(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非イオン界面活性剤をさらに含み、その配合割合が前記セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計100重量部に対して1〜10重量部である、請求項1に記載のセメント押出成形用混和剤。
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が下記一般式(2)で表されるブロック重合体であり、その数平均分子量が1400〜28000である、請求項3に記載のセメント押出成形用混和剤。
HO−(EO)r(PO)p(EO)s−H (2)
(但し、(EO)r、(PO)pおよび(EO)sはブロック付加してなり、p=20〜100、q=r+s=5〜500である。)
前記セルロース系バインダーが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その1重量%水溶液の粘度が5000〜40000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)である、請求項1〜4のいずれかに記載のセメント押出成形用混和剤。
前記スターチエーテルが、ヒドロキシルプロピル基の置換度が0.1〜15%である水溶性ヒドロキシプロピル化澱粉であり、その1重量%水溶液の粘度が5〜100mPa・s(ヘプラー粘度計、測定温度20℃)である、請求項1〜5のいずれかに記載のセメント押出成形用混和剤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔セメント押出成形用混和剤およびその製造〕
本発明のセメント押出成形用混和剤(以下では、単に混和剤ということもある。)は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテルを含み、セメント押出成形に用いられる混和剤である。
セルロース系バインダーは、セメント押出成形用混和剤の主成分であり、後述の水を含むセメント押出成形用混合物(以下では、この混合物をモルタルということもある。)に可塑性と保水性を付与し、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物に良好な押出性と高い品位を与える成分である。セルロース系バインダーは、通常、固体であり、粉体である。
【0017】
セルロース系バインダーとしては、たとえば、メチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。これらのセルロース系バインダーのうちでも、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましく、高い保水性や保形性、セルロースエーテル自体の界面活性剤機能による無機材料の分散性、押出性への寄与、および高いゲル化温度を示すことによるワーカービリティに優れる。
セルロース系バインダーの粘度は、混和剤およびセメント押出成形用混合物(以下では、単に混合物ということもある。)の粘度に大きく影響する。また粘度がこの範囲にあると、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物の保形性が高くなる。本発明でいう保形性とは、金型より吐出された押出成形物の形状が維持できる性能をいい、品位に大きく関わる物性である。
【0018】
セルロース系バインダーの1重量%水溶液の粘度(JIS K 7117、B型粘度計で測定、測定温度20℃)については、特に限定はないが、好ましくは5000〜40000mPa・s、より好ましくは5100〜35000mPa・s、さらに好ましくは5200〜30000mPa・s、特に好ましくは5300〜25000mPa・sである。
セルロース系バインダーの1%水溶液の粘度が5000mPa・s未満であると、保形性が不充分であることがあり、セルロースエーテルの配合を増やす必要があることがある。一方、セルロース系バインダーの1%水溶液の粘度が40000mPa・sを超えると、水への溶解が困難となり、また低粘度のセルロースエーテルよりも保水性の点でも劣ることから、混和剤として配合され、押出の際の潤滑効果が不充分となり良好な押出性が得られないことがある。
【0019】
また、このセルロース系バインダーそのもの自体、セメントの凝結遅延を大きくする作用があるが、現在セメント押出事業者に広く使用されるようになったために、セルロース系バインダーによる凝結遅延時間の長さが本業界での標準となっている。
スターチエーテルは、保水性を有した高分子材料であるが、一般には、セルロース系バインダーに比べ著しく粘度が低い。特に高粘性のセルロース系バインダーと併用することで、セルロース系バインダーの粘度および粘性を改質することができる。スターチエーテルはセメントの凝結遅延を非常に大きくする作用があり、硬化特性に悪影響を与えれば、当然、成形品の強度にも問題が発生する。そのために、混和剤への配合には細心の注意を要する。
【0020】
スターチエーテルが、ヒドロキシルプロピル基の置換度が0.1〜15%である水溶性ヒドロキシプロピル化澱粉であると、水への溶解性が良好で好ましい。ここで用いる水溶性ヒドロキシプロピル化澱粉は、スターチにヒドロキシルプロピル基を置換度0.1〜15%となるように導入したものである。水溶性ヒドロキシプロピル化澱粉のヒドロキシルプロピル基の置換度は、さらに好ましくは0.2〜14%、特に好ましくは0.3〜13%、最も好ましくは0.4〜12%である。ヒドロキシルプロピル基の置換度が0.1%未満であると、澱粉中の未置換のOH基による相互の水素結合が多く残った状態となり、水への溶解性が低下することがある。一方、ヒドロキシルプロピル基の置換度が15%を超えると、疎水性のヒドロキシプロピル基の影響が強く出ることにより、やはり水への溶解性が低下することがある。
