(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオール成分、架橋剤、触媒、発泡剤、イソシアネートを含むポリウレタンフォーム原料を発泡成形型に注入し、発泡させることによりポリウレタンフォームからなる遮音材をモールド成形する遮音材の製造方法において、
前記遮音材は、配置される空隙に応じた形状にあらかじめ成形されたものであって、圧縮されて空隙の内面に接触しながら空隙内に挿入され、挿入後に復元して空隙内面に密着するものであり、
前記ポリオール成分は、分子量3000〜7000のポリオール100〜50質量部含み、
前記架橋剤は、分子量60〜470、官能基数2〜4、ポリオール成分100質量部に対して0.3〜5.0質量部からなり、
前記発泡成形型の内面に、融点が40〜90℃の分岐鎖状ワックス系離型剤を塗布した後、前記ポリウレタンフォーム原料を注入し、発泡させることにより、表面に被膜層を有し、前記被膜層表面の動摩擦係数(JIS K7125)が0.9以下であり、表面硬度がアスカーC硬度計で20以下であるポリウレタンフォームからなる後加工が不要な遮音材を形成することを特徴とする遮音材の製造方法。
前記ポリオール成分は、分子量3000〜7000のポリオール100〜50質量部とポリマーポリオール0〜50質量部からなることを特徴とする請求項2に記載の遮音材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、フェンダー、インストルメントパネル、カウル周辺等における音の伝達経路の空隙内に遮音材を配置して騒音が車内に伝わるのを抑えるようにしている。遮音材としては、ポリウレタンフォームやフェルトなどからなるものがある。
【0003】
音の伝達経路の空隙では、空隙内面と遮音材との間に隙間が存在すると遮音性が低下する。そのため、圧縮復元性を有するポリウレタンフォームで空隙よりも所定量大きな遮音材を形成し、前記遮音材を圧縮状態で空隙内に配置して復元力により空隙内面に密着させるのが好ましい。空隙内への遮音材の配置は、空隙の内面に遮音材を両面粘着テープ等で固定し、その後に空隙の開口部に蓋をして遮音材を空隙内面に密着させてもよいが、その場合には、遮音材の固定作業や空隙の開口部閉鎖作業等に手間取る問題がある。そのため、空隙よりも大きなポリウレタンフォームからなる遮音材を、圧縮変形させながら空隙の挿入口から空隙内に挿入し、空隙内で復元させることによって空隙内に遮音材を密に配置することが好ましい。
【0004】
しかし、従来のポリウレタンフォームからなる遮音材は、表面の滑りが悪いため、空隙よりも大きな遮音材を空隙内へ挿入する際に、空隙内面との摩擦抵抗によってスムーズに挿入し難いだけでなく、空隙内でも空隙内面との摩擦によってスムーズに復元し難いために空隙内に隙間を生じやすく、良好な遮音性が得られない問題がある。なお、表面の滑りを改善するため、ポリウレタンフォームの表面にプラスチックシートを積層することが考えられるが、その場合にはポリウレタンフォームの変形性が損なわれて、かえって空隙に挿入し難くなったり、空隙内で隙間を生じたりするようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、音の伝達経路の空隙に挿入し易く、かつ良好な遮音性を有する遮音材とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリウレタンフォームからなる遮音材において、前記遮音材は
、配置される空隙に応じた形状にあらかじめ成形されたものであって、圧縮されて空隙の内面に接触しながら空隙内に挿入され、挿入後に復元して空隙内面に密着するものであり、前記ポリウレタンフォームは表面に被膜層を有し、前記被膜層表面の動摩擦係数(JIS K7125)が0.9以下、前記被膜層の表面硬度がアスカーC硬度計で20以下であり、前記ポリウレタンフォームの被膜層表面の通気性(JIS K6400−7A法)が10L/min以下、前記被膜層よりも内部側の通気性(JIS K6400−7A法)が15L/min以上、前記被膜層表面の通気性と前記内部側の通気性との差が10L/min以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、ポリオール成分、架橋剤、触媒、発泡剤、イソシアネートを含むポリウレタンフォーム原料を発泡成形型に注入し、発泡させることによりポリウレタンフォームからなる遮音材をモールド成形する遮音材の製造方法において、前記遮音材は
、配置される空隙に応じた形状にあらかじめ成形されたものであって、圧縮されて空隙の内面に接触しながら空隙内に挿入され、挿入後に復元して空隙内面に密着するものであり、前記ポリオール成分は、分子量3000〜7000のポリオール100〜50質量部含み、前記架橋剤は、分子量60〜470、官能基数2〜4、ポリオール成分100質量部に対して0.3〜5.0質量部からなり、前記発泡成形型の内面に、融点が40〜90℃の分岐鎖状ワックス系離型剤を塗布した後、前記ポリウレタンフォーム原料を注入し、発泡させることにより、表面に被膜層を有し、前記被膜層表面の動摩擦係数(JIS K7125)が0.9以下であり、表面硬度がアスカーC硬度計で20以下であるポリウレタンフォームからなる
