(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炭化ケイ素は硬くて脆く、バックグラインド、メカニカルポリッシュ等の研削によって炭化ケイ素半導体基板10を薄くすると、炭化ケイ素半導体基板10の下面の縁に非常に破損しやすいナイフ形状のエッジ(以下「ナイフエッジ」という。)が形成されてしまい(
図9参照)、このようなナイフエッジが破損されてしまうことがある。また、炭化ケイ素半導体基板10全体を薄くすると、炭化ケイ素半導体基板10の反り量が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、炭化ケイ素半導体装置のON抵抗を低減しつつ、炭化ケイ素半導体基板の強度を高くし、さらに当該炭化ケイ素半導体基板に反りが発生することも防止することができる炭化ケイ素半導体装置及び炭化ケイ素半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による炭化ケイ素半導体装置は、
炭化ケイ素半導体基板と、
前記炭化ケイ素半導体基板上に形成された炭化ケイ素半導体層と、
前記炭化ケイ素半導体層上に設けられた電極と、
を備え、
前記炭化ケイ素半導体基板の下面であって前記電極の鉛直方向下方を含む領域に限定して、レーザー光を照射することによって形成された複数の凹部を有する凹部郡が設けられている。
【0008】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
複数の凹部郡及び複数の電極が設けられ、
各凹部郡は、各電極の鉛直方向下方に設けられていてもよい。
【0009】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記凹部郡の各凹部は、水平方向において格子状に設けられていてもよい。
【0010】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記凹部郡の各凹部は、水平方向においてハニカム構造で設けられていてもよい。
【0011】
本発明による炭化ケイ素半導体装置では、
前記凹部郡において、前記電極の中心側に位置する凹部の水平方向における幅は、前記電極の周縁側に位置する凹部の水平方向における幅よりも大きくなってもよい。
【0012】
本発明による炭化ケイ素半導体装置では、
前記凹部郡において、前記電極の周縁側に位置する凹部の水平方向における幅は、前記電極の中心側に位置する凹部の水平方向における幅よりも大きくなってもよい。
【0013】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記凹部の縦断面形状はU字形状になってもよい。
【0014】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記凹部は、前記炭化ケイ素半導体基板内に形成され、その上端が前記炭化ケイ素半導体層に達していなくてもよい。
【0015】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記レーザー光のエネルギーは、0.5J/cm
2以上であってもよい。
【0016】
本発明による炭化ケイ素半導体装置において、
前記レーザー光によって、前記凹部の露出面に炭素の導電層が形成されてもよい。
【0017】
本発明による炭化ケイ素半導体装置の製造方法は、
炭化ケイ素半導体基板上に炭化ケイ素半導体層を形成する工程と、
前記炭化ケイ素半導体層上に電極を設ける工程と、
前記炭化ケイ素半導体基板の下面であって前記電極の鉛直方向下方又は前記電極の配置予定箇所の鉛直方向下方を含む領域に限定してレーザー光を照射することで複数の凹部を有する凹部郡を形成する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極の鉛直方向下方に複数の凹部を有する凹部郡が設けられている。このため、電極の鉛直方向下方における炭化ケイ素半導体基板の厚みを部分的に薄くすることができ、炭化ケイ素半導体装置のON抵抗を低減することができる。
【0019】
また、本発明では、凹部郡の凹部がレーザー光を用いて形成されるので、バックグラインド、メカニカルポリッシュ等による研削と異なり、炭化ケイ素半導体基板の下面にナイフエッジが形成されてしまうことがなく、炭化ケイ素半導体基板の強度を高いものにすることができる。さらに、炭化ケイ素半導体基板全体を薄くすることなく電極の鉛直方向下方を含む領域に限定して凹部郡を設けるので、炭化ケイ素半導体基板に反りが発生することも防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施の形態
