(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137851
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】加熱加圧装置および加熱加圧方法
(51)【国際特許分類】
B30B 5/02 20060101AFI20170522BHJP
B30B 15/34 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B30B5/02 Z
B30B15/34 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-18465(P2013-18465)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-147957(P2014-147957A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 弘行
(72)【発明者】
【氏名】小島 茂
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−142862(JP,A)
【文献】
特開2003−039200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 5/02
B30B 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が他方に向かって移動可能に形成され、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形する第1の加圧部材および第2の加圧部材と、
前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材との間に介装し、内部に常温で流動性のある流体であり、かつ、430℃で熱分解せず流動性を維持する加圧液が充満され、かつ、被加圧物に向かう面に薄膜が形成されてなる加圧力均一化部材と、
前記加圧液を所定温度加熱する加熱装置と、
前記加圧力均一化部材と前記加熱装置の間で前記加圧液を循環させる循環ラインと、
前記加圧液を所定温度に加熱するように前記加熱装置を制御する制御装置と、
前記第1の加圧部材または前記第2の加圧部材のいずれか一方に設けられたシール部材と、
を有し、
前記薄膜がエラストマーであり、
前記第1の加圧部材、前記第2の加圧部材および前記シール部材により密閉空間を形成し、
前記密閉空間と連通する排気路と、前記排気路に設けられた減圧ポンプと、を更に備えることを特徴とする加熱加圧装置。
【請求項2】
前記被加圧物は、電子部品であることを特徴とする請求項1に記載の加熱加圧装置。
【請求項3】
前記加圧液は、加熱温度に応じて、水、シリコーンオイル、イオン液体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱加圧装置。
【請求項4】
少なくとも一方が他方に向かって移動可能に形成され、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形する第1の加圧部材と第2の加圧部材との間に介装された加圧力均一化部材の内部に充満させる、常温で流動性のある流体であり、かつ、430℃で熱分解せず流動性を維持する加圧液を前記加圧力均一化部材と加熱装置との間で循環させて加熱する工程と、
前記第1の加圧部材および前記第2の加圧部材との間に被加圧物を載置する工程と、
前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材の少なくとも一方を他方に向かって移動させ、前記第1の加圧部材、前記第2の加圧部材および前記第1の加圧部材または前記第2の加圧部材のいずれか一方に設けたシール部材により、前記被加圧物を内包する密閉空間を形成する工程と、
前記密閉空間と連通する排気路と、前記排気路に設けられた減圧ポンプとによって、前記密閉空間内を脱気する工程と、
前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材との間に介装された前記加圧力均一化部材の内部に前記加圧液を充満させて液圧を前記被加圧物に印加する工程と、
を有し、
