特許第6137902号(P6137902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137902
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車両用バウンドストッパ
(51)【国際特許分類】
   B60G 13/06 20060101AFI20170522BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B60G13/06
   F16F9/54
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-69853(P2013-69853)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189272(P2014-189272A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】河合 賢司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛道
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 靖也
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−065382(JP,A)
【文献】 特開平06−024222(JP,A)
【文献】 特開2006−170385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
F16F 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバ(3)のシリンダロッド(35)が挿通され、カップ底板部(1a)の外周縁から、下方向へ向けて内径が小さくなる絞り込み部分(15)を有するカップ筒部(1b)が延出された下面開口(19)の逆カップ状にして、車体側部材(7)に固着される保持金具(1)へ、厚肉筒状の弾性体からなり、前記絞り込み部分(15)の最小内径(d15)よりも大きな端部最大外径(D22)を有する上端部(2a)が、前記下面開口(19)側から押圧挿入され嵌合一体化される車両用バウンドストッパ(2)において、
環状上面(21)の外周縁から下降する前記上端部(2a)の外周面(22)で、前記端部最大外径(D22)よりも下方に位置する前記絞り込み部分(15)の対応部位に、下方向に向けて外径を小さくしたテーパ(23)が設けられると共に、前記保持金具(1)との嵌合一体化で、該絞り込み部分(15)の内壁面(15a)と対面する該テーパ(23)の下向き外面(231)に突起(25)が平面視で前記端部最大外径(D22)よりも内方に引っ込んで設けられてなることを特徴とする車両用バウンドストッパ。
【請求項2】
前記突起(25)が、前記上端部(2a)との一体成形で前記テーパ(23)の下向き外面(231)に対し凸条(25a)に隆起形成され、且つ該凸条(25a)の長手方向を該テーパ(23)の周方向に一致させた請求項1記載の車両用バウンドストッパ。
【請求項3】
前記突起(25)が前記テーパ(23)の周方向に断続形成された請求項1又は2に記載の車両用バウンドストッパ。
【請求項4】
前記突起(25)が設けられた周囲の前記テーパ(23)の下向き外面(231)に、シボ加工の凹凸部(26)が形成された請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用バウンドストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等のサスペンション機構で、車体側部材に取付けられる保持金具へ嵌合一体化させて組付けられる車両用バウンドストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車体側部材に取付けられた下面開口の逆カップ状の保持金具へバウンドストッパを嵌合一体化させ、車輪側に取付けられたショックアブソーバのシリンダから伸びるシリンダロッドに該バウンドストッパ,該保持金具を挿通させた後、その先端部を車体側に固着させて、乗り心地の向上,振動の低減を図るサスペンション機構がある。シリンダロッドにバウンドストッパを固定する構造と違って、保持金具へバウンドストッパを嵌合一体化させる構造タイプは、弾性体からなる該バウンドストッパを弾性変形させ、開口側から専ら押圧挿入させて保持金具内にその上端部を収め、保持金具とバウンドストッパの嵌合一体化が図られてきた。
