(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137777
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】半導体上の発光素子または受光素子と光導波路との間の光の接続損失を低減させることに役立つ、スペーサ樹脂パターンの設計
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20170522BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20170522BHJP
H01S 5/022 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
H01S5/022
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-93713(P2012-93713)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-222075(P2013-222075A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年10月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼成 正雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】塚田 裕
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 和重
【審査官】
佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−010295(JP,A)
【文献】
特開2006−351718(JP,A)
【文献】
特開2006−284634(JP,A)
【文献】
特開2011−077090(JP,A)
【文献】
特開平06−003539(JP,A)
【文献】
特開2008−281923(JP,A)
【文献】
特開2011−118163(JP,A)
【文献】
特開2011−221142(JP,A)
【文献】
特開2007−294743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/122
6/13
6/14
G02B 6/26
6/30−6/34
6/42
H01L 33/00−33/64
H01S 5/00−5/50
H01L 31/02
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層される態様で配置される上側の光導波路パターン層および下側の電気回路パターン層に対して、光導波路パターン層の上に配置される半導体として形成されている発光素子または受光素子を精密に合わせるための、スペーサ樹脂パターン層を形成する方法であって、
半導体ウェーハ上に、光導波路パターン層に形成されている電気的に連絡するための貫通孔に合わさる位置で、電気回路パターン層に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔を有する、樹脂から成る基層を形成するステップと、
形成された樹脂から成る基層について、光導波路パターン層へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路パターン層からの受光の入力を導くための、錐台状の溝を形成するステップとを有し、
この錐台状の溝を形成するステップが、
基層の貫通孔の位置を基準として錐台状の溝が位置付けられる照射位置において、基層の表面または半導体ウェーハ表面に対して所定の角度をもって、錐台状となるべき側面に沿ってかつ頂点に向かってレーザを照射することによって基層を部分的に溝として除去する、レーザを照射するステップと、を有する、
方法。
【請求項2】
基層の樹脂がシリコーン樹脂である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
樹脂から成る基層を形成するステップが、半導体ウェーハ上に直接、樹脂をスピンコートすることによって形成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スペーサ樹脂パターン層の厚さが、20μm〜30μmである、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
錐台状の溝を形成するステップが、半導体ウェーハ表面を横切って、直線方向のレーザ照射のスキャンを複数回繰返すことによって成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1の方法によって作成されたスペーサ樹脂パターン層。
【請求項7】
請求項6に記載のスペーサ樹脂パターン層と、
互いに積層される態様で配置された、上側の光導波路パターン層および下側の電気回路パターン層と、
