特許第6137815号(P6137815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6137815-吸水処理材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137815
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】吸水処理材
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A01K1/015 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-262064(P2012-262064)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-103961(P2014-103961A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年5月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148977
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
(72)【発明者】
【氏名】畑中 忍
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−101714(JP,A)
【文献】 特開平10−271931(JP,A)
【文献】 特開2004−000133(JP,A)
【文献】 特開昭62−221444(JP,A)
【文献】 特開2005−087125(JP,A)
【文献】 特開2001−346466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収する吸水処理材であって、
粒状芯部と、
前記粒状芯部を覆うように設けられ、接着性材料を含有する被覆層部と、を備え、
前記粒状芯部は、オカラのみ、又は、前記オカラと水溶性もしくは水解性の材料との混合物のみからなり、
前記水溶性もしくは水解性の材料は、澱粉類、CMC、PVA又は吸水性ポリマーであり、
当該吸水処理材における前記被覆層部の占める割合は、10重量%以下であることを特徴とする吸水処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸水処理材において、
前記粒状芯部における前記オカラの含有率は、90重量%以上である吸水処理材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や動物の尿その他の液体を吸収する吸水処理材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸水処理材の一種である排泄物処理材が記載されている。この排泄物処理材においては、粒状芯部と、それを覆う被覆層部とが設けられている。被覆層部は、使用時に尿等の液体を吸収した排泄物処理材どうしを付着させて塊状にする機能(塊状化機能)を有する。かかる被覆層部は、接着性材料を含んで構成されている。
【特許文献1】特開2006−333773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように被覆層部に接着性材料を含有させることにより、塊状化機能を高めることができる。しかしながら、その反面、使用後の吸水処理材を水洗トイレに流して処分する場合には、水解(水と接触することにより、結合した繊維や粒子が速やかに分離し、水中に分散すること)しにくいという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水洗トイレに流して処分するのに適した吸水処理材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による吸水処理材は、液体を吸収する吸水処理材であって、粒状芯部と、上記粒状芯部を覆うように設けられ、接着性材料を含有する被覆層部と、を備え、当該吸水処理材における上記被覆層部の占める割合は、10重量%以下であることを特徴とする。
【0006】
この吸水処理材において、接着性材料を含有する被覆層部が占める割合は、10重量%以下である。このように吸水処理材の水解を妨げる被覆層部の割合を小さくすることにより、使用後の吸水処理材を水洗トイレに流して処分する場合に、水解し易くすることができる。
【0007】
上記粒状芯部は、オカラを含有していてもよい。オカラは水解し易い材料であるため、吸水処理材の水解性を向上させることができる。
【0008】
上記粒状芯部における上記オカラの含有率は、90重量%以上であることが好ましい。この場合、オカラの含有率が高くなるため、特に優れた水解性を発揮する吸水処理材が得られる。
【0009】
上記粒状芯部は、上記オカラと共に、水溶性又は水解性の材料を含有していてもよい。この場合、吸水処理材の水解性を妨げることなく、吸水処理材に様々な機能をもたせることができる。
【0010】
上記粒状芯部における上記材料の含有率は、10重量%以下であることが好ましい。この場合、オカラの含有率を高くすることが可能なため、特に優れた水解性を発揮する吸水処理材を得ることができる。
【0011】
上記材料は、澱粉類、CMC、PVA又は吸水性ポリマーであってもよい。これらの材料は、充分な水溶性又は水解性を有するので、吸水処理材の水解性を妨げないという点で好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水洗トイレに流して処分するのに適した吸水処理材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明による吸水処理材の実施形態について詳細に説明する。
[構成]
【0015】
図1は、本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。吸水処理材1は、猫や犬等の愛玩動物用の排泄物処理材であり、粒状芯部10、及び被覆層部20を備えている。吸水処理材1における被覆層部20の占める割合は、10重量%以下(好ましくは5重量%以上10重量%以下)である。
【0016】
粒状芯部10は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はない。粒状芯部10の形状としては、例えば、柱状体(細長形)、扁平形等が考えられる。粒状芯部10を構成する材料(芯部材料)としては、例えば、オカラを用いることができる。
【0017】
粒状芯部10は、上記オカラと共に、水溶性又は水解性の材料を含有していてもよい。かかる材料としては、例えば、澱粉類、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)又は吸水性ポリマーを用いることができる。澱粉類としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉若しくはデキストリン、又はこれらをα化したものが挙げられる。粒状芯部10におけるオカラの含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。また、粒状芯部10における水溶性又は水解性の材料の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0018】