《構成》
以下、本発明に係る炭化ケイ素半導体装置(SiC半導体装置)及び炭化ケイ素半導体装置の製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、
図1乃至
図6は本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。本発明の炭化ケイ素半導体装置は特に限定されることはないが、例えばショットキーバリアダイオード(SBD)やMOSFET等である。以下では、半導体装置としてショットキーバリアダイオードを用いて説明するが、このショットキーバリアダイオードはあくまでも半導体装置の一例に過ぎない点には留意が必要である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置は、炭化ケイ素半導体基板(SiC半導体基板)10と、炭化ケイ素半導体基板10上に形成された炭化ケイ素半導体層(SiC半導体層)20と、炭化ケイ素半導体層20上に設けられたショットキー電極(特許請求の範囲で記載された「電極」に対応する。)50と、を備えている。
【0023】
より具体的には、本実施の形態の半導体装置は、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板(第1導電型炭化ケイ素半導体基板)10と、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板10上に形成された低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層(第1導電型炭化ケイ素半導体層)20と、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20内にリング状で形成されたp型の炭化ケイ素半導体層(第2導電型炭化ケイ素半導体層)30と、を備えている。なお、n型の炭化ケイ素半導体基板10は、上面(以下「表面」とも言う。)と、当該上面に背向する下面(以下「裏面」とも言う。)とを有しており、n型の炭化ケイ素半導体基板10の表面側に上述した低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20が形成されている。また、
図2に示すように、n型の炭化ケイ素半導体基板10の裏面側には、炭化ケイ素半導体基板10の裏面の形状に沿ったオーミック電極80が形成される。図示しないが、このオーミック電極80には、はんだ、Al等を介して半導体チップが実装される。なお、
図1ではこのオーミック電極80は示されていない。
【0024】
図2に示すように、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20及びp型の炭化ケイ素半導体層30の上には、これらに跨がってショットキー電極50が設けられている。そして、このショットキー電極50上には引き出し電極55が設けられている。また、ショットキー電極50及び引き出し電極55を取り囲むようにして、リング状で絶縁層60が設けられている。なお、ショットキー電極50の材料としては、例えばTi、Mo、Ni等を挙げることができる。引き出し電極55の材料としては、例えばAl、Ni、Au等を挙げることができる。絶縁層60の材料としては、例えば酸化珪素、窒化珪素、ポリイミド等を挙げることができる。
【0025】
n型の炭化ケイ素半導体基板10のうち後述する凹部16が形成されている箇所の厚みは例えば約250μmであり、ショットキー電極50及び引き出し電極55を含んだ炭化ケイ素半導体装置の厚みは例えば約350μmである。このため、この例で言うと、凹部16の深さは約100μmとなっている。
【0026】
炭化ケイ素半導体基板10の下面であってショットキー電極50の鉛直方向下方を含む領域に限定して、レーザー光Lを照射することによって形成された複数の凹部16を有する凹部郡15が設けられている。なお、本実施の形態で用いられるレーザー光Lのエネルギーは、例えば0.5J/cm
2以上となっている。また、本実施の形態における凹部16の露出面には、レーザー光Lによってケイ素(Si)が飛び炭素(C)の導電層が形成されている。これは、一般にケイ素の方が炭素よりも飛びやすいことに由来している。すなわち、レーザー光Lを用いて凹部16を形成すると、炭素とケイ素が飛んでいくが、最終的に形成される表面ではケイ素が飛んだ後の炭素によって導体層が形成されることとなる。
【0027】
