(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共重合ポリエステル樹脂100質量部と導電材料40〜95質量部とを含有してなり、共重合ポリエステル樹脂が、ガラス転移温度−30〜20℃、数平均分子量8000〜35000の共重合ポリエステル樹脂(A)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分が、脂肪族ジカルボン酸を5〜50モル%含有することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂組成物。
共重合ポリエステル樹脂が、さらに、ガラス転移温度20〜70℃、数平均分子量8000〜35000の共重合ポリエステル樹脂(B)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)と共重合ポリエステル樹脂(B)との質量比((A)/(B))が60/40〜95/5であることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
共重合ポリエステル樹脂が、さらに、数平均分子量1000〜8000の共重合ポリエステル樹脂(C)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)と共重合ポリエステル樹脂(B)の合計質量と、共重合ポリエステル樹脂(C)の質量との比((A+B)/(C))が60/40〜95/5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、共重合ポリエステル樹脂100質量部と導電材料40〜95質量部とを含有するものであり、前記共重合ポリエステル樹脂として、ガラス転移温度が−30〜20℃であり、かつ、数平均分子量が8000〜35000である共重合ポリエステル樹脂(A)を含有するものである。
【0008】
本発明の樹脂組成物を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)は、得られる転写層を転写性や柔軟性に優れたものとするために、ガラス転移温度が−30〜20℃であることが必要であり、−25〜15℃であることが好ましく、−20〜10℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が−30℃未満であると、転写層の耐ブロッキング性や耐熱性が劣り、一方、ガラス転移温度が20℃を超えると、転写層の転写性が不十分なものとなることがある。
また共重合ポリエステル樹脂(A)は、転写性と柔軟性および被膜強度向上の点から、数平均分子量が8000〜35000であることが必要であり、8500〜34000であることが好ましく、9000〜33000であることがより好ましい。数平均分子量が8000未満であると、転写性、柔軟性および被膜強度が低下する傾向にあり、35000を超えると導電材料の分散性が低下し、塗工時のハンドリング性、導電性、耐熱性が低下する傾向にある。
【0009】
本発明において、共重合ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸成分とジオール成分とから構成される樹脂であることが好ましい。
ジカルボン酸成分として用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸(ADA)、セバシン酸(SEA)、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウム−スルホイソフタル酸等が挙げられる。本発明においては、転写性と柔軟性のバランスの点から、ジカルボン酸成分の5〜50モル%が、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(NPG)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、1,4−フェニレングリコールのプロピレンオキサイド付加物、(水素化)ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等が挙げられる。
また、共重合ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸成分やジオール成分以外に、3価以上のカルボン酸成分やアルコール成分を構成成分としてもよい。3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸(TMA)や、その誘導体などが挙げられ、3価以上のアルコール成分としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが挙げられる。
【0010】
本発明において共重合ポリエステル樹脂(A)として用いることができる具体例としては、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:SEA:EG:NPG=35:35:30:50:50(モル比)、ガラス転移温度7℃、数平均分子量25000)、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:ADA:EG:NPG:PTMG1000=47:45:8:40:50:10(モル比)、ガラス転移温度−29℃、数平均分子量20000)、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:ADA:EG:NPG=40:35:25:50:50(モル比)、ガラス転移温度18℃、数平均分子量25000)などが挙げられる。なお、上記PTMG1000は、数平均分子量が1000であるポリテトラメチレングリコールの略である。
