(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリシロキサン100重量部に対して0.001〜10重量部の前記芳香族イミド化合物を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のネガ型感光性シロキサン組成物。
請求項1〜5のいずれか1項に記載のネガ型感光性シロキサン組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像し、硬化させることを含んでなる、素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ネガ型感光性ポリシロキサン組成物
本発明のネガ型感光性シロキサン組成物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、TMAH水溶液という)に対して、特定の溶解速度を有するポリシロキサン、光酸発生剤として放射線、特に波長が405nmまたは436nmの光を吸収して酸を発生する芳香族イミド化合物、および溶剤を少なくとも含有することを特徴とするものである。以下、本発明のネガ型感光性シロキサン組成物で使用される、特定のポリシロキサン、芳香族イミド化合物、および溶剤について、順次詳細に説明する。
【0017】
(I)ポリシロキサン
本発明による組成物は、ポリシロキサンを主成分として含んでいる。ポリシロキサンは、Si−O−Si結合を含む重合体をさすが、本発明においては非置換の無機ポリシロキサンのほかに有機基置換基により置換された有機ポリシロキサンも含めてポリシロキサンという。このようなポリシロキサンは一般にシラノール基またはアルコキシシリル基を有するものである。このようなシラノール基およびアルコキシシリル基とはシロキサン骨格を形成するケイ素に直接結合した水酸基およびアルコキシ基を意味する。ここで、シラノール基およびアルコキシシリル基は、組成物を用いて硬化膜を形成させるときに硬化反応を促進する作用があるほか、後述するケイ素含有化合物との反応にも寄与するものと考えられている。このため、ポリシロキサンはこれらの基を有することが好ましい。
【0018】
本発明において用いられるポリシロキサンは、その構造は特に制限されず、目的に応じて任意のものから選択することができる。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。
【0019】
また、有機ポリシロキサンを用いる場合、それに含まれる置換基は本発明の効果を損なわない限り任意のものから選択することができる。このような置換基としては、シロキサン構造を構成するSi−O結合を含まない置換基、具体的にはアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、およびアリール基などが挙げられる。
【0020】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、シラノール基またはアルコキシシリル基以外の反応性基、例えばカルボキシル基、スルホニル基、アミノ基などがシロキサン樹脂に含まれてもよいが、これらの反応性基は一般に塗布組成物の保存安定性を劣化させる傾向にあるため、少ないことが好ましい。具体的にはケイ素原子に結合している水素または置換基の総数に対して、10mol%以下であることが好ましく、全く含まれないことが特に好ましい。
【0021】
また、本発明による組成物は、基材上に塗布、像様露光、および現像によって硬化膜を形成させるためものである。このため、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要である。本発明においては露光された部分で硬化反応が起こり、現像液に不溶性となることで像が形成される。したがって、未露光部分におけるポリシロキサンは現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、形成される被膜の2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHということがある)水溶液への溶解速度が50Å/秒以上であれば露光−現像によるネガ型パターンの形成が可能であると考えられる。しかし、現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたポリシロキサンを適切に選択すべきである。
【0022】
しかしながら、単に溶解速度が速いポリシロキサンを選択すると、パターン形状の変形、残膜率の低下、透過率の減退などの問題点が発生することもある。そのような問題点を改良するために、溶解速度が遅いポリシロキサンを組み合わせたポリシロキサン混合物を用いることができる。
【0023】
このようなポリシロキサン混合物は、例えば
(Ia)プリベーク後の膜が、5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が3,000Å/秒以下である第一のポリシロキサンと
(Ib)プリベーク後の膜の、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が150Å/秒以上
であるポリシロキサンと
を含むものである。これらのポリシロキサンについて説明する。
【0024】
(a)第一のポリシロキサン
第一のポリシロキサン(Ia)は、プリベーク後の膜が、5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が一般に3,000Å/秒以下、好ましくは2,000Å/秒以下、であるポリシロキサンであり、単独では2.38%TMAH水溶液に難溶性のものである。
【0025】
この第一のポリシロキサンは、トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランからなる群から選択されるシラン化合物(ia)を、塩基性触媒の存在下で加水分解させ、縮合させて得ることができる。
【0026】
原料として用いられるトリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランからなる群から選択されるシラン化合物(ia)は、任意のものを用いることができるが、例えば下記一般式(i)で表されるものを用いることができる。
R
1nSi(OR
2)
4−n (i)
(式中、R
1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、nは0または1であり、R
2は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0027】
一般式(i)において、R
1としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、およびトリル基などが挙げられる。特にR
1がメチル基の化合物は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、フェニル基は、当該ポリシロキサンの溶剤への溶解度を高め、硬化膜がひび割れしにくくなるため、好ましい。
【0028】
一方、一般式(i)において、R
2としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。一般式(i)において、R
2は複数含まれるが、それぞれのR
2は、同じでも異なっていてもよい。
【0029】
上記一般式(i)で示されるトリアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中で、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランは、入手しやすく好ましい化合物である。
【0030】
また、上記一般式(i)で示されるテトラアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、その中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどは反応性が高く、好ましい。
【0031】
第一のポリシロキサン(Ia)の製造に用いられるシラン化合物(ia)は、1種類であっても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、シラン化合物(ia)としてテトラアルコキシシランを用いると、パターンだれが低減する傾向がある。これは、ポリシロキサンの架橋密度が増加するためと考えられる。しかしながら、テトラアルコキシランの配合比が多すぎると感度が低下する可能性がある。このため、ポリシロキサン(Ia)の原料としてテトラアルコキシシランを用いる場合には、その配合比はトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの総モル数に対して、0.1〜40モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
