(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137872
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20170522BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20170522BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20170522BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20170522BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20170522BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20170522BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20170522BHJP
C08K 5/47 20060101ALI20170522BHJP
B60C 17/00 20060101ALN20170522BHJP
B60C 1/00 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/22
C08K3/06
C08L7/00
C08K5/3415
C08K5/3445
C08K5/098
C08K5/47
!B60C17/00 B
!B60C1/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-37528(P2013-37528)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162897(P2014-162897A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】田原 聖一
【審査官】
藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−191611(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/110432(WO,A1)
【文献】
特開昭61−268503(JP,A)
【文献】
特開2009−102618(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/147894(WO,A1)
【文献】
特開2014−084380(JP,A)
【文献】
特開2010−095670(JP,A)
【文献】
特開2003−321575(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0004347(US,A1)
【文献】
特開平03−054235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物を混練する際に、
変性ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して1〜3重量部の亜鉛華
と、ビスマレイミド、2−メルカプトベンズイミダゾール、又はその亜鉛塩であるイミダゾール系化合物を配合することを特徴とする、ランフラットタイヤサイドウォール部補強ゴム組成物の製造方法。
【化1】
〔上記式(I)中のR
1、R
2は水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項2】
下記式(I)で表される化合物を混練する際に、ゴム成分100重量部に対して1〜3重量部の亜鉛華と、メタクリル酸若しくはアクリル酸の金属塩を配合することを特徴とする、ランフラットタイヤサイドウォール部補強ゴム組成物の製造方法。
【化2】
〔上記式(I)中のR1、R2は水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項3】
混練方法が複数段階からなり、天然ゴムをゴム成分の30重量%以上含むゴム成分(A)と、充填剤とを混練する工程と、前記工程により得られたゴム組成物に硫黄と式(I)で表される化合物とを混練する工程とを含み、硫黄と式(I)で表される化合物とを混練する工程で亜鉛華をゴム成分100重量部に対して1〜3重量部配合することを特徴とする、請求項1または2に記載のランフラットタイヤサイドウォール部補強ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
天然ゴムをゴム成分の60重量%以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のランフラットタイヤサイドウォール部補強ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特に、パンク等によりタイヤの内部圧力(以下、内圧という)が低下した状態であっても走行可能な空気入りタイヤ(以下、ランフラットタイヤという)と、そのサイドウォール部に三日月状に配置される、補強ゴム部材のゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の高速化に伴い、タイヤも高性能化への要求が一段と高まる一方、車両の軽量化要求からスペアタイヤ、すなわち、パンクなどによってタイヤの充填内圧が低下しても、荷重を支えてタイヤが継続して走行可能なタイヤが要求されている。
この代表的なものとして、リムフランジの上端近傍からベルト層の端部に至る区域におけるカーカス層の内面側を、三日月状のサイド補強ゴム層によって補強した構造の空気入りラジアルタイヤ(ランフラットタイヤ)が提案され実用化されている。
