(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機器本体を収容する機器ケースのプラグ取り付け口に取り付けられるプラグコンタクトを備えたプラグコネクタと、前記機器本体に付属する結線板にプリントされたパッドと、の接続構造であって、
前記プラグコンタクトは前記結線板側である後端部に後方に延びる他より細径の後方ピンを備え、
前記結線板は前記後方ピンをその周面で挟持可能な接続手段を備え、
前記プラグコンタクトと、前記接続手段との電気的機械的接続は前記後方ピンの前記接続手段への嵌合操作で行なうことができ、
前記接続手段は、前記後方ピンをその周面で挟持する一対の挟持片を有する接続部を備え、
前記挟持片のうち少なくとも一方の挟持片は、前記後方ピンと接続するための接触面を備え、
前記接触面は、前記後方ピンの先端から全長の半分の位置までの範囲で接続し、前記接触面の嵌合方向に沿う長さが、前記後方ピンの先端から基端までの他より細径の全長の少なくとも1/3は備えるところに特徴を有するプラグコンタクトと接続手段との接続構造。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を添付図面に従って説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。
図1は本実施形態に係るプラグコネクタとベースコネクタとの嵌合状態を示す外観図である。
図2は
図1に示されるプラグコネクタの断面図である。
図3は
図1に示されるプラグコネクタの分解図である。
図4は
図1に示されるプラグコネクタに組み付けられるプラグコンタクトの側面図である。
図5は
図1に示されるベースコネクタであって、(a)はベースハウジングとベースコンタクトとの分解図であり、(b)はベースハウジングとベースコンタクトとの組み付け図である。
図6は
図5に示されるベースコンタクトであって、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
図7は本実施形態に係るベースコンタクトとプラグコンタクトとの嵌合状態を示す外観斜視図である。
【0021】
ここで、説明で使用する指示方向について定義する。
図1を例にとれば、紙面の上方でプラグコネクタのリセプタクルコネクタとの嵌合面側を、前、場合によっては、上、とし、反対側を、後、場合によっては、下、とする。図面によってイメージしやすい呼び方を用い、図面には、その定義方向を表示する。尚、位置ズレの説明では、ズレ方向の空間的なイメージのしやすさを考慮して、更に、X方向、Y方向、及びθ方向の3次元で表現し、図面にはその定義方向を示す。
【0022】
〈接続構造の概観〉 本発明に係るプラグコネクタ10と、ベースコネクタ20との接続構造を概観する。プラグコネクタ10は、
図1に示されるように、AC電源ケーブルに
繋がるリセプタクルコネクタSと嵌合する面を前方に備える一方、モーター本体M1に繋がるベースコネクタ20と嵌合する面を後方に備える。この接続構造によって、モーター本体M1と、AC電源とが接続される。本発明に係る接続構造は、プラグコネクタ10と、ベースコネクタ20との接続に係るものである。
【0023】
〈プラグコネクタ〉 プラグコネクタ10について説明する。プラグコネクタ10は、
図2、
図3に示されるように、金属製のプラグコンタクト120を合成樹脂製のハウジング100で支持する構造を基調とし、電磁波を遮断するための金属製のシールド110でプラグコンタクト120本体を含むハウジング100の外周を覆う構造である。プラグコンタクト120と、これを支持するハウジング100との間の気密性を高めるために、
図3で示されるように、たとえばシリコーンゴム製のパッキン111をハウジング100内部に装着してよい。
【0024】
ハウジング100は、
図2、
図3に示されるように、非導電性の合成樹脂の射出成形品である。ハウジング100は平面視円形の底面101と、その周囲を環状に延びる壁面102とを備える。底面101には、プラグコンタクト120を圧入支持するための貫通孔103が備わる。本実施形態の場合、3本のプラグコンタクト120と、1本のアースコンタクト130が備わるために、4個の貫通孔103が開けられる。ハウジング100の内側の空間には、気密性を確保するためのパッキン111が装着される。