【0003】
具体的には、カップ内部87よりも開口89側に最小口径d8を有して口が窄む図10のような逆カップ状保持金具8が用いられる。開口89側から該最小口径d8より大きめの外径D9を有する嵌合部91のあるバウンドストッパ9を弾性変形させ、図10(イ)の白抜き矢印に示す押圧力で何とか最小口径d8の口を潜らせて嵌合一体化がなされてきた。嵌合一体化が製品要求を満たすか否かは、抜け強度試験があり、設定要求値を満足させるかどうかで最終製品の適否判定がなされる。動かぬよう固定された保持金具8(又は相当治具)へ嵌合させたバウンドストッパ9を図10(ロ)の中黒矢印方向に引っ張り、抜け強度が測定される。ここで、弾性体からなるバウンドストッパ9の密度等の影響によって抜け強度(抜け抗力)が満足しないケースもあることから、嵌合部91の外径寸法D9を大きくし、抜け強度を向上させてきた。
ただ、抜け強度向上のために製品嵌合部91の外径寸法D9を大きくすると、圧力を加えて開口89側から挿入させ、保持金具8内にバウンドストッパ上端部の嵌合部91を収める際、挿入抵抗が大きくなって挿入性(組付け性)が悪くなる。抜け強度アップと挿入性悪化が背反関係にあることから、結局、その妥協点を探るしかなく、抜け強度の向上には限界があった。
こうしたことから、別の切り口から抜け強度向上を目指すバウンドストッパの改良発明が提案されるようになっている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−300931号公報
【特許文献2】特開2011−194955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1は、その請求項3に記載のごとく「カップ状金具の側壁内面に凸部を有し、ストッパ本体の基部側面には、前記凸部を乗り越えて嵌合する環状凸部を有する」車両用バウンドストッパに留まり、基部側面に設ける凸部で抜け強度を向上させる発明であり、基本構造,作用が外径寸法を大きくするのと変わりなかった。凸部を高くする抜け強度アップが、挿入性悪化に直接つながることから、その妥協点を探るしかなく、凸部を高くする抜け強度の向上には自ずと限界があった。
また、特許文献2は、バウンドストッパ側に保持金具との一体化のために嵌合凸部,位置決め突起等を設けるにとどまらず、保持金具側にもバウンドストッパとの一体化のためだけに、括れ状部,差入溝,位置決め孔等を設けなければならないなど、構造が複雑化しており、コスト増につながる可能性大であった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、嵌合部の外径寸法に頼らず、また構造を複雑化させなくても、抜け強度向上を図ることのできる車両用バウンドストッパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、ショックアブソーバ(3)のシリンダロッド(35)が挿通され、カップ底板部(1a)の外周縁から、下方向へ向けて内径が小さくなる絞り込み部分(15)を有するカップ筒部(1b)が延出された下面開口(19)の逆カップ状にして、車体側部材(7)に固着される保持金具(1)へ、厚肉筒状の弾性体からなり、前記絞り込み部分(15)の最小内径(d15)よりも大きな端部最大外径(D22)を有する上端部(2a)が、前記下面開口(19)側から押圧挿入され嵌合一体化される車両用バウンドストッパ(2)において、環状上面(21)の外周縁から下降する前記上端部(2a)の外周面(22)で、前記端部最大外径(D22)よりも下方に位置する前記絞り込み部分(15)の対応部位に、下方向に向けて外径を小さくしたテーパ(23)が設けられると共に、前記保持金具(1)との嵌合一体化で、該絞り込み部分(15)の内壁面(15a)と対面する該テーパ(23)の下向き外面(231)に突起(25)が平面視で前記端部最大外径(D22)よりも内方に引っ込んで設けられてなることを特徴とする車両用バウンドストッパにある。