ランフラットタイヤのサイド補強ゴムへの要求特性としては、ランフラット耐久性を向上させること、通常走行時の乗り心地性を維持することなどである。ランフラット耐久性は、サイド補強ゴム自体の厚みや性質などに依存し、そのための配合が工夫されている。
【0003】
配合においては、カーボンブラックやシリカなどの無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等、様々な役割を担った成分を添加することで、改良がなされる。いずれも、その成分だけを多用すると、特定物性は向上するが、一方で、他の物性を損なうという面もあり、それらの成分間でのバランスを図ることが、必要とされる。
【0004】
例えば、特許文献1において、サイドウォール補強ゴムに下記式で表されるビス(2−ベンゾチアジル)ジスルフィド誘導体を、加硫促進剤として配合することが開示されている。
【化1】
しかしながら、上記化合物を配合した場合、老化防止剤を増量せずに、ランフラット性能も、向上させることができる加硫促進剤として、述べられてはいるものの、その効果は限定的であり、特に、天然ゴムの含有量が増加すると、効果が小さくなり、混練方法によっては、やはり老化物性の低下が避けられないといった問題があった。
【0005】
なお、それぞれの成分を添加する場合に、加硫を必要とするゴム組成物においては、前段階において、加硫に直接関係する成分を除いた成分を混練しておき、次いで、後段階にて、硫黄と加硫促進剤を添加するのが、一般的な配合処方である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−285514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビス(2−ベンゾチアジル)ジスルフィド誘導体を、加硫促進剤として用いた場合の、老化物性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それぞれの成分の配合処方の工夫としては、配合を複数の段階に分けて行う場合、どの成分をどの段階で配合するか、といったことも、成分同士の相互作用を考えた場合、物性に影響を与える、要因となることが考えられる。
【0009】
そこで、本願発明者は、この成分配合の段階について検討した結果、通常、混練において、加硫の前の段階にて配合する亜鉛華を、加硫に必要な成分である、硫黄と加硫促進剤と同時に、配合することで、老化物性の低下防止に、効果があることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1)下記式(I)で表される化合物を混練する際に、ゴム成分100重量部に対して1〜3重量部の亜鉛華を、配合することを特徴とする、ゴム組成物の製造方法。
【化2】
〔上記式(I)中のR
1、R
2は水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。〕
(2)混練方法が複数段階からなり、天然ゴムをゴム成分の30重量%以上含むゴム成分(A)と、充填剤とを混練する工程と、前記工程により得られたゴム組成物に硫黄と式(I)で表される化合物とを混練する工程とを含み、硫黄と式(I)で表される化合物とを混練する工程で亜鉛華をゴム成分100重量部に対し1〜3重量部配合することを特徴とする、(1)に記載のゴム組成物の製造方法。
(3)天然ゴムをゴム成分の60重量%以上含むことを特徴とする(1)又は(2)記載のゴム組成物の製造方法。
(4)硫黄と式(I)で表される化合物とを混練する工程においてビスマレイミド、メタクリル酸若しくはアクリル酸の金属塩、または二次老化防止剤として、2−メルカプトベンズイミダゾール、又はその亜鉛塩であるイミダゾール系化合物を配合することを特徴とする、(2)又は(3)に記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来にはないランフラット耐久性と老化物性とを両立したランフラットタイヤ用ゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、下記式(I)で表される化合物を混練する際に、ゴム成分100重量部に対して1〜3重量部の亜鉛華を、配合することを特徴とする。
【化3】
【0013】
上記、一般式(I)で表される化合物中のR
1、R
2は水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の場合、炭素数1であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。好ましい、いずれの場合も、化合物の合成のし易さ及び、加硫速度が遅くならないためである。
上記一般式(I)で表される化合物のR
1、R
2の具体例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、2−メチル−1−プロポキシ基、2−メチル−2−プロポキシ基が挙げられる。
【0014】
ゴム組成物の処方においては、複数段階での成分配合を行う場合、加硫に伴う成分以外である、ゴム成分(A)、充填剤を主とする成分を混練する工程と、加硫に伴う成分を添加しての混練工程とに、分けて行うことは一般的である。上記、一般式(I)で表される化合物は、加硫促進剤の1種であるので、加硫に伴う成分を添加しての混練工程で配合されるが、一方で、通常は加硫前の工程で、配合される亜鉛華を、硫黄と一般式(I)で表される化合物を添加しての工程で、ゴム成分100重量部に対して1〜3重量部配合することにより、ゴム成分(A)のポリマー鎖が混練によって切断される現象である、嚼解に由来する老化物性の低下が防止できる。
【0015】
ゴム成分(A)としては、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる、少なくとも1種からなるゴム成分であり、合成ジエン系ゴムとしてはポリイソプレンゴム(IR)、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。ゴム成分として、天然ゴムをゴム成分の30重量%以上配合している場合に、本願の効果が見られ、60重量%以上の時に、よりその効果が見られる。