発光素子または受光素子が形成された半導体とが位置合わせされた状態で、
スペーサ樹脂パターン層が、光導波路パターン層の上に配置され、半導体が、スペーサ樹脂パターン層の上に配置されて、光導波路パターン層に形成されている電気的に連絡するための貫通孔に合わさる位置で、電気回路パターン層に対してスペーサ樹脂パターン層の貫通孔を通して電気的に連絡されている、
積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の発光素子または受光素子と光導波路との間の光をガイドすることによって光の接続損失を低減させることを可能とする、スペーサ樹脂(SR)パターン層の設計に関する。
【0002】
より詳しくは、互いに積層される態様で配置される光導波路(WG)パターン層および電気回路(EC)パターン層に対して、半導体(GaAs)として形成されている発光素子(VCSEL)または受光素子(PD)を精密に位置合わせすることを可能とする、スペーサ樹脂(SR)パターン層を形成するための具体的な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、従来技術として知られている積層体の構成を示す模式図である。本発明では、このような積層体の基本構成を対象にしながら、複数の構成要素の間における光の接続損失の低減を目的としている。
【0004】
このような積層体の基本構成では、光導波路(WG)パターン層50および電気回路(EC)パターン層70とが、互いに積層される態様で配置される。以後の説明において、( )書き内の参照記号等は、限定的な意味を持たないが、内容の把握に便利であることに配慮して、あえて記載している。
【0005】
これら互いに積層される関係にある複数の層の間では、機能上、互いに光学的または電気的に連絡する(互いに連絡しあう)ことが求められるため、精密な位置合わせが重要となってくる。
【0006】
半導体(GaAs)10には、発光素子(VCSEL)14または受光素子(PD)12が形成されている。半導体(GaAs)10は、Si(シリコン)などであってもよく、特定の材料に限定されるものではない。
【0007】
ここで、発光素子14についてはVCSELが代表的なものであり、受光素子12についてもPDが代表的なものであるというにすぎない。
【0008】
この
図1においては、半導体(GaAs)として受光素子(PD)12が形成されている場合が描かれている。光導波路(WG)パターン層50からの受光の入力を導くために、ミラー58による反射が用いられている。
【0009】
光導波路(WG)パターン層50の主要な構成要素は、コア52とそれを取り囲む(図では上下から挟み込む)クラッド54およびクラッド56である。
【0010】
直線状に配されたコア52内を光が通るように、クラッド54およびクラッド56において光が反射されながら伝播されていく。このような原理に従うため、入力光の性質には、ビームとして、ある程度の直進性が期待できる。
【0011】
しかし、コア端53からミラー58までの距離(の空間)においては、光が広がってしまう。さらに、ミラー58から受光素子(PD)12までは、スペース20を通して光学的に連絡されることになるが、ここでも光が広がってしまうことが避けられない。この
図1では、このようなビームの光の広がりを誇張して描いている。
【0012】
ミラー58から受光素子(PD)12までのスペース20は、可能な限り、短い方が好ましい。
【0013】
また、ミラー58の設定(反射)角度も、反射方向に大きく影響するため、その設定には高い精度が求められる。
【0014】
さらには、受光素子(PD)12の受光面積についても、応答速度が速いものを追求していくと、(有効)受光面積が小さくなっていく傾向がある。
【0015】
このような点からも、光導波路(WG)パターン層50からの受光の入力が、受光素子(PD)12の(有効)受光面積に精密に位置合わせられることが重要となってくる。位置合わせが精密でないと、接続損失が生じてしまうことになる。
【0016】
半導体(GaAs)10は、電気回路(EC)パターン層70に対しても、貫通孔(via)55を通して電気的に連絡されている。この構成例では、半導体(GaAs)10のパッド16上に配置されたはんだバンプ18が、電気回路(EC)パターン層70に対して電気的な連絡をする役割を担っている。
【0017】
この構成例における貫通孔(via)55では、光導波路(WG)パターン層50を(物理的に)貫通しなければならないため、光導波路(WG)パターン層50の構成の一部としても現れてくる。
【0018】
この
図1中では、光導波路(WG)パターン層50が貫通孔(via)55により分断されているかのように描かれているが、実際の光導波路(WG)パターン層50は紙面の奥行き方向にも展開されている。従って、奥行き方向にわたってずっと分断させたままになっているわけではないことに注意されたい。
【0019】
