(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ミラー保護溝部は、前記ミラー形成溝部の端部から前記光路変換ミラーに向かって分岐するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光導波路付きフレキシブルプリント配線板。
前記フレキシブル光導波路は、接着性を有する接着剤シートを介して前記フレキシブルプリント配線板に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光導波路付きフレキシブルプリント配線板。
表面実装型の光半導体素子を実装するための実装パッドが一方の主面に設けられたフレキシブルプリント配線板と、コアおよび前記コアの外周を覆うクラッドを有し、前記フレキシブルプリント配線板の他方の主面側に設けられたフレキシブル光導波路とを備える光導波路付きFPC基材を用意する工程と、
前記コアと交差する方向に沿って前記フレキシブル光導波路の前記コアおよび前記クラッドをダイシング加工することにより、前記フレキシブル光導波路の一方の端辺から他方の端辺まで延在し、かつ側面に前記コアの端面が露出するミラー形成溝部を形成するミラー形成工程と、
前記ミラー形成溝部の側面に露出した前記コアの端面により構成される光路変換ミラーを被覆しないように、前記ミラー形成溝部に充填部材を充填する充填工程と、
前記ミラー形成溝部を塞ぐようにミラー保護膜を前記フレキシブル光導波路に貼り合わるミラー保護膜形成工程と、
を備えることを特徴とする光導波路付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
前記充填部材を充填する前に、前記光路変換ミラーと前記ミラー形成溝部の端部との間に、前記ミラー形成溝部から分岐したミラー保護溝部を形成するミラー保護溝形成工程をさらに備え、
前記充填工程において、
前記ミラー保護溝部が前記ミラー形成溝部から分岐する部分と、前記ミラー形成溝部の端部との間における、前記ミラー形成溝部内に、硬化前の前記充填部材を滴下する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光導波路付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
前記ミラー保護溝形成工程において、レーザ加工またはダイシング加工により、前記ミラー保護溝部を形成することを特徴とする請求項8に記載の光導波路付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
前記充填工程において、前記硬化前の充填部材として、粘度が3000mPa・s以上8000mPa・s以下の樹脂を滴下することを特徴とする請求項8または9に記載の光導波路付きフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高機能化の進展に伴って、各種電子部品が実装される回路基板に対して高密度化の要求が高まっている。この要求に応えるため、回路基板を多層化した多層回路基板が開発されている。
【0003】
また、回路基板の高密度化の一環として、混成多層回路基板が開発されている(特許文献1)。この混成多層回路基板は、2つの多層回路基板(硬質回路基板)と、これら多層回路基板間を接続するフレキシブルプリント配線板(又はフレキシブルフラットケーブル)とを有するものである。
【0004】
上記の多層回路基板や混成多層回路基板は、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯通信機器、ゲーム機などの小型電子機器を中心に広く用いられている。
【0005】
ところで、上記の小型電子機器を始めとする電子機器が取り扱う情報量は近年特に増加してきており、電子機器内の信号伝送速度はますます高速化する傾向にある。例えば、パソコンについては、2012年から2013年にかけて、伝送速度が10Gbpsの伝送規格(サンダーボルト等)へ移行しており、伝送線路の信号損失に対する考慮がますます重要になっている。
【0006】