【0016】
ゴム成分(A)に含まれる、合成ジエン系ゴムには、重合体末端に、スズ、窒素、ケイ素から選ばれる元素を含む官能基を有する変性ジエン系ゴムを用いることができる。このような変性ジエン系ゴムは、例えば、特開2002−144807号公報などに示されている、公知の方法に従って合成することができ、共役ジエン単量体を、炭化水素溶媒中で、有機金属化合物、好ましくは有機リチウム化合物を開始剤とする、リビングアニオン重合で重合することによって得られる。この際、配位性の酸素ドナーであるエーテル類、窒素ドナーである3級アミン類、特にそれらの多座配位可能なものを添加することにより、開始剤として用いる、有機リチウム化合物などの、有機金属化合物の会合状態を変化させたり、2級アミンを添加した場合では、リチウムアミド開始剤に誘導することで、重合体鎖中の1,4−重合における、シス/トランスの幾何異性選択性や1,2−重合によって生じる、ビニル結合量を変えることができる。このようにして、重合反応を行った後、なお求核性を有する、リビングアニオン重合末端に、スズ、窒素及び/又はケイ素を含む官能基導入試剤を反応させることにより、これら元素を含有する官能基を持った、変性ジエン系ゴムを合成することができる。
【0017】
変性ジエン系ゴムに導入される官能基が、スズを含む官能基である場合、トリハロスタンニル基、ジハロアルキルスタンニル基、ジハロアリールスタンニル基、ハロジアルキルスタンニル基、ハロジアリールスタンニル基、トリアルキルスタンニル基、トリアリールスタンニル基、等が挙げられ、スズ上のハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。窒素を含む官能基である場合、イソシアナト基、アミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基、イミド基、その他、含窒素複素環官能基、等が挙げられる。ケイ素を含む官能基である場合、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、ジアルコキシアリールシリル基、アルコキシジアルキルシリル基、アルコキシジアリールシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、等が挙げられる。これら官能基がアルキル基やアリール基を有する場合、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の分岐アルキル基、炭素数5〜8の環状アルキル基や炭素数6〜14の芳香環を含むアリール基であり、水酸基、アルコキシ基、アシル基、アミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、スルホ基、ハロゲン原子、などで置換されていてもよい。又、アルコキシ基である場合、上記、アルキル基やアリール基である炭化水素基を有するものである。
【0018】
上記、変性ジエン系ゴムを用いることで、温度上昇による弾性率の低下を抑制すると共に、カーボンブラック配合ゴム組成物における、低発熱性を改良することができるので、ランフラット性能を維持したまま、老化物性も改良することができる。
【0019】
加硫を行う前での混練工程においては、上記、通常のゴム成分や、変性ジエン系ゴムに加えて、通常の添加成分である、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤、シランカップリング剤、プロセスオイル、ステアリン酸を配合して、混練を行うことができる。カーボンブラックはゴム成分100重量部に対して、30〜100重量部配合することができ、50〜80重量部配合するのが好ましい。又、シリカを同時に配合する場合、カーボンブラックとシリカの合計で50〜150重量部配合することが好ましい。
【0020】
上記、工程にて、混練した組成物にさらに、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤等を加え、次の混練工程を行うが、ここで、本願発明の特徴として、添加する加硫促進剤の1つとして、一般式(I)で表される化合物と共に、ゴム成分100重量部に対して、1〜3重量部の重量比で亜鉛華を添加して混練することにより、混練の際にポリマー鎖が切断される嚼解を防止でき、老化物性が低下しないように改善することができる。
【0021】
一般式(I)で表される化合物と、これ以外を含む加硫促進剤を効率的に作用させるのに十分な亜鉛華の量として、ゴム成分100重量部に対して1重量部以下では、加硫に時間がかかり生産性が悪化し、3重量部を超えると、過剰に配合された亜鉛華が、ゴム組成物中に粒子として残存するために、機械的特性悪化の原因となるので好ましくない。この傾向は特にゴム成分中、天然ゴムの割合が大きいほど、顕著である。
【0022】
加硫促進剤は一般式(I)で表される化合物以外にも、2−ベンゾチアジルスルフェンアミド類や、チウラムジスルフィド類、チアゾール類、グアニジン類、ジチオカルバミン酸塩類、等から選ばれる化合物を1つ以上、併用して用いてもよい。これら、加硫促進剤は合わせて、ゴム成分100重量部に対して1〜10重量部用いることができ、2〜8重量部が好ましく、3〜6重量部が特に好ましい。
【0023】
硫黄と一般式(I)で表される化合物を配合する、混練工程においては、このほかにビスマレイミド、アクリル酸若しくはメタクリル酸の亜鉛塩、又は2次老化防止剤として2−メルカプトベンズイミダゾールやその亜鉛塩であるイミダゾール系化合物を、配合できる。これらを配合する場合、ゴム成分100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することができ、0.3〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部が特に好ましい。これらの配合剤または2次老化防止剤の配合により、混練や、加硫・使用中の劣化の際に発生するラジカルをトラップし、老化物性を改良することができる。