【0011】
本発明における共重合ポリエステル樹脂は、上記共重合ポリエステル樹脂(A)に加えて、ガラス転移温度が20〜70℃であり、かつ、数平均分子量が8000〜35000である共重合ポリエステル樹脂(B)を含有することが好ましい。そして、共重合ポリエステル樹脂(A)と共重合ポリエステル樹脂(B)との質量比((A)/(B))は、60/40〜95/5であることが好ましい。
上記の特性を有する共重合ポリエステル樹脂(B)を含有することによって、得られる転写層は耐ブロッキング性を向上することができ、支持体シート上に形成された転写層を有する転写シートは、ロール状に巻き取っても、ブロッキングすることなく巻き出すことができる。
【0012】
共重合ポリエステル樹脂(B)を構成するジカルボン酸成分やジオール成分としては、上記共重合ポリエステル樹脂(A)と同様のものが挙げられる。
【0013】
本発明において共重合ポリエステル樹脂(B)として用いることができる具体例としては、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:ADA:EG:NPG=46:46:8:50:50(モル比)、ガラス転移温度45℃、数平均分子量24000)、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:EG:NPG=50:50:50:50(モル比)、ガラス転移温度67℃、数平均分子量23000)、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:SEA:EG:NPG=40:40:20:50:50(モル比)、ガラス転移温度21℃、数平均分子量18000)などが挙げられる。
【0014】
本発明における共重合ポリエステル樹脂は、上記共重合ポリエステル樹脂(A)に加えて、数平均分子量が1000〜8000である共重合ポリエステル樹脂(C)を含有することが好ましい。そして、共重合ポリエステル樹脂(A)と共重合ポリエステル樹脂(B)の合計質量と、共重合ポリエステル樹脂(C)の質量との比((A+B)/(C))は、60/40〜95/5であることが好ましい。なお、共重合ポリエステル樹脂が、共重合ポリエステル樹脂(B)を含有しない場合は、((A)/(C))は、60/40〜95/5であることが好ましい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、上記の特性を有する共重合ポリエステル樹脂(C)を含有することによって、後述するイソシアネート化合物を含有した場合の耐ブロッキング性を向上することができる。
【0015】
共重合ポリエステル樹脂(C)を構成するジカルボン酸成分やジオール成分としては、上記共重合ポリエステル樹脂(A)と同様のものが挙げられる。
【0016】
本発明において共重合ポリエステル樹脂(C)として用いることができる具体例としては、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:EG:NPG=50:50:50:50(モル比)、ガラス転移温度54℃、数平均分子量5000、水酸基価20mgKOH/g)、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:EG:NPG=50:50:50:50(モル比)、ガラス転移温度41℃、数平均分子量1200、水酸基価60mgKOH/g)、ポリエステル樹脂共重合体(TPA:IPA:TMA:EG:NPG=49:49:2:50:50(モル比)、ガラス転移温度60℃、数平均分子量8000、酸価19mgKOH/g)などが挙げられる。
【0017】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、上記共重合ポリエステル樹脂と導電材料とを含有する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を構成する導電材料としては、導電性を有し、共重合ポリエステル樹脂と均一に混合できるものであれば特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛粉末、炭素繊維、さらに、銅、アルミニウム、銀、金等の金属粉末、銅、アルミニウム、銀、金等の金属をメッキした樹脂やガラスの粉末等が挙げられる。樹脂との混和性と導電性とのバランスを勘案すれば、銅、銀等の金属粉末が好ましい。また、金属粉末と比較して導電性は劣るが、樹脂との混和性とコストのバランスを勘案すれば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛粉末等が好ましい。これら導電材料は、単独で用いても、あるいは2種以上を用いてもよい。
【0018】
共重合ポリエステル樹脂組成物における導電材料の含有量は、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対して、40〜95質量部である必要があり、45〜90質量部であることが好ましく、50〜85質量部であることがより好ましく、55〜80質量部であることがさらに好ましい。導電材料の含有量が40質量部未満であると、得られる転写層を基材に転写しても、導電性の付与効果が十分でないことがあり、一方、95質量部を超えると、転写性、柔軟性が低下することがある。
