特許第6137981号(P6137981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6137981-漏えい検出装置および原子力設備 図000002
  • 特許6137981-漏えい検出装置および原子力設備 図000003
  • 特許6137981-漏えい検出装置および原子力設備 図000004
  • 特許6137981-漏えい検出装置および原子力設備 図000005
  • 特許6137981-漏えい検出装置および原子力設備 図000006
  • 特許6137981-漏えい検出装置および原子力設備 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6137981
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】漏えい検出装置および原子力設備
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20170522BHJP
   F17D 5/00 20060101ALI20170522BHJP
   G21C 17/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G01M3/02 J
   F17D5/00
   G21C17/02 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-159733(P2013-159733)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31543(P2015-31543A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】内海 晴輔
(72)【発明者】
【氏名】笠原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】辺見 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 盛喜
(72)【発明者】
【氏名】小崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】新藤 祐
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋芳
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−175738(JP,A)
【文献】 特開昭62−254032(JP,A)
【文献】 実開昭58−006250(JP,U)
【文献】 特開昭57−124227(JP,A)
【文献】 特開昭55−022162(JP,A)
【文献】 米国特許第04259861(US,A)
【文献】 特開2010−266283(JP,A)
【文献】 特表2009−510360(JP,A)
【文献】 実開平01−089350(JP,U)
【文献】 実開昭60−033648(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/02
F17D 5/00
G21C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体が流通される配管の所定部位の外周を覆う外板と、
前記配管と前記外板との間に充填された保温材と、
前記配管と前記外板との間の一部に設けられて前記配管の表面に前記保温材を配置しない空間部を形成してなる部屋と、
前記部屋の空間部の温度を検出するための温度検出部と、
前記温度検出部が検出する温度を前記空間部の内部温度よりも低下させる冷却手段と、
を備えることを特徴とする漏えい検出装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記部屋の空間部の内部および外部に通じて配置され、筒状に形成されて前記空間部の内部に配置された先端が閉塞された高熱伝導率の材料からなる鞘管を備え、前記鞘管内の先端部に前記温度検出部を配置することを特徴とする請求項1に記載の漏えい検出装置。
【請求項3】
前記鞘管は、前記部屋の空間部の外部に配置される部分が先端部に対して外径を太く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の漏えい検出装置。
【請求項4】
前記鞘管は、前記部屋の空間部の外部に配置される部分の外面にフィン部材が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の漏えい検出装置。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記部屋の空間部の外部に配置されて両端が前記部屋の空間部に通じて前記部屋の空間部の内部の流体を自然循環させる環状管を備え、前記部屋の空間部の内部であって前記環状管の自然循環の下流端が前記部屋の空間部に通じる部分に前記温度検出部を配置することを特徴とする請求項1に記載の漏えい検出装置。
【請求項6】
前記環状管の外面にフィン部材が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の漏えい検出装置。
【請求項7】
前記環状管における流体の循環を強制送りする送り機構を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の漏えい検出装置。
【請求項8】
原子炉で生成された熱により高温流体を発生させて配管で送り、当該高温流体を利用する原子力設備であって、