請求項2の発明たるバウンドストッパは、請求項1で、突起(25)が、前記上端部(2a)との一体成形で前記テーパ(23)の下向き外面(231)に対し凸条(25a)に隆起形成され、且つ該凸条(25a)の長手方向を該テーパ(23)の周方向に一致させたことを特徴とする。請求項3の発明たるバウンドストッパは、請求項1又は2で、突起(25)が前記テーパ(23)の周方向に断続形成されたことを特徴とする。請求項4の発明たるバウンドストッパは、請求項1〜3で、突起(25)が設けられた周囲の前記テーパ(23)の下向き外面(231)に、シボ加工の凹凸部(26)が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明のごとく、下方向に向けて外径を小さくしたテーパ(23)が設けられると共に、保持金具(1)との嵌合一体化で、該絞り込み部分(15)の内壁面(15a)と対面する該テーパ(23)の下向き外面(231)に突起(25)が設けられると、嵌合するバウンドストッパ上部の端部最大外径よりも突起を外方へ突出させずに済むので、バウンドストッパを下面開口(19)側から保持金具内へ押圧挿入する際、該突起が邪魔をしない。しかも、押圧挿入する時は、下面開口と対面するバウンドストッパ上部の挿入面側にあたらず、背面側で隠れるので、該上部が保持金具内に入り込めば、突起もすんなりと入り込む。外径寸法を大きくすることに頼って、挿入抵抗が大きくなりすぎていたこれまでの問題は解消される。突起(25)が平面視で前記端部最大外径(D22)よりも内方に引っ込んで設けられると、端部最大外径の部分が保持金具の下面開口から絞り込み部分の最小内径を潜ることさえできれば、突起はその高さが多少高くても難なく保持金具内へ一緒に潜り込むことができる。下面開口から上端部を保持金具内に押圧挿入する際、突起は上端部の裏面側にあたる下向き外面に設けられているので、上端部が絞り込み部分を潜れば、これに伴って突起もすんなりと保持金具内に収めることができる。
それでいて、突起が保持金具内に一旦入り込み、絞り込み部分(15)の内壁面(15a)と対面する該テーパ(23)の下向き外面(231)に突起(25)が配されると、突起がその弾性反力で、対面接触に伴う摩擦抵抗だけでなく、絞り込み部分の内壁面を押圧することができるので、抜け強度向上に威力を発揮する。挿入抵抗を変えずに抜け強度向上が可能になる。さらに、下向き外面(231)に突起(25)が設けられると、突起を絞り込み部分が下側から受け支えるので、下面開口から下方向にバウンドストッパを引っ張る力が働いても、絞り込み部分が抵抗になり真っ向から阻止する。
請求項2の発明のごとく、前記上端部(2a)との一体成形で前記テーパ(23)の下向き外面(231)に対し、突起(25)が凸条(25a)に隆起形成されると、製品の低コスト化が可能になる。凸条(25a)のすじ状長手方向を該テーパ(23)の周方向に一致させると、嵌合一体化を外そうとする外力が筒状バウンドストッパに係る軸方向の下向き方向になることから、該下向き方向と凸条のすじ状方向が直交するので、凸条の配置構成で抜け強度が最大になる。
請求項3のごとく、突起(25)が前記テーパ(23)の周方向に断続形成されると、個々の突起が保持金具との嵌合一体化で、絞り込み部分の内壁面に自在に押し潰され、変形,圧接して嵌合部の抵抗力(抜け抗力)を大きくし、それらの合計でトータルの抜け抗力値を高める。請求項4のごとく、突起(25)が設けられた周囲の該テーパ(23)の下向き外面(231)に、シボ加工の凹凸部(26)が形成されると、突起とシボ加工による凹凸部の相乗効果で嵌合部の抵抗力が増す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用バウンドストッパは、保持金具への挿入時の抵抗増大を回避しながら抜け強度向上に大きく貢献でき、しかも、その構造を複雑化させることがないなど低コスト化にも優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のバウンドストッパの一形態で、車両に組み込まれたバウンドストッパとその周りの一部断面正面図である。