【0032】
本発明に用いられるポリシロキサン(Ia)は、上記のシラン化合物を、塩基性触媒の存在下で加水分解させ、縮合させることにより製造されるものであることが好ましい。
【0033】
例えば、有機溶媒、塩基性触媒、および水からなる反応溶媒に、シラン化合物またはシラン化合物の混合物を滴下し、加水分解および縮合反応をさせ、必要に応じて中和や洗浄による精製、また濃縮を行った後、必要に応じて反応溶媒を所望の有機溶媒に置換することで製造することができる。
【0034】
反応溶媒に使用する有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテートなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、1,3−ジプロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を挙げることができる、これらの有機溶媒は、単独もしくは複数を組み合わせて使用することができる。また、有機溶媒の使用量は、一般にシラン化合物の混合液の0.1〜10重量倍であり、0.5〜2重量倍が好ましい。
【0035】
加水分解および縮合反応を実施する反応温度は一般に0〜200℃であり、10〜60℃が好ましい。このとき、滴下するシラン化合物の温度と反応溶媒の温度が同じでも異なってよい。反応時間は、シラン化合物の種類などによっても異なるが、通常は数十分〜数十時間であり、好ましくは30分以上である。加水分解および縮合反応における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、塩基性触媒量、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0036】
塩基性触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノ基を有するアルコキシシラン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、陰イオン交換樹脂やテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。触媒量はシラン化合物の混合物に対して0.0001〜10モル倍が好ましい。このような塩基触媒を用いて合成されたポリシロキサンは、150℃以上の温度をかけると硬化が速やかに始まり、焼成後もパターンだれを起こすことなく綺麗な形状を維持することが出来るという特徴がある。
【0037】
加水分解度は反応溶媒に添加する水の添加量により調整することができる。一般に、シラン化合物の加水分解性アルコキシ基に対し、水を0.01〜10モル倍、好ましくは0.1〜5モル倍の割合で反応させることが望ましい。水の添加量が上記範囲より少な過ぎると加水分解度が低くなり、組成物の被膜形成が困難となるので好ましくなく、一方、多過ぎるとゲル化を起こし易く、保存安定性が悪くなるので好ましくない。また、使用する水はイオン交換水または蒸留水が好ましい。
【0038】
反応終了後は、酸性化合物を中和剤として用いて反応溶液を中性もしくは弱酸性にしてもよい。酸性化合物の例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、またはフッ酸等の無機酸や、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、乳酸、アクリル酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、またはクエン酸の多価カルボン酸およびその無水物、p−トルエンスルホン酸、またはメタンスルホン酸等のスルホン酸等の有機酸が挙げられる。また陽イオン交換樹脂を用いて中和することもできる。
【0039】
中和剤の量は、反応後の反応溶液のpHに応じて、適宜、選択されるが、塩基性触媒に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、より好ましくは1〜1.1モル倍である。また、陽イオン交換樹脂を用いる場合には、陽イオン交換樹脂に含まれるイオン基の数が前記範囲内とすることが好ましい。
【0040】
中和後の反応溶液を必要性に応じて、洗浄し精製することもできる。洗浄方法は特に限定されないが、例えば中和後の反応溶液に疎水性有機溶剤と必要に応じて水を添加し、撹拌して、ポリシロキサンに有機溶剤を接触させて、少なくともポリシロキサン(Ia)を疎水性有機溶剤相に溶解させる。このとき疎水性有機溶剤としては、ポリシロキサン(Ia)を溶解し、水と混和しない化合物を使用する。水と混和しないとは、水と疎水性有機溶剤とを十分混合した後、静置すると、水相及び有機相に分離することを意味する。
【0041】
好ましい疎水性有機溶剤としては、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ブタノールなどの水に対し溶解性の乏しいアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。洗浄に用いられる疎水性有機溶剤は、反応溶媒として用いられた有機溶媒と同一であってよいし、異なってもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。このような洗浄により、反応過程において使用した塩基性触媒、中和剤、ならびに中和により生成した塩、さらに反応の副生成物であるアルコールや水の大半は水層に含まれ、有機層から実質的に除かれる。洗浄回数は必要性に応じて変更することができる。
【0042】
洗浄時の温度は、特に制限されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは10℃〜60℃である。また、水相と有機相とを分離する温度もまた、特に限定されないが、好ましくは0℃〜70℃、分液時間を短縮する観点から、より好ましくは10℃〜60℃である。
【0043】
このような洗浄をすることによって、組成物の塗布性や保存安定性を改良することができる場合がある。
【0044】
洗浄後の反応溶液は、本発明による組成物にそのまま添加することもできるが、必要に応じて濃縮により溶媒や残存する反応の副生成物であるアルコールや水を除去して濃度を変更したり、さらに溶媒を他の溶媒に置換することもできる。濃縮を実施する場合、常圧(大気圧)または減圧下で実施することができ、濃縮度は留出量を制御することで任意に変更できる。濃縮時の温度は一般に30〜150℃であり、好ましくは40〜100℃である。また目的の溶媒組成になるよう適時所望の溶媒を添加しさらに濃縮することで溶媒置換することもできる。
【0045】
以上の方法により本発明のシロキサン樹脂組成物に用いられるポリシロキサン(Ia)を製造することができる。
【0046】
(b)第二のポリシロキサン
第二のポリシロキサンは、プリベーク後の膜が、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が150Å/秒以上、好ましくは500Å/秒以上、であるポリシロキサンである。
【0047】
このポリシロキサン(Ib)は、トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランからなる群から選択されるシラン化合物(ib)を、酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解させ、縮合させることにより製造できる。
【0048】
ここで、この製造方法の条件は、ポリシロキサン(Ia)の製造方法と同様の方法を用いることができる。ただし、反応触媒としては、塩基性触媒のほかに酸性触媒を用いることができる。また、目的の溶解速度を達成するために、反応溶媒、特に水の添加量、反応時間、反応温度などの条件が適切に調製される。
【0049】
シラン化合物(ib)は、ポリシロキサン(Ia)の原料として用いるシラン化合物(ia)と同一であっても異なってもよい。ここで、シラン化合物(ib)として、テトラアルコキシシランを用いるとパターンだれが低減される傾向がある。
【0050】