例えば、実際に電気的な連絡が行われる分断箇所である貫通孔(via)55の奥行き位置は、ミラー58の奥行き位置とは異なる場合もあることを意味する。
【0020】
すなわち、この
図1の表現は、説明の便宜上、あたかもある断面に構成要素が集まっているかのように見せている、模式図としての体裁であることを理解されたい。
【0021】
はんだバンプ18は、溶融後に固定されるため、機械的な接続の役割を担う。そのため、半導体(GaAs)10と電気回路(EC)パターン層70との固定だけでなく、光導波路(WG)パターン層50の固定にまで影響してしまう。
【0022】
従って、貫通孔(via)55の位置を基準として、光導波路(WG)パターン層50の位置(X方向、Y方向、Z方向)を位置付けることには重要な意義がある。
【0023】
X方向およびZ方向(Z方向は、紙面の奥行き方向)の位置付けの精度は、受光素子(PD)12の(有効)受光面積への位置合わせに直接的に影響してしまう。
【0024】
Y方向の位置付けの精度は、前述したとおり、スペース20として、光の広がりを考慮する場合の接続損失に影響してしまう。
【0025】
特許文献1は、受光面と受光素子との間に逆テーパ上に形成された土台部材を設けることが開示されている。
【0026】
特許文献2には、基板上に形成された光導波路と、基板に対して角度を成して光学部品とを光学的に結合する光結合器、が開示されている。
【0027】
特許文献3には、信号光を反射して折り返すミラーを備えた光通信モジュールが開示されている。
【0028】
特許文献4には、VCSELと光導波路との間にスペーサを配置することが開示されている。
【0029】
特許文献5には、マイクロレンズと受光素子との間にテーパ状の反射路を設けることが開示されている。
【0030】
特許文献6には、反射面を曲面にすることが開示されている。
【0031】
しかし、半導体(GaAs)10のウェ−ハのレベルから、半導体(GaAs)10のウェ−ハの上(面)において、光導波路(WG)パターン層50および電気回路(EC)パターン層70の両方に対して、半導体(GaAs)10として形成されている発光素子(VCSEL)14または受光素子(PD)12を光学的に高効率に結合するためのテーパ状反射路をもったスペーサ樹脂(SR)パターン層を形成する、という設計思想については開示がみられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2004−241631号公報
【特許文献2】特開2001−188150号公報
【特許文献3】特開2002−131586号公報
【特許文献4】特開2003−215371号公報
【特許文献5】特開2007−227643号公報
【特許文献6】特開2003−167175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、半導体のウェ−ハのレベルから、光導波路(WG)パターン層および電気回路(EC)パターン層の両方に対して、発光素子または受光素子を光学的に高効率に結合するためのスペーサ樹脂(SR)パターン層を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
第1の実施例(請求項1、
図2)においては、半導体(GaAs)ウェーハ上に、電気回路(EC)パターン層に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)を有する、樹脂から成る基層を形成する。形成された樹脂から成る基層について、光導波路(WG)パターン層へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路(WG)パターン層からの受光の入力を導くための、(円、多角)錐台状の立体的反射面を形成する。この(円、多角)錐台状の立体的反射面を形成する。基層の表面上に、貫通孔の位置を基準として位置付けられるところの中心から所定範囲にわたって、平面的に(ドーナッツ状の、円状の、多角形状の)金属の膜を蒸着する。この中心に対して、(円、多角)錐状の(金)型を、スタンプする。
【0035】
この他にも、第2の実施例(請求項2、
図3)、第3の実施例(請求項3、
図4)、第4の実施例(請求項4、
図5)にわたって、スペーサ樹脂(SR)パターン層を形成する方法が開示される。
【発明の効果】
【0036】
形成されるスペーサ樹脂(SR)パターン層によって、光導波路(WG)パターン層および電気回路(EC)パターン層の両方に対して、半導体(GaAs)として形成されている発光素子(VCSEL)または受光素子(PD)を精密に位置合わせることができるようになり、光損失を低減することができる。
【0037】
