(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送風機と、前記送風機からの送風を車両前方から導入すると共に内部に空気流路を有するケースと、前記ケースの内部に収容される冷却機器と、前記ケースの内部でかつ前記冷却機器に対して車両後方に収容される加熱機器と、前記加熱機器を制御する制御処理部とを有する車両用空気調和装置であって、
前記ケースは、
前記空気流路の一部であると共に前記加熱機器が設置される加熱流路と、
前記空気流路の一部であると共に前記冷却機器が設置される冷却流路と、
前記加熱流路の上方に配置される前記空気流路の一部であると共に前記加熱機器で加熱された温風と前記冷却機器で冷却された冷風とが混合される混合部と、
前記混合部よりも上方に形成される第1吹出口と、
前記混合部よりも車両後方に形成される第2吹出口と
を有し、
前記加熱機器は、個別に温度調節が可能な複数の加熱領域を有し、
前記制御処理部は、環境特性を検出すると共に車両に搭載される検出手段の出力に基づいて前記加熱機器の各加熱領域の温度を調節し、
前記加熱領域として、前記加熱機器の上部に配置される上段加熱領域と、前記加熱機器の下部に配置される下段加熱領域とを有し、
前記検出手段が日射センサであり、
前記制御処理部は、前記第1吹出口から吐出される空気と前記第2吹出口から吐出される空気との温度差を大きくするときに前記下段加熱領域の温度を前記上段加熱領域の温度よりも高くし、前記日射センサが日射を検出したときに、前記第1吹出口から吐出される空気と前記第2吹出口から吐出される空気との温度差を大きくすると判断する
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のヒータを用いるためには、このヒータを駆動するためのエネルギが別途必要となる。例えば、このヒータとして電気ヒータを用いる場合には、電気ヒータを駆動するためにバッテリに蓄えられた電力を消費することになる。このため、このようなヒータは、効率よく使用する必要がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、車両用空気調和装置において、空気を効率的に加熱することにより、少ないエネルギにて車室内に快適な環境を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、送風機と、上記送風機からの送風を車両前方から導入すると共に内部に空気流路を有するケースと、上記ケースの内部に収容される冷却機器と、上記ケースの内部でかつ上記冷却機器に対して車両後方に収容される加熱機器と、上記加熱機器を制御する制御処理部とを有する車両用空気調和装置であって、上記ケースが、上記空気流路の一部であると共に上記加熱機器が設置される加熱流路と、上記空気流路の一部であると共に上記冷却機器が設置される冷却流路と、上記加熱流路の上方に配置される上記空気流路の一部であると共に上記加熱機器で加熱された温風と上記冷却機器で冷却された冷風とが混合される混合部と、上記混合部よりも上方に形成される第1吹出口と、上記混合部よりも車両後方に形成される第2吹出口とを有し、上記加熱機器が、個別に温度調節が可能な複数の加熱領域を有し、上記制御処理部が、環境特性を検出すると共に車両に搭載される検出手段の出力に基づいて上記加熱機器の各加熱領域の温度を調節するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記加熱領域として、上記加熱機器の上部に配置される上段加熱領域と、上記加熱機器の下部に配置される下段加熱領域とを有するという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記制御処理部が、上記第1吹出口から吐出される空気と上記第2吹出口から吐出される空気との温度差を大きくするときに上記下段加熱領域の温度を上記上段加熱領域の温度よりも高くするという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記制御処理部が、上記第1吹出口から吐出される空気と上記第2吹出口から吐出される空気との温度差を小さくするときに上記上段加熱領域の温度を上記下段加熱領域の温度よりも高くするという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第3の発明において、上記検出手段が日射センサであり、上記制御処理部が、上記日射センサが日射を検出したときに、上記第1吹出口から吐出される空気と上記第2吹出口から吐出される空気との温度差を大きくすると判断するという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第3の発明において、上記検出手段として室温センサを備え、上記制御処理部が、上記室温センサが検出する温度と設定温度との差が、上記基準値を下回ったときに上記第1吹出口から吐出される空気と上記第2吹出口から吐出される空気との温度差を大きくすると判断するという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第4の発明において、上記検出手段として外気温センサ及び室温センサとを備え、上記制御処理部が、上記外気温センサの検出する温度と上記室温センサが検出する温度との差が、基準値を超えたときに上記第1吹出口から吐出される空気と上記第2吹出口から吐出される空気との温度差を小さくすると判断するという構成を採用する。