【0019】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、イソシアネート化合物を含有することが好ましい。イソシアネート化合物を含有することによって、得られる転写層は、耐ブロッキング性を向上することができるとともに、耐熱性も向上することができる。
イソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が含まれる。この中でも耐候性を求められる用途では、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートがより好ましい。また、単体で用いることもできるが、それらの混合物であってもよい。これらはブロックイソシアネート化合物であってもよい。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートとしては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等のジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4′−ジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。中でも、4,4′−ジフェニルジイソシアネート(MDI)、2,4または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)を好ましく用いることができる。
【0021】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、またはその混合物、1,3−もしくは1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンまたはその混合物等のジイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。
【0022】
脂環族ポリイソシアネートとしては、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI))、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。中でも、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI)を好ましく用いることができる。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートのジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等の3価以上のイソシアネートが挙げられる。これらは、その誘導体であってもよい。ポリイソシアネートの誘導体としては、ダイマー、トリマー、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたは、ポリメリックMDIともいう。)、クルードTDI、およびイソシアネート化合物と低分子量ポリオールとの付加体等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好ましく用いることができる。
【0024】
共重合ポリエステル樹脂組成物におけるイソシアネート化合物の含有量は、イソシアネート末端基量が、共重合ポリエステル樹脂の水酸基に対して0.5〜1.0当量となる量であることが好ましく、0.6〜0.9当量となる量であることがより好ましい。上記範囲でイソシアネート化合物を用いることで、共重合ポリエステル樹脂を半硬化状態とし、転写性と柔軟性および被膜強度をバランス良く高めることができる。イソシアネート化合物の末端基量が0.5当量未満であると、耐ブロッキング性や耐熱性の向上効果が十分でなく、一方、1.0当量を超えると共重合ポリエステル樹脂の硬化反応が促進され過ぎ、転写不良となる。
【0025】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて、他の樹脂、硬化剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、顔料、粘着付与剤、充填剤、帯電防止剤、発泡剤等の添加剤を含有してもよい。
他の樹脂としては、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂変性オレフィン樹脂、セルロース誘導体、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。
硬化剤としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノプラスト樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能アジリジン化合物等が挙げられる。熱安定剤としては、リン酸、リン酸エステル等が挙げられる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物等が挙げられる。滑材としては、タルクやシリカ、ワックス等が挙げられる。顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。粘着付与剤としては、タッキファイヤー等が挙げられる。
