特許第6137915号(P6137915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137915
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ライナ付キャップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/04 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B65D53/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-75903(P2013-75903)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-201315(P2014-201315A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 元彦
【審査官】 秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−213039(JP,A)
【文献】 特開2004−217295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に非接着状態に設けられたライナとを有し、容器を密栓可能なライナ付キャップを製造する方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に打抜いてキャップ本体を成形するキャップ本体成形工程と、前記キャップ本体の天面部と摺動する摺動層を該天面部内面に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成する摺動層成形工程と、前記円筒部の前記天面部近傍に半径方向内方に突出して前記摺動層を係止するフック部を形成するフック部形成工程と、前記フック部を形成した後に、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で外径が小さく前記容器と接触する密封層を、前記摺動層上に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成して、前記摺動層と前記密封層とからなる前記ライナを形成する密封層成形工程とを備え、前記摺動層成形工程よりも前に前記天面部の内面に前記摺動層の接着防止措置を施す接着防止措置工程を有することを特徴とするライナ付キャップの製造方法。
【請求項2】
天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に非接着状態に設けられたライナとを有し、容器を密栓可能なライナ付キャップを製造する方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に打抜いてキャップ本体を成形するキャップ本体成形工程と、前記キャップ本体の天面部と摺動する摺動層を該天面部内面に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成する摺動層成形工程と、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で外径が小さく前記容器と接触する密封層を、前記摺動層上に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成して、前記摺動層と前記密封層とからなる前記ライナを形成する密封層成形工程と、前記ライナを形成した後に、前記円筒部の前記天面部近傍に半径方向内方に突出して前記摺動層を係止するフック部を形成するフック部形成工程とを備え、前記摺動層成形工程よりも前に前記天面部の内面に前記摺動層の接着防止措置を施す接着防止措置工程を有することを特徴とするライナ付キャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用等のキャップが螺着されるねじを有する容器を密封するライナ付キャップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチールやアルミニウム合金等からなる容器に装着されるキャップとして、金属製のキャップ本体と、そのキャップ本体の天板部内面に設けられたライナとを備えたものが知られており、キャップの閉止時に、このライナが容器の口金部の頂部に当接し、内部を密封し得るようになされている。
【0003】
このようなライナを備えるキャップ(ライナ付キャップ)においては、従来、キャップ本体の天面部内面に熱した樹脂球を落下させ、成形金型で型押成形することで、所定の形状のライナを形成するインシェルモールドタイプの金属キャップが主流であった。しかし、このようなライナ付キャップは、キャップ本体の天面部とライナを接着させているので、開栓時に容器の口金部とライナとが擦れ合ってトルクが非常に高くなり、開栓し難くなることが問題であった。