また、高速でパルス信号を発信するために、信号源の信号振幅電圧が低電圧化していく傾向にある。このため、外部のデバイスまたは信号源自身から発するスパイクノイズにより、信号伝送を正確に行うことが困難になっている。
【0007】
高速信号伝送を行う基板は、特性インピーダンス整合された伝送線路を有することが多い。しかしながら、そのような基板を用いた場合でも、信号の伝送損失が許容できない状況になりつつある。
【0008】
上述のスパイクノイズに対しては、伝送線路や電子機器においてノイズ対策を講じる必要がある。具体的には、伝送線路については、電磁シールドを設けなければならない。しかし、電磁シールドを設けることにより、伝送線路の厚みが増す。そのため、例えば、ノートパソコンのディスプレイとキーボードを繋ぐヒンジの屈曲性を確保することが困難な場合があった。
【0009】
そこで、電気信号の高速伝送時における伝送損失やノイズ耐性の問題を解決すべく、長距離伝送の分野で実用化されている光ファイバーによる高速光信号伝送技術を、電子機器内の信号伝送に適用することが検討されている。
【0010】
また高速光信号伝送技術をノートパソコンのヒンジなどに適用するため、可撓性を有する有機系のポリマー光導波路と、フレキシブルプリント配線板とを組み合わせた光導波路付きフレキシブルプリント配線板が知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付す。また、図面は模式的なものであり、上面図の縦横の寸法の比率、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る光導波路付きフレキシブルプリント配線板1について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、光導波路付きフレキシブルプリント配線板1の上面図である。
図2(a)は、
図1のA−A線に沿う断面図であり、
図2(b)は、
図1のB−B線に沿う断面図である。
【0026】
光導波路付きフレキシブルプリント配線板1は、フレキシブルプリント配線板2と、フレキシブル光導波路3と、ミラー形成溝部4と、ミラー保護膜5と、充填部材6と、接着剤シート8とを備えている。
【0027】
図1に示すように、実装パッド2aが設けられた領域と、実装パッド2bが設けられた領域とで挟まれた領域が光導波路付きフレキシブルプリント配線板1の屈曲可能なケーブル部となる。光導波路付きフレキシブルプリント配線板1のサイズの一例を挙げれば、幅が5mm程度、長さが15cm程度である。
【0028】
以下、光導波路付きフレキシブルプリント配線板1の各構成要素について詳しく説明する。
【0029】
フレキシブルプリント配線板2は、
図1に示すように、表面実装型の光半導体素子を実装するための実装パッド2a,2bが上面に設けられている。ここで、光半導体素子は、発光素子および受光素子の総称である。後ほど
図3Dを参照して説明するように、実装パッド2aには面発光素子11が実装され、実装パッド2bには面受光素子(フォトダイオード)12が実装される。面発光素子11は、例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)である。
【0030】
なお、図示しないが、フレキシブルプリント配線板2には、光半導体素子やフレキシブル光導波路3との位置合わせ用のターゲットマークの他、光半導体素子を駆動するための制御回路や、信号変換用の回路配線等が形成されている。実装パッド2a,2bは、配線パターン(図示せず)を介して、上記制御回路が実装される実装パッド(図示せず)に電気的に接続される。
【0031】
また、フレキシブルプリント配線板2の絶縁基材は、公知の可撓性を有する絶縁材料(ポリイミド等)からなる。また、フレキシブルプリント配線板2は、単層に限らず、多層のフレキシブルプリント配線板であってもよい。
【0032】
また、フレキシブルプリント配線板2の下面に配線パターンが設けられていてもよい。
【0033】
また、フレキシブルプリント配線板2には、光路に対応する領域に貫通孔(図示せず)が設けられていてもよい。これにより、信号光は貫通孔を通過するため、フレキシブルプリント配線板2の絶縁基材による信号光の吸収が大きい場合であっても信号光の受信強度を向上させることができる。
