特許第6137947号(P6137947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137947
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】双方向絶縁型DC−DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   H02M3/155 Q
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-120232(P2013-120232)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-239587(P2014-239587A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】坂本 守
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−234541(JP,A)
【文献】 特開2001−078459(JP,A)
【文献】 特開2013−081349(JP,A)
【文献】 米国特許第06294900(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁用の第1のキャパシタと第1のインダクタとが直列に接続された第1の共振回路と、
絶縁用の第2のキャパシタと第2のインダクタとが直列に接続された第2の共振回路と、
第1のハイサイドスイッチと第1のローサイドスイッチとを含み、前記第1のハイサイドスイッチと前記第1のローサイドスイッチとの間で前記第1の共振回路の一端と接続される第1の駆動回路と、
第2のハイサイドスイッチと第2のローサイドスイッチとを含み、前記第2のハイサイドスイッチと前記第2のローサイドスイッチとの間で前記第2の共振回路の一端と接続される第2の駆動回路と、
第3のハイサイドスイッチと第3のローサイドスイッチとを含み、前記第3のハイサイドスイッチと前記第3のローサイドスイッチとの間で前記第1の共振回路の他端と接続される第3の駆動回路と、
第4のハイサイドスイッチと第4のローサイドスイッチとを含み、前記第4のハイサイドスイッチと前記第4のローサイドスイッチとの間で前記第2の共振回路の他端と接続される第4の駆動回路と、
前記第1乃至第4の駆動回路のスイッチングを制御する制御回路と、
を有し、
前記第1及び第2の駆動回路は互いに接続されており、
前記第3及び第4の駆動回路は互いに接続されており、
前記制御回路が、
前記第1乃至第4のハイサイドスイッチがオンである期間を、制御目標に従って設定し、
前記第1及び第2の駆動回路側の第1の電圧と前記第3及び第4の駆動回路側の第2の電圧とのうち高い方の電圧に係る2つの駆動回路において、ハイサイドスイッチがオフである期間に応じて、ローサイドスイッチがオンである期間を設定し、
前記第1の電圧と前記第2の電圧のうち高い方の電圧に係る2つの駆動回路間では、ハイサイドスイッチがオンである期間をスイッチング周期の半周期だけずらし、
前記第1の電圧と前記第2の電圧のうち低い方の電圧に係る2つの駆動回路において、ハイサイドスイッチがオンである期間とローサイドスイッチがオンである期間とが同じ長さであり且つ前記スイッチング周期の半周期だけずらす
ように制御する双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路が、
前記第1の電圧と前記第2の電圧との差の絶対値が所定値以下である場合には、
前記第1乃至第4のハイサイドスイッチがオンである期間を、前記第1及び第2の共振回路による共振の共振周波数に対応する周期の半分を基に設定し、
前記第1乃至第4の駆動回路におけるハイサイドスイッチがオンである期間とローサイドスイッチがオンである期間とを前記スイッチング周期の半周期だけずらす
ように制御する請求項1記載の双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御回路が、
前記第1の電圧と前記第2の電圧のうち低い方の電圧と高い方の電圧との比を、前記スイッチング周期に対するハイサイドスイッチがオンである期間の割合で制御する
請求項1又は2記載の双方向絶縁型DC−DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つ記載の双方向絶縁型DC−DCコンバータと、
前記双方向絶縁型DC−DCコンバータにおける前記第1及び第2の駆動回路側に接続された蓄電池と、
を含む装置を、直列又は並列に複数接続した電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向絶縁型DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動バイク、電気自動車等に使用される電池パックの容量を大きくすれば航続距離が伸びるが、容量を大きくするにつれ電池パックも重くなる。このため、電池パックを車両へ取りつけたり、充電のために取り外すことが困難になってくる。また、電池パック自体の価格も高くなってしまう。
