【実施例】
【0130】
ポリマー合成
実施例1. ポリ(ビニルエーテル)ランダムコポリマー
A. アミン含有モノマーの組み込みのためのビニルエーテルモノマー
2-ビニルオキシエチルフタルイミドを、2-クロロエチルビニルエーテル(25g、0.24mol;CAS #110-75-8)およびフタルイミドカリウム(25g、0.135mol;CAS #1074-82-4)を100℃のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、75ml)中、相転移触媒として臭化テトラn-ブチルアンモニウム(0.5g;CAS #1643-19-2)を用いて反応させることにより調製した。この溶液を6時間加熱し、次いで水中で粉砕し、ろ過した。次いで、この固体をメタノールから2回再結晶して、白色結晶を得た。
【0131】
B. 水溶性、両親媒性、膜活性ポリ(ビニルエーテル)ポリアミンターポリマーの合成
Xmol%アミン保護ビニルエーテル(例えば、2-ビニルオキシエチルフタルイミド)を乾燥器で乾燥した丸底フラスコの窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン中に加える。この溶液に
Ymol%低級疎水性基(例えば、プロピル、ブチル)ビニルエーテルおよび任意に
Zmol%高級疎水性基(例えば、ドデシル、オクタデシル)ビニルエーテルを加える(
図1)。溶液を-50から-78℃の浴に入れ、2-ビニルオキシエチルフタルイミドを沈澱させる。この溶液に10mol%BF
3・(OCH
2CH
3)
2を加え、-50から-78℃で2〜3時間反応を進行させる。メタノール中の水酸化アンモニウム溶液を加えて重合を停止する。ポリマーを減圧下で乾燥し、次いで1,4-ジオキサン/メタノール(2/1)に加える。フタルイミドに対し20mol当量のヒドラジンを加えて、アミンから保護基を除去する。溶液を3時間還流し、次いで減圧下で乾燥する。得られた固体を0.5mol/L HClに溶解し、15分間還流してポリマーの塩酸塩を生成し、蒸留水で希釈し、さらに1時間還流する。次いで、溶液をNaOHで中和し、室温(RT)まで冷却し、分子セルロースチューブに移し、蒸留水に対して透析し、凍結乾燥する。ポリマーをサイズ排除または他のクロマトグラフィを用いてさらに精製することもできる。ポリマーの分子量を、分析用サイズ排除クロマトグラフィおよび多角光散乱によるサイズ排除クロマトグラフィ(SEC-MALS)を含む、標準的手順によりカラムを用いて推定する。
【0132】
C. DW1360の合成
アミン/ブチル/オクタデシルポリ(ビニルエーテル)ターポリマーを、2-ビニルオキシエチルフタルイミド(5g、23.02mmol)、ブチルビニルエーテル(0.665g、6.58mmol)、およびオクタデシルビニルエーテル(0.488g、1.64mmol)モノマーから合成した。2-ビニルオキシエチルフタルイミドを、磁気撹拌子を含む乾燥器で乾燥した200mL丸底フラスコのアルゴン雰囲気下、36mLの無水ジクロロメタン中に加えた。この溶液にブチルビニルエーテルおよびn-オクタデシルビニルエーテルを加えた。モノマーを室温(RT)で完全に溶解し、澄明な均質溶液を得た。次いで、澄明溶液を含む反応容器を、ACS等級の変性アルコールおよびエチレングリコールの1:1溶液にドライアイスを加えて作った-50℃の浴に入れ、フタルイミドモノマーの目に見える沈澱を形成させた。約1.5分間冷却した後、BF
3・(OCH
2CH
3)
2(0.058g、0.411mmol)を加えて、重合反応を開始した。フタルイミドモノマーは重合開始後に溶解した。-50℃で3時間反応を進行させた。メタノール中1%水酸化アンモニウム5mLを加えて重合を停止した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。
【0133】
次いで、ポリマーを30mLの1,4-ジオキサン/メタノール(2/1)に溶解した。この溶液にヒドラジン(0.147g、46mmol)を加え、混合物を3時間加熱還流した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションで除去し、次いで得られた固体を20mLの0.5mol/L HClに加え、15分間還流し、20mLの蒸留水で希釈し、さらに1時間還流した。次いで、この溶液をNaOHで中和し、RTまで冷却し、分子量3,500のセルロースチューブに移し、蒸留水に対して24時間(2×20L)透析し、凍結乾燥した。
【0134】
示したビニルエーテルモノマーを含むポリマーを記載しているが、本発明はこれらの特定のモノマーに制限されることはない。
【0135】
D. 水溶性、両親媒性、膜活性ポリ(アクリラート)ポリアミンターポリマーの合成
ポリ(アクリラート)およびポリ(メチルアクリラート)ヘテロポリマーを一般的なフリーラジカル反応スキームを用いて合成してもよい(本明細書において用いられるポリ(メタクリラート)ポリアミンはポリ(アクリラート)ポリアミン属の亜属である):
式中、Rは独立に水素またはメチル基であり、Xはポリマー中に所望の比で存在する所望のモノマー側基である。
【0136】
ポリマー合成のために、適切なモノマーには下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:
BOC保護アミン含有モノマー(M):
式中、n=1〜4であり、BOC保護基の除去により一級アミンが生じる。
低級疎水性基モノマー(N):
式中、n=1〜5であり、1つまたは複数の炭素は不飽和であってもよい。
高級疎水性基モノマー(O):
式中、n=8〜24であり、1つまたは複数の炭素は不飽和であってもよい。
【0137】
前述のモノマーを用いて、以下の組成の膜活性ヘテロポリマーを合成することができる:Mは50〜90mol%でありえ;Nは10〜50mol%でありえ;Oは0〜10mol%でありうる。
【0138】
E. 水溶性、両親媒性、膜活性ポリ(アクリラート)ポリアミンターポリマーの合成
R、R'、およびR''は独立に水素またはメチルであり
x=2、3、または4であり
y=0、1、2、3、4、または5[メチル(C1)〜ヘキシル(C6)]であり
z=≧8の整数[デシル(C10)またはそれ以上]であり
a、b、およびdはポリマーが所望の比の前述のモノマーを有するように選択した整数である。
【0139】
Xmol%アミン保護アクリラートモノマー、
Ymol%低級疎水性基アクリラートモノマー、および任意に
Zmol%高級疎水性基アクリラートモノマーを、撹拌子を備えた反応チューブに加える。適切な溶媒(例えば、アセトニトリルまたはジオキサン)と、続いて適切な触媒(例えば、AIBN)を加え、反応混合物をN
2でパージする。次いで、反応チューブに栓をし、油浴に移し、重合させるのに十分な時間(例えば、3時間)加熱する(例えば、60℃)。粗製ポリマーを、BOC保護基の除去の前に、透析、カラムクロマトグラフィ、および沈澱を含むが、それらに限定されるわけではない、適切な手段によって精製してもよい。BOC保護基を、氷酢酸中、2M HClとの反応により除去する。BOC保護基の除去によりポリマー一級アミンおよび水溶性膜活性ポリ(アクリラート)ポリアミンを得る。次いで、ポリマーを、透析、カラムクロマトグラフィ、および沈澱を含むが、それらに限定されるわけではない、適切な手段によって精製してもよい。
【0140】
(Ant 40911-3 23-28、Ant 40911-35-2)の合成
2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN、ラジカル開始剤)、アセトニトリル、およびジオキサンはSigma Aldrichから購入した。アクリラートおよびメタクリラートモノマーをろ過して阻害剤を除去した。3-(BOC-アミノ)1-プロパノール(TCI)を塩化アクリロイル(CAS 814-68-6)と反応させて、BOC-アミノプロピルアクリラート(BAPA)を生成した。