また、(円、多角)錐台の形状に従ったテーパ構造によって光の方向が修正されるので、反射方向に大きく影響してしまうミラー58の設定(反射)角度の精度についても、許容度が上がる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、従来技術として知られている積層体の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例であるところの、錐台状の立体的反射面(スタンピング)を形成する方法を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施例であるところの、錐台状の屈折率がより高いテーパ部を形成する方法を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の実施例であるところの、錐台状の溝を形成する方法を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4の実施例であるところの、錐台状の立体的反射面(最初に錐台を形成して、次にその内側の表面に金属薄膜形成)を形成する方法を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明によって形成したスペーサ樹脂(SR)パターン層を、具体的なパラメータをもって各構成要素に適用した場合における、光損失を低減させる効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、(互いに積層される態様で配置される)光導波路(WG)パターン層および電気回路(EC)パターン層に対して、半導体(GaAs)として形成されている発光素子(VCSEL)または受光素子(PD)を精密に合わせるための、スペーサ樹脂(SR)パターン層を形成する、具体的な方法が開示される。
【0040】
具体的な方法は、第1〜第4の実施例にわたり、分けて説明する。
【0041】
本発明の特徴が現れるところのスペーサ樹脂(SR)パターン層には、130(第1の実施例(
図2))、230(第2の実施例(
図3))、330(第3の実施例(
図4))、430(第4の実施例(
図5))という符号が、各々に付されている。
【0042】
スペーサ樹脂(SR)パターン層以外の構成要素の符号については、
図1で用いた符号となるべく同じ符号を用いている。
図2〜
図5の中では、
図1において説明した模式図も合わせて示していく。
【0043】
図2は、本発明の第1の実施例であるところの、錐台状の立体的反射面(スタンピング)を形成する方法を示す図である。
【0044】
まず、半導体(GaAs)10のウェーハ上に、電気回路(EC)パターン層50に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)135を有する、樹脂から成る基層132を形成する。
【0045】
樹脂から成る基層132を形成するにあたっては、まず、半導体(GaAs)10のウェーハ上に直接、樹脂をスピンコートすることができる。
【0046】
その次のプロセスで、電気回路(EC)パターン層50に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)135を(何らかの方法で除去して)形成するようにしてもよい。
【0047】
半導体ウェーハのレベルのプロセスにおいて、スピンコートのプロセスは親和性が高いため、効率的である。
【0048】
次に、形成された樹脂から成る基層132について、光導波路(WG)パターン層50へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路(WG)パターン層からの受光の入力を導くための、(円、多角)錐台状の立体的反射面137を形成する。
【0049】
この(円、多角)錐台状の立体的反射面137を形成するには、基層132の表面上に、貫通孔135の位置を基準として位置付けられるところの中心から所定範囲にわたって、平面的に(ドーナッツ状の、円状の、多角形状の)金属の膜138を蒸着する。
【0050】
半導体ウェーハのレベルのプロセスにおいては、位置の基準をとりやすい点で精度上有利である。
【0051】
この金属の膜138の蒸着の方法については、当業者であれば、様々な方法が考えられるであろう。
【0052】
この中心に対して、(円、多角)錐状の(金)型80を、スタンプする。スタンピングの方法も、当業者であれば様々な工夫をすることができるであろう。
【0053】
先が尖った形状の(金)型を用いれば、樹脂から成る基層132を塑性変形させることが容易になるであろう。
【0054】
蒸着された金属の膜138は、スタンピングによって立体的反射面となるが、例えば、金が好ましい。金は延伸しやすい性質が顕著であるため、(円、多角)錐台状の立体的反射面の内側に延びて均等に定着することが期待できる。
【0055】
スタンピングしても、樹脂から成る基層132の材料が、半導体10の面が暴露されるまで完全に除去できない場合があるかもしれない。しかし、樹脂から成る基層132の材料を光を透過する材料にしておけば、光学的な特性に大きな影響はない。
【0056】
図3は、本発明の第2の実施例であるところの、錐台状の屈折率がより高いテーパ部を形成する方法を示す図である。
【0057】