図2図1のバウンドストッパを保持金具へ組付ける説明図である。
図3図2のバウンドストッパの部分拡大図である。
図4図3のIV-IV線矢視図である。
図5図2のV-V線矢視図である。
図6図1のバウンドストッパ上端部の縦断面図である。
図7】他態様のバウンドストッパ上端部周りの正面図である。
図8図7とは別態様のバウンドストッパ上端部周りの正面図である。
図9図7,図8とは別態様のバウンドストッパ上端部周りの縦断面図である。
図10】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用バウンドストッパ(以下、単に「バウンドストッパ」ともいう。)について詳述する。図1図9は本発明のバウンドストッパの一形態で、図1は車両に組み込まれたバウンドストッパとその周りの説明断面図、図2図1のバウンドストッパを保持金具へ組付ける説明図、図3図2のバウンドストッパの部分拡大図、図4図3のIV-IV線矢視図、図5図2のV-V線矢視図、図6図1のバウンドストッパ上端部の縦断面図、図7,図8は他態様のバウンドストッパ上端部周りの正面図で、図9は他態様のバウンドストッパ上端部周りの縦断面図を示す。尚、突起,シボ加工の凹凸部は簡略図示し、また強調して描く。図3,図4のシボ加工の凹凸は他の図にも存在するが、図面を判り易くするため省く。同様の理由で、図2と従来技術の図10の保持金具の断面を表すハッチングを省く。
【0012】
バウンドストッパ2は、例えば図1のようなサスペンション機構のなかで車両に組み込まれている。ショックアブソーバ3のシリンダ31が車輪側に取付けられる一方、シリンダ31から進退動可能に上方へ伸長するシリンダロッド35の先端部35bが、保持金具1,バウンドストッパ2と共に車体側に取付けられる。尚、本発明でいう「上方」,「上方向」とはシリンダ31からシリンダロッド35が伸長する方向を指し、図1でいえば紙面上方になる。「下方」,「下方向」は伸長するロッド先端部35bからシリンダ31が在る方向を指し、図1でいえば紙面下方向になる。
ショックアブソーバ3のシリンダロッド35の先端部35bが、バウンドストッパ2の筒孔20,保持金具1のカップ底板孔10,アッパ部材5を貫通後、上下にゴム材R1,R2を介在させた車体側部材7、さらに上金具6を貫通して、該上金具6上でナットNに螺着固定される。保持金具1は下面開口19の逆カップ状にして、該シリンダロッド35の上部域35aで車体側部材7に固着される。該保持金具1に上端部2aが嵌合したバウンドストッパ2に係る本体主部2bが環状下面29を下方に向け突出する。
【0013】
詳しくは、先端部分に雄ねじ部を形成したシリンダロッド35の先端部35bを、バウンドストッパ2の筒孔20及びこれが嵌合する保持金具1のカップ底板孔10に遊挿させ、さらにアッパ部材5の孔,下側ゴム材R2の孔に遊挿させる。保持金具1の底板部1aにアッパ部材5の下板部51を溶接固定している。該下側ゴム材R2に挿通したシリンダロッド先端部35bは、車体側部材7の孔に挿通させ、さらにシリンダロッド先端部35bを上側ゴム材R1の孔、上金具6の孔に挿通させ、シリンダロッド先端部35bの雄ねじ部にナットNが螺着される。斯かる状態下、ロッドの大径部38が保持金具1のカップ底板部1aに下側からあてがわれるようになっており、ナットNの締付けで、該ナットNとカップ底板部1aによって、アッパ部材5,下側ゴム材R2,車体側部材7,上側ゴム材R1,上金具6が挟着固定される。
こうして、該車体側部材7に、シリンダロッド35の先端部35b,保持金具1が取付け固定される。シリンダロッド35の圧縮変位時には、保持金具1よりも下方に突出するバウンドストッパ本体主部2bの環状下面29がシリンダ31と当接してショックアブソーバ3の過大変位を規制する。符号DSはバウンドストッパ2に取付けられるダストカバーを示す。
【0014】