後加工が不要な遮音材を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項
3の発明は、請求項
2において、前記ポリオール成分は、分子量3000〜7000のポリオール100〜50質量部とポリマーポリオール0〜50質量部からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、遮音材を構成するポリウレタンフォームは表面に被膜層を有し、前記被膜層表面の動摩擦係数(JIS K7125)が0.9以下であるため、通常のポリウレタンフォーム(表面の動摩擦係数0.94〜1.91)よりも表面の滑りがよく、かつポリウレタンフォームの表面硬度がアスカーC硬度計で20以下であるため、遮音材は圧縮変形性及び復元性がよい。そのため、本発明の遮音材は、例えば自動車のフェンダーや、インストルメントパネル、カウル周辺等音の伝達経路の空隙に挿入する際に、良好な滑り及び圧縮変形によって空隙内に挿入し易く、かつ空隙内ではスムーズに復元して空隙内面に密着させることができ、良好な遮音性が得られる。
【0012】
請求項
1の発明によれば、被膜層表面の通気性(JIS K6400−7A法)が10L/min以下、前記被膜層よりも内部側の通気性(JIS K6400−7A法)が15L/min以上、前記被膜層表面の通気性と前記内部側の通気性との差が10L/min以上であるため、通気性が小さい表面の被膜層によって、良好な遮音性が得られる。
【0013】
請求項
2の発明によれば、表面の滑り及び遮音性が良好な請求項
1に記載の遮音材を容易に製造することができる。
請求項
3の発明によれば、空隙内に挿入したときに、よりしっかりとした保持性が保たれ、遮音性も向上した遮音材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示す遮音材10は、
図2に示す自動車のフェンダー内の空隙に、A部を上向き、B部を下向きにして挿入配置されるものであり、配置される空隙に応じた形状にモールド成形されたポリウレタンフォームからなる。前記ポリウレタンフォームは表面に被膜層11を有し、被膜層11表面の動摩擦係数(JIS K7125)が0.9以下、前記被膜層11が形成された前記ポリウレタンフォームの表面硬度がアスカーC硬度計で20以下である。
【0016】
前記被膜層11表面の動摩擦係数(JIS K7125)が0.9より大きい場合には、滑りが悪く、空隙への挿入配置が難しくなる。より好ましい動摩擦係数の範囲は0.8〜0.1である。また、前記被膜層11が形成された前記ポリウレタンフォームの表面硬度(すなわち被膜層表面の硬度)がアスカーC硬度計で20より大の場合には、遮音材10が硬すぎて、空隙への挿入が難しくなる。より好ましい表面硬度の範囲はアスカーC硬度計で12〜1である。
【0017】
また、前記ポリウレタンフォームは、前記被膜層11表面の通気性(JIS K6400−7A法)が10L/min以下、前記被膜層11よりも内部側(すなわち被膜層11から離れた内部側)の通気性(JIS K6400−7A法)が15L/min以上、前記被膜層11表面の通気性と前記被膜層11より内部側の通気性との差が10L/min以上であるのが好ましい。前記被膜層11表面の通気性、内部側の通気性、前記被膜層11表面の通気性及び内部側の通気性との差が前記範囲にあることにより、通気性が小さい表面の被膜層によって、より良好な遮音性が得られる。特に、内部側ポリウレタンフォームの通気性が15L/min以上であることから、空隙への圧縮挿入時にフォーム内部の空気がある程度流通することにより、空隙への挿入時の圧縮変形を阻害せず、挿入し易さを助けるものとなる。なお、前記被膜層11表面の通気性のより好ましい範囲は8〜2L/min、前記内部側の通気性のより好ましい範囲は20〜40L/min、前記被膜層11表面の通気性と前記内部側の通気性との差のより好ましい範囲は12〜35L/minである。
【0018】
前記遮音材10の製造は、ポリウレタンフォーム原料を発泡成形型内に注入して発泡させるモールド成形によって行われる。モールド成形は、ポリウレタンフォームの成形方法として多用されている方法であって、発泡成形型の型内面を製品形状としておくことによって、後加工を行うことなく所望の製品形状のポリウレタンフォームを得ることができる。
【0019】
ポリウレタンフォーム原料は、ポリオール成分、架橋剤、触媒、発泡剤、イソシアネートを含む。
ポリオール成分は、分子量3000〜7000のポリオールを100〜50質量部とポリマーポリオール0〜50質量部とからなる。
分子量3000〜7000のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールの何れでもよい。ポリオールは一種類に限らず複数種類で構成してもよい。ポリオールの分子量が3000未満の場合には得られるポリウレタンフォームからなる遮音材が硬いものとなり、逆に7000を超える場合にはポリオールの粘度が高いものとなり、ポリオール成分等の原料を発泡成形型に注入時に原料の流れ性が悪くなり、型の隅々に原料が行き渡りにくくなり、ボイドや欠肉等を生じるおそれがある。また、分子量3000〜7000のポリオールは、官能基数が2〜4のものが好ましい。