スターチエーテルの1重量%水溶液の粘度(ヘプラー粘度計で測定、測定温度20℃)については、特に限定はなく、好ましくは5〜100mPa・s、より好ましくは6〜95mPa・s、さらに好ましくは7〜90mPa・s、特に好ましくは8〜85mPa・sである。スターチエーテルの粘度がこの範囲にあると、混和剤の粘性改質に有効である。スターチエーテルの粘度が5mPa・s未満であると、凝結遅延効果が過剰に発現しセメントの硬化に問題を引き起すことがある。一方、スターチエーテルの粘度が100mPa・sを超える場合は粘性改質効果が得られ難く、防汚効果が低下することがある。
【0021】
セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計量に占めるセルロース系バインダーの重量割合は、通常85〜95重量%であり、好ましくは86〜94重量%、より好ましくは87〜93重量%、さらに好ましくは88〜92重量%、特に好ましくは89〜91重量%、最も好ましくは90重量%である。セルロース系バインダーの重量割合が85重量%未満であると、凝結遅延効果が過剰に発現しセメントの硬化に問題を引き起す可能性が高い。一方、セルロース系バインダーの重量割合が95重量%を超えると、粘性改質効果が得られ難く、防汚効果が低下する。
本発明のセメント押出成形用混和剤は、非イオン界面活性剤をさらに含むと好ましく、モルタル中の無機材料や繊維類等へ作用し、分散性およびベアリング効果を発揮することにより、押出性の向上、特に押出速度の向上へ寄与することが可能になる。
【0022】
非イオン界面活性剤の配合割合は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1.5〜9重量部、さらに好ましくは2〜8重量部、特に好ましくは2.5〜7重量部である。最も好ましくは3〜6重量部である。非イオン界面活性剤の配合割合が1重量部未満であると、押出性、特に押出速度において低下が認められることがある。一方、非イオン界面活性剤の配合割合が10重量部を超えると、押出成形物の表面性に悪影響を及ぼし品位の低下が認められることがある。
非イオン界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルや、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤のうちでも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0023】
非イオン界面活性剤は、その数平均分子量が1400〜28000であると、低起泡性で気泡をモルタル中に持込難く、また無機材料等の分散性も良好であり、成形品の低収縮性が良好となる。
また、非イオン界面活性剤としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0024】
RO−[(PO)
p/(EO)
q]−H (1)
(但し、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基であり、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基をそれぞれ示す。pおよびqは、それぞれの平均付加モル数を示し、p=20〜100およびq=5〜500である。[(PO)
p/(EO)
q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダムまたはブロック付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
オキシプロピレン基(PO)の平均付加モル数pとしては、20〜100であれば特に限定はないが、好ましくは21〜95、より好ましくは22〜90、さらに好ましくは23〜85、特に好ましくは24〜80、最も好ましくは25〜75である。pが20未満であると、疎水性材料への相溶性が十分ではないことがある。一方、pが100超であると、疎水性が強くなりすぎ、材料によっては凝集を引き起こすことがある。
【0025】
オキシエチレン基(EO)の平均付加モル数qとしては、5〜500であれば特に限定はないが、好ましくは6〜480、より好ましくは7〜460、さらに好ましくは8〜440、特に好ましくは9〜420、最も好ましくは10〜400である。qが5未満であると、親水性材料への相溶性が十分ではない場合がある。一方、qが500超であると、親水性が強くなりすぎ凝結遅延に悪影響が出ることがある。
オキシプロピレン基の平均付加モル数(p)とオキシエチレン基の平均付加モル数(q)との比(p/q)は、好ましくは0.04〜20、より好ましくは0.05〜19、さらに好ましくは0.06〜18、よりさらに好ましくは0.07〜17、特に好ましくは0.08〜16、最も好ましくは0.09〜15である。p/qが0.04未満であると、親水性材料への相溶性が十分ではない場合がある。一方、p/qが20超であると、疎水性が強くなりすぎ、材料によっては凝集を引き起こすことがある。
【0026】
一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物は、保水性を有し、混和剤が水に溶解しやすくなり、セメント粒子や細骨材の分散効果を高め、モルタル流動性を向上させ、主に押出速度を向上させる。また、このポリアルキレンオキサイド付加物としては、通常のセメント、コンクリート等に用いられるAE剤とは相違し、起泡力の低いものが良い。