前記保持金具1は、カップ底板部1aと、その外周縁11gからアール状曲面部13を経て、下方向へ延出するカップ筒部1bと、鍔部1cとを備える(図2)。カップ筒部1bは、曲面部13と、この下端から下方へ向けて内径が徐々に小さくなるテーパ状絞り込み部分15と、を備える。該絞り込み部分15の下端でつくる最小内径d15の部位からは口径が次第に大きくなる前記ラッパ状鍔部1cに延設される(図2)。カップ底板部1aの外周縁11gから絞り込み部分15に至る領域には、曲げ加工によって一様な曲面部13が形成される。
保持金具1は、これに嵌合一体化したバウンドストッパ2の筒孔20、さらにカップ底板孔10,アッパ部材5の孔にシリンダロッド35を挿通させ、シリンダロッド上部域35aで、カップ筒部1bの開口19を下面側にして車体側部材7へ取付け固定される。
【0015】
バウンドストッパ2は、前記絞り込み部分15の最小内径d15よりも大きな端部最大外径D22を有する上端部2aが、前記下面開口19側から押圧挿入されて保持金具1内に収まり、該保持金具1と嵌合一体化される厚肉筒状の弾性体である(図1,図2)。バウンドストッパ2は発泡体やゴム等の弾性体で形成される。本実施形態は微細で均一な気泡セルが形成された発泡ポリウレタンエラストマーの発泡成形品である。優れた機械的強度,防振・緩衝特性,耐摩擦性等を有し、且つ当たりはじめが軟らかな非線形特性とコーナリング時のしなやかな乗り心地を備えるようにしている。
【0016】
バウンドストッパ2は、環状上面21から環状下面29へ向けて筒外径が漸次小径化する円筒状体で、筒孔20が上下方向に貫通する。環状上面21の外周縁21gから丸みを付けながら下降する前記上端部2aの外周面22で、前記端部最大外径D22よりも下方に位置する前記絞り込み部分15の対応部位には、下方向に向けて外径を徐々に小さくしたテーパ23が設けられる(図3)。前記保持金具1のカップ内部17を形成するカップ底板部1a,曲面部13,絞り込み部分15の各内壁面に対応させて、バウンドストッパ上端部2aには上端部外周面22が設けられる。具体的には、環状上面21,上向き外面221,接続域面220,テーパ23の下向き外面231が設けられる。保持金具1の曲面部13に上向き外面221,接続域面220が対応する(図2,図3)。上向き外面221の外端22gが端部最大外径D22になるが、この地点からテーパ23に直接つながるのでなく、上端部2aは保持金具1の曲面部13に合わせた丸みをもたせ、上向き外面221からテーパ23の下向き外面231へ滑らかにつながる湾曲面の接続域面220を備える。符号24は、バウンドストッパ上端部2aで、該テーパ23の下端から下方へ延出する円筒状ストレート部、符号2bはストレート部24の下端からは下方へ延出するバウンドストッパ本体主部を示す。
【0017】
そうして、本バウンドストッパ2には、保持金具1との嵌合一体化で、該絞り込み部分15の内壁面15aと対面する該テーパ23の下向き外面231に、突起25が設けられる(図1図6)。
さらに、ストレート部24を除いたバウンドストッパ上端部2aの大きさ,形状は、保持金具1に係るカップ底板部1a,曲面部13,絞り込み部分15の各内壁面がつくる大きさ,形状にほぼ等しいか若干大きめとする。上端部2aの端部最大外径D22は少なくとも保持金具1に係る絞り込み部分15の最小内径d15よりも大きくし、バウンドストッパ上端部2aを保持金具1の下面開口19から該保持金具1内、すなわちカップ内部17へ押圧挿入して、両者の嵌合一体化の強化を図る。しかし、端部最大外径D22を大きくするといっても、下面開口19からの押圧挿入する抵抗が増えるため、自ずと限界がある。
【0018】
