ファイバチャネル175を生じさせるようケーブル170の中心に配置されている。
【0034】
同様に、
図8は、
図7の実施形態に類似しているが、光ファイバコンポーネントの異なる内部構成を有する光ファイバケーブル200を示している。光ファイバケーブル200は、外周部202及びチャネル周囲部204を備えたジャケット201を有し、チャネル周囲部204は、チャネル205を画定している。電気導体206,208、データ伝送導体210,212及び光ファイバ214,216は、エラストマー材料218によって定位置に保持されている。抗張力体220がチャネル周囲部204に隣接して配置されている。この実施形態では、光ファイバ214,216は、ケーブル200のほぼ中心に配置されており、電気導体206,208及びデータ伝送導体210,212は、大径光ファイバチャネル204を生じさせるよう光ファイバ214,216を包囲している。
【0035】
上述の開示内容全体を通じて、「約」という形容詞が所与の量の表記の前の多くの場所に用いられている。本発明の他の実施形態は、形容詞「約」がオプションであり、省略可能である点を除き、上述の実施形態と同様である。光ファイバケーブル内の光ファイバの位置を制御するために本明細書において開示した方法は、相互に排他的ではなく、必要に応じて、光ファイバ位置の適当な制御を達成するよう任意の組み合わせで利用できることが当業者には解る。
【符号の説明】
【0036】
2,30,100,140,140′,170,200 光ファイバケーブル
6 ケーブル直径
8 ケーブル曲げ半径
12 光ファイバ曲げ半径
10,48,50 光ファイバ
32 ポリマージャケット
38 チャネル
40,42 電気導体
44,46 絶縁体
56 長さ寸法
62 幾何学的中心
72,74 スロット
76 突起
130 抗張力体