【0015】
第8の発明は、上記第4の発明において、上記検出手段として室温センサを備え、上記制御処理部が、上記室温センサが検出する温度と設定温度との差が、基準値を超えたときに上記第1吹出口から吐出される空気と上記第2吹出口から吐出される空気との温度差を小さくすると判断するという構成を採用する。
【0016】
第9の発明は、上記第1〜第8いずれかの発明において、上記加熱機器と上記冷却機器との間に配置されると共に車両の駆動源を冷却するための冷却水を用いて空気を加熱するヒータコアを備え、上記加熱機器は電流を流すことにより発熱する電気ヒータであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ケースの内部に収容される加熱機器が、個別に温度調節が可能な複数の加熱領域を有している。このため、加熱機器を通過する空気に対して所望の温度分布を付与することが可能となり、位置の異なる第1吹出口と第2吹出口とから吐出される空気の温度を、個別に調節することが可能となる。よって、車室内において暖かい空気を必要とする箇所に対して局所的に暖かい空気を供給し、車室内において暖かい空気を必要としない箇所に対して無駄に暖かい空気を供給することがないようにすることが可能となり、暖められた空気を効率的に室内に供給することが可能となる。したがって、本発明によれば、空気を効率的に加熱することにより、少ないエネルギにて車室内に快適な環境を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用空気調和装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
図1は、本実施形態の車両用空気調和装置Sの概略構成を示す断面図である。この図に示すように、本実施形態の車両用空気調和装置Sは、ケース1と、エバポレータ2(冷却機器)と、エアミックスダンパ装置3と、ヒータコア4と、PCTヒータ5(加熱機器)と、制御処理部6と、デフロスタ吹出口用モードダンパ7と、ベント吹出口用モードダンパ8と、ヒート吹出口用モードダンパ9と、日射センサ10と、送風機11とを備えている。
【0021】
ケース1は、本実施形態の車両用空気調和装置Sの外形を形作り、エバポレータ2及びヒータコア4等を内部に収容している。このケース1の内部には、空気流路として、エバポレータ2が設置される冷却流路1aと、ヒータコア4が設置される加熱流路1bと、冷風と暖風とが混合されて調和空気とされる混合部1cとが形成されている。また、ケース1には、外部に露出すると共に混合部1cと接続される複数の吹出口(デフロスタ吹出口1d(第1吹出口)、ベント吹出口1e(第1吹出口)及びヒート吹出口1f(第2吹出口))が設けられている。このケース1は、送風機11からの送風を車両前方から導入する。
【0022】
デフロスタ吹出口1dは、ウィンドウに対して調和空気を供給するための開口であり、混合部1cの上方に形成されている。また、ベント吹出口1eは、乗員の顔に対して調和空気を供給するための開口であり、混合部1cの上方に形成されている。また、ヒート吹出口1fは、乗員の足元に対して調和空気を供給するための開口であり、混合部1cよりも車両後方に形成されている。
【0023】
また、ケース1の内部には、
図1に示すように、ヒータコア4が設置される加熱流路1bから混合部1cに暖風を供給する暖風用開口1gと、エバポレータ2が設置される冷却流路1aから混合部1cに冷風を供給する冷風用開口1hと、冷却流路1aから加熱流路1bに冷風を供給する加熱用開口1iとが設けられている。
【0024】
エバポレータ2は、車両に搭載される冷凍サイクルの一部であり、冷却流路1aの内部に配置されている。このエバポレータ2は、送風機11により冷却流路1a内に供給された空気を冷却して冷風を生成する。
【0025】
エアミックスダンパ装置3は、エバポレータ2の下流側に配置されており、エバポレータ2にて生成された冷風の加熱流路1bへの供給量を調節するものである。より詳細には、エアミックスダンパ装置3は、冷風用開口1hと加熱用開口1iとの間でスライド可能とされたエアミックスダンパ3a(スライドドア)と、当該エアミックスダンパ3aを駆動するためのラックアンドピニオン機構3bを備えている。
【0026】
エアミックスダンパ3aは、樹脂性のシート材であり、エバポレータ2にて生成された冷風(空気流)が通過する開口である冷風用開口1h及び加熱用開口1iの開口率を同時に調節し、冷風用開口1hと加熱用開口1iとの開口割合を調節する。また、エアミックスダンパ3aは、スライド方向と直交する方向の幅方向における両端がケース1の内壁に設けられたガイド溝に摺動可能に嵌合されており、当該両端がガイド溝を摺動しながら冷風用開口1hと加熱用開口1iとの間で移動する。
【0027】