【0004】
そこで、特許文献1のように、キャップ本体の天面部(天板部)近傍の側部に内側に突出形成されたフック部(屈曲部)を設けて、シート状に成形したライナをキャップ本体に係止することが行われている。このため、ライナは天面部の内面(天面)に接着せずに、フック部と天面部の内面との間に配置されることにより、キャップ本体に取り付けられるようになっている。また、特許文献1では、ライナは摺動層と軟質層とにより構成され、このライナは、キャップ本体に摺動層となるポリプロピレン等の硬質シートを挿入した後で、その硬質シート上に密封層としてエラストマー等の樹脂(軟質層)をモールド成形して形成することが記載されている。
このようなライナ付キャップは、キャップ付容器を開栓する過程において、開栓始めは、容器の口金部の開口端部にライナの密封層が密接し、ライナの摺動層とキャップ本体の天面部の内面とが摺動することにより、キャップ本体が開栓することから、飛躍的に開栓時のトルクを下げることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐213039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、摺動層は硬質シートを円盤状に打抜いて成形するため、打抜き屑が発生し、材料の使用率が低く、ライナの製造コストを上げる要因となる。摺動層は容器内部の飲料等と直接接触しないため、リサイクルすることも考えられるが、実際問題として難しい。
また、摺動層を形成する硬質シートはシート状に形成される際に引き伸ばされて2軸配向を有するものとされていることから、ライナ付キャップを容器に巻締める際に、摺動層の配向によって面圧にばらつきが生じ、容器とライナ付キャップとの密封性を阻害するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ライナの材料使用率を高めることができ、容器開栓時のトルクを比較的低い状態で維持できるとともに、開栓前は良好に密封状態を維持することができるライナ付キャップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、摺動層もキャップ本体内で成形するインシェルモールドにより形成することを考えたが、その場合は、特許文献1のようにキャップ本体に樹脂を成形すると、キャップ本体の天面部の塗料と接着することで容器開栓時のトルクが高くなり開栓し難くなることが問題となる。また、摺動層を成形する金型は、摺動層の端面を形成する環状のガイドが摺動層よりも径が大きく形成されていることから、キャップ本体にフック部を形成すると、金型の環状のガイドをキャップ本体内部に挿入できず、摺動層の成形が困難になる。
そこで、以下の解決手段とした。
【0009】
本発明のライナ付キャップの製造方法は、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に非接着状態に設けられたライナとを有し、容器を密栓可能なライナ付キャップを製造する方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に打抜いてキャップ本体を成形するキャップ本体成形工程と、前記キャップ本体の天面部と摺動する摺動層を該天面部内面に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成する摺動層成形工程と、前記円筒部の前記天面部近傍に半径方向内方に突出して前記摺動層を係止するフック部を形成するフック部形成工程と、前記フック部を形成した後に、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で外径が小さく前記容器と接触する密封層を、前記摺動層上に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成して、前記摺動層と前記密封層とからなる前記ライナを形成する密封層成形工程とを備え、前記摺動層成形工程よりも前に前記天面部の内面に前記摺動層の接着防止措置を施す接着防止措置工程を有することを特徴とする。
【0010】
摺動層の成形後にフック部を形成することから、フック部の先端で形成される内接円よりも外径の大きな摺動層を形成することができる。このため、キャップ本体内部でモールド成形により摺動層を形成する場合においても、フック部により摺動層を天面部の内面に非接着状態に設けることができる。したがって、開栓時のトルクを比較的低い状態で維持することができる。
