(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137928
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/48 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
B23Q1/48 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-89528(P2013-89528)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-213389(P2014-213389A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 睦
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−509307(JP,A)
【文献】
特開2012−228740(JP,A)
【文献】
特開2010−264568(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0008441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/48
B24B 41/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の本体の上部に水平スライド移動可能に支持されたスライドテーブルと、前記スライドテーブル上で、該スライドテーブルの水平スライド移動方向と直交する方向に延びる垂直軸周りで回転割出可能に設けられた回転テーブルと、を備え、前記スライドテーブル内に、前記回転テーブルを回転させるモータを設けた工作機械であって、
前記本体に、前記スライドテーブルの下部を収容して前記モータが突出する収容空間を形成する一方、
前記本体上に、前記収容空間の外側で互いに対向して配置されて、前記スライドテーブルを前記水平スライド移動可能に支持する一対のガイドレールを備え、
前記モータを、前記水平スライド移動方向で前記垂直軸を中心とした前後の点対称位置に一対配置したことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記一対のガイドレール間で前記収容空間内に、前記スライドテーブルを水平スライド移動させるボールねじを、前記水平スライド移動方向に沿って配置したことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の本体に水平スライド移動可能に支持されたスライドテーブルと、スライドテーブル上に、該スライドテーブルの水平スライド移動方向と直交する方向に延びる垂直軸周りで回転割出可能に設けられた回転テーブルと、を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、被加工物を保持して回転させる回転テーブルと、上部に該回転テーブルを回転自在に支持するスライドテーブルと、前記被加工物を加工する工具を保持する工具保持体とが、直交する3方向に相対移動可能に設けられた横形マシニングセンタが開示されている。特許文献1の横形マシニングセンタでは、床面に固定したベッドが平面視T字状をなしており、このベッド上に、直交する2方向に沿って、前記工具保持体を水平スライド移動可能に支持する第1ガイドレールと、前記スライドテーブルを水平スライド移動可能に支持する第2ガイドレールとを設けている。そして、このスライドテーブルは、べッドの上方で、前記第2ガイドレール上を水平スライド移動すると共に、スライドテーブル内には、回転テーブルに回転駆動力を入力可能で外周に軸方向に沿って等間隔にローラカムギヤを複数配置させた入力軸が設けられている。加えて回転テーブルの回転軸には、該回転軸の周方向に沿って等間隔にカムフォロアが複数配置されて、前記ローラカムギヤをカムフォロアと噛み合わせて、前記回転駆動力を回転テーブルに伝達させることで、回転テーブルが回転可能となっている。この他にも、スライドテーブル内に、ウォームギヤを設けた入力軸が設けられて、このウォームギヤを、回転テーブルの回転軸の外周部に設けたギヤと噛み合わせて、該入力軸の回転駆動力を回転テーブルに伝達させることがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−311565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の横形マシニングセンタに代表される工作機械では、スライドテーブルを、ベッド上で水平スライド移動可能に支持するためには、スライドテーブルを、ベッドの上方で、第2ガイドレール上を水平スライド移動可能に設ける必要があった。このため、床面から該スライドテーブルに支持された回転テーブルの上面までの高さ寸法が、ベッドの高さ寸法や第2ガイドレールの高さ寸法に、スライドテーブルの高さ寸法を加算して決められることになると、工作機械の高さ寸法が増加することになりかねず、その結果、工作機械が大型化することが懸念されていた。
【0005】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、大型化を抑制可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る工作機械は、工作機械の本体の上部に水平スライド移動可能に支持されたスライドテーブルと、前記スライドテーブル上で、該スライドテーブルの水平スライド移動方向と直交する方向に延びる垂直軸周りで回転割出可能に設けられた回転テーブルと、を備え、前記スライドテーブル内に、前記回転テーブルを回転させるモータを設けた工作機械であって、前記本体に、前記スライドテーブルの下部を収容して前記モータが突出する収容空間を形成
