(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137917
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ブロワ装置に用いるエジェクタ
(51)【国際特許分類】
F04F 5/16 20060101AFI20170522BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20170522BHJP
E01H 1/08 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
F04F5/16
F04D25/08 Z
E01H1/08 B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-78013(P2013-78013)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-202113(P2014-202113A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄志
(72)【発明者】
【氏名】藤松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梨本 知伸
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−044305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 5/16
E01H 1/08
F04D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、前記送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタであり、
前記送風管の先端部の外径より大きな内径を有して、前記送風管の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部と、
前記増風筒部内にて前記送風管の先端部の内部に延出して、前記送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合する複数の係合条片とを備え、
前記複数の係合条片を前記送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合させることで、前記増風筒部を前記送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能としたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のエジェクタにおいて、
前記送風管の先端部の内周面には前記複数の係合条片が摺動自在に係合する軸線方向に沿って延びる複数のガイド溝を形成したことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のエジェクタにおいて、
前記係合条片の先端部には前記送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合する係合筒部を設けたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項4】
ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、前記送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタであり、
前記送風管の先端部の外径より大きな内径を有して、前記送風管の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部と、
前記送風管の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に嵌合して前記送風管の先端部の長さ調節をする延長管とを備え、
前記延長管を軸線方向に沿って摺動させることにより、前記増風筒部を前記送風管の先端部に対して相対的に位置調節可能としたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項5】
ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、前記送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタであり、
前記送風管の先端部の外径より大きな内径を有して、前記送風管の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部と、
前記増風筒部内にて前記送風管の先端部の外周面に軸線方向に沿って位置調節可能に係合する係合部とを備え、
前記係合部は前記送風管の軸線方向と直交する方向の形状がC字形をしたC字形部を有し、このC字形部を前記送風管の先端部の外周面に軸線方向に沿って摺動自在に弾性的に係合させることにより、前記増風筒部を前記送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能としたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のエジェクタにおいて、
前記増風筒部の周壁の一部を他の部分より前記送風管の先端部の周壁に近接させたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のエジェクタにおいて、
前記増風筒部は可撓性の板材を前記送風管の先端部の外周面を通風可能に覆うように湾曲させて周方向の両端部を連結して筒形状にしたものであり、前記板材の周方向の連結位置を変えることにより筒形状の径を調節可能としたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項8】
ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、前記送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタであり、
前記送風管の先端部の外径より大きな内径を有して、前記送風管の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部を備え、
前記増風筒部を前記送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能とするとともに、
前記増風筒部の周壁の一部を他の部分より前記送風管の先端部の周壁に近接させたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【請求項9】
ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、前記送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタであり、
前記送風管の先端部の外径より大きな内径を有して、前記送風管の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部を備え、
前記増風筒部を前記送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能とするとともに、
前記増風筒部は可撓性の板材を前記送風管の先端部の外周面を通風可能に覆うように湾曲させて周方向の両端部を連結して筒形状にしたものであり、前記板材の周方向の連結位置を変えることにより筒形状の径を調節可能としたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはブロワ装置に用いるエジェクタが開示されている。このブロワ装置に用いるエジェクタは、ブロワ装置の送風管の先端部の外周面に嵌合固定される筒形取付部と、筒形取付部の外周面に外側に放射状に設けた支柱により支持されて送風管の先端部の外周面を通風可能に覆う増風筒部とを備えている。送風管の先端開口から空気を噴出すると、エジェクタの増風筒部内は通過する空気により負圧となり、増風筒部内には基端の吸気口から空気が負圧吸引される。増風筒部の先端開口から噴出する空気は、送風管の先端開口から噴出する空気に、吸気口から負圧吸引した空気が加わり、送風管の先端開口から噴出する空気より風量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−056720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の送風管の先端部にエジェクタを取り付けたブロワ装置においては、エジェクタの先端開口から噴出する空気は送風管から噴出する空気の風量と比べて多くなるが、送風管から噴出する空気の風速と比べて低下する。エジェクタを取り付けたブロワ装置を落葉の清掃に用いたときに、エジェクタの先端開口から噴出する空気によって広範囲の乾いた落葉を吹き飛ばすことができる。しかし、エジェクタから噴出する空気の風速は送風管から噴出する空気の風速と比べて低下しているため、地面に張り付いた濡れた落葉を吹き飛ばすことができないことがあった。この場合には、送風管の先端部からエジェクタを取り外し、送風管から風速の速い空気を噴出させることにより地面に張り付いた落葉を吹き飛ばさなければならなかった。ブロワ装置を用いた清掃作業中に、エジェクタの着脱作業をすると、清掃作業を中断しなければならなく、作業効率が悪くなる問題があった。本発明は、エジェクタを取り外すことなく、風量及び風速を調節可能にしたエジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けて、送風管から噴出する噴出風を増加させるエジェクタであり、送風管の先端部の外径より大きな内径を有して、送風管の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部
と、増風筒部内にて送風管の先端部の内部に延出して、送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合する複数の係合条片とを備え、複数の係合条片を送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合させることで、増風筒部を送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能としたことを特徴とするブロワ装置に用いるエジェクタを提供するものである。
【0006】
上記のように構成したブロワ装置に用いるエジェクタは、
複数の係合条片を送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合させることで、増風筒部を送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能としたこと
により、エジェクタの増風筒部から噴出する風量及び風速を調節可能とすることができた。
【0007】
また、送風管の先端部の内周面には複数の係合条片が摺動自在に係合する軸線方向に沿って延びる複数のガイド溝を形成し、係合条片をガイド溝に沿って摺動させることで、増風筒部を軸線方向に沿って位置調節させてもよい。また、係合条片の先端部には送風管の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に係合する係合筒部を設け、係合筒部を送風管の先端部の内周面に沿って摺動させることで、増風筒部を軸線方向に沿って位置調節させてもよい。