また、キャップ本体内部で摺動層及び密封層の両方を成形することによりライナを形成することができ、硬質シートを打抜いて成形する場合のように打抜き屑が発生しないので、材料使用率を高めることができるとともに、工程を簡略化してライナを形成することができる。そして、摺動層及び密封層を有するライナを、インシェルモールドのみで形成可能なので、ライナ打抜き工程及びライナ嵌め込み工程を無くすことができ、飛躍的に生産性を向上させることができる。
さらに、ライナをモールド成形するので、延伸による分子配向を有さず摺動層が形成でき、すなわち、滴下した溶融する樹脂を押しつぶすことにより広げて摺動層を形成するので、樹脂を構成する分子が放射状に配向した摺動層を形成することができる。よって、ライナ付キャップを絞り成形した際に、円周方向で均一な面圧が得られ、容器とライナ付キャップとの密封性を向上させることができる。
【0011】
なお、前記接着防止措置工程は、例えば、前記天面部の内面にマスキングインキを塗布することにより前記摺動層と前記天面部との接着を防止したり、天面部の内面に不揮発性有機液体(グリセリンやシリコーンオイル等)を塗布したり、さらにレーザー照射により天面部内面の塗装面を変質させて非接着性を施す工程とされる。
【0012】
本発明のライナ付キャップの製造方法は、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に非接着状態に設けられたライナとを有し、容器を密栓可能なライナ付キャップを製造する方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に打抜いてキャップ本体を成形するキャップ本体成形工程と、前記キャップ本体の天面部と摺動する摺動層を該天面部内面に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成する摺動層成形工程と、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で外径が小さく前記容器と接触する密封層を、前記摺動層上に供給した溶融樹脂を金型で押圧するモールド成形により形成して、前記摺動層と前記密封層とからなる前記ライナを形成する密封層成形工程と、前記ライナを形成した後に、前記円筒部の前記天面部近傍に半径方向内方に突出して前記摺動層を係止するフック部を形成するフック部形成工程とを備え、前記摺動層成形工程よりも前に前記天面部の内面に前記摺動層の接着防止措置を施す接着防止措置工程を有することを特徴とする。
【0013】
このように、モールド成形により摺動層及び密封層を形成した後に、フック部を形成する構成とすることもできる。この場合も、摺動層と密封層とからなるライナを天面部の内面に非接触状態に設けることができ、容器開栓時のトルクを比較的低い状態で維持できるとともに、開栓前は良好に密封状態を維持することができる。
【0014】
本発明のライナ付キャップは、上記本発明の製造方法により製造されたライナ付キャップであって、前記ライナを構成する前記摺動層が、放射状の分子配向を有することを特徴とする。
本発明のキャップ付容器は、容器と、該容器に装着されるキャップとを備え、前記キャップが、上記本発明のライナ付キャップであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、摺動層と密封層とからなるライナをモールド成形により形成することによりライナの材料使用率を高めることができるとともに、摺動層及び密封層をインシェルモールドのみで形成可能であるので、ライナ付キャップの生産性を飛躍的に向上させることができる。また、容器開栓時のトルクを比較的低い状態で維持できるとともに、開栓前は良好に密封状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のキャップ付ボトル缶のライナ付キャップを破断した要部側面図である。
図2図1に示すキャップ付ボトル缶の部分断面図である。
図3】ボトル缶に巻き締める前のライナ付キャップを示す一部破断した側面図である。
図4図3に示すライナ付キャップのA矢視図(平面図)である。
図5図4を拡大した要部平面図である。
図6】本実施形態においてライナ付キャップの製造方法の製造工程を示す説明図である。
図7】ボトル缶に巻き締める前のライナ付キャップの要部断面図であり、ライナの摺動層の成形を説明する図である。
図8】ボトル缶に巻き締める前のライナ付キャップの要部断面図であり、ライナの密封層の成形を説明する図である。
図9】本発明のその他の実施形態においてライナ付キャップの製造方法の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るライナ付キャップの製造方法及びライナ付キャップ並びにキャップ付容器の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のキャップ付容器は、図1及び図2に示すように、例えば38mm口径のアルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のボトル缶2(本発明でいう、容器)と、このボトル缶2の口金部21に装着されて密栓するピルファープルーフキャップ(以下、PPキャップとも称す。)となるライナ付キャップ3とからなる、キャップ付ボトル缶1とされる。
