(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137811
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20170522BHJP
F21S 8/12 20060101ALI20170522BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20170522BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20170522BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20170522BHJP
F21W 101/10 20060101ALN20170522BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170522BHJP
【FI】
F21S8/10 531
F21S8/12 151
F21V29/503
F21V29/76
F21V29/83
F21W101:10
F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-255914(P2012-255914)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-103060(P2014-103060A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】八田 貞治
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 一郎
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−017205(JP,A)
【文献】
特開平11−238402(JP,A)
【文献】
特開2000−251507(JP,A)
【文献】
特開2006−261045(JP,A)
【文献】
特開平09−306204(JP,A)
【文献】
米国特許第6619828(US,B2)
【文献】
米国特許第8021031(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
F21V 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成された灯室内に、少なくとも固定部材上に固定した光源と、該光源からの光を反射させるリフレクタと、前記光源からの光の一部を遮蔽するフードを収容して成る車両用灯具において、
前記固定部材は、背面に複数の放熱フィンを設けたベースプレートから前方に向かって水平に延びており、
前記光源は、上側に向かって光を照射する上側LEDと、下側に向かって光を照射する下側LEDとを、前記固定部材の上下面にそれぞれ配置し、
前記リフレクタは、前記上側LEDの上方に配置された上側リフレクタと、前記下側LEDの下方に配置された下側リフレクタとが一体に形成されており、
前記上側リフレクタには、前記上側LED付近に焦点を有する反射面が設けられ、
前記下側リフレクタには、前記下側LED付近に焦点を有する反射面が設けられ、
前記フードは、前記上側LEDの後方に位置する後縁から前方に延びる上壁と、当該上壁の前縁から下方に延びる前壁を少なくとも備えており、
前記フードの前壁は、前記上側LED及び前記下側LEDと前記レンズとの間に位置するとともに、複数の通気孔を横方向に間隔をあけて形成しており、
前記通気孔の隣接する通気孔間には、縦方向の薄い放熱フィンが横方向に複数形成されている
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記フードと前記リフレクタとを一体に構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直射光による幻惑を防ぐために光源からの光の一部を遮蔽するフードを備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両のヘッドランプ等においても、光源として省電力で高寿命であるLEDが使用されてきているが、LEDは指向性が強いため、その直射光によって歩行者や対向車のドライバーに幻惑(眩しさ)を与える可能性がある。
【0003】
そこで、
図6に示す車両用灯具101のように、灯室104内に設置されたヒートシンク109の固定部109cの上下面に固定されたLED105,106のうち、特に上側のLED105からの直射光を遮蔽するためのフード110を設けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。尚、
図6に示す車両用灯具101において、102はハウジング、103はハウジング102の前面開口部を覆うレンズ、107,108は各LED105,106からの光を車両前方(
図6の左方)に向けて反射させるためのリフレクタである。