【0025】
パッキン111は、シリコーンゴムの成形品である。パッキン111は、
図2、
図3に示されるように、ハウジング100の内側に嵌め込まれる略筒状の本体111aと、この本体111aにプラグコンタクト120の周面に密着する貫通孔111bとを備える。本実施形態の場合、4個の貫通孔111bが備わる。パッキン111は、ハウジング100の内側に嵌まる。
【0026】
シールド110は、
図2、
図3に示されるように、アルミニウム合金のダイキャスト品を機械加工したものである。シールド110は、筒状を基調とし、外周面の後方寄りに平面視矩形のフランジ110aを備える。シールド110は、フランジ110aより前方に前フード110b、後方に後フード110cを備える。前フード110bは、プラグコンタクト120の前半分をカバーし、後フード110cは、プラグコンタクト120の中間部分をカバーする。フランジ110aは、組み付けられたプラグコネクタ10をモーターケースMCに取り付けるための螺子孔110aaを、四隅に備えている。
【0027】
〈プラグコンタクト〉 プラグコンタクト120は、導電性を考慮して銅合金を使用する。特に数十アンペアの比較的大きな電流容量が予定される場合には、純銅に近い組成からなる銅合金を使用してもよい。プラグコンタクト120は、接続の信頼性を長期間に亘って保証するために表面を金メッキ、錫めっき、あるいは銀メッキで保護してよい。
【0028】
プラグコンタクト120は、
図4に示されるように、棒状の加工品である。加工は転造加工で行なってよく、あるいは切削加工で行なってもよい。プラグコンタクト120は、中央部に比較的径の太い圧入部121を備え、この圧入部121の前方に接続部122、及び圧入部121の後方に後方ピン123を備える。圧入部121は、ハウジング100の貫通孔103に進入し、プラグコンタクト120をハウジング100内で支持する。圧入部121は、圧入面積(周面積)を大きくとるために比較的大径に作られている。圧入部の外周前方には、進入止めのフランジ121aが備わる。フランジ121aによってプラグコンタクト120の正規圧入位置が規制される。
【0029】
接続部122は、
図4に示されるように、圧入部121の前方に備わる。接続部122は、相手リセプタクルコンタクトとスムーズに電気的機械的に接続するために、先端が丸
みを帯びるとともに、周面は滑らかである。接続部122は、AC電源の接続のため比較的大容量電流が予定されるので、接続面積を大きくとるため接続長が比較的長くとられている。
【0030】
後方ピン123は、
図4に示されるように、圧入部121の後方に備わる。後方ピン123は、転造加工あるいは切削加工によってプラグコンタクト120一体として成形してよく、あるいは、後方ピン123を別体として成形し、後ほどプラグコンタクト120に合体してもよい。
【0031】
後方ピン123は、結線板のパッドに接続するベースコンタクト220と電気的機械的に接続するために、先端が丸みを帯びるとともに、周面は滑らかに形成されている。後方ピン123は、相対的な位置ズレの発生が予定される対応ベースコネクタ20との嵌合操作をスムーズに行なうために、軸心から半径方向に対して柔軟に変形可能である。すなわち、後方ピン123を断面で切る平面に対して仮想の縦軸、横軸を置くと、後方ピン123は、縦軸方向、及び横軸方向ともに変形可能である。
【0032】
後方ピン123は、このように軸心の半径方向の変形に対して柔軟性を備えることで、空間的に位置ズレの発生が予定される対応ベースコネクタ20に対して追従し、確かな嵌合を可能にする。このような特性を備えるために、後方ピン123が、たとえば純銅に近い組成からなる銅合金製の場合、後方ピン123の直径Dに対する長さLの比R(R=L/D)は、10から40の間が好ましい。
【0033】
(数1)
式1・・・R=L/D
式2・・・10≦ R ≦40
【0034】
Rが10より小さい場合は、後方ピン123の柔軟性が十分に確保されにくくなるために、相対的な位置ズレに対して予定する追従動作が作用しないおそれがある。Rが40より大きい場合には、次第に先端の触れ幅が大きくなり却って嵌合操作がスムーズに行なえないおそれがある。