【0141】
撹拌子を備えた2L丸底フラスコ中、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(21.1g、202.9mmol)を350mLのジクロロメタンに溶解した。別の1Lフラスコ中、無水BOC(36.6g、169.1mmol)を660mLのジクロロメタンに溶解した。2L丸底フラスコに滴加漏斗を取り付け、無水BOC溶液をフラスコに6時間かけて加えた。反応混合物を終夜撹拌した。2L分液漏斗中、生成物を各300mlの10%クエン酸、10%K
2CO
3、飽和NaHCO
3、および飽和NaClで洗浄した。生成物であるBOC保護2-(2-アミノエトキシ)エタノールをNa
2SO
4で乾燥し、重力ろ過し、ロータリーエバポレーションおよび高減圧を用いてDCMを蒸発させた。
【0142】
撹拌子を備え、アルゴンを流した、500ml丸底フラスコ中、BOC保護2-(2-アミノエトキシ)エタノール(27.836g、135.8mmol)と、続いて240mLの無水ジクロロメタンを加えた。ジイソプロピルエチルアミン(35.5ml、203.7mmol)を加え、系をドライアイス/アセトン浴に入れた。塩化アクリロイル(12.1ml、149.4mmol)を10mlのジクロロメタンを用いて希釈し、アルゴンを流した系に滴加した。系をアルゴン雰囲気下に維持し、室温に戻して、終夜撹拌した。生成物を各100mlのdH
2O、10%クエン酸、10%K
2CO
3、飽和NaHCO
3、および飽和NaClで洗浄した。生成物であるBOC-アミノエチルエトキシアクリラート(BAEEA)をNa
2SO
4で乾燥し、重力ろ過し、ロータリーエバポレーションを用いてDCMを蒸発させた。直径7.5cmのカラムを用い、29cmのシリカでのカラムクロマトグラフィにより生成物を精製した。用いた溶媒系はヘキサン中30%酢酸エチルであった。Rf:0.30。分画を集め、溶媒をロータリーエバポレーションおよび高減圧を用いて除去した。BAEEAを収率74%で得た。BAEEAをフリーザーで保存した。
【0143】
ポリマー40911-3 23-28:70%BAPA、25%メタクリル酸ブチル(CAS 97-88-1)、5%メタクリル酸オクタデシル(CAS 4813-57-4)、(3%AIBN触媒)モル供給比(合計0.0139mol)
BAPA(9.739mmol)(A)、メタクリル酸ブチル(3.478mmol)(B)、およびメタクリル酸オクタデシル(0.6957mmol)(D)を、撹拌子を備えた20mL反応チューブに加えた。アセトニトリル(16ml)と、続いてAIBN(0.4174mmol)を加えた。2回の反応を並行して行うために、前述の段階を繰り返した。反応混合物をN
2で30分間パージした。次いで、反応チューブに栓をし、油浴に移し、60℃で3時間加熱した。チューブを取り出し、内容物を合わせた。粗製ポリマーを脱イオン水中で沈澱させ、ニートトリフルオロ酢酸(40ml)と1.5時間反応させて、BOC保護基を除去し、一級アミンおよび水溶性膜活性ポリ(アクリラート)ポリアミンを生成した。200mLの脱イオンH
2O(dH
2O)を反応混合物に加え、溶液を3500MWカットオフセルロースチューブに移し、高塩に対して24時間と、次いでdH
2Oに対して18時間透析した。内容物を蒸発乾固し、100mLのdH
2Oに溶解し、凍結乾燥した。乾燥したポリマーを50%MeOH/100mMギ酸アンモニウム/0.2%ギ酸溶液に25mg/mlで溶解した。粗製ポリマー溶液(250mg、10ml)の3回の注入分を、S-200セファクリル担体で、XK50/30cmカラムを5.0ml/分の流速で用いて精製した。カラムを充填し、製造者の指示に従って用いた。(GE Healthcare、説明書56-1130-82 Al、52-2086-00 AH)。ポリマー溶出はShimadzu RID-10A屈折率コレクターを用いて検出した。23分から28分までの分画を集め、各注入ごとに合わせた。溶媒を蒸発させ、精製したポリマーを2回凍結乾燥した。
【0144】
ポリマーAnt 40911-35-2:80%BAEEA、15%メタクリル酸ブチル、5%アクリル酸オクタデシル、(3%AIBN触媒)モル供給比(合計0.013913mol)
BAEEA(A)(11.13mmol)、メタクリル酸ブチル(B)(2.086mmol)、およびアクリル酸オクタデシル(D)(0.6957mmol)を、撹拌子を備えた20mL反応チューブに加えた。ジオキサン(16ml)と、続いてAIBN(0.4174mmol)を加えた。2回の反応を並行して行うために、前述の段階を繰り返した。反応混合物をN
2で30分間パージした。次いで、反応チューブに栓をし、油浴に移し、60℃で3時間加熱した。チューブを取り出し、内容物を合わせた。ジオキサンをロータリーエバポレーションおよび高減圧により蒸発させ、粗製ポリマーを89.8%ジクロロメタン/10%テトラヒドロフラン/0.2%トリエチルアミン溶液に70mg/mlで溶解した。粗製ポリマー溶液(700mg、10ml)の3回の注入分を、Jordi gelジビニルベンゼン10
4Åカラム(内径:22mm、長さ:500mm)を5.0ml/分の流速で用いて精製した。ポリマー溶出はShimadzu RID-10A屈折率コレクターを用いて検出した。15.07分〜17.13分の分画を集めて合わせた。溶媒をロータリーエバポレーションにより蒸発させた。
【0145】
約10mgのポリマーを0.5mLの89.8%ジクロロメタン、10%テトラヒドロフラン、0.2%トリエチルアミンに溶解した。分子量および多分散性(PDI)を、Jordi 5μ 7.8×300 Mixed Bed LS DVBカラムを用い、Shimadzu Prominence HPLCに連結したWyatt Helos II多角光散乱検出器を用いて測定した。分子量172,000およびPDI 1.26を得た。
【0146】
精製したBOC保護ポリマーをニートトリフルオロ酢酸(7ml)と1.5時間(または氷酢酸中2M HClと0.5時間)反応させて、BOC保護基を除去し、アミンを生成した。40mLのdH
2Oを反応混合物に加え、溶液を3500MWカットオフセルロースチューブに移し、高塩に対して24時間と、次いでdH
2Oに対して18時間透析した。内容物を蒸発乾固し、20〜30mLのdH
2Oに溶解し、2回凍結乾燥した。ポリマー溶液を2〜8℃で保存した。
【0147】
アミンをポリマーの骨格に連結する炭素原子の数およびリンカーが分枝しているかどうかは、アミンのpKaおよびアミン付近の立体効果に影響をおよぼす。例えば、前述のポリマーについて、エチルアミンは約8.1のpKaを有し、プロピルアミンは約9.3のpKaを有し、ペンチルアミンは約10.2のpKaを有する。アミンのpKaまたはアミン付近の立体効果は、アミンに結合しているマスキング基の不安定性に影響をおよぼす。無水マレイン酸のアミンへの可逆的結合について、アミン結果のより高いpKaはアミンからの無水物のより遅い放出速度である。同様に、イソプロピルリンカーによるなどの、アミン付近の立体障害増大は、アミンのpKaを増大させうる。
【0148】
ポリマーLau 41305-38-17-19:80%BAPA、20%メタクリル酸エチル(CAS 97-63-2)、(3%AIBN触媒)モル供給比(合計0.0105mol)
BAPA(A)(8.40mmol)およびメタクリル酸エチル(B)(2.10mmol)を、撹拌子を備えた15mL反応チューブに加えた。アセトニトリル(11.5ml)と、続いてAIBN(0.315mmol)を加えた。2回の反応を並行して行うために、前述の段階を繰り返した。反応混合物をN
2で30分間パージした。次いで、反応チューブに栓をし、油浴に移し、60℃で3時間加熱した。チューブを取り出し、内容物を合わせた。アセトニトリルをロータリーエバポレーションおよび高減圧により蒸発させ、粗製ポリマーを74.8%ジクロロメタン/25%テトラヒドロフラン/0.2%トリエチルアミン溶液に50mg/mlで溶解した。粗製ポリマー溶液(500mg、10ml)の3回の注入分を、Jordi gelフッ化ジビニルベンゼン10