【0003】
そのため、標準的な電池パックを並列に複数接続することで、電池パック全体の容量を増やすことが考えられている。例えば、複数の電池パックを並列接続する場合には、充放電可能な双方向DC−DCコンバータでそれらを接続する。この双方向DC−DCコンバータは、電池を有効に使用するために、高効率であることが望まれる。また、数個以上接続する標準的電池パックそれぞれに取り付けることから、小型かつ安価であることが望ましい。
【0004】
特に、トランスを使用する絶縁電源装置では、トランスが大きいため、装置を小型化できない。また、トランスのコアによる損失が大きく効率を上げられないという問題がある。
【0005】
このためトランスの代わりにキャパシタを用いた絶縁電源装置が提案されている。しかし、片方向の電源装置は提案されているが、双方向の電源装置は提案されていない。また、キャパシタを用いた双方向絶縁電源の制御方法についても提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−282828号公報
【特許文献2】特開平2−123967号公報
【特許文献3】特開2001−78459号公報
【特許文献4】特開2011−239492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、小型な双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る双方向絶縁型DC−DCコンバータは、(A)絶縁用の第1のキャパシタと第1のインダクタとが直列に接続された第1の共振回路と、(B)絶縁用の第2のキャパシタと第2のインダクタとが直列に接続された第2の共振回路と、(C)第1のハイサイドスイッチと第1のローサイドスイッチとを含み、第1のハイサイドスイッチと第1のローサイドスイッチとの間で第1の共振回路の一端と接続される第1の駆動回路と、(D)第2のハイサイドスイッチと第2のローサイドスイッチとを含み、第2のハイサイドスイッチと第2のローサイドスイッチとの間で第2の共振回路の一端と接続される第2の駆動回路と、(E)第3のハイサイドスイッチと第3のローサイドスイッチとを含み、第3のハイサイドスイッチと第3のローサイドスイッチとの間で第1の共振回路の他端と接続される第3の駆動回路と、(F)第4のハイサイドスイッチと第4のローサイドスイッチとを含み、第4のハイサイドスイッチと第4のローサイドスイッチとの間で第2の共振回路の他端と接続される第4の駆動回路と、(G)第1乃至第4の駆動回路のスイッチングを制御する制御回路とを有する。そして、第1及び第2の駆動回路が接続されており、第3及び第4の駆動回路が接続されている。
【0009】
さらに、上で述べた制御回路が、(g1)第1乃至第4のハイサイドスイッチがオンである期間を、制御目標に基づき設定し、(g2)第1及び第2の駆動回路側の第1の電圧と第3及び第4の駆動回路側の第2の電圧とのうち高い方の電圧に係る2つの駆動回路において、ハイサイドスイッチがオフである期間に応じて、ローサイドスイッチがオンである期間を設定し、(g3)第1の電圧と第2の電圧のうち高い方の電圧に係る2つの駆動回路間では、ハイサイドスイッチがオンである期間をスイッチング周期の半周期だけずらし、(g4)第1の電圧と第2の電圧のうち低い方の電圧に係る2つの駆動回路において、ハイサイドスイッチがオンである期間とローサイドスイッチがオンである期間とが同じ長さであり且つスイッチング周期の半周期だけずらすように制御する。
【0010】
このように2つのLC共振回路の両端にフルブリッジの駆動回路を配置した上で、上で述べたように制御回路でスイッチングを制御することで、双方向で電力を変換できる小型の絶縁型DC−DCコンバータが得られる。なお、制御目標は、第1の電圧及び第2の電圧に基づく場合もあれば、固定のデューティー比である場合も定電流制御の場合もある。
【0011】
なお、上で述べた制御回路が、第1の電圧と第2の電圧との差の絶対値が所定値以下である場合には、(g5)第1乃至第4のハイサイドスイッチがオンである期間を、第1及び第2の共振回路による共振の共振周波数に対応する周期の半分を基に設定し、(g6)第1乃至第4の駆動回路におけるハイサイドスイッチがオンである期間とローサイドスイッチがオンである期間とをスイッチング周期の半周期だけずらすように制御するようにしても良い。第1の電圧と第2の電圧とがおおよそ同じであれば、このような制御を行うことで、簡易な動作で効率的な動作が可能になる。
【0012】
さらに、上で述べた双方向絶縁型DC−DCコンバータと、双方向絶縁型DC−DCコンバータにおける第1及び第2の駆動回路側に接続された蓄電池とを含む装置を、直列又は並列に複数接続した電源装置であっても良い。このようにすれば、標準的な蓄電池を用いて小型な電源装置を構成できる。
【0013】
以下に述べる実施の形態は一例に過ぎず、本発明の主旨に従う様々な変形が可能である。