請求項1〜請求項7のいずれか一つに記載の漏えい検出装置が適用されることを特徴とする原子力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体の漏えいを監視するための漏えい検出装置、および当該漏えい検出装置が適用される原子力設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1は、原子力発電所その他の蒸気利用施設において、異常な蒸気漏れの警報を自動的に発するため、セラミック湿度センサと温度センサとを直接蒸気漏れが予測される箇所の断熱材に埋め込んで、その箇所の湿度と温度のデータをマイクロコンピュータで絶対温度に変換し、これに統計的処理を施したものを基準にして異常の有無を判断し、異常の場合に警報を発する蒸気漏れ警報システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−189596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の蒸気漏れ警報システムは、湿度センサと温度センサとを直接蒸気漏れが予測される箇所の断熱材に埋め込んでいる。このため、各センサにより湿度と温度を検出するのは断熱材を通過した蒸気の湿度および温度となるため、異常となる蒸気漏れの際の湿度と温度を検出するまでに時間差が生じ、より迅速な対応を行うことが困難であった。しかも、特許文献1に記載の蒸気漏れ警報システムは、異常の有無を判断するのに、湿度と温度のデータをマイクロコンピュータで絶対温度に変換し、これに統計的処理を施したものを基準にしており、複雑な処理を行わなければならない。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することのできる漏えい検出装置および原子力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の漏えい検出装置は、高温流体が流通される配管の所定部位の外周を覆う外板と、前記配管と前記外板との間に充填された保温材と、前記配管と前記外板との間の一部に設けられて前記配管の表面に前記保温材を配置しない空間部を形成してなる部屋と、前記部屋の空間部の温度を検出するための温度検出部と、前記温度検出部が検出する温度を前記空間部の内部温度よりも低下させる冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この漏えい検出装置によれば、通常時は、冷却手段により温度検出部で検出する温度が部屋の空間部の温度よりも低温とされ、高温流体の漏えい時は、部屋の空間部の温度が上昇しこれに伴い温度検出部で検出する温度も上昇するため、高温流体の漏えいを検出することができる。
【0008】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記冷却手段は、前記部屋の空間部の内部および外部に通じて配置され、筒状に形成されて前記空間部の内部に配置された先端が閉塞された高熱伝導率の材料からなる鞘管を備え、前記鞘管内の先端部に前記温度検出部を配置することを特徴とする。
【0009】
この漏えい検出装置によれば、通常時、部屋の空間部は、配管の表面から伝わる高温流体の熱により高温となる。一方、鞘管は、部屋の空間部の内部および外部に通じて配置され高熱伝導率の材料からなるため、空間部の外部にて外気と熱交換して冷却され、これに伴い空間部の内部に配置されている鞘管の先端部は、空間部よりも低温となり温度差が生じる。そして、この鞘管内の先端部に配置された温度検出部により、鞘管の先端部の温度が検出される。このため、高温流体の漏えいのない通常時は、部屋の空間部よりも低い鞘管の先端部の温度を温度検出部により検出する。高温流体の漏えい時は、漏えい蒸気の対流熱伝達や凝縮熱により鞘管の先端部への入熱が増加することで、鞘管の先端部の温度が上昇することになり、この上昇した温度を温度検出部により検出する。この結果、高温流体の漏えいを検出することができる。
【0010】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記鞘管は、前記部屋の空間部の外部に配置される部分が先端部に対して外径を太く形成されていることを特徴とする。
【0011】
この漏えい検出装置によれば、部屋の空間部の外部に配置される部分が、先端部に対して外径を太く形成されていることで、当該部分は、空間部の外部にて外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、先端部の温度低下を助勢することができ、空間部との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0012】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記鞘管は、前記部屋の空間部の外部に配置される部分の外面にフィン部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この漏えい検出装置によれば、部屋の空間部の外部に配置される部分の外面にフィン部材が設けられていることで、当該部分は、空間部の外部にて外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、先端部の温度低下を助勢することができ、空間部との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0014】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記冷却手段は、前記部屋の空間部の外部に配置されて両端が前記部屋の空間部に通じて前記部屋の空間部の内部の流体を自然循環させる環状管を備え、前記部屋の空間部の内部であって前記環状管の自然循環の下流端が前記部屋の空間部に通じる部分に前記温度検出部を配置することを特徴とする。
【0015】