下向き外面231に設けられる突起25は、高さh25があるといっても、図2の紙面上方からの平面視でみると端部最大外径D22よりも外方へ出っ張っておらず、該端部最大外径よりも内方に引っ込んでいる。保持金具1の下面開口19から最小内径d15の絞り込み部分15へバウンドストッパ2を押圧し、保持金具1内に上端部2aが挿入できると、これに伴って、突起25も難なく随伴挿入できる。上端部2aが絞り込み部分15内に入り込んで両者が嵌合すると、保持金具1に係るカップ底板部1a,曲面部13,絞り込み部分15の各内壁面に、バウンドストッパ2の環状上面21,上向き外面221,接続域面220,下向き外面231がそれぞれ対向し当接する。一方、下向き外面231に設けた突起25は、その高さh25が該下向き外面231のベース面231aよりも高い分、絞り込み部分15の内壁面15aに押し潰され圧接状態になり、保持金具1と上端部2aの嵌合一体化が強化される。バウンドストッパ2と同様、弾性体からなる突起25は、内壁面15aと対向して押し潰される格好で圧接状態になると同時に、弾性復元力で内壁面15aへ向け強く押し付けるため、嵌合一体化が強力になる。
【0019】
ここで、テーパ23の下向き外面231に形成する突起25は、例えば図7のような疣状突起とすることもできるが、図2図5ごとくの突起25とする。上端部2aとの一体成形で前記テーパ23の下向き外面231に対し、凸条25aの突起25を隆起形成し、且つ凸条25aのすじ状長手方向を該テーパ23の周方向に一致させるように配設する。凸条25aのすじ状長手方向を、テーパ23の周方向に一致させると、図1で、保持金具1に嵌合するバウンドストッパ2の本体主部2bを下方向に引っ張った時、その引っ張り方向(下方向)に対し、凸条25aの長手方向(水平方向)が直交する抜け抗力のベルトゾーンを形成してブロックする。且つバウンドストッパ2の本体主部2bを下方に引っ張っても、凸条25aの在る下向き外面231に対面する絞り込み部分15の内壁面15aが下方側から、引っ張り力に対し抵抗する該凸条25aをしっかりと受け止める。下方向の引っ張り力に対し、凸条25aが対向する絞り込み部分15の内壁面15aに食い込む格好になり、抜け抗力が一段と高まる構造になっている。
【0020】
凸条25aの突起25は、図8のようにテーパ23の下向き外面231に一周するように設けることもできる。ただ、凸条25aはテーパ23の下向き外面231でテーパ23の周方向に、図1図6のごとく断続形成するのがより好ましい。保持金具1へのバウンドストッパ2の嵌合で、各突起25が内壁面15aに押し潰され圧接状態となり、押し潰された各突起25の弾性反力がそれぞれ独立して抜け抗力を発揮し、合計の抵抗値が増大すると考えられるからである。図示のごとく、下向き外面231のほぼ中間高さの地点で、複数のすじ状凸条25aがテーパ23の周方向の1ライン上に乗って断続的に設けられる。
【0021】
より詳しくは、突起25を、図3,図4ごとくの蒲鉾形凸条25aとし、テーパ23の下向き外面231から横断面視で半円形状に隆起させる。下向き外面231のベース面231aからの突起高さh25を0.5mmとするが、好ましい範囲は0.5mm〜1.0mmの範囲である。0.5mmよりも低いと抜け抗力の増加が低く、また1.0mmよりも高くなると、突起25の部分だけが保持金具1に接するようになり、やはり抜け抗力の増加が低くなる。
凸条25aはその長手方向がテーパ23の周方向に一致させて配される。ここでは、図5のごとく中心角度θ2が45°のピッチで、8個の凸条25aを下向き外面231に隆起形成する。各凸条25aは中心角度θ1が15°となる凸条長さに設定する。具体的には、各凸条25aの周方向長さを10mmほどとする。
【0022】
本実施形態は、さらに突起25が設けられた周囲のテーパ23の下向き外面231に、シボ加工の凹凸部26を形成する。発泡成形品たるバウンドストッパ2の金型面を、化学エッチング法により化学的に腐食させ所望の凹凸部26がある表面状態とする。下向き外面231がベース面231aとなって凹凸部26の凹部に該当する。ベース面231aからの凸部高さh27は0.2〜0.3mmの範囲にある。
下向き外面231にシボ加工による凹凸面が設けられることで、下面開口19側から押圧挿入され保持金具1に嵌合一体化されたバウンドストッパ2は、凹凸部26の凸部27が弾性圧縮された状態で絞り込み部分15の内壁面15aに当接し、その反力で内壁面15aを押し、保持金具1との嵌合一体強化に貢献する。ここでは、シボ加工による凹凸部26をバウンドストッパ2の上端部外周面22に加え、環状上面21にも形成する。
符号28kは本体主部2bの外周面28の周方向に形成したリング状窪み、符号201は筒孔20の孔壁の周方向に形成したリング状窪み、符号202は筒孔20の口径を環状上面21側に向け拡径させた拡径口を示す。