【0034】
フレキシブル光導波路3は、
図2(a),(b)に示すように、フレキシブルプリント配線板2の下面側に設けられている。より詳しくは、フレキシブル光導波路3は接着剤シート8によりフレキシブルプリント配線板2の下面に張り合わされている。
【0035】
フレキシブル光導波路3の平面サイズは、フレキシブルプリント配線板2の平面サイズと同じでもよいし、フレキシブルプリント配線板2の平面サイズよりも小さくてもよい。
【0036】
フレキシブル光導波路3は、コア3aと、コア3aの外周を覆うクラッド3bとを有する。
【0037】
コア3aは、
図1に示すように、直線状に加工されている。コア3aの屈折率はクラッド3bの屈折率よりも高い。なお、コア3aは、直線状に限らず、光半導体素子の配置位置等に応じて曲線状でもよいし、分岐を有する形状であってもよい。クラッド3bは、クラッド層3b1と、クラッド層3b2とから構成されている。
【0038】
なお、フレキシブル光導波路3は、好ましくは、ポリマー光導波路である。この場合、コア3a及びクラッド3bのいずれも、透明性が高く、柔らかいベース樹脂(例えばアクリル樹脂)を用いた有機ポリマーからなる。
【0039】
ミラー形成溝部4は、
図1および
図2に示すように、コア3aと交差するように、フレキシブル光導波路2に溝状に形成されている。また、ミラー形成溝部4は、フレキシブル光導波路2の一方の端辺から他方の端辺まで延在している。
【0040】
また、
図2(a)に示すように、ミラー形成溝部4の側面には、コア3aの端面が露出している。ミラー形成溝部4の側面に露出したコア3aの端面(ミラー面)は、信号光の光路を変換する光路変換ミラーM1,M2を構成する。
【0041】
光路変換ミラーM1,M2は、フレキシブル光導波路3と空気の屈折率の差を利用して信号光を反射(全反射)させる。即ち、光路変換ミラーM1,M2は、いわゆるエアミラーとして機能する。光路変換ミラーM1は、フレキシブルプリント配線板2の下面に向けて伝搬してきた信号光を反射してコア3a内に導く。一方、光路変換ミラーM2は、コア3a内を伝搬してきた信号光をフレキシブルプリント配線板2の上面に向けて反射する。
【0042】
光路変換ミラーM1,M2は、フレキシブルプリント配線板2の下面と所定の角度(例えば45度)をなすように形成され、その位置は信号光の光路に基づいて決められる。より具体的には、光路変換ミラーM1は、面発光素子11の発光部11aの実装予定位置の直下に形成され、光路変換ミラーM2は、面受光素子12の受光部12aの実装予定位置の直下に形成される。
【0043】
ミラー保護膜5は、ミラー形成溝部4の上部を覆うことで、光路変換ミラーMに異物が付着することを防止する。より詳しくは、ミラー保護膜5は、
図2(a),(b)に示すように、ミラー形成溝部4を塞ぐように、フレキシブル光導波路2上に設けられている。
【0044】
なお、ミラー保護膜5は、必ずしもフレキシブル光導波路3の全面を覆う必要はない。即ち、ミラー保護膜5は、ミラー形成溝部4を含む領域、あるいは、ミラー形成溝部4のうち少なくとも光路変換ミラーM1,M2とその近傍を覆うように設けられていればよい。
【0045】
充填部材6は、光路変換ミラーM1,M2の両側のミラー形成溝部4に充填されている。より詳しくは、充填部材6は、ミラー形成溝部4およびミラー保護膜5により画成される空間(三角柱状の空間)に充填されており、
図1に示すように、光路変換ミラーM1,M2を被覆しないように充填されている。この充填部材6により、端部4aからミラー形成溝部4内に異物が入り込んで、光路変換ミラーMに付着することを防止できる。
【0046】
なお、充填部材6は、樹脂(例えばエポキシ樹脂)、あるいはゴム(例えばシリコーンゴム)等である。
【0047】
接着剤シート8は、接着性を有するシートであり、例えば、シート状の光学接着剤である。フレキシブル光導波路3は、この接着剤シート8を介してフレキシブルプリント配線板2に固定されている。
【0048】
なお、接着剤シート8は、信号光の波長(例えば850nm)において吸収の少ないものが好ましい。接着材シート8による信号光の吸収が許容できる場合には、信号光の光路を跨ぐように接着剤シート8を配置してもよい。一方、許容できない場合には、光路を避けるように開口を設けた接着剤シート8を用いる。