なお、第一のポリシロキサン(Ia)の原料として、比較的多量のテトラアルコキシシランを用いた場合には、第二のポリシロキサン(Ib)の原料としてテトラアルコキシシランの配合比は低いことが好ましい。これは、全体としてテトラアルコキシシランの配合比が高いと、シラン化合物の析出が起こったり、形成される被膜の感度低下が起こったりするためである。このため、ポリシロキサン(Ia)および(Ib)の原料である、シラン化合物(ia)および(ib)の総モル数に対して、テトラアルコキシシランの配合比が1〜40モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
【0051】
また、ポリシロキサン(Ib)の製造には、触媒として酸性触媒を用いることができる。用いることができる酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物が挙げられる。触媒の添加量は、酸の強さにもよるが、シラン化合物の混合物に対して0.0001〜10モル倍が好ましい。
【0052】
ポリシロキサン(Ib)の製造に酸性触媒を用いた場合、塩基性触媒を使用した場合と同様に、反応終了後に反応溶液を中和してもよい。この場合には、塩基性化合物が中和剤として使用される。中和に用いられる塩基性化合物の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、またはジエタノールアミン、等の有機塩基、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム等の無機塩基、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。陰イオン交換樹脂を用いることもできる。中和剤の量は、塩基性触媒を用いた場合と同様でよい。反応後の反応溶液のpHに応じて、適宜、選択されるが、酸性触媒に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、より好ましくは1〜1.1モル倍である
【0053】
以上により本発明のシロキサン樹脂組成物に用いられるポリシロキサン(Ib)を製造することができる。
【0054】
ポリシロキサン(Ib)の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、後記するとおり150Å/秒以上であることが必要であり、500Å/秒以上であることが好ましい。ポリシロキサン(Ib)の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が150Å/秒未満であると、ポリシロキサン(Ia)と(Ib)の混合物の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度を50〜5,000Å/秒とするためには、難溶性であるポリシロキサン(Ia)の含有量を極力減らす必要があるが、ポリシロキサン(Ia)の含有量が少ないとパターンの熱ダレを防止することが困難になる。
【0055】
(c)ポリシロキサン混合物(I)
本発明には、上記のポリシロキサン(Ia)とポリシロキサン(Ib)を含むポリシロキサン混合物(I)を用いることができる。ポリシロキサン(Ia)とポリシロキサン(Ib)の配合比は特に限定されないが、ポリシロキサン混合物(I)に含まれるポリシロキサン(Ia)/ポリシロキサン(Ib)の重量比が1/99〜80/20であることが好ましく、20/80〜50/50であることがより好ましい。
【0056】
ポリシロキサン(Ia)の5%TMAH水溶液に対する溶解速度が3,000Å/秒以下、ポリシロキサン(Ib)の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が150Å/秒以上であれば、溶け残りや感度低下の問題は顕著でなくなるが、本発明のネガ型感光性シロキサン組成物から形成される硬化膜の膜厚や現像時間等に応じて、ポリシロキサン混合物(I)の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度を適宜設定することもできる。ポリシロキサン混合物(I)の溶解速度は、ポリシロキサン(Ia)及び(Ib)の混合割合を変えることで調整でき、ネガ型感光性シロキサン組成物に含まれる感光剤の種類や添加量により異なるが、例えば、膜厚が0.1〜10μm(1,000〜100,000Å)であれば、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50〜5,000Å/秒が好ましい。
【0057】
(d)TMAH水溶液に対するアルカリ溶解速度
本発明において、ポリシロキサン(Ia)および(Ib)は、それぞれTMAH水溶液に対して特定の溶解速度を有する。ポリシロキサンのTMAH水溶液に対する溶解速度は、次のように測定する。ポリシロキサンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)に35重量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したポリシロキサン溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウエハ上にピペットを用い1ccシリコンウエハの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶剤を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製)で、塗布膜の膜厚測定を行う。
【0058】
次に、この膜を有するシリコンウエハを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度のTMAH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、被膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウエハ端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウエハをTMAH水溶液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をポリシロキサンの溶解速度とする。
【0059】
(II)芳香族イミド化合物
本発明によるネガ型感光性ポリシロキサン組成物は、光酸発生剤として放射線を吸収して酸を発生する芳香族イミド化合物を用いることを特徴の一つとしている。従来用いられていたイオン性の酸発生剤、例えばスルホニウム化合物の熱分解温度が一般に350℃以上であるのに対して、芳香族イミド化合物は200℃程度の低い温度で熱分解が開始されるという特徴がある。このため、従来の酸発生剤を用いた組成物よりも低い温度での成膜が可能となる。そして、このような芳香族イミド化合物は、従来の酸発生剤と比較して、より長波長の光、例えばg線やh線を吸収して酸を発生することができるので、そのような波長域で硬化性組成物の感度を改良することができる。さらには芳香族イミド化合物は溶解性が相対的に高いので、組成物の調製が容易であり、また硬化膜に付着した化合物は洗浄によって容易に除去することができる。そして、化合物の合成も簡便でありコストの観点からも好ましいものである。
【0060】
本発明において、光酸発生剤として用いる芳香族イミド化合物のうち、好ましいものは下記式(A)で表される構造を有するものである。
【化1】
(式中、R
11は、炭素数1〜7の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基、またはそれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基であり、
R
12はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基であって、前記脂肪族基および芳香族基は、置換されていても非置換であってもよく、またヘテロ原子を含有していてもよく、
pはそれぞれ独立に0〜3の数を表し、pの総計は1以上であり、
pが2以上である時には、二つ以上のR
12が相互に連結して環状構造を形成してもよい。)
【0061】
式(A)中、R
11は、炭素数1〜7の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基、またはそれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基である。ここでハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。また前記アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、または環状アルキル基のいずれであってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、またはヘプチル基が挙げられる。さらに、アリール基としては、具体的には、フェニル基、又はトリル基が挙げられる。
