(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137979
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車線逸脱防止支援装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20170522BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20170522BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20170522BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20170522BHJP
B62D 111/00 20060101ALN20170522BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20170522BHJP
B62D 137/00 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
B62D6/00ZYW
G08G1/16 C
B60R21/00 624C
B60R21/00 626C
B60R21/00 626D
B62D101:00
B62D111:00
B62D119:00
B62D137:00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-157899(P2013-157899)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-27837(P2015-27837A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】田村 悠一郎
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−009361(JP,A)
【文献】
特開平11−189166(JP,A)
【文献】
特開2001−206237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B60R 21/00
G08G 1/16
B62D 101/00 −137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の走行環境から車線を認識する車線認識手段と、
前記車線認識手段で認識した車線に基づき該車線の左右を区画する白線連続線及び他の区画線の線種を識別する線種識別演算手段と、
前記線種識別演算手段で識別した前記区画線の線種に応じて、該区画線を基準とした逸脱判定閾値を、前記白色連続線に設定する逸脱判定閾値に対し、前記他の区画線に設定する逸脱判定閾値を、該他の区画線の線種に応じて前記白色連続線に設定する逸脱判定閾値の内側又は外側に設定し、前記自車両の車幅方向中央に設定した進行路上の予見距離に前方注視点を設定し、該予見距離に該前方注視点を中心として前記自車両の車幅を考慮した左右端点を設定し、該左右端点と該逸脱判定閾値とを比較して、該左右端点の一方が前記逸脱判定閾値を超えている場合に逸脱の可能性ありと判定する逸脱判定演算手段と、 前記逸脱判定演算手段で逸脱の可能性ありと判定した場合、前記予見距離における目標進行路上の目標点との横位置偏差を求める横位置偏差演算手段と、
前記横位置偏差演算手段で求めた前記横位置偏差に基づいて前記自車両を前記目標点へ戻す操舵トルクを演算する操舵トルク演算手段と
を備えることを特徴とする車線逸脱防止支援装置。
【請求項2】
前記線種識別演算手段で識別する前記他の区画線の線種は、黄色連続線と白色破線であり、
前記逸脱判定演算手段で設定する逸脱判定閾値は、前記黄色連続線に設定する逸脱判定閾値が前記白色連続線に設定する逸脱判定閾値よりも内側に設定され、一方前記白色破線に設定する逸脱判定閾値が前記白色連続線に設定する逸脱判定閾値よりも外側に設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の車線逸脱防止支援装置。
【請求項3】
前記操舵トルク演算手段は、前記横位置偏差に前記区画線の線種に応じて設定されているゲインを乗算して前記操舵トルクを設定する
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の車線逸脱防止支援装置。
【請求項4】