【0049】
また、接着剤シート8は、フレキシブル光導波路3の全体にわたって設けられている必要はない。例えば、接着剤シート層8は、フレキシブル光導波路3の端部にのみ設けられてもよい。
【0050】
なお、フレキシブル光導波路3のクラッド3bに接着性を有する材料を用いることで、接着剤シート8を省略してもよい。この場合、クラッド3bのうちフレキシブルプリント配線板2に面するクラッド層3b1は、可撓性および接着性を有する材料からなり、フレキシブル光導波路3はフレキシブルプリント配線板2上に直接固定される。
【0051】
次に、上記の光導波路付きフレキシブルプリント配線板1の製造方法について、
図3A〜
図3Dを参照して説明する。
図3Aおよび
図3Bはいずれも、上側の図が側面図であり、下側の図が当該側面図に対応する下面図である。
図3Cおよび
図3Dは、実装パッド2a,2bを通り且つコア3aに平行な直線に沿う断面図である。
【0052】
まず、フレキシブル光導波路3の製造方法について、
図3Aおよび
図3Bを参照して説明する。
【0053】
可撓性を有するクラッド層3b1と、可撓性を有するコア層とを貼り合わせる。そして、
図3A(1)に示すように、クラッド層3b1に張り合わされたコア層をパターニングすることにより、所定の光導波路形状を有するコア3aを形成する。クラッド層3b1の厚さは、例えば20μmであり、コア層の厚さは、例えば50μmである。コア3aの幅は、例えば50μmである。
【0054】
コア層の加工方法としては、UV光による露光工程、およびアルカリ溶液(又は有機溶剤)等を用いた現像工程を含むフォトファブリケーション手法が挙げられる。
【0055】
また、フォトブリーチング手法またはインプリント手法などを用いて、コア3aを形成してもよい。いずれの手法も、現像工程が不要である。
【0056】
フォトブリーチング手法は、単一の材料から露光・加熱処理のみで、屈折率の異なるコアとクラッドを有するポリマー光導波路を作製することが可能である。単一の材料からポリマー光導波路を作製可能であるため、コスト的に有利である。
【0057】
インプリント手法は、UV硬化型で屈折率の異なる透明材料を組み合わせた光導波路材料と、コアの形状に対応した凹凸パターンを有する原版とを用いる。具体的には、光導波路材料に原版を接触させた後、UV光を照射して透明材料を硬化させる。その後、硬化したコア材料から原版を引き離すことで、所望の形状のコア3aを得る。
【0058】
次に、
図3B(2)に示すように、コア3aを覆うように、クラッド層3b1に可撓性を有するクラッド層3b2(例えば70μm厚)を貼り合わせる。そして、コア3aおよびクラッド層3b1,3b2をUV光又は熱などで硬化させることにより、フレキシブル光導波路3を作製する。
【0059】
次に、
図3C(3)に示すように、フレキシブルプリント配線板2の下面の所定の位置に、接着剤シート8を介してフレキシブル光導波路3を貼り合わせる。その後、UV光などを照射することにより、接着剤シート8を硬化させる。これにより、
図3C(3)に示す光導波路付きFPC基材10が作製される。
【0060】
次に、
図3C(4)に示すように、コア3aと交差する方向に沿ってフレキシブル光導波路3をダイシング加工することにより、ミラー形成溝部4を形成する(ミラー形成工程)。例えば、直径50mmのブレードを用いて、ブレード回転数30000rpm、ブレード送り速度3mm/秒の条件で、ミラー形成溝部4を形成する。ミラー形成溝部4の側面に露出したコア3aの端面により、光路変換ミラーM1,M2が構成される。ミラー形成溝部4の幅は、例えば100μmである。
【0061】
なお、
図3C(4)は、45°ブレードを用いてミラー形成溝部4を形成した場合を示しているが、その他のブレード(90°ブレードなど)を用いてミラー形成溝部4を形成してもよい。
【0062】
次に、
図3D(5)に示すように、光路変換ミラーM1,M2を被覆しないように、ミラー形成溝部4に充填部材6を充填する(充填工程)。より詳しくは、光路変換ミラーM1,M2とミラー形成溝部4の端部4aとの間におけるミラー形成溝部4内に、樹脂を滴下する。そして、オーブンで加熱することにより、滴下した樹脂を硬化させる。
