(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137850
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20170522BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20170522BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20170522BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20170522BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20170522BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/14 A
C04B14/28
C04B22/06 Z
C04B22/14 D
C04B22/06 A
C04B22/08 A
C04B22/14 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-17527(P2013-17527)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-148434(P2014-148434A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩巳
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】武田 均
(72)【発明者】
【氏名】宮原 茂禎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 礼子
(72)【発明者】
【氏名】鯉渕 清
(72)【発明者】
【氏名】二戸 信和
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−101761(JP,A)
【文献】
特開2003−020260(JP,A)
【文献】
特開2003−230221(JP,A)
【文献】
特開平08−012387(JP,A)
【文献】
特開2012−214317(JP,A)
【文献】
特開2003−095717(JP,A)
【文献】
特開2012−254909(JP,A)
【文献】
特開2012−233331(JP,A)
【文献】
特開平05−238787(JP,A)
【文献】
デンカパワーCSA,2010年 4月,p.1,URL,http://www.denka.co.jp/konwazai/products/list/000101.html
【文献】
冨澤 年道,1.セメント,コンクリート総覧 THE CONCRETE,飯田 眞理 技術書院,第1版
【文献】
武田均ら,高炉スラグ微粉末の硬化性状に及ぼす各種アルカリ刺激剤の効果,土木学会第66回年次学術講演会講演概要集,2011年,p.1003-1004
【文献】
松永久宏ら,鉄鋼スラグ水和固化体の強度発現性に及ぼすアルカリ刺激材の影響,コンクリート工学年次論文集,2009年,Vol.31 no.1,P.1831-1836
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−32/02,
C04B40/00−40/06,
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉スラグ微粉末と、
石灰石微粉末と、
消石灰、生石灰、石灰系膨張材、カルシウムサルホアルミネート系膨張材およびポルトランドセメントの群の中から選ばれる2種類以上の刺激剤とを含み、
高炉スラグ微粉末が100質量部に対して刺激剤の合計が3〜40質量部であり、
硬化体中の水酸化カルシウムの含有量が無水物換算で4.9質量%〜12質量%となる、
ことを特徴とする水硬性組成物。
【請求項2】
消石灰、石灰系膨張材、カルシウムサルホアルミネート系膨張材およびポルトランドセメントの群の中から選ばれる2種類以上の刺激剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の水硬性組成物。
【請求項3】
高炉スラグ微粉末が100質量部に対して石灰石微粉末が3〜50質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
2種類以上の刺激剤のうちの一つが石灰系膨張材又はカルシウムサルホアルミネート系膨張材であり、
高炉スラグ微粉末が100質量部に対して石灰系膨張材又はカルシウムサルホアルミネート系膨張材が1〜20質量部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