前記ゲインは、前記白色連続線に設定するゲインに比し、前記黄色連続線に設定するゲインが増加され、前記白色破線に設定するゲインが減少されている
ことを特徴とする請求項3記載の車線逸脱防止支援装置。
【請求項5】
前記逸脱判定演算手段は、逸脱の可能性ありと判定した場合、警報を発する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車線逸脱防止支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の操舵機構に操舵トルクを付与して、自車両が車線から逸脱することを防止する車線逸脱防止支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両が車線(走行レーンとも言う)を区画する左右いずれかの区画線を逸脱して隣接する車線(走行レーン)等にはみ出したり進入したりすることを防止するため、車載カメラで撮像した自車両前方の走行環境に基づいて左右区画線を認識し、車線逸脱の可能性を判定し、逸脱可能性有りと判定した場合は逸脱防止、及び支援を行う技術が種々提案され、一部は既に実施されているものもある。
【0003】
この逸脱防止支援技術として代表的なものは、(1)車線の逸脱を予測した場合、警報を吹鳴して運転視野に警告する逸脱警報システム(LDW)、(2)車線の逸脱を予測した場合、操舵機構に操舵トルクを付与して、逸脱を防止する逸脱防止制御システム(LDP)がある。
【0004】
通常、これら逸脱防止支援技術では、左右の区画線と自車両との横位置が所定の距離以下となった場合に、逸脱を防止すべく、警報を吹鳴し、或いは操舵トルクを制御するようにしている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2013−91494号公報)には、自車両が走行する車線の左右区画線から内側の所定距離離れた位置に、自車速が増加するに従い車線の中央側へシフトされる逸脱判定閾値を設定することで、自車速が増加するに従い逸脱判定が成立するタイミングを早くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−91494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、区画線は、道路上に車線を規定するために敷設された境界線であり、白色連続線や白色破線以外に黄色連続線等、種々のものが規定されている。各区画線は道路法規上の意味を有しており、例えば、白色の連続線は対向車線へのはみ出しを禁止し、白色の破線は対向車線へはみ出しての走行が可能で、黄色の連続線は対向車線へ追い越しのためにはみ出すことを禁止するものである。
【0008】
従って、自車両は車速に関係なく白色や黄色の連続線をはみ出すことは禁止され、又、白色破線は、車線変更等で運転者が意図的にはみ出すことは許容される。しかし、上述した文献に開示されている技術では、車線の線種に関係なく、車速に応じて逸脱防止閾値を一律にシフトさせているに過ぎず、例えば、比較的速い速度で走行していれば、区画線が白色の破線であっても、逸脱判定閾値が区画線から中央付近へシフトされてしまい、運転者の意に反して逸脱防止制御が動作し、運転者に煩雑感を与えてしまう不都合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、区画線の線種に応じて、最適な逸脱防止を支援することのできる車線逸脱防止支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による車線逸脱防止支援装置は、自車両前方の走行環境から車線を認識する車線認識手段と、前記車線認識手段で認識した車線に基づき該車線の左右を区画する
白線連続線及び他の区画線の線種を識別する線種識別演算手段と、前記線種識別演算手段で識別した前記区画線の線種に応じて、該区画線を基準とした逸脱判定閾値を
、前記白色連続線に設定する逸脱判定閾値に対し、前記他の区画線に設定する逸脱判定閾値を、該他の区画線の線種に応じて前記白色連続線に設定する逸脱判定閾値の内側又は外側に設定し、前記自車両の
車幅方向中央に設定した進行路上の予見距離に
前方注視点を設定し、該予見距離に該前方注視点を中心として前記自車両の車幅を考慮した左右端点を設定し、該左右端点と該逸脱判定閾値とを比較して、
該左右端点の一方が前記逸脱判定閾値を超えている場合に逸脱の可能性
ありと判定する逸脱判定演算手段と、前記逸脱判定演算手段で逸脱の可能性ありと判定した場合、前記予見距離における目標進行