【0063】
なお、ミラー形成溝部4内に滴下する樹脂の粘度については、BH型回転粘度計により測定した25℃における粘度が3000mPa・s以上8000mPa・s以下であることが好ましい。粘度が3000mPa・s未満の場合、樹脂の吐出量の制御が困難であり、一方、粘度が8000mPa・sを上回る場合、ミラー形成溝部4を十分に樹脂で充填できずにボイドが発生するおそれがある。よって、例えば、粘度が4700mPa・sの樹脂を使用する。
【0064】
次に、
図3D(5)に示すように、ミラー形成溝部4を塞ぐようにミラー保護膜5をフレキシブル光導波路3に貼り合わる(ミラー保護膜形成工程)。
【0065】
ミラー保護膜5は、例えば、絶縁フィルムおよび該絶縁フィルム上に形成された接着剤層を有するカバーレイである。この場合、まず、接着剤層がフレキシブル光導波路3に接するように、フレキシブル光導波路3上にカバーレイを配置する。その後、カバーレイの接着剤層がミラー形成溝部4に流れ出さない程度の温度の比較的低い温度でカバーレイをフレキシブル光導波路3にラミネートし、その後、接着剤層を熱硬化させる。
【0066】
例えば、真空ラミネータを用いて100℃/30秒間/2MPaの条件でフレキシブル光導波路3にカバーレイをラミネートする。その後、例えば150℃/2時間の条件で、カバーレイの接着剤層を熱硬化させる。
【0067】
上記工程を経て、
図1および
図2に示す光導波路付きフレキシブルプリント配線板1が作製される。
【0068】
なお、接着剤シート8を用いずに、フレキシブル光導波路3をフレキシブルプリント配線板2に直接固定してもよい。この場合の製造方法は、次の通りである。
【0069】
まず、フレキシブルプリント配線板2の下面の所定の位置に、可撓性および接着性を有する第1のクラッド層を貼り合わせる。
【0070】
次に、フレキシブルプリント配線板2上の第1のクラッド層に可撓性を有するコア層を貼り合わせる。そして、フォトファブリケーション手法などを用いてコア層をパターニングすることにより、所定の光導波路形状のコアを形成する。
【0071】
次に、コアを覆うように第1のクラッド層に可撓性を有する第2のクラッド層を貼り合わせる。
【0072】
このようにして、フレキシブルプリント配線板2に直接固定されたフレキシブル光導波路3を作製することが可能である。なお、信号光の光路として貫通孔が設けられたフレキシブルプリント配線板2を用いる場合には、貼り合わせの際に第1のクラッド層やコア層の一部が該貫通孔に入る込むことを避けるため、平坦度を得ることが容易な平板プレス等を使用することが好ましい。
【0073】
光導波路付きフレキシブルプリント配線板1を用いて、次のようにして光伝送モジュールを作製する。
【0074】
まず、
図3D(5)に示すように、面発光素子11及び面受光素子12をフレキシブルプリント配線板2の上面に実装する。面発光素子11及び面受光素子12は、光軸が光路変換ミラーM1,M2に合うように、フリップチップボンダ等により高精度に位置決めされる。
【0075】
即ち、面発光素子11については、発光部11aから出射された信号光が光路変換ミラーM1で反射しコア3a内を伝搬するように位置決めし、面受光素子12については、光路変換ミラーM2で反射した信号光が面受光素子12の受光部12aに入射するように位置決めする。
【0076】
その後、超音波接合(金―金超音波接合など)により、面発光素子11および面受光素子12を実装パッド2aおよび実装パッド2bにそれぞれ電気的に接続する。面発光素子11の電極11bは、フレキシブルプリント配線板2の実装パッド2aに電気的に接続され、面受光素子12の電極12bは、フレキシブルプリント配線板2の実装パッド2bに電気的に接続される。
【0077】
その後、
図3D(5)に示すように、透明性の高い(即ち信号光の吸収の少ない)封止樹脂13で面発光素子11及び面受光素子12を固定する。この封止樹脂13は、光半導体素子を固定するとともに、光半導体素子とフレキシブルプリント配線板2との間の空間に充填され、接続部分を保護するものである。
【0078】
上記工程を経て、