【0008】
上記のように構成したブロワ装置に用いるエジェクタの他の実施形態においては、
係合条片に代えて、送風管の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に嵌合して送風管の先端部の長さ調節をする延長管とを備え、延長管を軸線方向に沿って摺動させることにより、増風筒部を送風管の先端部に対して相対的に位置調節可能としてもよい。
【0009】
また、上記のように構成したブロワ装置に用いるエジェクタの他の実施形態においては、
係合条片に代えて、増風筒部内に
て送風管の先端部の外周面に軸線方向に沿って位置調節可能に係合する係合部を備え、係合部は送風管の軸線方向と直交する方向の形状がC字形をしたC字形部を有し、このC字形部を送風管の先端部の外周面に軸線方向に沿って摺動自在に弾性的に係合させ
ることにより、増風筒部を送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能としてもよい。
【0010】
また、上記のように構成したブロワ装置に用いるエジェクタの各実施形態においては、
増風筒部を送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能とするとともに、増風筒部の周壁の一部を他の部分より送風管の先端部の周壁に近接させるのが好ましく、このようにしたときには、増風筒部の周壁の送風管の先端部の周壁に近接させた部分からは、風速の速い空気を噴出させることができ、近接させた部分以外からは、風量を多くした空気を噴出することができる。
【0011】
上記のように構成したブロワ装置に用いるエジェクタの各実施形態においては、
増風筒部を送風管の先端部に対して軸線方向に沿って相対的に位置調節可能とするとともに、増風筒部は可撓性の板材を送風管の先端部の外周面を通風可能に覆うように湾曲させて周方向の両端部を連結して筒形状にしたものであり、板材の周方向の連結位置を変えることにより筒形状の径を調節可能とするのが好ましく、このようにしたときには増風筒部の径を調節することで、風量と風速とを変えた空気を噴出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のエジェクタを用いた背負式ブロワ装置の斜視図である。
【
図2】(a)第1実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(b)先端側から見た図であり、(c)A−A断面図である。
【
図3】第1実施形態のエジェクタを先端側に配置したときの軸線方向に沿った断面図である。
【
図4】(a)第2実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(b)先端側から見た図であり、(c)B−B断面図である。
【
図5】第2実施形態のエジェクタを先端側に配置したときの軸線方向に沿った断面図である。
【
図6】第3実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(a)はエジェクタを基端側に配置したとき、(b)はエジェクタを先端側に配置したときの断面図である。
【
図7】(a)第4実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(b)先端側から見た図である。
【
図8】第4実施形態のエジェクタにおいて、延長管を基端側から先端側に配置したときの軸線方向に沿った断面図である。
【
図9】(a)第5実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(b)C−C断面図である。
【
図10】第5実施形態のエジェクタを(a)先端側に配置したときと、(b)基端側に配置したときの軸線方向に沿った断面図である。
【
図11】(a)第6実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(b)D−D断面図である。
【
図12】(a)第7実施形態のエジェクタの軸線方向に沿った断面図であり、(b)E−E断面図である。
【
図13】第8実施形態のエジェクタの軸線方向と直交する方向の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のブロワ装置に用いるエジェクタを背負式ブロワ装置に適用した実施形態により添付図面を参照して説明する。
図1に示したように、背負式ブロワ装置10は、作業者が背負う背負フレーム11にブロワユニット20を備えている。背負フレーム11は垂直に延びて作業者の背中に当たる背当部11aと、背当部11aの下部から後方に延びる台座部11bとからなるL字形をしている。背負フレーム11の背当部11aには作業者が背負うための一対のショルダーストラップ12,12が取り付けられている。背負フレーム11の右側部には送風管30を支持する支持アーム13が固定されている。
【0014】
ブロワユニット20は、原動機21により駆動されるファン(図示省略)の回転によって吸引した空気を噴出ダクト23から噴出するものである。ブロワユニット20は原動機21を一体的に組み付けたボリュートケース22を備えており、ボリュートケース22内には原動機21により回転するファン(図示省略)が収容されている。ボリュートケース22にはファンによって吸引した空気を噴出する噴出ダクト23が一体的に設けられており、噴出ダクト23には送風管30が連通接続されている。
【0015】
送風管30はブロワユニット20の噴出ダクト23から噴出する空気を対象物に向けて噴出させるものである。送風管30は、ブロワユニット20の噴出ダクト23に連通接続されたエルボ部31と、エルボ部31の先端に連結された可撓性の蛇腹部よりなるフレキシブル部32と、フレキシブル部32の先端に連結された真直に延びる真直部33とからなる。
【0016】