4Åカラム(内径:22mm、長さ:500mm)を5.0ml/分の流速で用いて精製した。ポリマー溶出はShimadzu RID-10A屈折率コレクターを用いて検出した。17.16分〜19.18分の分画を集めて合わせた。溶媒をロータリーエバポレーションにより蒸発させた。精製したBOC保護ポリマーを氷酢酸中2M HCl(7ml)と1.5時間反応させて、BOC保護基を除去し、アミンを生成した。40mLのdH
2Oを反応混合物に加え、溶液を3500MWカットオフセルロースチューブに移し、高塩に対して24時間と、次いでdH
2Oに対して18時間透析した。内容物を蒸発乾固し、30mLのdH
2Oに溶解し、2回凍結乾燥した。
【0149】
F. (保護)アミンモノマー、低級疎水性基モノマー、および高級疎水性基オクタデシル基から合成した同様のポリマーも、記載する発明の実施において有効であると予想される。
【0150】
ポリマー特徴付け
実施例2. DW1360の特徴付け
A. 両親媒性分析
1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン(DPH、Invitrogen)蛍光(λ
ex=350nm;λ
em=452nm)は疎水性環境で増強される。この蛍光を用いてDW1360ポリマーを分析した。0.5μM(最終濃度)DPHを0.5mLの50mM HEPES緩衝液、pH8.0中10μgのDW1360に加えた。次いで、DPHの蛍光を測定することにより、溶液を疎水性環境におけるDPH蓄積について試験した。結合体存在下でのDPH蛍光の増大は、ポリマーによる疎水性環境の形成を示す。
【0151】
B. 分子量
ポリマー分子量(質量)(MW)を、バッチモードでのoptilab rEXと一緒にWyatt Dawn Heleos IIで分析して求めた。ポリマーを様々な濃度で適切な溶媒に加え、それぞれをWyattシステムにロードした。次いで、Astraソフトウェアで濃度の関数としての屈折率の変化を計算し(dn/dc)、これをZimmプロットで用いてMWを計算した。精製したDW1360について求めた平均分子量は4000〜6000Daであった。精製したアクリラートポリマーの平均分子量は約100〜120kDaであった。
【0152】
C. 分粒およびゼータ電位
ポリマーのゼータ電位をMalvern Zetasizerナノシリーズ(Nano ZS)機器を用いて測定した。CDMマスクポリマーのゼータ電位は0から-30mVの間で変動し、0から-20mVの間がより多かった。ゼータ電位は残留HEPESでpH8に緩衝化した等張グルコース中で測定した。pH7では、結合体はアミンの一部のプロトン化によりいくらかの正電荷を獲得すると予想される。
【0153】
D. CDM試薬修飾後の結合体中のアミン基の定量
DW1360ポリマーを前述のとおりに合成し、続いて14重量当量のHEPES塩基および7重量当量のCDM-NAGとCDM-PEGとの重量比2:1の混合物(平均11単位)で処理した。1時間後、無水マレイン酸誘導体処理した結合体のアミン含量を、100mM NaHCO
3中のトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)で処理することにより測定した。マレイン酸修飾していない結合体に対して規準化すると、修飾アミンの量は全体の約75%であると定量された。この修飾の程度は加える無水マレイン酸の量を変えるか、または反応条件を変更することで変動しうる。
【0154】
E. リポソーム溶解
10mgの卵ホスファチジルコリンを、100mMカルボキシフルオレセイン(CF)および10mM HEPES、pH7.5を含む緩衝液1mLで水和した。次いで、リポソームを孔径100nmのポリカーボネートフィルター(Nucleopore, Pleasanton, CA)を通して押し出した。捕捉されていないCFを、Sepharose 4B-200を用い、pH8の10mM HEPESおよび0.1mol/L NaClで溶出するサイズ排除クロマトグラフィにより除去した。一定量200μLのCFロードリポソームを等張緩衝液1.8mLに加えた。小胞懸濁液に0.25μgのポリマーを加えた30分後、蛍光(
λex=488、
λem=540)を測定した。各実験終了時に、1%Triton X-100溶液40μlを加えて小胞を破壊し、最大溶解を判定した。
【0155】
ポリマーマスキング剤
実施例3. マスキング剤
A. 2-プロピオン酸-3-メチル無水マレイン酸マスキング剤前駆体(カルボキシジメチル無水マレイン酸またはCDM)の合成
無水テトラヒドロフラン50mL中の水素化ナトリウム(0.58g、25mmol)の懸濁液に2-ホスホノプロピオン酸トリエチル(7.1g、30mmol)を加えた。水素ガスの発生停止後、無水テトラヒドロフラン10mL中の2-オキソグルタル酸ジメチル(3.5g、20mmol)を加え、30分間撹拌した。次いで、水10mLを加え、テトラヒドロフランをロータリーエバポレーションにより除去した。得られた固体と水との混合物をエチルエーテル3×50mLで抽出した。エーテル抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、淡黄色油状物を得た。油状物をシリカゲルクロマトグラフィで、エーテル:ヘキサン=2:1で溶出して精製し、4g(収率82%)の純粋なトリエステルを得た。次いで、このトリエステルを、水酸化カリウム4.5g(5当量)を含む水およびエタノールの50/50混合物50mLに溶解することにより、2-プロピオン酸-3-メチル無水マレイン酸を生成した。この溶液を1時間加熱還流した。次いで、エタノールをロータリーエバポレーションにより除去し、溶液を塩酸でpH2まで酸性化した。次いで、この水溶液を酢酸エチル200mLで抽出し、分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、白色固体を得た。次いで、この固体をジクロロメタンおよびヘキサンから再結晶して、2g(収率80%)の2-プロピオン酸-3-メチル無水マレイン酸を得た。
【0156】
CDMを塩化オキサリルによりその酸塩化物に変換し、続いてチオール、エステル、またはアミンおよびピリジンを加えることにより、CDMからチオエステル、エステル、およびアミドを合成してもよい。CDMおよびその誘導体は、標的化リガンド、立体安定化部分、荷電基、および他の反応性基で、当技術分野において標準の方法により、容易に修飾される。得られた分子を用いて、アミンを可逆的に修飾することができる。
【0157】
マスキング剤をCDMの修飾により合成して、好ましくは電荷中性物質を生成する:
式中、R1はASGPr標的化リガンドまたは立体安定化部分(例えば、PEG)である。
【0158】
B. ASGPr標的化基を含むマスキング剤
最も広く研究された肝実質細胞標的化リガンドはガラクトースに基づいており、これは肝実質細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPr)によって結合される。ガラクトースまたはガラクトース誘導体の結合は、オリゴ糖のキトサン、ポリスチレン誘導体、およびポリアクリルアミドHPMAを含む、少数の水溶性が高く、非荷電のポリマーの肝実質細胞標的化を促進することが明らかにされている。ASGPr標的化基は、ラクトース、すなわちガラクトース-グルコース二糖を用い、グルコース残基の修飾を介して、容易に生成される。ラクトビオン酸(LBA、グルコースが酸化されてグルオン酸となっている、ラクトース誘導体)は、標準のアミドカップリング技術を用いて、無水マレイン酸に容易に組み込まれる。
【0159】
C. 立体安定化部分CDM-PEGおよび標的化基CDM-NAG(N-アセチルガラクトサミン)合成