路上の目標点との横位置偏差を求める横位置偏差演算手段と、前記横位置偏差演算手段で求めた前記横位置偏差に基づいて前記自車両を前記目標点へ戻す操舵トルクを演算する操舵トルク演算手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、逸脱判定閾値を区画線の線種に応じて設定したので、区画線の線種に
応じて、最適な逸脱防止を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車線逸脱防止支援装置を搭載する車両の概略構成図
【
図4】(a)は黄色連続線に対して設定する逸脱防止閾値を示す説明図、(b)は白色連続線に対して設定する逸脱防止閾値を示す説明図、(c)は白色破線に対して設定する逸脱防止閾値を示す説明図
【
図5】前方注視点における自車両の左右端点と逸脱防止閾値との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1において、車両(自車両)1には、左右前輪FL,FRと左右後輪RL,RRとが配設されており、この左右前輪FL,FRが、ラック&ピニオン機構等のステアリング機構2にタイロッド3を介して連設されている。又、このステアリング機構2に、先端にハンドル4を固設するステアリング軸5が連設されている。運転者がハンドル4を操作すると、ステアリング機構2を介して前輪FL,FRが転舵される。
【0014】
又、ステアリング軸5に電動パワーステアリング(EPS)装置6のEPSモータ7が、図示しない伝達機構を介して連設されている。EPS装置6はEPSモータ7とEPS制御ユニット(EPS_ECU)8とを有しており、EPS_ECU8にてEPSモータ7がステアリング軸5に付与する操舵トルクを制御する。EPS_ECU8は後述する操舵トルセンサ12で検出する操舵トルク、及び車速センサ13で検出する車速等に応じ、運転者がハンドル4に加える操舵トルクをアシストするトルク(アシストトルク)を設定する。ステアリング軸5にアシストトルクを付与することで運転者のハンドル操作の負担が軽減される。
【0015】
又、EPS_ECU8は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信等を用いた車内ネットワークを介して逸脱防止制御ユニット(LDP_ECU)11と接続されている。逸脱防止制御においては、LDP_ECU11にて設定した操舵トルクに対応する指令信号がEPS_ECU8に送信され、EPS_ECU8にてEPSモータ7に所定のアシストトルクを発生させて、自車両1が車線の中央方向へ戻るように制御し、区画線からの逸脱を防止する。尚、図示しないが、車内ネットワークには、EPS_ECU8、LDP_ECU11以外に、エンジン制御ユニット、変速機制御ユニット、ブレーキ制御ユニット等、車両の走行状態を制御するユニット類が相互通信自在に接続されている。
【0016】
又、このLDP_ECU11には、ステアリング軸5に取り付けられてハンドル4に付与される操舵トルクを検出する操舵トルセンサ12、車速を検出する車速センサ13、車体に発生するヨーレート、及び横加速度を検出するヨーレートセンサ14等、自車両1の挙動を検出するセンサ類が接続されている。更に、この操舵トルセンサ12で検出した操舵トルク、及び車速センサ13で検出した車速は、LDP_ECU11で読込まれると共に、後述する車線認識部24へ送信される。
【0017】
一方、符号21はカメラユニットであり、
図2に示すように、メインカメラ22aとサブカメラ22bとからなるステレオカメラで構成された車載カメラ22と、画像処理部23、及び車線認識手段としての車線認識部24が内蔵されている。両カメラ22a,22bは、例えば車内前部のルームミラー上方であって、フロントガラスに近接する位置の車幅方向中央から左右に等間隔を開けて水平な状態で設置されている。又、この各カメラ22a,22bはカラーCCDやカラーCMOSを搭載したカラーカメラ等のカラー撮像素子が設けられており、この両カラー撮像素子によって自車両1が走行している車線、及びそれを区画する区画線を含む進行方向前方の走行環境の三次元カラー画像が撮影される。尚、区画線は、車両の車線を隣の車線と区分するための、道路面に標示された線の総称であり、白色や黄色の連続線、及び白色の破線等である。
【0018】