【0062】
式(A)中、R
12は、水素、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18 の芳香族基であって、前記脂肪族基および芳香族基は、置換されていても非置換であってもよく、またヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子、または硫黄原子などを含有していてもよい。また、pはそれぞれ1以上0〜3の数であるが、式(A)で表される化合物は、1つ以上の置換基R
12を含んでおり、pの総計は1以上である。なお、二つ以上のR
12が相互に連結して環状構造を形成していてもよい。また、pが2以上である場合には、二つのpがそれぞれ1以上であることが好ましい。
【0063】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基などが挙げられ、またヘテロ原子で置換されたアルコキシ基なども挙げられる。
【0064】
脂肪族基としては炭素数1〜10のアルキル基がこのましく用いられる。アルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、s−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。また、炭素数1〜10のアルコキシ基やハロゲゲン原子で置換されたアルコキシ基を用いることもできる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−アミルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等が挙げられる。
【0065】
また、芳香族基としては、置換または非置換のフェニル基を用いることができる。具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−(n−プロピル)フェニル基、p−(i−プロピル)フェニル基、p−(n−ブチル)フェニル基、p−(i−ブチル)フェニル基、p−(s−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、p−(n−アミル)フェニル基、p−(i−アミル)フェニル基、p−(t−アミル)フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−エトキシフェニル基、m−エトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−(n−プロポキシ)フェニル基、p−(i−プロポキシ)フェニル基、p−(n−ブトキシ)フェニル基、p−(i−ブトキシ)フェニル基、p−(s−ブトキシ)フェニル基、p−(t−ブトキシ)フェニル基、p−(n−アミルオキシ)フェニル基、p−(i−アミルオキシ)フェニル基、p−(t−アミルオキシ)フェニル基、p−クロルフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−フルオロフェニル基、2,4−ジクロルフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−ジクロルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−ビフェニリル基等が挙げられる。これらのうちフェニル基が最も好ましい。
【0066】
また、芳香族基として、置換または非置換のナフチル基を用いることができる。具体的には、ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基等が挙げられる。
【0067】
その他、芳香族基としては、ビフェニル基、トリチル基、スチリル基、ジフェニルビニル基、フェニルエチニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、等を用いることもできる。また、ヘテロ原子を含有するアリール基としては、特に制限されないが、具体的には、以下の化合物を官能基化したものが挙げられる。
【化2】
【0068】
また、置換基R
12は、2価の連結基Lを含み、連結基Lを介して式(A)の芳香族イミド骨格に結合するものであってもよい。ここで、Lは任意の選択することができ、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エチレン結合、アセチレン結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、イミド結合、アミド結合、アゾ結合、またはスルフィド結合などが用いられる。
【化3】
【0069】
上記アルキレン基としては、特に制限されないが、具体的には、メチレン基、メチレンオキシメチレン基、フルオロメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【0070】
アルケニレン基としては、特に制限されないが具体的には、ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基等が挙げられる。
【0071】
アルキニレン基としては、特に制限されないが、具体的には、エチニレン基、プロピニレン基、ブタニレン基等が挙げられる。
【0072】
また、連結基Lは酸素原子や硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいてもよく、またハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0073】
前記式(A)で表される芳香族イミド化合物のうち、Lがアセチレン結合である、下記式(A0)で表される化合物が特に好ましい。
【化4】
(式中、R
11およびR
12は前記した通りである。)
【0074】
本発明に用いられる光酸発生剤のうち、式(A0)で表される芳香族イミド化合物は、g線(435nm)及びh線(405nm)に対して高感度かつ高効率な酸発生剤として機能し、汎用有機溶媒に対する溶解性も良好な化合物として用いることができる。
【0075】
上記式(A0)で表される化合物の打ち、R
12がフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオロフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ピリジル基、チエニル基などが合成の点からは好ましいものである。そのなかでも特に好ましい構造として、上記式(A0)のR
12がフェニル基で置換されたものがあげられる。
【0076】
このような化合物のうち、好ましいものとして以下のものを挙げることができる。
【化5】
【0077】
また、これら芳香族イミド化合物は、単独又は混合して使用することが可能である。
芳香族イミド化合物は、パターンの形状を強固にしたり、現像のコントラストをあげることにより解像度を改良することができる。本発明に用いられる芳香族イミド化合物は、放射線を照射すると分解して組成物を光硬化させる活性物質である酸を放出する光酸発生剤である。本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させる場合に用いられる放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げられ、特に限定されない。しかしながら、紫外光、特にg線(波長436nm)やh線(波長405nm)が好ましく用いられる。一方で、本発明に用いられる芳香族イミド化合物は400〜440nmの波長領域における吸光係数が高いことが好ましい。具体的には、紫外可視吸収スペクトルを測定した場合、400〜440nmのいずれかの波長における吸光係数が365nmにおける吸光係数よりも高いものであることがより好ましい。なお、ここで、紫外可視吸収スペクトルは、溶媒としてジクロロメタンを用いて測定する。測定装置は特に限定されないが、例えばVarian Cary 4000型紫外・可視分光光度計 (アジレント・テクノロジー社製)を用いて測定することができる
。
【0078】
なお、必要に応じて、芳香族イミド化合物以外の光酸発生剤を組み合わせて用いることができる。
【0079】