【発明の効果】
【0014】
小型な双方向絶縁型DC−DCコンバータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態に係る双方向絶縁型DC−DCコンバータの一例を示す図である。
図2図2(a)乃至(d)は、V1>V2におけるFETの駆動信号を示す図である。
図3図3(a)乃至(d)は、V1<V2におけるFETの駆動信号を示す図である。
図4図4(a)乃至(d)は、V1とV2がほぼ同じ場合におけるFETの駆動信号を示す図である。
図5図5は、V1>V2におけるFETの駆動信号の詳細を示す図である。
図6図6は、おおよそV1=V2におけるFETの駆動信号の詳細を示す図である。
図7図7は、デューティー比とVout/Vinの関係を示す図である。
図8図8は、電圧及び電流を特定するための図である。
図9図9(a)乃至(n)は、V1>V2における各種波形を表す図である。
図10図10(a)乃至(n)は、おおよそV1=V2における各種波形を表す図である。
図11図11は、双方向絶縁型DC−DCコンバータを応用した電源装置の一例を示す図である。
図12図12は、双方向絶縁型DC−DCコンバータを応用した電源装置の一例を示す図である。
図13図13は、双方向絶縁型DC−DCコンバータを応用した電源装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態]
本実施の形態に係る双方向絶縁型DC−DCコンバータの基本回路例を図1に示す。本実施の形態に係る双方向絶縁型DC−DCコンバータは、インダクタLr1と絶縁用のキャパシタCr1とが直列に接続された第1の共振回路と、インダクタLr2と絶縁用のキャパシタCr2とが直列に接続された第2の共振回路と、インダクタLr1の一端が中点に接続された第1のフルブリッジ駆動回路と、インダクタLr2の一端が中点に接続された第2のフルブリッジ駆動回路と、キャパシタCr1の一端が中点に接続された第3のフルブリッジ駆動回路と、キャパシタCr2の一端が中点に接続された第4のフルブリッジ駆動回路と、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路と並列に接続されるキャパシタC1と、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路と並列に接続されるキャパシタC2と、第1乃至第4のフルブリッジ駆動回路を制御する制御回路100とを有する。
【0017】
一例では、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側には蓄電池が接続され、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側には充電器及び負荷が接続される。
【0018】
第1のフルブリッジ駆動回路は、ハイサイドスイッチであるFET(Q1AH)とローサイドスイッチであるFET(Q1AL)とを含む。FET(Q1AH)のドレインは、第2のフルブリッジ駆動回路におけるハイサイドスイッチとキャパシタC1の一端とに接続されている。FET(Q1AH)のソースは、FET(Q1AL)のドレインと接続されており、FET(Q1AL)のソースは接地されている。
【0019】
第2のフルブリッジ駆動回路は、ハイサイドスイッチであるFET(Q1BH)とローサイドスイッチであるFET(Q1BL)とを含む。FET(Q1BH)のドレインは、第1のフルブリッジ駆動回路におけるハイサイドスイッチとキャパシタC1の一端とに接続されている。FET(Q1BH)のソースは、FET(Q1BL)のドレインと接続されており、FET(Q1BL)のソースは接地されている。なお、キャパシタC1の他端も接地されている。
【0020】
第3のフルブリッジ駆動回路は、ハイサイドスイッチであるFET(Q2AH)とローサイドスイッチであるFET(Q2AL)とを含む。FET(Q2AH)のドレインは、第4のフルブリッジ駆動回路におけるハイサイドスイッチとキャパシタC2の一端とに接続されている。FET(Q2AH)のソースは、FET(Q2AL)のドレインと接続されており、FET(Q2AL)のソースは接地されている。
【0021】
第4のフルブリッジ駆動回路は、ハイサイドスイッチであるFET(Q2BH)とローサイドスイッチであるFET(Q2BL)とを含む。FET(Q2BH)のドレインは、第3のフルブリッジ駆動回路におけるハイサイドスイッチとキャパシタC2の一端とに接続されている。FET(Q2BH)のソースは、FET(Q2BL)のドレインと接続されており、FET(Q2BL)のソースは接地されている。なお、キャパシタC2の他端も接地されている。
【0022】