ちなみに、レーザー光Lは例えば50μmのスポットで照射され、一つのスポットによって又は各スポットを重なり合わせつつずらすことで、凹部16が形成される。また、レーザー光Lの波長は例えば555nm以下となっている。本願発明者による実験によれば、555nmよりもレーザー光Lの波長が長いと炭化ケイ素半導体基板10をレーザー光が透過してしまい炭化ケイ素半導体基板10に凹部16を形成することができなかったが、レーザー光Lの波長が555nm以下となっている場合には、炭化ケイ素半導体基板10に凹部16を形成することができた。なお、このような波長のレーザー光としては、グリーンレーザー(波長は約532nm)やエキシマレーザー等を用いることができる。一般にグリーンレーザー等の波長が長いレーザー光(例えば400nm以上の波長のレーザー光)を照射する機械は低額であることから、このようなレーザー光によって凹部16を形成する場合には低額な機械で処理することができる点で有益である。
【0028】
凹部郡15の各凹部16は様々な配置及び形状で設けることができるが、その一例としては、
図4に示すように、各凹部16が水平方向において格子状に設けられているものを挙げることができる。また、このような態様とは異なり、別の例としては、
図5に示すように、凹部郡15の各凹部16が水平方向においてハニカム構造(蜂の巣形状)で設けられているものを挙げることができる。
【0029】
上述したように、炭化ケイ素半導体基板10の裏面側にはオーミック電極80が形成されている。そして、このオーミック電極80の材料としては、例えばNi、Mo等を挙げることができる。ちなみに、炭化ケイ素は熱伝導性が高く放熱性に優れており、銅等と同程度の熱伝導性を有し、はんだ、Ni、Al等よりも高い熱伝導性を有している。
【0030】
図2に示すように、凹部郡15の水平方向の幅W2はショットキー電極50の水平方向の幅W1よりも大きくなっている。また、本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置には、複数の凹部郡15及び複数のショットキー電極50が設けられている(
図1参照)。そして、各凹部郡15は各ショットキー電極50の鉛直方向下方に設けられており、ショットキー電極50と凹部郡15とが一対一の関係で形成されている。なお、本実施の形態の凹部16は、その縦断面形状がU字形状になっている。ちなみに、本実施の形態では、
図2に示すように、凹部郡15において、各凹部16の水平方向における幅が均一となり、同じ長さとなっている。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態の凹部16は、炭化ケイ素半導体基板10内に形成されているが、その上端16tはn型の炭化ケイ素半導体層20に達していない。すなわち、凹部16の上端16tは、鉛直方向において、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20の下端よりも下方に位置している。
【0032】
ちなみに、本実施の形態の図面では、各凹部16が同じ深さとなっており態様を用いているが、これに限られることはなく、凹部16の深さは異なっていてもよい。一例としては、電極の中心側に位置する凹部16の深さが、電極の周縁側に位置する凹部16の深さよりも深くなり、電極の中心側に位置する凹部16の上端と炭化ケイ素半導体層20の下端との間の距離が電極の周縁側に位置する凹部16の上端と炭化ケイ素半導体層20の下端との間の距離よりも短くなっていてもよい。また、このような態様と異なり、電極の周縁側に位置する凹部16の深さが、電極の中心側に位置する凹部16の深さよりも深くなり、電極の周縁側に位置する凹部16の上端と炭化ケイ素半導体層20の下端との間の距離が電極の中心側に位置する凹部16の上端と炭化ケイ素半導体層20の下端との間の距離よりも短くなっていてもよい。
【0033】
《製造工程》
次に、上述した構成からなる本実施の形態の半導体装置の製造工程について、主に
図3を用いて説明する。
【0034】
まず、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板10を準備する(
図3(a)参照)。
【0035】
次に、高濃度のn型の炭化ケイ素半導体基板10上に、エピタキシャル成長によって低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20を形成する(
図3(a)参照)。この低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20は、耐圧を確保するのに必要な不純物濃度及び厚さになっている。
【0036】
次に、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20上に、AlやB等をイオン注入し、例えば1500℃以上の加熱処理を施すことでp型の炭化ケイ素半導体層30を形成する(