【0018】
また、図1及び図2に示すライナ付キャップ3は、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に成形したものをボトル缶2に装着しており、装着前のライナ付キャップ3は、図3及び図4に示すように、天面部41と、その天面部41の周縁から略垂下されてなる円筒部42とを備えるキャップ本体4と、そのキャップ本体4の内面に非接着状態に設けたライナ5とを有する。
【0019】
キャップ本体4を成形する板材は、内外面を塗装(内面:サイズニス+トップコート、外面:サイズコート+トップコート(ツヤニス))した塗装板を使用している。なお、内外面のトップコートには、必要に応じて各種滑材添加タイプを使用する。例えば、天面部41の内面には、エポキシフェノール等の樹脂に滑材としてポリオレフィン系ワックス等が添加された塗料が焼付けられている。
【0020】
ライナ5は、ボトル缶2のライナ付キャップ3による閉止時に口金部21に当接し、ボトル缶2の内部を密封し得るように形成されている。そして、天面部41の内面側に配置されその天面部41の内面と摺動する摺動層51と、摺動層51に直接又はバリア層等の中間層を介して積層され、摺動層51よりも柔軟で外径の小さい密封層52とから構成される多重構造とされている。
摺動層51は、ポリプロピレン等により円盤状に形成されている。また、密封層52は、摺動層51よりも軟質のエラストマー樹脂等により形成され、シール機能を有するものである。この密封層52は、図4に示すように、摺動層51に対し同軸でかつ小径の円形に形成されている。また、密封層52は、ボトル缶2の口金部21に密着する外周部54が、中心部55よりも厚く形成されている。
【0021】
また、キャップ本体4の円筒部42は、その下端面に周方向に断続的に形成されたスリット43を介して上下に分割された筒上部44と筒下部45とを有し、隣接するスリット43間に形成される複数のブリッジ43aによって筒上部44と筒下部45とを連結した形状とされている。
【0022】
そして、図1に示すように、このライナ付キャップ3が装着されるボトル缶2の口金部21には、その下端部に半径方向外方に突出する膨出部22が形成され、その上方にボトル側ねじ部23、ボトル側ねじ部23の上方に開口端部を丸めてなるカール部24が形成されている。口金部21に被せられたライナ付キャップ3は、膨出部22、ボトル側ねじ部23、カール部24の形状に沿うように、例えば、ネジローラー(図示略)で円筒部42を内方に押圧することにより塑性変形される。これにより、キャップ側ねじ部46が形成され、口金部21に装着されたライナ付キャップ3は、円筒部42の下端部が膨出部22の下面に係止され、ライナ5がカール部24に圧接されて、ボトル缶2を密封状態としてキャップ付ボトル缶1とされる。
【0023】
キャップ本体4の円筒部42は、図3に示すように、天面部41近傍に、周方向に複数並べられたナール凹部11と、開栓時に内圧を開放する開口部12を有するとともにライナ5を係止する複数のフック部13とが形成されている。
ナール凹部11及びフック部13は、円筒部42の外周面において凹形状をなしており、これらが間隔をあけて配置されることにより円筒部42の外周面に凹凸表面が形成され、開栓時にライナ付キャップ3を把持する指との間の摩擦抵抗を増大させることができる。これにより、手を滑らせることなく把持することが可能となり、容易に開栓することができる。
【0024】
また、フック部13は、円筒部42の周方向に沿って形成した切り込みの下方部分を半径方向内方に押し込むことによって形成されており、図4及び図5に示すように、半径方向内方に山形(V字状)に突出形成されている。そして、切り込みが開くことにより、開口部12が形成されている。
また、フック部13の上端面15は、図3に示すように、少なくともライナ5を構成する摺動層51の厚さ分だけ天面部41の内面から離れた位置に形成されている。そして、各フック部13により構成される内接円C(図4)は、ライナ5の摺動層51の外径より小さく設定されており、この摺動層51がフック部13の上端面15と天面部41の内面との間に配置されることにより、ライナ5がキャップ本体4に取り付けられる。
なお、開口部12は、ライナ付キャップ3がブリッジ43aを破断しつつ回転操作された際、ボトル缶2の内部のガスを外部に放出するためのベントホールとして機能する。
【0025】
なお、ライナ5の厚みやライナ5を構成する摺動層51の外径、密封層52の外径等は、キャップ本体4の寸法に応じて決定される。
【0026】
次に、本実施形態のライナ付キャップ3の製造方法を、図6を参照して説明する。