塩化メチレン50mL中のCDM(300mg、0.16mmol)の溶液に塩化オキサリル(2g、10重量当量)およびジメチルホルムアミド(5μl)を加えた。反応を終夜進行させ、その後過剰の塩化オキサリルおよび塩化メチレンをロータリーエバポレーションにより除去して、CDM酸塩化物を得た。酸塩化物を塩化メチレン1mLに溶解した。この溶液に、塩化メチレン10mL中の、CDM-PEGについてはポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MW平均550)またはCDM-NAGについては(アミノエトキシ)エトキシ-2-(アセチルアミノ)-2-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシド(すなわち、アミノビスエトキシル-エチルNAG)1.1モル当量、およびピリジン(200μl、1.5当量)を加えた。次いで、溶液を1.5時間撹拌した。次いで、溶媒を除去し、得られた固体を水5mLに溶解し、0.1%TFA水/アセトニトリル勾配を用いての逆相HPLCにより精製した。
【0160】
好ましくは、5から20のエチレン単位を含むPEGを二置換無水マレイン酸に結合する。より好ましくは、10〜14のエチレン単位を含むPEGを二置換無水マレイン酸に結合する。PEGは様々な長さのものであってもよく、5〜20または10〜14エチレン単位の平均長を有する。または、PEGは、例えば、ちょうど11または13のエチレン単位を有する、単分散、均一または離散型であってもよい。
【0161】
上に示すとおり、PEGスペーサーは無水物基とASGPr標的化基との間に位置してもよい。好ましいPEGスペーサーは1〜10のエチレン単位を含む。
【0162】
可逆的ポリマー修飾
実施例4. 膜活性ポリアミンの可逆的修飾/マスキング;すなわち、膜活性ポリマーのCDM-NAGまたはCDM-NAGプラスCDM-PEGの混合物による修飾
等張グルコース中の膜活性ポリアミン(例えば、前述のDW1360)xmgの溶液にHEPES遊離塩基14xmgと、続いてCDM-NAG 7xmgまたはCDM-NAG 2.3xmgおよびCDM-PEG 4.6xmgの混合物のいずれか、合計7xの二置換無水マレイン酸マスキング剤を加えた。次いで、動物への投与の前に、溶液を室温で少なくとも30分間インキュベートした。CDM-NAGまたはCDM-PEGのポリアミンとの反応により下記を得た:
式中、Rはポリマーであり、R1はASGPr標的化部分または立体安定化部分を含む。無水物とポリマーアミンとの間の反応において生じた無水物カルボキシルは、予想された電荷の約1/20を示した(Rozema et al. Bioconjugate Chemistry 2003)。したがって、膜活性ポリマーは、高度に負に荷電したポリアニオンに変換されるのではなく、有効に中和される。
【0163】
siRNA結合体
実施例5. RNAiポリヌクレオチド-標的化部分結合体
A. siRNA-疎水性物質結合体
様々な疎水性基をsiRNA分子の3'または5'末端に、当技術分野において標準の技術を用いて共有結合した。
【0164】
B. siRNA-GalNAcクラスター結合体
GalNAcクラスターを、3つのGalNAc PEG
3基をジリシン分枝点上のアミンに結合することにより作成した。次いで、ジリシン上のカルボキシル基をsiRNAなどのRNAiポリヌクレオチドへの共有結合のために利用可能である。
【0165】
インビボsiRNA送達
実施例6. インビボでのRNAiポリヌクレオチドの投与、および肝実質細胞への送達
RNAiポリヌクレオチド結合体およびマスクしたポリマーを前述のとおりに合成した。6から8週齢のマウス(C57BL/6またはICR系統、それぞれ約18〜20g)をHarlan Sprague Dawley(Indianapolis IN)から入手した。マウスを注射前に少なくとも2日間収容した。給餌はHarlan Teklad Rodent Diet(Harlan, Madison WI)で適宜行った。RNAiポリヌクレオチド結合体およびマスクしたポリマーを前述のとおりに合成した。マウスに送達ポリマーの溶液0.2mLおよびsiRNA結合体0.2mLを尾静脈に注射した。ポリマーおよびsiRNAの同時注射のために、注射前にsiRNA結合体を修飾ポリマーに加え、全量0.4mlを注射した。組成物は生理的条件において可溶性かつ非凝集性であった。ポリマーおよびsiRNAを別々に注射するために、ポリマーを製剤溶液0.2mL中で注射し、siRNAを等張グルコース0.2mL中で注射した。溶液を尾静脈内への注入により注射した。他の血管への注射、例えば、眼窩後注射も等しく有効であった。
【0166】
血清ApoBレベル判定
マウスを4時間(ラットの場合は16時間)絶食させた後、顎下出血により血清を採取した。血清ApoBタンパク質レベルを標準のサンドイッチELISA法により求めた。簡単に言うと、ポリクローナルヤギ抗マウスApoB抗体およびウサギ抗マウスApoB抗体(Biodesign International)を、それぞれ捕捉および検出抗体として用いた。HRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Sigma)を後で適用し、ApoB/抗体複合体を結合した。次いで、テトラメチル-ベンジジン(TMB、Sigma)発色の吸光度をTecan Safire2(Austria, Europe)マイクロプレート読み取り器により450nmで測定した。
【0167】
血漿第VII因子(F7)活性測定
マウスからの血漿試料を、標準の手順に従い、0.109mol/Lクエン酸ナトリウム抗凝固剤(1体積)を含むマイクロ遠沈管への顎下出血により血液(9体積)を採取して調製した。血漿中のF7活性を、BIOPHEN VIIキット(Hyphen BioMed/Aniara, Mason, OH)を製造者の推奨に従って用いる発色法により測定する。発色の吸光度をTecan Safire2マイクロプレート読み取り器を用いて405nmで測定した。
【0168】
実施例7. siRNA-疎水性物質結合体をマスクしたDW1360送達ポリマーと同時投与して用いる、インビボでのsiRNAの肝実質細胞への送達
siRNAおよび送達ポリマーを、示した用量のsiRNAおよびポリマーを用い、前述のとおりに調製し、投与した。
【0169】
A. インビボでの肝実質細胞へのRNAiポリヌクレオチド送達
siRNA-コレステロール結合体およびマスクしたDW1360送達ポリマーの同時投与は、血清ApoBタンパク質レベルの低下を引き起こし、siRNAの肝実質細胞への送達およびapoB遺伝子発現の阻害を示していた。効率的な送達は、送達ポリマーおよびRNAiポリヌクレオチドへのコレステロール結合の両方を必要とした(表1、
図2)。5mg/kgまでの非結合siRNAでは有意なノックダウンは観察されなかった。さらに、疎水性基はsiRNAの5'または3'末端のいずれかに結合することができた。
【0170】
(表1)siRNA-疎水性物質結合体プラスDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン、siRNA結合体用量の効果
a等張グルコース溶液を注射した対照群(n=3)に対するノックダウンパーセント。
bICRマウス
【0171】
B. 肝実質細胞へのRNAiポリヌクレオチド送達に対する疎水性基サイズの効果
DW1360送達ポリマーの同時投与を用いての、siRNAの肝実質細胞への効率的送達は、siRNAが約20個またはそれ以上の炭素原子を有する疎水性基に結合していることが必要であった(表2、
図3)。炭素原子20個未満の疎水性標的化部分を有するsiRNA-疎水性物質結合体は、段々と効率が低くなる機能的送達を示した。6個またはそれ以下の炭素を有する疎水性物質標的化部分は無効であった。送達効率は、炭素原子20個を超える疎水性物質標的化部分のサイズを増大することにより、有意に改善されることはなかった。