【0004】
斯かる車両用灯具101において、例えば上下2つのLED105,106が同時に起動されてこれらが発光すると、その光は各リフレクタ107,108でそれぞれ反射して車両前方(
図6の左方)へと向かい、レンズ103を透過して出射することによって車両前方の照明に供される。そして、この場合、上側のLED105からの直射光はフード110によって遮蔽されるため、この直射光が歩行者や対向車のドライバーに与える幻惑が軽減される。
【0005】
又、LED105,106の発光によって発生する熱は、ヒートシンク109へと伝導し、該ヒートシンク109によって灯室104内に放熱されるため、LED105,106の異常昇温が防がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−040322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図6に示す従来の車両用灯具101においては、フード110の前壁110bが完全に閉じられているため、LED105,106の発熱によって灯室104内に発生する対流がフード110によって制限され、フード110によって囲まれたLED105,106の周囲の空間に気流の一部が流れ込むことがない。このため、LED105,106の周囲の空間に熱気が滞留し、LED105,106が効果的に冷却されないために該LED105,106の温度上昇を低く抑えることができないという問題がある。因みに、LED105,106は、それらの温度が上昇すると発光効率と寿命が低下するという欠点を有している。
【0008】
本発明は上記観点に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、灯室内の対流を促進して光源の温度上昇を抑えることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成された灯室内に、少なくとも固定部材上に固定した光源と、該光源からの光を反射させるリフレクタと、前記光源からの光の一部を遮蔽するフードを収容して成る車両用灯具において、
前記固定部材は、背面に複数の放熱フィンを設けたベースプレートから前方に向かって水平に延びており、
前記光源は、上側に向かって光を照射する上側LEDと、下側に向かって光を照射する下側LEDとを、前記固定部材の上下面にそれぞれ配置し、
前記リフレクタは、前記上側LEDの上方に配置された上側リフレクタと、前記下側LEDの下方に配置された下側
リフレクタとが一体に形成されており、
前記上側リフレクタには、前記上側LED付近に焦点を有する反射面が設けられ、
前記下側リフレクタには、前記下側LED付近に焦点を有する反射面が設けられ、
前記フードは、前記上側LEDの後方に位置する後縁から前方に延びる上壁と、当該上壁の前縁から下方に延びる前壁を少なくとも備えており、
前記フードの前壁は、前記上側LED及び前記下側LEDと前記レンズとの間に位置するとともに、複数の通気孔を横方向に間隔をあけて形成しており、
前記通気孔の隣接する通気孔間には、縦方向の薄い放熱フィンが横方向に複数形成されている
ことを特徴とする。
【0011】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明において、前記フードと前記リフレクタとを一体に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、フードに複数の通気孔を形成したため、LEDの発熱によって灯室内に発生する対流がフードによって制限されず、フードによって囲まれたLEDの周囲の空間に気流の一部がフードの通気孔を通過して流れ込む。このため、光源の周囲の空間に熱気が滞留することがなく、灯室内の対流が促進されて灯室内の温度が均一化され、光源が効果的に冷却されてその温度上昇が低く抑えられる。
【0013】
又、請求項1記載の発明によれば、フードの隣接する通気孔の間に形成された放熱フィンによって光源の周囲の熱が効果的に放熱されるため、光源の温度上昇が更に効果的に抑えられる。
【0014】
請求項
2記載の発明によれば、フードとリフレクタとを一体化することによって、部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る車両用灯具の正面図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は
図1のB部拡大詳細図、
図4は
図3のC−C線断面図、
図5は
図3のD−D線断面図であり、図示の車両用灯具1は車両前部に配置されるヘッドランプである。
【0018】
図示の車両用灯具1は、
図2に示すように、ハウジング2とその前面開口部を覆うレンズ3によって画成される灯室4内に、光源である上下2つのLED5,6と、各LED5,6からの光を反射させる上下2つのリフレクタ7,8と、LED5,6が発生する熱を灯室4内に放熱させるためのヒートシンク9と、上側のLED5からの直射光を遮蔽するフード10を収容して構成されている。
