(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機、印刷機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置においては、長時間の連続印刷を行えるように、液体を収容する液体収容容器としての液体カートリッジを装置本体に対して交換可能とし、液体カートリッジに収容された液体に関する情報(残量、種類など)を記憶する接触式の情報記憶手段(情報記憶素子:ICチップ)を備えるものが知られている。
【0004】
このような接触式の情報記憶手段を使用する場合、液体カートリッジを装置本体側に装着することで、装置本体側の読取り部が液体カートリッジの情報記憶手段に接触することで、液体カートリッジと装置本体側との情報交換が可能になる。
【0005】
そのため、液体カートリッジを装置本体に装着したときに、液体カートリッジの情報記憶手段と装置本体側の読取り部とが確実に接触する必要がある。
【0006】
そこで、従来、例えば、液体カートリッジ側では情報記憶手段を移動可能に保持して、装置本体側の突起部が情報記憶手段を有する基板の穴部などに挿入されることで、情報記憶手段と装置本体側の読取り部との位置決めが行われるようにしたものが知られている(特許文献1、その他特許文献2、3も参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、画像形成装置としての例えば大型連帳機などの商業用印刷機においては、高い生産性と低コスト化の両立することが要求される。この場合、液体カートリッジは、長時間の連続印刷を可能とするため、大容量化する必要がある。一方、印刷機のダウンタイムの短縮による低コスト化を可能とするため、液体カートリッジの交換作業を容易に行うことができるようにする必要がある。
【0009】
このように大容量の液体カートリッジの交換作業を容易にするために、液体カートリッジと印刷機本体側のカートリッジ装填部との間のクリアランスを大きくすることが行われる。その結果、上述したように、液体カートリッジ側の情報記憶手段と装置本体(印刷機本体)側の読取り部との相対位置ずれが大きくなり、読取り不良(接触不良)が発生し易くなるという課題がある。
【0010】
また、大容量の液体カートリッジでは、輸送時の衝撃や振動に対する慣性力が大きく、印刷機本体側に液体を供給する液体供給口(液体導出口ともいう。)のシールを確実にする必要がある一方、液体カートリッジの交換作業時には液体供給口のシールを容易に除去できるようにして、交換作業を容易にし、ダウンタイム時間の短縮を図る必要がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、液体収容容器のシール性を確保しつつ、交換作業の作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体収容容器は、
画像形成装置本体に供給する液体を収容する液体収容容器であって、
画像形成装置本体に供給する液体を収容する液体収容容器であって、
前記収容された液体を外部に供給する液体供給口を有する液体供給口部と、
前記液体供給口部に装着されるキャップ部材と、を備え、
前記キャップ部材は、
前記液体供給口部の前記液体供給口を封じる密封部と、
前記液体に関する情報を格納する情報記憶手段を保持する保持部と、を有し、
前記密封部と前記保持部とは分離可能に連結され、
前記キャップ部材を、前記密封部と前記保持部とが連結された状態で前記液体供給口部に装着したときには、前記保持部は、前記密封部を介して前記液体供給口部に固定状態になり、
前記密封部を前記保持部から分離したときに、前記保持部が前記液体供給口部に対して移動可能になり、
前記保持部が移動可能になった状態で、移動可能範囲を規制する規制手段が設けられ、
前記規制手段は、前記保持部に所定以上の力が加わると、一方向にのみ回転を許容する
構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体収容容器のシール性を確保しつつ、交換作業の作業性を向上することができ、さらに、密封部を保持部から分離したときに、誤操作等で意図しない応力が作用して、密封部が緩むことを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体収容容器としての液体カートリッジについて
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同液体カートリッジの外観斜視説明図、
図2は同液体カートリッジの液体供給口部分のキャップ部材装着前の斜視説明図、
図3は同液体供給口部分の分解斜視説明図である。
【0016】
この液体カートリッジ1は、内部に液体を収容する液体収容部10を有し、液体収容部10には外部に液体を供給する液体供給口20を有する液体供給口部30が設けられ、液体供給口部30を覆うキャップ部材40を備えている。
【0017】
液体供給口部30は、液体収容部10に固定した口部材31と、口部材31の開口部31a内に配置され、液体供給口20が設けられた回転規制部材32と、液体収容部10の口部材31の開口部31a内に回転規制部材32を固定する固定部材33とを有し、固定部材33にキャップ部材40を装着している。