前記加圧力均一化部材の前記被加圧物に向かう面にはエラストマーからなる薄膜が形成されていることを特徴とする加熱加圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、加熱加圧装置および加熱加圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の製造におけるプリント基板上への電子部品の装着に接着剤が用いられている。熱硬化性樹脂から成る接着剤が塗布されたプリント基板上にそれぞれ電子部品を配置して仮固定した後、接着剤の硬化温度に加熱して本圧着を行うことでプリント基板と前記電子部品との接着が行われる。通常、装着される電子部品の高さが、それぞれ異なるため、複数の電子部品をプリント基板毎に一括して仮固定の後に本圧着を行うと、電子部品の高さの違いによって加圧力が不均一となり、プリント基板に対する接着力が充分に得られない電子部品が生じる。このため、従来は、仮固定及び本圧着工程はプリント基板毎ではなく、電子部品毎に行われていた。
【0003】
しかし、電子部品毎に仮固定した後に本圧着を行うと、基板に搭載される電子部品の種類に応じて、複数回に亘って仮固定ならびに本圧着工程が必要になり、その結果、製造が長時間化し、煩雑な作業を要することになる。
【0004】
一方、加圧装置として、例えば等方圧プレス装置が挙げられ、さらに、等方圧プレス装置として、例えば、特許文献1には、被プレス処理物を封入する圧力容器と、液体を入れたタンクと、該タンクの液体を前記圧力容器に注入して前記被プレス処理物を等方圧プレスする昇圧ポンプとを具備する装置が、提案されている。そして、前記等方圧プレス装置は、例えば、温水や油などを圧力媒体として利用して積層物等の被プレス処理物を等方圧プレスして接着剤等の処理するものであり、ワークとして電子部品をプレスする場合には、予め電子部品を減圧密封用の袋に格納したものを被プレス処理物として、等方圧加圧を行っている。
【0005】
また、特許文献2には、加圧装置として、複数の加圧型で被加圧物を狭持し、かつ前記加圧型と被加圧物との間に介在パッドを介在させて加圧を行う装置が提案され、加圧パッドは、流動性があり、柔軟なゲル状材料の流動性層を含むパッドである。
【0006】
特許文献1に記載の等方圧プレス装置は、いわゆる「温水ラミネータ」と言われるものであり、液中でワークである電子部品を減圧密閉用の袋を介して加圧することから、電子部品にかかる圧力が均一になるという利点を有するものの、電子部品を内包させた減圧密閉用の袋は、プレス処理後はその都度廃棄されることから、製造コストが嵩んでしまう。また、圧力媒体として水を用いた場合、安全上の点から常圧時に水が沸騰しない温度(例えば90℃)が加熱の上限になり、圧力媒体として油を使用した場合、タンクから液体注入される連結部のシール部分と圧力容器との熱膨張率との相違を考慮して、加圧上限温度は、例えば120℃程度であった。
【0007】
また、特許文献2に記載の加圧装置は、いわゆる「ドライラミネータ」と言われるものであり、上述の「温水ラミネータ」に用いた減圧密閉用の袋が不要になるため、作業性が向上し、廃棄物が発生しないという利点を有するものの、流動性があり柔軟なゲル状材料の流動性層を含む加圧パッドを用いることから、印加可能な圧力の上限は20MPa程度であった。
【0008】
電子基板の小型化集積化に伴い、部品の微小化に加え、積層数が増加し、これに伴い各層の接着性を向上させる意味から高い接着強度があり、硬化温度が高い接着剤、例えば熱硬化性樹脂から成る接着剤の硬化温度に相当する200℃以上で加温が可能な加圧装置が望まれている。
【0009】
そこで、特許文献3には、少なくとも一方が他方に向かって移動可能に形成され、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形することのできる第1の加圧部材および第2の加圧部材と、前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材との間に介装され、内部に低くとも200℃で溶融可能な金属類が充填され、かつ、被加圧物に向かう面に薄膜が形成されてなる加圧力均一化部材と、前記被加圧物、加圧部材及び加圧力均一化部材を加熱する加熱装置とを有する加熱加圧装置が提案され、前記薄膜が金属箔であり、前記金属類は、融点が200℃から350℃の合金であることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4067232号明細書
【特許文献2】特許第3949072号明細書