【0035】
より好ましい比Rは、15から35の間であり、さらに好ましい比Rは、20から30の間である。
【0036】
(数2)
式3・・・15≦ R ≦35
式4・・・20≦ R ≦30
【0037】
比Rが20から30の間にある場合、後方ピン123の先端の触れ幅が少なく、且つ必要な柔軟性が確保されるので、相対的且つ空間的な位置ズレの発生が予定される対応ベースコネクタ20に対して十分な追従性を示すとともに、確かな嵌合を可能にする。本実施形態の場合、比Rは概ね20から30の間にある。
【0038】
〈アースコンタクト〉 アースコンタクト130は、シールド110をアース電位と同レベルにするためのコンタクトである。アースコンタクト130は、
図2、
図3に示されるように、基本的にプラグコンタクト120と同じ構造の圧入部121と、接続部122とを備える。
【0039】
〈プラグコネクタの組み立て〉 プラグコネクタ10の組み立てについて図面に従って説明する。プラグコネクタ10は、
図3に示されるように、上下方向(前後方向)に沿っ
て組み付けられる。3個のプラグコンタクト120、及び1個のアースコンタクト130は、後方からハウジング100の貫通孔103に圧入される。コンタクト120、130(プラグコンタクト120及びアースコンタクト130を合わせて以下コンタクトと言う)が圧入されたハウジング100は、その周面に彫られた溝に金属製のリング112が装着される。リング112は溝に下半分を埋め、上半分をハウジング周面から突出させている。このリング112の突出は、ハウジング100とシールド110との嵌合時、シールド110の内周面に彫られた溝に係合し、ハウジング100とシールド110間を固定する。
【0040】
コンタクト120、130が圧入されたハウジング100は、前方からパッキン111が装着される。パッキン111は、コンタクト120、130の接続部122の基端部まで装着される。接続部122の直径は、パッキン111の貫通孔111bの直径に比べて大き目に作られているので、接続部122の周面を隙間なくパッキン111は塞ぐことができる。
【0041】
コンタクト120、130が圧入されたハウジング100は、
図3に示されるように、前方からシールド110が装着される。シールド110が正規装着位置まで装着されると、その位置でパッキン111の周面はシールド110の内周面に当接する。パッキン111の外径は、シールド110の内径に比べて大き目に作られている。これにより、パッキン111は、シールド110の内周面を隙間が生じないように塞ぐことができる。これにより、パッキン111は、コンタクト120、130の周囲を含めてシールド110の内部を気密化する。
【0042】
アースコンタクト130は、
図3に示されるように、導電性のアースピン113を介してシールド110と電気的に接続する。これにより、シールド110とアースコンタクト130とは、同電位になる。
【0043】
〈ベースコネクタ〉 ベースコネクタ20について図面に従って説明する。ベースコネクタ20は、
図5に示されるように、非導電性のハウジング200と、導電性のベースコンタクト220とを備える。ベースコンタクト220は3個が組み付けられる。3個のベースコンタクト220は、結線板との接続を担う実装部222の引き出し形状(連結部225)によってそれぞれ相違する形状であるが(第一ベースコンタクト220a、第二ベースコンタクト220b、第三ベースコンタクト220c)、接続部223を含む主要部は共通する構造を備えている。説明は、特に断りがない限り3個のベースコンタクト220について共通するものである。
【0044】
ベースコンタクト220は、
図6に示されるように、銅合金からなる金属圧延材の曲げ加工品であり、表面は金あるいは錫でメッキされている。ベースコンタクト20は、結線板BのパッドBPに接続する実装部222、ハウジングに固定する圧入部221、及びプラグコンタクト120の後方ピン123に接続するための接続部223を備える。
【0045】