【0018】
なお、回転規制部材32に設けられた液体供給口20は、液体収容部10の内部に収納されている液体を収容する液体収容部材にチューブなどを介して通じている。
【0019】
ここでは、液体供給口部30は、口部材31、回転規制部材32及び固定部材33の別部材を組み合わせて構成しているが、これらの口部材31、回転規制部材32及び固定部材33を一体成型して一部品とすることもできるし、更に液体収容部10と一体成型することもできる。
【0020】
次に、キャップ部材40の詳細について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は同キャップ部材の初期状態の斜視説明図、
図5は同じく分離状態の斜視説明図である。
【0021】
キャップ部材40は、液体供給口部30の液体供給口20を封じる密封部41と、収容した液体に関する情報を格納する情報記憶手段であるICチップ43を保持する保持部42とを有する。
【0022】
ここで、密封部41と保持部42とは、密封部41の外周面と保持部42の内周面との間に形成した破断可能な複数のブリッジ部44によって分離可能に連結されている。つまり、密封部41を保持部42に対して回転させることで、ブリッジ部44が破断されて、密封部41を保持部42から分離することができる。
【0023】
密封部41は、液体供給口20に挿入されて液体供給口20を閉じる円柱状の栓部51と、栓部51を回転させる液体供給方向と直交する方向に延びるレバー部52を有している。
【0024】
保持部42は、外周面の対向する位置であって、液体カートリッジ1を装置本体(印刷機本体)に装填するときの装填方向に沿って、装置本体側の後述するガイド部材と接触するガイド受け面42a、42bが形成されている。
【0025】
このキャップ部材40は、液体カートリッジ1を輸送するときには、液体供給口部30に装着されることで、密封部41の栓部51が液体供給口20内に挿入されて液体供給口20を閉じている。このとき、密封部41が液体供給口部30に固定されることで、保持部42は密封部41を介して液体供給口部30に固定された状態(固定状態)になる。
【0026】
そして、液体カートリッジ1を印刷機本体に装填して使用するときには、レバー部52を回転させて密封部41を回転させることで、密封部41と保持部42との間のブリッジ部44が破断されて、密封部41を保持部42から分離して取り外し、液体供給口20を閉じている栓部51を取り除き、液体供給口20を開口することができる。
【0027】
次に、キャップ部材と液体供給口部の詳細について
図6ないし
図8を参照して説明する。
図6はキャップ部材を液体供給口部に装着する前の状態の一部破断斜視説明図、
図7は同じくキャップ部材を液体供給口部に装着した状態の一部破断斜視説明図、
図8は密封部の正面説明図である。
【0028】
液体供給口部30の回転規制部材32には、前述したように液体供給口20が設けられ、液体供給口20にキャップ部材40の密封部41の栓部51が嵌め込まれることで閉じられた状態となり、輸送時の液体漏れが防止される。
【0029】
このとき、輸送時の振動により密封部41の栓部51が緩むことを防止するため、栓部51が液体供給口20に圧力を加えて押し込まれるよう栓部51の直径が定められていることが好ましい。
【0030】
また、回転規制部材32には、液体供給口20の外周部に溝部60が設けられ、この溝部60の周方向には2箇所に回転規制面61が設けられ、溝部60の底面(突き当て面)に傾斜面(テーパ面)62が設けられている。
【0031】
一方、キャップ部材40の密封部41には、回転規制部材32の栓部51の外周側溝部60に嵌め込む嵌め込み部70が形成され、嵌め込み部70には回転規制面61に当って接触する突き当て面71が形成されるとともに、テーパ面62に当って接触するテーパ面72が形成されている。
【0032】
また、回転規制部材32には凹部63が形成され、キャップ部材40の保持部42には凹部63に嵌め込まれる爪部(スナップフィット)73が形成されている。これらの凹部63と爪部73によって密封部41が保持部42から分離された状態における保持部42の回転可能範囲(移動可能範囲)を規制する規制手段を構成している。
【0033】
このように構成したので、キャップ部材40を液体供給口部30に装着するときには、密封部41の栓部51を液体供給口20に挿入して押し込むことで、密封部41の嵌め合い部70が回転規制部材32の溝部60に嵌め込まれる。そして、テーパ面62とテーパ面72が接触した状態で密封部41を回転させることで、回転規制面61に突き当て面71が突き当たる。これにより。密封部41を含むキャップ部材40の位置が一意に位置決めされて、キャップ部材40が液体供給口部30に取り付けられる。
【0034】
このとき、前述したように、保持部42に設けられた爪部73が回転規制部材32に設けられた凹部63に一定のクリアランスをもって緩やかに嵌め込まれるが、保持部42は密封部41とブリッジ部44を介して連結されており、回転しない状態(液体供給口部30に固定された状態)となる。
【0035】
次に、液体収容容器交換時の動作について
図9ないし
図11を参照して説明する。
図9は同動作説明に供するキャップ部材の平面説明図、