【0026】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、共重合ポリエステル樹脂や導電材料、また必要に応じて、イソシアネート化合物や添加剤を含有するものであり、これらを予め溶融混練しながら溶融押出成形したり、予め溶融混練した後、所定の有機溶剤に溶解したり、共重合ポリエステル樹脂、導電材料等の各々の原料を有機溶剤に溶解または分散する等の方法によって混合したものであることが好ましい。本発明においては、溶融押出成形する方法が好ましく、単軸または二軸押出機等の混練機を用い溶融混練して、ダイスよりストランド状に押出しカッティングして、組成物ペレットを得る方法や、組成物ペレットを得ることなしに、ダイスよりシート状に押出しそのまま支持体シート上に被膜形成する方法を採ることができる。
【0027】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を使用して、基材に導電性を付与する方法としては、本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を含む転写層を、基材上に被膜として形成する方法を適用することができる。
【0028】
共重合ポリエステル樹脂組成物を含む転写層は、例えば、溶融した共重合ポリエステル樹脂組成物を支持体シート上に押出成形する方法や、共重合ポリエステル樹脂組成物の液状物を支持体シート上に塗布する方法によって、製造することができる。
溶融した共重合ポリエステル樹脂組成物を支持体シート上に押出成形する方法としては共重合ポリエステル樹脂が溶融な可能な温度、例えば、80〜150℃に加温したダイスより溶融した共重合ポリエステル樹脂組成物を押出す方法が挙げられる。一方、共重合ポリエステル樹脂組成物の液状物を塗布する方法としては、共重合ポリエステル樹脂を溶解可能な有機溶剤を用いて溶解した後、マイヤーバー、リップコーター等を用い被膜形成する方法が挙げられる。
【0029】
支持体シートとしては、共重合ポリエステル樹脂の溶融温度に耐えられる耐熱性を有するとともに、形成された転写層の離型が容易であるものが好ましい。支持体シートの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン等のプラスチックフィルム、金属箔、パラフィン紙、合成紙等が挙げられ、中でも、耐熱性と転写性の向上の効果が高い点でポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。用いるポリエチレンテレフタレートフィルム等の表面には、シリコーン、フッ素、アクリル、オレフィン等の離形層が形成されていてもよい。支持体シートの厚みは、25〜200μmであることが好ましく、38〜100μmであることがより好ましい。
【0030】
転写層の厚みは、0.5〜40μmであることが好ましく、1〜35μmであることがより好ましく、5〜25μmであることがさらに好ましい。上記押出成形法では、転写層の厚みを20〜40μmの範囲で、容易に制御することができる。一方、上記塗布法では、転写層の厚みを0.5〜20μmの範囲で、容易に制御することができる。
【0031】
共重合ポリエステル樹脂組成物を支持体シート上に押出成形する際や、押出成形後に、転写層にパターンを形成してもよい。支持体シート上の転写層にパターンを形成しておくことにより、基材にパターン化された被膜を形成することができる。
【0032】
本発明の転写シートは、上記のように、支持体シートと、その上に形成された転写層とを有するものである。転写シートを構成する転写層が耐ブロッキング性に優れるので、転写シートは、ロール状に巻き取ることができ、ロール状に巻き取ってもブロッキングすることなく巻き出すことができる。
【0033】
転写シートの支持体シートから離型された転写層を、基材上に転写することによって、すなわち、基材上に転写層の被膜を形成して積層体とすることによって、基材に導電性を付与することができる。
基材上に転写層を転写する方法としては、ラミネーター等の加工機を用い、転写シートを巻出しながら、支持体シート上の転写層と基材とを接触させ、熱ロール等で所定の熱、圧力をかけて、基材上に転写層を転写しながら、転写層が剥離した支持体シートを巻き取る等の方法が挙げられる。転写の条件としては、例えば、温度80〜120℃、圧力0.5〜3MPa、時間0.5〜60sが挙げられる。転写層が耐ブロッキング性に優れることから、転写シートのロールと基材のロールとを用いて、ロール・ツー・ロール方式で、転写層を転写することもできる。
【0034】
本発明の積層体を構成する、転写層が転写される基材としては、例えば、織編物、不織布、ガラスクロス、コンデンサー紙、パラフィン紙、合成紙等の紙類、紙や不織布を含む複合材などの隙間のある多孔性基材や、樹脂フィルム等が挙げられ、織編物、不織布、ガラスクロス、紙などの隙間のある多孔性基材であっても、平滑性に優れた被膜を、簡便な方法で形成することができる。基材を構成する材料としては、熱可塑性樹脂や、ガラス、石英、セラミック等の無機材料、カーボン、黒鉛等の有機材料などが挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルフィド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリサルホン、アラミド、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリイミド、アイオノマー等が挙げられる。
【0035】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を含む転写層が転写されてなる積層体は、電子・電気部品等で、導電性、静電性、除電性等が求められる各種部材等に利用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