図3(b)参照)。より具体的には、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20の表面にSiO
2をCVDによって堆積する。次いで、SiO
2上にフォトレジストを形成し、そのフォトレジストのうちp型の炭化ケイ素半導体層30の形成位置に対応する部分を除去する。この状態でエッチング処理を施すことで、p型の炭化ケイ素半導体層30の形成位置に対応する部分のSiO
2を除去し、その部分の低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20を露出させる。その後、残りのフォトレジストを除去する。その後、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20の露出部位から例えばAlやB等をイオン注入する。そして、残りのSiO
2を除去した後で、1500℃以上の熱処理を施すことで、注入された不純物を活性化する。
【0037】
次に、低濃度のn型の炭化ケイ素半導体層20及びp型の炭化ケイ素半導体層30の上に、これらに跨がってTi、Mo、Ni等からなるショットキー電極50が、例えばスパッタ法によって設けられる(
図3(c)参照)。
【0038】
次に、ショットキー電極50上に、Al、Ni、Au等からなる引き出し電極55が設けられる(
図3(c)参照)。
【0039】
次に、ショットキー電極50及び引き出し電極55を取り囲むようにして、酸化珪素、窒化珪素、ポリイミド等からなる絶縁層60が設けられる(
図3(c)参照)。
【0040】
上述のようにして、ショットキー電極50、引き出し電極55及び絶縁層60が設けられた後又は設けられる前に、炭化ケイ素半導体基板10の下面(すなわち裏面)であってショットキー電極50の鉛直方向下方又はショットキー電極50の配置予定箇所の鉛直方向下方を含む領域に限定してレーザー光Lを照射することで複数の凹部16を有する凹部郡15が形成される(
図3(d)参照)。なお、
図3に示す態様では、ショットキー電極50、引き出し電極55及び絶縁層60が設けられた後で、炭化ケイ素半導体基板10の裏面にレーザー光Lが照射されて、凹部郡15が形成されている。また、照射されるレーザー光Lのエネルギーは例えば0.5J/cm
2以上となっている。
【0041】
このようにして形成される凹部郡15内の凹部16の配置及び形状の一例としては、各凹部16が水平方向において格子状に設けられているものを挙げることができ(
図4参照)、また別の例としては、凹部郡15の各凹部16が水平方向においてハニカム構造(蜂の巣形状)で設けられているものを挙げることができる(
図5参照)。
【0042】
このようにして形成される凹部郡15の水平方向の幅W2はショットキー電極50の水平方向の幅W1よりも大きくなっている(
図2参照)。また、各凹部16の縦断面形状はU字形状になっている。また、凹部16は、炭化ケイ素半導体基板10内に形成されており、その上端16tが炭化ケイ素半導体層20に達していない(
図2参照)。
【0043】
各凹部郡15は各ショットキー電極50の鉛直方向下方に対応して形成され、ショットキー電極50と凹部郡15とが一対一の関係で形成される(
図1参照)。ちなみに、凹部16の露出面には炭素(C)の導電層が形成されることとなる。
【0044】
次に、炭化ケイ素半導体基板10の下面(裏面)にオーミック電極80が形成される(
図3(e)参照)。より具体的には、Ni、Mo等の金属を炭化ケイ素半導体基板10の下面(裏面)に蒸着させたり、Ni、Mo等の金属で炭化ケイ素半導体基板10の下面(裏面)をメッキしたりし、その後、例えば真空中において1000度程度の温度で2分間の加熱処理が行われることで、オーミック電極80が形成される。その後、オーミック電極80に、はんだ等を介して半導体チップが実装される。
【0045】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果について説明する。
【0046】
本実施の形態によれば、ショットキー電極(電極)50の鉛直方向下方に複数の凹部16を有する凹部郡15が設けられている(
図1及び
図2参照)。このため、ショットキー電極(電極)50の鉛直方向下方における炭化ケイ素半導体基板10の厚みを部分的に薄くすることができ、炭化ケイ素半導体装置のON抵抗を低減することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、ショットキー電極50の鉛直方向下方に炭化ケイ素半導体基板10が残っている箇所があるため、このように炭化ケイ素半導体基板10が残っている箇所ではオーミック電極80、はんだ等の金属と比較して電気伝導性が小さくなってしまう。しかしながら、炭化ケイ素は熱伝導性が高く放熱性に優れるため、熱を持つことで電気抵抗が上昇することを防止することができる。