ラックアンドピニオン機構3bは、エアミックスダンパ3aをスライドさせるための機構であり、不図示のモータから動力を伝達されることによって回転駆動するピニオンと、当該ピニオンの回転動力を直線動力に変換してエアミックスダンパ3aに伝達するラックとを備えている。また、本実施形態の車両用空気調和装置Sにおいて、ラックアンドピニオン機構3bのラックは、エアミックスダンパ3aと一体的に形成されている。
【0028】
このような本実施形態の車両用空気調和装置Sでは、エアミックスダンパ3aによって冷風用開口1hと加熱用開口1iとの開口割合を調節することによって加熱流路1bへの冷風の供給量を調節している。この結果、混合部1cにおける冷風と暖風との混合割合が調節されて調和空気の温度が調節される。
【0029】
ヒータコア4は、加熱流路1bの内部に配置されており、加熱用開口1iを介して供給される冷風を加熱することによって暖風を生成するものである。
【0030】
PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ5は、不図示のバッテリから電力を供給されることによって発熱する電気ヒータであり、エバポレータ2に対して車両後方に収容されている。
図2(a)は、PTCヒータ5の正面図であり、
図2(b)はPTCヒータ5の回路図である。PTCヒータ5は、1つのスイッチ5aに対して、抵抗からなる発熱部5bが複数直列接続されてなるヒータユニット51を備え、このヒータユニット51が上下方向に4段配列されることによって形成されている。また、これらのヒータユニット51のうち、上側の2段が配置される領域が上段加熱領域R1とされ、下側の2段が配置される領域が下段加熱領域R2とされている。上段加熱領域R1に配置されたヒータユニット51と、下段加熱領域R2に配置されたヒータユニット51とは、加熱領域ごとに制御可能とされており、これによって上段加熱領域R1と下段加熱領域R2とが個別に温度調節が可能となっている。つまり、上段加熱領域R1を加熱状態とし、下段加熱領域R2を非加熱状態とすることや、上段加熱領域R1を非加熱状態とし、下段加熱領域R2を加熱状態とすることができる。
【0031】
図1に戻り、制御処理部6は、PTCヒータ5及び日射センサ10に対して電気的に接続されており、日射センサ10が検出する日射量(環境特性)に基づいてPTCヒータ5の上段加熱領域R1と下段加熱領域R2との温度を制御する。
【0032】
制御処理部6は、日射センサ10が日射を検出した場合(すなわち日射センサ10の検出値が予め記憶する日射量の基準値を超えた場合)に、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を大きくすると判断し、下段加熱領域R2の温度を上段加熱領域R1の温度よりも低くなるようにPTCヒータ5を制御する。つまり、制御処理部6は、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を大きくすると判断したときには、上段加熱領域R1に配置されたヒータユニット51が発熱せず、下段加熱領域R2に配置されたヒータユニット51が発熱する状態とする。
【0033】
一方、制御処理部6は、日射センサ10が日射を検出しない場合(すなわち日射センサ10の検出値が予め記憶する日射量の基準値を超えない場合)に、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくすると判断し、上段加熱領域R1の温度を下段加熱領域R2の温度よりも高くなるようにPTCヒータ5を制御する。つまり、制御処理部6は、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくすると判断したときには、上段加熱領域R1に配置されたヒータユニット51が発熱し、下段加熱領域R2に配置されたヒータユニット51が発熱しない状態とする。
【0034】
デフロスタ吹出口用モードダンパ7は、デフロスタ吹出口1dの開閉を行うダンパであり、ケース1内で回動可能に構成されている。ベント吹出口用モードダンパ8は、ベント吹出口1eの開閉を行うダンパであり、ケース1内において回動可能に構成されている。ヒート吹出口用モードダンパ9は、ヒート吹出口1fの開閉を行うダンパであり、ケース1内において回動可能に構成されている。
【0035】
なお、エアミックスダンパ装置3と、デフロスタ吹出口用モードダンパ7と、ベント吹出口用モードダンパ8と、ヒート吹出口用モードダンパ9とは、不図示のモータから動力が供給される。
【0036】
日射センサ10は、例えば、車両のダッシュボード上に設置されており、車室内の日射量を測定し、その測定結果を車内の環境特性を示す値として出力する。送風機11は、ケース1の冷却流路1aと接続されており、内気あるいは外気を冷却流路1aに供給する。
【0037】
このような構成を有する本実施形態の車両用空気調和装置Sによれば、エアミックスダンパ装置3によって冷風用開口1hと加熱用開口1iが両方とも開口されているモードでは、冷却流路1aに供給された空気がエバポレータ2によって冷却されることで冷風とされ、この冷風の一部が加熱流路1bに供給される。そして、加熱流路1bでヒータコア4によって加熱されることで生成された暖風が暖風用開口1gから混合部1cに供給され、加熱流路1bに供給されなかった冷風が冷風用開口1hから混合部1cに供給される。混合部1cに供給された冷風と暖風とは混合されて温調空気とされ、デフロスタ吹出口1d、ベント吹出口1e及びヒート吹出口1fのうち開口されているいずれかから車室内に供給される。