【0172】
(表2)siRNA-疎水性物質結合体プラスDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン-疎水性基サイズの効果
a等張グルコース溶液を注射した対照群(n=3)に対するノックダウンパーセント。
bsiRNAに結合した疎水性基における炭素原子の数
cC57BL/6マウス
【0173】
C. 肝実質細胞へのsiRNA-疎水性物質結合体送達に対するsiRNA用量の効果
インビボでの標的遺伝子発現のノックダウンはsiRNA用量に依存する。マウスの治療において、1.25mg/kgを超えるsiRNA用量の投与はインビボでの標的遺伝子ノックダウンを改善しなかった(表3、
図4)。しかし、0.25mg/kgという低い用量は、送達ポリマーと同時投与した場合に、マウスにおける標的遺伝子発現の有意なノックダウンを提供した。
【0174】
(表3)siRNA-疎水性物質結合体プラスDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン-siRNA用量の効果
a等張グルコース溶液を注射した対照群(n=3)に対するノックダウンパーセント。
bC57BL/6マウス
【0175】
D. インビボでの標的遺伝子発現のノックダウンは送達ポリマー用量に依存する
マウスの治療において、約12.5mg/kgの送達ポリマーの投与は、標的遺伝子阻害によって明示されるとおり、最大またはほぼ最大のRNAiポリヌクレオチド送達を提供した(表4、
図5)。標的遺伝子のノックダウンはポリマー用量によって影響を受ける。過剰のsiRNA結合体は十分な送達のためのポリマー非存在下では標的遺伝子ノックダウンを改善しなかった。
【0176】
(表4)siRNA-疎水性物質結合体プラスDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン-送達ポリマー用量の効果
a等張グルコース溶液を注射した対照群(n=3)に対するノックダウンパーセント。
bICRマウス
cC57BL/6マウス
【0177】
E. 逐次投与
RNAiポリヌクレオチド-疎水性物質標的化部分結合体および送達ポリマーを動物に逐次投与してもよい。RNAiポリヌクレオチド-疎水性標的化部分結合体に対し、RNAi結合体を送達ポリマーの投与前30分以内に投与してもよい。同様に、RNAiポリヌクレオチド-疎水性標的化部分結合体に対し、送達ポリマーをRNAi結合体の投与前2時間以内に投与してもよい(表5)。
【0178】
(表5)siRNA-疎水性物質結合体プラスDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン-siRNAおよびポリマーの逐次投与の効果
a等張グルコース溶液を注射した対照群(n=3)に対するタンパク質パーセント。
【0179】
F. 膜活性ポリ(アクリラート)送達ポリマー
可逆的にマスクした両親媒性膜活性ポリ(アクリラート)ポリアミンは有効な送達ポリマーとして機能する。ポリ(アクリラート)ポリマーを前述のとおりに調製し、DW1360送達ポリマーについて記載したとおりに、マウスにsiRNA-コレステロール結合体と同時投与した。ポリ(アクリラート)送達ポリマーは、血清ApoB低下によって示されるとおり、インビボで肝実質細胞へのsiRNAの送達を促進する上で有効であった(表6)。効率的な送達は、送達ポリマーおよびRNAiポリヌクレオチドへのコレステロール結合の両方を必要とした。
【0180】
(表6)siRNA-疎水性物質結合体プラスマスクしたポリ(アクリラート)送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン
【0181】
G. RNAiポリヌクレオチド-疎水性物質結合体の肝臓への送達はLDL受容体またはリポタンパク質受容体関連タンパク質のいずれにも依存しなかった
第VII因子siRNA-コレステロール結合体およびマスクしたDW1360送達ポリマーの同時投与は、LDL受容体ノックアウトマウスおよびリポタンパク質受容体関連タンパク質/LDL受容体二重ノックアウトマウスにおいて血清第VII因子タンパク質レベルの低下を引き起こした。したがって、siRNA-コレステロールは、LDL粒子、LDL受容体またはリポタンパク質受容体関連タンパク質以外の手段によって肝実質細胞に標的化させられる(表7)。
【0182】
(表7)siRNA-コレステロール結合体プラスDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン;siRNA送達におけるLDL受容体およびリポタンパク質受容体関連タンパク質の効果
aタンパク質相対パーセント
【0183】
H. 凍結乾燥ポリ(ビニルエーテル)試料
保存および輸送を改善するために、送達ポリマーを凍結乾燥しうるかどうかを試験するために、溶液中の送達ポリマーを凍結し、凍結乾燥器の高減圧下に置いた。16時間後、試料は結晶性粉末となり、これを次いで脱イオン水の添加により再度溶解した。再度溶解したポリマー試料にsiRNA(5'コレステロールapoB)を加え、試料を注射した。凍結乾燥は送達ポリマーに対して有害な影響を示さなかった。
【0184】
ガラクトースクラスター標的化siRNA
実施例8. siRNA-ガラクトースクラスター結合体をマスクしたDW1360送達ポリマーと同時投与して用いる、インビボでのsiRNAの肝実質細胞への送達
siRNAおよび送達ポリマーを、示した用量のsiRNAおよびポリマーを用い、前述のとおりに調製し、投与した。
【0185】
A. siRNA-ガラクトースクラスター結合体およびマスクしたDW1360送達ポリマーの同時投与
siRNA-ガラクトースクラスター結合体およびマスクしたDW1360送達ポリマーの同時投与は、血清ApoBタンパク質レベルの低下を引き起こし、siRNAの肝実質細胞への送達およびapoB遺伝子発現の阻害を示していた。効率的な送達は、送達ポリマーおよびRNAiポリヌクレオチドへのガラクトースクラスター結合の両方を必要とした(表8)。5mg/kgまでの非結合siRNAでは有意なノックダウンは観察されなかった。前述の疎水性物質結合体siRNAと同様に、最大阻害の開始は約12.5mg/kgの送達ポリマー用量で得られる。同時投与した送達ポリマー非存在下では標的遺伝子ノックダウンは観察されなかった。ガラクトースクラスター-siRNA結合体はそれ自体では活性を示さなかった。
【0186】
(表8)siRNA-GalNAcクラスター結合体プラス送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン、ポリマー用量の効果
a動物体重1キログラムあたりのsiRNAまたはポリマーmg
bタンパク質相対%
【0187】
B. siRNA-ガラクトースクラスター対siRNA-ガラクトースモノマー
送達ポリマーと同時投与した場合の、インビボでの肝実質細胞へのsiRNAの機能的送達は、RNAi干渉ポリヌクレオチドに結合した三分岐ガラクトース標的化部分を必要とした。単一のガラクトース分子をsiRNAに結合した場合は、標的遺伝子ノックダウンは観察されなかった(表9)。GalNPr(N-プロピオニルガラクトサミン)ガラクトース誘導体は、GalNAc(N-アセチルガラクトサミン)よりも高いASGPr親和性を有することが公知で、効率的送達のための三分岐ガラクトースクラスターの必要性をさらに示している。
【0188】
(表9)siRNA-GalNAcクラスター結合体プラス送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン;三価対一価ガラクトースRNA結合体
a動物体重1キログラムあたりのsiRNAまたはポリマーmg
bタンパク質相対%
cN-プロピオニルガラクトサミンモノマー