芳香族イミド化合物の添加量は、その化合物が分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部であり、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。添加量が0.001重量部より少ないと、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、添加効果を有さないことがある。一方、芳香族イミド化合物の添加量が10重量部より多い場合、形成される被膜にクラックが発生したり、芳香族イミド化合物の分解による着色が顕著になることがあるため、被膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、被膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0080】
(III)溶剤
本発明によるネガ型感光性シロキサン組成物は溶剤を含んでなる。この溶剤は、前記のポリシロキサン、芳香族イミド化合物、および必要に応じて添加される添加剤を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶剤の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。これらのうち、入手容易性、取扱容易性、およびポリマーの溶解性などの観点から、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類やエステル類を用いることが好ましい。かかる溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。
【0081】
ネガ型感光性シロキサン組成物の溶剤含有率は、組成物を塗布する方法などに応じて任意に調整できる。例えば、スプレーコートによって組成物を塗布する場合は、ネガ型感光性シロキサン組成物のうちの溶剤の割合が90重量%以上とすることもできる。また、大型基板の塗布で使用されるスリット塗布では通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上である。本発明のネガ型感光性シロキサン組成物の特性は、溶剤の量により大きく変わるものではない。
【0082】
(IV)添加剤
本発明によるネガ型感光性シロキサン組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、または増感剤などが挙げられる。
【0083】
現像液溶解促進剤、またはスカム除去剤は、形成される被膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。クラウンエーテルとして、最も単純な構造を有するものは、一般式(−CH
2−CH
2−O−)
nで表されるものである。本発明において好ましいものは、これらのうち、nが4〜7のものである。クラウンエーテルは、環を構成する原子総数をx、そのうちに含まれる酸素原子数をyとして、x−クラウン−y−エーテルと呼ばれることがある。本発明においては、x=12、15、18、または21、y=x/3であるクラウンエーテル、ならびにこれらのベンゾ縮合物およびシクロヘキシル縮合物からなる群から選択されるものが好ましい。より好ましいクラウンエーテルの具体例は、21−クラウン−7エーテル、18−クラウン−6−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、12−クラウン−4−エーテル、ジベンゾ−21−クラウン−7−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、ジシクロヘキシル−21−クラウン−7−エーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6−エーテル、ジシクロヘキシル−15−クラウン−5−エーテル、およびジシクロヘキシル−12−クラウン−4−エーテルである。本発明においては、これらのうち、18−クラウン−6−エーテル、15−クラウン−5−エーテルから選択されるものが最も好ましい。その添加量はポリシロキサン100重量部に対して、0.05〜15重量部が好ましく、さらに0.1〜10重量部が好ましい。
【0084】
密着増強剤は、本発明によるネガ型感光性シロキサン組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、焼成後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましく、イミダゾール類では、2−ヒドロキシベンゾイミダゾール、2−ヒドロキシエチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ヒドロキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−アミノイミダゾールが好ましく、2−ヒドロキシベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ヒドロキシイミダゾール、イミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0085】
シランカップリング剤は、公知のものが好適に使用され、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサン100重量部に対して、0.05〜15重量部とすることが好ましい。
【0086】
また、シランカップリング剤として、酸基を有するシラン化合物、シロキサン化合物などを用いることもできる。酸基としては、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基などが挙げられる。カルボキシル基やフェノール性水酸基のような一塩基酸基を含む場合には、単一のケイ素含有化合物が複数の酸基を有することが好ましい。
【0087】
このようなシランカップリング剤の具体例としては、下記の一般式(B):
X
nSi(OR
3)
4−n (B)
で表わされる化合物、もしくはそれを重合単位とした重合体が挙げられる。このとき、XまたはR
3が異なる重合単位を複数組み合わせて用いることができる。
【0088】
式中、R
3としては、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などのアルキル基が挙げられる。一般式(A)において、R
3は複数含まれるが、それぞれのR
3は、同じでも異なっていてもよい。
【0089】
Xとしては、チオール、ホスホニウム、ボレート、カルボキシル、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、スルホ、およびアルコール基等の酸基を持つもの、ならびに、これら酸基をアセチル、アリール、アミル、ベンジル、メトキシメチル、メシル、トリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリイソプロピルシリル、またはトリチル基等で保護されたもの、酸無水物基が挙げられる。
【0090】
これらのうち、R
3としてメチル基、Xとしてカルボン酸無水物基をもつもの、例えば酸無水物基含有シリコーンが好ましい。より具体的には下記一般式(B−1)で表される化合物(X−12−967C(商品名、信越化学工業株式会社製))や、それに相当する構造をシリコーン等のケイ素含有重合体の末端又は側鎖に含む重合体が好ましい。また、ジメチルシリコーンの末端部にチオール、ホスホニウム、ボレート、カルボキシル、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、およびスルホ基等の酸基を付与した化合物も好ましい。このような化合物としては下記一般式(B−2)および(B−3)で表される化合物(X−22−2290ASおよびX−22−1821(いずれも商品名、信越化学工業株式会社製))が挙げられる。
【化6】
【0091】
シランカップリング剤がシリコーン構造を含む場合、分子量が大きすぎると、組成物中に含まれるポリシロキサンとの相溶性が乏しくなり、現像液に対する溶解性が向上しない、膜内に反応性基が残り、後工程に耐えうる薬液耐性が保てない等の悪影響がある可能性がある。このため、ケイ素含有化合物の重量平均分子量は、5000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましい。なお、(B−1)に相当する重合体は、重量平均分子量が1,000以下であるような比較的小さなものが好ましいが、その他の繰り返し単位にシリコーン構造を含む重合体の場合には、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましい。また、酸基を有するシラン化合物、シロキサン化合物などをシランカップリング剤として用いる場合、その添加量はポリシロキサン100重量部に対して、0.01〜15重量部とすることが好ましい。
【0092】