制御回路100は、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路のスイッチングを行う第1FETドライバ回路120と、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側の電圧V1を検出するV1検出回路110と、第1FETドライバ回路120とV1検出回路110とに接続されており且つ第1FETドライバ回路120のスイッチングを制御する信号を出力する第1駆動信号生成回路130と、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路のスイッチングを行う第2FETドライバ回路140と、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側の電圧V2を検出するV2検出回路150と、第2FETドライバ回路140とV2検出回路150とに接続されており且つ第2FETドライバ回路140のスイッチングを制御する信号を出力する第2駆動信号生成回路160と、第1駆動信号生成回路130と第2駆動信号生成回路160との間を絶縁しつつ接続させるためのアイソレータ170とを有する。
【0023】
第1駆動信号生成回路130と第2駆動信号生成回路160とは、アイソレータ170を介して通信を行う。より具体的には、同期信号と、V1及びV2と、第1FETドライバ回路120によって駆動されているFETのゲートがオンとなる期間に相当するデューティー比等の信号とを交換する。場合によっては、第1乃至第4のフルブリッジ駆動回路における中点(FETとFETとの接続点)に流れる電流の値、その他の電流値(例えば第1及び第2のフルブリッジ駆動回路に流れる電流)を交換する場合もある。
【0024】
アイソレータ170は、フォトカプラ、デジタルアイソレータ、アナログアイソレータなどの絶縁素子である。
【0025】
次に、図2乃至図10を用いて、制御回路100による第1乃至第4のフルブリッジ駆動回路の制御モードについて説明する。
【0026】
本実施の形態に係る双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御回路100は、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側の電圧V1が第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側の電圧V2よりも高ければ、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側から、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側へ電力を伝えるように、制御を行う。
【0027】
すなわち、図2(a)に示すように、第1のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q1AH)のゲートに対する駆動信号(VG_1A_H)がオンとなる期間に応じて、FET(Q1AL)のゲートに対する駆動信号(VG_1A_L)がオフとなり、駆動信号(VG_1A_H)がオフとなる期間に応じて、駆動信号(VG_1A_L)がオンとなる。このような制御は、非対称制御と呼ぶ。駆動信号(VG_1A_H)がオンとなる期間は、例えばV1及びV2に基づき決定されるが、その他の制御目標に応じて設定される場合もある。なお、オンとオフとの切り替え時には、貫通電流防止のためのデッドタイムが設けられているが、図2では省略されている。
【0028】
同様に、図2(b)に示すように、第2のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q1BH)のゲートに対する駆動信号(VG_1B_H)がオンとなる期間に応じて、FET(Q1BL)のゲートに対する駆動信号(VG_1B_L)がオフとなり、駆動信号(VG_1B_H)がオフとなる期間に応じて、駆動信号(VG_1B_L)がオフとなる。このように非対称制御が行われる。なお、駆動信号(VG_1B_H)がオンとなる期間は、駆動信号(VG_1A_H)がオンとなる期間と長さが同じであり、この期間からスイッチング周期の半周期ずれるようになっている。
【0029】
一方、図2(c)及び(d)に示すように、第3のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q2AH)のゲートに対する駆動信号(VG_2A_H)がオンとなる期間と、第4のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q2BH)のゲートに対する駆動信号(VG_2B_H)がオンとなる期間とは、例えばV1及びV2に基づき決定されるが、その他の制御目標に応じて設定される場合もある。また、駆動信号(VG_2A_H)がオンとなる期間と、FET(Q2AL)の駆動信号(VG_2A_L)がオンとなる期間とは同じ長さを有し、スイッチング周期の半周期ずれるようになっている。同様に、また、駆動信号(VG_2B_H)がオンとなる期間と、FET(Q2BL)の駆動信号(VG_2B_L)がオンとなる期間とは同じ長さを有し、スイッチング周期の半周期ずれるようになっている。また、駆動信号(VG_2A_H)の位相と駆動信号(VG_2B_H)の位相もスイッチング周期の半周期ずれるようになっている。このような制御を対称制御と呼ぶものとする。