(塗装工程)
まず、キャップ本体4を形成する板材40の内外面を塗装する。通常、キャップ本体4の内面側とされる表面にサイズコート及びトップコートを施し、外面側とされる表面にサイズコートを必要に応じて印刷し、次にトップコート(ツヤニス)を塗布する。これらの厚さは、一般に1〜10μmであり、各々は150〜200℃で8〜12分間焼付け乾燥される。
【0027】
(キャップ本体成形工程)
そして、この塗装された板材40に、潤滑剤を塗布してプレスでカップ状に打ち抜くことによりキャップ本体4の天面部41と円筒部42とを形成する。なお、ナール凹部11やフック部13等は、後述する工程において加工される。
【0028】
(接着防止措置工程)
次に、天面部41の内面に接着防止措置を施す。接着防止措置は、例えば、不揮発性有機液体(グリセリン又はシリコーンオイル等)を塗布したり、レーザー照射により板材40の塗装面を変質させてマスキングを形成したりすることにより行われる。また、塗装工程において、板材40の塗装面にマスキング用インキ(ラッカー)を塗布することにより予め接着防止措置を施しておくことも可能である。
【0029】
(摺動層成形工程)
そして、図6及び図7に示すように、接着防止措置が施されたキャップ本体4に、樹脂のモールド成形により摺動層51を形成する(インシェルモールド)。摺動層51の成形は、キャップ本体4を開口端部が上向きとなるように載置した状態で行われる。
まず、天面部41の内面側中央に押出機から押し出され溶融したポリエチレン等の硬質樹脂の一定量を供給し、直ちに冷却された金型M1で押圧して摺動層51を成形する。この際、天面部41の内面側中央に供給(滴下)された樹脂は、金型M1で押圧されることにより放射状に拡がって成形され、樹脂を構成している分子が放射状に配向した摺動層51が形成される。また、天面部41の内面には接着防止措置が施されていることから、摺動層51が天面部41の内面に接着されることなく、非接触状態でキャップ本体4内部に成形される。
【0030】
(フック部形成工程)
次に、天面部41の内面上に摺動層51を載置した状態で、円筒部42の周方向に沿って切り込みを形成し、その切り込みの下方部分を半径方向内方に押し込むことによって切り込みを開き、半径方向内方に山形(V字状)に突出させたフック部13を形成する。この際、切り込みが開くことにより、開口部12が形成される。そして、フック部13が形成されることにより、摺動層51がキャップ本体4から抜けることなく、キャップ本体4に係止される。
なお、フック部13及び開口部12を形成する際に、ナール凹部11及びブリッジ43a等の加工も施される。
【0031】
(密封層成形工程)
そして、密封層52は、図6及び図8に示すように、キャップ本体4内に摺動層51が挿入された状態で、モールド成形用の金型M2をキャップ本体4内に挿入し、エラストマー樹脂等を樹脂成形することにより形成される。
モールド成形用の金型M2の外径は、フック部13の内接円C(図4参照)よりも小さく設定されており、フック部13の先端が、金型M2を挿入する際の金型M2のガイドの役割を果たすことにより、金型M2のセンタリング(位置決め)が行われる。
また、押出機から押し出され溶融したエラストマー等の軟質樹脂の一定量を、キャップ本体4に支持される摺動層51の中央に供給(滴下)し、直ちに冷却された金型M2で押圧することにより密封層52を成形することにより、摺動層51と密封層52とからなるライナ5が形成されるとともに、ライナ5がキャップ本体4内に非接触状態に設けられ、本発明のライナ付キャップ3が形成される。
この際、密封層52は、摺動層51に対し同軸でかつ小径の円形に形成されるとともに、ボトル缶2の口金部21に密着する外周部54が、中心部55よりも厚く形成される。
【0032】
なお、摺動層51と密封層52とは、材料を選択することにより成形時に完全に接着するが、接着が弱い場合は、摺動層51を成形した後で、摺動層51の表面にコロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、アンカーコート処理、接着剤塗布等の表面処理工程を加えてもよい。この場合、表面処理は、密封層52と接着する面のみでよい。
【0033】
そして、上記のライナ付キャップ3をボトル缶2の口金部21に被せた状態でキャッピング加工を施すことにより、ライナ付キャップ3が口金部21に巻締められた状態で被着され、本実施形態のキャップ付ボトル缶1が形成される。
ライナ付キャップ3のキャッピング加工は、プレッシャーブロック、ネジローラー、スカートローラー等からなるキャッピング装置を用いて行われる。すなわち、口金部21に被せたキャップ本体4の天面部41を、図2に二点鎖線で示すように、プレッシャーブロックPでボトル缶2の底部の方向に押圧し、この状態でプレッシャーブロックPによる絞り加工を行うことでライナ付キャップ3の肩部に段差部48を形成する。
【0034】