重合禁止剤としてはニトロン誘導体、ニトロキシドラジカル誘導体、例えばヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン誘導体を添加することができる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサン100重量部対して、0.1〜10重量部とすることが好ましい。
【0093】
消泡剤としては、アルコール(C
1〜
18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200〜10,000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200〜10,000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および下記に詳細を示す有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの合計100重量部対して、0.1〜3重量部とすることが好ましい。
【0094】
また、本発明のネガ型感光性シロキサン組成物には、必要に応じ界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、塗布特性、現像性等の向上を目的として添加される。本発明で使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0095】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、または有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0096】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0097】
さらに両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0098】
これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その配合量は、本発明のネガ型感光性シロキサン組成物に対し、通常50〜2,000ppm、好ましくは100〜1,000ppmである。
【0099】
また、本発明のネガ型感光性シロキサン組成物には、必要に応じ増感剤を添加することができる。本発明のネガ型感光性シロキサン組成物で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、チオピリリウム塩、アセトフェノン類等、具体的には、p−ビス(o−メチルスチリル)ベンゼン、7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2、7−アミノ−4−メチルクマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ピリジルメチルヨージド、7−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−メチルキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、7−ジエチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−カルボエトキシキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、3−(2’−N−メチルベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、N−メチル−4−トリフルオロメチルピペリジノ−<3,2−g>クマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ベンゾチアゾリルエチルヨージド、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、並びに下記化学式で表されるピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。増感色素の添加により、高圧水銀灯(360〜430nm)などの安価な光源を用いたパターニングが可能となる。その添加量はポリシロキサン100重量部に対して、0.05〜15重量部が好ましく、さらに0.1〜10重量部が好ましい。
【化7】
【0100】
また、増感剤として、アントラセン骨格含有化合物を用いることもできる。具体的には、下記一般式(C)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
式中、R
31はそれぞれ独立にアルキル基、アラルキル基、アリル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、およびハロゲン化アルキル基からなる群から選択される置換基を示し、
R
32はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、およびカルボアルコキシ基からなる群から選択される置換基を示し、
kはそれぞれ独立に0、1〜4から選ばれる整数である。
【0101】
このようなアントラセン骨格を有する増感剤は、特許文献5または6などにも開示されている。このようなアントラセン骨格を有する増感剤を使用する場合、その添加量はポリシロキサン100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましい。
【0102】
また、本発明によるネガ型感光性シロキサン組成物には、必要に応じ安定剤を添加することができる。安定剤としては一般に用いられるものから任意に選択して用いることができるが、本発明による組成物においては、芳香族アミンが安定化の効果が高いために好ましい。このような芳香族アミンのうち、ピリジン誘導体が好ましく、特に2位および6位に比較的嵩高い置換基を有するものが好ましい。具体的には、下記のようなものが挙げられる。
【化9】
【0103】
硬化膜の形成方法
本発明による硬化膜の形成方法は、前記のネガ型ポリシロキサン感光性組成物を基板表面に塗布し、それを加熱硬化することを含んでなるものである。硬化膜の形成方法を工程順に説明すると以下の通りである。
【0104】
(1)塗布工程
まず、前記したネガ型感光性ポリシロキサン組成物を基板に塗布する。本発明における感光性ポリシロキサン組成物の塗膜の形成は、感光性組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0105】
(2)プリベーク工程
ネガ型感光性シロキサン組成物を塗布することにより、塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、且つ塗膜中の溶剤残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に50〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10〜300秒間、好ましくは30〜120秒間、クリーンオーブンによる場合には1〜30分間実施することができる。
【0106】
(3)露光工程
塗膜を形成させた後、その塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360〜430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。このような場合に、本発明のネガ型感光性シロキサン組成物に増感色素を組み合わせると有利であることは上述した通りである。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に10〜2000mJ/cm
2、好ましくは20〜1000mJ/cm
2とする。照射光エネルギーが10mJ/cm
2よりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2000mJ/cm
2よりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0107】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0108】
(4)露光後加熱工程
露光後、露光個所に発生した反応開始剤により膜内のポリマー間反応を促進させるため、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。
【0109】