【0030】
このように、高い方の電圧V1側のFETについては非対称制御を行い、低い方の電圧V2側のFETについては対称制御を行うことで、電力を伝達させる。
【0031】
一方、逆に、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側の電圧V1よりも第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側の電圧V2が高ければ、制御回路100は、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側から、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側へ電力を伝えるように、制御を行う。
【0032】
具体的に、図3(c)に示すように、第3のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q2AH)のゲートに対する駆動信号(VG_2A_H)がオンとなる期間に応じて、FET(Q2AL)のゲートに対する駆動信号(VG_2A_L)がオフとなり、駆動信号(VG_2A_H)がオフとなる期間に応じて、駆動信号(VG_2A_L)がオンとなる。すなわち、非対称制御が行われる。駆動信号(VG_2A_H)がオンとなる期間は、例えばV1及びV2に基づき決定されるが、その他の制御目標に応じて設定される場合もある。なお、オンとオフとの切り替え時には、貫通電流防止のためのデッドタイムが設けられているが、図3でも省略されている。
【0033】
同様に、図3(d)に示すように、第4のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q2BH)のゲートに対する駆動信号(VG_2B_H)がオンとなる期間に応じて、FET(Q2BL)のゲートに対する駆動信号(VG_2B_L)がオフとなり、駆動信号(VG_2B_H)がオフとなる期間に応じて、駆動信号(VG_2B_L)がオンとなる。このように非対称制御が行われる。なお、駆動信号(VG_2B_H)がオンとなる期間は、駆動信号(VG_2A_H)がオンとなる期間と長さが同じであり、この期間からスイッチング周期の半周期ずれるようになっている。
【0034】
一方、図3(a)及び(b)に示すように、第1のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q1AH)のゲートに対する駆動信号(VG_1A_H)がオンとなる期間と、第2のフルブリッジ駆動回路におけるFET(Q1BH)のゲートに対する駆動信号(VG_1B_H)がオンとなる期間とは、例えばV1及びV2に基づき決定されるが、その他の制御目標に応じて設定される場合もある。また、駆動信号(VG_1A_H)がオンとなる期間と、FET(Q1AL)の駆動信号(VG_1A_L)がオンとなる期間とは同じ長さを有し、スイッチング周期の半周期ずれるようになっている。同様に、また、駆動信号(VG_1B_H)がオンとなる期間と、FET(Q1BL)の駆動信号(VG_1B_L)がオンとなる期間とは同じ長さを有し、スイッチング周期の半周期ずれるようになっている。また、駆動信号(VG_1A_H)の位相と駆動信号(VG_1B_H)の位相もスイッチング周期の半周期ずれるようになっている。このように対称制御が行われる。
【0035】
このように、高い方の電圧V2側については非対称制御を行い、低い方の電圧V1側については対称制御を行うことで、電力を伝えるようになる。
【0036】
これに対して、電圧V1とV2がほぼ同じ(差の絶対値が数ボルト=例えばボディダイオード1−2個分程度)である場合には、デューティー比最大、すなわち共振周波数に対応する周期の半周期をオン期間に設定して、第1乃至第4のフルブリッジ駆動回路に対して対称制御を行う。
【0037】
すなわち図4(a)乃至(d)に示すように、各FETのゲートには、デューティー比最大でオンになるように駆動される。また、ハイサイドスイッチであるFETの駆動信号と、ローサイドスイッチであるFETの駆動信号とは、位相がスイッチング周期の半周期だけずれている。また、駆動信号(VG_1A_H)と駆動信号(VG_1B_H)も、位相がスイッチング周期の半周期だけずれている。同様に、駆動信号(VG_2A_H)と駆動信号(VG_2B_H)も、位相がスイッチング周期の半周期だけずれている。
【0038】
このように、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、低電圧側の電圧(又は電流)を制御するものである。
【0039】
次に、より詳細に双方向絶縁型DC−DCコンバータの動作を説明する。このため、以下のようなパラメータ値を想定する。すなわち、例えば、C1=C2=10μF、Lr1=Lr2=2.2μH、Cr1=Cr2=0.22μF、スイッチング周波数fsw=200kHz、スイッチング周期Ts(sw)=5μsとする。なお、以下のような関係が成り立つ。