【請求項5】
水硬性組成物中にSO3を0.1質量%〜5.5質量%含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
【請求項6】
フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、又は籾殻の焼却灰を水硬性組成物中に15質量%以下含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉スラグ微粉末等の潜在水硬性物質と刺激剤からなる水硬性組成物であって、良好な凝結時間、強度発現が得られかつ中性化が抑制できる硬化体が得られる水硬性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会への対応のために、高炉スラグやフライアッシュを活用した混合セメントが注目されている。高炉セメントやフライアッシュセメントのみではなく、高炉スラグの潜在水硬性を利用して高炉スラグに反応刺激剤を使用した水硬性組成物が着目されている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、高炉スラグとフライアッシュに反応刺激剤として消石灰またはセメントを用いて、さらにポゾランとしてシリカフュームを添加した組成物がある。特許文献2では、高炉スラグとフライアッシュに反応刺激剤として石膏と消石灰を用いている。特許文献1および特許文献2は、低水粉体比において消石灰および石膏により高炉スラグとフライアッシュの水和反応をさせることにより高強度コンクリートの硬化体ができることを特徴としている。
【0004】
また、特許文献3、特許文献4は、従来から高炉スラグの反応刺激剤として用いられているナトリウム塩、カリウム塩および水ガラスなどのアルカリ性刺激剤を使用したものである。高炉スラグとフライアッシュにナトリウム塩、カリウム塩、水ガラスなどのアルカリ刺激剤を添加することにより、材齢初期から良好な強度発現が可能となることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−269786号公報
【特許文献2】特開2010−189219号公報
【特許文献3】特開平10−265256号公報
【特許文献4】特許4677181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2では、セメントを結合材として使用していないため、中性化が大きく、とくに水セメント比が20%と小さい場合でも中性化が大きい。中性化が大きい理由として、硬化体の水和過程で生成する水酸化カルシウムが高炉スラグおよびフライアッシュとの反応により、硬化体中における水酸化カルシウムの含有量が少ないことによる。消石灰を用いているが高炉スラグとフライアッシュと水和反応により消石灰が消費されるため、硬化体中の水酸化カルシウムの含有量が少なくなる。さらに、フライアッシュなどのポゾラン物質の含有量によっては硬化体中に水酸化カルシウムが含有しない可能性がある。また、セメントの含有量が少ないまたは含有しないため、材齢初期の強度が低く、凝結時間が遅いという課題もある。
【0007】
また、ナトリウム塩、カリウム塩および水ガラスなどのアルカリ性刺激剤を使用した場合は、初期の材齢の強度が増進するが、乾燥収縮が大きくひび割れが発生する場合が多い。また、硬化体中の水酸化カルシウムの生成量が少なく中性化が大きいといった課題が克服されていない。
【0008】
このような観点から、本発明は、高炉スラグを多量に使用したにもかかわらず、通常のセメントと同等の凝結時間、良好な強度発現が得られ、かつ中性化の抑制が可能となる高炉スラグ高含有の水硬性組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、高炉スラグ微粉末と石灰石微粉末の組み合わせに刺激剤としてカルシウムイオンを溶出する複数の刺激剤を使用することにより、高炉スラグを多量に使用したにもかかわらず、通常のセメントと同等の凝結時間、良好な強度発現が得られ、かつ中性化の抑制が可能となる高炉スラグ高含有の水硬性組成物を得ることを見出した。つまり、本発明は、「高炉スラグ微粉末」と「石灰石微粉末」と「カルシウムイオンを溶出する刺激剤」とからなる水硬性組成物である。
【0010】
石灰石微粉末は高炉スラグ微粉末との併用により、流動性の向上に寄与する。また、凝結を促進させ、材齢初期の強度増進の効果がある。さらに、石灰石微粉末は高炉スラグ微粉末と石こうとの併用により収縮の抑制が図れる。
【0011】