図3D(5)に示す、可撓性のケーブル部を有する薄型の光伝送モジュールが作製される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る光導波路付きフレキシブルプリント配線板1では、ミラー保護膜5がミラー形成溝部4を塞ぐとともに、光路変換ミラーM1,M2の両側のミラー形成溝部4には充填部材6が充填されている。即ち、光路変換ミラーM1,M2が形成された部分のミラー形成溝部4は、充填部材6が充填されず空気層になっており、それ以外の部分のミラー形成溝部4には、充填部材6が充填されている。これにより、光路変換ミラーM1,M2は外部から遮断され、光路変換ミラーM1,M2に異物が付着して反射率が低下することが防止される。
【0080】
よって、第1の実施形態によれば、ミラー形成溝部4に金属膜等の保護膜を形成することなく、光路変換ミラーM1,M2を保護することができる。
【0081】
また、第1の実施形態によれば、コア3aの端面(ミラー面)に金属膜を形成しないため、光路変換ミラーM1,M2で信号光を全反射(反射率100%)させることができる。
【0082】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態との相違点の一つは、ミラー形成溝部4に滴下された樹脂を複数の方向に分散して流出させるためのミラー保護溝部7が設けられていることである。以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0083】
図4は、第2の実施形態に係る光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aの上面図を示している。この光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aは、第1の実施形態に係る光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aに比べて、幅がさらに狭く、例えば2mm程度である。
【0084】
光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aは、フレキシブルプリント配線板2と、フレキシブル光導波路3と、ミラー形成溝部4と、ミラー保護膜5と、充填部材6と、接着剤シート8とを備えているのに加えて、ミラー保護溝部7をさらに備えている。
【0085】
ミラー保護溝部7は、硬化前の充填部材6が光路変換ミラーM1,M2を被覆するまで広がらないように、フレキシブル光導波路3に設けられた溝である。ミラー保護溝部7は、ミラー形成溝部4から分岐するように光路変換ミラーM1,M2とミラー形成溝部4の端部4aとの間に溝状に形成されている。
【0086】
本実施形態では、ミラー保護溝部7は、ミラー形成溝部4と交差するように形成されている。
図4に示す例では、ミラー保護溝部7は、ミラー形成溝部4と直交するように設けられている。
【0087】
なお、ミラー保護溝部7は、コア3aと干渉しなければ、ミラー形成溝部4と直角以外の角度で交差してもよい。
【0088】
また、ミラー保護溝部7は、
図4のように、ミラー形成溝部4の両側の側面から互いに反対方向に向かって延在する形態に限らない。例えば、ミラー保護溝部7は、ミラー形成溝部4の片側の側面のみから延在するように形成されてもよい。
充填部材6は、その一部がミラー形成溝部4からミラー保護溝部7に流出した状態で硬化している。
【0089】
次に、上記の光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aの製造方法について、
図5A〜
図5Cを参照して説明する。なお、途中までの工程は第1の実施形態と同じであるため、詳しい説明を省略する。
【0090】
図5A(1)に示すように、第1の実施形態と同様、ダイシング加工により、フレキシブル光導波路3にミラー形成溝部4(光路変換ミラーM1,M2)を形成する。
図5A(1)は、実装パッド2a,2bを通り且つコア3aに平行な直線に沿う断面図を示している。
【0091】
次に、
図5A(2)および
図5B(3)に示すように、光路変換ミラーM1,M2とミラー形成溝部4の端部4aとの間に、ミラー保護溝部7を形成する(ミラー保護溝形成工程)。
図5A(2)は
