特許第6137836号(P6137836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137836
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】多価不飽和脂肪酸含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20170522BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20170522BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/6615 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/36
   A61Q19/02
   A61K47/08
   A61K9/127
   A61K31/6615
   A61K31/201
   A61K47/18
   A61P17/00
   A61K47/24
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-554856(P2012-554856)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2012051751
(87)【国際公開番号】WO2012102364
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-15331(P2011-15331)
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 直子
(72)【発明者】
【氏名】増田 健二
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/056338(WO,A1)
【文献】 特開2004−182673(JP,A)
【文献】 特開2000−210042(JP,A)
【文献】 特表2006−510591(JP,A)
【文献】 特開2007−050126(JP,A)
【文献】 特開2005−336127(JP,A)
【文献】 特開昭63−072654(JP,A)
【文献】 特開平08−104635(JP,A)
【文献】 特表平11−505818(JP,A)
【文献】 特開2010−180193(JP,A)
【文献】 特開2010−030946(JP,A)
【文献】 特開平11−001423(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093848(WO,A1)
【文献】 特許第4228230(JP,B2)
【文献】 特開平6−183954(JP,A)
【文献】 特開平2−295917(JP,A)
【文献】 石井文由,リポソームの化学,オレオサイエンス,日本,2001年,Vol. 1, No. 3,p. 275-282
【文献】 HALKS-MILLER M., et. al.,Tocopherol-phospholipid liposomes: Maximum content and stability to serum proteins.,Lipids,1985年,Vol. 20, No.3,p. 195-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/327
A61K 47/00−47/48
A61P 17/00
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び(B)成分が配合され、(A)成分及び界面活性剤が配合された連続相(ただしdl−α−トコフェロールは配合されない)に(B)成分が分散してなる、外用組成物。
(A)β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロール、酢酸dl―α―トコフェロール、酢酸―d―α―トコフェロール、及びフィチン酸及びからなる群より選択される少なくとも1種
(B)多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、及びdl−α−トコフェロールを含むリポソーム
【請求項2】
多価不飽和脂肪酸が、炭素数が18〜22の多価不飽和脂肪酸である、請求項に記載の外用組成物。
【請求項3】
連続相に少なくともフィチン酸が配合される、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
連続相に少なくともδ―トコフェロールが配合される、請求項1〜のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項5】
さらに、L-シスチン及びL-トレオニンからなる群より選ばれる少なくとも1種連続相に配合される、請求項1〜のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項6】
リポソームに、フィチン酸が配合される、請求項1〜のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項7】
界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1〜のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価不飽和脂肪酸を含有する組成物(好ましくは外用組成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
多価不飽和脂肪酸は美白効果などを期待して、外用組成物(例えば化粧品、外用医薬品等)に配合されている。しかし、多価不飽和脂肪酸は経時安定性が悪いことが知られており、組成物に含有される多価不飽和脂肪酸は経時で含有量が低下する。さらに、多価不飽和脂肪酸を配合した組成物が着色したり、異臭が発生したりする場合がある。特に、日本国においては、法令等により、多価不飽和脂肪酸を有効成分として外用組成物に配合した場合、規定量に対して製造後3年間は90%以上が安定に残存するようにする必要があるため、有効な安定化技術の開発が望まれていた。これまでに検討された多価不飽和脂肪酸の経時安定性を向上させる技術としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール、ビタミンKなどを配合する技術(特許文献1)、多価不飽和脂肪酸類をエステル化して配合する技術(特許文献2〜4)、高度不飽和脂肪酸含有脂質を含む内容物を窒素ガスが封入されたエアゾールとする技術(特許文献5)ビタミンEなどの分散剤を多価不飽和脂肪酸類に対して特定量配合したエマルションとする技術(特許文献6)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−72654号公報
【特許文献2】特開2007−126438号公報
【特許文献3】特開2007−269683号公報
【特許文献4】特開2007−269684号公報
【特許文献5】特開平8−81326号公報
【特許文献6】特表2010−502733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多価不飽和脂肪酸の経時安定性を、より高めた外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体をリポソームに含有させ、当該リポソームを分散媒(連続相)に分散させ、さらに当該連続相に、トコフェロール及びフィチン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含有させることで、優れた多価不飽和脂肪酸の経時安定性効果を有する組成物が得られることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の項に記載の組成物等を包含する。
項1.