共重合ポリエステル樹脂、組成物、転写層、転写シートおよび積層体の評価は、下記のように行った。
【0037】
(1)共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量
送液ユニット(島津製作所社製、LC−10ADvp型)および紫外−可視分光光度計(島津製作所社製、SPD−6AV型)を用い、GPC分析により、共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量を求めた。なお、検出波長を254nmとし、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、ポリスチレン換算により数平均分子量を求めた。
【0038】
(2)共重合ポリエステル樹脂の組成
NMR測定装置(日本電子社製、JNM−LA400型)を用い、
1H−NMR測定を行って、それぞれの共重合成分のピーク強度から組成を求めた。なお、測定溶媒として、重水素化トリフルオロ酢酸を用いた。
【0039】
(3)共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)
JIS−K 7121に従って、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、ダイヤモンドDSC)を用い、20℃から120℃まで、10℃/分で昇温させたチャートから、ガラス転移温度(Tg)を読み取った。
【0040】
(4)転写性
転写シートと不織布とを加熱接着後、支持体シートを除去した際に、支持体シートに残存する転写層の面積を測定した。支持体シートに残存する転写層の残存率(%)を次式により算出した。
転写層の残存率(%)=(支持体シートに残存する転写層の面積)/(当初転写層面積)×100
転写層の残存率により、下記の基準で転写性を評価した。
◎:転写層の残存率0%
○:転写層の残存率0%を超え、5%未満
△:転写層の残存率5%以上、10%未満
×:転写層の残存率10%以上
転写層の残存率は、5%未満であることが実用上好ましい。
【0041】
(5)耐ブロッキング性
得られた転写シートを2枚用いて、転写層面どうしを重ね合せ、転写層面に均一に荷重0.1MPaが掛るように、温度30℃条件下、24時間静置した後、23℃×50%RHの雰囲気下で24時間以上放置後、手で転写層面間をT型剥離した。
下記の基準で耐ブロッキング性を評価した。
◎:重さを感じることなく、転写層面間できれいに剥離した。
○:やや重たさを感じたが、転写層面間できれいに剥離した。
△:支持体シートから転写層が剥離することはなかったが、転写層面間できれいに剥離せず、転写層の凝集破壊が生じた。
×:支持体シートから転写層の一部またはすべてが剥離し、転写層面間できれいに剥離しなかった。
【0042】
(6)分散性
溶融混練した共重合ポリエステル樹脂組成物を、固形分濃度が5質量%になるようにメチルエチルケトンに分散し、得られた分散液を10cm×10cmのガラス基板上にマイヤーバーで乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させた。得られた試験片を光学顕微鏡(×100)で観察し、15μm以上の粒子または粒子の凝集物の個数をカウントし、下記の基準で分散性を評価した。
◎:0〜1個
○:2〜5個
△:6〜10個
×:10個以上
【0043】
(7)導電性
積層体を構成する転写層の表面固有抵抗値を、JIS−K6911に準拠し、ダイアインスツルメンツ社製高抵抗計ハイレスタIP、MCP−HT260を用いて、23℃×50%RHの環境下で測定し、下記の基準で導電性を評価した。表面固有抵抗値が小さいほど導電性を有する。
◎:1.0×10
6未満
○:1.0×10
6以上、5.0×10
6未満
△:5.0×10
6以上、1.0×10
7未満
×:1.0×10
7以上
【0044】
(8)柔軟性
得られた転写シートを、転写層が外側になるように、180°方向に折り曲げた。そして開いた際の転写層の状態を目視にて観察し、下記の基準で柔軟性を評価した。
◎:転写層が割れず、かつ折り曲げた跡も残らなかった。
○:転写層は割れなかったが、折り曲げた跡が少し残った。
△:転写層は割れなかったが、折り曲げた跡が強く残った。
×:転写層が割れた。
【0045】
(9)耐熱性
得られた転写シートの転写層上に、銅板を載せ、ヒートプレス機にて温度50℃、圧力0.1MPaで熱圧した。熱圧時の転写層の流れ出し量を目視にて観察し、下記の基準で耐熱性を評価した。
◎:転写層の流れ出しがほとんどなく、転写層面積の95%以上が残った。
○:転写層が流れ出し、転写層面積の80以上95%未満が残った。
△:転写層が流れ出し、転写層面積の50以上80%未満が残った。
×:転写層のほとんどが流れ出し、残存したのは転写層面積の50%未満であった。
【0046】
(10)総合評価
○:上記の(4)〜(9)の評価結果において×の評価が無い。
×:上記の(4)〜(9)の評価結果のうち、1つ以上の×の評価がある。
【0047】
樹脂組成物を構成する共重合ポリエステル樹脂、導電材料、イソシアネート化合物や、転写シートを構成する支持体シート、積層体を構成する基材として、下記のものを使用した。
【0048】
(1)共重合ポリエステル樹脂
下記、調製例1〜23で調製したものを用いた。
【0049】
調製例1