【0038】
ここで、デフロスタ吹出口1dおよびベント吹出口1eとヒート吹出口1fの間において、ヒート吹出口1fからの送風温度は他の2つの吹出口の温度に比べて高い傾向がある。これは、暖風用開口1gからの暖風がケース1の上部に形成されるデフロスタ吹出口1dやベント吹出口1eへ供給されるためには混合部1cにて一度冷風用開口1hから供給される冷風と交差する必要があり、混合部1c内で冷風とぶつかった温風の多くが車両後方側に形成されたヒート吹出口1f側へ流れやすいことに起因する。
【0039】
また、加熱流路1bを流れる送風のうち、ヒータコア4およびPTCヒータ5の下方を流れる送風は加熱流路1bの下方側内壁から車両後方側の内壁を沿って流れ、車両後方側の内壁に連なるヒート吹出口1fのほうへ優先的に流れる傾向がある。逆にヒータコア4およびPTCヒータ5の上方を流れる送風は加熱流路1bの内壁に沿わないため、暖風用開口1gから混合部1cに供給された後に上方のデフロスタ吹出口1dやベント吹出口1e側へ流れる傾向がある。
【0040】
デフロスタ吹出口1d及びベント吹出口1eの少なくともいずれかと、ヒート吹出口1fとが開口されているときに、制御処理部6は、日射センサ10から入力される検出値が予め記憶する基準値を超えた場合には、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を大きくすると判断する。
【0041】
このように判断した制御処理部6は、下段加熱領域R2の温度を上段加熱領域R1の温度よりも高くなるようにPTCヒータ5を制御する。つまり、制御処理部6は、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を大きくすると判断したときには、上段加熱領域R1に配置されたヒータユニット51が発熱せず、下段加熱領域R2に配置されたヒータユニット51が発熱する状態とする。混合部1cが加熱流路1bの上方に配置され、ヒート吹出口1fが混合部1cの後方に配置されていることから、
図3(a)に示すように、加熱流路1bの下部を流れる空気X1が加熱流路1bの車両後方側の内壁に沿って流れ、車両後方側の内壁に連なるヒート吹出口1fに流れ込みやすい。このため、下段加熱領域R2のみが加熱を行うようにすることで、
図3(a)に示すように、ヒート吹出口1fから吐出される空気X1が集中的に加熱され、結果として、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気X2とヒート吹出口1fから吐出される空気X1との温度差が、PTCヒータ5が無通電時のときよりも大きくなる。
【0042】
また、デフロスタ吹出口1d及びベント吹出口1eの少なくともいずれかと、ヒート吹出口1fとが開口されているときに、制御処理部6は、日射センサ10から入力される検出値が予め記憶する基準値を超えていない場合には、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくすると判断する。
【0043】
このように判断した制御処理部6は、上段加熱領域R1の温度を下段加熱領域R2の温度よりも高くなるようにPTCヒータ5を制御する。つまり、制御処理部6は、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくすると判断したときには、下段加熱領域R2に配置されたヒータユニット51が発熱せず、上段加熱領域R1に配置されたヒータユニット51が発熱する状態とする。
図3(b)に示すように、加熱流路1bの上部を流れる空気X2はデフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eに流れ込みやすいため、上段加熱領域R1のみが加熱を行うようにすることで、
図3(b)に示すように、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気X2が集中的に加熱される。これにより、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気X2の温度がヒート吹出口1fから吐出される空気X1の温度に近づくため、結果として、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気X2とヒート吹出口1fから吐出される空気X1との温度差が小さくなる。
【0044】
なお、実際に、加熱用開口1iの開度が70%時のデフロスタ吹出口1dから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を測定した。この結果、上段加熱領域R1のみが空気の加熱を行うようにしたときのヒート吹出口1fから吐出される空気の温度に対してデフロスタ吹出口1dからの空気の温度は6.3℃低かったのに対して、下段加熱領域R2のみが空気の加熱を行うようにしたときのヒート吹出口1fから吐出される空気の温度に対してデフロスタ吹出口1dからの空気の温度は12.2℃低かった。