下記(A)成分及び(B)成分を含有し、(A)成分を含む連続相に(B)成分が分散してなる、組成物。
(A)トコフェロール及びフィチン酸からなる群より選択される少なくとも1種
(B)多価不飽和脂肪酸又はその誘導体を含むリポソーム
項2.
トコフェロールが、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロール、酢酸dl―α―トコフェロール、dl―α―トコフェロール、及び酢酸―d―α―トコフェロールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の組成物。
項3−1.
多価不飽和脂肪酸が、炭素数が18〜22の多価不飽和脂肪酸である、項1又は2に記載の組成物。
項3−2.
多価不飽和脂肪酸が、二重結合を2〜6個有する多価不飽和脂肪酸である、項1〜3−1のいずれかに記載の組成物。
項4.
連続相に少なくともフィチン酸を含有する、項1〜3−2のいずれかに記載の組成物。
項5.
連続相に少なくともδ―トコフェロールを含有する、項1〜4のいずれかに記載の組成物。
項6.
さらに、L-シスチン及びL-トレオニンからなる群より選ばれる少なくとも1種を連続相に含有する、項1〜5のいずれかに記載の組成物。
項7.
リポソームにも、トコフェロール及びフィチン酸からなる群より選択される少なくとも1種が含まれる、項1〜6のいずれかに記載の組成物。
項8.
外用組成物である、項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【0007】
項A−1.
項1〜8のいずれかに記載の組成物を皮膚に適用する工程を含む、肌美白方法。
項A−2.
項1〜8のいずれかに記載の組成物を皮膚に適用する工程を含む、肌美白治療方法又は肌美白美容方法。
項B−1.
肌美白治療における使用のための、項1〜8のいずれかに記載の組成物。
項C−1.
項1〜8のいずれかに記載の組成物の、肌美白治療のための医薬の製造における使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明の外用組成物は、リポソームに含まれる多価不飽和脂肪酸の経時安定性が高い。これにより、多価不飽和脂肪酸が有する美白作用などを有効的に活用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物は、以下の(A)成分及び(B)成分を含有する。
(A)トコフェロール及びフィチン酸からなる群より選択される少なくとも1種
(B)多価不飽和脂肪酸又はその誘導体を含むリポソーム
そして、本発明の組成物は、(A)成分を含む分散媒(連続相)に(B)成分が分散してなる。つまり、本発明の組成物は分散系であり、成分(A)が分散媒に含まれており、成分(B)が分散質である。
【0010】
換言すれば、本発明の組成物は、上記(A)及び(B)成分を含有し、(A)成分を含む分散媒(連続相)に(B)成分が分散してなる、組成物である。
【0011】
本発明の組成物において、(A)成分は、少なくともリポソームを分散する連続相に含有される。また、連続相に含有されるだけでなく、リポソームにも含まれている方が好ましい。リポソームに含まれる(A)成分としてはトコフェロールがより好ましい。なお、(A)成分は、リポソーム調製時に、リン脂質や多価不飽和脂肪酸等と共に、リポソーム調製原料として用いることでリポソームへ含ませることができる。
【0012】
本発明に用いるトコフェロールは、上記連続相に含まれる場合も、リポソームに含まれる場合も、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロール、酢酸dl―α―トコフェロール、dl―α―トコフェロール、酢酸―d―α―トコフェロールからなる群より選択されることが好ましい。これらトコフェロールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。天然に存在するトコフェロールである、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、δ―トコフェロールを1種又は2種以上含有されることがより好ましい。特に、δ―トコフェロールは高い効果が得られるためトコフェロールの中で最も好ましい。
【0013】
トフェロールは、本発明の組成物の全量に対して0.005〜0.5質量%程度含有されることが好ましく、0.01〜0.1質量%程度含有されることがより好ましい。0.005質量%以上含有されることにより、本発明の効果がより一層奏されうる。また、0.5質量%以下含有される場合、効率的に効果が得られうる。(つまり、0.5質量%を超えて含有される場合は、配合量の割には奏される効果が小さい場合がありえる。)
【0014】