一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物は、セルロース系バインダーやセメントと均一分散し易いことから、20℃での外観が固体であると好ましく、粉体であるとさらに好ましい。ポリアルキレンオキサイド付加物が粉体の場合または液体のポリアルキレンオキサイド付加物をケイ石粉又はシリカ等の無機粒子に吸着させた粉体状物の場合は、その粉体の粒子径がセルロース系バインダーの粒子径と同程度の粒子径、たとえば、24mesh(目開き740μm)以下の粒子が80重量%以上であると、セルロース系バインダーおよび界面活性剤について分離や偏在が生じず、均一粉体となったセメント押出成形用混和剤を得ることから好ましい。
【0027】
一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物が下記一般式(2)で表されるブロック重合体であると、分子鎖相互の反発が強くなり、セメント系の無機材料の分散性が更に向上するために好ましい。
HO−(EO)
r(PO)
p(EO)
s−H (2)
(但し、(EO)
r、(PO)
pおよび(EO)
sはブロック付加してなり、p=20〜100、q=r+s=5〜500である。)
【0028】
一般式(2)で表されるブロック重合体は、一般式(2)に示されるように、オキシプロピレン基(PO)の平均付加モル数が20〜100であるポリオキシプロピレン基(PO)
pの両末端に、オキシエチレン基(EO)の平均付加モル数がrであるポリオキエチレン基(EO)
r、および、オキシエチレン基(EO)の平均付加モル数がsであるポリオキエチレン基(EO)
sがそれぞれ結合した構造のブロック重合体である。このブロック重合体の両末端は共に水酸基になっている。
一般式(2)のpおよびqの説明は、一般式(1)で説明されているものと同じである。
【0029】
このブロック重合体のオキシエチレン基(EO)からなるそれぞれのブロックである(EO)
rおよび(EO)
sについて、それぞれの平均付加モル数rおよびsの比(r/s)は、好ましくは1〜500、より好ましくは1.1〜490、さらに好ましくは1.2〜480、よりさらに好ましくは1.3〜470、特に好ましくは1.4〜460、最も好ましくは1.5〜450である。r/sが500より大きければ分子鎖相互の反発が弱くなり、セメント系の無機材料の分散性が低下することがある。
ブロック重合体の数平均分子量については、特に限定はないが、セメント系の無機材料の水への分散の観点からは、好ましくは1400〜28000、より好ましくは1500〜26000、さらに好ましくは1600〜24000、特に好ましくは1700〜22000である。ブロック重合体の数平均分子量が1400未満であると、30〜40℃の低温で析出し、界面活性剤としての機能を果さない場合があり、真空押出時の工程の不安定化を引き起こすことがある。一方、ブロック重合体の数平均分子量が28000を超えると、材料の分散性の効果が低下する場合がある。
【0030】
セメント押出成形用混和剤には、上記で説明したセルロース系バインダーやスターチエーテル、必要に応じて配合される非イオン界面活性剤以外に、後述のその他成分を配合してもよい。
セメント押出成形用混和剤は、その1重量%水溶液の粘度(JIS K 7117、B型粘度計、測定温度20℃)が、通常4000〜30000mPa・sであり、好ましくは4200〜29000mPa・s、さらに好ましくは4400〜28000mPa・s、特に好ましくは4500〜27000mPa・sである。セメント押出成形用混和剤の1重量%水溶液の粘度が4000mPa・s未満であると、保形性が不充分であることがあり、セメント押出成形用混和剤として押出成形用混合物への配合を増やす必要がある。一方、セメント押出成形用混和剤の1重量%水溶液の粘度が30000mPa・sを超えると、水への溶解性が困難となり、また保水性も低粘度品に劣ることから、押出の際の潤滑効果も不充分となり良好な押出性が得られない。
【0031】
セメント押出成形用混和剤は、その1重量%水溶液のTI値(チキソトロピーインデックス)は、通常2.6以下、好ましくは0.9〜2.6、より好ましくは0.95〜2.55、さらに好ましくは1.0〜2.5、特に好ましくは1.05〜2.45、最も好ましくは1.1〜2.4である。ここでTI値とは、セメント押出成形用混和剤を1重量%含む水溶液について、JIS K 7117に従って、B型粘度計を用いて測定温度20℃で粘度を測定した際、測定時の回転数6rpm時の粘度B
6とし、測定時の回転数60rpm時の粘度B
60としたときに、TI=B
6/B
60で定義される。
セメント押出成形用混和剤の1重量%水溶液のTI値が2.6を超えるとモルタルの粘着性が強くなり防汚効果が低下し不適である。一方、TI値が0.9未満であると、モルタルがパサついた状態で、固まりとなり難くなる場合がある。また、粘土系鉱物で多くの場合、低TI値となる混和剤が得られるのだが、粘度系鉱物を添加したセメント押出成形用混和剤は、セメントと混合して使用すると、粘土によるセメント水硬作用物質であるカルシウム成分等の吸着作用等があるため、モルタル中への配合は差し控えることが望ましい。
【0032】