図4のC−C線に沿う断面図を示し、
図5B(3)は上面図を示している。
【0092】
例えば、コア3aと平行な方向に沿ってフレキシブル光導波路3をダイシング加工することにより、ミラー保護溝部7を形成する。このミラー保護溝部7の形成は、ミラー形成溝部4を形成した後に、連続して行うことが可能である。
【0093】
ミラー保護溝部7は、例えば、直径50mmのブレードを用いて、ブレード回転数30000rpm、ブレード送り速度10mm/秒の条件で形成する。ミラー保護溝部7の内面は荒れていても問題にならないため、ミラー形成溝部4を形成する場合よりもブレード送り速度を速くすることが可能である。ミラー保護溝部7の幅は、例えば100μmである。ミラー保護溝部7の長さは、コア3aに干渉しない程度の長さであればよく、例えば2mmである。
【0094】
なお、
図5A(2)は、45°ブレードを用いてミラー保護溝部7を形成した場合を示しているが、その他のブレード(90°ブレードなど)を用いてミラー保護溝部7を形成してもよい。また、ミラー保護溝部7は、ダイシング加工に限らず、他の加工方法(レーザ加工など)により形成してもよい。
【0095】
次に、
図5B(3)に示すように、所定の滴下ポイントにおけるミラー形成溝部4内に、樹脂(硬化前の充填部材6)を滴下する。樹脂の滴下ポイントは、ミラー保護溝部7がミラー形成溝部4から分岐する部分(以下、「分岐ポイント」ともいう。)と、ミラー形成溝部4の端部4aとの間である。例えば、滴下ポイントは、分岐ポイントから端部4aに向かって500μm程度離れた位置である。
【0096】
滴下された樹脂は、滴下ポイントからミラー形成溝部4に沿って(
図5Bにおいては上下方向に)広がっていく。光路変換ミラーM1,M2の方向に広がった樹脂は、その一部がミラー保護溝部7に流出する。このように樹脂は、光路変換ミラーM1,M2に向かう方向以外にも分散して流出する。このため、樹脂は、分岐ポイントから光路変換ミラーM1,M2に向かってわずかに広がるのみで、光路変換ミラーM1,M2まで到達しない。
【0097】
なお、ミラー形成溝部4内に滴下する樹脂の粘度については、BH型回転粘度計により測定した25℃における粘度が3000mPa・s以上8000mPa・s以下であることが好ましい。粘度が3000mPa・s未満の場合、樹脂の吐出量の制御が困難となるおそれがあり、一方、粘度が8000mPa・sを上回る場合、ミラー形成溝部4を十分に樹脂で充填できずにボイドが発生するおそれがある。よって、例えば、粘度が4700mPa・sの樹脂を使用する。
【0098】
その後、オーブンで加熱することにより、滴下した樹脂を硬化させ、充填部材6を形成する。
【0099】
次に、
図5C(4)に示すように、ミラー形成溝部4を塞ぐようにミラー保護膜5をフレキシブル光導波路3に貼り合わる(ミラー保護膜形成工程)。
【0100】
ミラー保護膜5は、例えば、第1の実施形態で説明したカバーレイでもよい。この場合、まず、接着剤層がフレキシブル光導波路3に接するように、カバーレイをフレキシブル光導波路3の上に配置する。その後、カバーレイの接着剤層がミラー形成溝部4に流れ出さない程度の温度の比較的低い温度でカバーレイをフレキシブル光導波路3にラミネートし、その後、接着剤層を熱硬化させる。
【0101】
例えば、真空ラミネータを用いて100℃/30秒間/2Mpaの条件でフレキシブル光導波路3にカバーレイをラミネートする。その後、例えば150℃/2時間の条件で、カバーレイの接着剤層を熱硬化させる。
【0102】
上記の工程を経て、第2の実施形態に係る光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aが作製される。
【0103】
なお、上記の説明では、ミラー形成溝部4を形成した後、ミラー保護溝部7を形成したが、形成順序は逆であってもよい。この場合、前述のミラー形成工程の前に、光路変換ミラーM1,M2の形成予定領域に交差するように、ミラー保護溝部7を形成する。その後、ミラー形成工程において、ミラー保護溝部7に接続するようにミラー形成溝部4を形成する。
【0104】
光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aを作製した後、