する一方、前記本体上に、前記収容空間の外側で互いに対向して配置されて、前記スライドテーブルを前記水平スライド移動可能に支持する一対のガイドレールを備え、前記モータを、前記水平スライド移動方向で前記垂直軸を中心とした前後の点対称位置に一対配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記一対のガイドレール間で前記収容空間内に、前記スライドテーブルを水平スライド移動させるボールねじを、前記水平スライド移動方向に沿って配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る工作機械によれば、スライドテーブルを、工作機械の本体の上方に配置して該本体に対して水平スライド移動させる場合と比べると、本体と、スライドテーブル上に設けられた回転テーブルの上面との間の寸法を短縮できる。これに伴って、工作機械の小型化が可能になる。
また、各モータの回転駆動トルクが比較的小さい場合であっても、このモータを一対配置することで、大きな回転駆動トルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1で回転テーブルを有するスライドテーブルを備えたマシニングセンタの概略部分正面断面図である。
【
図2】スライドテーブルの内部構造を示す同スライドテーブルの概略側面図である。
【
図3】実施形態2のマシニングセンタの概略部分正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
図1には、回転テーブル3を有するスライドテーブル2を備えたマシニングセンタ1を示した。マシニングセンタ1は、床上に設置されたベッド4を備えている。このベッド4には、スライドテーブル2の収容空間6が形成されている。この収容空間6は、上側(
図1の上側)をベッド4の上面に開口させた上で、前側(
図1の手前側)をベッド4の前面(同手前側)に開口させ、後側(
図1の奥側)をベッド4の後面(同奥側)に開口させた断面が略U字形で凹状の空間とされている。さらにベッド4の上面で、収容空間6の外側に当たる左端部及び右端部に、ベッド4の前後方向(
図1の手前奥方向)に延びるガイドレール7,7が、ベッド4の左右方向(
図1の左右方向)で対向して平行に並設されている。なお、マシニングセンタ1は本発明の工作機械の一例であり、ベッド4は本発明の工作機械の本体の一例である。
【0012】
また
図1及び
図2に示すようにスライドテーブル2には、該スライドテーブル2の前後方向の全長に亘りスライドテーブル2の中央部分を下側へ突出させた突出部10が形成されている。
図1に示すように、スライドテーブル2の下面で、突出部10の外側に当たる左端部及び右端部には、該スライドテーブル2の前後方向(
図1の手前奥方向)に亘って延びるスライド溝11が形成されたガイドブロック12,13がそれぞれ固定されている。
図1に示すように、各スライド溝11は各ガイドレール7に摺動自在に嵌まるようになっている。各スライド溝11が各ガイドレール7に嵌められた状態では、スライドテーブル2の突出部10は収容空間6に収容される。
【0013】
さらに収容空間6内で、スライドテーブル2の突出部10の外側に当たる左側領域には、ボールねじ15が、ベッド4の前後方向に延びて回転可能に配置され、前記突出部10の外側に当たる右側領域には、ボールねじ16が、ベッド4の前後方向に延びて回転可能に配置されている。そしてスライドテーブル2の下面で突出部10とガイドブロック12との間には、収容空間6に収容されてボールねじ15と螺合するボールねじナット部17が突設されている。加えてスライドテーブル2の下面で突出部10とガイドブロック13との間には、収容空間6に収容されてボールねじ16と螺合するボールねじナット部18が突設されている。本実施形態では、モータ(図示せず。)によって両ボールねじ15,16を回転させることで、スライドテーブル2の両ボールねじナット部17,18が、収容空間6内で各ボールねじ15,16の軸方向(ベッド4の前後方向)に水平スライド移動する。これと共に、突出部10も収容空間6内で前記前後方向に水平スライド移動する。すると、スライドテーブル2の各スライド溝11が各ガイドレール7に沿って摺動する結果、スライドテーブル2は、ベッド4の前後方向へ水平スライド移動する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、スライドテーブル2の上面には、回転テーブル3が備えられている。この回転テーブル3の上面には、加工対象となるワークが着脱自在に固定される。
図2に示すように回転テーブル3は、スライドテーブル2の突出部10内において該突出部10の上下方向で二段配置された軸受20,21によって回転可能に支持されている。そしてこの回転テーブル3は、スライドテーブル2の水平スライド方向(
図1の手前奥方向)と直交する垂直軸22を中心に360度回転して回転割出可能とされている。さらに突出部10内において、軸受20,21の間で回転テーブル3には、ギヤ部23が、回転テーブル3と同軸で一体回転可能に設けられている。
図2に示すように突出部10内でギヤ部23の前後(図
2の左右)の両側には、上側の出力軸にギヤ25を、下側の入力軸にプーリ26を備えた一対の減速機24,24が、垂直軸22を中心として前後対称に配置されている。加えてギヤ25,25は、ギヤ部23に噛合されている。各減速機24は、周知の遊星歯車減速機構を内設している。
【0015】
加えて