【0045】
以上のような本実施形態の車両用空気調和装置Sによれば、ケース1の内部に収容されるPTCヒータ5が、個別に温度調節が可能な上段加熱領域R1と下段加熱領域R2とを有している。このため、PTCヒータ5を通過する空気に対して温度分布を付与することが可能となり、混合部1cの上方に位置するデフロスタ吹出口1d及びベント吹出口1eと、混合部1cの車両後方かつ下方に位置するヒート吹出口1fとから吐出される空気の温度を、個別に調節することが可能となる。よって、車室内において暖かい空気を必要とする箇所に対して局所的に暖かい空気を供給し、車室内において暖かい空気を必要としない箇所に対して無駄に暖かい空気を供給することがないようにすることが可能となり、暖められた空気を効率的に室内に供給することが可能となる。したがって、本実施形態の車両用空気調和装置Sによれば、空気を効率的に加熱することにより、少ないエネルギにて車室内に快適な環境を形成することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の車両用空気調和装置Sによれば、日射センサ10の出力に応じて、日射量が多いときに車室内の上部に供給される空気(デフロスタ吹出口1d及びベント吹出口1eから吐出される空気)の温度上昇を抑えながら、車室内の下部に供給される空気(ヒート吹出口1fから吐出される空気)を暖めることにより、車室内の温度上昇を実現する。また、日射量が少ないときに車室内の上部と下部に供給される空気の温度差を小さくした状態で車室内の温度上昇を実現する。日射量が多い場合には、乗員の上半身が日射により暖かい状態であることから、車室内の上部に供給される空気の温度上昇を抑えることにより乗員が快適に過ごすことができる。また、日射量が少ない場合には、乗員の上半身が日射により暖められていない状態であることから、車室内の上部と下部に供給される空気の温度差を小さくする(日射量が多い場合に対して車室内の上部に供給される空気の温度を相対的に高くする)ことにより乗員が快適に過ごすことができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、日射センサ10が検出する日射に応じて、デフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくか大きくするかを判断し、この判断に基づいて上段加熱領域R1と下段加熱領域R2との温度を調整する構成について採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図4(a)や
図4(b)に示す構成を採用することもできる。
【0049】
図4(a)は、日射センサ10に換えて、外気温センサ12(検出手段)と、室温センサ13(検出手段)とを備えている。このような構成では、外気温センサ12は車室外の温度(環境特性)を検出し、室温センサ13は車室内の温度(環境特性)を検出する。また、制御処理部6は、外気温センサ12の検出する温度と室温センサ13が検出する温度との差が、予め記憶する基準値を超えたときにデフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくするように上段加熱領域R1と下段加熱領域R2との温度を調整する。このような構成によれば、車室内の温度と外気温との差が大きく、ウィンドウから多くの熱が外部に放出されるような場合に、車室内の上部に供給される空気の温度を相対的に高くすることにより乗員が快適に過ごすことができるようになる。
【0050】
図4(b)は、日射センサ10に換えて室温センサ13(検出手段)のみを備えている。このような構成では、制御処理部6は、室温センサ13が検出する温度と設定温度との差が、予め記憶する基準値を超えたときにデフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を小さくすると判断し、基準値を下回ったときにデフロスタ吹出口1dあるいはベント吹出口1eから吐出される空気とヒート吹出口1fから吐出される空気との温度差を大きくすると判断する。このような構成によれば、車室内の温度が設定温度に対して低い場合には、車室内の上部に供給される空気の温度を相対的に高くすることにより乗員が快適に過ごすことができるようになり、また車室内の温度が設定温度に達したときには、車室内の上部に供給される空気の温度上昇を抑えることによりいわゆる頭寒足熱を実現して乗員が快適に過ごすことができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、PTCヒータ5に加熱領域として上段加熱領域R1と下段加熱領域R2とが設けられた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、PTCヒータ5の加熱領域が、上下方向にさらに複数段設けられた構成や、左右方向に分割された構成を採用することも可能である。このようなPTCヒータ5に対して加熱領域をどのようにレイアウトするかについては、ケース内の空気の流れや空気の吐出口の位置等に応じて決定する。