接続部223は、矩形状の基部224と、この基部224の対向する側縁から90度の角度で立ち上がる一対の挟持片223a、223bを備える。一対の挟持片223a、223bは、後方ピン123の先端側を弾性的付勢力でもって挟持する。基部224は、後方ピン123の挿抜方向(上下方向)に沿って備わり、一対の挟持片223a、223bは、挿抜方向(上下方向)に対して直交する方向(θ方向)に延びる。これにより、挟持片223a、223bは、後方ピン123を側面から挟持する姿勢をとるので、後方ピン123の先端は、一対の挟持片223a、223bの間をすり抜けることが可能である。したがって後方ピン123は、挟持片223a、223bの下端からはみだす態様をとることもできる。
【0046】
接続部223は、
図6に示されるように、後方ピン123を面で受け止める固定側挟持片223aと、後方ピン123に積極的に押圧を加える可動側挟持片223bとを備える。固定側挟持片223aは、概ね全面に平坦面を有する台座部223aaを備える。台座部223aaは、プレス加工で形成される隆起した平坦面である。可動側挟持片223bは、上端に屈曲部226を有し、下方向に延びる押圧部223bbを備える。
【0047】
台座部223aaは、プレス加工によって形成されるので、上下方向(Y方向)、及び幅方向(θ方向)に亘り略一様に平坦面を広げている。台座部223aaの幅方向の広がりは、後方ピン123の直径の概ね3倍の大きさを備えている。これにより、挟持片223a、223bは、後方ピン123のθ方向の位置ズレに対して広い範囲で接続可能である。
【0048】
台座部223aaの上下方向(Y方向)の広がりと、後方ピン123の先端が挟持片223a、223bの間をすり抜けることが可能な構造との相乗で、挟持片223a、223bは、後方ピン123の上下方向(Y方向)の位置ズレに対して広い範囲で接続可能である。
【0049】
押圧部223bbは、
図6に示されるように、上端にある屈曲部226からやや固定側挟持片223aに向かう姿勢で下方に延びる。先端は、くの字に曲がり、押圧力を頂部224に集めて後方ピン123を挟持する。押圧部223bbはθ方向に弾性的に変位可能である。くの字の頂部224と固定側挟持片223aの台座部223aaとの間の距離は、後方ピン123の直径Dに比べて小さく、概ね1/2程度である。これにより、一対の挟持片223a、223bは、
図7に示されるように、後方ピン123を付勢力で持って挟持する。
【0050】
〈ハウジング〉 ハウジング200は、
図5に示されるように、上面に段違い部を1箇所備えた、非導電性合成樹脂製の箱体の射出成形品である。高段側202には、ベースコンタクト220を収容するための収容穴201が1個備わり、低段側203には、ベースコンタクト220を収容するための収容穴201が2個備わる。収容穴201は、ベースコンタクト220の接続部223を収容し固定するための断面矩形の穴である。ベースコンタクト220を収容穴201に圧入すると、ベースコンタクト220に備わる突起状の圧入部221が、収容穴201の側壁に当たり固定する。収容穴201は底面まで続く貫通孔である。接続部223の固定側挟持片223a、及び可動側挟持片223bは、収容穴201の側面に、その背面を押し当てる姿勢で収まる。
【0051】
ベースコンタクト220は、ハウジング200の実装面206に実装部222を揃えるための連結部225を備え、ハウジング200には、連結部225が収まる溝204が形成されている。ハウジング200は、
図5に示されるように、前面にプラグコンタクト120の受面205を備え、側面に結線板Bに取り付く実装面206を備える。プラグコネクタ10は、ベースコネクタ20の前方から挿入する。
【0052】
プラグコンタクト120と、ベースコンタクト220との接続構造は、
図7に示されるように、プラグコンタクト120の後端から後方に延びる後方ピン123が一対の挟持片223a、223bで挟持されるものである。
【0053】
〈ズレ吸収構造〉 プラグコネクタ10と、ベースコネクタ20との相対的な位置ズレが生じているときの、プラグコンタクト120と、ベースコンタクト220とのズレ吸収構造について図面に従って説明する。