【0023】
[比較試験]
突起25,シボ加工の有無以外は同形のバウンドストッパ2の各試験品を用いる。図1の保持金具1に合わせて製作した治具に、指定の試験品を嵌合させた後、治具から該試験品が離れるようその本体主部2bを引っ張って、試験品が抜けた時の抜け強度を測定した。
表1は測定結果をまとめたものである。No1のエッチングなし、外周突起なしは、シボ加工の凹凸部26と突起25とがなしの基準試験品を用いたもので、抜け強度の値は96.5Nであった。表1ではこの値を基準のゼロベースとする。No2のエッチングなし、外周突起有りは、突起25が高さ0.5mmで、図5のごとく角度θ2を45°のピッチにして8個の凸条25aを隆起形成し、各凸条25aの角度θ1を15°とする長さにした試験品を用いたものである。試験結果は、No1の試験品に比べて抜け強度が+1.5〜3N(98〜99.5N)とアップした。No3のエッチング有り、外周突起なしは、No1と同じく突起25をなしにする一方、シボ加工の凹凸部26を上端部外周面22の全面に形成し、凸部高さh27が0.2mm〜0.3mmの範囲にある試験品を用いたものである。試験結果は、No1の試験品に比べて抜け強度が+2〜3.5Nとアップした。No4のエッチング有り、外周突起有りは、No2の突起25を設け且つNo3のシボ加工の凹凸部26を形成した試験品を用いたものである。試験結果は、No1の試験品に比べて抜け強度が+4〜7Nとアップした。
抜け強度の要求スペックがあり、No2〜No4のいずれもクリアした。上端部外周面22の全面にシボ加工の凹凸部26を設けるのでなく、下向き外面231のテーパ周方向に、ひとすじ状突起25を断続形成するだけでも、抜け強度の威力を十分発揮するのが判る。
【0024】
【表1】
【0025】
前記突起25は、テーパ23に係る下向き外面231の中間高さ部位で、一ライン上に設けるにとどめたが、下向き外面231の上下高さ方向で離間させた複数ライン上に突起25を設けることもできる。上下高さ方向で離間させた突起25のライン数の数に単純比例することはないものの、突起25を複数ライン設けることで抜け抗力が増す。
また、上端部2aの形状は図1図8のものに代え、例えば図9のような上端部2aにすることもできる。図2の保持金具1内の内壁面に、バウンドストッパ上端部2aに係る外周面22の対向部位が、保持金具1とバウンドストッパ2の嵌合時に、全面,全域で当接する必要はない。図9のバウンドストッパ2は、上端部外周面22が図示のごとく環状上面21の外端21gから垂直下方向に第1垂直筒外面225を設け、該第1垂直筒外面の下端から外方下降傾斜面226を延出する。さらに、該外方下降傾斜面の下端から垂直下方向に第2垂直筒外面227を設けて、該第2垂直筒外面の下端から下方向に向けて外径D22を小さくしたテーパ23を延出し、その下向き外面231に突起25を形成する。図9の端部最大外径D22は第2垂直筒外面がつくる外径になる。
【0026】
このように構成したバウンドストッパ2は、絞り込み部分15の内壁面15aと対面するテーパ23の下向き外面231に突起25を設けても、図2のごとく該突起25が上端部2aの端部最大外径D22よりも水平外方に突出しないので、端部最大外径D22の部分が保持金具1の下面開口19から絞り込み部分15の最小内径d15を潜ることさえできれば、突起25はその高さh25が多少高くても難なく保持金具1内へ一緒に潜り込むことができる。下面開口19から上端部2aを保持金具1内に押圧挿入する際、突起25は上端部2aの裏面側にあたる下向き外面231に設けられているので、上端部2aが絞り込み部分15を潜れば、これに伴って突起25もすんなりと保持金具1内に収めることができる。
その一方で、保持金具1内に上端部2aが一旦収まると、絞り込み部分15の内壁面15aとテーパ23の下向き外面231が対面,当接するが、突起25は下向き外面231のベース面231aよりも高く設定されているので、押し潰され内壁面15aに圧接する傾向にある。突起25の高さh25を高くした分、圧接に伴う反力が絞り込み部分15の内壁面15aに対し強く働き、この反力及び圧接に伴う内壁面15aとの摩擦抵抗が、嵌合部からのバウンドストッパ2の抜け抗力を高める。