【特許文献3】特許第4311873号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3に記載の加熱加圧装置は、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形することのできる第1の加圧部材および第2の加圧部材との間に介装される加圧力均一化部材に、200℃で溶融可能な金属類が充填されることから、200℃以上の温度で電子部品の等方圧プレスが行えるという利点を有する。但し、電子部品の加熱加圧時には、充填された金属類を所定温度まで加温維持することで溶融状態の流体に保つ必要があった。そのため、加圧力均一化部材ならびに加圧力均一化部材に隣接する加圧部材を加熱する加熱装置は、高い温度制御が要求される。さらに、加圧力均一化部材に金属類を用いることから、常温に戻ったときの保守に手間が掛かる。
【0012】
なお、金型を用いて部品を成形するハイドロフォーミング方法が知られているが、ハイドロフォーミング方法は、一般に、圧力媒体として、水を用いることから、加圧温度は、水の沸点以下(例えば90℃)に押さえる必要があり、電子部品の接着剤に用いる、例えば熱硬化性樹脂から成る接着剤を十分に溶融させて接着させることは困難である。
【0013】
本発明は、以上のような状況を鑑みてなされたものであり、従来に比べ加熱温度管理が容易であり、かつ、電子部品に対して減圧密閉用の袋を用いることなく、直接均一に加熱加圧ができる加熱加圧装置および加熱加圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成するに至った。本願発明は、以下の特徴を有する。
【0015】
(1)少なくとも一方が他方に向かって移動可能に形成され、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形する第1の加圧部材および第2の加圧部材と、前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材との間に介装し、内部に常温で流動性がある流体であり、かつ、430℃で熱分解などの化学変化をせずに流動性を維持する加圧液が充満され、かつ、被加圧物に向かう面に薄膜が形成されてなる加圧力均一化部材と、前記加圧液を所定温度加熱する加熱装置と、前記加圧
力均一化部材と前記加熱装置の間で前記加圧液を循環させる循環ラインと、前記加圧液を所定温度に加熱するように前記加熱装置を制御する制御装置と、
前記第1の加圧部材または前記第2の加圧部材のいずれか一方に設けられたシール部材と、を有し、前記薄膜がエラストマーである加熱加圧装置であ
り、前記第1の加圧部材、前記第2の加圧部材および前記シール部材により密閉空間を形成し、前記密閉空間と連通する排気路と、前記排気路に設けた減圧ポンプおよび開閉弁と、を更に備える。
【0016】
(2)前記被加圧物は、電子部品である、上記(1)に記載の加熱加圧装置である。
【0017】
(3)前記加圧液は、加熱温度に応じて、水、シリコーンオイル、イオン液体からなる群から選択される、上記(1)または(2)に記載の加熱加圧装置である。
【0018】
(4)少なくとも一方が他方に向かって移動可能に形成され、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形する第1の加圧部材および第2の加圧部材との間に介装された加圧力均一化部材の内部に充満させる、常温で流動性がある流体であり、かつ、430℃でも熱分解などの化学変化をせずに流動性を維持する加圧液を前記加圧力均一化部材と加熱装置との間で循環させて加熱する工程と、前記第1の加圧部材および前記第2の加圧部材との間に被加圧物を載置する工程と、前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材の少なくとも一方を他方に向かって移動させ
、前記第1の加圧部材、前記第2の加圧部材および前記第1の加圧部材または前記第2の加圧部材のいずれか一方に設けたシール部材により、前記被加圧物を内包する密閉空間を形成する工程と、
前記密閉空間と連通する排気路と、前記排気路に設けられた減圧ポンプとによって、前記密閉空間内を脱気する工程と、前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材との間に介装された前記加圧力均一化部材の内部に前記加圧液を充満させて液圧を前記被加圧物に印加する工程と、を有
し、前記加圧力均一化部材の前記被加圧物に向かう面にはエラストマーからなる薄膜が形成されている加熱加圧方法である。
【発明の効果】
【0019】
本願発明における加熱加圧装置によれば、従来に比べ加熱温度管理が容易であり、かつ、被加圧物(例えば、電子部品)に対して減圧密閉用の袋を用いることなく、直接均一に加熱され、かつ、均一に圧力が印加される。これにより、比較的硬化温度が高く、流動性が良い高接着強度の熱硬化型接着剤を使用することができ、積層間の接着剤が十分に密着して加圧することができるため、得られた電子部品の接着品質が従来に比べ向上する。