図10は同じく斜視説明図、
図11は同じく断面説明図である。
【0036】
液体カートリッジ1を印刷機本体に装填する前準備として、液体供給口20を開封する必要がある。
【0037】
そこで、キャップ部材40の密封部41のレバー部52に対し、
図9に示す矢印F方向に力を加えることで、密封部41が回転して、ブリッジ部44が破断される。これと同時に、密封部41のテーパ面72が回転規制部材32のテーパ面62に沿って移動し、
図10に示すように、密封部41には矢印Zで示す方向(密封部41を取り外す方向)に力が作用する。
【0038】
これにより、圧力を加えて押し込まれることでシール性を確保していた栓部51は、レバー部52を回転させるだけで容易に液体供給口20から抜き出されて、液体供給口20が開栓される。
【0039】
このようにして、簡単に開栓作業を行うことができる。
【0040】
ここで、保持部42に所定以上の力が加わると、規制手段を構成している爪部73と凹部63は、一方向、即ち密閉部41が緩む方向にのみ回転を許容する状態になる。
【0041】
これにより、作業者が誤って保持部42を持って開栓作業を行ってしまった場合でも、爪部73は凹部63から外れて空転するため、部材の破損を防ぐことができる。また、回転規制部材32及び固定部材33が緩む方向に力が加わることを回避できる。
【0042】
さらに、爪部73の高さ及び凹部63の深さを適切に調整することで、空転後に爪部73が凹部63に嵌め込まれたときにクリック感(カチっという感覚)を持たせることができ、空転後に適正位置に戻しやすくすることができる。
【0043】
次に、キャップ部材の密封部を除去した後の保持部の動作について
図12を参照して説明する。
図12は同説明に供する一部破断斜視説明図である。
【0044】
キャップ部材40の密封部41を保持部42から除去した後は、保持部42は、
図11に矢印Dで示す方向に回転可能になる。
【0045】
したがって、保持部42に保持されたICチップ43も保持部42とともに回転方向で移動可能となり、印刷機本体の読取り部との間の位置ずれが生じても、ずれ分が吸収されて、確実に読取り部との電気的接触が行われる。
【0046】
このとき、保持部42の回転可能範囲は、爪部73が外れる力を適切に設定(爪の大きさを最適化するなど)することで、保持部42の爪部73と回転規制部材32の凹部63のクリアランス分に規制される。
【0047】
これにより、保持部42が印刷機本体に装填不可能な状態まで回転しまうことが防止される。
【0048】
次に、液体カートリッジ1の印刷機本体(画像形成装置本体)への装填動作について
図13を参照して説明する。
図13は同装填動作の説明に供する斜視説明図である。
【0049】
印刷機本体側には、液体カートリッジ1の装填を案内するガイド部材200が配置されている。
【0050】
ここで、液体カートリッジ1を矢印Y方向に移動させて印刷機本体に装填するとき、ガイド部材200が保持部42のガイド受け面42a、42bに接触する。このとき、液体カートリッジ1が印刷機本体側のガイド部材200に対して理想的な位置になくとも、保持部42が矢印D方向に回転することができるので、位置ずれが吸収されて、スムーズに矢印Y方向への装填を行うことができ、作業性が向上する。
【0051】
以上のようにして液体カートリッジの輸送時におけるシール性を確保しつつ、簡単な作業でシールを開封し、情報記憶手段の位置ずれも吸収されるので、容易に交換作業を行うことができ、交換作業の作業性が向上し、ダウンタイムの短縮も図れる。
【0052】
次に、本発明の第2実施形態に係る液体カートリッジについて
図14ないし
図16を参照して説明する。
図14は同液体カートリッジの平面説明図、
図15は
図14のB−B線に沿う断面斜視説明図、
図16は
図14のB−B線に沿う断面説明図である。
【0053】
本実施形態では、キャップ部材40を固定部材33に装着した状態で、
図16に示す矢印H方向に、キャップ部材40が持ち上げられたときに、キャップ部材40が簡単に外れないようにしている。
【0054】
つまり、保持部42の一部に、4個の弾性変形可能な腕部81を形成し、この腕部81の内周面側に爪部82を形成している。一方、固定部材33の外周面側に爪部82が引っ掛かる引っ掛け部83を形成している。
【0055】
ここで、保持部42の腕部81は、切欠部84の周面側を基端として、自由端が固定部材33の引っ掛け部83を外側から抱え込むように形成している。
【0056】
これにより、保持部42の腕部81の爪部82と固定部材33の引っ掛け部83とが確実に引っ掛かり、保持部42を矢印H方向に引っ張ったときでも、腕部81の爪部82が固定部材33の引っ掛け部83から外れにくくなる。
【0057】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0058】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0059】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0060】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。