【数1】
【0040】
DTは、デッドタイムであり、frは共振周波数であり、TonMaxは、オン時間の最大値であり、DutyMaxは、駆動信号の最大デューティー比を表す。
【0041】
上で述べたパラメータ値からすると、共振周波数frに対応する周期T(r)=4.37μsであり、DutyMax=43.7%となる。
【0042】
図2をより詳しく示すと、図5のようになる。図5は、V1>V2の状況を表しており、非対称制御においては例えばローサイドスイッチであるFETがオンとなる期間を短くすることで、デッドタイム(Dead Time)が設けられている。また、この例では、デューティー比がおよそ25%の状態を示しているので、スイッチング周期Tsは4つの期間に分かれているように見える。第1の期間をST_1と表し、第2の期間をST_2と表し、第3の期間をST_3と表し、第4の期間をST_4と表す。しかし、デューティー比が上昇した場合、例えば、おおよそV1=V2であれば、図6に示すように、デューティー比がDutyMaxとなり、スイッチング周期Tsのおよそ半周期でオンオフが繰り返されるようになる。
【0043】
また、図7に、スイッチング周期に対するハイサイドスイッチのオン期間の割合であるデューティー比(Duty)と、Vout/Vin(高い電圧の方がVin)との関係を表す。このように、デューティー比を変えることにより、Vout/Vinを変化させることができる。但し、降圧方向に制御されるので、降圧降圧双方向コンバータであることが分かる。なお、DutyMaxになっても、Vout/Vin=1とならないのは、FETのボディダイオードによる電圧降下、あるいは電力ラインに流れる電流により、電力ライン自体やその電力ラインに含まれる部品の抵抗成分による損失があるためである。
【0044】
なお、図8に示すように、第1の共振回路に流れる電流をI_Lr1Cr1とし、第2の共振回路に流れる電流I_Lr2Cr2とする。また、インダクタLr1の両端の電圧をV_Lr1とし、キャパシタCr1の両端の電圧をV_Cr1とする。同様に、インダクタLr2の両端の電圧をV_Lr2とし、キャパシタCr2の両端の電圧をV_Cr2とする。また、FET(Q1AH)に流れる電流をI_Q1AHとし、FET(Q1AL)に流れる電流をI_Q1ALとし、FET(Q1BH)に流れる電流をI_Q1BHとし、FET(Q1BL)に流れる電流をI_Q1BLとする。なお、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側には、直流電源が接続され、その電源電圧Vsupを15Vとする。また、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側に流れる電流をI1とする。
【0045】
同様に、FET(Q2AH)に流れる電流をI_Q2AHとし、FET(Q2AL)に流れる電流をI_Q2ALとし、FET(Q2BH)に流れる電流をI_Q2BHとし、FET(Q2BL)に流れる電流をI_Q2BLとする。なお、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側には、負荷が接続され、その負荷に流れる電流をIoとする。また、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側に流れる電流をI2とする。
【0046】
そして、V1>V2であれば、上で述べた電圧及び電流の波形は図9に示すようになる。図9(a)乃至(d)については、図5と同様である。図9(e)は、V1>V2である状態を示している。例えば、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側に接続されている負荷に電力を供給する場合には、制御回路100は、定電圧制御のためV2/V1が所望の値になるように図7に示すような関係に基づきデューティー比を決定して、各FETの駆動信号を生成して出力する。
【0047】
一方、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側に接続されている電池が蓄電池で充電する場合には、V1<V2となるが、上で述べたように、対称制御と非対称制御とを、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路と第3及び第4のフルブリッジ駆動回路との間で入れ替えればよい。なお、例えばV1が適正な値になるように蓄電池に一定電流で充電すべくデューティー比を決定して、各FETの駆動信号を生成し出力する。
【0048】
図9(f)乃至(n)によれば、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側から第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側へ、主にST_1及びST_3に電力が伝達されていることが分かる。この際、第1の共振回路及び第2の共振回路の効果で、ST_1及びST_2でキャパシタCr2に電力を溜めてST_3で吐き出し、ST_3及びST_4でキャパシタCr1に電力を溜めてST_1で吐き出すようになっている。共振周波数frに対応する周期1/frの1/2よりも短い期間でオンオフがなされるため、電流の波形は、共振による電流変化(半波波形)が途中で打ち切られるような形になる。