ポリマーポリオールは、官能基数2〜4、分子量3000〜5000が好ましい。ポリマーオールの量は、ポリオール成分100質量部中0〜50質量部である。ポリマーポリオールの量が50質量部を超える場合、ポリウレタンフォームが硬くなり過ぎて空隙への挿入がしにくいものとなる。
【0020】
架橋剤は、分子量60〜470、官能基数2〜4からなる。分子量が60未満の場合、実用性の高いものがほとんどなくなり、逆に470を超えると反応性が低くなりすぎて被膜成形に寄与しないものとなる。分子量60〜470、官能基数2〜4の架橋剤としては、エチレングリコール(官能基数2、分子量62.1)、ジエチレングリコール(官能基数2、分子量106.1)、グリセリン(官能基数3、分子量92.1)、ブタンテトラオール(官能基数4、分子量122.1)、ポリオキシプロピレングリコール(官能基数2〜3、分子量200〜400)等の多価アルコール、ジエタノールアミン(官能基数3、分子量105.1)、ポリアミンを挙げることができる。架橋剤は一種類に限られず、複数種類併用してもよい。架橋剤の量は、ポリオール成分100質量部に対して0.3〜5質量部が好ましい。架橋剤の量が前記範囲よりも少ない場合には被膜形成の効果が少ないものとなり、多い場合には、ポリウレタンフォームが硬くなり過ぎて空隙への挿入がしにくいものとなる。
【0021】
触媒としては、ポリウレタンフォーム用として用いられるアミン系触媒、金属触媒を挙げることができる。アミン系触媒としては、具体的には、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン等が用いられる。金属触媒としては、スタスオクトエートやジブチルチンジラウレート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等を挙げることができる。触媒の量は、ポリオール成分100質量部に対して0.1〜8.0質量部程度である。
【0022】
発泡剤としては、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等を挙げることができ、これらの中から1種類でもよく、又2種類以上でもよい。前記炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。又、前記ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも発泡剤として水が特に好適である。前記発泡剤としての水の量は、ポリオール成分100質量部に対して0.5〜4.0質量部程度が好ましい。
【0023】
イソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、ポリウレタンフォーム用のものが使用可能である。前記イソシアネートは、1種類の単独使用でも2種類以上の併用であってもよい。前記イソシアネートとしては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系のイソシアネート化合物、及びこれらの変性物を挙げることができる。
【0024】
芳香族系イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソジアネート(TMXDI)、トリジンイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族系イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。脂環族系イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H
6XDI)、水添化MDI(H
12MDI)等が挙げられる。変性イソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0025】
前記イソシアネートの配合量は、イソシアネートインデックスが80〜120となる量が好ましい。イソシアネートインデックスが80未満の場合、ポリウレタンフォームの強度が低くなりすぎ耐久性に乏しいものとなったり、ガスが抜けにくくシュリンクして成形状態が悪いものとなる。一方、インデックスが120を超えるとポリウレタンフォームが高硬度になり、遮音材を空隙に挿入し難くなる。なお、イソシアネートインデックスは、ポリウレタンフォーム原料中の活性水素基(例えば、ポリオールの水酸基、発泡剤として用いられる水などの活性水素基)の合計に対するイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で示す値であり、ポリウレタフォームの分野で使用されている指標である。
【0026】
その他、添加剤が適宜配合される。適宜配合される添加剤としては、整泡剤、難燃剤、着色剤、充填剤等を挙げることができる。整泡剤としては、ポリウレタンフォームに用いられるものであればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。