本発明では、セメント押出成形用混和剤の凝結遅延時間は、「JIS R5201 8.凝結試験」に準拠して測定される。すなわち、セメント押出成形用混和剤が0.5重量%となるようセメントへ配合した場合について、50℃での凝結時間を測定する。これとは別に、標準と考えられるセルロース系バインダー(本願では、現在工業的な使用で標準と考えられるマーポローズME−350T)をセメントへ配合した場合について、始発時間が約2.5時間、終結時間が約3.5時間であるので、この時間をそれぞれ標準時間とする。この時間の周辺で凝結発現すると、モルタルの可使時間として最適であるという理由から、セメント押出成形用混和剤の凝結遅延時間が、始発時間について(標準始発時間±1時間以内)であり、終結時間について(標準終結時間±1時間以内)であると好ましい。
セメント押出成形用混和剤の凝結遅延時間は、より好ましくは始発時間について(標準始発時間±50分以内)および終結時間について(標準終結時間±50分以内)であり、さらに好ましくは始発時間について(標準始発時間±40分以内)および終結時間について(標準終結時間±40分以内)であり、特に好ましくは始発時間について(標準始発時間±30分以内)および終結時間について(標準終結時間±30分以内)である。
【0033】
セメント押出成形用混和剤の凝結遅延時間が、始発時間について(標準始発時間+1時間)より遅かったり、終結時間について(標準終結時間+1時間)より遅かったりすると、過度の凝結遅延性が発現しているものと考えられ、成形物の強度低下の問題を引き起こすことがある。一方、セメント押出成形用混和剤の凝結遅延時間が、終結時間について(標準始発時間−1時間)より早かったり、終結時間について(標準終結時間−1時間)より早かったりすると、凝結が非常に早く発生しているものと考えられ、可使時間が短くなり、モルタルおよび成形物の取扱が難しくなることがある。
セメント押出成形用混和剤には、上記で説明したセルロース系バインダーやスターチエーテル、必要に応じて配合される非イオン界面活性剤以外に、後述のその他成分を配合してもよい。
セメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテル、さらに非イオン界面活性剤や後述のその他成分を、たとえば、ナウタミキサー混合機やヘンシェルミキサー混合機、リボンミキサー混合機等を用いて混合することによって得られる。
【0034】
〔セメント押出成形用混合物およびその製造〕
本発明のセメント押出成形用混合物は、セメントおよび細骨材を必須とする無機材料と、上記で説明したセメント押出成形用混和剤とを含む混合物であって、セメント押出成形用混和剤の配合割合が無機材料100重量部に対して0.5〜3重量部である混合物である。
セメントとしては、たとえば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、早強セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明において、無機材料は細骨材を必須とする。細骨材とは、10mm目開きフルイを全通し、且つ5mm目開きフルイ通過したものが85重量%以上からなる無機骨材である。5mm目開きフルイ通過しないものが85重量%を超える無機骨材では、セメント押出成形物としては適さないことがある。また、無機骨材としては、たとえば、珪砂、珪石粉、高炉スラグ、シリカフューム、フライアッシュ、カオリン焼成物、石灰石粉等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
無機材料は、細骨材よりも粗い粗骨材を含んでもよいが、粗骨材を含まないほうが、押出成形品の表面性が良好となるので好ましい。ここで、粗骨材とは5mm目開きフルイ通過しないものが85重量%を超える無機骨材を意味するものとする。
【0036】
無機材料中の粗骨材および細骨材の重量比(粗骨材/細骨材)については、特に限定はないが、好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.08以下、特に好ましくは0.07以下、最も好ましくは0.06以下である。粗骨材/細骨材が0.1超の場合は、押出成形品の表面性が悪化することがある。
無機材料では、用途に応じた最適な配合をするべきであるが、無機材料に含まれるセメントおよび無機骨材の重量比(セメント/無機骨材)は、好ましくは80/20〜30/70、さらに好ましくは75/25〜35/65、特に好ましくは70/30〜40/60である。セメント/無機骨材が80/20を超えると、水硬前後の寸法変化が大きくなり過ぎ不適である。一方、セメント/無機骨材が30/70より小さいと、得られるセメント押出成形物の硬化後の強度に問題が発生する。
【0037】
セメント押出成形用混合物に含まれるセメント押出成形用混和剤の配合量は、無機材料100重量部に対して、通常0.5〜3重量部、好ましくは0.6〜2.8重量部、さらに好ましくは0.7〜2.5重量部である。セメント押出成形用混和剤の配合量が0.5重量部未満であると、セメント押出成形用混合物から得られるモルタルを押出成形してセメント押出成形物を製造する際、押出圧力が高く、押出速度が不安定となる現象の発生、すなわち押出性が低下したり、さらに得られるセメント押出成形物の表面状態や吐出状態が不整であり、寸法精度が低いという問題の発生、すなわち品位が低下したりすることがある。一方、セメント押出成形用混和剤の配合量が3重量部を超えると、配合量に見合った性能向上は見られず、むしろ、セメント押出成形用混合物から得られるモルタルを押出成形してセメント押出成形物を製造する際、モルタル硬度が低く、押出速度が不安定となって押出性が低下したり、エッジ部の意匠性が低下したり、波打ち等に起因する品位が低下したりすることがある。また混和剤中のスターチエーテルによる凝結遅延効果が発生して硬化不良による品位の低下が発生することもある。