まず、基層内において、光導波路(WG)パターン層50へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路(WG)パターン層50からの受光の入力を導くための、その屈折率がその周りを取り囲んでいる基層の屈折率よりも高い、(円、多角)錐台状のテーパ部を形成する。
【0058】
この(円、多角)錐台状のテーパ部を形成するには、
半導体(GaAs)10のウェーハ上に、(円、多角)錐台状のテーパ部に対応する部分236と、電気回路(EC)パターン層に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)235に対応する部分とを有しており、かつ、(紫外)光を透過する(透明な)樹脂から成る、型95をセットする。
【0059】
ここでセットされる型95は、同じように、(金)型90に基づいてモールド等で作成するようにすればよい。ここでセットされる型95は、材料を選択すれば、再利用することもできる。
【0060】
次に、半導体(GaAs)10のウェーハと、セットされている型95との間の空間に、第1の光硬化樹脂237を注入する。
【0061】
セットされている型95を透過させて(紫外)光を照射することで、注入されている第1の光硬化樹脂を硬化させる。
【0062】
硬化された第1の光硬化樹脂237から、セットされている型95を取り除く。
【0063】
最後に、(円、多角)錐台状のテーパ部に対応する部分236に、第1の光硬化樹脂232よりも屈折率の高い第2の光硬化樹脂238を充填する。
【0064】
第2の光硬化樹脂238については、(第1の光硬化樹脂237とは異なり)必ずしも光硬化である必要はないので、樹脂が自然冷却されるのを待つ硬化を応用することもできるであろう。
【0065】
第1の光硬化樹脂237と第2の光硬化樹脂238とについての具体的な材料の組合せとしては、第1の光硬化樹脂237の屈折率が1.34のシリコーン樹脂であり、充填される第2の光硬化樹脂238の屈折率が1.9以上の二酸化チタンナノ粒子含有アクリルポリマーである、という組合せが挙げられる。
【0066】
もっとも、充填される第2の光硬化樹脂238の屈折率が、第1の光硬化樹脂237の屈折率よりもある程度高ければ、(円、多角)錐台状のテーパ部だけを光が伝播していくように有効に機能させることができるため、これらの具体的な材料に限られるものではない。
【0067】
図4は、本発明の第3の実施例であるところの、錐台状の溝を形成する方法を示す図である。
【0068】
まず、半導体(GaAs)10のウェーハ上に、電気回路(EC)パターン層70に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)335を有する、樹脂から成る基層332を形成する。
【0069】
樹脂から成る基層332を形成するにあたっては、まず、半導体(GaAs)10のウェーハ上に直接、樹脂をスピンコートして、その次に、電気回路(EC)パターン層に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)335を形成するようにしてもよい。
【0070】
樹脂から成る基層332の形成においては、マスクパターンを使って必要な部分だけを除去したり、レーザ照射による除去を応用することができる。
【0071】
次に、形成された樹脂から成る基層332について、光導波路(WG)パターン層50へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路(WG)パターン層50からの受光の入力を導くための、(円、多角)錐台状の溝339を形成する。
【0072】
この(円、多角)錐台状の溝339を形成するには、
貫通孔335の位置を基準として位置付けられる照射位置において、基層の表面または半導体(GaAs)ウェーハ表面に対して(直角でなく、かつ、平行でない)所定の角度をもって、(円、多角)錐台状となるべき側面に沿ってかつ頂点に向かってレーザを照射することによって基層を部分的に溝339として除去する。
【0073】
(円、多角)錐台状の溝339を形成するにあたっては、(GaAs)ウェーハ10の表面を横切って、直線方向のレーザ照射のスキャンを複数回繰返すことによって成されるようにしてもよい。この
図4において図示するような横切り方に従うのであれば、四角錐台状の溝が、複数個同時に、形成できることになる。
【0074】
図5は、本発明の第4の実施例であるところの、錐台状の立体的反射面(最初に錐台を形成して、次にその内側の表面に金属薄膜形成)を形成する方法を示す図である。
【0075】
まず、基層内において、光導波路(WG)パターン層50へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路(WG)パターン層50からの受光の入力を導くための、(円、多角)錐台状のテーパ部を形成する。
【0076】
この(円、多角)錐台状のテーパ部を形成するステップは、