【0019】
上記ハウジング2は、光不透過性の樹脂によって有底筒状に一体成形されており、その前面開口部の周縁には前方に向かって開口する嵌合溝2aが形成されている。又、前記レンズ3は、光透過性の透明な樹脂によって椀状に一体成形されており、その開口部の周縁に後方に向かって一体に突設された脚部3aがハウジング2の前面開口部の周縁に形成された前記嵌合溝2aに前方から嵌め込まれ、その嵌め込み部がホットメルト等の接着剤11によって接着されることによって当該レンズ3がハウジング2に固定され、このレンズ3によってハウジング2の前面開口部が覆われている。
【0020】
前記ヒートシンク9は、熱伝導性の高いアルミダイカスト等によって一体成形されており、これには垂直なベースプレート9aと、該ベースプレート9aの背面に横方向(
図2の紙面垂直方向)に適当な間隔で垂直に立設された矩形プレート状の複数の放熱フィン9bと、ベースプレート9aの正面中間高さ位置から前方に向かって水平に延びる固定部9cが設けられている。そして、このヒートシンク9の固定部9cの上下面には前記LED5,6がそれぞれ固定されている。
【0021】
前記リフレクタ7,8は、
図2に示すように、灯室4内のLED5,6の上方と下方にそれぞれ配置されており、本実施の形態では、これらのリフレクタ7,8と前記フード10とは熱伝導性の高いアルミダイキャストによって一体成形されている。ここで、上下の各リフレクタ7,8は、各LED5,6の付近にそれぞれ焦点を有する放物面系の反射面7a,8aをそれぞれ備えており、各反射面7a,8aにはアルミ蒸着等の反射処理がそれぞれ施されている。
【0022】
又、リフレクタ7,8と一体に構成された前記フード10は、縦断面コの字状(チャンネル状)に成形されており、その上壁10aの端縁は上側のLED5まで後方に延びている。そして、このフード10の垂直な前壁10bには、
図1、
図3及び
図4に示すように、縦方向に長いスリット状の通気孔12が横方向(
図1の左右方向)に適当な間隔で複数形成されるとともに、隣接する通気孔12の間には縦方向の薄い放熱フィン13が適当な間隔で横方向に複数形成されている。
【0023】
以上のように構成された車両用灯具1において、例えば上下2つのLED5,6が同時に起動されてこれらが発光すると、その光は各リフレクタ7,8の反射面7a、8aでそれぞれ反射して車両前方(
図2の左方)へと向かい、レンズ3を透過して出射することによって車両前方の照明に供される。そして、この場合、上側のLED5からの直射光はフード10によって遮蔽されるため、この直射光が歩行者や対向車のドライバーに与える幻惑が軽減される。
【0024】
又、LED5,6の発光によって発生する熱は、ヒートシンク9へと伝導し、該ヒートシンク9の複数の放熱フィン9bから灯室4内に放熱されるため、LED5,6の異常昇温が防がれる。
【0025】
而して、本実施の形態に係る車両用灯具1おいては、フード10の前壁10bに複数の通気孔12を形成したため、LED5,6の発熱によって灯室4内に発生する対流がフード10によって制限されず、フード10によって囲まれたLED5,6の周囲の空間に気流の一部が
図2に矢印にて示すようにフード10の通気孔12を通過して流れ込む。このため、LED5,6の周囲の空間に熱気が滞留することがなく、灯室4内の対流が促進されて灯室4内の温度が均一化され、LED5,6が効果的に冷却されてその温度上昇が低く抑えられる。この結果、各LED5,6の発光効率の低下が防がれて所定の照射光量が確保されるとともに、LED5,6の寿命が高められる。
【0026】
又、本実施の形態においては、フード10の前壁10bの隣接する通気孔12の間に放熱フィン13を形成したため、これらの放熱フィン13によってLED5,6の周囲の熱が効果的に放熱される。このため、LED5,6の温度上昇が更に効果的に抑えられる。
【0027】
更に、本実施の形態では、フード10とリフレクタ7,8とを一体に構成したため、部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができるという効果が得られる。
【0028】
尚、以上は本発明を車両のヘッドランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。又、以上の実施の形態では、本発明を光源としてLEDを使用する車両用灯具に対して適用した形態について説明したが、本発明は、光源としてバルブを使用する車両用灯具に対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2a ハウジングの嵌合溝
3 レンズ
3a レンズの脚部
4 灯室
5,6 LED(光源)
7,8 リフレクタ
7a,8a リフレクタの反射面
9 ヒートシンク
9a ヒートシンクのベースプレート
9b ヒートシンクの放熱フィン
9c ヒートシンクの固定部
10 フード
10a フードの上壁
10b フードの前壁
11 接着剤
12 通気孔
13 放熱フィン