さらに、この状態でネジローラー(図示略)によりキャップ側ねじ部46を形成し、スカートローラー(図示略)で口金部21の膨出部22にピルファープルーフ部47を巻きつけることで、キャッピング加工が行われる。この場合、ライナ付キャップ3(キャップ本体4)が被着されるボトル缶2の口金部21には、ボトル側ねじ部23及び膨出部22が形成されており、ここに被せられたライナ付キャップ3は、ボトル側ねじ部23、膨出部22等の形状に沿うようにキャップ側ねじ部46及びピルファープルーフ部47が塑性変形される。これによって、ライナ付キャップ3がボトル缶2の口金部21に装着され、ボトル缶2が密封状態とされる。この際、キャップ本体4の天面部41の内側には、上述したようにライナ5が挿入配置されており、そのライナ5によってボトル缶2の開口部がシールされている。
【0035】
このように構成されたキャップ付ボトル缶1において、ライナ付キャップ3を開栓するために回転させると、キャップ側ねじ部46が形成された筒上部44がボトル缶2のボトル側ねじ部23に沿って上方へ持ち上がりながら回転する。一方、ピルファープルーフ部47が形成された筒下部45はボトル缶2の膨出部22に係止され、筒上部44と一体に持ち上がらずに回転する。
この際、上方向に引っ張る力と、周方向に引っ張る力(摩擦力)とを加えられた各ブリッジ43aが単独に順次破断していく。そして、各ブリッジ43aが破断した際に、ライナ付キャップ3の筒上部44と筒下部45とが分断される。その後、筒上部44を口金部21のボトル側ねじ部23に対してさらに回転させることにより、ボトル缶2からライナ付キャップ3の筒上部44が外れて開栓させることができる。一方、ライナ付キャップ3の筒下部45は、リング状のピルファープルーフ部47としてボトル缶2に残される。
【0036】
本発明のライナ付キャップ3においては、摺動層51の成形後にフック部13を形成することから、フック部13の先端で形成される内接円Cよりも外径の大きな摺動層51を形成することができる。このため、キャップ本体4の内部でモールド成形により摺動層51を形成する場合においても、フック部13により摺動層51を天面部41の内面に非接着状態に設けることができる。
そして、ライナ5は、キャップ本体4と接触する側に硬質で滑性のある摺動層51を設け、ボトル缶2と接する側に軟質な密封層52を設けているので、開栓時はライナ5を摺動層51とキャップ本体4との間で滑らせることができ、少ない力で開栓することができるとともに、開栓前は密封層52により良好に密封状態を維持することができる。
また、キャップ本体4の内部で摺動層51及び密封層52の両方を成形することによりライナ5を形成することができるので、材料使用率を高めることができ、工程を簡略化することができる。そして、摺動層51及び密封層52を有するライナ5を、インシェルモールドのみで形成可能なので、ライナ打抜き工程及びライナ嵌め込み工程を無くすことができ、ライナ付キャップ3の生産性を飛躍的に向上させることができる。
さらに、ライナ5をモールド成形しているので、延伸による分子配向を有さず、放射状の分子配向を有する摺動層51が形成できる。これにより、ライナ付キャップ3を絞り成形してボトル缶2に巻き締めた際に、口金部21の円周方向で均一な面圧が得られ、ボトル缶2とライナ付キャップ3との密封性を向上させることができる。
【0037】
また、上記実施形態においては、キャップ本体4にまず摺動層51を成形して、フック部13を形成した後に、摺動層51に密封層52を積層する構成としたが、図9に示すように、摺動層51及び密封層52を成形した後に、フック部13を形成する構成とすることもできる。この場合、二色成型機を用いて摺動層51と密封層52とを交互に成形することによってライナ5を成形することもできる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、キャップ付ボトル缶及びボトル缶に装着されるライナ付キャップについて説明を行ったが、本発明でいうキャップ付容器の容器は、ボトル缶に限定されるものではなく、ボトル缶の他、ガラスビンやPETボトル等の容器も含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 キャップ付ボトル缶(キャップ付容器)
2 ボトル缶(容器)
3 ライナ付キャップ
4 キャップ本体
5 ライナ
11 ナール凹部
12 開口部
13 フック部
15 上端面
21 口金部
22 膨出部
23 ボトル側ねじ部
24 カール部
40 板材
41 天面部
42 円筒部
43 スリット
43a ブリッジ
44 筒上部
45 筒下部
46 キャップ側ねじ部
47 ピルファープルーフ部
48 段差部
51 摺動層
52 密封層
54 外周部
55 中心部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9