カルシウムイオンを溶出する速度が異なる複数の刺激剤を使用すると、まず、カルシウムイオンの溶出する速度が速い方の刺激剤が高炉スラグ微粉末の反応刺激剤として作用し、つぎに、カルシウムイオンの溶出する速度が遅い方の刺激剤から溶出した過剰なカルシウムイオンの存在によって高炉スラグ微粉末への再度の反応刺激剤としての作用により、高炉スラグ微粉末の水和反応を活性化させることにより、硬化体中に十分な水酸化カルシウムおよびCa/Si比の高いカルシウムシリケート水和物が存在するようになり、その結果、凝結の促進、強度の増進が図られるとともに、中性化が抑制される。なお、単独の刺激剤では凝結が遅延する場合がある。
【0012】
水硬性組成物の硬化体中の水酸化カルシウムが無水物換算で
4.9質量%〜12質量%含有することにより中性化を抑制できる。水硬性組成物の硬化体中の水酸化カルシウムが無水物換算で
4.9質量%に満たないと中性化を抑制できない場合がある。逆に、水硬性組成物の硬化体中の水酸化カルシウムが無水物換算で12質量%を超えると、十分な強度発現が得られない場合がある。刺激剤は、高炉スラグの持つ潜在水硬性を顕在化させて、高炉スラグの水硬性を発揮させる物質である。刺激剤は、ナトリウム塩、カリウム塩および水ガラスなども含むが、本発明ではカルシウムイオンを溶出させるものをいう。刺激剤として、消石灰、膨張材、ポルトランドセメント、生石
灰が使用できる。これらの刺激剤により高炉スラグ微粉末の水和反応が進行して硬化する。それぞれの刺激剤から溶出するカルシウムイオンにより高炉スラグ微粉末の反応刺激剤および硬化体中に水酸化カルシウムの析出を促進させる作用を有する。水溶性であり、カルシウムイオンを溶出する速度が速いものとしては
、消石灰、生石灰などがあげられる。また、不水溶性であり、カルシウムイオンを溶出する速度が遅いものとしては、膨張材、ポルトランドセメントなどがあげられる。カルシウムイオンを溶出する速度が相対的に異なる2種類以上を用いてもよい。
【0013】
高炉スラグ微粉末に石灰石微粉末と複数の刺激剤を併用することにより、水硬性組成物の水和物に水酸化カルシウムとエトリンガイトが生成されるとともに、モノカーボネートおよびヘミカーボネートの少なくとも一方が生成されるため、高炉スラグ微粉末を用いた組成物の欠点であった初期材齢の低下と中性化大きいことおよび収縮の増加が克服できる。また、石灰石微粉末の添加により、高炉スラグ微粉末を多量に使用した場合に凝結が促進される効果がある。
【0014】
刺激剤が消石灰と
石灰系膨張材と
カルシウムサルホアルミネート系膨張材とポルトランドセメントの中から2種類以上の場合を限定した水硬性組成物である。消石灰は、高炉スラグ微粉末の反応刺激剤および硬化体中に水酸化カルシウムの析出させる効果がある。
石灰系膨張材
およびカルシウムサルホアルミネート系膨張材は、水和反応によりエトリンガイトおよび水酸化カルシウムを生成するため、硬化体の中性化抑制のみではなく圧縮強度および曲げ強度を増進させる効果がある。ポルトランドセメントは、硬化体の中性化抑制のみではなく圧縮強度を増進させる効果がある。刺激剤が消石灰と
石灰系膨張材と
カルシウムサルホアルミネート系膨張材とポルトランドセメントの中から2種類以上であると、中性化を抑制してかつ良好な強度発現が得られやすい。
【0015】
石灰石微粉末の範囲を、「高炉スラグ微粉末が100質量部に対して石灰石微粉末が3〜50質量部」に限定した場合の水硬性組成物である。石灰石微粉末が3質量%に満たないと、流動性が損なわれる場合があり、水粉体比が小さい場合には多量に含有する高炉スラグによりダイラタンシーが生じる場合がある。また、材齢初期の強度増進の効果が得られない場合がある。さらに、収縮の抑制が出来ない可能性が生じる。石灰石微粉末が50質量%を超えると、長期材齢において十分な強度発現が得られない場合を生じる。
【0016】
刺激剤の範囲を、「高炉スラグ微粉末が100質量部に対して刺激剤が3〜40質量部」に限定した場合の水硬性組成物である。刺激剤が高炉スラグ微粉末100質量部に対して3質量部に満たないと、刺激剤が少ないため強度が十分に発現しない場合がある。また、水硬性組成物の硬化体の中性化が大きくなる場合がある。刺激剤が少ないとブリーディングが多くなる傾向となる。刺激剤が高炉スラグ微粉末100質量部に対して40質量部を超えると、硬化体中に膨張材などの刺激剤に含有する未反応の石こうが残存して遅れ膨張を生じる場合がある。
【0017】
刺激剤として膨張材を使用する場合において、膨張材の範囲を、「高炉スラグ微粉末が100質量部に対して
石灰系膨張材
又はカルシウムサルホアルミネート系膨張材が1〜20質量部」に限定した場合の水硬性組成物である。高炉スラグ微粉末が100質量部に対して
石灰系膨張材
又はカルシウムサルホアルミネート系膨張材が1質量部に満たないと、硬化体の収縮を抑制することができない場合がある。高炉スラグ微粉末が100質量部に対して
石灰系膨張材