図8は本実施形態に係るベースコンタクトとプラグコンタクトとのX方向のフローティング構造を示す側面図であって、(a)はマイナス方
向のズレ、(b)はプラス方向のズレである。
図9は同Y方向のフローティング構造を示す側面図であって、(a)はマイナス方向のズレ、(b)はプラス方向のズレである。
図10は同θ方向のズレ吸収構造を示す側面図である。ここで、X方向は、ベースコンタクト220の挟持片223a、223bの挟持方向であり、Y方向は、プラグコンタクト120の挿入方向であり、θ方向は、挟持片223a、223bの挟持方向に直交する方向である。
【0054】
〈X方向のズレ吸収〉 ベースコンタクト220と、プラグコンタクト120とのX方向のズレ吸収は、
図8に示されるように、ベースコンタクト220に備わる後方ピン123の撓りによって行なわれる。ベースコンタクト220は直径Dに対する長さLの比Rが概ね30あり、純銅に近い組成から成る銅合金なので、後方ピン123全体がしなやかに変形する。
【0055】
プラグコンタクト120がベースコンタクト220に対する正規嵌合位置から後方ピン123の直径相当分X方向(+方向、−方向ともに)に位置ズレが生じている場合、後方ピン123の撓りによって、先端部はベースコンタクト220の接続部223に嵌合可能である。固定側挟持片223aの上端部のテーパ、及び可動側挟持片223bの押圧部223bbのテーパは、挿入間口を広げるとともに、位置ズレが生じている後方ピン123を正規嵌合位置に案内する作用を有する。これにより、直径相当分の位置ズレが生じていても、後方ピン123の先端は、テーパ面に当たり、これに案内されて撓りながら奥まで進む。このように、ベースコンタクト220と、プラグコンタクト120とがX方向にズレが生じていても、ズレ吸収作用によって両者は電気的機械的に接続する。
【0056】
〈Y方向のズレ吸収〉 ベースコンタクト220と、プラグコンタクト120とのY方向のズレ吸収は、
図9に示されるように、台座部223aaの上下方向の広がりと、後方ピン123の先端が挟持片223a、223bの間をすり抜けることが可能な接続部223の構造との相乗によって行なわれる。嵌合状態にある後方ピン123は、押圧部223bbの頂部224から押圧力を受け、その反対面を固定側挟持片223aの台座部223aaに押し当てる。この状態で後方ピン123は接続部223と電気的機械的に接続する。正規嵌合位置は、後方ピン123の先端からいくらか基端部よりに後退した地点であり、この地点で押圧部223bbの頂部224が弾接する。
【0057】
プラグコンタクト120がベースコンタクト220に対する正規嵌合位置からY方向(+方向、−方向ともに)に位置ズレが生じている場合、たとえば、プラグコンタクト120が−方向にズレが生じている場合、頂部224との当たりは先端側にずれることとなるが、もともと後方ピン123の当たり代は、先端側に冗長度が設けてあるので、接続部223(ベースコンタクト220)は、後方ピン123(プラグコンタクト120)と電気的機械的に接続可能である。
【0058】
プラグコンタクト120が+方向にズレが生じている場合、頂部224との当たりは基端側にずれることとなり、先端は正規嵌合位置に比べて+方向に移動する。このとき、接続部223は、後方ピン123の先端が挟持片223a、223bの間をすり抜けることが可能なので、後方ピン123の先端が接続部223に衝突するおそれはない。これにより、接続部223(ベースコンタクト220)は、後方ピン123(プラグコンタクト120)と電気的機械的に接続可能である。このように、ベースコンタクト220と、プラグコンタクト120とがY方向にズレが生じていても、ズレ吸収作用によって両者は電気的機械的に接続する。
【0059】
〈θ方向のズレ吸収〉 ベースコンタクト220と、プラグコンタクト120とのθ方向のズレ吸収は、
図10に示されるように、主に挟持片223a、223bの幅方向(θ
方向)の広がりと、後方ピン123の柔軟性とによって行なわれる。固定側挟持片223aの台座部223aa、可動側挟持片223bの押圧部223bbともに、後方ピン123の直径Dに比べて3倍程度の幅方向(θ方向)の広がりを持つ。
【0060】