本発明においては、多価不飽和脂肪酸がリポソームに含まれる。本発明に用いる多価不飽和脂肪酸は、炭素数が18〜22(18、19、20、21、又は22)の多価不飽和脂肪酸が好ましい。また、二重結合を2〜6(2、3、4、5、又は6)個有する多価不飽和脂肪酸が好ましい。炭素数が18〜22で且つ二重結合を2〜6個有する多価不飽和脂肪酸がより好ましい。具体的には、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが例示される。また、本発明においては、多価不飽和脂肪酸の塩も用いることができる。例えば、多価不飽和脂肪酸ナトリウム塩、多価不飽和脂肪酸カリウム塩などの多価不飽和脂肪酸金属塩;多価不飽和脂肪酸アルギニン塩、多価不飽和脂肪酸リジン塩などの多価不飽和脂肪酸アミノ酸塩;多価不飽和脂肪酸トリエタノールアミン塩、多価不飽和脂肪酸モノエタノールアミン塩などの多価不飽和脂肪酸アミン塩;等を用いることができる。多価不飽和脂肪酸の塩の具体例としては、例えばリノール酸ナトリウム塩、α−リノレン酸カリウム塩等;リノール酸アルギニン塩、α−リノレン酸リジン塩等;リノール酸トリエタノールアミン塩、α−リノレン酸モノエタノールアミン塩等;が例示される。
【0015】
さらに、本発明においては、多価不飽和脂肪酸に代えて又は加えて、多価不飽和脂肪酸の誘導体を用いることもできる。このような誘導体としては、例えば多価不飽和脂肪酸のモノエステル及びジエステルが好ましく挙げられ、具体的には例えばリノール酸エチル、α−リノレン酸エチル、リノール酸モノグリセリド、α−リノレン酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、α−リノレン酸ジグリセリド等が例示される。
【0016】
これらのうち特に好ましいものとしては、リノール酸、α−リノレン酸、リノール酸エチル、α−リノレン酸エチル、リノール酸モノグリセリド、α−リノレン酸モノグリセリドが挙げられ、中でもリノール酸が最も好ましい。多価不飽和脂肪酸又はその誘導体は1種又は2種以上組み合わせて用いることが出来る。かかる多価不飽和脂肪酸又はその誘導体の含有量は、本発明の組成物の全量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.08〜0.2質量%がさらに好ましく、0.09〜0.11質量%がさらにより好ましい。多価不飽和脂肪酸又はその誘導体の含有量が0.01質量%以上であれば、本発明の組成物を用いることにより、美白効果がより一層効率よく得られ、一方1質量%以下であると、組成物において経時で異臭や変色が発生したり、多価不飽和脂肪酸を配合しただけの効果が得られないというおそれがより小さい。
【0017】
本発明に使用するリポソームは、レシチンを構成成分(特に膜構成成分)として含むものが好ましい。レシチンとしては、大豆レシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、卵黄レシチン、卵白レシチンなどが例示される。また、レシチンに代えて又は加えて、レシチン誘導体を用いることもできる。レシチン誘導体としては、水素添加レシチンや、前記例示のレシチン中のリン脂質にポリエチレングリコール、アミノグリカン類等を導入した化合物が例示できる。このうち、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンが好ましく、特に大豆レシチン、卵黄レシチンが好ましい。また、レシチン中に存在するリン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等)の純度を高めた精製レシチンも好ましく使用することができる。これらレシチン又はレシチン誘導体は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の組成物は、例えば、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体を含むリポソーム((B)成分)が液体の分散媒に分散してなるリポソーム分散液を製造し、さらに当該リポソーム分散液の連続相へ(A)成分を含ませることにより、製造することができる。リポソーム分散液の分散媒は通常水を用いることができる。リポソーム分散液の分散媒が水の場合において、(A)成分として難水溶性の物質(トコフェロール)を用いるときは、当該水中へ分散させてもよいし、界面活性剤をさらに加えて当該水中へ溶解させてもよい。なお、本発明において、(A)成分は、分散媒中に溶解して含まれることが好ましい。
【0019】
リポソーム分散液の製造方法は特に限定されず、常法を用いることができる。例えば、
(1)リン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他含有させる成分などを均質に混合した後、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを形成させる方法;
(2)リン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他含有させる成分をアルコール、多価アルコールなどに溶解し、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを調製する方法;
(3)超音波、フレンチプレスやホモジナイザーを用いて、リン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他内含有させる成分を水中で複合化させ、リポソームを調製する方法;
(4)エタノールにリン脂質、多価不飽和脂肪酸又はその誘導体、その他含有させる成分を混合溶解し、このエタノール溶液を塩化カリウム水溶液に添加した後にエタノールを除去しリポソームを調製する方法;
などが例示できる。
【0020】