dN-アセチルガラクトサミンクラスター(トリマー)
【0189】
C. ガラクトース誘導体、PEG、またはガラクトース誘導体プラスPEGによるポリマーの修飾の効果
siRNA-ガラクトースクラスターおよび送達ポリマーを、下記以外は前述のとおりに調製した:送達ポリマーはN-アセチルガラクトサミン単独、PEG単独、またはN-アセチルガラクトサミンプラスPEGのいずれかでマスクした。次いで、siRNAおよび送達ポリマーをマウスに前述のとおりに投与した。次いで、血液試料をマウスから採取し、ApoBレベルを求めるために検定した。ガラクトースおよびPEGはいずれも最適な送達のために必要であった。膜活性ポリマーをガラクトースおよびPEGの両方で修飾することにより、ガラクトース単独で修飾したポリマーと同じ効果を達成するのに半分のsiRNA用量しか必要でなかった。ポリマーのPEG単独での修飾は、ガラクトース単独またはガラクトースプラスPEGで修飾したポリマーに比べて、siRNA送達の低減を引き起こした。
【0190】
(表10)siRNA-GalNAcクラスター結合体プラス送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン;ポリマー修飾の効果
a動物体重1キログラムあたりのsiRNAまたはポリマーmg
bタンパク質相対%
【0191】
D. siRNA-標的化部分結合体および送達ポリマーの同時投与後の配列特異的遺伝子ノックダウンの時間経過
siRNAおよび送達ポリマーを、前述のとおりに調製し、マウスに投与した。次いで、血液試料をマウスから指定の時点で採取し、ApoBレベルを求めるために検定した。ApoBレベルは、72時間後の対照レベルの3%に達するまで徐々に低下することが観察された。したがって、最大の標的遺伝子ノックダウンは約3日後に起こりうる。タンパク質レベルの最大低下の開始におけるこの遅延は、最大のRNAiポリヌクレオチド送達または遺伝子ノックダウンに必要な時間よりも、ApoBタンパク質を排出または分解するのに必要な時間を反映していると考えられる。
【0192】
(表11)siRNA-GalNAcクラスター結合体プラス送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン;標的遺伝子ノックダウンの時間経過
a動物体重1キログラムあたりのsiRNAまたはポリマーmg
bタンパク質相対%
【0193】
E. siRNA-ガラクトースクラスター結合体および送達ポリマーの逐次注射
指定の量のsiRNA-ガラクトースクラスター結合体および送達ポリマーを、前述のとおりに調製し、マウスに投与した。次いで、血液試料をマウスから採取し、ApoBレベルを求めるために検定した。ガラクトースクラスターにより肝臓に標的化させたsiRNAにおいて、最適な送達はsiRNAおよび送達ポリマーの一斉投与で観察された。有意なsiRNA送達は、siRNA結合体をポリマー投与後15分以内に投与した場合に観察された。siRNA結合体を送達ポリマーの前(15分以内)に投与した場合には、わずかな送達しか観察されなかった。
【0194】
(表12)siRNA-GalNAcクラスター結合体プラス送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン;一斉投与および別々の投与
【0195】
F. ガラクトースクラスター標的化リガンドとRNAiポリヌクレオチドとの間のPEGリンカーの挿入
siRNA-ガラクトースクラスター結合体を、ガラクトースクラスターとsiRNAとの間にPEGスペーサー、PEG
19もしくはPEG
24を挿入して、またはガラクトースクラスターとsiRNAとの間にPEGスペーサーなしのいずれかで調製した。次いで、siRNA結合体を送達ポリマーと同時投与した。PEGスペーサーの挿入は、遺伝子ノックダウンにより判定して、siRNAの肝実質細胞への送達を改善しなかった。
【0196】
PEGスペーサーなしのガラクトースクラスター;カルボキシル基を通じてsiRNAに結合された標的化リガンド
【0197】
PEGスペーサーを有するガラクトースクラスター;カルボキシル基を通じてsiRNAに結合された標的化リガンド
【0198】
(表13)siRNA-GalNAcクラスター結合体プラス送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子のノックダウン;RNA結合体におけるPEGリンカーの効果
a動物体重1キログラムあたりのsiRNAまたはポリマーmg
bタンパク質相対%
【0199】
実施例9. インビボでのsiRNAの霊長類肝実質細胞への送達
RNAiポリヌクレオチド結合体およびマスクしたポリマーを、前述のとおりに合成した。
【0200】
アカゲザル(3.9kg雄)に、1.0mg/mlのコレステロール-siApoBおよび7.5mg/mlの7×重量比のCDM-PEG:CDM-NAG(2:1)で修飾したDW1360を含む溶液7.8mLをI.V.注射し、最終用量2mg/kgのコレステロール-siApoBおよび15mg/kgのDW1360を投与した。もう1匹のアカゲザル(4.5kg雄)に、等張グルコースを注射し、対照とした。
【0201】
血清ApoBレベル判定
血清ApoBタンパク質レベルを経過中モニターした。霊長類を血清採取の前に4時間絶食させた。血清ApoBタンパク質レベルを標準のサンドイッチELISA法で求めた。簡単に言うと、ポリクローナルヤギ抗マウスApoB抗体およびウサギ抗マウスApoB抗体(Biodesign International)を、それぞれ捕捉および検出抗体として用いた。HRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Sigma)を後で適用し、ApoB/抗体複合体を結合した。次いで、テトラメチル-ベンジジン(TMB、Sigma)発色の吸光度をTecan Safire2(Austria, Europe)マイクロプレート読み取り器により450nmで測定した。結果を表14に示す。コレステロール-siApoB siRNAを投与したアカゲザルは、経時的に血清ApoBレベルの低下を示し、第-1日の投与前レベルに比べて、注射後第15日に76%の最大ノックダウンに達した。ApoBレベルは第50日に第-1日の投与前レベル近くに回復した。対照動物では血清ApoBレベルの低下は観察されなかった。
【0202】
(表14)第1日に対して規準化した血清ApoBレベル
【0203】
実施例10. 2つの遺伝子の一斉ノックダウン
2つの独立遺伝子、apoBおよび第VII因子へのsiRNA-コレステロール結合体、ならびにマスクしたDW1360送達ポリマーの同時投与は、両方の遺伝子の一斉阻害を引き起こした。組成物を前述のとおりにマウスに投与した。(表15)。
【0204】
(表15)2つの異なるsiRNA-疎水性物質結合体プラス400μgのDW1360送達ポリマー注射後のインビボでの標的遺伝子2個の一斉ノックダウン
a等張グルコース溶液を注射した対照群(n=3)に対するノックダウンパーセント
【0205】
毒性評価
実施例11. 毒性
送達システムの潜在的毒性を、肝酵素およびサイトカインの血清レベルを測定することにより評価した。対照siRNAまたはapoB-1 siRNA結合体を投与したマウスでは、食塩水処置マウスに比べて、注射の48時間後にALTおよびASTレベルのわずかな上昇が検出された。しかし、上昇したレベルは有意ではなく(p<0.05)、肝切片の組織検査からは肝毒性の徴候は見られなかった。同様に、ELISAを用いての血清中のTNF-αおよびIL-6レベルの分析により、siRNA-ポリマー結合体の注射の6時間後にいずれもわずかに上昇したことが明らかとなった。いずれのレベルも48時間までに基準線まで戻った。マウスまたはラットの最小有効用量で統計学的に有意な毒性は測定されなかった。これらの結果は、標的化送達システムが十分に耐容されることを示している。
【0206】
実施例12.