【0027】
前記遮音材のモールド成形時、まず発泡成形型の内面に離型剤を塗布する。発泡成形型は、上下型等に分離可能な分割型からなり、型内面が遮音材の外形状と等しい形状とされている。また、発泡成形型は電熱ヒータや熱媒体循環パイプなどの加温手段が埋設され、前記電熱ヒータや熱媒体循環パイプに流した温水や加熱オイル等によって所定型温に温調可能となっている。型温は40〜80℃が好ましい。型温が40℃よりも低い場合にはキュア性が悪くなり、生産性が良くないものとなり、逆に80℃よりも高い場合には型に接したウレタン原料の反応性が高くなりすぎて、ウレタン原料の流れ性が悪くなり、欠肉、外観表面が荒れる恐れがある。
【0028】
離型剤としては、分岐鎖状ワックス系離型剤が用いられる。分岐鎖状ワックス系離型剤としては、変性ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、炭化水素系ワックス等の分岐鎖状ワックスを主成分として用い、これを有機溶媒に溶かしたもの、又は乳化剤を用いて水分に分散させてなるものがあげられる。また、分岐鎖状ワックスは、融点が40〜90℃ものが好ましい。
一般的に多用されている直鎖状炭化水素系ワックスからなる離型剤または、シリコーンを含有する離型剤を用いた場合にはフォーム表面に被膜が形成しにくく、いわゆるスキンレスとなるのに対し、分岐鎖状ワックス系離型剤を用いて、本願発明の特定の架橋剤を併用した場合には、ポリウレタンフォームの表面に前記被膜層11を形成することができる。離型剤の塗布は、刷毛あるいはスプレー等によって行う。離型剤の塗布量は30〜300g/m
2である。
【0029】
前記離型剤を型内面に塗布した後、発泡成形型内に前記ポリウレタンフォーム原料を混合して注入し、発泡成形型を閉型する。注入量は、ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)が130〜200kg/m
3(0.13〜0.20g/cm
3)となる量が好ましい。
ポリウレタンフォーム原料の発泡後、発泡成形型を開けてポリウレタンフォームからなる前記遮音材10を脱型する。得られた遮音材10を構成するポリウレタンフォームは、表面に前記被膜層11を有し、前記の物性を有するものである。
【実施例】
【0030】
型内面形状が直方体からなる内面寸法400×400×25mmの発泡成形型(型内容積4000cm
3)の型内面に、以下の離型剤A又はBをスプレーで(約100g/m
2の割合で)塗布し、以下の原料で構成した表1の配合からなるポリウレタンフォーム原料を混合して発泡成形型内に550g注入し、型温を60℃に維持して発泡させた。その後脱型してポリウレタンフォームからなる実施例1〜7及び比較例1、2の遮音材を得た。なお、比較例3は、表1の配合からなるポリウレタンフォーム原料を混合して発泡成形型内に360g注入し、型温を60℃に維持して発泡させた。表1の配合における原料の数値は質量部である。また、比較例4として、スラブ発泡したポリウレタンフォーム(密度23kg/m
3、品番:カームフレックス F−4、株式会社イノアックコーポレーション製)を他の実施例及び比較例と同じ寸法に裁断して遮音材を形成した。比較例4は、表面に被膜がないため、空隙の隙間に挿入しにくいものであった。
【0031】
・ポリオールA;ポリエーテルポリオール、分子量3000、官能基数3、水酸基価56mgKOH/g
・ポリオールB;ポリエーテルポリオール、分子量5000、官能基数3、水酸基価34mgKOH/g
・ポリマーポリオール;分子量5000、官能基数3,水酸基価28mgKOH/g
・架橋剤A;ジエタノールアミン、官能基数3、分子量105.1
・架橋剤B;エチレングリコール、官能基数2、分子量52.1
・架橋剤C;グリセリン、官能基数3、分子量92.1
・架橋剤D;ポリエ一テルテトラオール、官能基数4、分子量450、品名:EDP−450、ADEKA製
・触媒;アミン触媒、品名:33LV、エアプロダクツ株式会社製
・発泡剤;水
・整泡剤;シリコーン整泡剤、品名:SZ1346E、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製
イソシアネート;変性4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、品名:コロネート1050、日本ポリウレタン工業株式会社製
・離型剤A;分岐鎖状ワックス系離型剤、品名:N−915、中京油脂株式会社製、融点48℃
・離型剤B;直鎖状ワックス系離型剤、品名:URH−520、コニシ株式会社製、融点92〜102℃
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1はポリオール成分としてポリオールAとポリマーポリオールをそれぞれ50質量部使用した例、実施例2はポリオールBを単独で使用した場合、実施例3と実施例4はポリオールBとポリマーポリオールの量を変化させた場合、また実施例3と実施例5〜7は架橋剤の種類を異ならせた場合、比較例1は実施例3と実施例5〜7の配合において架橋剤を使用しない場合、比較例2は実施例3における離型剤A(分岐鎖状ワックス系離型剤)に代えて離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)を使用した場合、比較例3は架橋剤を使用しない比較例1において離型剤A(分岐鎖状ワックス系離型剤)に代えて離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)を使用した場合である。