エルボ部31の基端部は背負フレーム11に固定した支持アーム13に周方向に回動可能に支持されている。真直部33の基端部には送風管30を把持するためのグリップ34が設けられており、グリップ34にはブロワユニット20の原動機21の出力を操作するスロットレバー35が設けられている。
【0017】
送風管30の真直部33の先端部には送風管30から噴出する空気を増加させるエジェクタ40が設けられている。
図2に示したように、第1実施形態のエジェクタ40は、送風管30の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部41と、増風筒部41内の先端部に設けたディフューザ42と、増風筒部41内にて送風管30の先端部の内部に延出して送風管30の先端部の内周面に摺動自在に係合する3つの係合条片44とを備え、これらを可撓性の樹脂部材により一体的に形成したものである。
【0018】
増風筒部41は、送風管30の先端部の外径より大きな内径を有し、軸線方向の両端が開口した円筒形状をしている。増風筒部41の基端開口は送風管30の先端開口33aより後側に位置し、増風筒部41の基端開口と送風管30の先端部との間は増風筒部41内に外気を導入する吸気口41bとなっている。増風筒部41の吸気口41bは基端開口と送風管30の先端部との間により形成されたものであるので、増風筒部41の周壁に吸気のための窓等の貫通孔を形成したものに比べて加工を少なくできている。また、増風筒部41の先端開口は送風管30の先端開口33aより前側に位置している。
【0019】
ディフューザ42は送風管30の先端開口33aから噴出する空気の直進性を向上させるためのものである。ディフューザ42は先端側が広がるラッパ形状をし、増風筒部41の先端部の内周面に設けた3つ腕部43によって増風筒部41に同心的に支持されている。ディフューザ42の基端部には周方向の互いに等間隔に離間した3箇所から送風管30の先端部の内部に延出する3つの係合条片44が一体的に設けられている。3つの係合条片44は送風管30の先端部の内周面に向けて弾性的に付勢されており、係合条片44は送風管30の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動自在に摩擦係合している。なお、係合条片44を互いに等間隔に離間した2箇所または4箇所以上から送風管30の先端部の内部に延出させてもよい。係合条片44を2箇所から送風管30の先端部の内部に延出させたときには、係合条片44を送風管30の周方向に幅広として摩擦係合する面積を増やせばよい。
【0020】
上記のように構成した背負式ブロワ装置10の作動を説明する。作業者は、ブロワユニット20の原動機21を起動させてから、背負フレーム11を背負って右手に送風管30のグリップ34を把持し、スロットレバー35を操作しながら送風管30の先端開口33aから空気を噴出させる。
【0021】
乾いた落葉を吹き飛ばすとき等、風量を多く空気を広範囲に噴出させるときには、
図3に示したように、エジェクタ40の増風筒部41を軸線方向の先端側に移動させ、ディフューザ42の基端開口を送風管30の先端開口33aから離間させる。増風筒部41内は送風管30の先端開口33aから噴出する空気が通過することで負圧となり、増風筒部41内には基端の吸気口41bから外気が導入される。増風筒部41内に導入された外気は送風管30の先端開口33aから噴出する空気とともにディフューザ42内に吸い込まれ、ディフューザ42の先端開口から噴出する空気は送風管30の先端開口33aから噴出した空気に吸気口41bから導入した外気が加わり、送風管30の先端開口33aから噴出する空気より風量が増加する。
【0022】
これに対し、地面に張り付いた濡れた落葉を吹き飛ばすとき等、空気の風速を速くするときには、
図2(a)に示したように、エジェクタ40の増風筒部41を軸線方向の基端側に移動させ、ディフューザ42の基端開口を送風管30の先端開口33aに密着させる。送風管30の先端開口33aから噴出する空気はディフューザ42を通って、ディフューザ42の先端開口から噴出する。このとき、送風管30の先端開口33aとディフューザ42の基端開口は密着しているので、増風筒部41内には吸気口41bから空気が負圧吸引されず、送風管30の先端開口33aから風速の速い(風圧の高い)空気を噴出させることができる。なお、ディフューザ42の基端開口を送風管30の先端開口33aに密着させた位置から徐々に離間させることにより、風量を徐々に増加させることが可能である。
【0023】
このように、本実施形態のエジェクタ40においては、増風筒部41を送風管30の先端部に対して軸線方向に沿って位置調節可能としたことで、エジェクタ40から噴出する風量及び風速を調節可能とすることができた。また、エジェクタ40により風量を増加させる必要がないときには、エジェクタ40を軸線方向に沿って後退させるだけでよいので、エジェクタの着脱作業によってブロワ装置を用いた作業を中断する必要がなく、ブロワ装置を用いた作業の効率が低下するのを防ぐことができた。特に、本実施形態のブロワ装置10はブロワユニット20を背負フレーム11により作業者の背中に背負う背負式ブロワ装置10である。従来のように送風管の先端部にエジェクタを着脱するには、ブロワ装置を用いた作業を中止し、ブロワユニットを搭載した背負フレームを背中から降ろして、送風管の先端部にエジェクタを着脱しなければならなく、ブロワ装置を用いた作業の効率が低下していた。この実施形態のブロワ装置10に用いるエジェクタ40を使用することで、背負フレーム11を背中に背負った状態で、例えば、エジェクタ40を足で軽く引っ掛けて動かないように固定し、送風管30を軸線方向に沿って前後させることにより、エジェクタ40の増風筒部41の軸線方向の位置調節をすることができるになった。これにより、背負フレーム11を背中から降ろすことなく、エジェクタ40の増風筒部41の位置調節をすることができ、ブロワ装置10を用いた作業の効率が低下するおそれがない。また、エジェクタ40を送風管30の先端部から取り外さないので、エジェクタ40の紛失のおそれがない。