siRNAは以下の配列を有していた:
小文字=2'-O-CH
3置換
s=ホスホロチオアート連結
ヌクレオチドの後のf=2'-F置換
ヌクレオチドの前のd=2'-デオキシ
【0207】
実施例13. GalNAcクラスターの合成
A. {2-[2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-酢酸ベンジルエステル
2-[2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エトキシ]-エタノール(62.2g、414mmol)をアルゴン雰囲気下で無水DMF 875mLに溶解し、0℃に冷却した。NaH(12.1g、277mmol、鉱油中55%)を注意深く加え、氷浴を取り除き、撹拌を80℃で1時間続けた。反応混合物を周囲温度まで冷却し、ブロモ酢酸(18.98g、137mmol)をDMF溶液(20ml)として滴加漏斗より加えて処理した。75℃でさらに30分後、ブロモメチル-ベンゼン(23.36g、137mmol)をニートで加え、エステル化を30分間進行させた。冷却し、砕氷上に注意深く加え、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、すべての溶媒を蒸発させた後、フラッシュクロマトグラフィ(SiO
2、酢酸エチル/ヘプタン=8/2)により、6.41gの表題化合物を黄色油状物で得た。MS (ISP): 299.2 [M+H]
+。
【0208】
B. 酢酸(3aR,5R,6R,7R,7aR)-6-アセトキシ-5-アセトキシメチル-2-メチル-5,6,7,7a-テトラヒドロ-3aH-ピラノ[3,2-d]オキサゾル-7-イルエステル
市販の酢酸(2S,3R,4R,5R,6R)-4,5-ジセトキシ-6-アセトキシメチル-3-アセチルアミノ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルエステル(10.0g、26mmol)を無水CH
2Cl
2 116mLに溶解し、トリメチルシリルトリフラート(14.27g、64mmol)で処理した。反応を45℃で終夜進行させた。0℃まで冷却した後、トリエチルアミン(4.88ml、35mmol)を加え、混合物をCH
2Cl
2で希釈し、NaHCO
3溶液および水で洗浄した。Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を蒸発させて、10.3gの表題化合物を褐色油状物で得、これをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。MS (ISP): 330.0 [M+H]
+。
【0209】
C. (2-{2-[2-((2R,3R,4R,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-アセトキシメチル-3-アセチルアミノ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルオキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エトキシ)-酢酸ベンジルエステル
上で調製した酢酸(3aR,5R,6R,7R,7aR)-6-アセトキシ-5-アセトキシメチル-2-メチル-5,6,7,7a-テトラヒドロ-3aH-ピラノ[3,2-d]オキサゾル-7-イルエステル(10.3g、26mmol)および{2-[2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-酢酸ベンジルエステル(8.62g、29mmol)を520mLのCH
2Cl
2中で溶解し、4オングストロームモレキュラーシーブス63gで処理した。1時間後、トリメチルシリルトリフラート(6.13g、28mmol)を加えた。反応混合物を周囲温度で週末の間撹拌した。トリエチルアミン(5.21ml、37mmol)を加え、モレキュラーシーブスをろ去し、ろ液をCH
2Cl
2で希釈し、NaHCO
3溶液および水で洗浄した。Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を蒸発させた後、フラッシュクロマトグラフィ(SiO
2、酢酸エチル/AcOH/MeOH/水=60/3/3/2)により、15.7gの表題化合物を褐色油状物で得た。MS (ISP): 626.6 [M-H]
-。
【0210】
D. (2-{2-[2-((2R,3R,4R,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-アセトキシメチル-3-アセチルアミノ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルオキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エトキシ)-酢酸
上で調製した(2-{2-[2-((2R,3R,4R,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-アセトキシメチル-3-アセチルアミノ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルオキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エトキシ)-酢酸ベンジルエステル(15.7g、25mmol)を酢酸エチル525mLに溶解し、1.6gのPd/C(10%)で、1atmのH
2雰囲気下、周囲温度で3時間水素添加した。セライトを通してろ過し、溶媒を蒸発させた後、フラッシュクロマトグラフィ(SiO
2、CH
2Cl
2/MeOH=80/20)により、6.07gの表題化合物を褐色ゴムで得た。MS (ISP): 536.5 [M-H]
-。
【0211】
E. GalNAcクラスターベンジルエステル
上で調製した(2-{2-[2-((2R,3R,4R,5R,6R)-4,5-ジアセトキシ-6-アセトキシメチル-3-アセチルアミノ-テトラヒドロ-ピラン-2-イルオキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エトキシ)-酢酸(2.820g、5.246mmol)および(S)-6-アミノ-2-((S)-2,6-ジアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸ベンジルエステル塩酸塩(調製は下記参照、0.829g、1.749mmol)をCH
2Cl
2 32mLおよびDMF 3.2mLの混合物に溶解し、ヒューニッヒ塩基(2.096ml、12.25mmol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(0.714g、5.248mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.006g、5.248mmol)で逐次処理し、周囲温度で終夜撹拌した。すべての揮発性物質を減圧中で除去し、粗製反応混合物を調製用HPLC(38回、Gemini、5
μ、C18)で精製し、凍結乾燥後に1.650gの表題生成物を白色粉末で得た。MS (ISP): 1945.8 [M+Na]
+。NMR (600 MHz、DMSO)。
【0212】
F. GalNAcクラスター遊離酸
(17S,20S)-1-((2R,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジアセトキシ-6-(アセトキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)-20-(1-((2R,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジアセトキシ-6-(アセトキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)-11-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザヘキサデカン-16-イル)-17-(2-(2-(2-(2-((2R,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジアセトキシ-6-(アセトキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)アセトアミド)-11,18-ジオキソ-3,6,9-トリオキサ-12,19-ジアザヘニコサン-21-酸
上で調製したGalNAcクラスターベンジルエステル(0.674g、0.350mmol)をMeOH 50mLに溶解し、0.065gのPd/C(10%)で、1atmのH
2雰囲気下、周囲温度で4時間水素添加した。セライトを通してろ過し、溶媒を蒸発させて、0.620gの表題化合物を白色泡状物で得た。MS (ISP): 1917.0 [M+2H]
2+。NMR (600 MHz、DMSO)。
【0213】
実施例14. (S)-6-アミノ-2-((S)-2,6-ジアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸ベンジルエステル塩酸塩
必須の構築ブロックである(S)-6-アミノ-2-((S)-2,6-ジアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸ベンジルエステル塩酸塩を以下のとおりに合成した。
【0214】
A. (S)-6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-ヘキサン酸ベンジルエステル
(S)-6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-ヘキサン酸(5.00g、10.67mmol)およびフェニル-メタノール(2.305g、21.34mmol)をCH
2Cl
2 25mLに溶解し、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.933g、11.74mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、2.250g、11.74mmol)、およびエチル-ジイソプロピル-アミン(2.137ml、12.49mmol)で逐次処理した。90分間撹拌した後、揮発性物質を周囲温度、減圧中で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、水、NH