露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸が未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃〜150℃が好ましく、60℃〜120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウエハ面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸の拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒〜500秒が好ましく、40秒〜300秒がさらに好ましい。
【0110】
(5)現像工程
露光後、必要に応じて露光後加熱を行ったあと、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来知感光性シロキサン組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。本発明においてはポリシロキサンの溶解速度を特定するためにTMAH水溶液を用いるが、硬化膜を形成させるときに用いる現像液はこれに限定されない。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0111】
(6)加熱工程
現像後、得られたパターン膜を加熱することにより硬化させる。加熱工程に使う加熱装置には、前記した露光後加熱に用いたものと同じものを用いることができる。この加熱工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、通常150〜400℃であり、好ましくは200〜350℃である。150℃未満では、未反応のシラノール基が残存することがある。シラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は150℃以上であることが好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分〜24時間、好ましくは30分〜3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0112】
こうして得られた硬化膜は、優れた耐熱性、透明性、比誘電率等を達成することができる。例えば耐熱性は400℃以上、また効果膜の光透過率は95%以上、比誘電率も4以下、好ましくは3.3以下を達成することができる。このため、従来使用されていたアクリル系材料にはない光透過率、比誘電率特性を有しており、フラットパネルディスプレー(FPD)など、前記したような各種素子の平坦化膜、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜、透明保護膜などとして多方面で好適に利用することができる。
【0113】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0114】
<合成例>
先ず、本発明に用いられるポリシロキサンの合成例を以下に示す。なお、測定にあたって、次の装置および条件を用いた。
【0115】
ゲル浸透クロマトグラフィーは、HLC−8220GPC型高速GPCシステム(商品名、東ソー株式会社製)およびSuper Multipore HZ−N型GPCカラム(商品名、東ソー株式会社製)2本を用いて測定した。測定は、単分散ポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを展開溶媒として、流量0.6ミリリットル/分、カラム温度40℃の分析条件で行った。
【0116】
組成物の塗布にはスピンコーターMS−A100型(商品名、ミカサ株式会社製)を用い、形成された被膜の厚さは膜厚計VM−1200型(商品名、大日本スクリーン製造株式会社製)を用いて測定した。
【0117】
<合成例Ia−1>
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコ中に、25重量%TMAH水溶液36.5g、イソプロピルアルコール(以下、IPAという)800ml、および水2.0gを混合して反応溶媒を調製し、10℃に維持した。また、フェニルトリメトキシシラン39.7g、メチルトリメトキシシラン34.1g、テトラメトキシシラン7.6gの混合溶液を調製した。その混合溶液を10℃にて滴下ロートを用いて反応溶媒に滴下し、10℃に維持しながら2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。反応液にトルエン400ml、および水100mlを添加して振とうした後、2層に分離させた。得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度40重量%なるようにPGMEAを添加調整して、ポリシロキサン(Ia−1)を含む溶液を調整した。得られたポリシロキサン(Ia−1)の平均重量分子量(ポリスチレン換算)は2,700であった。得られたポリシロキサン溶液をシリコンウエハに塗布して、前記した条件により5%TMAH水溶液に対する溶解速度を測定したところ、490Å/秒であった。
【0118】
<合成例Ia−2>
反応時間を4時間に変更した以外は上記と同様の方法を用いてシロキサンポリマー(1a−2)を得た。得られたポリシロキサン(Ia−2)の平均重量分子量(ポリスチレン換算)は3,600であった。得られたポリシロキサン溶液をシリコンウエハに塗布して、前記した条件により5%TMAH水溶液に対する溶解速度を測定したところ、180Å/秒であった。
【0119】
<合成例Ia−3>
反応時間を6時間に変更した以外は上記と同様の方法を用いてシロキサンポリマー(1a−3)を得た。得られたポリシロキサン(Ia−3)の平均重量分子量(ポリスチレン換算)は4,900であった。得られたポリシロキサン溶液をシリコンウエハに塗布して、前記した条件により5%TMAH水溶液に対する溶解速度を測定したところ、70Å/秒であった。
【0120】
<合成例Ib−1>
撹拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコ中に、25重量%TMAH水溶液54.7g、IPA800ml、および水2.0gを混合して反応溶媒を調製し、10℃に維持した。また、フェニルトリメトキシシラン39.7g、メチルトリメトキシシラン34.1g、テトラメトキシシラン7.6gの混合溶液を調整した。その混合溶液を0〜3℃にて滴下ロートを用いて反応溶媒に滴下し、5℃以下に維持しながら2時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。反応液にトルエン400ml、および水100mlを添加して振とうした後、2層に分離させた。得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度40重量%なるようにPGMEAを添加調整して、ポリシロキサン(Ib−1)を含む溶液を調整した。得られたポリシロキサン(Ib−1)の平均重量分子量(ポリスチレン換算)は1,720であった。得られたポリシロキサン溶液をシリコンウエハに塗布して、前記した条件により2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度を測定したところ、4,830Å/秒であった。
【0121】
<合成例Ib−2>
反応時間を6時間に変更した以外は上記と同様の方法を用いてシロキサンポリマー(1b−2)を得た。得られたポリシロキサン(Ib−2)の平均重量分子量(ポリスチレン換算)は2,150であった。得られたポリシロキサン溶液をシリコンウエハに塗布して、前記した条件により2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度を測定したところ、720Å/秒であった。
【0122】
<実施例1>
ポリシロキサン(Ia−1)とポリシロキサン(Ib−1)とを、混合比(30重量%):(70重量%)の割合で混合した。このポリシロキサン混合物は、プリベーク後の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、2010Å/秒であった。このポリシロキサン混合物を35%のPGMEA溶液となるように調製し、前記式(A−1)で表される光酸発生剤を、ポリシロキサンに対して1.0重量%を添加した。また界面活性剤としてKF−53(商品名、信越化学工業株式会社製)を、ポリシロキサンに対して0.3重量%加え、ネガ型感光性シロキサン組成物を得た。
【0123】
この感光性シロキサン組成物を、スピンコートにてシリコンウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上100℃で90秒間プリベークし、2μmの膜厚になるように調整した。プリベーク後、FX−604型ステッパー(商品名、株式会社ニコン製、NA=0.1)のg、h線露光機を用い20mJ/cm