上記セメント押出成形用混合物は、セメント押出成形用混和剤および無機材料を、たとえば、ナウタミキサー混合機やヘンシェルミキサー混合機、リボンミキサー混合機等を用いて混合して得られる。
【0038】
セメント押出成形用混合物は、水をさらに含むことがある。以下では、水を含むセメント押出成形用混合物を、モルタルということがある。セメント押出成形用混合物が水を含む場合、その配合割合は、セメントが水硬性であり、モルタルを押出に適した硬度に調整できるという理由から、無機材料100重量部に対して、好ましくは18〜28重量部、より好ましくは18.5〜27.5重量部、さらに好ましくは19〜27重量部、特に好ましくは19.5〜26.5重量部である。水の配合割合が17重量部未満であると、モルタルがまとまりのない状態となり、押出成形が困難となることがある。一方、水の配合割合が28重量部を超えると、モルタルの硬度が極めて低く、押出成形が困難となり、押出成形板の強度が低下することがある。
モルタルは、たとえば、セメント押出成形用混合物を混合機内にて乾式分散し、乾式分散しつつ所定量の水を添加し、必要に応じて混練機等にて混練りすることによって得られる。モルタルの製造に用いる混合機としては、液添加機構が備わった混合機が好ましく、たとえば、主羽根による浮遊拡散混合とチョッパー羽根による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機;プロシェアミキサー、レーディゲミキサーや、拡散混練方式の混合機;オムニミキサーや、逆流式高速混合機;アイリッヒミキサー等が好ましい。
【0039】
〔セメント押出成形物およびその製造〕
本発明のセメント押出成形物は、水を含むセメント押出成形用混合物(モルタル)を押出成形してなる成形物である。セメント押出成形物は、モルタルを真空押出成形してなる成形物であると好ましい。
セメント押出成形物は、モルタルを押出成形して得られるが、ここで行う押出成形が真空押出成形であると、押出成形物中の気泡が低減され、外観や寸法安定性が良好となる。また、押出成形物が金型から吐出される際のスプリングバック等が防止できるために好ましい。
【0040】
真空押出成形に用いる成形機(真空押出成形機)としては、たとえば、セメント用やセラミック用のスクリュー式押出機、プランジャー式押出機等が挙げられる。市販の成形機としては、たとえば、セメント用真空押出成形機(石川時鐵工所株式会社製)、混練−真空押出成形機(宮崎鉄工株式会社製)、真空押出成形機(本田鐵工株式会社製)等を挙げることができる。特に、混練−真空押出成形機は、前述の混合機および混練機の機能を持った部位が押出成形機に繋がっており、セメント押出成形用混合物の調製から押出成形物までの一連の工程を備えた設備である。
セメント押出成形は、たとえば、次のようにして行われる。1)モルタルを真空押出成形機のパグミル・パグスクリュー部において予備混練し、その後モルタルを真空脱気室に送り、モルタル中に取り込まれていた気泡を除去する。2)モルタルをさらにバレルに落とし、スクリューまたはプランジャーによってバレル終端部に装着された金型まで送り、金型を通過させることによって各種断面形状のセメント押出成形物が得られる。
【0041】
セメント押出成形については、「押出成形はセメント系材料を変える」(守明子、馬場明生;セメント・コンクリート,No.598,p.9−20,1996年12月発行)を参考にして行うことができる。
この真空押出成形における重要な押出条件として、押出圧力、押出速度等が挙げられる。押出圧力は高すぎると、機械への負担の増大や、金型、スクリュー、バレル等の寿命が短くなることがある。また、電力消費の増大について問題となることがある。したがって、一般には低い押出圧力が望まれる。
【0042】
また、押出速度は生産性に直結するので、一般に速いほうがよい。押出速度が遅いときは往々にして押出機のバレル壁面とモルタルの潤滑不良により、押出速度の低下、速度遅速による工程の不安定化、押出圧力の上昇等が現れ、これら押出性の低下に加え、品位も低下することがある。
得られたセメント押出成形物は、乾燥および養生後、必要に応じてオートクレーブによる高温高圧での養生や蒸気養生、裁断や仕上げ等の各工程を経て、セメント押出成形板やセメント押出製品として建築用資材等に広く使用されている。
【0043】
〔その他の成分〕
上記で説明したセメント押出成形用混和剤やセメント押出成形用混合物には、下記に説明するその他の成分を、本発明によって得られる効果に大きな悪影響を及ぼさない範囲で、配合することができる。なお、押出成形用混和剤は、固体であり、粉体であるのが望ましく、そのような状態になることを妨げるその他の成分は、押出成形用混和剤には配合しないほうが良く、セメント押出成形用混合物に配合することが望ましい。
【0044】
(セメント押出成形用混和剤またはセメント押出成形用混合物に配合可能な成分)
セメント押出成形物の強度向上に用いられ、安全衛生面で影響がないものとして、ガラス繊維等の無機繊維;パルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維等の繊維状材料を配合できる。無機繊維はアスベストを含有しないものであるとよい。
軽量化のために、パーライト等の無機軽量骨材;ポリスチレン系等の有機発泡剤、フライアッシュ、有機質中空微小球等の有機軽量化材を配合できる。
【0045】
凝結時間調整剤として、ケイフッ化マグネシウム等のケイフッ化物;ホウ酸等のホウ酸類;グルコン酸、グルコヘプトン酸、クエン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸類およびその塩;リグニンスルホン酸、フミン酸、タンニン酸等の高分子有機酸類およびその塩等の凝結遅延剤等を配合できる。