【0034】
実施例1〜7及び比較例1〜3に対して成形性と表面被膜層の有無を目視により判断した。また、密度(JIS JIS K7222:2005)、表面硬度及び遮音性を測定した。成形性は欠肉・ダウン・シュリンク・外観不良があれば「×」とし、外観不良等がない場合に「○」とした。表面被膜層は被膜層が存在しない場合に「無」、被膜層と内側の境界が不明確であるが表面被膜層が存在する場合に「△」、被膜層が明確に存在する場合に「有」とした。表面硬度はアスカーC硬度計(日本ゴム協会標準規格 SRIS 0101)で測定した。遮音性は、透過損失にて測定した(音響透過損失管 伝達マトリックス法:ASTM E2611−09準拠、細管用φ=28.9mm)。なお、遮音性については、測定データを縦軸に透過損失、横軸に周波数(500〜6300Hz)をとり、全周波数域(500〜6300Hz)を考慮して、透過損失が10デシベル以下の場合に「×」、10〜20デシベルの場合に「△」、20〜30デシベルの場合に「○」と評価した。各測定結果を表1に示す。
【0035】
実施例1〜7の遮音材は全て成形性が「○」、表面被膜層有り、表面硬度がアスカーC硬度計で20以下であった。また、実施例1〜7の遮音材は、500〜900Hzの領域で20デシベルを下回ったが、1000Hz〜3500HZで20〜30デシベル、3500Hzを超える高周波数域で30デシベルを超えるため、評価が「○」となった。
【0036】
これに対し、比較例1(架橋剤無、離型剤A(分岐鎖状ワックス系離型剤)使用)は表面被膜層が「△」、比較例2(架橋剤Aと離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)使用)と比較例3(架橋剤無、離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)使用)は表面被膜層が「無」であった。また、遮音性については、比較例1と比較例2はほぼ全周波数域である4000Hz以下の領域において、10〜20デシベルであったため、△の評価となり、また、比較例3においては、全周波数域において、7〜18デシベルであったため、×〜△の評価となった。
【0037】
さらに実施例3、比較例2(架橋剤Aと離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)を使用)及び比較例3(架橋剤無、離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)使用)について、表面の動摩擦係数(JIS K7125)を測定した。動摩擦係数の測定結果は表1に示す通りであり、実施例3の動摩擦係数がが0.76であったのに対し、比較例2の動摩擦係数が1.91、比較例3の動摩擦係数が0.94であり、実施例3は比較例2及び比較例3よりも表面の動摩擦係数が小さく、滑りが良好である。
【0038】
また、実施例3、比較例2(架橋剤Aと離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)を使用)及び比較例3(架橋剤無、離型剤B(直鎖状ワックス系離型剤)使用)のポリウレタンフォーム原料を用い、型内面の寸法400×400×100mmの発泡成形型を用い、発泡成形型の型内深さが実施例1等に使用した前記発泡成形型の4倍になっていることに合わせて注入量を実施例1等の4倍にし、他の条件は前記の場合と同様にしてポリウレタンフォームを成形させたものを、通気性測定用の実施例3、比較例2、比較例3として作成し、表面通気性(JIS K6400−7A法)及び内部側通気性(JIS K6400−7A法)を測定した。表面通気性用の試験片は、ポリウレタンフォーム表面から10mmの厚みにカットして、51×51×10mmの寸法にし、一方、内部側通気性の試験片は、成形したポリウレタンフォームの厚み方向の中央の位置でカットして、同じ寸法の形状の測定用試験片を準備し、測定に用いた。なお、通気性測定用の実施例3は表面に被膜層が存在するため、表面通気性の測定は被膜層表面の通気性測定となる。一方、通気性測定用の比較例2及び比較例3は、何れも表面に被膜層が存在しないため、表面通気性の測定は被膜層の無い表面に対する通気性測定となる。
【0039】
表面通気性は実施例3が7L/minであったのに対し、比較例2は15L/min、比較例3は36L/minであった。また内部側通気性は実施例3が23L/minであったのに対し、比較例2は22L/min、比較例3は36L/minであった。さらに表面通気性と内部側通気性の差は実施例3が16L/minであったのに対し、比較例2は7L/min、比較例3は0L/minであった。
【0040】
このように、本発明によれば、表面の滑りが良好で空隙に挿入し易く、かつ遮音性が良好な遮音材が得られる。