2で露光し、露光後再加熱をホットプレート上100℃で90秒間ベークを行い、2.38%TMAH水溶液で40秒間静置現像、30秒間純水によるリンスを行った。その結果、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが得られた。パターンには残渣等の欠陥がないことが確認された。
【0124】
パターン形成後、250℃で焼成硬化を行い、硬化後のパターンを光学顕微鏡で観察したところ、5μmのパターンが保持されていた。
【0125】
また、この組成物から得られるパターンについて、誘電率測定を行った。測定には、495型水銀プローブCv測定装置(ソリッド・ステート・メジャメンツ社製)を用いた。具体的には、水銀プローブ法により、測定周波数100KHzでC−V測定を実施し、得られた飽和キャパシタンスより比誘電率を算出した。誘電率測定において測定サンプルは以下のように調製した。感光性シロキサン組成物をスピンコートにてシリコンウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上100℃で90秒間プリベークし、0.5μmの膜厚に調整した。次に、FX−604型ステッパー(商品名、株式会社ニコン製、NA=0.1)のg、h線露光機を用いパターン形成時に照射する露光量(実施例1の場合は20mJ/cm
2)で全面露光した後、露光後再加熱をホットプレート上100℃で90秒間ベークを行い、2.38%TMAH水溶液に30秒間浸漬させ、純水によるリンスを行った後、250℃で1時間焼成硬化させた。得られた硬化物の比誘電率は2.9であった。
【0126】
<実施例2>
ポリシロキサン(Ia−1)とポリシロキンサン(Ib−1)との混合比を(10重量%):(90重量%)に変更した他は、実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。このポリシロキサン混合物は、プリベーク後の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、4330Å/秒であった。
【0127】
この組成物を用い、露光量を50mJ/cm
2に変更したほかは、実施例1と同様にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、5μmのパターンが保持されていた。ただし、実施例1に比べて、実用上問題ないレベルでパターン稜線部が丸みを帯びていた。
【0128】
<実施例3>
ポリシロキサン(Ia−1)とポリシロキサン(Ib−1)との混合比を(60重量%):(40重量%)に変更した他は、実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。このポリシロキサン混合物は、プリベーク後の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、750Å/秒であった。
【0129】
この組成物を用い、現像時間を150秒、焼成硬化を350℃に変更することで、パターンを得た。この結果、残渣のない5μmのパターンが保持されていた。
【0130】
<実施例4>
ポリシロキサン(Ib−1)に代えてポリシロキサン(1b−2)を用い、混合比を(Ia−1):(Ib−2)(10重量%):(90重量%)に変更した他は、実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。このポリシロキサン混合物は、プリベーク後の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、620Å/秒であった。
【0131】
この組成物を用い、現像時間を150秒に変更したほかは、実施例1と同様にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、5μmのパターンが保持されていた。ただし、実施例1に比べて、実用上問題ないレベルでパターン稜線部が丸みを帯びていた。
【0132】
<実施例5>
ポリシロキサン(Ia−1)に代えてポリシロキサン(1a−2)を用い、混合比を(Ia−2):(Ib−1)=(25重量%):(75重量%)に変更した他は、実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。このポリシロキサン混合物は、プリベーク後の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、2105Å/秒であった。
【0133】
この組成物を用い、実施例1と同様にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、残渣のない5μmのパターンが保持されていた。
【0134】
<実施例6>
ポリシロキサン(Ia−1)に代えてポリシロキサン(1a−3)を用い、混合比を(Ia−3):(Ib−1)=(15重量%):(85重量%)に変更した他は、実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。このポリシロキサン混合物は、プリベーク後の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は、2175Å/秒であった。
【0135】
この組成物を用い、実施例1と同様にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、残渣のない5μmのパターンが保持されていた。
【0136】
<
参考例7>
酸発生剤A−1を酸発生剤A−4に変更した他は実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。
【0137】
この組成物を用い、実施例1にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、この組成物は実施例1の組成物と同等の感度を有しており、また5μmのパターンが保持されていた。なお、僅かではあるが焼成硬化中に起こる膜損失が減少していることが確認された。
【0138】
<
参考例8>
酸発生剤A−1を酸発生剤A−6に変更した他は実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。
【0139】
この組成物を用い、露光量を40mJ/cm
2に変更したほかは、実施例1と同様にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、5μmのパターンが保持されていた。
【0140】
<実施例9>
実施例1に記載されたネガ型感光性シロキサン化合物に対して、安定剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジン(東京化成工業株式会社製)をポリシロキサン混合物の総重量に対して0.1重量%添加し、ネガ型感光性シロキサン組成物を得た。
【0141】
この組成物を用い、実施例1にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、この組成物は実施例1の組成物と同等の感度を有しており、また5μmのパターンが保持されていた。さらに、この組成物の40℃での貯蔵安定性を評価したところ、実施例1の組成物に対して貯蔵安定性が改良されていることがわかった。
【0142】
<実施例10>
ポリシロキサンを(Ib−2)のみに変更した他は実施例1と同様にしてネガ型緩効性シロキサン組成物を得た。この組成物を用い、実施例1にパターン形成および焼成硬化を行った。得られたパターンを観察したところ、この組成物は実施例1の組成物と同等の感度を有しており、また5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが得られた。
【0143】
<比較例1>
酸発生剤A−1を酸発生剤A−Xに変更した他は実施例1と同様にしてネガ型感光性シロキサン組成物を得た。なお、実施例1および比較例1において酸発生剤として用いた芳香族イミド化合物のジクロロメタン中における紫外・可視吸収スペクトルは、
図1に示す通りであった。酸発生剤A−Xは波長340nmに吸収ピークを有するが、波長400nm以上の光はほとんど吸収しないという特徴があった。
【化10】
【0144】
この組成物を用い、実施例1と同様の方法で試験を行ったところ、露光後再加熱をホットプレート上100℃で90秒間ベークを行ったが、膜がすべて現像液に溶解し、パターンを得ることができなかった。これは光酸発生剤がg、h線の光を吸収しないため、露光による酸の発生がなかったためである。