プラグコンタクト120がベースコンタクト220に対して、θ方向(+方向、−方向ともに)にズレが生じている場合、後方ピン123は、正規嵌合位置からは離れるが、一対の挟持片223a、223bの範囲内にある。これにより、接続部223(ベースコンタクト220)は、後方ピン123(プラグコンタクト120)と電気的機械的に接続可能である。
【0061】
このように、プラグコネクタ10と、ベースコネクタ20との間でX方向、Y方向、及びθ方向に関して相対的な位置ズレが生じている場合、プラグコンタクト120の後方ピン123と、ベースコンタクト220の接続部223との間の接続構造によって、両者は電気的機械的に接続可能である。
【0062】
〈実施例にて作用機能の説明〉 本実施形態に係るプラグコネクタ10及びベースコネクタ20が組み付けられたモーターケースMCについて、図面に従って説明する。
図11は本実施形態に係るプラグコネクタとベースコネクタとの接続構造を備えるモーターケースであって、(a)は主要部の断面図、(b)はベースコネクタと結線板のパッドとの接続状態を示す斜視図である。
【0063】
モーターケースMCは、
図11に示されるように、モーター本体M1を収容する筒状のケースであって、鋳造品を機械加工で仕上げたものである。モーターケースMCは、周面後端にプラグ取り付け口Qを備え、モーター本体M1は、後端に結線板Bを備える。結束板Bは、プリント配線基板で、AC電源から供給された電気をモーターケースMC内部に固定されたコイルCに分配するものである。結線板Bはモーター本体M1に付属し、結線板Bの外側上端にベースコネクタ20が備わる。ベースコネクタ20は、結線板BのパッドBPの位置に実装部が222はんだ付けされる。
【0064】
モーター本体M1に付属するベースコネクタ20は、
図11に示されるように、モーター本体M1の組み付けによって位置決めされる。プラグコネクタ10は、位置決めキーに沿ってプラグ取り付け口Qに取り付けられる。プラグ取り付け口Qの奥には、結線板Bに固定されたベースコネクタ20があり、プラグコネクタ10がプラグ取り付け口Qに組み付けられると同時に、プラグコンタクト120の後方ピン123がベースコンタクト220の接続部223に嵌合する仕組みである。
【0065】
プラグコネクタ10のシールド110の後端と、ベースコネクタ20の嵌合面との間は、
図11に示されるように、比較的距離があり、その間を脚の長い後方ピン123が延びる態様で接続する。プラグコネクタ10、及びベースコネクタ20は、ともに組み付け位置にズレが伴う。特にベースコネクタ20は、結線板Bに対する実装精度、及びモーター本体M1の組み付け精度等位置ズレ要因を複合的に含むのでズレは比較的大きくなる。これにより、プラグコネクタ10と、ベースコネクタ20との相対的な位置ズレが生じることとなる。
【0066】
本実施形態に係るプラグコネクタ10と、ベースコネクタ20とは、嵌合可能であるとともに、相対的な位置ズレが生じることを予定して接続構造が創出されている。これにより、従来技術のような錬度を要する電線の接続作業を廃し、比較的容易な嵌合操作によってプラグコネクタ10と、結線板BのパッドBPとの間を電気的機械的に接続することができる。更には、相対的な位置ズレに対して対応可能な接続構造を備えるので、嵌合操作がスムーズに行なえる。これにより、たとえば産業ロボットによるプラグコネクタ10の
取り付け作業が実現し、モーター組み立ての自動化ラインが可能になる。
【0067】
〈効果〉本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
・本実施形態に係るプラグコネクタ10と、結線板BのパッドBPとの接続構造は、プラグコンタクト120の後端から延びる後方ピン123と、結線板BのパッドBPに実装されるベースコネクタ20との嵌合構造を備える。これにより、電線の接続作業を廃し、プラグコネクタ10の嵌合操作でプラグコネクタ10と結線板BのパッドBPとの間をベースコネクタ20を介して電気的機械的に接続できる。
・本実施形態に係るプラグコンタクト120の後方ピン123は、直径Dに対して凡そ30倍程度の長さLを備える。これにより、後方ピン123の先端の触れ幅が少なく、且つ必要な柔軟性が確保されるので、相対的且つ空間的な位置ズレの発生が予定される対応ベースコネクタ20に対して十分な追従性を示すとともに、確かな嵌合を可能にする。