半導体(GaAs)10のウェーハ上に、(円、多角)錐台状のテーパ部に対応する部分437と、電気回路(EC)パターン層に対して電気的に連絡するために提供される貫通孔(via)435に対応する部分とを有しており、かつ、(紫外)光を透過する(透明な)樹脂から成る、型95をセットする。
【0077】
半導体(GaAs)10のウェーハと、セットされている型95との間の空間に、第1の光硬化樹脂432を注入する。
【0078】
型を透過させて(紫外)光を照射することで、注入されている第1の光硬化樹脂を硬化させる。
【0079】
硬化された第1の光硬化樹脂432から、セットされている型95を取り除く。
【0080】
次に、形成された(円、多角)錐台状のテーパ部437について、光導波路(WG)パターン層50へ向かっての発光の出力を導くための、又は、光導波路(WG)パターン層50からの受光の入力を導くための、(円、多角)錐台状の立体的反射面438を形成する。
【0081】
この(円、多角)錐台状の立体的反射面438を形成するには、
形成された(円、多角)錐台状のテーパ部の内側の表面上に金属をスパッタリングすることによって可能である。当業者であれば、スパッタリング以外の手法も応用できるであろう。
【0082】
金属をスパッタリングするにあたっては、レジストや、フォトマスクによる露光などを、必要に応じて適用すればよい。半導体ウェーハのレベルのプロセスにおいて、レジストやフォトマスクによる露光などのプロセスは、スピンコート同様に、プロセス上の親和性が高く馴染みが良い。
【0083】
例えば、マスクパターン(A)とレジストとを応用すると、第1の実施例(
図2)とほぼ同様な立体的反射面を形成することができる。
【0084】
他にも、マスクパターン(B)を応用すると、貫通孔(via)435に対応する部分のパッド16に対しても(同じプロセスを通じて)同時にスパッタリングを適用して、スパッタリングされたパッド439を作成することができる。金は、電気的伝導の特性に優れており、かつ、接点としての信頼性にも優れているので好都合である。
【0085】
また、硬化されて形成された第1の光硬化樹脂432が光を透過してしまう性質があり、発光または受光の箇所以外では光の透過を選択的に阻止したい場合には、マスクパターン(B)と発光または受光の箇所のみへのレジストとの組合せが有効である。
【0086】
図6は、本発明によって形成したスペーサ樹脂(SR)パターン層を、具体的なパラメータをもって各構成要素に適用した場合における、光損失を低減させる効果を示す図である。
【0087】
スペーサ樹脂(SR)パターン層の厚さは、20μm〜30μmであるものまで実現している。
【0088】
発光素子(VCSEL)の光出力部の直径が8〜10μmであって、そこからの発光ビーム広がり角が15度である条件において、
(円、多角)錐台の形状が、高さ20〜30μm、傾き(ウェーハ表面に対する角度)が1〜5度であり、
半導体(GaAs)と光導波路(WG)パターン層(厚さ80μm)との間のギャップが30μmに設定されているものが、
1.5dBであった光損失を、0.5dB以下にまで低減している。
【0089】
受光素子(PD)の光入力部の直径が50μm〜54μmである条件において、
(円、多角)錐台の形状が、高さ24〜30μm、傾き(ウェーハ表面に対する角度)が19〜26度であり、
半導体(GaAs)と光導波路(WG)パターン層(厚さ80μm)との間のギャップが30μmに設定されているものが、
5.5dBであった光損失を、1dB以下(小数点以下四捨五入)にまで低減している。
【0090】
(円、多角)錐台の形状に従ったテーパ構造によって光の方向が修正されるので、反射方向に大きく影響してしまうミラー58の設定(反射)角度の精度についても、許容度が上がる。
【符号の説明】
【0091】
10 半導体(GaAs)
12 発光素子(VCSEL)
14 受光素子(PD)
16 パッド
18 はんだバンプ
20 スペース
50 光導波路(WG)パターン層
52 コア
53 コア端
54 クラッド
55 貫通孔(via)
58 ミラー
70 電気回路(EC)パターン層
80 (金)型
90 (金)型
95 セットされる型/セットされた型、
130 スペーサ樹脂(SR)パターン層 − 第1の実施例
132 樹脂から成る基層
135 貫通孔(via)
137 (円、多角)錐台状の立体的反射面
138 平面的に蒸着された(ドーナッツ状の、円状の、多角形状の)金属の膜
230 スペーサ樹脂(SR)パターン層 − 第2の実施例
235 貫通孔(via)
236 (円、多角)錐台状のテーパ部に対応する部分
237 第1の光硬化樹脂
238 第2の光硬化樹脂
330 スペーサ樹脂(SR)パターン層 − 第3の実施例
332 樹脂から成る基層
335 貫通孔(via)
339 (円、多角)錐台状の溝
430 スペーサ樹脂(SR)パターン層 − 第4の実施例
432 第1の光硬化樹脂
435 貫通孔(via)
437 (円、多角)錐台状のテーパ部に対応する部分
438 (円、多角)錐台状の立体的反射面
439 スパッタリングされたパッド