当該リポソーム分散液には、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを配合することができる。つまり、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを材料として用いてリポソーム分散液を製造してもよい。リポソーム分散液に配合する高分子としては、例えばカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどが例示できるが、これらに限定されるものでもない。カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムが好ましく、特にキサンタンガムが好ましい。これら高分子等は1種または2種以上を組み合わせて使用できる。高分子の配合量は特に限定しないが、リポソーム分散液全体に対して0.001〜20質量%、好ましくは 0.01〜10質量%、特に好ましくは 0.05〜5質量%である。蛋白質及びその加水分解物としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン等の蛋白質、これら蛋白質の加水分解物、当該加水分解物の塩、当該加水分解物のエステル、あるいは当該加水分解物が酵素処理されたものが挙げられる。蛋白質及びその加水分解物の配合量は特に限定しないが、リポソーム分散液全体に対して0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ムコイチン硫酸、ヘパリンとその誘導体、及びそれらの塩類などが挙げられるが、特にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びこれらのナトリウム塩が好ましい。ムコ多糖の配合量は特に限定しないが、リポソーム分散液全体に対して0.0005〜5質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
【0021】
本発明の組成物は、上記の通り、リポソーム分散液の連続相へ(A)成分を含ませることで製造することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分以外の成分もリポソーム分散液の連続相へ含ませてもよい。
【0022】
例えば、上述したように、リポソーム分散液の分散媒が水であり、(A)成分として難水溶性の物質(トコフェロール)を用いるときは、界面活性剤をさらに加えて当該分散液の連続相(つまり、分散媒である水)へ溶解させることができる。
【0023】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル活性剤などが挙げられ、中でもヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノリノール酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステルなどのヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これら界面活性剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、L-シスチン及び/又はL-トレオニンをリポソーム分散液の連続相に含ませて(好ましくは溶解させて)用いることができる。L-シスチン及びL-トレオニンは、“(A)成分及び(B)成分を含有し、(A)成分を含む連続相に(B)成分が分散してなる、組成物”において用いることにより、さらに多価不飽和脂肪酸の安定性を高める効果を奏するため、好ましい。
【0025】
本発明で用いるL-シスチン、L-トレオニン(「L−スレオニン」ともいう)は、単独であるいは二種を組み合わせて用いることができるが、二種を組み合わせて含有するとより高い効果が得られるため、好ましい。かかるL-シスチン及びL-トレオニンは、本発明の組成物の全量に対して0.0001〜0.2質量%であることが好ましく、0.0005〜0.1質量%がより好ましく、0.001〜0.06質量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明を外用組成物として用いる場合、さらに、通常外用組成物の製造に用い得る成分を用いる(リポソーム分散液の連続相に含ませる)こともできる。このような成分としては、保湿剤、水溶性高分子、油成分、着色剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、香料、紫外線吸収・散乱剤、抗酸化剤、薬効成分などが例示できる。
【0027】
保湿剤としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどに代表される多価アルコール類、高分子多糖類、植物抽出エキス、微生物代謝物などが挙げられる。これら保湿剤は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
水溶性高分子としては、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸パルメス−25)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸セテス−20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12−22))コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマー、寒天、ペクチン、ジェランガム、ゼラチン、粘土鉱物などが挙げられる。これら水溶性高分子は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