【0020】
本願発明における加熱加圧方法によれば、従来に比べ加熱温度管理が容易であり、かつ、被加圧物(例えば、電子部品)に対して減圧密閉用の袋を用いることなく、直接均一に加熱され、かつ、均一に加圧される。これにより、被加圧物が電子部品の場合、積層間の接着剤が十分に溶融して加圧されるため、得られた電子部品の品質が従来に比べ向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る加熱加圧装置の構成の一例を例示する概略図である。
【
図2】本実施形態に係る加熱加圧装置の要部の断面図である。
【
図3】本実施の形態における加熱加圧装置の他の要部の構成の一例を説明する図である。
【
図4】本実施の形態に係る加熱加圧方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態の加熱加圧装置は、第1の加圧部材および第2の加圧部材と、加圧力均一化部材と、加熱装置と、制御装置とを有する。
【0023】
本実施形態における第1の加圧部材および第2の加圧部材は、少なくとも一方が他方に向かって移動可能に形成され、相互の挟圧力で被加圧物を加圧成形する部材である。 第1の加圧部材および第2の加圧部材は、被加圧物に相互の挟圧力を与えることのできる部材であれば、特に制限がなく、一方の加圧部材が他方の加圧部材に向かって移動するように形成されても良く、第1の加圧部材及び第2の加圧部材が相互に向かって移動するように形成されていても良い。
【0024】
前記第1の加圧部材、及び第2の加圧部材の形状は、装置の形状あるいは被加圧物の形状等により適宜選択され、例えば、第1の加圧部材の形状は、円柱形でも角柱形でもよく、特に限定がない。また被加圧物の形状により、受圧面積をなるべく小さくするように、前記第1の加圧部材および第2の加圧部材の形状を適宜選択することは、生産効率、装置の小型化等の点から好ましい。
【0025】
前記第1の加圧部材、及び第2の加圧部材の少なくともいずれかには、加圧部材を押圧する押圧部材が備えられる。この押圧部材は、前記第1又は第2の加圧部材と一体化されていてもよいし、独立した部材であってもよい。この押圧部材は、被加圧物に圧力を作用させることができるように形成されていれば特に制限がなく、流体の圧入による圧力で移動して被加圧物を加圧するように形成されていても良く、機械動力または機械的駆動力により移動して被加圧物を加圧するように形成されていても良い。この押圧部材としては、例えばピストンと油圧シリンダとからなるシリンダ装置、及びギヤモータとギヤシステムとからなるギヤ式装置等が挙げられる。
【0026】
さらに、
図1を用いて本実施形態の加熱加圧装置の一例について説明する。本実施形態の加熱加圧装置1000は、第1の加圧部材である上型10と、第2の加圧部材である下型12と、放熱フィン90と、下型12を昇降駆動させるシリンダ装置92とを有する。また、本実施形態の加熱加圧装置1000の上型10および下型12には、それぞれ加熱ヒータ40,64が設けられ、上型10には、加圧力均一化部材6が内装されている。さらに、本実施形態の加熱加圧装置1000は、加圧力均一化部材6に用いる加圧液34が貯留されたタンク200と、タンク200から送液される加圧液34を加熱する加熱装置であるヒータ300と、加圧液34が加圧力均一化部材6とタンク200ならびにヒータ300とを循環する循環ラインにそれぞれ設けられた開閉弁102,104,204とを有し、また、タンク200から送液され被加圧物に圧力を印加する際に加圧力均一化部材6内の加圧液34を昇圧する昇圧ポンプ208と、昇圧ポンプ208にて昇圧されヒータ300により加熱された加圧液34を加圧力均一化部材6に送液するラインに設けられた開閉弁106と、を有する。また、タンク200には、加圧液34を一定温度に冷却するためのチラー202が設けられ、また、加圧力均一化部材6からタンク200に加圧液34を戻すラインには熱交換器306が設けられ、熱交換器306の熱はヒータ300にて再利用される。
【0027】
また、本実施形態の加熱加圧装置1000は、放熱フィン90が設けられたシリンダ91(
図2に示す)を介して下型12を昇降させるシリンダ装置92を有し、本実施の形態では、シリンダ装置92は水圧式を採用し、水が貯留されたタンク400と、タンク400とシリンダ装置92との水の循環ラインには、開閉弁112,114,116が設けられている。さらに、本実施形態の加熱加圧装置1000は、シリンダを上昇させる際にシリンダ装置92に送液するラインに、ポンプ406と開閉弁120が設けられ、また、タンク400から水が送液され被加圧物を加圧する際にシリンダ装置92のシリンダ91(