凝結時間調整剤として、また、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物;チオシアン酸ナトリウム等のチオシアン酸塩;亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸塩;硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩;硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;珪酸ナトリウム(水ガラス)等の無機系化合物による凝結促進剤・急結剤等を配合できる。
【0046】
凝結時間調整剤として、また、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン類;ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩等の有機系化合物による凝結促進剤・急結剤を配合できる。
押出成形板や押出製品の水硬前後の過度の収縮を防止するために、ポリプロビレングリコール、ポリプロピレンポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、アルコキシポリプロピレングリコールアクリレート類等の収縮低減剤を配合できる。
【0047】
セルロース系バインダーに類似の増粘効果や分離低減効果が期待できるものとして、ポリビニルアルコール;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性高分子;ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ等のアクリル系水溶性高分子;キサンタンガム、グアガム等のバイオポリマー;アニオン性アクリル樹脂、EVA(エチレン酢酸ビニルエマルジョン)、PAE(ポリアクリル酸エステルエマルジョン)、PVAC(ポリ酢酸ビニルエマルジョン)、VAVeoVa(酢酸ビニルビニルバーサテートエマルジョン)等のエマルジョン系増粘剤や分離低減剤等を配合できる。
次に、セメント押出成形用混合物に配合することが好ましい成分について説明する。
【0048】
(セメント押出成形用混合物に配合可能な成分)
消泡剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを主成分とするポリオキシアルキレン系消泡剤、ポリプロピレングリコール系消泡剤や鉱物油系消泡剤、変性シリコーン系消泡剤、ジメチルポリシロキサン等を配合できる。
膨張剤として、アルミニウム粉体等を配合できる。また防錆剤、着色剤等を配合できる。
【0049】
防水剤や撥水剤として、塩化カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸質粉末、ジルコニウム化合物、脂肪酸石鹸、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはこれらをエマルジョン化した脂肪酸系化合物や、シリコーンオイル、シリコーンエマルジョン、パラフィン、パラフィンエマルジョン、アスファルトエマルジョン、油含有廃白土、ゴムラテックス等を配合できる。
セメントや無機材料の流動化等に寄与し、流動性やワーカービリティを向上させるために、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤、高性能AE減水剤等として、以下の成分を配合することができる。
【0050】
AE剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を配合できる。
減水剤・AE減水剤として、リグニンスルホン酸塩またはその誘導体、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル誘導体、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系高分子化合物等を配合できる。
【0051】
流動化剤として、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸化合物、ポリスチレンスルホン酸塩等を配合できる。
高性能AE減水剤として、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とリグニンスルホン酸類の混合物や、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とポリカルボン酸系高分子化合物の混合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とスランプロス低減剤の混合物、ポリカルボン酸化合物、ポリカルボン酸エーテル系化合物、芳香族アミノスルホン酸化合物等を、本発明の効果に悪い影響のない範囲で必要により配合できる。
【0052】
セメント押出成形用混合物では、セメントを必須とする無機材料を主成分としており、セメントを必須とする無機材料以外の成分の配合は避けるほうが好ましいことは言うまでもないことである。そのために、セメントを必須とする無機材料とそれ以外成分の重量比(セメントを必須とする無機材料/それ以外の成分)は、100/12〜100/0.3が好ましい。