画像処理部23は、各カメラ22a,22bで撮影した一対のアナログ画像を所定輝度階調のデジタル画像に変換し、メインカメラ22aの出力信号から基準画像データを生成し、又、サブカメラ22bの出力信号から比較画像データを生成する。そして、この基準画像データ及び比較画像データとの視差に基づいて両画像中の同一対象物の距離データ(自車両から対象物までの距離)を算出する。
【0019】
又、車線認識部24はマイクロコンピュータで構成されており、画像処理部23から送信される基準画像データと比較画像データとに基づいて生成した仮想道路平面上に、距離データに基づいて算出した左右区画線の内側エッジ、及び外側エッジから区画線の幅、及び連続線か破線かを認識すると共に、内側エッジと外側エッジとで挟まれた領域の色彩から区画線の色を認識する。そして、これら認識したデータを車線認識情報として、LDP_ECU11へ送信する。
【0020】
図3に示すように、LDP_ECU11は、逸脱防止を制御する機能として、線種識別演算手段としての線種識別演算部11a、逸脱判定演算手段としての逸脱判定演算部11b、横位置偏差演算手段としての横位置偏差演算部11c、操舵トルク演算手段としての操舵トルク演算部11dを備えている。
【0021】
線種識別演算部11aは、車線認識部24から送信された車線認識情報に基づき、左右の区画線が黄色連続線Lyか白色連続線Lwか白色破線Lbかを識別する。
図4には車線の左右を区画する区画線LL,LRの内、対向車線側である右区画線LRの線種を識別した状態が例示されている。ここで、同図(a)は黄色連続線Ly、(b)は白色連続線Lw、(c)は白色破線Lbである。尚、図示しないが左区画線LLについても、同様に線種が識別されている
。
又、逸脱判定演算部11bは、識別した各区画線LL,LRの線種Ly,Lw,Lbに対応する各区画線(
図4では右区画線LR)の内側エッジを基準とする逸脱判定閾値SLy,SLw,SLbを設定する。線種として規定されている黄色連続線Lyは車幅が狭く、対向車線への追い越しのためのはみ出しが禁止され、一方、白色連続線Lwは車幅が比較的広い場合であって対向車線へのはみ出しを禁止するものであり、又、白色破線Lbは隣車線へのはみ出しが許容されている。
【0022】
従って、実走行において、例えば区画線がセンターラインの場合、白色連続線Lwに比し黄色連続線Lyは比較的狭い車線幅に敷設されているため、この黄色連続線Lyを自車両1がはみ出した場合、対向車と遭遇する度合いが高い。これに対し、白色破線Lbは車線内に設定されている車両通行帯の境界線を規定しているものであり、車線変更等においての逸脱が許容されている。運転者は区画線の線種を認識して運転しているため、通常走行或いは高速走行において白色連続線Lwを逸脱することは殆ど無いが、白色破線Lbは意図的に逸脱する頻度が高い。一方、黄色連続線Lyは車幅が狭い道路面に敷設されているため、不用意に逸脱してしまう可能性がある。
【0023】
そのため、上述した逸脱判定閾値SLy,SLw,SLbは、運転者が意図的に逸脱させようとしているのか、或いは不用意に逸脱しようとしているのか、換言すれば、運転者の逸脱させようとする意図的な意識度に応じて設定されている。すなわち、
図4に示すように、同図(b)の白色連続線Lwに対する逸脱判定閾値SLwの間隔Wwを基準とした場合、黄色連続線Lyに対する逸脱判定閾値SLyの間隔Wyは広く(Wy>Ww)、又、白色破線Lbに対する逸脱判定閾値SLbの間隔Wbは逸脱判定閾値SLwの間隔Wwよりも狭く設定されている(Ww>Wb)。
【0024】
そして、
図5に示すように、逸脱判定演算部11bは、区画線の線種に応じて、仮想道路平面上に、車速センサ13で検出した自車両1の車速とヨーレートセンサ14で検出したヨーレート(或いはハンドル角)に基づき求めた自車両1の旋回曲率から自車進行路を推定し、この自車進行路上に予見距離LPにおける前方注視点TPを設定する。尚、この予見距離は、車速センサ13で検出した自車両1の車速に、予め設定されている予見時間(例えば0.5〜2.0[sec])を乗じて求めたものである(予見距離=車速・予見時間)。
【0025】
その後、この前方注視点TPを中心として、その左右に車幅を考慮した左右端点TL,TRを、自車両1の車幅方向と平行に設定する。
【0026】
その後、この左右端点TL,TRの何れかが、逸脱判定閾値SLy(或いはSLw或いはSLb)を越えて外側にあるかを調べる。そして、
図5に示すように、左右端点TL,TRの何れかが逸脱判定閾値SLy(或いはSLw或いはSLb)を越えている(図においては右端点TRが越えている)と判定した場合、区画線逸脱の可能性ありと判定し、運転者に音声やブザー音、或いは警報ランプの点灯等により警報を発する。