図2に示すように、突出部10内において一対のモータ30,30が、該突出部10の前後方向で減速機24,24の外側に垂直軸22を中心として点対称となるように配置されている。各モータ30は、モータ軸を下向きにして配置されており、各モータ軸にプーリ31を備えている。そして各プーリ31と、これに隣接する各減速機24のプーリ26との間に、ベルト32が張設されている。各モータ30を突出部10内に配置すると、
図1に示すように突出部10を収容空間6に収容した状態では、各モータ30が収容空間6に突出した状態になる。
【0016】
本実施形態のマシニングセンタ1では、図示しないNC装置によって、両モータ30,30のモータ軸を回転させると、各モータ30の回転駆動トルクが、ベルト32や減速機24を介して回転テーブル3のギヤ部23に伝達される。このようにすることで、回転テーブル3を回転駆動させることが可能になる。その際には、各モータ30の回転駆動トルクが比較的小さい場合であっても、モータ30を、垂直軸22を中心として突出部10の前後方向で点対称となるように一対配置したことで、大きな回転駆動トルクを得ることができるという利点がある。
【0017】
このマシニングセンタ1では、回転テーブル3を垂直軸22周りで回転駆動させることや、スライドテーブル
2をベット4の前後方向で水平スライド移動させることにより、回転テーブル3の上面に固定されたワークを所望の加工位置に位置決めし、当該ワークに対して加工を行う。本実施形態では
図1に示したように、ベッド4に、突出部10や両ボールねじナット部17,18を前記前後方向に水平スライド移動可能に収容する収容空間6を形成した。このような場合には、ベッド4に収容空間6を形成せずに、突出部10や両ボールねじナット部17,18を
ベッド4の上方に配置させてスライドテーブル2を前記水平スライド移動させる場合と比べると、ベッド4の上面と、回転テーブル3の上面との間の寸法を短縮できる。これに伴って、マシニングセンタ1の高さ寸法を短縮できるため、当該マシニングセンタ1の小型化が可能になる。よって、天井高さの低い建物においても、当該マシニングセンタ1を配置することが可能になる。さらには、スライドテーブル2の突出部10及び両ボールねじナット部17,18を、該スライドテーブル2の下方に位置するベッド4の収容空間6に収容可能として、従来よりもスライドテーブル2の重心の位置を低くすると、スライドテーブル2に力が加わった場合でも、該スライドテーブル2の横揺れ(振動)を抑えることができる。
【0018】
<実施形態1の効果>
本実施形態のマシニングセンタ1では、スライドテーブル
2を、
ベッド4の上方に配置して各ガイドレール7に沿って
ベッド4の前後方向に水平スライド移動させる場合と比べると、
ベッドの上面と、回転テーブル3の上面との間の寸法を短縮できる。これに伴って、マシニングセンタ1の小型化が可能になる。
【0019】
また、回転テーブル3を回転駆動させる各モータ30の回転駆動トルクが比較的小さい場合であっても、このモータ30を、垂直軸22を中心として突出部10の前後方向で点対称となるように一対配置したことで、大きな回転駆動トルクを得ることができる。
【0020】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を
図3を参照しつつ説明する。ここでは実施形態1と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。
図3に示す
マシニングセンタ1Aでは、スライドテーブル2Aの突出部10A内に、ダイレクトドライブモータ40(以下「モータ40」という。)が縦向きに配置されている。このモータ40は、ステータ41とロータ43とを備えている。ステータ41は略円筒状に形成されて、ステータ41にはコイルが巻回されている。このステータ41の内部には、ステータ41の中心軸の軸方向(
図3の上下方向)にロータ43が配置されている。このロータ43は回転テーブル3に直結された回転軸42に固定されて、ロータ43の外周には、ステータ41のコイルと対向するように磁石が配置されている。そして、ロータ43と該ロータ43が固定されている回転軸42とに直結された回転テーブル3は、軸受20,21によってスライドテーブル2Aに回転可能に支持される。本実施形態では、ステータ41のコイルへの通電に伴ってロータ43が回転すると、ロータ43が、該ロータ43に回転軸42を介して直結された回転テーブル3を直接回転駆動させる。なお、マシニングセンタ1Aは本発明の工作機械の一例である。
【0021】
<実施形態2の効果> 本実施形態のマシニングセンタ1Aでは、モータ40を回転テーブル3に直結したことで、モータ40の回転駆動トルクを、減速機構を介して回転テーブル3に伝達させる必要がない。このため、モータ40を収容するスライドテーブル2A内に減速機構の配置空間を設ける必要がない。よって、スライドテーブル2A内に減速機構の配置空間を設ける場合と比較して、スライドテーブル2Aを小型化できる結果、
マシニングセンタ1Aをより小型化することが可能になる。
【0022】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。上述した実施形態1では、一対のモータ30,30によって、回転テーブル3を回転駆動させる例を示したが、これに限らず、突出部10内に一つのモータを配置して、このモータの回転駆動トルクを、例えばベルト伝達機構や減速機を介して回転テーブル3のギヤ部23に伝達させることで、回転テーブル3を回転駆動させてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1(1A)・・
マシニングセンタ、2(2A)・・スライドテーブル、3・・回転テーブル、4・・ベッド、6・・収容空間、7・・ガイドレール、22・・垂直軸、30・・モータ、40・・ダイレクトドライブモータ。