なお、本発明のセメント押出成形用混和剤、セメント押出成形用混合物およびセメント押出成形物では、アスベストは一切含まれないと最もよい。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例をその比較例等とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例では、セメント押出成形用混和剤を用いて、セメント押出成形用混合物を調製し、水を加えてモルタルを製造し、押出成形を行ってセメント押出成形物を得た。上記で説明したセメント押出成形用混合物のうちで水を25〜26重量部含むものを、以下の実施例および比較例ではモルタルといい、水を所定量含まぬものをセメント押出成形用混合物ということにする。
【0054】
〔実施例1〕
(セメント押出成形用混和剤)
表1に示す押出成形用混和剤の成分(合計1.2重量部)をジューサーミキサー(ナショナル MX−X53型)内に入れ、回転数19000rpmで15秒間攪拌し十分に混合して、セメント押出成形用混和剤を得た。
得られた混和剤の1重量%水溶液について、JIS K 7117に従ってB型粘度計を用いた20℃で粘度を測定すると、NO4ローターを使用して、回転数12rpmでは7500mPa・s、回転数6rpmでは9600mPa・s、回転数60rpmでは4150mPa・sであった。この結果から、粘度は7500mPa・s(NO4、12rpm)である。また、TI値は、(6rpm時の粘度)/(60rpm時の粘度)=9600/4150=2.31である。
また、混和剤の凝結遅延時間測定(「JIS R5201 8.凝結試験」に準拠)を実施し、押出成形用混和剤としての適性の判定を行い、合格であった。
【0055】
(セメント押出成形用混合物)
表1に示す押出成形用混合物の成分(合計104.2重量部)をレーディゲミキサー(M20型、マツボー製)内に入れ、回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間攪拌し十分に混合して、セメント押出成形用混合物を得た。
【0056】
(モルタル)
得られたセメント押出成形用混合物を、引続きレーディゲミキサー内で撹拌しつつ、このセメント押出成形用混合物に水26重量部を約2〜2.5分間で噴霧するとともに、水噴霧開始から回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間撹拌し、溶解させ、均質な混合物を得た。
得られた均質な混合物を、10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鐵工製)内に入れ、3分間、充分に混練を行った後、粘土様の高粘性物質であるモルタルを調製した。
このモルタルをゴム手袋にてテニスボール位の団子状物を作成した際、ゴム手袋の汚れは非常に少ないが、モルタルとしてのまとまりは非常に良好であった。
【0057】
(押出成形)
得られたモルタルを真空押出成形機(DE−50D、本田鐵工製)を用いて押出成形し、セメント成形板(セメント押出成形物)を作製した。
なお、成形条件は、真空押出成形機の系内温度は30℃、真空度は−0.096MPa以下であり、金型(40mm×10mm)を使用し、室温25℃、湿度60%の下で平板状のセメント押出成形物を得た。
得られたセメント押出成形物の品位(表面状態、吐出状態、寸法精度)、押出成形時の押出性(押出圧、押出速度、速度の標準偏差)、押出実施の後の各設備の汚れ状況(防汚性)およびセメント押出成形物の硬度を以下に示す評価基準にしたがって評価し、その結果を表1に示した。なお、評価は室温25℃、湿度60%の下で行った。
【0058】
〔実施例2〜10〕
実施例1において、混和剤の種類および量を表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
【0059】
〔比較例1〜9〕
実施例1において、混和剤の種類および量を表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
【0060】
従来の標準的な押出例を、比較例1とした。
比較例1は、品位、押出性ともに妥当ではあるが、防汚性に劣るものである。このセメント押出成形用混合物を用いて、10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鐵工製)で調製したモルタルをゴム手袋にてテニスボール位の団子状物を作成した際、モルタルとしてのまとまりは非常に良好であったが、ゴム手袋の汚れは著しかった。
【0061】
〔セメント押出成形物の品位〕
(表面状態)
セメント押出成形時に金型より押出されるセメント押出成形物を目視により観察し、以下の評価基準により表面状態の評価を行った。
○:セメント押出成形物の表面が平滑で良好。
△:セメント押出成形物の表面に凹凸がやや見られる。
×:セメント押出成形物の表面に凹凸が見られるか、または、セメント押出成形物にひび割れが見られる。
【0062】
(吐出状態)
セメント押出成形時に金型より押出されるセメント押出成形物を目視により観察し、以下の評価基準により吐出状態の評価を行った。
○:セメント押出成形物が安定に真っ直ぐに押出される。
△:セメント押出成形物が押出される際やや変化が見られる。
×:セメント押出成形物が押出される際蛇行や浪打ち、フクレ等の変化が見られ、安定に真っ直ぐに押出されない。
【0063】
(寸法精度)
セメント押出成形時に金型より押出されたセメント押出成形物の寸法を測定し、金型寸法と比較することにより以下の評価基準により寸法精度の評価を行った。
○:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以下
△:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以上0.3mm以下
×:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.3mm以上
【0064】
〔押出成形時の押出性〕
(押出圧)
セメント押出成形時に、真空押出成形機に取り付けてある圧力計が示す平均圧力の読み取り値をxとし、標準的な押出例と考えられる比較例1の場合の平均圧力の読み取り値をyとして、(x/y)×100を計算して押出圧とした。そして、以下の評価基準により押出圧の評価を行った。ここで、押出圧が低いほど、押出成形機への負荷が低く、押出性が良好である。
×:115以上
△:105以上115未満
○:95以上105未満
◎:95未満
【0065】
(押出速度)
セメント押出成形時に、真空押出成形機より押出される際のセメント押出成形物の流れる速度を測定した値をaとし、標準的な押出例と考えられる比較例1の場合の速度の読み取り値をbとして、(a/b)×100を計算して押出速度とした。そして、以下の評価基準により押出速度の評価を行った。ここで、押出速度が速いほど生産性が高く、押出性が良好である。
◎:105以上
○:95以上105未満
△:85以上95未満
×:85未満
【0066】
(速度の標準偏差)
セメント押出成形時に、真空押出成形機より押出される際のセメント押出成形物の流れる速度の標準偏差をAとし、標準的な押出例と考えられる比較例1の場合の速度の標準偏差をBとして、(A/B)×100を計算して速度の標準偏差とした。そして、以下の評価基準により速度の標準偏差の評価を行った。ここで、速度の標準偏差が小さいほどモルタルの出来上がり状態が均一であり、押出性が良好である。
×:150以上
△:125以上150未満
○:75以上125未満
◎:75未満
【0067】
〔押出実施の後の各設備の汚れ状況〕
(防汚性)
モルタル約5.2Kg(セメントおよびケイ石粉を各々2kg含有、総使用材料の質量)を調整・排出した後の機体内のモルタル残渣を回収し、モルタル残留量%で防汚性を評価した。
レーディゲミキサー(M20型、マツボー製)にてモルタル作成し排出後、羽根を撤去し、機体内に残留したモルタル残渣質量:rグラム
【0068】
10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鐵工製)にてモルタル練り上げ後、モルタル排出後、機体内に残留したモルタル残渣質量:sグラム
真空押出成形機(DE−50D、本田鐵工製)にて押出成形終了後、金型より吐出が見られなくなるまで排出し、パッグスクリュー・オーガスクリュー等を撤去し、シュレッダー〜真空脱気室間に残留したモルタル残渣質量:tグラム
【0069】
総モルタル残留質量(TR)=(r+s+t)グラム
モルタル残留量%=(総モルタル残留質量)/(総使用材料の質量)×100として、以下の評価基準により防汚性の評価を行った。
〇:3%以下(合格、防汚性良好と判断)
△:3%超〜5%以下(やや不良)
×:5%超(不良)
【0070】
〔混和剤としてのセメント材料への適性〕
(凝結遅延性)
各混和剤が0.5重量%となるようにセメントへ配合し、JIS R5201 8.凝結試験に準拠し、50℃での凝結遅延時間の測定を実施した。
標準と考えられる比較例1の混和剤(マーポローズME−350T)の始発時間(約2.5時間)および終結時間(約3.5時間)を標準時間として、以下の評価基準により凝結遅延性の評価を行った。
〇:標準始発時間±1時間以内、且つ、終結時間±1時間以内(合格)
△:標準始発時間±1時間超〜2時間以内、且つ、標準終結時間±1時間超〜2時間以内(やや不良)
×:標準始発時間±2時間超、且つ、標準終結時間±2時間超(不良)
凝結遅延性△では、凝結促進剤を添加が必須となり、品位の低下が避けられない。また、凝結遅延性が×では、水硬性阻害が危惧されるので、混和剤の配合を再考せねばならない。凝結遅延性が×では、セメント等の水硬材に不適と考えられる。
【0071】
〔セメント押出成形物の硬度〕
セメント押出成形時に金型より押出されたセメント押出成形物をクレー硬度計(日本碍子製)で硬度を測定し、以下の評価基準により硬度の評価を行った。ここで、「硬」の場合は一般に押出圧が高いことを表す。「軟」の場合は押出圧が低いことを表すが、押出圧が低いことは必要だが、モルタル硬度が「軟」であると保形性の低下でのエッジ部分の意匠性低下や寸法精度に問題が発生する場合がある。「適」の場合は品位および押出性ともに問題発生は少ない。
硬:12.5以上
適:11.5以上、12.5未満
軟:11.5未満
【0072】
〔品位、押出性、防汚性および凝結遅延性等の総合判定〕
品位の3つの評価項目のうちで、○が2つ以上で、×が1つもない場合を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
押出性の3つの評価項目のうちで、◎および/または○が2つ以上で、×が1つもない場合を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
【0073】
防汚性の評価項目のうちで、〇を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
また、凝結遅延性評価のうちで〇を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
【0074】
凝結遅延性が不合格となるものは、本質的に水硬材に不適と考えられる。
これらの判定結果より、本出願によるセメント押出成形用混和剤、セメント押出成形用混合物では全てが合格(合)となる。
【0075】
【表1】