4Cl溶液および食塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、蒸発させた。次いで、粗製混合物をエタノール20mLに溶解し、水10mLを加えて生成物を沈澱させた。ろ過し、乾燥して、5.669gの表題化合物を得、これをエタノール/ヘキサンから再結晶して、4.27gの純粋なベンジルエステルを得た。MS (ISP): 559.2 [M+H]
+。
【0215】
B. (S)-2-((S)-2,6-ビス-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサン酸ベンジルエステル
上で調製した(S)-6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシ-カルボニルアミノ)-ヘキサン酸ベンジルエステル(4.270g、7.643mmol)をTHF 15mLに溶解し、ジエチルアミン15mLで処理した。周囲温度で4時間後、MSおよびTLCは出発原料がないことを示した。溶媒を蒸発させ、トルエンと共沸乾燥して、4.02gの遊離アミンを得、これを次の段階で直接用いた。
【0216】
市販の(S)-2,6-ビス-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサン酸(3.177g、9.17mmol)をCH
2Cl
2 13mLに溶解し、0℃でエチル-ジイソプロピル-アミン(4.71ml、27.5mmol)、O-(1,2-ジドロ-2-オキソ-ピリジル)--1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TPTU、2.725g、9.172mmol)ならびに、15分後、上で調製したアミンの最小限のCH
2Cl
2溶液およびエチル-ジイソプロピル-アミン1.57mL(1,2当量)で処理した。反応を周囲温度で2時間進行させた。すべての揮発性物質を減圧中で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO
3溶液、NH
4Cl溶液および水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO
2、ヘプタン/酢酸エチル=4/6)と、続いてヘプタン/最少量の酢酸エチルからの結晶化により、4.516gの表題化合物を白色固体で得た。MS (ISP): 665.4 [M+H]
+。
【0217】
C. (S)-6-アミノ-2-((S)-2,6-ジアミノ-ヘキサノイルアミノ)-ヘキサン酸ベンジルエステル3塩酸塩
上で調製した(S)-2-((S)-2,6-ビス-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサノイルアミノ)-6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキサン酸ベンジルエステル(4.516、6.793mmol)をジオキサン中4mol/L HClに溶解した。数分後、ガスが発生し、沈澱が生じた。周囲温度で3時間後、反応混合物を注意深く蒸発させ、徹底的に乾燥して、3.81gの表題化合物をオフホワイト泡状物で得、これをそれ以上精製せずに上の実施例13. E. GalNAcクラスターベンジルエステルで用いた。MS (ISP): 365.3 [M+H]
+。
【0218】
実施例15. GalNAcクラスター-siRNA結合体
A. 化合物1(150mg、0.082mmol)を無水メタノール(5.5ml)に溶解し、ナトリウムメチラート42μLを加えた(MeOH中25%溶液)。混合物をアルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した。同量のメタノールと、同時にアニオン交換材料のAmberlite IR-120を分割して加え、pH約7.0とした。Amberliteをろ過により除去した。溶液をNa
2SO
4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。化合物2を白色泡状物として定量的収率で得た。TLC(SiO
2、ジクロロメタン(DCM)/MeOH(5:1)+0.1%CH
3COOH):R
f2=0.03;検出のために、MeOH中の硫酸の溶液(5%)を用い、続いて加熱した。ESI-MS、直接注入、負モード;[M-H]
-1計算値:1452.7;[M-H]
1-測定値:1452.5。
【0219】
B. 化合物2(20mg、0.014mmol)をピリジンおよびジクロロメタンと同時蒸発させた。残渣を無水DMF(0.9ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で撹拌しながらDMF中のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の溶液(1.6mg、0.014mmol)を加えた。0℃でDMF中のN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の溶液(3.2mg、0.016mmol)をゆっくり加えた。反応混合物を室温まで加温し、終夜撹拌した。化合物3をそれ以上精製せずにRNAへの結合に用いた。
【0220】
C. アミノ修飾RNAの合成
センス鎖の5'末端にC-6-アミノリンカーを有するRNAを、AKTA Oligopilot 100(GE Healthcare, Freiburg, Germany)および固体支持体として細孔制御ガラス(controlled pore glass)を用い、1215μmolの規模で、固相上、標準のホスホラミダイト化学により産生した。2'-O-メチルヌクレオチドを含むRNAを、対応するホスホラミダイト、2'-O-メチルホスホラミダイトおよびTFA-ヘキシルアミノリンカーアミダイトを用いて生成した。切断および脱保護ならびに精製を、当技術分野において公知の方法により達成した(Wincott F., et al, NAR 1995, 23, 14, 2677-84)。
【0221】
アミノ修飾RNAをアニオン交換HPLCにより特徴付け(純度:96.1%)、同一性をESI-MSにより確認した([M+H]
1+計算値:6937.4;[M+H]
1+測定値:6939.0。配列:
;u、c:対応する塩基の2'-O-メチルヌクレオチド、s:ホスホロチオアート。
【0222】
D. GalNAcクラスターのRNAへの結合
5'末端にC-6-アミノリンカーを有するRNA(2.54μmol)を凍結乾燥し、250μLのホウ酸ナトリウム緩衝液(0.1mol/Lホウ酸ナトリウム、pH8.5、0.1mol/L KCl)および1.1mL DMSOに溶解した。8μLのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えた後、RNA溶液を持続的に撹拌しながら、これにDMF中の化合物3の溶液(理論的には0.014mmol)をゆっくり加えた。反応混合物を35℃で終夜撹拌した。反応をRP-HPLC(Resource RPC 3ml、緩衝液:A:水中100mM酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA、2.0M、pH7.0)、B:95%アセトニトリル中100mM TEAA、勾配:20CVで5%Bから22%B)を用いてモニターした。-20℃でEtOH中の酢酸ナトリウム(3M)を用いてRNAを沈澱させた後、RNA結合体を前述の条件を用いて精製した。純粋な分画を集め、所望の結合体4を酢酸ナトリウム/EtOHを用いて沈澱させ、純粋なRNA結合体を得た。結合体4を収率59%で単離した(1.50μmol)。結合体4の純度をアニオン交換HPLCで分析し(純度:85.5%)、同一性をESI-MSにより確認した([M+H]
1+計算値:8374.4;[M+H]
1+測定値:8376.0。(
図6)
【0223】
E. 結合体4(センス鎖)を2'-O-メチル-修飾アンチセンス鎖とアニールさせた。配列:
アポリポタンパク質B mRNAに向けたsiRNA結合体を、アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中の相補鎖の等モル溶液を混合し、85〜90℃の水浴中で3分間加熱し、3〜4時間の間に室温まで冷却することにより生成した。二重鎖形成を、未変性ゲル電気泳動により確認した。
【0224】
実施例16. 疎水性基-siRNA結合体
RNA合成を、AKTA Oligopilot 100(GE Healthcare, Freiburg, Germany)および固体支持体としての細孔制御ガラス(CPG)を用い、固相上、標準のホスホラミダイト化学により実施した。
【0225】
5'-C10-NHSエステル修飾センス鎖、
を、Glen Research(Virginia, USA)からの5'-Carboxy-Modifier C10アミダイトを用いて調製した。まだ固体支持体に結合している活性化合物RNAを以下の表に挙げる親油性アミンとの結合のために用いた。CfおよびUfは対応する塩基の2'-フルオロヌクレオチドであり、sはホスホロチオアート連結である。
センス鎖配列:
アンチセンス鎖配列:
【0226】
センス鎖CPG 100mg(ローディング60μmol/g、RNA 0.6μmol)を、Sigma Aldrich Chemie GmbH((Taufkirchen, Germany)またはFluka(Sigma-Aldrich, Buchs, Switzerland)から入手した対応するアミン0.25mmolと混合した。
【0227】
(表16)疎水性基-siRNA結合体生成において用いる親油性アミン
【0228】
混合物を40℃で18時間振盪した。RNAを水酸化アンモニウム水溶液(NH
3、33%)により45℃で終夜処理して、固体支持体から切断し、脱保護した。2'-保護基をTEA×3HFにより65℃で3.5時間処理して除去した。粗製オリゴヌクレオチドをRP-HPLC(Resource RPC 3ml、緩衝液:A:水中100mM TEAA、B:95%CH
3CN中100mM TEAA、勾配:15CVで3%Bから70%B、ただしNr 7だけは勾配:15CVで3%Bから100%B)により精製した。
【0229】
(表17)疎水性基-RNA結合体、RP-HPLCおよびESI-MS(負モード)による特徴付け
【0230】
RNA一本鎖からsiRNAを生成するために、等モル量の相補鎖およびアンチセンス鎖をアニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中で混合し、80℃で3分間加熱し、3〜4時間の間に室温まで冷却した。第VII因子mRNAに向けたsiRNAをゲル電気泳動により特徴付けた。