【0027】
これまで、上端部2aの端部最大外径D22の寸法を大きくするといっても、限られた範囲でしかなく、抜け荷重(抜け強度)の向上には限界があったが、嵌合部の上端部2aに下方向へ向けて外径を小さくしたテーパ23を設け、そのテーパの下向き外面231に突起25を設けることで、抜け強度アップに大きく貢献できる。上端部2aの端部最大外径D22を大きくせずに、すなわち下面開口19側から保持金具1内へ押圧挿入する際の挿入抵抗を変えずに、抜け強度向上が可能になる。保持金具1へのバウンドストッパ2の嵌合作業が円滑に進む。保持金具1へのバウンドストッパ2のスムーズな組付け性を確保しながら、抜け強度が大幅にアップする。
しかも、下向き外面231に突起25を設けるだけで、複雑な構造にすることも要しないので、低コスト化につながる。構造が複雑化しないので、嵌合にまつわる不具合,トラブルも減らせるようになる。上端部2a,本体主部2bとの一体成形で突起25を設けることによって、バウンドストッパ2の更なる低コスト化が図られる。
【0028】
また、テーパ23の下向き外面231に対し、突起25を凸条25aに隆起形成するので、図1で、保持金具1に嵌合したバウンドストッパ2の本体主部2bを下方向に引っ張ると、引っ張り方向に直交する形で、且つすじ状の突起25がテーパ23の外周面を水平方向に走って取り巻く状態でブロックするので、該突起25が抜け強度を大きく向上させる。加えて、保持金具1にバウンドストッパ2が嵌合すると、絞り込み部分15の内壁面15aが、斜め下降傾斜するといっても、下から突起25(凸条25a)を受け止めているので、本体主部2bを下方向に引っ張った際、突起25がより圧縮される状態になって内壁面15aに一層押し当たる格好になり、抜け強度を一段と向上させる。
仮に、上向き外面221に突起25を設けても、下方向に引っ張れば、突起25が保持金具1の内壁面から離れてしまうので、抜け強度を高めるのに役立たない。これに対し、本発明の突起25は下向き外面231に設けているので、バウンドストッパ2に下方向の引張力が働くと、保持金具1の絞り込み部分15の内壁面15aに突起25が突き当たって、該引張力を阻止し、抜け強度を向上させる。突起25を設けた下向き外面231の位置が、保持金具1へのバウンドストッパ2の押圧挿入に邪魔をしないばかりか、抜け強度を高めるのにも一役かっている。
【0029】
さらに、下向き外面231の周方向に突起25を断続形成すると、保持金具1にバウンドブロックが嵌合する際、各突起25がそれぞれ独自に圧縮変形して抜け強度を高めるので、それらの合計値は周方向につながる1本設けた突起25の値より大きくすることができる。
加えて、突起25が設けられた周囲のテーパ23の下向き外面231に、シボ加工の凹凸部26が形成されると、突起25の抜け強度アップに凹凸部26の抜け強度アップが加わり、保持金具1とバウンドストッパ2とのより強固な嵌合一体化が図れるようになり、両者の嵌合一体化の品質向上に大きく貢献できる。
【0030】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。保持金具1のカップ底板部1a,カップ筒部1b,ラッパ状鍔部1cや、バウンドストッパ2の上端部2a,本体主部2b等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。シボ加工の凹凸部26の形成は化学エッチング法に限定されない。
【符号の説明】
【0031】
1 保持金具
1a カップ底板部(底板部)
1b カップ筒部
15 絞り込み部分
15a 内壁面
19 下面開口(開口)
2 バウンドストッパ
2a 上端部(嵌合部)
23 テーパ
231 下向き外面
25 突起
25a 凸条
26 凹凸部
3 ショックアブソーバ
31 シリンダ
35 シリンダロッド
35a シリンダロッドの上部域
7 車体側部材
D22 端部最大外径
d15 最小口径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10