【0024】
本願発明では、硫黄と一般式(I)で表される化合物を配合する混練工程において亜鉛華を配合し、ゴム成分のポリマー鎖の嚼解を防止することにより、老化物性が改良されることを特徴とするが、それ以外の要因に由来する、老化防止を目的として、通常用いられる、老化防止剤を配合することができ、アミン系老化防止剤をゴム成分100重量部に対して、0.1〜3重量部配合することができ、0.5〜3重量部が好ましく、1〜2重量部が特に好ましい。0.1重量部以下では、老化防止効果が不足し、3重量部を超えて過剰では、ブルームが生じ、外観の悪化を招くと共に、経時安定性に欠けることとなる。
【0025】
さらに、硫黄をゴム成分100重量部に対して1〜10重量部の範囲で配合することができ、3〜7重量部の範囲が好ましく、4〜6重量部の範囲がより好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物は、上記各成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練することにより、製造することができ、ランフラットタイヤの、サイドウォール部として好適に使用できる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
【0028】
下記の表1に示す配合内容にて、加硫前の混練工程と、硫黄と一般式(I)で表される化合物を配合する工程とに分割し、各成分を配合してバンバリーミキサーにて混練して、各種ゴム組成物、実施例1〜8、比較例1〜3を処方した。
<変性ポリブタジエンゴムの製造例>
乾燥し、窒素置換した約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3−ブタジエン50g、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン0.0057mmol、及びヘキサメチレンイミン0.513mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、撹拌装置を具えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、この重合反応系に、変性剤(カップリング剤)として四塩化スズ0.100mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間攪拌して変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)の2−プロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して変性ポリブタジエンゴム(HMI−BR)を得た。得られたHMI−BRは、ブタジエン部分のビニル結合量が14%で、ガラス転移温度(Tg)が−95℃で、カップリング効率が65%であった。
【0029】
[老化物性]上記、ゴム組成物を、150℃、20分で加圧プレス加硫して得た、厚さ2mmの加硫ゴムシートを、3号ダンベル型試験片に打ち抜き、JIS K 6301−1995に準拠して25℃にて測定試験を行い、老化前の、破断時の伸び(EB)をオリジナルのEBとし、100℃で24時間後の破断時の伸びを測定し、老化後のEB/オリジナルのEBの百分率にて評価した。値が大きいほど、老化物性が良好であることを示す。また、オリジナルの破断時応力(TB)を、比較例1を100とした指数で表示した。
[ランフラット耐久性]上記、ゴム組成物をサイドウォール部に用いたランフラットタイヤを試作した。各試作タイヤ(タイヤサイズ255/55R18)を常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室温中に24時間放置後、バルブのコアを抜き内圧を大気圧として、荷重5.19kN(530kgf)、速度80km/h、室温38℃の条件でドラム走行テストを行った。この際の故障発生時での走行距離がランフラットドラム走行距離であり、比較例1の数値を100とした指数で表した。数値が高いほど、ランフラット耐久性に優れていることを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
*1:NR:天然ゴム
*2:BR:ブタジエンゴム
*3:変性ブタジエンゴム
*4:カーボンブラック
*5:プロセスオイル
*6:老化防止剤6C:N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラー6C)
*7:加硫促進剤DZ:N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラーDZ)
*8:加硫促進剤TOT:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(大内新興化学工業社製、商品名:ノクセラーTOT)
*9:加硫促進剤a:一般式(I)で表される、ビス(2−ベンゾチアジル)ジスルフィド
【0032】
加硫前の混練工程で亜鉛華を配合し、加硫促進剤aを用いた、比較例1〜3は全般に老化物性、ランフラット耐久性が劣り、特にゴム成分における天然ゴム割合の増加で低下が大きい。それに比べ、加硫促進剤a配合時に亜鉛華を用いた、実施例1〜4は、老化物性、ランフラット耐久性ともに向上し、天然ゴム割合の増加時にも低下が小さい。また、変性ジエン系ゴムや2次老化防止剤を併用した、実施例5〜8ではさらなる、破断時応力、老化物性及び、ランフラット耐久性の向上が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明を利用すれば、老化物性と耐久性に優れた、ランフラットタイヤが得られる。