【0048】
このため、本実施の形態では、ショットキー電極50の鉛直方向下方における炭化ケイ素半導体基板の厚みを部分的に薄くすることと、発生する熱で電気抵抗が上昇することを防止することの組み合わせによって、ON抵抗を低減することができる。
【0049】
また、このような凹部郡15の凹部16がレーザー光Lを用いて形成されるので、バックグラインド、メカニカルポリッシュ等による研削と異なり、炭化ケイ素半導体基板10の下面にナイフエッジが形成されてしまうことがなく、炭化ケイ素半導体基板10の強度を高いものにすることができる。さらに、炭化ケイ素半導体基板10全体を薄くすることなく、ショットキー電極50の鉛直方向下方を含む領域に限定して凹部郡15を設けるので、炭化ケイ素半導体基板10に反りが発生することも防止することができる。
【0051】
炭化ケイ素半導体基板10の厚みを薄くすることは、炭化ケイ素半導体装置のON抵抗を低減するのに非常に有効である。しかしながら、炭化ケイ素は硬くて脆く、バックグラインド、メカニカルポリッシュ等の研削によって薄くすると、炭化ケイ素半導体基板10の下面の縁に非常に破損しやすいナイフエッジが形成されてしまい、このようなナイフエッジが破損されてしまうことがある(
図9参照)。また、炭化ケイ素半導体基板10全体を薄くすると、炭化ケイ素半導体基板10の反り量が大きくなってしまう。
【0052】
この点、本実施の形態では、ショットキー電極50の鉛直方向下方を含む領域に限定して炭化ケイ素半導体基板10の厚みを薄くすることから、炭化ケイ素半導体基板10に反りが発生することも防止することができる。
【0053】
また、凹部16がレーザー光Lを用いて形成されるので、炭化ケイ素半導体基板10の下面にナイフエッジが形成されてしまうことがなく、炭化ケイ素半導体基板10の強度を高いものにすることができる。ちなみに、レーザー光を用いずに物理的に研鑽する等して凹部を形成した場合には炭化ケイ素半導体基板10にダメージ層ができてしまうが、本実施の形態では、このようなダメージ層が生成されることを防止することもできる。
【0054】
本実施の形態では、凹部郡15の水平方向の幅W2がショットキー電極50の水平方向の幅W1よりも大きくなっている(
図2参照)。このため、ショットキー電極50の鉛直方向下方の全体にわたって断続的に凹部16を形成し、炭化ケイ素半導体基板10の厚みを断続的に薄くすることができる。ちなみに、ショットキー電極50等の電極から炭化ケイ素半導体基板10の下面(裏面)に向かって流れる電流は一定の広がりを持つことから、凹部郡15の水平方向の幅W2がショットキー電極50の水平方向の幅W1と等しくなっているのではなく、凹部郡15の水平方向の幅W2がショットキー電極50の水平方向の幅W1よりも大きくなっている方が好ましい。
【0055】
また、本実施の形態では、各凹部郡15が各ショットキー電極50の鉛直方向下方に設けられており、各ショットキー電極50に対応して各凹部郡15が設けられている(
図1参照)。このため、ショットキー電極50の鉛直方向下方において炭化ケイ素半導体基板10の厚みが断続的に薄くなっていない箇所がなく、各ショットキー電極50の鉛直方向下方で炭化ケイ素半導体基板10の厚みが断続的に薄くなっているので、炭化ケイ素半導体装置のON抵抗をより確実に低減することができる。また、ショットキー電極50が設けられていない箇所の鉛直下方に凹部16が設けられていないことから、炭化ケイ素半導体基板10の厚みが薄くなる箇所を極力少なくすることができ、炭化ケイ素半導体基板10に反りが発生することを極力防止することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、凹部16の縦断面形状がU字形状になっており、凹部16が角張った形状となっていない(
図1及び
図2参照)。この点、凹部が角張った形状となっている場合には、蒸着処理、メッキ処理、ダイボンド処理等を行う際に上端の角に金属がつきにくいこと等で不都合が発生しうるが、本実施の形態のように凹部16の縦断面形状がU字形状になっている場合には、このように金属がつきにくい状況が生じることを防止することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、凹部16が炭化ケイ素半導体基板10内に形成され、その上端16tが炭化ケイ素半導体層20に達していない(
図2参照)。このため、耐圧を確保するための炭化ケイ素半導体層20が薄くなることを防止することができ、ひいては、高い耐圧を維持することができる。
【0058】