図2に示す)を上昇させ下型12を昇圧するための昇圧ポンプ408と、昇圧ポンプ408にて昇圧された水をシリンダ装置92に送液するラインに設けられた開閉弁118と、を有する。なお、ここでは、水圧式の例にとり説明したが、これに限るものではなく、油圧式であってもよく、その場合、タンク400には油が貯留されることになる。
【0028】
また、下型12には、後述するように、被加圧物に含まれる揮発性成分およびその他の加熱反応により生成するガス、および、狭持の際に空間に存在する水蒸気を吸引するために減圧ポンプ130と連通した配管が設けられ、この配管には開閉弁110が設けられている。
【0029】
さらに、本実施形態の加熱加圧装置1000には、制御部100が設けられ、制御部100は、加熱ヒータ40,64および開閉弁102,104,106,108,110,112,114,116,118,120,204、ヒータ300、温度センサ302,304、ポンプ206,406ならびに、昇圧ポンプ208,408を制御している。さらに、制御部100には、後述する加圧液34の分解温度および被加圧物の加熱温度が予め格納されており、これに基づき、上述の加熱ヒータ40,64およびヒータ300を用いて加熱するとともに、温度センサ302,304からのフィードバックに応じて、加熱ヒータ40,64およびヒータ300を制御する。
【0030】
ここで、本実施形態における加圧力均一化部材6は、上型10と下型12との間に介装され、内部に常温で流動性のある流体であり、かつ、430℃で熱分解などの化学変化をせずに流動性を維持する加圧液34が充満され、かつ、被加圧物に向かう面に薄膜が形成されてなり、この加圧力均一化部材6は、第1の加圧部材と第2の加圧部材とで被加圧物を加熱しつつ挟圧するときに、被加圧物における被加圧表面に、均一な圧力を与えることができる。
【0031】
前記加圧液34としては、例えば、水、シリコーンオイル、イオン液体が挙げられ、イオン液体としては、例えば、商品名「EMI−BF
4」(CAS.No.143314−16−3、融点:13℃、分解温度354℃)、商品名「EMI−TF」(CAS.No.145022−44−2、融点:−10℃、分解温度:375℃)、商品名「EMI−TFSI」(CAS.No.174899−82−2、融点:−15℃、分解温度:428℃)、商品名「BMI−BF
4」(CAS.No.174501−65−6、融点:−85℃、分解温度:361℃)、商品名「BMI−PF
4」(CAS.No.174501−64−5、融点:10℃、分解温度:315℃)、商品名「BMI−TFSI」(CAS.No.174899−83−3、融点:−5℃、分解温度:422℃)が挙げられる。なお、前記イオン液の一部は、水に可溶であることから、水と混合して加熱温度を制御してもよい。
【0032】
前記薄膜としては、例えば、エラストマーが用いられ、エラストマーとしては、例えば、NBRゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマーなどが挙げられ、フッ素ゴムとしては、例えばフッ化ビニリデン系(FKM)ゴム、パーフルオロエラストマーとしては、例えば、商品名「カルレッツ(登録商標)」が挙げられる。
【0033】
本実施形態の加熱加圧装置における被加圧物を加圧する要部について、
図2に用いて説明する。なお、
図2に示す構成は、本願発明の一例であって、これに限定されるものではない。
図2に示すように、本実施形態の加熱加圧装置の要部は、上型10と、下型12と、下型12に取り付けられたサイド型14とからなり、後述するように、下型12を上型10に向けて移動させ、さらに、サイド型14のシール部材36と上型10とが圧接することによって、下型12のテーブル62に載置された被加圧物20が加圧される。ここで、被加圧物20が、接着剤が塗布されたプリント基板に電子部品を仮固定したものである場合、この加圧により、前記接着剤が加熱され、接着剤が熱硬化することで、電子部品がプリント基板に本圧着して固定される。
【0034】