【0024】
次に、第2実施形態のエジェクタについて説明する。
図4及び
図5に示したエジェクタ40Aは、ブロワ装置10の送風管30の先端部の内周面にエジェクタ40Aの係合条片44Aが摺動自在に係合する軸線方向に延びる3つ(複数)のガイド溝33bを形成したものである。係合条片44Aを送風管30のガイド溝33bに係合させることにより、エジェクタ40Aは送風管30の先端部の軸線方向に摺動しやすくなり、エジェクタ40Aを軸線方向に位置調節しやすくなった。これ以外は、上述した第1実施形態の構成及び作用効果と同様である。
【0025】
次に、第3実施形態のエジェクタについて説明する。
図6に示したエジェクタ40Bは、第1及び第2実施形態のディフューザを廃して、増風筒部41Bの先端部の内周面にて周方向の互いに等間隔に離間した4箇所(複数箇所)から送風管30の先端部の内部に延出する4つの(複数の)係合条片44Bを一体的に設けている。4つの係合条片44Bの先端部には送風管30の先端部の内周面に摺動自在に係合する係合筒部45Bが設けられている。
【0026】
図6(a)及び(b)に示したように、このエジェクタ40Bにおいても、係合筒部45Bを送風管30の先端部の内周面に軸線方向に沿って摺動させることで、増風筒部41Bを送風管30の軸線方向に沿って位置調節可能とすることができ、エジェクタ40Bから噴出する風量及び風速を調節可能とすることができた。
【0027】
次に、第4実施形態のエジェクタについて説明する。
図7に示したエジェクタ40Cは、増風筒部41Cを送風管30の先端部の外周面に腕部46Cにより固定したものである。このとき、増風筒部41Cは送風管30の真直部33に対して軸線方向に沿って位置調節できないように固定されている。送風管30は真直部33の先端部に延長管36を備えており、延長管36は真直部33の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に嵌合している。延長管36は軸線方向に沿って摺動することにより送風管30の軸線方向の長さを調節する。このエジェクタ40Cでは、延長管36を軸線方向に沿って摺動させることで、増風筒部41Cを送風管30の先端部に対して相対的に位置調節可能としている。
【0028】
図7に示したように、延長管36を送風管30の先端部に奥まで挿入したときには、延長管36の先端開口36aは増風筒部41Cの先端開口41Caより最も後側(基端側)となる。延長管36の先端開口36aから空気を噴出させると、増風筒部41C内は延長管36の先端開口36aから噴出する空気が通過することで負圧となり、増風筒部41C内には基端の吸気口41Cbから外気が導入される。増風筒部41Cの先端開口41Caから噴出する空気は、延長管36の先端開口36aから噴出した空気に吸気口41Cbから導入した外気が加わり、延長管36の先端開口36aから噴出する空気より風量が増加する。
【0029】
これに対し、
図8に示したように、延長管36を前側(先端側)に引き出したときには、延長管36の先端開口36aは増風筒部41Cの先端開口41Caと軸線方向にほとんど同じ位置となる。延長管36の先端開口36aから空気を噴出させても、増風筒部41C内は延長管36の先端開口36aから噴出する空気がほとんど通過せずに負圧とならず、増風筒部41C内には基端の吸気口41Cbから外気が導入されない。これにより、延長管36を送風管30の先端部から前側に引き出すことで、延長管36の先端開口36aから増風筒部41内を通過することなく風速の速い空気を噴出させることができる。このように、延長管36を軸線方向に沿って位置調節することで、増風筒部41Cを送風管30に対して相対的に位置調節可能として、風量と風速とを変えた空気を噴出させることが可能となる。
【0030】
次に、第5実施形態のエジェクタについて説明する。
図9に示したエジェクタ40Dは、送風管30の外周面を外側から通風可能に覆う増風筒部41Dと、増風筒部41D内に設けて送風管30の先端部の外周面に軸線方向に沿って位置調節可能に係合する係合部47Dとを備え、これらを可撓性の樹脂部材により一体的に形成したものである。また、この第5実施形態のエジェクタ40Dを適用した送風管30の真直部33の先端部は他の部分より少し径の小さな小径部33cが形成されており、小径部33cと他の部分を構成する大径部との間には徐々に径が小さくなるテーパ部33dが形成されている。小径部33cの先端にはフランジ部33eが形成されている。
【0031】
増風筒部41Dの先端開口41Daは送風管30の先端開口33aより前側に位置している。また、増風筒部41Dの基端開口は送風管30の先端開口33aより後側に位置し、増風筒部41Dの基端開口と送風管30の先端部との間は増風筒部41内に外気を導入する吸気口41bとなっている。
【0032】
係合部47Dは送風管30の軸線方向と直交する方向の形状がC字形をしたC字形部47Daを有しており、このC字形部47Daは開口縁部から延出する腕部47Dbにより増風筒部41内に一体的に支持されている。C字形部47Daは送風管30の小径部33cより少し小さな径をしており、送風管30の小径部33cの外周面に軸線方向に沿って摺動自在に弾性的に係合している。C字形部47Daは送風管30の先端のフランジ部33eと基端側のテーパ部33dとの間で摺動自在に係合している。
【0033】