この漏えい検出装置によれば、通常時、部屋の空間部は、配管の表面から伝わる高温流体の熱により高温となる。一方、環状管の自然循環の下流端側は、環状管内で外気と熱交換して冷却され、空間部よりも低温となり温度差が生じる。そして、この環状管の自然循環の下流端に配置された温度検出部により温度が検出される。このため、高温流体の漏えいのない通常時は、部屋の空間部よりも低い温度を温度検出部により検出する。高温流体の漏えい時は、漏えい蒸気の対流熱伝達やおよび凝縮熱により部屋の空間部の温度が上昇し、漏えい蒸気の空間部への流れ込みが支配的になり、環状管から空間部への流れが温度検出部に掛からなくなって、温度検出部が検出する温度が上昇した空間部の温度に極めて近くなる。この結果、高温流体の漏えいを検出することができる。
【0016】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記環状管の外面にフィン部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この漏えい検出装置によれば、環状管の外面にフィン部材を設けたことで、環状管内を通過する流体は、外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、環状管の自然循環による下流端側の温度低下を助勢することができ、空間部との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0018】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記環状管における流体の循環を強制送りする送り機構を備えることを特徴とする。
【0019】
この漏えい検出装置によれば、環状管における流体の循環を強制送りする送り機構を備えることで、環状管内を通過する流体は、外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、環状管の自然循環による下流端側の温度低下を助勢することができ、空間部との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0020】
上述の目的を達成するために、本発明の原子力設備は、原子炉で生成された熱により高温流体を発生させて配管で送り、当該高温流体を利用する原子力設備であって、上述したいずれか一つに記載の漏えい検出装置が適用されることを特徴とする。
【0021】
この原子力設備によれば、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することができ、原子力設備の高温流体の漏れを監視することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る原子力設備の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る漏えい検出装置の構成図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係る漏えい検出装置の構成図である。
図4図4は、本発明の実施形態2に係る漏えい検出装置の構成図である。
図5図5は、本発明の実施形態2に係る漏えい検出装置の構成図である。
図6図6は、本発明の実施形態2に係る漏えい検出装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0025】
図1は、本実施形態に係る原子力設備の一例を示す概略構成図である。図1に示す原子力設備は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。この原子力設備は、原子炉格納容器100内において、原子炉圧力容器101、加圧器102、蒸気発生器103および一次冷却水ポンプ104が、一次冷却水管105により順次接続されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。
【0026】
原子炉圧力容器101は、内部に炉心である複数の燃料集合体101aを密閉状態で格納するもので、燃料集合体101aが挿抜できるように、容器本体101bとその上部に装着される容器蓋101cとにより構成されている。容器蓋101cは、容器本体101bに対して開閉可能に設けられている。容器本体101bは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口側管台101dおよび出口側管台101eが設けられている。出口側管台101eは、蒸気発生器103の入口側水室103aに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口側管台101dは、蒸気発生器103の出口側水室103bに連通するように一次冷却水管105が接続されている。
【0027】
蒸気発生器103は、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように各端部が管板103dに支持されている。そして、入口側水室103aは、入口側の一次冷却水管105が接続され、出口側水室103bは、出口側の一次冷却水管105が接続されている。また、蒸気発生器103は、管板103dによって区画された上部側の上端に、出口側の二次冷却水管106aが接続され、上部側の側部に、入口側の二次冷却水管106bが接続されている。
【0028】
また、原子力設備は、蒸気発生器103が、原子炉格納容器100外で二次冷却水管106a,106bを介して蒸気タービン107に接続されて、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0029】