上型10には、加圧液34が充填される加圧力均一化部材6と、加圧力均一化部材6に連通し加圧力均一化部材6内に加圧液34を流入させる加圧液流入路42と、加圧力均一化部材6に連通し加圧力均一化部材6から加圧液34を流出させる加圧液流出路44と、加圧力均一化部材6内の加圧液34を所定温度に加温する加熱ヒータ40とが設けられている。また、加圧力均一化部材6は、加圧液34を収容するとともに加圧液流入路42および加圧液流出路44と接続された容器と、容器の開口部を覆う薄膜32と、薄膜32の端部を容器側面に固定する固定部材(図示せず)とから成る。さらに、本実施の形態では、上型10の被加圧物20に接する面に、シート部材30が設けられ、シート部材30の端部は、シート固定部材46によって固定されている。これにより、仮に、薄膜32から加圧液34が漏れたとしても、シート部材30によって、被加圧物20に対する加圧液34の接触が防止される。また、本実施の形態では、加圧力均一化部材6の容器の側面に加圧液流入路42が設けられ、一方、加圧液流出路44は、加圧力均一化部材6の容器の上面に設けることが好ましい。これにより、被加圧物20に対する、加圧力均一化部材6内の加圧液34の圧力がより均一に保たれる。
【0035】
下型12には、被加圧物20を載置するテーブル62と、下型12を所定温度に加温するヒータ64と、シリンダ91と係合する凹部とが設けられている。さらに、下型12には、サイド型14の下部に設けられた当接枠58に当接可能なピン52と、ピン52の下部に装着されたバネ56とが備えられている。ここで、シリンダ装置92(
図1に示す)によって昇降するシリンダ91には、放熱フィン90(
図1に示す)が設けられ、さらに、下型12の凹部に当接するシリンダ91の上面には、断熱プレート66が設けられている。従って、シリンダ91が断熱プレート66を介して下型12に係合することで、下型12における熱効率が向上する。
【0036】
一方、サイド型14には、下型12のピン52と当接可能に設けられた当接枠58と、下型12の側面と密着可能に設けられたシール部材38と、上型10に向かって下型12を移動させたときに上型10の下面と密着可能に設けられたシール部材36とが備えられている。ここで、シール部材36,38としては、例えば、Oリングが用いられる。さらに、サイド型14には、被加圧物20に含まれる揮発性成分およびその他の加熱反応により生成するガス、および、狭持の際に空間に存在する水蒸気を、系外に排出するための排気路54と、排気路54に設けられ減圧ポンプ130と連通する配管に接続される開閉弁110とが設けられている。
【0037】
従って、シリンダ91によって、下型12が上型10に向かって移動し、これに伴い、サイド型14の上面のシール部材36が上型10に押し当てられると、下型12のピン52がサイド型14の当接枠58内を進行していき、下型12のバネ56が縮み、被加圧物20と加圧力均一化部材6とがシート部材30及び薄膜32を介して密着すると、上型10の下面とシール部材36,38と下型12の側面との間に密閉された空間が、形成される。そして、この密閉された空間内における上述したガスおよび水蒸気は、減圧ポンプ130を駆動させることにより、この空間と連通する排気路54を介し、開閉弁110を経由して系外に排出される。
【0038】
本実施形態の他の加熱加圧装置の要部について
図3を用いて説明する。なお、
図2に示す構成には、同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
図3に示すように、下型12のテーブル62に被加圧物20が載置可能な凹部が設けられている。これにより、被加圧物20は加熱加圧印加時のシール性が高くなる。
【0039】
以上の装置により、被加圧物20を加圧する動作について、
図1,2,4を用いて以下説明する。初期状態において、下型12は、上型10に対して下方に退避した位置にある。まず、制御部100は、開閉弁120,112を開け、電磁弁402を開け、開閉弁114,116,118を閉じて、ポンプ406を駆動させてタンク400から水を、開閉弁120を介してシリンダ装置92に送液する。これにより、シリンダ装置92によって、シリンダ91が上昇し、下型12が上昇する。そして、上型10と下型12とを接触させ、加圧力均一化部材6の薄膜32の面を平面状態に保つ。次いで、制御部100は、ヒータ300を所定温度に設定するとともに、開閉弁102,104を開け、開閉弁106,108を閉じ、ポンプ206を駆動させてタンク200から送液された加圧液をヒータ300にて加温して、開閉弁104を介して、加圧液流入路42を経由して加圧力均一化部材6の容器に送液し、さらに、加圧力均一化部材6の容器内の加圧液34を加圧液流出路44を経由し開閉弁102を介して熱交換器306を経由させ、ヒータ300へ戻すことによって、所定温度に加温された加圧液34を、再度、開閉弁104、加圧液流入路42を介して加圧力均一化部材6の容器に送液するように、循環させる(S500)。