【0068】
・本実施形態に係るプラグコンタクト120の後方ピン123は、直径Dに対して凡そ30倍程度の長さLでベースコンタクト220の方向に延びる。これにより、ベースコネクタ20に対してX方向に位置ズレが生じても、後方ピン123の撓りによって先端部はベースコンタクト220の接続部223に嵌合可能である。
・本実施形態に係るベースコンタクト220の固定側挟持片223aの上端部のテーパ、及び可動側挟持片223bの押圧部223bbのテーパは、挿入間口を広げるとともに、位置ズレが生じている後方ピン123を正規嵌合位置に案内する作用を有する。これにより、X方向に直径相当分の位置ズレが生じていても、後方ピン123の先端は、テーパ面に当たり、これに案内されて撓りながら奥まで進むことができる。
【0069】
・本実施形態に係るプラグコンタクト120がY方向下向きにズレが生じている場合、頂部224との当たりは基端側にずれることとなり、先端は正規嵌合位置に比べて下方向に移動する。このとき、接続部223は、後方ピン123の先端が挟持片223a、223bの間をすり抜けることが可能なので、後方ピン123の先端が接続部223の底面に衝突するおそれはない。これにより、接続部223(ベースコンタクト220)は、後方ピン123(プラグコンタクト120)と電気的機械的に接続可能である。
【0070】
・本実施形態に係るベースコンタクト220の固定側挟持片223aの台座部223aa、可動側挟持片223bの押圧部223bbともに、後方ピン123の直径Dに比べて3倍程度の幅方向(θ方向)の広がりを持つ。プラグコンタクト120がベースコンタクト220に対して、θ方向(+方向、−方向ともに)にズレが生じている場合、後方ピン123は、正規嵌合位置からは離れるが、一対の挟持片223a、223bの範囲内にある。これにより、接続部223(ベースコンタクト220)は、後方ピン123(プラグコンタクト120)と電気的機械的に接続可能である。
【0071】
・本実施形態に係るプラグコネクタ10と、ベースコネクタ20とは、嵌合可能であるとともに、相対的な位置ズレが生じることを予定して接続構造が創出されている。これにより、たとえば産業ロボットによるプラグコネクタ10の取り付け作業が実現するので、モーター組み立ての自動化ラインが可能になる。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、発明思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【0072】
〈別の実施形態1〉 以下別の実施形態1について図面に従って説明する。符号に関しては、上述した実施形態と形態が変わらないものについては、上述した符号と同じ符号をつけ、形態が変わるものについては、新たな符号をつける。
図12は別の実施形態1に係るプラグコンタクトとベースコンタクトとの嵌合過程を示す外観斜視図であって、(a)は嵌合前、(b)は嵌合後である。
図13は別の実施形態2に係るプラグコンタクトとベ
ースコンタクトとの嵌合状態を示す側面図である。
【0073】
プラグコンタクト120は、
図12に示されるように、平板状の後方ピン1123を備える。平板状後方ピン1123の板厚は、上述した後方ピン123と略同じ厚みを備え、幅方向(θ方向)は、板厚の略3倍の厚みを備え、略同じ長さを備える。
このように構成した場合も概ね上述した効果が得られる。
【0074】
〈別の実施形態2〉 ベースコンタクト220は、
図13に示されるように、固定側挟持片223aと、可動側挟持片223bとを備える。固定側挟持片223aは平坦面を有する台座部223aaを備え、可動側挟持片223bは平坦面を有する押圧部223bbを備える。このように、後方ピン1123に対して一対の挟持片223a、223bは、面で支持し、且つ平坦面で押圧を加える構造である。
【0075】
このように構成した場合も概ね上述した効果が得られるとともに、接触面積が拡大するので、特にY方向(上下方向)のズレに対してズレ吸収範囲が拡大する。また、電流容量の拡大に対応することができる。