蒸気タービン107は、高圧タービン108および低圧タービン109を有すると共に、発電機110が接続されている。また、高圧タービン108および低圧タービン109は、湿分分離加熱器111が、二次冷却水管106aから分岐して接続されている。二次冷却水管106aは、蒸気発生器103から高圧タービン108および低圧タービン109に至る途中に蒸気隔離弁(開閉弁)119が設けられている。蒸気隔離弁119は、非常時などに閉塞されて蒸気発生器103から高圧タービン108および低圧タービン109に至る蒸気が隔離される。また、低圧タービン109は、復水器112に接続されている。この復水器112は、二次冷却水管106bに接続されている。二次冷却水管106bは、上述したように蒸気発生器103に接続され、復水器112から蒸気発生器103に至り、復水ポンプ113、低圧給水加熱器114、脱気器115、主給水ポンプ116、高圧給水加熱器117および主給水弁(開閉弁)118が設けられている。
【0030】
従って、原子力設備では、一次冷却水が原子炉圧力容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換後の冷却した一次冷却水は、一次冷却水管105を介して一次冷却水ポンプ104側に回収され、原子炉圧力容器101に戻される。一方、熱交換により蒸気となった二次冷却水は、蒸気タービン107に供給される。蒸気タービン107に係り、湿分分離加熱器111は、高圧タービン108からの排気から湿分を除去し、さらに加熱して過熱状態とした後に低圧タービン109に送る。蒸気タービン107は、二次冷却水の蒸気により駆動され、その動力が発電機110に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、復水器112に排出される。復水器112は、取水管112aを介してポンプ112bにより取水した冷却水(例えば、海水)と、低圧タービン109から排出された蒸気とを熱交換し、当該蒸気を凝縮させて低圧の飽和液に戻す。熱交換に用いられた冷却水は、排水管112cから排出される。また、凝縮された飽和液は、二次冷却水となり、復水ポンプ113によって二次冷却水管106bを介して復水器112の外部に送り出される。さらに、二次冷却水管106bを経る二次冷却水は、低圧給水加熱器114で、例えば、低圧タービン109から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器115で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、主給水ポンプ116により送水され、高圧給水加熱器117で、例えば、高圧タービン108から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器103に戻される。ここで、二次冷却水を蒸気発生器103に給水する系統を主給水系という。主給水系は、蒸気発生器103の二次冷却水の水位を維持するため、主給水ポンプ116や主給水弁118などが制御される。
【0031】
[実施形態1]
図2および図3は、本実施形態に係る漏えい検出装置の構成図である。本実施形態の漏えい検出装置1は、上述したような原子力設備に適用される。例えば、漏えい検出装置1は、原子力設備において、高温流体である二次冷却水が流通される配管である二次冷却水管106a,106bに配置される。具体的に、二次冷却水管106aにおいて、漏えい検出装置1は、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分、配管固定点における溶接接続部分、または機器(蒸気発生器103,高圧タービン108,低圧タービン109,湿分分離加熱器111,蒸気隔離弁119)との溶接接続部分に配置される。また、二次冷却水管106bにおいて、漏えい検出装置1は、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分、配管固定点における溶接接続部分、または機器(蒸気発生器103,復水器112,復水ポンプ113,低圧給水加熱器114,脱気器115,主給水ポンプ116,高圧給水加熱器117,主給水弁118)との溶接接続部分に配置される。なお、図2では、二次冷却水管106a,106bが原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分に漏えい検出装置1が配置された形態を示し、図3では、二次冷却水管106a,106bの溶接接続部分に漏えい検出装置1が配置された形態を示している。なお、漏えい検出装置1は、原子力設備において、高温流体である一次冷却水が流通される配管である一次冷却水管105における各溶接接続部分に配置されてもよい。また、本実施形態に係る漏えい検出装置1は、原子力設備に限らず、高温流体が流通される配管に適用されるものである。また、本実施形態に係る漏えい検出装置1により漏えいが検出される高温流体とは、高温水など液体や、蒸気などの気体を含む。
【0032】
図2において、二次冷却水管106a,106bは、隔壁100aの部分で保護管100bに挿通されている。そして、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された二次冷却水管106a,106bは、その外周が保護管100bに連結された外板2で覆われている。外板2は、鋼板などで形成されている。そして、二次冷却水管106a,106bと外板2との間に保温材3が充填されている。このため、二次冷却水管106a,106bに流通される高温流体である蒸気や高温水が保護管100bや外板2で保護されるとともに保温材3で保温される。
【0033】
また、図3において、二次冷却水管106a,106bの溶接接続部分106c(図3では機器との溶接接続部分)において、機器側は、その外周が機器の保護のための外板120および保温のための保温材121で覆われている。そして、二次冷却水管106a,106bは、その外周が外板120に連結された外板2で覆われている。外板2は、鋼板などで形成されている。そして、二次冷却水管106a,106bと外板2との間に保温材3が充填されている。このため、二次冷却水管106a,106bに流通される高温流体である蒸気や高温水が外板2で保護されるとともに保温材3で保温される。
【0034】