油成分としては、動物油、植物油、鉱物油、炭化水素油、エステルオイル、ワックス類、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油及びその誘導体、ワセリン、精油などが挙げられる。これら油成分は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、本発明を外用組成物として用いる場合、リポソームの調製において、本発明の効果を損なわない範囲で、通常リポソームに含ませ得る成分を用いることもできる。例えば、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマーなどの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオール等が例示される。
【0031】
本発明の組成物は、外用組成物(皮膚に適用する組成物)として用いることが好ましい。外用組成物としては、例えば医薬組成物、医薬部外品組成物、及び化粧品組成物が例示される。特に、肌の美白効果を有する外用組成物(すなわち、美白用外用組成物)として、医薬品や医薬部外品、化粧品として使用することが好ましい。剤形としては、特に限定するものではないが、フェイスパック、ペースト、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、乳液、美容液、化粧水、スプレー剤などが挙げられる。
【0032】
本発明の組成物を外用組成物として用いる場合、適用対象は特に限定されないが、好ましくは肌の美白を望むヒトである。
【0033】
また、本発明は、上記本発明の組成物を対象の皮膚に適用する工程を含む、肌を美白にする方法(肌美白方法)も含む。当該方法は、例えば治療目的及び美容目的で用いられ得る。すなわち、当該肌美白方法は、肌美白治療方法及び肌美白美容方法を包含する。ここでの美白方法は、具体的には、例えばシミやくすみ、肝斑、炎症後色素沈着などの治療又は美容のために用いることができる。なお、適用対象や適用量は上述した通りである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。
【0035】
多価不飽和脂肪酸の経時安定性試験
特開平11−1423の実施例3の方法に準じて、リノール酸含有リポソームの分散液の調製を行った。具体的には、大豆レシチン、リノール酸およびdl―α―トコフェロールを1,3−ブチレングリコールに均質に混合し、これに精製水を加え、フレンチプレスで処理してリポソーム分散液(リノール酸含量0.5%又は1.0%)を調製した。なお、当該リポソーム分散液全量に対して、大豆レシチンは4質量%、dl―α―トコフェロールは0.05質量%、1,3−ブチレングリコールは4質量%含まれるように、それぞれを調製時に用いた。
【0036】
そして、下記表1に示した処方の通り、各成分を混合して、各組成物(各実施例及び比較例)を製造した。なお、表1における「その他の成分」は何れの例においても同じものを用いた。「その他の成分」の内訳を表2に示す。また、表1及び表2の各成分の数値は配合量(質量%)を示す。
【0037】
比較例1は、トコフェロール及びフィチン酸は配合せず、L-シスチン及びL-トレオニンのみを配合した例である。また、比較例2は、トコフェロール又はフィチン酸の代わりに、抗酸化性があることが知られている油溶性甘草エキスを配合した例である。
【0038】
また、各組成物を製造後40℃で2ヶ月間放置し、組成物中のリノール酸量を定量し、各組成物におけるリノール酸の安定性を調べた。リノール酸の定量は、高速液体クロマトグラフィー(Agilent社製 1100シリーズ)により行った。そして、配合理論値を基準とし、放置後の定量値から残存率を算出した。40℃2ヶ月放置後のリノール酸の残存率が95%以上の組成物を◎、90%以上かつ95%未満の組成物を○、90%未満の組成物を×と評価した。結果は表1にあわせて示した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1で示したとおり、油溶性甘草エキスを含有する組成物(比較例2)におけるリノール酸の安定性は悪いことがわかった。トコフェロールを単独で含有する組成物においては、酢酸dl−α―トコフェロールよりも天然ビタミンEやδ―トコフェロールを含有する方がリノール酸の安定効果が高いことがわかった。また、トコフェロールを単独で含有する組成物より、さらにL-シスチン及びL-トレオニンを併せて含有する組成物の方が、より高いリノール酸の安定効果が得られうることもわかった。
【0042】
以下、本発明の組成物の処方例を示す。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。また、リポソーム分散液に含まれる、リポソーム以外の成分は、全て連続相に含まれる。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】