【0049】
また、V1とV2がほぼ同じ場合に、図8に示した電圧及び電流の波形は図10に示すようになる。
【0050】
図10(a)乃至(d)については、図6と同様である。図10(e)は、V1とV2とがおおよそ同じである状態を示している。この場合には、第1乃至第4のフルブリッジ駆動回路は、皆対称制御がなされ、デューティー比はDutyMaxに固定される。
【0051】
図10(f)乃至(n)では、図9よりも波形を強調して示しているが、V1とV2とがほぼ同じ状態なので、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側と第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側との間でほとんど電流は流れない。従って、FETスイッチングによる損失も少なくなる。電流の波形は、共振による半波波形となる。
【0052】
また、対称制御を採用することで、V1>V2やV2>V1の状態に遷移しても、電圧の高い方から低い方へ電力を自動的に伝えることになるため、制御を頻繁に切り替えなくても良い。従って、制御が簡略化され、電力の伝達の双方向化がなされる。
【0053】
以上のような制御を行うことで、トランスを用いずとも、LC共振回路のCで絶縁を行いつつ、効率的な双方向絶縁型DC−DCコンバータが実現される。
【0054】
なお、上でデューティー比をDutyMaxに設定する例においては、DutyMaxよりも少々低いデューティー比を用いる場合においても、効率がやや落ちるだけで同様の効果を得ることができる。
【0055】
[応用例1]
実施の形態においても簡単に説明したが、実施の形態に係る双方向絶縁型DC−DCコンバータは、例えば図11に示すような電源装置に応用されることもある。
【0056】
図11に示す電源装置において、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側に、蓄電池及び当該蓄電池に流れる電流を検出する電流検出器を直列に接続する。蓄電池は、例えば、リチウムイオン電池、NiH電池、NiCd電池、鉛電池などの2次電池である。一方、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側に、直流電源又は充電器と、負荷とがスイッチにより切り替え可能に接続されている。
【0057】
例えば、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側の電圧V1が、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側の電圧V2より高く、蓄電池から放電させる場合には、以下のような制御がなされる。
(A)デューティー比をDutyMax(又はDutyMaxに近い値)に設定し、固定する
(B)負荷に合わせて定電圧制御を行う(PWM制御)
【0058】
一方、第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側の電圧V1より、第3及び第4のフルブリッジ駆動回路側の電圧V2が高く、直流電源又は充電器から、蓄電池へ充電する場合には、以下のような制御がなされる。
(A)第1及び第2のフルブリッジ駆動回路側の電圧V1が所定の電圧に達するまでは、電流検出器により検出される電流に基づき定電流制御を行い、電圧V1が所定の電圧に達すると定電圧制御を行う。共にPWM制御を行う。
【0059】
このようにすれば、双方向絶縁型DC−DCコンバータを用いて双方向絶縁電源装置を実現できる。
【0060】
[応用例2]
第1の応用例に係る双方向絶縁電源装置を単独ではなく複数直列に接続すれば図12に示すような電源装置が得られる。これによって、負荷に対する出力電圧を高くすることができる。また、蓄電池毎の電位のアンバランスを解消できる。
【0061】
さらに、第1の応用例に係る双方向絶縁電源装置を複数並列に接続すれば図13に示すような電源装置が得られる。これによって、蓄電池の容量を増加させることができるようになる。また、蓄電池毎の電位のアンバランスを解消できる。
【0062】
以上本発明の実施の形態を述べたが、上記の趣旨に沿った様々な変形が可能である。特に、上で述べた応用例は例に過ぎず、様々な応用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 制御回路
110 V1検出回路
120 第1FETドライバ回路
130 第1駆動信号生成回路
140 第2FETドライバ回路
150 V2検出回路
160 第2駆動信号生成回路
170 アイソレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13