本実施形態の漏えい検出装置1は、図2および図3に示すように、外板2の外径が大きく形成された大径部21において、二次冷却水管106a,106bと外板2との間に、二次冷却水管106a,106bの表面に保温材3を配置しない密閉の空間部S1を形成してなる部屋4と、部屋4の空間部S1の温度を検出するための温度検出部5と、温度検出部5が検出する温度を空間部S1の内部温度よりも低下させる冷却手段6と、を備える。なお、図3の場合、空間部S1は、二次冷却水管106a,106bの溶接接続部分106cの位置に形成される。
【0035】
冷却手段6は、鞘管9を備える。鞘管9は、部屋4の空間部S1の内部および外部に通じて配置され、筒状に形成されて空間部S1の内部に配置された先端部9aが閉塞された高熱伝導率の材料からなる。高熱伝導率の材料は、例えば、外板2をなす鋼よりも熱伝導率の高い銅などがある。そして、鞘管9内の先端部9aに温度検出部5が配置される。
【0036】
ここで、温度検出部5は、例えば、測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)をセンサ部5aとして構成したものが適用される。センサ部5aは、測温抵抗体に限らず、温度を検出することができるものであればよい。温度検出部5は、センサ部5aが鞘管9内の先端部9aに配置され、センサ部5aから鞘管9の筒内を経て鞘管9外に信号線5bが引き出されている。
【0037】
すなわち、本実施形態の漏えい検出装置1では、通常時、部屋4の空間部S1は、二次冷却水管106a,106bの表面から伝わる高温流体の熱により高温となる。一方、鞘管9は、部屋4の空間部S1の内部および外部に通じて配置され高熱伝導率の材料からなるため、空間部S1の外部にて外気と熱交換して冷却され、これに伴い空間部S1の内部に配置されている鞘管9の先端部9aは、空間部S1よりも低温となり温度差が生じる。そして、この鞘管9内の先端部9aに配置された温度検出部5により、鞘管9の先端部9aの温度が検出される。このため、高温流体の漏えいのない通常時は、部屋4の空間部S1よりも低い鞘管9の先端部9aの温度を温度検出部5により検出する。高温流体の漏えい時は、漏えい蒸気の対流熱伝達や凝縮熱により鞘管9の先端部9aへの入熱が増加することで、鞘管9の先端部9aの温度が上昇することになり、この上昇した温度を温度検出部5により検出する。この結果、高温流体の漏えいを検出することができる。
【0038】
例えば、部屋4の空間部S1内に温度検出部5を配置した場合、温度検出部5は、通常時、空間部S1内の高温の温度を検出し、高温流体の漏えい時にも同様に空間部S1内の高温の温度を検出するが、通常時と漏えい時との温度差が小さいため、漏えいを検出し難い。特に、微少な漏えいの場合、これを検出することができないおそれがある。この点、本実施形態の漏えい検出装置1では、通常時は部屋4の空間部S1の温度よりも低い鞘管9の先端部9aの温度を検出しており、高温流体の漏えい時は部屋4の空間部S1の温度上昇に伴って上昇した鞘管9の先端部9aの温度を検出するため、微少な漏えいであっても迅速に検出することができる。
【0039】
ところで、本実施形態の漏えい検出装置1では、図2および図3に示すように、鞘管9は、部屋4の空間部S1の外部に配置される部分である基部9bが、先端部9aに対して外径を太く形成されていることが好ましい。
【0040】
部屋4の空間部S1の外部に配置される部分である鞘管9の基部9bが、先端部9aに対して外径を太く形成されていることで、基部9bは、空間部S1の外部にて外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、先端部9aの温度低下を助勢することができ、空間部S1との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0041】
また、本実施形態の漏えい検出装置1では、図には明示しないが、鞘管9は、部屋4の空間部S1の外部に配置される部分である基部9bの外面にフィン部材が設けられていることが好ましい。
【0042】
部屋4の空間部S1の外部に配置される部分である基部9bの外面にフィン部材が設けられていることで、基部9bは、空間部S1の外部にて外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、先端部9aの温度低下を助勢することができ、空間部S1との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0043】
ところで、本実施形態において、鞘管9は、部屋4の空間部S1における上側に配置されていることが好ましい。高温流体の漏えい時、蒸気が空間部S1の上側に上昇する。このため、鞘管9を部屋4の空間部S1における上側に配置することで、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。また、鞘管9は、部屋4の空間部S1における下側に配置されていてもよい。高温流体の漏えい時、凝縮液が空間部S1の下側に下降する。このため、鞘管9を部屋4の空間部S1における下側に配置することで、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0044】
[実施形態2]
図4図6は、本実施形態に係る漏えい検出装置の構成図である。なお、本実施形態の漏えい検出装置1は、上述した実施形態1の漏えい検出装置1に対して冷却手段6の構成が異なり、その他の構成は同様である。従って、以下に説明する実施形態2において、上述した実施形態1と同等の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。また、図4では、上述した実施形態1を説明する図2と同様に、二次冷却水管106a,106bが原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分に漏えい検出装置1を設けた形態を示している。また、図5および図6では、上述した実施形態1を説明する図3と同様に、機器との溶接接続部分に漏えい検出装置1を設けた形態を示している。