又はカルシウムサルホアルミネート系膨張材が20質量部を超えると、硬化体中に未反応の石こうが残存して遅れ膨張を生じる場合があり、また、過剰な添加により硬化後に膨張する可能性がある。また、硬化体の凝結時間が遅延する場合がある。
【0018】
水硬性組成物中にSO
3を0.1質量%〜5.5質量%含むことを特徴とする水硬性組成物である。膨張材および/または石こうにより水硬性組成物中のSO
3を0.1質量%〜5.5質量%に調整することで、硬化体の収縮を抑制することができる。0.1質量%に満たないときは、硬化体の収縮を抑制することができない場合がある。5.5質量%を超えると硬化体中に含有する未反応の石こうにより硬化後に遅れ膨張が生じる場合がある。
【0019】
必要に応じてフライアッシュ、シリカフューム、メタカ
オリン、又は籾殻の焼却灰を添加する場合は水硬性組成物中に15質量%以下含有することが好ましい。フライアッシュ、シリカフューム、メタカ
オリン又は籾殻の焼却灰が15質量%を超えて含有すると、フライアッシュ、シリカフューム、メタカ
オリン、又は籾殻の焼却灰と水酸化カルシウムが反応により硬化体中の水酸化カルシウム含有量が減少して中性化が大きくなる可能性がある。
【発明の効果】
【0020】
高炉スラグを多量に使用したにもかかわらず、通常のセメントと同等の凝結時間、良好な強度発現が得られ、かつ中性化の抑制が可能となる高炉スラグ高含有の水硬性組成物を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
高炉スラグ微粉末は、比表面積で2000〜12000cm
2/gのものであればとくに限定されない。塩基度などの化学成分もとくに限定されず、JIS R 5211「高炉セメント」で使用される高炉スラグおよびJIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ」に適合するものが好ましい。
【0022】
石灰石微粉末は比表面積が2000〜12000cm
2/gのものであればとくに限定されない。比表面積が5000〜12000cm
2/gが好ましい。比表面積の大きい石灰石微粉末が好ましい理由は、水粉体比の小さい場合に高炉スラグによるダイラタンシーの抑制のためである。石灰石微粉末は、道路舗装用、脱硫用、充填材に用いられるがいずれの石灰石微粉末でも使用できる。石灰石の純度も一般に入手可能なものであればとくに限定されない。
【0023】
消石灰は、工業用石灰や効率高く排ガス中の酸性物質除去に用いる多孔性高比表面積消石灰などがあるが、とくに限定されない。膨張材は、主にCaO、CaSO
4を含む石灰系膨張材と、主にCaO、C
3A・CaSO
4、CaSO
4を含むカルシウムサルホアルミネート系膨張材があるが、両者とも使用できる。また、近年膨張性能を上げた石灰系又はカルシウムサルホアルミネート系の低添加型の膨張材も使用できる。膨張材の種類および組成は限定しないが、JIS A 6202「コンクリート用膨張材」に規定される膨張材が使用できる。ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントがあるがいずれのセメントでも使用できる。また、ポルトランドセメントの鉱物組成を調整したセメントも必要に応じて使用できる。
【0024】
水硬性組成物のSO
3量の調整は石こうを用いてよい。石こうは、二水石こう、半水石こう、無水石こうがある。石こうの種類は限定されないが、無水石こうが好ましい。天然無水石こうがより好ましい。石こうは刺激剤として添加してもよく、高炉スラグ微粉末に石こうを混合してもよい。SO
3量の調整は硬化体の収縮の抑制に寄与するため、膨張材中に含有するSO
3により調整してもよい。
【0025】
ポゾラン物質としてフライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、籾殻などの焼却灰などが使用できる。フライアッシュはとくに限定しないが、JIS A 6201に適合するものが好ましい。シリカフュームはとくに限定しないが、JIS A 6207に適合するものが好ましい。
【0026】
本願発明の水硬性組成物の製造方法は従来の方法で行えばよい。事前にプレミックスすることも、現場で各材料を調合することも可能である。混合方法も従来から用いられる方法を使用すればよい。
【0027】
水硬性組成物は、コンクリート用混和材、グラウト、ペーストとして用いてもよいし、従来からモルタルおよびコンクリートに用いられている細骨材と粗骨材を使用してモルタル又はコンクリートとして用いてもよい。化学混和剤は、通常使用されるAE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE助剤、高機能減水剤などJIS A 6204「コンクリート用化学混和剤」に適合するものを用いることもできる。必要に応じて収縮低減剤、増粘剤、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、鋼繊維などコンクリート等に用いられる添加材料を使用できる。