次に、制御部100は、開閉弁120,112,118を閉じ、電磁弁404を開け、開閉弁114,116を開けて、ポンプ406を駆動させてシリンダ装置92から水を、開閉弁114を介してタンク400に送液する。これにより、シリンダ装置92のシリンダ91が下降し、下型12が下降する。次いで、下降した下型12のテーブル62に被加圧物20を載置する(S502)。次に、制御部100は、開閉弁120,112を開け、電磁弁402を開け、開閉弁114,116,118を閉じて、ポンプ406を駆動させてタンク400から水を、開閉弁120を介してシリンダ装置92に送液する。これにより、シリンダ装置92のシリンダ91が上昇し、下型12が上昇する(S504)。
【0040】
さらに、下型12に載置された被加圧物20とシート部材30が密着し、上型10の下面とシール部材36,38と下型12の側面との間に密閉された空間が形成されると、この空間における、水蒸気、被加圧物20に含まれる揮発成分およびその他の加熱反応により生成するガスが、排気路54に連通された減圧ポンプ130によって、吸い出され、上記密閉された空間内は減圧、脱気される。
【0041】
このとき、加圧力均一化部材6の容器内に加圧液34が充満し、かつ、薄膜32が、柔軟で弾性力を有するので、被加圧物20は、その全ての表面において均一な力で、加圧力均一化部材6によって加圧される。また、被加圧物20の上面が複雑な形状であっても、薄膜32が、被加圧物20の上面に沿って密着するので、被加圧物20にほぼ均一に圧力と熱が加わる。ここで、上型10の加熱ヒータ40は、主に、加圧液34が所定温度に維持するように機能する。
【0042】
次いで、制御部100は、開閉弁102,104を閉じ、開閉弁106,108を開けて、さらに昇圧ポンプ208を駆動させ、タンク200より加圧液34を送液して、ヒータ300により所定温度に加温された加圧液34を昇圧し、加圧力均一化部材6の容器に送液する。これにより、被加圧物20に上方から加熱と同時に加圧される(S506)。
【0043】
さらに、制御部100は、開閉弁114,116,120を閉じ、開閉弁112,118を開け、電磁弁402を開け、昇圧ポンプ408を駆動させ、タンク400より水を送液して、さらに昇圧してシリンダ装置92に送液する。一方、下型12のヒータ64は、被加圧物20に印加する温度に下型12を保温するように機能する。これにより、被加圧物20に下方から加熱と同時に加圧される。
【0044】
この一連の動作によって、被加圧物20の被加圧表面の全ての面に、均一な加圧がなされるので、圧着不良を起こすおそれがない。被加圧物20が複数の高さの異なる電子部品を接着する基板でも、圧接不足が生じるおそれがない。
【0045】
所定時間の加圧の後、制御部100は、開閉弁102,104,106を閉じ、開閉弁108を開けて、加圧液34の循環を止め、さらに、開閉弁112,118,120を閉じ、開閉弁114,116を開けて、シリンダ装置92に送液された水を流出させて、下型12を下方に退避させる。
【0046】
この一連の動作は、加圧処理時間として、6〜10秒のサイクルが可能である。よって、従来からのプレス板で個々の電子部品を圧着する方法よりも生産効率を高めることができる。また、従来のような前記平行度に関しての厳密な調整、管理を行わなくても、被加圧物に均一な加圧をすることができ、圧着不良を起こすおそれがない。また、本実施形態の加熱加圧装置1000は、最高使用圧力が例えば120MPaであり、従来に比べ、高い圧力で加圧することができる。また、本実施形態の加熱加圧装置1000は、加圧する際の温度に応じて加圧液を選択することができるために、汎用性に富むとともに、加圧液が常温で流動性のある流体であることから、常温で固体である場合に比べ、装置停止時の保守などが容易であるという利点を有する。
【符号の説明】
【0047】
6 加圧力均一化部材、10 上型、12 下型、14 サイド型、20 被加圧物、30 シート部材、32 薄膜、34 加圧液、36,38 シール部材、40,64 加熱ヒータ、42 加圧液流入路、44 加圧液流出路、46 シート固定部材、52 ピン、54 排気路、56 バネ、58 当接枠、62 テーブル、66 断熱プレート、90 放熱フィン、91 シリンダ、92 シリンダ装置、100 制御部、102,104,106,108,110,112,114,116,118,120,204 開閉弁、130 減圧ポンプ、200,400 タンク、202 チラー、206,406 ポンプ、208,408 昇圧ポンプ、300 ヒータ、302,304 温度センサ、306 熱交換器、402,404 電磁弁、1000 加熱加圧装置。