【0045】
本実施形態において、冷却手段6は、環状管10を備える。環状管10は、部屋4の空間部S1の外部に配置され、両端10a、10bが部屋4の空間部S1に通じて空間部S1の内部の流体を自然循環させるものである。環状管10は、一端10aが部屋4の空間部S1の上側に通じ、他端10bが部屋4の空間部S1の下側に通じている。空間部S1は、二次冷却水管106a,106bに流通する高温流体により暖められるため、暖められた流体は上昇して環状管10の一端10aから空間部S1から外部に流出し、環状管10内で外気により冷却されて環状管10の他端10bに至り空間部S1に流入する。これにより、空間部S1の内部の流体が環状管10を介して自然循環する。そして、部屋4の空間部S1の内部であって環状管10の自然循環の下流端である他端10bが空間部S1に通じる部分に温度検出部5が配置される。
【0046】
ここで、温度検出部5は、例えば、測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)をセンサ部5aとして構成したものが適用される。センサ部5aは、測温抵抗体に限らず、温度を検出することができるものであればよい。温度検出部5は、センサ部5aが部屋4の空間部S1の内部であって環状管10の自然循環の下流端である他端10bが空間部S1に通じる部分に配置され、センサ部5aから環状管10の一部を経て環状管10外に信号線5bが引き出されている。
【0047】
すなわち、本実施形態の漏えい検出装置1では、通常時、部屋4の空間部S1は、二次冷却水管106a,106bの表面から伝わる高温流体の熱により高温となる。一方、環状管10の自然循環の下流端である他端10b側は、環状管10内で外気と熱交換して冷却され、空間部S1よりも低温となり温度差が生じる。そして、この環状管10の自然循環の下流端に配置された温度検出部5により温度が検出される。このため、高温流体の漏えいのない通常時は、部屋4の空間部S1よりも低い温度を温度検出部5により検出する。高温流体の漏えい時は、漏えい蒸気の対流熱伝達やおよび凝縮熱により部屋4の空間部S1の温度が上昇し、漏えい蒸気の空間部S1への流れ込みが支配的になり、環状管10から空間部S1への流れが温度検出部5に掛からなくなって、温度検出部5が検出する温度が上昇した空間部S1の温度に極めて近くなる。この結果、高温流体の漏えいを検出することができる。
【0048】
例えば、部屋4の空間部S1内に温度検出部5を配置した場合、温度検出部5は、通常時、空間部S1内の高温の温度を検出し、高温流体の漏えい時にも同様に空間部S1内の高温の温度を検出するが、通常時と漏えい時との温度差が小さいため、漏えいを検出し難い。特に、微少な漏えいの場合、これを検出することができないおそれがある。この点、本実施形態の漏えい検出装置1では、通常時は部屋4の空間部S1の温度よりも低い温度を検出しており、高温流体の漏えい時は部屋4の空間部S1の温度上昇に伴って上昇した温度を検出するため、微少な漏えいであっても迅速に検出することができる。
【0049】
ところで、本実施形態の漏えい検出装置1では、図5に示すように、環状管10の外面にフィン部材11が設けられていることが好ましい。
【0050】
環状管10の外面にフィン部材11を設けたことで、環状管10内を通過する流体は、外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、環状管10の自然循環による下流端側の温度低下を助勢することができ、空間部S1との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0051】
また、本実施形態の漏えい検出装置1は、図6に示すように、環状管10における流体の循環を強制送りする送り機構12を備えることが好ましい。
【0052】
送り機構12は、ポンプにより構成される。環状管10における流体の循環を強制送りする送り機構12を備えることで、環状管10内を通過する流体は、外気との熱交換効率が向上してより冷却されることになり、環状管10の自然循環による下流端側の温度低下を助勢することができ、空間部S1との温度差をより大きくできるため、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0053】
ところで、上述した実施形態1および実施形態2の漏えい検出装置1は、原子炉で生成された熱により高温流体を発生させ、当該高温流体を利用する図1に例示する上述した原子力設備において適用される。
【0054】
この原子力設備によれば、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することができ、原子力設備の高温流体の漏れを監視することができる。
【0055】
なお、上述した原子力設備は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられたものを説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)が用いられた原子力設備であってもよく、上述した漏えい検出装置1は、沸騰型原子炉にて発生した蒸気を通過させる配管の漏えいの検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 漏えい検出装置
2 外板
3 保温材
4 部屋
5 温度検出部
6 冷却手段
9 鞘管
9a 先端部
9b 基部
10 環状管
10a 一端
10b 他端
11 フィン部材
12 送り機構
106a,106b 二次冷却水管(配管)
S1 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6