図10(a)に示したように、増風筒部41Dを最も前側に配置したときには、増風筒部41Dの先端開口41Daは送風管30の先端開口33aより前側にあり、増風筒部41Dの後端開口は送風管30の先端開口33aより後側にある。送風管30の先端開口33aから空気を噴出させると、増風筒部41D内は送風管30の先端開口33aから噴出する空気が通過することで負圧となり、増風筒部41D内には基端の吸気口41Dbから外気が導入される。増風筒部41Dの先端開口41Daから噴出する空気は、送風管30の先端開口33aから噴出した空気に吸気口41Dbから導入した外気が加わり、送風管30の先端開口33aから噴出する空気より風量が増加する。
【0034】
これに対し、
図10(b)に示したように、増風筒部41Dを最も後側に配置したときには、増風筒部41Dの先端開口41Daは送風管30の先端開口33aと軸線方向で同じ位置となる。送風管30の先端開口33aから空気を噴出させても、増風筒部41C内は送風管30から噴出する空気がほとんど通過せずに負圧とならず、増風筒部41D内には基端の吸気口41Dbから外気が導入されない。これにより、送風管30の先端開口33aから風速の速い空気を噴出させることができる。このように、係合部47DのC字形部47Daを送風管30の先端部に軸線方向に沿って位置調節することで、増風筒部41Dを送風管30に対して位置調節可能とし、風量を風速とを変えた空気を噴出させることが可能となった。
【0035】
次に、第6実施形態のエジェクタについて説明する。
図11に示したエジェクタ40Eは、増風筒部41A内に設けた4つの係合板部48Eを用いて送風管30の先端部の外周面に軸線方向に沿って位置調節可能に支持させたものである。増風筒部41Eを支持する4つ(複数)の係合板部48Eは、増風筒部41Eの軸線方向の略中間部より少し後側にて、増風筒部41Eの周方向に等間隔に設けられている。係合板部48Eは軸線方向及び半径方向に延びる板形状をしている。また、送風管30の外周面には軸線方向に延びる4つの凹溝33fが周方向に等間隔に設けられている。各係合板部48Eの先端部は送風管30の各凹溝33fに軸線方向に沿って摺動自在に係合し、増風筒部41Eは送風管30の先端部に軸線方向に沿って位置調節可能に支持される。このようにしたときにも、上述した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、送風管30の先端部の外周面に増風筒部41Eに向けて延びる係合板部を設け、増風筒部41Eの内周面に係合板部の先端部が摺動自在に係合する軸線方向に延びる凹溝を設け、送風管30の係合板部に沿って増風筒部41Eを軸線方向に位置調節可能に支持したものであってもよい。
【0036】
次に、第7実施形態のエジェクタについて説明する。
図12に示した第7実施形態のエジェクタ40Fは、増風筒部41Fの周壁の下部(一部)を他の部分より送風管30の先端部の周壁に近接させ、増風筒部41Fの左右の周壁を上部より送風管30の先端部の周壁から離間させた。また、このエジェクタ40Fは上述した第5実施形態と同様に、送風管30の先端部に軸線方向に沿って位置調節可能となっている。
【0037】
このようにしたときには、増風筒部41Fの下部からは、吸気口41Fbから導入される空気が少ないことから、風圧の高い空気を噴出させることができ、下部以外からは吸気口41Fbから導入される空気が多いことから、風量を多くした空気を噴出することができる。このようにしたことで、増風筒部41Fの下部から噴出する風速の速い空気により地面に張り付いた落葉を吹き飛ばすことができ、増風筒部41Fの他の部分から噴出する風量の多い空気により広範囲の落葉を吹き飛ばすことができる。この構成及び作用効果以外については、上述した各実施形態と同様である。第7実施形態のエジェクタ40Fは、第5実施形態の係合部47Dと同様の構造により送風管30の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に取り付けたが、本発明はこれに限られるものでなく、他の実施形態の係合条片等により送風管30の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に取り付けてもよい。
【0038】
次に、第8実施形態のエジェクタについて説明する。
図13に示した第8実施形態のエジェクタ40Gは、増風筒部41Gに可撓性の板材を用い、増風筒部41Gを送風管30の先端部の外周面を通風可能に覆うように湾曲させて周方向の両端部を連結して筒形状にしたものである。このエジェクタ40Gでは、増風筒部41Gの、周方向の両端部の連結位置を変えることにより筒の径を調節可能とした。また、このエジェクタ40Gは上述した第5実施形態と同様に、送風管30の先端部に軸線方向に沿って位置調節可能となっている。
【0039】
このように、増風筒部41Gの径を調節可能としたことで、増風筒部41から風量と風速とを変えた空気を噴出させることができる。この構成及び作用効果以外については、上述した各実施形態と同様である。第8実施形態のエジェクタ40Gは、第5実施形態の係合部47Dと同様の構造により送風管30の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に取り付けたが、本発明はこれに限られるものでなく、他の実施形態の係合条片等により送風管30の先端部に軸線方向に沿って摺動自在に取り付けてもよい。
【0040】
上記の実施形態においては、エジェクタは背負式ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けたもので説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、手持ち式ブロワ装置の送風管の先端部に取り付けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…ブロワ装置(背負式ブロワ装置)、30…送風管、33b…ガイド溝、36…延長管、40〜40G…エジェクタ、41〜41G…増風筒部、44,44A,44B…係合条片、45B…係合筒部、47…係合部、47Da…C字形部。