【0028】
コンクリートは、現場練りコンクリート、通常のレディミクストコンクリート、およびコンクリートブロック、ボックスカルバート、セグメントなどのコンクリート製品に用いることができる。コンクリート製品は、蒸気養生時に高炉スラグ微粉末の水和反応が高温でより活性となるので好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこの実施例に範囲に限定しない。
使用材料を以下に示す。
高炉スラグ微粉末 :製品名セラメント(石こう無し;株式会社デイ・シイ製)、セラメントA(石こう有りSO
3=2.1%;株式会社デイ・シイ製)
石灰石微粉末 :宮城石灰工業株式会社製
シリカフューム :エジプト製
刺激剤A :消石灰 JIS特号(奥多摩工業株式会社製)
刺激剤B :多孔質高比表面積消石灰(奥多摩工業株式会社製)
刺激剤C :石灰系膨張材 製品名エクスパン(太平洋マテリアル株式会社製)SO
3=15.4%
刺激剤D :カルシウムサルホアルミネート系膨張材 製品名パワーCSA(電気化学工業株式会社製)SO
3=18.5%
刺激剤E :普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)SO
3=2.2%
【0030】
表1に配合を示す。ポゾランの割合とSO
3量は水硬性組成物に対する割合(質量%)であり、刺激剤割合とその他は高炉スラグ微粉末100質量部に対する質量部で表示してある。表1のNo.2からNo.17が実施例であり、No.1、No.18、No.19が比較例である。また、No.5の高炉スラグ微粉末のみ石こう無しを用い、その他の配合の高炉スラグ微粉末は石こう有りを用いた。
【0031】
【表1】
【0032】
試験例1 ペーストでの検討
表1の配合の粉体に水を加えて練り混ぜて、水/高炉スラグ微粉末=50%のペーストを作成し、材齢28日の試料について回折X線分析により水和物の確認と水酸化カルシウム含有量の定量を行った。また、ペースト中の水酸化カルシウムの含有量はTG−DTA(示差熱−熱重量同時測定)で400℃から500℃における水酸化カルシウムの脱水量から無水物換算して求めた。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
比較例(No.1、No.18、No.19)では、「水酸化カルシウム」、「エトリンガイト」および「モノカーボネート/ヘミカーボネート」のうちの少なくとも一つの水和物が生成されていない。しかし、実施例(No.2〜No.17)では、水和物に水酸化カルシウムとエトリンガイトおよびモノカーボネート/ヘミカーボネートがすべて生成された。比較例ではペースト中の水酸化カルシウムの含有量は少ない。実施例では、水酸化カルシウムの含有量は5〜12%程度であった。
【0035】
試験例2
モルタルにおける検討
表1の配合の粉体に細骨材と水を加えて練り混ぜ、水/高炉スラグ微粉末=50%、単位水量275kg/m
3の混合物(便宜的に「モルタル」という。)を作成し、材齢3日、7日、28日で圧縮強度試験を行った。凝結試験は、「JIS A 1147」に準拠して行った。中性化試験は、水/高炉スラグ微粉末=50%のモルタルを28日間水中養生した後、20℃、相対湿度60%で28日間気中養生してから、5%のCO
2濃度で促進中性化を行い、「JIS A 1152」に準拠して中性化深さを測定した。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3の結果より、比較例であるNo.1、No.18およびNo.19では、凝結時間が遅く中性化深さが他の水準より大きくなった。とくに、No.1とNo.19では、圧縮強度も他の水準より低い結果となった。実施例では、通常のセメントと同等の凝結時間、良好な強度発現が得られ、かつ中性化の抑制が可能となった。
【0038】
試験例3
コンクリートにおける検討
No.9とNo.11の配合の粉体に細骨材と粗骨材と水を加えて混合物(便宜的に「コンクリート」という。)を作成し、当該コンクリートの性質を確認した。このコンクリートでは、水/高炉スラグ微粉末を40%、単位水量を160kg/m
3、細骨材率(s/a)を43.0%とした。No.9については、水/高炉スラグ微粉末を50%とした場合についても試験を行った。測定内容は、凝結と材齢7日の強度および自己収縮とした。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4の結果より、実施例は一般的なコンクリートの製作が可能であることを確認した。