ちなみに、凹部16内にはNi等の金属でオーミック電極80が形成された後で、はんだ等が入り込むことになるが、炭化ケイ素は、これらNi及びはんだよりも熱伝導性が高いことから、炭化ケイ素半導体基板10を介して熱を逃がすことができる。
【0059】
変形例
上述した実施の形態では、凹部16の縦断面形状がU字形状になっている態様を用いて説明した。しかしながら、この態様はあくまでも一例であり、別の態様も用いることができる。別の態様の一例としては、
図6に示すように、凹部16’の縦断面形状が矩形状になっているものを挙げることができる。ちなみに、
図6において「16’t」は、凹部16’の上端を示している。
【0060】
このような変形例による矩形状の凹部16’では、ショットキー電極50(電極)の鉛直方向下方を均一に薄くすることができるので、炭化ケイ素半導体装置のON抵抗を低減することを期待できる。
【0061】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0062】
第1の実施の形態では、凹部郡15において、各凹部16の水平方向における幅が均一となっている態様であったが、第2の実施の形態では、凹部郡15において、各凹部16の水平方向における幅が異なる態様となっている。
【0063】
第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。第1の実施の形態で詳細に説明したことから、本実施の形態における効果の説明は、本実施の形態において固有な部分についてのみ行う。
【0065】
本実施の形態の第一の態様としては、
図7に示すように、凹部郡15において、ショットキー電極(電極)50の中心側に位置する凹部16cの水平方向における幅が、ショットキー電極50の周縁側に位置する凹部16pの水平方向における幅よりも大きくなっている。より具体的には、ショットキー電極50の中心部の最も近くに位置する凹部16cの水平方向における幅が、ショットキー電極50の周縁部の最も近くに位置する凹部16pの水平方向における幅よりも大きくなっている。なお、
図7に示した態様では、ショットキー電極50の中心部から周縁部に向かうにつれて凹部16の幅が段階的に狭くなっている。
【0066】
このような態様によれば、凹部16内に埋設されるオーミック電極80やはんだ等の金属の量をショットキー電極50の鉛直下方の中心部側で多くし、ショットキー電極50の鉛直下方の周縁部側で少なくすることができ、電流を凹部郡15の中心部側に集中させることができる。
【0067】
本実施の形態の第二の態様としては、
図8に示すように、凹部郡15において、ショットキー電極50の周縁側に位置する凹部16pの水平方向における幅が、ショットキー電極50の中心側に位置する凹部16cの水平方向における幅よりも大きくなっている。より具体的には、ショットキー電極50の周縁部の最も近くに位置する凹部16pの水平方向における幅が、ショットキー電極50の中心部の最も近くに位置する凹部16cの水平方向における幅よりも大きくなっている。なお、
図8に示した態様では、ショットキー電極50の中心部から周縁部に向かうにつれて凹部16の幅が段階的に広くなっている。
【0068】
このような態様によれば、凹部16内に埋設されるオーミック電極80やはんだ等の金属の量をショットキー電極50の鉛直下方の周縁部側で多くし、ショットキー電極50の鉛直下方の中心部側で少なくすることができ、電流を凹部郡15の周縁部側に集中させることができる。
【0069】
なお、上述した第一の態様と第二の態様のいずれを用いるかは、炭化ケイ素半導体装置の設計次第である。一般に、温度が高くなった状態で電流が集中すると炭化ケイ素半導体装置が壊れてしまうことから、温度が高くなった状態において電流を逃がすことができる構造が好ましい。上述したように、第一の態様によれば、電流を凹部郡15の中心部側に集中させることができる。他方、第二の態様によれば、電流を凹部郡15の周縁部側に集中させることができる。この点、温度が高くなった状態で電流を逃がすために、電流を凹部郡15の中心部側に集中させた方がよいか、又は、電流を凹部郡15の周縁部側に集中させた方がよいかは炭化ケイ素半導体装置の設計の仕方によって左右されることから、一概に言えない。このため、炭化ケイ素半導体装置の設計内容に応じて、電流を凹部郡15の中心部側に集中させるか電流を凹部郡15の周縁部側に集中させることを選択し、適宜、温度が高くなった状態において電流を逃がすことで、炭化ケイ素半導体装置が破壊されることを防止することができる。
【0070】
最後になったが、上述した各実施の形態の記載、変形例の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。