被覆層部20は、粒状芯部10を覆っている。被覆層部20は、粒状芯部10の表面の全体を覆っていてもよいし、粒状芯部10の表面の一部のみを覆っていてもよい。被覆層部20は、接着性材料22を含有しており、使用時に尿等の液体を吸収した吸水処理材1どうしを付着させて塊状にする機能を有する。被覆層部20を構成する材料(被覆材料)としては、例えば、接着性材料22及び紙粉の混合物を用いることができる。接着性材料22、紙粉及びオカラの混合物を用いてもよい。被覆層部20における接着性材料22の占める割合は、例えば40重量%とすることができる。
【0019】
接着性材料22としては、公知の各種の物質を用いることができ、例えば、糊料、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、吸水性樹脂等が存在する。具体的には、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0020】
紙粉としては、例えば、薄葉紙、薄葉紙廃材、衛生用紙、衛生用紙廃材、トイレットペーパー用紙、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー用紙、ティッシュペーパー廃材、化粧紙用紙、化粧紙廃材、ちり紙用紙、ちり紙廃材、紙綿、紙綿廃材、紙タオル、紙タオル廃材、便座シート廃材、機械パルプ、機械パルプ廃材、化学パルプ、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ、綿状パルプ廃材、木材パルプ、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、吸水性樹脂を含む紙粉、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、衛生材料製造時に発生する紙粉等を用いることができる。これらの2種類以上の材料を混合して使用してもよい。何れも、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下の粒度の粒状物に粉砕されて使用される。
[作用効果]
【0021】
吸水処理材1において、接着性材料22を含有する被覆層部20が占める割合は、10重量%以下である。このように吸水処理材1の水解を妨げる被覆層部20の割合を小さくすることにより、使用後の吸水処理材1を水洗トイレに流して処分する場合に、水解し易くすることができる。このように、本実施形態によれば、水洗トイレに流して処分するのに適した吸水処理材1が実現される。
【0022】
さらに、吸水処理材1の全体に占める被覆層部20の割合が小さいことにより、被覆材料の使用量を節約し、それにより製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
吸水処理材1の全体に占める被覆層部20の割合を5重量%以上とすることにより、充分な塊状化機能を維持することができる。したがって、当該割合を5重量%以上10重量%以下とした場合、充分な塊状化機能と優れた水解性とを両立することが可能な吸水処理材1が実現される。
【0024】
粒状芯部10にオカラを含有させた場合、オカラは水解し易い材料であるため、吸水処理材1の水解性を向上させることができる。
【0025】
粒状芯部10におけるオカラの含有率を90重量%以上とした場合、オカラの含有率が高くなるため、特に優れた水解性を発揮する吸水処理材1が得られる。
【0026】
オカラと共に、水溶性又は水解性の材料を粒状芯部10に含有させた場合、吸水処理材1の水解性を妨げることなく、吸水処理材1に様々な機能をもたせることができる。
【0027】
粒状芯部10における上記材料の含有率を10重量%以下とした場合、オカラの含有率を高くすることが可能なため、特に優れた水解性を発揮する吸水処理材1を得ることができる。
【0028】
上記材料として、澱粉類、CMC、PVA又は吸水性ポリマーを用いた場合、これらの材料は、充分な水溶性又は水解性を有するので、吸水処理材1の水解性を妨げないという点で好ましい。
【0029】
[製造方法]
吸水処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、造粒工程、被覆工程、分粒工程、及び乾燥工程を含んでいる。
【0030】
造粒工程においては、芯部材料を破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された芯部材料を所定の割合でミキサーに投入して混ぜ合わせる。そして、加水した後、当該芯部材料を造粒機によって押出造粒する。これにより、粒状芯部10が得られる。
【0031】
被覆工程においては、コーティング装置等を用いて、粒状芯部10の周囲に、接着性材料22を含む被覆材料を付着させる。被覆材料の付着は、例えば、散布又は噴霧により行うことができる。このとき、製造後の吸水処理材1において被覆層部20が占める割合が10重量%以下になるようにする。これにより、被覆層部20を形成する。
【0032】
分粒工程においては、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された吸水処理材を通過させることにより、所定の規格を満たす吸水処理材のみを抽出する。
【0033】
乾燥工程においては、前工程で抽出された吸水処理材を乾燥機で乾燥させる。乾燥により、粒状芯部10の含水率を適宜調整することにより、粒状芯部10の水分が被覆層部20に遷移して吸水能力が低下してしまうのを防ぐとともに、吸水処理材1の保存時にカビ等が発生するのを防ぐことができる。
【0034】
なお、乾燥工程の後に、香料添加工程を実行してもよい。この工程においては、吸水処理材1の袋詰めに用いられる包装袋内に、香料が入れられる。香料は、例えば、空気と共に包装袋内に噴射される。かかる空気の噴射は、包装袋を拡開するために行われるものである。この工程は、吸水処理材1を包装袋に詰める工程(袋詰め工程)よりも先に行われることが好ましい。
【0035】
上記香料は包装袋内で吸水処理材1に付着するため、芳香性を有する吸水処理材1が得られる。このように包装袋内に香料を入れることにより、それよりも前の工程において製造装置に香料が付着するのを防ぐことができる。したがって、製造後の装置の清掃が容易になる。
【0036】
香料が空気と共に包装袋内に噴射される場合、包装袋内に空気を噴射するための装置と別に、包装袋内に香料を入れるための装置を設ける必要がない。そのため、製造設備の複雑化を回避しつつ、芳香性を有する吸水処理材1を得ることができる。
【0037】
香料添加工程が袋詰め工程よりも先に行われる場合、包装袋内の全体に香料が行き渡った状態で吸水処理材1を詰めることができる。そのため、包装袋内の複数の吸水処理材1に万遍なく香料を付着させ易くなる。
【0038】
また、香料を包装袋内に噴射しているため、香料を包装袋の外で噴射する場合(例えば、包装袋に詰められる前の吸水処理材1に噴射する場合)に比べて、無駄になる香料の量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 吸水処理材
10 粒状芯部
20 被覆層部
22 接着性材料
図1