【0027】
上述したように、逸脱判定閾値SLy,SLw,SLbは、運転者が自車両1を区画線から意図的に逸脱させようとする意識度に応じて設定されているため、区画線が黄色連続線Lyの場合は、白色連続線Lwよりも早いタイミングで逸脱可能性ありと判定され、一方、白色破線Lbの場合は白色連続線Lwよりも遅いタイミングで逸脱可能性ありと判定される。
【0028】
横位置偏差演算部11cは、逸脱判定演算部11bが区画線逸脱の可能性ありと判定した場合、
図6に示すように、予見距離LPの位置における自車進行路の前方注視点TPと自車両1が進行すべき目標進行路(例えば、左右区画線LL,LRの中央)の目標点TGとの横位置偏差ΔTを求める。
【0029】
操舵トルク演算部11dは、横位置偏差演算部11cで求めた横位置偏差ΔTと線種識別演算部11aで求めた区画線の線種とに基づきマップを参照し、或いは、予め設定されている計算式から、横位置偏差ΔTをゼロにする操舵トルク(制御量)を設定する。本実施形態では、操舵トルクを、
図7に示す操舵トルクマップを参照して設定する。同図に示す操舵マップには、区画線の線種Ly,Lw,Lb毎、すなわち、運転者が自車両1を区画線から意図的に逸脱させようとする意識度に応じた傾きGy,Gw,Gbの操舵トルク特性が設定されている。この傾きGy,Gw,Gbはゲインであり、操舵トルクを計算式により求める場合は、横位置偏差ΔTに区画線の線種Ly,Lw,Lb毎に設定されている傾きGy,Gw,Gbを乗算することで求める。
【0030】
運転者が自車両1を区画線から意図的に逸脱させようとする意識度は、白色連続線Lwを基準とした場合、黄色連続線Lyは低く、白色破線Lbは高い。そのため、白色連続線Lwの傾きGwに対し、黄色連続線Lyの傾きGyは増加され、白色破線Lbの傾きGbは減少されている。従って、同一の横位置偏差であっても、白色連続線Lwよりも不用意に逸脱しやすい黄色連続線Lyでは、大きな値の操舵トルクが設定され、意図的に逸脱する意識度の高い白色破線Lbは小さな値の操舵トルクが設定される。そして、この操舵トルク演算部11dで設定した操舵トルクがEPS_ECU8へ送信される。
【0031】
EPS_ECU8では、LDP_ECU11から送信された操舵トルクに基づきEPSモータ7に対し自車両1を目標進行路(
図6参照)へ戻すアシストトルクを所定に発生させる。
【0032】
このように、本実施形態では、区画線の線種Ly,Lw,Lb、すなわち、運転者が自車両1を区画線から意図的に逸脱させようとする意識度に応じて逸脱判定閾値SLy,SLw,SLbを設定したので、逸脱の可能性ありと判定するタイミングが白色連続線Lwに比し、黄色連続線Lyが早く、白色破線Lbが遅く設定される。又、横位置偏差ΔTをゼロにするために発生させる操舵トルクも、区画線の線種Ly,Lw,Lb、すなわち、運転者が自車両1を区画線から意図的に逸脱させようとする意識度に応じて増減させたゲインが設定されているため、白色連続線Lwに比し、黄色連続線Lyはアシストトルクが強く設定され、又、白色破線Lbではアシストトルクが弱く設定される。
【0033】
その結果、本実施形態では、運転者の認識する区画線の線種に応じて、最適な逸脱防止支援を行うことができ、逸脱防止支援による運転者に与える違和感、不要警報、不要作動が低減される。又、不用意に逸脱する可能性ありと判定した場合には、早めに警報が発せられると共に、強いアシストトルクで逸脱防止制御が行われるため、より高い安全性を得ることができる。
【0034】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、白色連続線Lw、黄色連続線Ly、白色破線Lbは、区画線の一例に過ぎず、その他の区画線に対しても、運転者が意図的に逸脱しようとする意識度に応じて、逸脱防止閾値、及び操舵トルクのゲイン(傾き)を適宜設定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
1…自車両
6…EPS装置
8…EPS制御ユニット
11…逸脱防止制御ユニット
11a…線種識別演算部
11b…逸脱判定演算部
11c…横位置偏差演算部
11d…操舵トルク演算部
21…カメラユニット
22…車載カメラ
24…車線認識部
Lb…白色破線
LL…左区画線
LP…予見距離
LR…右区画線
Lw…白色連続線
Ly…黄色連続線
TP…前方注視点
TL…左端点
TR…右端点
TG…目標点
SLy,SLw,SLb…逸脱判定閾値
Wb,Ww,Wy…間隔
ΔT…横位置偏差