図5C(5)に示すように、面発光素子11及び面受光素子12をフレキシブルプリント配線板2の上面に実装する。その後、透明性の高い(即ち信号光の吸収の少ない)封止樹脂13で面発光素子11及び面受光素子12を固定する。これにより、光伝送モジュールが作製される。
【0105】
光導波路付きフレキシブルプリント配線板1Aでは、第1の実施形態と同様、ミラー保護膜5がミラー形成溝部4を塞ぐとともに、光路変換ミラーM1,M2の両側のミラー形成溝部4には充填部材6が充填されている。
【0106】
よって、第2の実施形態によれば、ミラー形成溝部4に金属膜等の保護膜を形成することなく、光路変換ミラーM1,M2を保護することができる。
【0107】
また、第2の実施形態によれば、コア3aの端面(ミラー面)に金属膜を形成しないため、光路変換ミラーM1,M2で信号光を全反射(反射率100%)させることができる。
【0108】
さらに、第2の実施形態では、フレキシブル光導波路3にミラー保護溝部7が形成されているため、ミラー形成溝部4内に滴下された樹脂の流出が複数の方向に分散する。
【0109】
よって、フレキシブル光導波路3(フレキシブルプリント配線板2)の幅が狭い場合であっても、滴下した樹脂が光路変換ミラーM1,M2まで達しないようにして、光路変換ミラーM1,M2の両側のミラー形成溝部4を樹脂で充填することができる。
【0110】
換言すれば、第2の実施形態によれば、滴下された樹脂の光路変換ミラーM1,M2方向への広がり量が減少するため、フレキシブル光導波路3の幅をより狭めることができる。その結果、例えば、従来よりも幅の狭い(細い)光伝送モジュールを、歩留まり良く製造することができる。
【0111】
以上、本発明に係る2つの実施形態について説明した。いずれの実施形態でも、光路変換ミラーM1,M2を金属膜で覆う必要がない。即ち、スパッタや蒸着による金属膜の形成工程や、金属膜形成の前処理としてのマスク形成工程、金属膜の樹脂封止工程が不要である。よって、煩雑な工程を必要とせずに、光導波路付きフレキシブルプリント配線板を製造することができ、歩留まりや製造コストの点で有利である。
【0112】
なお、上記実施形態の説明では、
図5B(3)に示すように、4本のミラー保護溝部7を形成しているが、本発明はこれに限らず、左右2本のミラー保護溝部7を1本のミラー保護溝部7として形成してもよい。即ち、同一直線上に形成されるミラー保護溝部7は、連続した一つの溝として形成してもよい。これにより、ミラー保護溝部7の形成工程を簡略化することができる。
【0113】
また、上記実施形態の説明では、
図5B(3)に示すように、1つの滴下ポイントにつき、ミラー形成溝部4に交差するミラー保護溝部7を1本形成しているが、本発明はこれに限らない。即ち、1つの滴下ポイントにつき、ミラー形成溝部4に交差するミラー保護溝部7を複数本形成してもよい。
【0114】
また、ミラー保護溝部7は、ダイシング加工またはレーザ加工等により、ミラー形成溝部4よりも深く形成してもよい。これにより、ミラー形成溝部4からミラー保護溝部7に流出する樹脂の量が増える。よって、分岐ポイントから光路変換ミラーM1,M2に向かう樹脂の広がりをさらに短くすることができる。その結果、より幅の狭いフレキシブル光導波路についても、滴下した樹脂が光路変換ミラーM1,M2まで達しないようにして、光路変換ミラーM1,M2の両側のミラー形成溝部4を樹脂で充填することができる。
【0115】
また、ミラー保護溝部7は、ミラー形成溝部4の端部4aから光路変換ミラーM1,M2に向かって分岐するように形成されていることが好ましい。即ち、端部4aから光路変換ミラーM1,M2の方向を見たときに、ミラー形成溝部4が2つの溝部に分岐するように見えるように、ミラー保護溝部7が形成されていることが好ましい。これにより、ミラー形成溝部4からミラー保護溝部7に樹脂が流出し易くなる。よって、より幅の狭いフレキシブル光導波路についても、滴下した樹脂が光路変換ミラーM1,M2まで達しないようにして、光路変換ミラーM1,M2の両側のミラー形成溝部4を樹脂で充填することができる。
【0116】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。