テレフタル酸(TPA)58g(35mol%)、イソフタル酸(IPA)58g(35mol%)、セバシン酸(SEA)61g(30mol%)、エチレングリコール(EG)42g(67mol%)、ネオペンチルグリコール(NPG)68g(68mol%)、および重合触媒としてテトラブチルチタネート0.1gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が245℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を240℃にし、系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10
−5Pa)に到達してから、さらに3.0時間重合反応を行った。重合完了後反応器より樹脂をシート状に払い出し、ダイスカットしてペレット化して、共重合ポリエステル樹脂A1を調製した。
【0050】
調製例2〜23
使用するモノマーの種類とその組成および重合反応時間を表1のように変更した以外は、調製例1と同様にし、共重合ポリエステル樹脂A2〜9、B1〜9、C1〜5を調製した。なお、表1におけるモノマーの略語は、それぞれ次のものを示す。ADA:アジピン酸、BAEO:ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、PTMG1000:数平均分子量が1000であるポリテトラメチレングリコール、TMA:トリメリット酸。
【0051】
調製例1〜23における、モノマーの仕込組成、重合反応時間、ならびに得られた共重合ポリエステル樹脂の最終組成および特性を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
(2)導電材料
・D1:銅粉 HXR−Cu (日本アトマイズ加工社製、平均粒径1μm)
・D2:銀粉 HXR−Ag (日本アトマイズ加工社製、平均粒径1μm)
・D3:カーボン ケッチェンブラックEC300J (LION社製、平均粒径39.5nm)
【0054】
(3)イソシアネート化合物
・E1:HDI ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTPA100、分子量504)
・E2:IPDI イソホロンジイソシアネート(東京化成工業社製、分子量222.29)
【0055】
(4)支持体シート
・シリコーンコートPET離型性フィルム(PANAC社製、NP−75−C)、厚み75μm
【0056】
(5)基材
・コットン不織布(ユニチカ社製、コットエースC040S/A01)、目付60g/m
2
【0057】
実施例1〜44、比較例1〜6
共重合ポリエステル樹脂、導電材料、イソシアネート化合物を、表2〜4に記載の種類と量となるように、タンブラーを用いて混合し、二軸押出機を用いて、バレル温度150℃、スクリュー回転150rpm、吐出量10kg/hの条件で溶融混練して、共重合ポリエステル樹脂組成物を製造した。
溶融混練された共重合ポリエステル樹脂組成物を、支持体シート上に、Tダイより厚みが25μmになるように溶融押出して、転写層を形成し、室温にまで冷却後、紙管(内径5インチ)に、1000m巻き取って、転写シートのロールを得た。
得られた転写シートと、基材(コットン不織布)とを、転写シートの転写層と不織布とが接するように重ね合せ、卓上ラミネーター(テスター産業社製)を用いて、温度100℃、圧力0.3MPa、速度1m/minの条件で加熱接着を行い、室温まで十分に冷却後、転写シートの支持体シートを除去し、不織布上に転写層が転写された積層体を得た。
得られた共重合ポリエステル樹脂組成物、転写層、転写シートおよび積層体について評価した結果を表2〜4に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表2〜4に示すように、実施例において転写層は、特定の共重合ポリエステル樹脂組成物を含むため、転写性や柔軟性に優れるものであり、簡便な方法で基材に導電性を付与することができ、多孔性基材に転写されても、平滑性に優れた被膜を形成することができた。特に、共重合ポリエステル樹脂としてガラス転移温度が高いポリエステル樹脂(B)を含有すると、耐ブロッキング性に優れ、また、イソシアネート化合物を含有するとともに、共重合ポリエステル樹脂として数平均分子量が低いポリエステル樹脂(C)を含有すると、耐ブロッキング性や耐熱性に優れるものであった。
【0062】
一方、比較例1では、共重合ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が−30℃未満であるため、耐ブロッキング性、耐熱性が不十分であった。比較例2では、共重合ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が20℃を超えるため、転写層の転写性は不十分なものであった。
比較例3では、共重合ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が8000未満であるため、転写性や柔軟性が不十分であった。比較例4では、共重合ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が35000を超えるため、導電材料の分散性が不十分であった。また、導電性、耐熱性も劣った。
比較例5では、共重合ポリエステル樹脂組成物における導電材料の含有量が少なすぎるため、得られた転写層は導電性が低いものであった。また、耐ブロッキング性、耐熱性も劣った。比較例6では、導電材料の含有量が多すぎるため、転写性や柔軟性が不十分なものであった。